ビジネス活用2026年9月更新

AI導入ロードマップ|1年目にやること・費用・自動化からシステム化までの順番【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/21
AI導入ロードマップ|1年目にやること・費用・自動化からシステム化までの順番【2026年9月最新】

この記事のポイント

AI導入のロードマップを1年目の月単位で整理。0〜3ヶ月で土台づくり、3〜6ヶ月で繰り返し作業の自動化、6〜12ヶ月で仕組みのシステム化へ。30名規模なら1年目の総額は約360万円〜。判断の分かれ目と補助金・予算の時期まで数字で解説します。

AI導入の1年目は、「全員が安全に使える土台づくり(0〜3ヶ月)→ 人がやっている繰り返し作業の自動化(3〜6ヶ月)→ 自動化では直らない仕組みのシステム化(6〜12ヶ月)」の順で進めます。 費用の目安は従業員30名規模で1年目の総額 約360万円〜(生成AIの法人プラン 年約110万円+自動化 初期100万円・月額20万円×6ヶ月分+データを取り出すための小規模改修30万円〜、すべて税別)で、効果を確かめる試作(PoC)に進む場合は300万円〜が加わります。

この記事では、各段階で何をするか、3ヶ月目と6ヶ月目に何を見て次の手段を選ぶか、いくら出ていくか、補助金と来期予算の時期をどう組み込むかを、月単位でまとめます。「社長からAIを入れろと言われたが、何をどの順番でやればいいのか分からない」という事業責任者・業務部門長の方に向けた内容です。

AI導入の1年目、多くの会社はどこで止まっているか

生成AIによる業務変革への組織的な取組状況を国別・企業規模別に比べたグラフ。日本は「組織的な取り組みはない」が27.0%、中小企業では45.6%

出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書」図表I-2-1-3

最初に、いま日本の会社で実際に起きていることを確認しておきます。

総務省の「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月公表、2025年度の企業調査)によると、自社の何らかの業務で生成AIを使っている日本企業は86.4%にのぼります。一方で、業務のやり方を変えるための「組織的な取組はない」と答えた企業が27.0%あり、米国・ドイツ・中国と比べて顕著に高く、特に中小企業で高いという結果でした。

使われ方にも偏りがあります。最も多いのは「議事録・メール作成の補助」で約7割。一方、他の3か国では「社内のデータをAIに学習させたり、参照できるデータベースを作ったりしている」企業が5割を超え、日本を大きく上回っています。つまり日本の現状は、AIを使ってはいるが、業務の仕組みには組み込まれていない状態です。

たとえば、次のような状況に心当たりはないでしょうか。

  • 社員が個人の判断で生成AIを使っているが、会社としてのルールも契約もない
  • 法人プランを入れてみたが、使われているのは議事録の要約とメールの下書きくらい
  • 「AIで何か効率化しろ」と指示が出たが、どの業務から手を付けるか決まらない
  • 展示会で見たツールを契約しかけているが、それで何の作業が減るのかを誰も説明できない

商工中金の調査(2026年1月実施)でも、「会社としての導入はなく、使うかどうかは個人の判断に任せている」が64.9%で最多でした。同じ調査からは、つまずく理由が段階ごとに変わることも読み取れます。導入前は「具体的な活用場面が分からない」(35.6%)、検討段階では「推進する人材がいない」(32.0%)、導入後は「社内のルールや方針の整備が追いつかない」(25.1%)、「効果が測れず成果が見えにくい」(21.3%)です。

課題が時期によって入れ替わる以上、1年目の計画も時期で区切り、区切りごとに何を確かめるかを決めておくのが確実です。以下のロードマップはその考え方で組んでいます。

AI導入ロードマップの全体像|1年目は3段階と2つの判断の分かれ目

1年目の流れを1枚の表にまとめると次のとおりです。費用はすべて税別、期間は当社の事例と観測値にもとづく目安です。

時期

やること

手に入るもの

費用の目安(税別)

0〜1ヶ月

責任者と目標を決める/利用ルールを置く/法人プランを契約する

情報漏えいの入口がふさがり、全員が同じ道具で試せる状態

法人プラン 1人月3,000円前後(30名で月9万円前後)

1〜3ヶ月

研修/1週間の作業記録で繰り返し作業を洗い出す

自動化の候補リストと、それぞれに月何時間かかっているか

研修費(中小企業は助成金で経費の75%を補助、上限あり)

3ヶ月目

判断の分かれ目①:候補を「自動化で済む/仕組みを直す必要がある/手を付けない」に仕分ける

次の半年の投資先

社内作業のみ(外部への初回相談は無料のことが多い)

3〜6ヶ月

束ねて月40時間を超える繰り返し作業を自動化する

担当者の仕事が「全件の処理」から「例外の確認」に変わる

AIエージェント型 初期100万円+月額10万〜20万円/安価なツール 月数千円

6ヶ月目

判断の分かれ目②:自動化しても残った問題(データが取り出せない、台帳が分かれている等)を特定する

「作る必要があるもの」のリスト

6〜12ヶ月

データを取り出せるようにする小規模改修/効果が不確かなものは3ヶ月の試作(PoC)/本開発を来期予算に載せる

仕組みの問題の解消、または本開発に進むかの判断材料

小規模改修30万円〜/PoC300万円〜

9〜12ヶ月

2年目の予算化と、補助金の次の公募に合わせた計画

2年目の計画と予算

なぜ「自動化 → システム化」の順番なのか

よく見かけるAI導入の計画は、「一部の部署で試す → 部門に広げる → 全社に展開する」という使う人の広がりで段階を区切っています。この記事では段階を、人がやっている作業をなくす(自動化)と、仕組みそのものを作り直す(システム化)で区切っています。理由は3つです。

  1. 自動化のほうが安く、早い。 今ある作業を機械に渡すだけなら、導入は1〜2ヶ月で済みます。仕組みを作り直すと、期間も費用も一段上がります
  2. 自動化を試すと、自動化では直らない問題がはっきりする。 「転記を自動化したい」という相談が、実は台帳が部門ごとに分かれている構造の問題だった、ということはよくあります(後述の事例③)。先に「作る」判断をすると、この切り分けができないまま大きな投資をすることになります
  3. 国の整理とも同じ順番。 経済産業省の「DXレポート2」は、デジタル化を「紙などアナログな情報をデジタルにする段階」「個別の業務の手順をデジタルにする段階」「組織をまたいで業務や事業のやり方そのものを変える段階」の3つに分けています。この記事の3段階は、その順番を中堅・中小企業の1年に当てはめたものです

0〜3ヶ月|全員が安全に使える土台をつくる

生成AIによる業務変革の戦略や方針の状況を示すグラフ。日本の中小企業では「経営幹部から各部署に対して実施事項や達成目標が提示されている」が32.9%で最多

出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書」図表I-2-1-4

0〜1ヶ月目:責任者と目標を、経営者が決める

最初の1ヶ月でやることは、道具選びより先に、誰が責任を持ち、1年後に何が減っていればよいかを決めることです。情報通信白書によると、中小企業では「経営幹部から各部署に実施事項や達成目標が提示されている」という取り組み方が最も多く、白書自身もトップダウンの関与が鍵だと述べています。

目標は「AIを活用する」ではなく、「月◯時間かかっている◯◯の作業を、1年後に◯時間にする」のように作業時間で置くのが実務的です。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2026」では、AIを導入した効果として「業務の効率化・迅速化」を挙げた企業が91.6%だったのに対し、「売上や利益が向上」は3.9%にとどまりました。1年目の目標は、成果が出やすい作業時間の削減に置いてください。

0〜1ヶ月目:法人プランを契約して、個人任せの利用をやめる

個人のアカウントで使われている状態は、何が入力されているかを会社が把握できない状態です。まず法人向けのプランを1つ決めて、全員が同じ道具を使えるようにします。主な選択肢の価格は次のとおりです(2026年9月時点)。

サービス

価格(1ユーザーあたり月額)

補足

Microsoft 365 Copilot Business

3,148円(年契約・税別)

既存のMicrosoft 365に追加する形。2026年12月31日までは、対象プランの既存顧客が年契約すると初年度2,698円

ChatGPT Business

年払いで20ドル(円表示では3,000円台)

最低2席から。ドル建てのため為替で実際の負担が変わる

Claude Team

年払いで20ドル

2〜150名で契約できる。入力した内容は既定でAIの学習に使われない

Google Workspace

Business Standard 1,600円(通常価格・税別)

Business Standard以上なら、ドキュメントやスプレッドシートの中でGeminiを使える

30名で計算すると、1人月3,000円前後のプランで月9万円前後、年約110万円です。すでにGoogle WorkspaceのBusiness Standard以上を契約している会社なら、追加の費用なしでGeminiを試すところから始められます。

選ぶときは、機能の細かな差より普段使っている業務ソフトとの相性を優先すると定着が早くなります。Microsoft 365中心ならCopilot、Google Workspace中心ならGemini、という選び方です。料金の詳細はChatGPTの料金Claudeの料金で解説しています。

医療・薬局など、データを国内で処理することが求められる業種は注意が必要です。たとえばMicrosoft 365 Copilotの日本国内でのAI処理は、Microsoftの発表では2028年の予定とされています。契約前に、入力したデータがどこで処理され、学習に使われるかどうかを必ず確認してください。詳しくは生成AIを社内導入するときのセキュリティ設計規制業種のAI導入にまとめています。

0〜1ヶ月目:利用ルールは、公開されているひな形から作る

社内ルールを一から書く必要はありません。日本ディープラーニング協会(JDLA)が「生成AIの利用ガイドライン」のひな形を無償で公開しています(第1.1版、2023年10月)。条文の形になっているので、自社の事情に合わせて削ったり足したりするのが早道です。

ただし、このひな形は2023年に作られたものです。その後に広がった、AIが自分で判断しながら作業を進める仕組み(AIエージェント)を3〜6ヶ月目に使うなら、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」第1.2版(2026年3月公表)で補ってください。第1.2版はAIエージェントの定義を新たに設け、AIに与える権限を適切に絞ることと、人の判断を継続的に挟むことを求めています。

1〜3ヶ月目:研修は、助成金の期限に合わせて組む

社員研修には、厚生労働省の人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」が使えます。社内のデジタル化に関わる知識・技能の研修が対象で、主な条件は次のとおりです。

項目

中小企業の場合

研修費用の助成

経費の75%(大企業は60%)

研修中の賃金の助成

1人1時間あたり1,000円(大企業は500円)

助成の上限(1人1研修あたり)

10〜100時間未満の研修で30万円/eラーニング・通信制は15万円

対象になる研修

通常の業務から離れて受ける研修で、実際の研修時間が10時間以上(eラーニングは標準学習時間10時間以上など)

対象外

既存のアプリやシステムの操作方法を覚えるだけの研修、コンサルタントによる指導

手続き

研修開始日の6ヶ月前から1ヶ月前までに、計画届を労働局に提出

時期の制約が2つあります。1つは、計画届の提出が研修開始の1ヶ月前までなので、研修を始めたい月から逆算して手続きを先に済ませること。もう1つは、このコースが令和8年度末(2027年3月末)までの期間限定の制度であることです。計画届の最終受付日などの細かな期限は本記事執筆時点で確認できていないため、使う場合は管轄の労働局に確認してください。なお2026年8月3日以降に出す計画届から、一部の申請区分で認定経営革新等支援機関による事前確認が必要になっています。法人向けAI研修での使い方はAI研修の補助金(法人向け)で扱っています。

1〜3ヶ月目:1週間の作業記録で、自動化の候補を洗い出す

研修と並行して、次の段階の材料を集めます。方法は単純で、対象部署の担当者に1週間、2回以上出てきた作業と、それにかかった時間を記録してもらうだけです。月に1回や四半期に1回の作業は週の記録に出てこないため、記録が終わったあとに別に書き足します。記録してほしいのは次の項目です。

  • 作業名(例:発注データと納品データの突合)
  • 頻度(毎日/毎週/毎月)と、1回あたりの時間
  • 使っているシステムやファイル
  • どこから情報を受け取り、どこに渡しているか(紙か、パソコン上か)
  • 毎回人が考えて決める場面がどのくらいあるか

1週間分を月に換算すると、1つの作業は月10〜15時間でも、似た性質の作業(同じシステムを使う、同じ種類のデータを扱う)を束ねると月40時間を超える、ということがよくあります。当社の調剤薬局のケースでも、単体では1業務あたり月10〜15時間だった作業が、束ねると月40時間規模になりました。洗い出しの手順と記録シートは自動化の候補を洗い出す方法で詳しく解説しています。

3ヶ月目|判断の分かれ目①:候補を3つに仕分ける

3ヶ月目の終わりに、洗い出した作業を次の3つに仕分けます。

仕分け

条件

次の半年でやること

自動化で済む

繰り返し発生し、入出力がパソコン上で完結し、データを取り出せる

3〜6ヶ月目に自動化する

仕組みを直す必要がある

データを取り出せない/台帳が分かれている/そもそも仕組みがない

6〜12ヶ月目のシステム化に回す

手を付けない

束ねても月20時間に届かない/紙と対面が前提

手順の見直しだけで済ませる

この時点で候補リストができていない、または作業時間が分からないままなら、次の段階に進まず、作業記録をやり直すのが正解です。時間が分からないまま自動化に投資すると、元が取れたかどうかを誰も判断できなくなります。

3〜6ヶ月|人がやっている繰り返し作業を自動化する

Power Automateで自動化したい作業を文章で伝え、トリガーと処理の流れを組み立てる画面

出典: Microsoft Power Automate 公式サイト

自動化すると、作業の流れがどう変わるか

受発注の突合を例にすると、変化は次のとおりです。

自動化の前

自動化の後

データの取り込み

取引先ごとに形式の違うファイルを、担当者がExcelに貼り付ける

自動で取り込み、形式をそろえる

照合

全件を目で見て照合する

自動で照合し、一致したものはそのまま確定する

担当者の仕事

全件の処理

数量や単価に差があった数件の確認だけ

担当者が休んだ日

作業が止まる

差のあった分が確認待ちで残り、それ以外は処理が進む

ポイントは、人が完全にいなくなるわけではないことです。人の仕事が「全件を処理する」から「機械が振り分けた例外を確認する」に変わります。前述のAI事業者ガイドラインが求める「人の判断を挟む」も、この形で満たせます。当社のシゴハヤエージェントでも、公開・外部への送信・価格の変更・削除といった重要な操作は、人が確認して承認してから実行する設計にしています。

手段は、作業の量で選ぶ

  • 束ねても月20〜30時間程度の作業 → Windows 11に付属するPower Automate for desktop(個人のパソコンで人が操作しながら動かす範囲は無償)や、1人月2,248円(税別)のPower Automate Premiumなど、安価なツールで十分なことが多いです
  • 束ねて月40時間を超える作業のまとまり → 業務のルールごとAIに任せる、AIエージェント型の自動化サービスが検討対象になります

どちらが得かは、次の試算で判断できます。

削減できる時間と金額の試算|月何時間の作業から元が取れるか

自動化に投資するかどうかは、なくせる作業時間を人件費に換算して判断します。ここでは時給3,000円(社会保険料なども含めた会社負担の目安)で計算します。

月の作業時間 × 時給3,000円 = 月の人件費

たとえば月次レポートの作成に担当者1名が毎月20時間かけているなら、20時間 × 3,000円 = 月6万円、年72万円です。これを、AIエージェント型の自動化(初期100万円+月額10万円、従業員10名程度の規模、税別)と比べます。

なくせる作業時間(月)

人件費(月)

人件費(年)

自動化の費用との関係

20時間

6万円

72万円

月額10万円を下回る。単独では回収できない

33時間

約10万円

約119万円

月額とほぼ同じ。初期費用は回収できない

40時間

12万円

144万円

月額を引いて年24万円が浮く。初期費用の回収は4年前後

50時間

15万円

180万円

月額を引いて年60万円が浮く。初期費用の回収は1年8ヶ月ほど

3年間で見ると、初期100万円+月額10万円×36ヶ月=460万円です。これを時給3,000円で割り戻すと、月42.6時間分の作業をなくせれば3年で元が取れる計算になります。従業員30名程度の規模で月額20万円の場合は3年総額820万円で、釣り合うのはおおむね月76時間です。

この計算から、ロードマップ上の判断基準が2つ出てきます。

  1. 1つの業務が月20時間程度なら、単独では自動化サービスに見合わない。 似た作業を束ねて月40〜50時間に届くかどうかが、3ヶ月目の仕分けの基準になります
  2. 1年目だけでは回収しない。 月50時間をなくせる場合でも、1年目に稼働するのが6ヶ月分だとすると、払うのは初期100万円+月額10万円×6ヶ月=160万円、浮く人件費は15万円×6ヶ月=90万円です。回収は2年目にかかる前提で、稟議の資料にもそう書いておくほうが、半年後に「効果が出ていない」と言われずに済みます

小規模改修でも考え方は同じです。毎日の転記に月20時間(年72万円)かかっていて、それを30万円の改修でなくせるなら、5ヶ月ほどで回収できる計算です。自社の数字での計算方法はAI導入の投資対効果(ROI)の試算、月額と処理できる量の関係はAIエージェントの月額10万円でどこまで任せられるかで解説しています。

自動化できる業務・できない業務の境界線

自動化は万能ではありません。当社のサービスで対象外にしている業務も含めて、境界線を先に示します。

自動化できる

自動化できない

毎日・毎週・毎月、繰り返し発生する

年に1〜2回しか起きない、毎回状況が違う

入力も出力もパソコン上で完結する

紙の原本確認・対面・電話が前提

判断のルールを言葉で説明できる

ベテランの勘に頼っていて説明できない

毎回人が考えて決める場面が全体の2割未満

毎回、例外の判断が発生する

必要なデータを既存のシステムから取り出せる

画面を目で見て書き写すしかない

最終的な確認や決裁は人が行う

最終判断そのものをAIに任せたい

右側に当てはまる業務は、当社の自動化サービスでも対象外です。たとえば調剤薬局であれば、処方箋の原本確認や患者対応は紙と対面が前提のため、最初から切り分けます。

ただし、右側に当てはまる工程が1つあるからといって、業務全体を諦める必要はありません。業務を工程に分け、パソコン上で完結している工程だけを切り出して自動化することはできます。受発注の突合なら、完全に一致した取引だけを自動で確定し、差がある取引を人の確認リストに回す。例外の多い業務でも、この分け方なら成り立ちます。

もう1つ注意したいのが、右側の「画面を目で見て書き写すしかない」です。これは自動化では解決できず、先にシステムの側を直す必要があるという合図です。次の6〜12ヶ月目の話につながります。どこまでAIに任せられるかの細かい線引きはAIエージェントに任せられる業務の範囲にまとめています。

6〜12ヶ月|自動化では直らない仕組みをシステム化する

6ヶ月目|判断の分かれ目②:自動化しても残った問題を特定する

自動化を回し始めると、「機械に渡したのに楽にならない」「そもそも渡せなかった」作業が残ります。その原因の多くは、作業ではなく仕組みの側にあります。

残った問題の例

原因

必要なもの

必要なデータを取り出せず、画面から書き写している

システムにデータを受け渡す口がない

データを取り出せるようにする小規模改修

部門ごとにExcel台帳が分かれ、同時に開けない・履歴が残らない

台帳が分かれている構造そのもの

台帳を1つにまとめるシステム化

効果がありそうだが、実際に効くか分からない

判断材料がない

範囲を絞った試作(PoC)

業務を回す仕組み自体がない

まだ存在しないシステム

本開発

調査会社のGartnerは、「AIに使える状態に整ったデータ」の裏付けがないAIプロジェクトの60%が、2026年までに放棄されると予測しています(2025年2月発表の予測値で、実測ではありません)。同社の調査では、データ管理の責任者の63%が、AI向けのデータ管理ができていない、またはできているか分からないと答えています。6ヶ月目以降に、データを取り出せるようにする工程を置くのはこのためです。

データを取り出せるようにする改修 → 自動化、の順番で進める

1年目の後半で最も多いのは、小規模な改修と自動化を順番に組み合わせる形です。

  1. データを取り出せるようにする改修(30万円〜、数週間)
  2. 取り出せるようになったデータを使って自動化(初期100万円+月額10万円〜、1〜2ヶ月)

合計で130万円+月額10万円からです(税別)。既存のシステムから毎日、表計算ソフトで開ける形式のファイル(CSVファイル)でデータを書き出せる場合は改修が要らないので、自動化から入れます。

やってはいけないのは、自動化とシステム改修を同時に発注することです。改修側の仕様が固まらないと自動化側の設計ができず、両方が止まります。必ず順番に区切ってください。データの取り出し方は連携用の口がないシステムからデータを取り出す方法、改修の費用はシステムの小規模改修の費用で解説しています。

効果が不確かなものは、試作(PoC)を3ヶ月で区切る

「社内の資料をAIに読ませて、問い合わせに根拠付きで答えさせたい」のように、効くかどうかがやってみないと分からないものは、いきなり本開発をせず、範囲を絞った試作(PoC)から入ります。

期間は3ヶ月を目安に区切るのが実務的です。米MITの研究グループの報告(2025年7月)では、中堅企業のうち成果を出している層は、試験導入から本格導入までを平均90日で進めていました。一方、Gartnerは2025年末までに生成AIプロジェクトの少なくとも30%が試作の段階で放棄されると予測しています(2024年7月発表の予測値)。

試作を「やってみたけれど、どうするか決められない」で終わらせないコツは、着手の前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格か」を文書にしておくことです。合格ラインが先にあれば、拡大するかどうかをすぐに判断できます。当社の医療機関のケースでは、合格ラインを先に決めていたことで、拡大するかどうかの判断を2週間で終えています。試作の費用の内訳はAIのPoC費用の相場を参照してください。

本開発は、2年目にまたがる前提で予算を取る

仕組みを一から作る本開発は、当社の事例で約7ヶ月かかっています(何を作るかを決める要件定義2ヶ月、実装3ヶ月、テスト1ヶ月、移行と現場教育1ヶ月)。さらに、相談してから作業が始まるまでにも、概算の見積もり・稟議・契約を経て1〜3ヶ月かかるのが当社の観測値です。1年目の後半に着手すれば、稼働は2年目になります。

このため、1年目の終盤には2年目の予算を取る作業が入ります。予算の時期は後述の「補助金・助成金・予算の時期を1年目にどう組み込むか」で扱います。期間の内訳はAI開発の期間で詳しく解説しています。

自動化かシステム化か、5つの質問で決める

3ヶ月目と6ヶ月目の分かれ目で、自社の困りごとがどちらに当たるかを判断するための質問です。上から順に答えてください。

#

質問

答えがNOなら

1

その困りごとは、すでに人が毎月やっている作業ですか?

まだ存在しない仕組みの話 → システム化(受託開発)

2

その作業は、似た作業を束ねて月20時間以上ありますか?

投資に見合わない → 手順の見直しや安価なツールで済ませる

3

入力も出力も、パソコン上で完結しますか?

紙・対面が前提 → その工程は自動化の対象外。紙をなくす工程が先

4

毎回人が考えて決める例外の判断は、全体の2割未満ですか?

2割を超える → 標準的なものだけを切り出せるか確認。切り出せなければ自動化に向かない

5

必要なデータを、既存のシステムから取り出せますか?

取り出せない → 先に小規模改修(受託開発)、その後に自動化

5問すべてがYESなら自動化です。判断の結果を費用と合わせて並べると、次のようになります。

判断の結果

進め方

費用の入口(税別)

今ある繰り返し作業を、束ねて月40時間以上なくしたい

自動化(AIエージェント型)

初期100万円+月額10万円〜

月20時間前後の単発の作業

手順の見直し、安価な自動化ツール

0円〜月数千円

データが取り出せない

小規模改修 → 自動化

30万円〜 → 初期100万円+月額10万円〜

効くかどうか分からないので試したい

試作(PoC)

300万円〜

新しい仕組みを作りたい

本開発

個別見積

判断がつかない場合は、自動化の側から検討してください。 費用が低く導入も早いため、最初に確かめる対象として無駄が出にくいからです。相談の段階で「これは自動化ではなく仕組みを直す話」と分かれば、その時点で進め方を切り替えられます。

今ある作業をなくしたい場合はシゴハヤエージェント(業務の自動化)のサービス内容を、仕組みを作る・直す場合は受託開発のサービス内容をご覧ください。5つの質問それぞれの詳しい判断基準は業務自動化と受託開発はどちらを選ぶべきかで解説しています。

実現する方法の比較|4つの手段の費用と得意・不得意

ロードマップの各段階で使う手段は、大きく4つです。当社以外のサービスも含めて並べます(2026年9月時点の公開価格)。

① 手順の見直し(0円)

作業そのものをなくす、回数を減らす、入力の形式をそろえる、承認の段階を減らす。束ねても月20時間に届かない作業は、ここで終わらせるのが最も安上がりです。

② パソコン操作を記録して繰り返させるツール(RPA・ノーコード)

人がパソコンでやっている操作の手順を覚えさせ、機械に繰り返させる道具です。

ツール

価格

補足

Power Automate for desktop

無償

Windows 11に付属。個人のパソコンで人が操作しながら動かす範囲に限られ、作った手順を他の人と共有できない

Power Automate Premium

1ユーザー月2,248円(年払い・税別)

ユーザー単位で契約する有償版

Power Automate Process

1台月22,488円(年払い・税別)

人が操作しなくても自動で動かす用途

WinActor(NTTアドバンステクノロジ)

フル機能版 年1,098,680円(税込)/実行専用版 年300,080円(税込)

1台のパソコンに紐づくライセンス

ライセンス費用のほかに、手順を組む作業(外部に頼めば構築費)と、相手側の画面や手順が変わったときの修正がかかります。手順が完全に決まっている単純作業には強い一方、想定外の入力が来ると止まりやすいのが弱点です。維持費の実態はRPAの保守コストで扱っています。

③ AIエージェント型の自動化サービス

手順を記録させるのではなく、業務のルールを渡して処理そのものを任せる方式です。取引先ごとに形式の違うデータを取り込む、例外を振り分ける、文面を作るといった、毎回少しずつ違う作業に対応できるのが②との違いです。一方で、判断のルールを言葉にできない業務には使えません。当社のシゴハヤエージェントの場合、初期100万円+月額10万〜50万円(税別)、導入は標準1〜2ヶ月です。②との使い分けはノーコードツールとAIエージェントの違いにまとめています。

④ システムを作る・直す(受託開発)

仕組みそのものを作る、または既存のシステムを直す方式です。当社の場合、小規模改修30万円〜、試作(PoC)300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)で、クラウドや外部サービスの利用料は別途かかります。作る前に既製品で済まないかを確かめる方法は既製のクラウドサービス(SaaS)と独自開発の判断で扱っています。

4つの手段の比較

① 手順の見直し

② RPA・ノーコード

③ AIエージェント型

④ 受託開発

初期費用

0円

無償〜(別途、手順を組む手間や構築費)

100万円(当社)

30万円〜(改修)/300万円〜(PoC)

継続費用

0円

無償〜1台月2万円台(Power Automate)/年約110万円(WinActorフル機能版・税込)

月額10万〜50万円(当社)

クラウド利用料・保守費など

立ち上がり

すぐ

組む手順の数による

1〜2ヶ月

数週間(改修)〜数ヶ月(本開発)

毎回少し違う作業

苦手

得意

作り方次第

使いどころ

束ねても月20時間未満

手順が完全に決まっている単純作業

束ねて月40時間以上の繰り返し作業

仕組みがない・データが取り出せない

ロードマップ上の時期

3ヶ月目の仕分けの直後

3〜6ヶ月

3〜6ヶ月

6〜12ヶ月

①から④に進むほど、費用も、できることの幅も大きくなります。自社の困りごとがどの段の話かを見誤らないことが、1年目の予算を無駄にしないための最大のポイントです。

1年目にかかる費用の目安|時期別の積み上げと規模別の総額

30名規模の会社の場合(3ヶ月ごとの積み上げ)

冒頭の「1年目 約360万円〜」の内訳です。前提は、生成AIの法人プランを1人月3,000円前後で30名分、4〜6ヶ月目に自動化を契約・導入して月額20万円(30名程度の規模の目安)を1年目に6ヶ月分、7〜9ヶ月目に小規模改修を1件(30万円〜)としています。

時期

主な支出

金額の目安(税別)

1〜3ヶ月目

法人プラン3ヶ月分

約27万円

4〜6ヶ月目

法人プラン3ヶ月分+自動化の初期費用100万円

約127万円

7〜9ヶ月目

法人プラン3ヶ月分+自動化の月額3ヶ月分(60万円)+小規模改修(30万円〜)

約117万円〜

10〜12ヶ月目

法人プラン3ヶ月分+自動化の月額3ヶ月分(60万円)

約87万円

1年目の合計

約358万円〜(約360万円〜)

※研修費は内容によって大きく変わるため含めていません(中小企業は助成金で経費の75%が補助対象、上限あり)。試作(PoC)に進む場合は+300万円〜、本開発は個別見積で2年目の予算として計上するのが一般的です。

規模別の1年目の総額

自動化の月額は、会社の規模とAIの処理量で決まります。当社の目安は10名程度で月10万円、30名程度で月20万円、50名程度で月30万円、100名程度で月50万円です。同じ前提で規模別に並べると次のとおりです。

規模

法人プラン(年)

自動化(初期+月額6ヶ月分)

小規模改修

1年目の総額(税別)

10名程度

約36万円

100万円+10万円×6=160万円

30万円〜

約226万円〜

30名程度

約110万円

100万円+20万円×6=220万円

30万円〜

約360万円〜

100名程度

約360万円

100万円+50万円×6=400万円

30万円〜

約790万円〜

ただしこの表は、束ねて月40時間以上の自動化の対象が見つかった場合の金額です。10名程度の会社では、洗い出しの結果として対象が見つからないことも珍しくありません。その場合、1年目にかかるのは法人プランの約36万円と研修費だけで、自動化の欄は0円になります。

当社のサービスの価格

  • シゴハヤエージェント(業務の自動化):初期100万円+月額10万〜50万円(税別)。月額にはAIが処理できる作業量の枠が含まれ、月10万円で約1,000万トークン、月50万円で約1.2億トークンです(トークンは、AIが読み書きする文字量の単位)。導入は標準1〜2ヶ月です。→ シゴハヤエージェントの料金と導入の流れ
  • 受託開発:小規模改修30万円〜、試作(PoC)300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)。クラウド利用料・外部サービスの利用料・ライセンス費用は別途です。初回相談は無料で、要件が固まっていない段階でも構いません。→ 受託開発の対応範囲と進め方

自動化の手段ごとの費用をさらに比べたい場合はAIエージェント導入の費用を、2年目以降にかかる保守費はシステムの保守運用費の相場をあわせてご覧ください。

補助金・助成金・予算の時期を1年目にどう組み込むか

デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)のロゴ

出典: デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト

デジタル化・AI導入補助金:交付決定の前に契約しない

旧IT導入補助金にあたる「デジタル化・AI導入補助金2026」は、2026年9月22日時点で公式サイトのスケジュールに次の日程が載っています。

申請枠

直近の締切

交付決定日(予定)

事業の実施期間(予定)

通常枠/インボイス枠/セキュリティ対策推進枠

2026年9月29日(火)17:00

2026年11月9日(月)

交付決定〜2027年4月30日(金)17:00

複数者連携デジタル化・AI導入枠

2026年10月30日(金)17:00

2026年12月10日(木)

交付決定〜2027年5月31日(月)17:00

通常枠の次の締切日は、本記事執筆時点で未発表です(公式サイトは確定した募集回だけを公表する運用です)。9月29日の締切に、これから相談を始めて間に合わせるのは現実的ではありません。1年目のロードマップには、次の募集回を前提に、交付決定の後に契約する順番で組み込むのが確実です。

押さえておくべき決まりは4つあります。

  1. 交付決定の前に契約・発注・支払いをした経費は、補助の対象外です
  2. 通常枠の補助額は、5万円〜150万円未満(補助率1/2以内)と、150万〜450万円以下(対象となる業務の工程が4つ以上)の2段階です
  3. 通常枠の採択率は42.2%でした(申請1,913者のうち807者が採択。2026年9月3日発表の締切回の結果。ミラサポplus)。申請しても半分以上は通らない前提で資金計画を立ててください
  4. 補助金は後払いです。事務局の事業実施・実績報告マニュアルで定められているのは「補助金額の確定から約1か月程度で交付」という点だけで、それまでは全額を自社で立て替えます

また、補助の対象は、IT導入支援事業者が事務局に事前登録したITツールに限られます。使いたいツールやサービスが登録されているかは、申請の準備に入る前に確認してください。

1年目の進め方で気をつけたいのは、補助金の結果を待ってから動き出すと、前半の半年が空くことです。0〜3ヶ月目の土台づくり(法人プラン、利用ルール、作業記録)は費用が小さく、補助金がなくても始められます。先に作業記録で「何に使うか」と「月何時間減るか」を固めておけば、補助金の申請書も、社内の稟議も書きやすくなります。締切と入金の詳細は補助金の締切スケジュール補助金が入金されるまでの資金繰りを参照してください。

予算:システム化の費用は、どの年度の予算になるか

見落とされやすいのが、1年目の後半(システム化)の費用が、今期ではなく来期の予算になる場合があることです。3月決算の会社の標準的な流れでは、1月に予算編成の方針が示され、1月下旬〜2月上旬に部門ごとの予算を調整し、3月の取締役会で年度予算が決まります(清文社「予算編成手続マップ【3月決算】」)。

3月決算の会社が2026年10月にロードマップを始めた場合、制度と予算の動きは次のように重なります。

時期(ロードマップ)

ロードマップでやること

制度・予算の動き

2026年10〜12月(1〜3ヶ月目)

法人プラン・利用ルール・研修・作業記録

研修の助成金は開始1ヶ月前までに計画届/来期予算に向けて、自動化とシステム化の概算(費用の桁)を取る

2027年1〜3月(4〜6ヶ月目)

自動化の契約・導入

1月に予算編成の方針、3月に年度予算の決定/3月末でリスキリング支援コースの期間が終了

2027年4〜9月(7〜12ヶ月目)

小規模改修・試作(PoC)・本開発の準備

新年度予算で執行。補助金を使う場合は交付決定の後に契約

この例では、4〜6ヶ月目の自動化の初期費用は今期の予算で、6〜12ヶ月目のシステム化にかかる費用と自動化の月額は来期の予算です。つまり、1〜3ヶ月目のうちに概算を取って来期予算に載せておかないと、後半の計画がまるごと1年ずれることになります。決算月が違う会社も、予算編成の方針が出る時期から同じように逆算してください。稟議に通す資料の作り方は生成AIの稟議資料の作り方で扱っています。

1年目にやらなくていいこと

ロードマップで「何をするか」と同じくらい大事なのが、「何をしないか」です。1年目に手を出すと費用と時間を失いやすいものを4つ挙げます。

1. 全社一斉のシステム刷新

困りごとが1箇所なのに、基幹システムの入れ替えまで含めて計画すると、半年単位の案件になります。当社の調剤薬局のケースでは、他社から基幹システムの入れ替えを含む提案が出ていた状態から、対象を毎日の転記1箇所に絞ったことで、相談から稼働まで約5週間で済みました(事例②)。

2. 候補を絞らないままの試作(PoC)

候補を全部対象にすると、費用も期間も膨らんで稟議にかけられなくなります。試作は1業務に絞り、合格ラインを先に決めてから始めてください(事例④)。

3. 使い道が決まる前の業務用ツールの先行契約

0〜1ヶ月目の法人プラン(1人月3,000円前後)は、全員が試すための道具なので先に契約して構いません。問題になるのは、作業記録より先に、特定の業務向けの高額なツールを契約することです。何の作業が月何時間減るのかを説明できないまま契約すると、構造の問題が残ったままツールの費用だけがかかり続けます(事例③)。

4. 自動化とシステム改修の同時発注

前述のとおり、改修側の仕様が決まらないと自動化側の設計ができず、両方が止まります。改修が先、自動化が後です。

1年目にやってしまいがちな失敗の類型はAI開発でよくある失敗にもまとめています。

実際にやった事例|ロードマップのどの段階の話か

当社がお受けした相談から5件を、この記事のロードマップに当てはめるとどの段階の話かという切り口で紹介します。守秘契約のため社名は伏せます。

事例

業種

ロードマップ上の段階

着地した手段

期間

調剤薬局

1〜3ヶ月目の洗い出し → 3〜6ヶ月目の自動化

自動化

調剤薬局

6〜12ヶ月目(全面刷新をしない判断)

小規模なシステム化

約5週間

医療機関

6ヶ月目の判断の分かれ目②

システム化(台帳の統合)

医療機関

6〜12ヶ月目の試作

PoC

約3ヶ月

インフラ企業

1年目の後半に着手し、2年目にまたがる

本開発

約7ヶ月

事例① 調剤薬局のケース:洗い出しで作業を束ね、自動化で済んだ

課題:相談の時点では「なんとなく事務が忙しい」という状態で、何から手を付けるか決まっていませんでした。1週間の作業記録を取ると、発注データと納品データの突合、在庫の棚卸し集計など、似た性質の作業が複数見つかりました。1業務あたりは月10〜15時間でも、束ねると月40時間規模になりました。

作ったもの:卸ごとに形式の違うデータを自動で取り込み、形式をそろえて突合する処理です。差がある分だけを確認リストに出します。新しいシステムは作っていません。

何がどう変わったか:担当者の作業が「全件を照合する」から「差のあった数件を確認する」に変わりました(時給3,000円換算で月12万円相当の作業量)。処方箋の原本確認と患者対応は、紙と対面が前提のため最初から対象外にしています。

事例② 調剤薬局のケース:全面刷新の提案を、転記1箇所の改修に絞った

課題:業務システムから書き出したデータをExcelで加工し、別のシステムへ手で転記する作業が毎日発生していて、担当者が休むと業務が止まっていました。他社からは基幹システムの入れ替えを含む提案が出ていました。

作ったもの:既存のシステムは残し、対象を毎日の転記1箇所に絞って、データの取り込み・加工・次のシステムへの受け渡しを自動で行う仕組みを作りました。

何がどう変わったか:相談から稼働まで約5週間(相談と仕様の確定2週間、実装2週間、試験運用1週間)。転記作業と転記ミスの手直しがなくなり、担当者が休んでも業務が流れるようになりました。全社的な刷新にしていれば、半年単位の案件になっていました。

事例③ 医療機関のケース:「自動化したい」という相談が、仕組みの問題だった

課題:相談は「転記作業を自動化したい」というものでした。実際には部門ごとに別々のExcel台帳で記録を管理していて、同時に開けない、更新の履歴が残らない、集計のたびに転記が発生する、という状態でした。転記を自動化しても、台帳が分かれている構造は残ります。

作ったもの:台帳を1つのデータベースに統合し、誰が何を見られるかの権限と更新履歴を持たせました。規制業種のためデータの置き場所の設計に時間をかけ、セキュリティの国家資格を持つ情報処理安全確保支援士が確認しています。

何がどう変わったか:転記の工程そのものがなくなり、集計は画面上で完結し、誰がいつ何を変えたかも追えるようになりました。ロードマップでいえば、6ヶ月目の「自動化しても残る問題」の典型です。

事例④ 医療機関のケース:候補を1つに絞り、3ヶ月で試作した

課題:効率化したい業務の候補が複数あり、全部を対象にすると費用も期間も膨らんで稟議にかけられない状態でした。相談の中で1業務に絞り、着手の前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格か」を文書にしました。

作ったもの:手元の資料をAIに読ませ、質問すると根拠となる箇所を示しながら答える仕組みを、試作(PoC)として作りました。

何がどう変わったか:期間は約3ヶ月(絞り込みと合格ラインの設定2週間、データの受領と整形3週間、試作と調整5週間、現場での試用と判定2週間)。合格ラインが先にあったため、拡大するかどうかを2週間で判断できました。

事例⑤ インフラ企業のケース:複数システムの照合を、本開発で仕組みにした

課題:複数の社内システムにまたがるデータを人が突き合わせて確認しており、件数が多く、月末に負荷が集中していました。

作ったもの:システム間のデータを自動で照合し、食い違いがある分だけを人に回す仕組みを本開発で作りました。要件定義の中で各システムからのデータの取り出し方を確認し、つなぐ先が1本増えた場合の追加費用も最初の見積もりの段階で決めています。

何がどう変わったか:期間は約7ヶ月(要件定義2ヶ月、実装3ヶ月、テスト1ヶ月、移行と現場教育1ヶ月)。全件を人が見る運用から、例外だけを人が見る運用に変わりました。1年目の後半に着手すると稼働は2年目になるため、「1年目の終わりに2年目の予算を取る」必要があるのはこの規模の案件です。

5件とも、最初から「何を作るか」が決まっていたわけではありません。作業を記録し、自動化で済むか仕組みを直す必要があるかを分けたことで、それぞれに合った手段と金額に落ち着いています。

よくある質問

Q1. ロードマップは社内だけで作れますか? 外部に頼むのはどの段階からですか?

0〜3ヶ月目(法人プランの契約、利用ルール、作業記録)は、社内だけで十分に進められます。外部の目が役立つのは、3ヶ月目の仕分けで「自動化で済むか、作る必要があるか」を判断するときと、既存システムからデータを取り出せるかを確かめるときです。中小機構の調査(2026年3月)では、「適切な依頼先や製品を選ぶための情報が十分にある」に当てはまらないと答えた企業が79.8%でした。また米MITの研究グループの報告では、外部のパートナーと組んだ取り組みは約67%が本格導入に進んだのに対し、社内だけの取り組みは約33%でした(報告書自身が、これは相関であって因果関係ではないと明記しています)。内製と外注の線引きは生成AIの内製と外注、相談を始める時期はAI導入の相談タイミングで扱っています。

Q2. 1年目の予算が100万円しかない場合、何から始めるべきですか?

30名全員に法人プランを入れるだけで年約110万円かかるため、範囲を絞ります。たとえば、法人プランは作業記録をとる部署の10名に絞る(年約36万円)、自動化は月2,248円のPower Automate Premiumを5名で試す(年約13万円)、残りでデータを取り出すための小規模改修を1件(30万円〜)、という組み方なら約80万円に収まります。すでにGoogle WorkspaceのBusiness Standard以上を使っているなら、Geminiは追加費用なしで試せます。AIエージェント型の自動化(初期100万円)は2年目の予算に回し、1年目は作業記録で「月何時間減るか」の根拠をつくることに集中してください。その数字があれば、2年目の予算は通しやすくなります。

Q3. 従業員10名程度の会社でも、この順番で進める意味はありますか?

あります。ただし、真ん中の自動化の段階が小さくなることが多いです。IPAの「DX動向2026」でも、従業員101人以下の企業のAI導入率は16.6%にとどまっており、規模の小さい会社ほど「何に使うか」が見つからないまま止まりやすい傾向があります。10名規模では束ねても月40時間に届かないことがあり、その場合は3〜6ヶ月目を手順の見直しと安価なツールで済ませ、6ヶ月目以降に「データを取り出せない」「台帳が分かれている」といった仕組みの問題だけを小規模改修(30万円〜)で直す、という進め方になります。順番は同じで、各段階にかける金額が小さくなるイメージです。

Q4. すでに個人で生成AIを使っている社員が多い場合、禁止すべきですか?

一律に禁止するより、法人プランに移ってもらうほうが現実的です。すでに使い慣れている社員は、1年目の推進役の候補でもあります。進め方としては、①法人プランを用意し、②移行の期限を決めて個人アカウントでの業務利用をやめてもらい、③その社員たちに「何の作業に使っていたか」を聞き取る、の順です。③で出てきた作業は、そのまま1〜3ヶ月目の作業記録の出発点になります。個人アカウントに顧客情報などを入力していなかったかの確認も、このタイミングで行ってください。

Q5. 自動化とシステム開発は、同じ会社に頼むべきですか?

両方を扱える会社に相談する利点は、「これは作らなくていい」「これは自動化では直らない」と言ってもらえることです。開発だけを扱う会社には開発の提案が、ツールだけを扱う会社にはツールの提案が出てきやすい構造があります。ただし、同じ会社に頼む場合でも発注は必ず順番に区切ってください。また、1社に依存しすぎないよう、業務の流れの図と判断ルールの一覧を成果物に含めてもらうと、将来ほかの会社に引き継ぐこともできます。依頼先の選び方はAI開発会社の選び方で解説しています。

Q6. 1年たっても成果が出なかった場合、どこを見直せばいいですか?

見直す場所は3つです。1つ目は比べる基準があるか。作業記録で導入前の時間を測っていないと、効果があっても示せません。商工中金の調査で導入後の課題に「効果が測れず成果が見えにくい」が挙がっているのは、多くがこのケースです。2つ目は対象を束ねていたか。月20時間の業務を1つずつ自動化していると、費用が効果を上回り続けます。3つ目は業務の手順に組み込まれているか。自動化の結果を人が毎回全件確認し直していたり、担当者が以前のやり方に戻っていたりすると、時間は減りません。定着しない原因は業務自動化が定着しない理由で詳しく扱っています。

Q7. 2年目以降は、何をすることになりますか?

主に3つです。1つ目は、1年目の後半に着手した本開発の稼働と、その保守です。2つ目は、自動化の対象の拡大です。対象業務が増えればAIの処理量も増えるため、月額の段階(当社の場合、月10万円・20万円・30万円・50万円)を上げるかどうかを、削減できた時間と比べて判断します。3つ目は、社内の資料やデータをAIに参照させる仕組みづくりです。情報通信白書で日本が他国に大きく遅れていたのがこの部分で、マッキンゼーの2025年の調査でも、AIで大きな成果を上げている企業は業務の流れそのものを作り直している点が共通していると報告されています。1年目に作業と仕組みを整理しておくことが、2年目にこの段階へ進むための前提になります。

1年目のどこでつまずいているかが分かったら、ご相談ください

このロードマップのどの段階にいるかによって、相談先が変わります。

「今ある繰り返し作業をなくしたい」段階の方へ(3〜6ヶ月目)

御社専用のAI社員が、毎月繰り返す定型業務を自動で実行するサービスです。初期100万円+月額10万〜50万円(税別)、導入は標準1〜2ヶ月。対象業務の洗い出しと作業時間の確認からご一緒します。公開・外部への送信・削除などの重要な操作は、人が承認してから実行する設計です。

シゴハヤエージェントに相談する

「データが取り出せない・仕組みがない」段階の方へ(6〜12ヶ月目)

新規事業・業務効率化・AI導入・既存システムの改修を、構想から実装まで対応します。小規模改修30万円〜、試作(PoC)300万円〜、本開発は個別見積(税別)。初回相談は無料で、要件が固まっていない段階でも構いません。 医療機関・薬局・インフラ企業での開発実績があります。

受託開発について相談する

まだどちらか判断がつかない方へ

まずは自動化の側からご相談ください。現在の業務内容と、そこにかかっている時間をお伝えいただければ、自動化で済むのか、仕組みを直す必要があるのかを含めて整理します。相談は無料で、その場での契約はお願いしていません。自動化の対象外と判断した場合は、その理由をお伝えします。

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この記事の著者

AI革命

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編集部

AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。

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