ビジネス活用2026年10月更新

AI導入ロードマップ|1年目を月別に解説(0〜12ヶ月のやること・費用の目安・判断の分かれ目)

公開日: 2026/09/21
更新日: 2026/10/10
AI導入ロードマップ|1年目を月別に解説(0〜12ヶ月のやること・費用の目安・判断の分かれ目)

この記事のポイント

AI導入の1年目を月別に整理。0〜3ヶ月で利用ルールと作業記録、3〜6ヶ月で繰り返し作業の自動化、6〜12ヶ月でシステム化。30名規模の1年目は約220万円〜(税別の試算)。3ヶ月目・6ヶ月目の判断基準と補助金・予算の時期も解説。

AI導入の1年目は、「全員が安全に使える土台づくり(0〜3ヶ月)→ 人がやっている繰り返し作業の自動化(3〜6ヶ月)→ 自動化では直らない仕組みのシステム化(6〜12ヶ月)」の順で進めます。 費用の目安は従業員30名規模で1年目の総額 約220万円〜(生成AIの法人プラン 年約108万円+自動化ツール 約13.5万円+データを取り出すための既存システムの改修100万円〜、すべて税別。仮定に基づく試算)です。効果を確かめる試作(PoC)に進む場合は300万円〜、月額型の自動化サービスを使う場合はその利用料が加わります。

この記事では、各段階で何をするか、3ヶ月目と6ヶ月目に何を見て次の手段を選ぶか、いくら出ていくか、補助金と来期予算の時期をどう組み込むかを、月単位でまとめます。「社長からAIを入れろと言われたが、何をどの順番でやればいいのか分からない」という事業責任者・業務部門長の方に向けた内容です。

AI導入の1年目、多くの会社はどこで止まっているか

生成AIによる業務変革への組織的な取組状況を国別・企業規模別に比べたグラフ。日本は「組織的な取り組みはない」が27.0%、中小企業では45.6%

出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書」図表I-2-1-3

最初に、いま日本の会社で実際に起きていることを確認しておきます。

総務省の「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月公表、2025年度の企業調査)によると、自社の何らかの業務で生成AIを使っている日本企業は86.4%にのぼります。一方で、業務のやり方を変えるための「組織的な取組はない」と答えた企業が27.0%あり、米国・ドイツ・中国と比べて顕著に高く、特に中小企業で高いという結果でした。

使われ方にも偏りがあります。最も多いのは「議事録・メール作成の補助」で約7割。一方、他の3か国では「社内のデータをAIに学習させたり、参照できるデータベースを作ったりしている」企業が5割を超え、日本を大きく上回っています。つまり日本の現状は、AIを使ってはいるが、業務の仕組みには組み込まれていない状態です。

たとえば、次のような状況に心当たりはないでしょうか。

  • 社員が個人の判断で生成AIを使っているが、会社としてのルールも契約もない
  • 法人プランを入れてみたが、使われているのは議事録の要約とメールの下書きくらい
  • 「AIで何か効率化しろ」と指示が出たが、どの業務から手を付けるか決まらない
  • 展示会で見たツールを契約しかけているが、それで何の作業が減るのかを誰も説明できない

商工中金の調査(2026年1月実施)でも、「会社としての導入はなく、使うかどうかは個人の判断に任せている」が64.9%で最多でした。同じ調査からは、つまずく理由が段階ごとに変わることも読み取れます。導入前は「具体的な活用場面が分からない」(35.6%)、検討段階では「推進する人材がいない」(32.0%)、導入後は「社内のルールや方針の整備が追いつかない」(25.1%)、「効果が測れず成果が見えにくい」(21.3%)です。

課題が時期によって入れ替わる以上、1年目の計画も時期で区切り、区切りごとに何を確かめるかを決めておくのが確実です。以下のロードマップはその考え方で組んでいます。

AI導入ロードマップの全体像|1年目は3段階と2つの判断の分かれ目

1年目の流れを1枚の表にまとめると次のとおりです。費用はすべて税別で、期間は進め方の目安です。会社の規模や対象業務によって前後します。

時期

やること

手に入るもの

費用の目安(税別)

0〜1ヶ月

責任者と目標を決める/利用ルールを置く/法人プランを契約する

情報漏えいの入口がふさがり、全員が同じ道具で試せる状態

法人プラン 1人月3,000円前後(30名で月9万円前後)

1〜3ヶ月

研修/1週間の作業記録で繰り返し作業を洗い出す

自動化の候補リストと、それぞれに月何時間かかっているか

研修費(中小企業は助成金で経費の75%を補助、上限あり)

3ヶ月目

判断の分かれ目①:候補を「自動化で済む/仕組みを直す必要がある/手を付けない」に仕分ける

次の半年の投資先

社内作業のみ

3〜6ヶ月

束ねて月40時間を超える繰り返し作業を自動化する

担当者の仕事が「全件の処理」から「例外の確認」に変わる

安価なツール 月数千円/月額型の自動化サービスや開発に頼む場合は別途(後述の試算で判断)

6ヶ月目

判断の分かれ目②:自動化しても残った問題(データが取り出せない、台帳が分かれている等)を特定する

「作る必要があるもの」のリスト

—

6〜12ヶ月

データを取り出せるようにする改修/効果が不確かなものは3ヶ月の試作(PoC)/本開発を来期予算に載せる

仕組みの問題の解消、または本開発に進むかの判断材料

既存システムの改修100万円〜/PoC300万円〜

9〜12ヶ月

2年目の予算化と、補助金の次の公募に合わせた計画

2年目の計画と予算

—

なぜ「自動化 → システム化」の順番なのか

よく見かけるAI導入の計画は、「一部の部署で試す → 部門に広げる → 全社に展開する」という使う人の広がりで段階を区切っています。この記事では段階を、人がやっている作業をなくす(自動化)と、仕組みそのものを作り直す(システム化)で区切っています。理由は3つです。

  1. 自動化のほうが安く、早い。 今ある作業を機械に渡すだけなら、安価なツールを使って社内で始められることもあります。仕組みを作り直すと、期間も費用も一段上がります
  2. 自動化を試すと、自動化では直らない問題がはっきりする。 「転記を自動化したい」という相談が、実は台帳が部門ごとに分かれている構造の問題だった、ということがあります(6ヶ月目の分かれ目②で扱います)。先に「作る」判断をすると、この切り分けができないまま大きな投資をすることになります
  3. 国の整理とも同じ順番。 経済産業省の「DXレポート2」は、デジタル化を「紙などアナログな情報をデジタルにする段階」「個別の業務の手順をデジタルにする段階」「組織をまたいで業務や事業のやり方そのものを変える段階」の3つに分けています。この記事の3段階は、その順番を中堅・中小企業の1年に当てはめたものです

0〜3ヶ月|全員が安全に使える土台をつくる

生成AIによる業務変革の戦略や方針の状況を示すグラフ。日本の中小企業では「経営幹部から各部署に対して実施事項や達成目標が提示されている」が32.9%で最多

出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書」図表I-2-1-4

0〜1ヶ月目:責任者と目標を、経営者が決める

最初の1ヶ月でやることは、道具選びより先に、誰が責任を持ち、1年後に何が減っていればよいかを決めることです。情報通信白書によると、中小企業では「経営幹部から各部署に実施事項や達成目標が提示されている」という取り組み方が最も多く、白書自身もトップダウンの関与が鍵だと述べています。

目標は「AIを活用する」ではなく、「月◯時間かかっている◯◯の作業を、1年後に◯時間にする」のように作業時間で置くのが実務的です。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2026」では、AIを導入した効果として「業務の効率化・迅速化」を挙げた企業が91.6%だったのに対し、「売上や利益が向上」は3.9%にとどまりました。1年目の目標は、成果が出やすい作業時間の削減に置いてください。

0〜1ヶ月目:法人プランを契約して、個人任せの利用をやめる

個人のアカウントで使われている状態は、何が入力されているかを会社が把握できない状態です。まず法人向けのプランを1つ決めて、全員が同じ道具を使えるようにします。主な選択肢の価格は次のとおりです(2026年9月時点)。

サービス

価格(1ユーザーあたり月額)

補足

Microsoft 365 Copilot Business

3,148円(年契約・税別)

既存のMicrosoft 365に追加する形。2026年12月31日までは、対象プランの既存顧客が年契約すると初年度2,698円

ChatGPT Business

年払いで20ドル(円表示では3,000円台)

最低2席から。ドル建てのため為替で実際の負担が変わる

Claude Team

年払いで20ドル

2〜150名で契約できる。入力した内容は既定でAIの学習に使われない

Google Workspace

Business Standard 1,600円(通常価格・税別)

Business Standard以上なら、ドキュメントやスプレッドシートの中でGeminiを使える

30名で計算すると、1人月3,000円前後のプランで月9万円前後、年約110万円です。すでにGoogle WorkspaceのBusiness Standard以上を契約している会社なら、追加の費用なしでGeminiを試すところから始められます。

選ぶときは、機能の細かな差より普段使っている業務ソフトとの相性を優先すると定着が早くなります。Microsoft 365中心ならCopilot、Google Workspace中心ならGemini、という選び方です。料金の詳細はChatGPTの料金、Claudeの料金で解説しています。

医療・薬局など、データを国内で処理することが求められる業種は注意が必要です。たとえばMicrosoft 365 Copilotの日本国内でのAI処理は、Microsoftの発表では2028年の予定とされています。契約前に、入力したデータがどこで処理され、学習に使われるかどうかを必ず確認してください。詳しくは生成AIを社内導入するときのセキュリティ設計と規制業種のAI導入にまとめています。

0〜1ヶ月目:利用ルールは、公開されているひな形から作る

社内ルールを一から書く必要はありません。日本ディープラーニング協会(JDLA)が「生成AIの利用ガイドライン」のひな形を無償で公開しています(第1.1版、2023年10月)。条文の形になっているので、自社の事情に合わせて削ったり足したりするのが早道です。

ただし、このひな形は2023年に作られたものです。その後に広がった、AIが自分で判断しながら作業を進める仕組み(AIエージェント)を3〜6ヶ月目に使うなら、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」第1.2版(2026年3月公表)で補ってください。第1.2版はAIエージェントの定義を新たに設け、AIに与える権限を適切に絞ることと、人の判断を継続的に挟むことを求めています。

1〜3ヶ月目:研修は、助成金の期限に合わせて組む

社員研修には、厚生労働省の人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」が使えます。社内のデジタル化に関わる知識・技能の研修が対象で、主な条件は次のとおりです。

項目

中小企業の場合

研修費用の助成

経費の75%(大企業は60%)

研修中の賃金の助成

1人1時間あたり1,000円(大企業は500円)

助成の上限(1人1研修あたり)

10〜100時間未満の研修で30万円/eラーニング・通信制は15万円

対象になる研修

通常の業務から離れて受ける研修で、実際の研修時間が10時間以上(eラーニングは標準学習時間10時間以上など)

対象外

既存のアプリやシステムの操作方法を覚えるだけの研修、コンサルタントによる指導

手続き

研修開始日の6ヶ月前から1ヶ月前までに、計画届を労働局に提出

時期の制約が2つあります。1つは、計画届の提出が研修開始の1ヶ月前までなので、研修を始めたい月から逆算して手続きを先に済ませること。もう1つは、このコースが令和8年度末(2027年3月末)までの期間限定の制度であることです。計画届の最終受付日などの細かな期限は本記事執筆時点で確認できていないため、使う場合は管轄の労働局に確認してください。なお2026年8月3日以降に出す計画届から、一部の申請区分で認定経営革新等支援機関による事前確認が必要になっています。法人向けAI研修での使い方はAI研修の補助金(法人向け)で扱っています。

1〜3ヶ月目:1週間の作業記録で、自動化の候補を洗い出す

研修と並行して、次の段階の材料を集めます。方法は単純で、対象部署の担当者に1週間、2回以上出てきた作業と、それにかかった時間を記録してもらうだけです。月に1回や四半期に1回の作業は週の記録に出てこないため、記録が終わったあとに別に書き足します。記録してほしいのは次の項目です。

  • 作業名(例:発注データと納品データの突合)
  • 頻度(毎日/毎週/毎月)と、1回あたりの時間
  • 使っているシステムやファイル
  • どこから情報を受け取り、どこに渡しているか(紙か、パソコン上か)
  • 毎回人が考えて決める場面がどのくらいあるか

1週間分を月に換算すると、1つの作業は月10〜15時間でも、似た性質の作業(同じシステムを使う、同じ種類のデータを扱う)を束ねると月40時間を超える、ということがあります。束ねる単位が決まると、次の仕分けと費用の試算がしやすくなります。洗い出しの手順と記録シートは自動化の候補を洗い出す方法で詳しく解説しています。

3ヶ月目|判断の分かれ目①:候補を3つに仕分ける

3ヶ月目の終わりに、洗い出した作業を次の3つに仕分けます。

仕分け

条件

次の半年でやること

自動化で済む

繰り返し発生し、入出力がパソコン上で完結し、データを取り出せる

3〜6ヶ月目に自動化する

仕組みを直す必要がある

データを取り出せない/台帳が分かれている/そもそも仕組みがない

6〜12ヶ月目のシステム化に回す

手を付けない

束ねても月20時間に届かない/紙と対面が前提

手順の見直しだけで済ませる

この時点で候補リストができていない、または作業時間が分からないままなら、次の段階に進まず、作業記録をやり直すのが正解です。時間が分からないまま自動化に投資すると、元が取れたかどうかを誰も判断できなくなります。

3〜6ヶ月|人がやっている繰り返し作業を自動化する

Power Automateで自動化したい作業を文章で伝え、トリガーと処理の流れを組み立てる画面

出典: Microsoft Power Automate 公式サイト

自動化すると、作業の流れがどう変わるか

受発注の突合を例にすると、変化は次のとおりです。

自動化の前

自動化の後

データの取り込み

取引先ごとに形式の違うファイルを、担当者がExcelに貼り付ける

自動で取り込み、形式をそろえる

照合

全件を目で見て照合する

自動で照合し、一致したものはそのまま確定する

担当者の仕事

全件の処理

数量や単価に差があった数件の確認だけ

担当者が休んだ日

作業が止まる

差のあった分が確認待ちで残り、それ以外は処理が進む

ポイントは、人が完全にいなくなるわけではないことです。人の仕事が「全件を処理する」から「機械が振り分けた例外を確認する」に変わります。前述のAI事業者ガイドラインが求める「人の判断を挟む」も、この形で満たせます。自動化を設計するときは、公開・外部への送信・価格の変更・削除といった取り返しのつきにくい操作を、人が確認して承認してから実行する形にしておくと安全です。

手段は、作業の量で選ぶ

  • 束ねても月20〜30時間程度の作業 → Windows 11に付属するPower Automate for desktop(個人のパソコンで人が操作しながら動かす範囲は無償)や、1人月2,248円(年払い・税別)のPower Automate Premiumなど、安価なツールから試すのが順当です
  • 束ねて月40時間を超える作業のまとまり → 外部に頼む選択肢が検討対象になります。業務のルールごと処理を任せる月額型の自動化サービス(AIエージェント型)を使うか、取り込み・照合・振り分けの仕組みを開発して自社で持つかのどちらかです

どちらが得かは、後述の試算で判断できます。データを既存システムから取り出せない場合は、どちらを選ぶにしても先に改修が必要です。

社内でAIを使って進められる部分と、外部に頼む部分

いまは生成AIに手順を聞きながら、Power Automateのフローや表計算のマクロ、簡単な取り込みのプログラムを社員が自分で作ることもできます。作業記録で候補が見えていれば、次の部分は社内で進められます。

  • 1業務・1担当者で完結する作業の自動化(ファイルの整形、定型メールの下書き、集計表の作成など)
  • 候補ごとの作業時間の集計と、費用の試算
  • 試しに手順やプログラムを作って、効果を確かめること

一方で、次の部分はAIに聞くだけでは決まらない、その会社に固有の問題です。ここが絡むと、外部に頼んだほうが早く、安全に進むことがあります。

  • データ:既存システムから必要なデータを取り出せるか、項目の意味や品質がそろっているか
  • 既存の環境と権限:本番のシステムにつなぐときの認証と、誰が何を見て変えてよいかの権限
  • 例外:月に数件しか起きない例外を、どう見つけて人に回すか
  • 正しさの確認:結果が合っていることを、何件・どの基準で確かめてから本番に切り替えるか(検収)
  • 変更の責任:相手側のシステムや業務のルールが変わったとき、誰が直すか

社員が作った自動化が1人のパソコンでしか動かない、作った人が異動すると誰も直せない、という状態になったら、仕組みとして作り直す時期です。

削減できる時間と金額の試算|月何時間の作業から元が取れるか

ツールや外部への依頼に投資するかどうかは、なくせる作業時間を人件費に換算して判断します。以下は仮定に基づく試算で、時給3,000円(社会保険料なども含めた会社負担の目安として置いた仮定)で計算します。

月の作業時間 × 時給3,000円 = 月の人件費

たとえば月次レポートの作成に担当者1名が毎月20時間かけているなら、20時間 × 3,000円 = 月6万円、年72万円です。これを、データの取り込みから集計までを自動で行う仕組みを既存システムの改修として作る場合(費用100万円と仮定。クラウドの利用料や保守費は含めない)と比べます。

なくせる作業時間(月)

人件費(月)

人件費(年)

100万円の改修を回収するまで

20時間

6万円

72万円

約17ヶ月(100万円÷6万円)

30時間

9万円

108万円

約11ヶ月(100万円÷9万円)

40時間

12万円

144万円

約8ヶ月(100万円÷12万円)

50時間

15万円

180万円

約7ヶ月(100万円÷15万円)

月額型の自動化サービスを使う場合は、月額 ÷ 時給3,000円が、毎月なくす必要のある作業時間の下限です。仮に月額10万円なら月約33時間、月額20万円なら月約67時間をなくして、ようやく月額と釣り合います。初期費用がかかるサービスなら、その分だけ回収は延びます。料金はサービスごとに違うため、見積もりの金額をこの式に入れて確かめてください。

この計算から、ロードマップ上の判断基準が2つ出てきます。

  1. 1つの業務が月20時間程度なら、単独では外部への投資に見合いにくい。 100万円の改修でも、回収に1年半近くかかります。似た作業を束ねて月40時間前後に届くかどうかが、3ヶ月目の仕分けの基準になります
  2. 1年目だけでは回収しない。 7〜9ヶ月目に改修して10ヶ月目から動かすと、1年目に浮く人件費は3ヶ月分です。月40時間をなくせる場合でも12万円×3ヶ月=36万円で、100万円の回収は2年目にかかります。稟議の資料にもそう書いておくほうが、半年後に「効果が出ていない」と言われずに済みます

自社の数字での計算方法はAI導入の投資対効果(ROI)の試算、月額型のAIエージェントで任せられる量の考え方はAIエージェントの月額10万円でどこまで任せられるかで解説しています。

自動化できる業務・できない業務の境界線

自動化は万能ではありません。ツールを使う場合も、外部に頼む場合も共通する境界線を先に示します。

自動化できる

自動化できない

毎日・毎週・毎月、繰り返し発生する

年に1〜2回しか起きない、毎回状況が違う

入力も出力もパソコン上で完結する

紙の原本確認・対面・電話が前提

判断のルールを言葉で説明できる

ベテランの勘に頼っていて説明できない

毎回人が考えて決める場面が全体の2割未満

毎回、例外の判断が発生する

必要なデータを既存のシステムから取り出せる

画面を目で見て書き写すしかない

最終的な確認や決裁は人が行う

最終判断そのものをAIに任せたい

右側に当てはまる業務は、ツールでも月額型のサービスでも、仕組みを開発しても、自動化の対象にはしにくい部分です。たとえば調剤薬局であれば、処方箋の原本確認や患者対応は紙と対面が前提のため、最初から切り分けます。

ただし、右側に当てはまる工程が1つあるからといって、業務全体を諦める必要はありません。業務を工程に分け、パソコン上で完結している工程だけを切り出して自動化することはできます。受発注の突合なら、完全に一致した取引だけを自動で確定し、差がある取引を人の確認リストに回します。例外の多い業務でも、この分け方なら成り立ちます。

もう1つ注意したいのが、右側の「画面を目で見て書き写すしかない」です。これは自動化では解決できず、先にシステムの側を直す必要があるという合図です。次の6〜12ヶ月目の話につながります。どこまでAIに任せられるかの細かい線引きはAIエージェントに任せられる業務の範囲にまとめています。

6〜12ヶ月|自動化では直らない仕組みをシステム化する

6ヶ月目|判断の分かれ目②:自動化しても残った問題を特定する

自動化を回し始めると、「機械に渡したのに楽にならない」「そもそも渡せなかった」作業が残ります。その原因が、作業ではなく仕組みの側にあることがあります。

残った問題の例

原因

必要なもの

必要なデータを取り出せず、画面から書き写している

システムにデータを受け渡す口がない

データを取り出せるようにする改修

部門ごとにExcel台帳が分かれ、同時に開けない・履歴が残らない

台帳が分かれている構造そのもの

台帳を1つにまとめるシステム化

効果がありそうだが、実際に効くか分からない

判断材料がない

範囲を絞った試作(PoC)

業務を回す仕組み自体がない

まだ存在しないシステム

本開発

調査会社のGartnerは、「AIに使える状態に整ったデータ」の裏付けがないAIプロジェクトの60%が、2026年までに放棄されると予測しています(2025年2月発表の予測値で、実測ではありません)。同社の調査では、データ管理の責任者の63%が、AI向けのデータ管理ができていない、またはできているか分からないと答えています。6ヶ月目以降に、データを取り出せるようにする工程を置くのはこのためです。

データを取り出せるようにする改修 → 自動化、の順番で進める

1年目の後半は、改修と自動化を順番に組み合わせる形が基本になります。

  1. データを取り出せるようにする改修(既存システムの改修。当社の場合は100万円〜、税別)
  2. 取り出せるようになったデータを使って自動化(安価なツール、月額型のサービス、または改修の中で仕組みとして作る)

改修の中で取り込み・照合・振り分けまで作る場合は、1回の発注にまとめられます。月額型のサービスを使う場合は、改修費にその利用料が加わります。既存のシステムから毎日、表計算ソフトで開ける形式のファイル(CSVファイル)でデータを書き出せる場合は改修が要らないので、自動化から始められます。

やってはいけないのは、改修の仕様が決まらないうちに、自動化を別に発注して並行で進めることです。改修側の仕様が固まらないと自動化側の設計ができず、両方が止まります。必ず順番に区切ってください。データの取り出し方は連携用の口がないシステムからデータを取り出す方法、改修の費用はシステム改修の費用で解説しています。

効果が不確かなものは、試作(PoC)を3ヶ月で区切る

「社内の資料をAIに読ませて、問い合わせに根拠付きで答えさせたい」のように、効くかどうかがやってみないと分からないものは、いきなり本開発をせず、範囲を絞った試作(PoC)から入ります。

期間は3ヶ月を目安に区切るのが実務的です。米MITの研究グループの報告(2025年7月)では、中堅企業のうち成果を出している層は、試験導入から本格導入までを平均90日で進めていました。一方、Gartnerは2025年末までに生成AIプロジェクトの少なくとも30%が試作の段階で放棄されると予測しています(2024年7月発表の予測値)。

試作を「やってみたけれど、どうするか決められない」で終わらせないコツは、着手の前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格か」を文書にしておくことです。合格ラインが先にあれば、拡大するかどうかをすぐに判断できます。試作の費用の内訳はAIのPoC費用の相場を参照してください。

本開発は、2年目にまたがる前提で予算を取る

仕組みを一から作る本開発は、何を作るかを決める要件定義、実装、テスト、移行と現場への教育を順に経るため、数ヶ月単位の期間がかかります。さらに、相談してから作業が始まるまでにも、概算の見積もり・稟議・契約の時間が必要です。1年目の後半に着手するなら、稼働は2年目になると見ておくのが安全です。

このため、1年目の終盤には2年目の予算を取る作業が入ります。予算の時期は後述の「補助金・助成金・予算の時期を1年目にどう組み込むか」で扱います。期間の内訳はAI開発の期間で詳しく解説しています。

自動化かシステム化か、5つの質問で決める

3ヶ月目と6ヶ月目の分かれ目で、自社の困りごとがどちらに当たるかを判断するための質問です。上から順に答えてください。

#

質問

答えがNOなら

1

その困りごとは、すでに人が毎月やっている作業ですか?

まだ存在しない仕組みの話 → システム化(受託開発)

2

その作業は、似た作業を束ねて月20時間以上ありますか?

投資に見合わない → 手順の見直しや安価なツールで済ませる

3

入力も出力も、パソコン上で完結しますか?

紙・対面が前提 → その工程は自動化の対象外。紙をなくす工程が先

4

毎回人が考えて決める例外の判断は、全体の2割未満ですか?

2割を超える → 標準的なものだけを切り出せるか確認。切り出せなければ自動化に向かない

5

必要なデータを、既存のシステムから取り出せますか?

取り出せない → 先に既存システムの改修(受託開発)、その後に自動化

5問すべてがYESなら自動化です。判断の結果を費用と合わせて並べると、次のようになります。

判断の結果

進め方

費用の入口(税別)

今ある繰り返し作業を、束ねて月40時間以上なくしたい

自動化(月額型のサービス、または仕組みを開発)

サービスの見積もり、または既存システムの改修100万円〜

月20時間前後の単発の作業

手順の見直し、安価な自動化ツール

0円〜月数千円

データが取り出せない

既存システムの改修 → 自動化

100万円〜(改修の中で自動化まで作る場合を含む。月額型のサービスを使う場合はその利用料が加わる)

効くかどうか分からないので試したい

試作(PoC)

300万円〜

新しい仕組みを作りたい

本開発

個別見積

判断がつかない場合は、費用の小さい側から確かめてください。 手順の見直しや安価なツール、すでに使っているクラウドサービス(SaaS)の標準機能や既製の連携で済むかを先に試し、それでは済まない理由(データが取り出せない、例外が多い、台帳が分かれている)が見えた時点で開発に切り替えれば、無駄が出にくくなります。

5つの質問の答えが「既存システムの改修」「試作(PoC)」「本開発」のどれかになった場合や、月40時間以上の作業を自動化する仕組みを作りたい場合は、当社の受託開発でご相談を受けています。初回相談は無料・30分(オンライン)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。今の業務の流れと困っている作業を伺い、依頼範囲の候補と費用の目安を相談メモでお返しします。

→ 今の作業から開発の進め方を相談する

5つの質問それぞれの詳しい判断基準は業務自動化と受託開発はどちらを選ぶべきかで解説しています。

実現する方法の比較|4つの手段の費用と得意・不得意

ロードマップの各段階で使う手段は、大きく4つです。当社以外のサービスも含めて並べます(公開価格。Power Automateは2026年10月、WinActorは2026年9月時点)。

① 手順の見直し(0円)

作業そのものをなくす、回数を減らす、入力の形式をそろえる、承認の段階を減らす。束ねても月20時間に届かない作業は、ここで終わらせるのが最も安上がりです。

② パソコン操作を記録して繰り返させるツール(RPA・ノーコード)

人がパソコンでやっている操作の手順を覚えさせ、機械に繰り返させる道具です。

ツール

価格

補足

Power Automate for desktop

無償

Windows 11に付属。個人のパソコンで人が操作しながら動かす範囲に限られ、作った手順を他の人と共有できない

Power Automate Premium

1ユーザー月2,248円(年払い・税別)

ユーザー単位で契約する有償版

Power Automate Process

1台月22,488円(年払い・税別)

人が操作しなくても自動で動かす用途

WinActor(NTTアドバンステクノロジ)

フル機能版 年1,098,680円(税込)/実行専用版 年300,080円(税込)

1台のパソコンに紐づくライセンス

ライセンス費用のほかに、手順を組む作業(外部に頼めば構築費)と、相手側の画面や手順が変わったときの修正がかかります。手順が完全に決まっている単純作業には強い一方、想定外の入力が来ると止まりやすいのが弱点です。維持費の実態はRPAの保守コストで扱っています。

③ AIエージェント型の自動化サービス

手順を記録させるのではなく、業務のルールを渡して処理そのものを任せる方式です。取引先ごとに形式の違うデータを取り込む、例外を振り分ける、文面を作るといった、毎回少しずつ違う作業に対応できるのが②との違いです。一方で、判断のルールを言葉にできない業務には使えません。月額制で提供されるサービスでは、料金に含まれる処理量の上限、対象外の業務、人が承認する操作の範囲、解約したときに設定や手順書が手元に残るかを、契約前に確認してください。②との使い分けはノーコードツールとAIエージェントの違いにまとめています。

④ システムを作る・直す(受託開発)

仕組みそのものを作る、または既存のシステムを直す方式です。データの取り込み・照合・例外の振り分けといった自動化の処理も、仕組みとして作って自社で持てます。費用は月額の利用料ではなく、作る費用と、クラウドの利用料・保守費という形になります。当社の場合、既存システムの改修100万円〜、試作(PoC)300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)で、クラウドや外部サービスの利用料は別途かかります。作る前に既製品で済まないかを確かめる方法は既製のクラウドサービス(SaaS)と独自開発の判断で扱っています。

4つの手段の比較

① 手順の見直し

② RPA・ノーコード

③ AIエージェント型

④ 受託開発

初期費用

0円

無償〜(別途、手順を組む手間や構築費)

サービスごとに異なる(見積もりで確認)

100万円〜(改修)/300万円〜(PoC)

継続費用

0円

無償〜1台月2万円台(Power Automate)/年約110万円(WinActorフル機能版・税込)

月額制など、サービスごとに異なる

クラウド利用料・保守費など

立ち上がり

すぐ

組む手順の数による

サービスと対象業務による

作る範囲による(改修は本開発より短い)

毎回少し違う作業

—

苦手

得意

作り方次第

使いどころ

束ねても月20時間未満

手順が完全に決まっている単純作業

束ねて月40時間以上の繰り返し作業

仕組みがない・データが取り出せない

ロードマップ上の時期

3ヶ月目の仕分けの直後

3〜6ヶ月

3〜6ヶ月

6〜12ヶ月

①から④に進むほど、費用も、できることの幅も大きくなります。自社の困りごとがどの段の話かを見誤らないことが、1年目の予算を無駄にしないための最大のポイントです。

1年目にかかる費用の目安|時期別の積み上げと規模別の総額

30名規模の会社の場合(3ヶ月ごとの積み上げ)

冒頭の「1年目 約220万円〜」の内訳です(仮定に基づく試算)。前提は、生成AIの法人プランを1人月3,000円前後で30名分、4ヶ月目から作業の多い5名がPower Automate Premium(1人月2,248円、年払い・税別)を年契約して自動化を進め、7〜9ヶ月目にデータを取り出すための既存システムの改修を1件(100万円〜)行う、としています。月額型の自動化サービスは使わない前提です。

時期

主な支出

金額の目安(税別)

1〜3ヶ月目

法人プラン3ヶ月分

約27万円

4〜6ヶ月目

法人プラン3ヶ月分+Power Automate Premium 5名の年契約(2,248円×5名×12ヶ月=約13.5万円)

約40.5万円

7〜9ヶ月目

法人プラン3ヶ月分+既存システムの改修(100万円〜)

約127万円〜

10〜12ヶ月目

法人プラン3ヶ月分

約27万円

1年目の合計

約221.5万円〜(約220万円〜)

※研修費は内容によって大きく変わるため含めていません(中小企業は助成金で経費の75%が補助対象、上限あり)。試作(PoC)に進む場合は+300万円〜、本開発は個別見積で、2年目の予算として計上する前提にしておくと安全です。

規模別の1年目の総額

規模で変わるのは、法人プランの人数と、自動化ツールを使う人数です。同じ前提で規模別に並べると次のとおりです(仮定に基づく試算)。

規模

法人プラン(年)

自動化ツール(年契約)

既存システムの改修

1年目の総額(税別)

10名程度

約36万円

3名×2,248円×12ヶ月=約8万円

100万円〜

約144万円〜

30名程度

約108万円

5名×2,248円×12ヶ月=約13.5万円

100万円〜

約220万円〜

100名程度

約360万円

10名×2,248円×12ヶ月=約27万円

100万円〜

約487万円〜

この表は、データを取り出すための改修が1件必要になった場合の金額です。既存システムからCSVでデータを書き出せて改修が要らなければ、改修の欄は0円になります。逆に、束ねて月40時間以上の作業を月額型の自動化サービスに任せる場合はその利用料が、効果を確かめる試作(PoC)に進む場合は300万円〜が加わります。10名程度の会社では、洗い出しの結果として外部に頼むほどの対象が見つからないこともあります。その場合、1年目にかかるのは法人プランの約36万円と研修費、ツールの費用だけです。

当社に開発を頼む場合の価格

  • 受託開発:既存システムの改修100万円〜、試作(PoC)300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)。クラウド利用料・外部サービスの利用料・ライセンス費用は別途です。PoCの300万円〜は効果を確かめる試作の開始価格で、本番のシステム一式の価格ではありません。初回相談は無料・30分で、要件が固まっていない段階でも構いません。→ 受託開発の対応範囲と進め方

自動化の手段ごとの費用をさらに比べたい場合はAIエージェント導入の費用を、2年目以降にかかる保守費はシステムの保守運用費の相場をあわせてご覧ください。

補助金・助成金・予算の時期を1年目にどう組み込むか

デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)のロゴ

出典: デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト

デジタル化・AI導入補助金:交付決定の前に契約しない

旧IT導入補助金にあたる「デジタル化・AI導入補助金2026」は、2026年10月11日時点で公式サイトのスケジュールに次の日程が載っています。

申請枠

直近の締切

交付決定日(予定)

事業の実施期間(予定)

通常枠/インボイス枠/セキュリティ対策推進枠/複数者連携デジタル化・AI導入枠

2026年10月30日(金)17:00

2026年12月10日(木)

交付決定〜2027年5月31日(月)17:00

10月30日より後の締切日は、2026年10月11日時点で未発表です(公式サイトは確定した募集回だけを公表する運用です)。10月30日の締切に、これから相談を始めて間に合わせるのは日程に余裕がありません。1年目のロードマップには、次の募集回を前提に、交付決定の後に契約する順番で組み込むのが確実です。

押さえておくべき決まりは4つあります。

  1. 交付決定の前に契約・発注・支払いをした経費は、補助の対象外です
  2. 通常枠の補助額は、5万円〜150万円未満(補助率1/2以内)と、150万〜450万円以下(対象となる業務の工程が4つ以上)の2段階です
  3. 通常枠の採択率は42.2%でした(申請1,913者のうち807者が採択。2026年9月3日発表の締切回の結果。ミラサポplus)。申請しても半分以上は通らない前提で資金計画を立ててください
  4. 補助金は後払いです。事務局の事業実施・実績報告マニュアルで定められているのは「補助金額の確定から約1か月程度で交付」という点だけで、それまでは全額を自社で立て替えます

また、補助の対象は、IT導入支援事業者が事務局に事前登録したITツールに限られます。使いたいツールやサービスが登録されているかは、申請の準備に入る前に確認してください。

1年目の進め方で気をつけたいのは、補助金の結果を待ってから動き出すと、前半の半年が空くことです。0〜3ヶ月目の土台づくり(法人プラン、利用ルール、作業記録)は費用が小さく、補助金がなくても始められます。先に作業記録で「何に使うか」と「月何時間減るか」を固めておけば、補助金の申請書も、社内の稟議も書きやすくなります。締切と入金の詳細は補助金の締切スケジュールと補助金が入金されるまでの資金繰りを参照してください。

予算:システム化の費用は、どの年度の予算になるか

見落とされやすいのが、1年目の後半(システム化)の費用が、今期ではなく来期の予算になる場合があることです。3月決算の会社の標準的な流れでは、1月に予算編成の方針が示され、1月下旬〜2月上旬に部門ごとの予算を調整し、3月の取締役会で年度予算が決まります(清文社「予算編成手続マップ【3月決算】」)。

3月決算の会社が2026年10月にロードマップを始めた場合、制度と予算の動きは次のように重なります。

時期(ロードマップ)

ロードマップでやること

制度・予算の動き

2026年10〜12月(1〜3ヶ月目)

法人プラン・利用ルール・研修・作業記録

研修の助成金は開始1ヶ月前までに計画届/来期予算に向けて、自動化とシステム化の概算(費用の桁)を取る

2027年1〜3月(4〜6ヶ月目)

自動化の契約・導入

1月に予算編成の方針、3月に年度予算の決定/3月末でリスキリング支援コースの期間が終了

2027年4〜9月(7〜12ヶ月目)

既存システムの改修・試作(PoC)・本開発の準備

新年度予算で執行。補助金を使う場合は交付決定の後に契約

この例では、4〜6ヶ月目の自動化ツールの費用は今期の予算で、7〜12ヶ月目の既存システムの改修・試作(PoC)と、月額型のサービスを使う場合のその利用料は来期の予算です。つまり、1〜3ヶ月目のうちに概算を取って来期予算に載せておかないと、後半の計画がまるごと1年ずれることになります。決算月が違う会社も、予算編成の方針が出る時期から同じように逆算してください。稟議に通す資料の作り方は生成AIの稟議資料の作り方で扱っています。

1年目にやらなくていいこと

ロードマップで「何をするか」と同じくらい大事なのが、「何をしないか」です。1年目に手を出すと費用と時間を失いやすいものを4つ挙げます。

1. 全社一斉のシステム刷新

困りごとが1箇所なのに、基幹システムの入れ替えまで含めて計画すると、半年単位の案件になりがちです。まず困りごとが起きている1箇所(毎日の転記、データの取り出しなど)に対象を絞り、既存のシステムを残したまま直せないかを確かめてください。全面的な入れ替えは、その結果を見てから2年目以降に判断しても遅くありません。

2. 候補を絞らないままの試作(PoC)

候補を全部対象にすると、費用も期間も膨らんで稟議にかけられなくなります。試作は1業務に絞り、合格ラインを先に決めてから始めてください。

3. 使い道が決まる前の業務用ツールの先行契約

0〜1ヶ月目の法人プラン(1人月3,000円前後)は、全員が試すための道具なので先に契約して構いません。問題になるのは、作業記録より先に、特定の業務向けの高額なツールを契約することです。何の作業が月何時間減るのかを説明できないまま契約すると、台帳が分かれているといった構造の問題が残ったまま、ツールの費用だけがかかり続けます。

4. 自動化とシステム改修の同時発注

前述のとおり、改修側の仕様が決まらないと自動化側の設計ができず、両方が止まります。改修が先、自動化が後です。同じ会社に改修と自動化をまとめて頼む場合も、改修の範囲を先に決めてから自動化の部分を設計します。

1年目にやってしまいがちな失敗の類型はAI開発でよくある失敗にもまとめています。

当社の開発実績|ロードマップのどの段階の話か

当社が公開している受託開発の実績のうち、このロードマップに関係する2件を、どの段階の話かという切り口で紹介します。社名・金額・効果の数値は公開していないため、公開している範囲だけを書きます。

実績

業種

ロードマップ上の段階

作ったもの

①

通信事業

6〜12ヶ月目(データを取り込み、人の確認に回す仕組み)

数万件の請求情報の取込・集計・確認画面

②

薬局

6〜12ヶ月目(記録を1つにまとめるシステム化)

複数店舗・数千人分の記録管理、権限、確認工程

実績① 通信事業:数万件の請求情報を取り込み、集計し、確認する仕組み

数万件規模の請求情報を取り込んで集計し、担当者が確認するための画面を開発しました。件数の多いデータの取り込みと集計を処理として作り、人は確認の画面で確かめる形にした例で、このロードマップでは6〜12ヶ月目のシステム化に当たります。人の仕事を「全件を処理する」から「確認する」に寄せる考え方は、3〜6ヶ月目の自動化と同じです。処理の速さや削減効果の数値は公開していません。

実績② 薬局:複数店舗・数千人分の記録を、権限と確認工程つきで管理する仕組み

複数の店舗にまたがる数千人分の記録を管理するシステムを開発しました。誰がどの記録を見て変えられるかの権限と、記録を確定する前の確認工程を持たせています。6ヶ月目の分かれ目②で挙げた「台帳が分かれている」「履歴が残らない」といった仕組みの問題は、一般に、記録を1つにまとめ、権限と確認工程を設計する形で解決します。

2件とも、ツールの設定ではなく、データの持ち方・権限・確認の手順を含めて仕組みとして作った例です。自社の困りごとが6ヶ月目の分かれ目②に当たりそうなら、判断の参考にしてください。

よくある質問

Q1. ロードマップは社内だけで作れますか? 外部に頼むのはどの段階からですか?

0〜3ヶ月目(法人プランの契約、利用ルール、作業記録)は、社内だけで十分に進められます。外部の目が役立つのは、3ヶ月目の仕分けで「自動化で済むか、作る必要があるか」を判断するときと、既存システムからデータを取り出せるかを確かめるときです。中小機構の調査(2026年3月)では、「適切な依頼先や製品を選ぶための情報が十分にある」に当てはまらないと答えた企業が79.8%でした。また米MITの研究グループの報告では、外部のパートナーと組んだ取り組みは約67%が本格導入に進んだのに対し、社内だけの取り組みは約33%でした(報告書自身が、これは相関であって因果関係ではないと明記しています)。内製と外注の線引きは生成AIの内製と外注、相談を始める時期はAI導入の相談タイミングで扱っています。

Q2. 1年目の予算が100万円しかない場合、何から始めるべきですか?

30名全員に法人プランを入れるだけで年約110万円かかるため、範囲を絞ります。たとえば、法人プランは作業記録をとる部署の10名に絞る(年約36万円)、自動化は月2,248円のPower Automate Premiumを5名で試す(年約13万円)、という組み方なら約50万円に収まります。すでにGoogle WorkspaceのBusiness Standard以上を使っているなら、Geminiは追加費用なしで試せます。データを取り出すための改修(100万円〜)や月額型の自動化サービスは2年目の予算に回し、1年目は作業記録で「月何時間減るか」の根拠をつくることに集中してください。その数字があれば、2年目の予算は通しやすくなります。

Q3. 従業員10名程度の会社でも、この順番で進める意味はありますか?

あります。ただし、真ん中の自動化の段階が小さくなることが多いです。IPAの「DX動向2026」でも、従業員101人以下の企業のAI導入率は16.6%にとどまっており、規模の小さい会社ほど「何に使うか」が見つからないまま止まりやすい傾向があります。10名規模では束ねても月40時間に届かないことがあり、その場合は3〜6ヶ月目を手順の見直しと安価なツールで済ませ、6ヶ月目以降に「データを取り出せない」「台帳が分かれている」といった仕組みの問題だけを既存システムの改修(100万円〜)で直す、という進め方になります。順番は同じで、自動化の段階にかける金額が小さくなるイメージです。

Q4. すでに個人で生成AIを使っている社員が多い場合、禁止すべきですか?

一律に禁止するより、法人プランに移ってもらうほうが現実的です。すでに使い慣れている社員は、1年目の推進役の候補でもあります。進め方としては、①法人プランを用意し、②移行の期限を決めて個人アカウントでの業務利用をやめてもらい、③その社員たちに「何の作業に使っていたか」を聞き取る、の順です。③で出てきた作業は、そのまま1〜3ヶ月目の作業記録の出発点になります。個人アカウントに顧客情報などを入力していなかったかの確認も、このタイミングで行ってください。

Q5. 自動化とシステム開発は、同じ会社に頼むべきですか?

両方を扱える会社に相談する利点は、「これは作らなくていい」「これは自動化では直らない」と言ってもらえることです。開発だけを扱う会社には開発の提案が、ツールだけを扱う会社にはツールの提案が出てきやすい構造があります。ただし、同じ会社に頼む場合でも発注は必ず順番に区切ってください。また、1社に依存しすぎないよう、業務の流れの図と判断ルールの一覧を成果物に含めてもらうと、将来ほかの会社に引き継ぐこともできます。依頼先の選び方はAI開発会社の選び方で解説しています。

Q6. 1年たっても成果が出なかった場合、どこを見直せばいいですか?

見直す場所は3つです。1つ目は比べる基準があるか。作業記録で導入前の時間を測っていないと、効果があっても示せません。商工中金の調査で導入後の課題に「効果が測れず成果が見えにくい」が挙がっていますが、導入前の時間を測っていないことも原因の1つとして考えられます。2つ目は対象を束ねていたか。月20時間の業務を1つずつ自動化していると、費用が効果を上回り続けます。3つ目は業務の手順に組み込まれているか。自動化の結果を人が毎回全件確認し直していたり、担当者が以前のやり方に戻っていたりすると、時間は減りません。定着しない原因は業務自動化が定着しない理由で詳しく扱っています。

Q7. 2年目以降は、何をすることになりますか?

主に3つです。1つ目は、1年目の後半に着手した本開発の稼働と、その保守です。2つ目は、自動化の対象の拡大です。対象業務が増えると、ツールの利用者数や月額型サービスの処理量、開発した仕組みの改修範囲も増えるため、追加の費用を削減できた時間と比べて判断します。3つ目は、社内の資料やデータをAIに参照させる仕組みづくりです。情報通信白書で日本が他国に大きく遅れていたのがこの部分で、マッキンゼーの2025年の調査でも、AIで大きな成果を上げている企業は業務の流れそのものを作り直している点が共通していると報告されています。1年目に作業と仕組みを整理しておくことが、2年目にこの段階へ進むための前提になります。

1年目のどこでつまずいているかが分かったら、ご相談ください

3ヶ月目・6ヶ月目の分かれ目で「データが取り出せない」「台帳が分かれている」「月40時間以上の作業を自動化する仕組みを作りたい」「効くかどうかを試作で確かめたい」のどれかに当たったら、当社の受託開発でご相談を受けています。

受託開発で対応できること

  • 業務を自動化する仕組みの開発(データの取り込み・照合・集計・例外の振り分け・確認画面)
  • 既存システムの改修と連携(CSV・API、SaaSの公開APIやWebhookなど、つなぎ方は一緒に決めます。言語やフレームワークを問わず対応できます)
  • 他社が作ったシステムの調査・引継ぎ、AIで作った試作の本番化
  • 効果を確かめる試作(PoC)と、その後の本開発

価格は既存システムの改修100万円〜、試作(PoC)300万円〜、本開発は個別見積です(税別。クラウドや外部APIの利用料は別)。公開している実績は、通信事業の請求情報の取込・集計・確認画面と、薬局の複数店舗の記録管理の2件です。

初回相談(無料・30分)で話すこと

初回相談は無料・30分(オンライン、Google Meet)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。今の業務の流れ、使っているシステムやツール、困っている操作を伺い、自社でAIを使って進める部分と、任せる部分を一緒に切り分けます。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

事前に共有いただく資料には、秘密情報・本番の認証情報・実際の顧客データを含めないでください。手順の見直しや安価なツールで済むと分かった場合は、そうお伝えします。

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この記事の著者

AI革命

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編集部

AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。

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