ビジネス活用2026年9月更新

SaaSかカスタム開発かの判断フロー|7つの質問と5年総額で決める【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/16
SaaSかカスタム開発かの判断フロー|7つの質問と5年総額で決める【2026年9月最新】

この記事のポイント

SaaSで足りるか、カスタム開発が必要かを7つの質問で判断するフローを解説。SaaSのあいだの書き写しだけを直す改修30万円〜とPoC300万円〜の使い分け、kintoneの人数別5年総額、補助金の対象の違いまでまとめました。

経理・勤怠・メールのように、どの会社でも同じやり方で回る業務は、kintone(1人あたり月1,000〜1,800円・税別)のような月額制の既製クラウドサービス(SaaS)で足り、カスタム開発を検討すべきなのは、自社のやり方そのものが強みになっている業務と、SaaSとSaaSのあいだで人が書き写している業務です。後者の多くはシステム全体を作り直さず、つなぐ部分だけを作る小規模な改修(30万円〜・税別)で直せ、ゼロから作る場合も、まず1つの業務で効果を確かめるPoC(300万円〜・税別)から始めるのが安全です。

「SaaSを入れるか、作るか」は二択で語られがちですが、中堅企業でよく起きているのは、SaaSはすでに入れたのに、SaaS同士やSaaSとExcelのあいだに人の手作業が残っている状態です。この記事では、Yes/Noで答えていくと「①SaaSをそのまま使う/②SaaS+足りない部分だけ作る/③作る」のどれかにたどり着く7つの質問を紹介します。そのうえで、人数別の5年総額と値上げの実例、補助金の対象の違い、医療・薬局などデータの扱いに決まりがある業務での注意点、当社が担当したケースを順に解説します。

SaaSを入れたのに、手作業が残っているのはどこか

SaaS導入後の二重入力の実態を調査した株式会社オロのロゴ

出典: 株式会社オロ 公式サイト

SaaSを使うこと自体は、もう特別な選択ではありません。総務省の「令和7年通信利用動向調査」(2026年5月公表、従業員100人以上の企業が対象)によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業は83.5%、全社的に利用している企業は60.0%です。利用企業の89.4%が「効果があった」と答えていて、用途の上位はファイルの保管・共有(73.3%)、社内の情報共有(61.4%)、電子メール(57.4%)でした。どの会社でも同じやり方で回る業務は、SaaSで済ませるのが普通になっています。

一方で、SaaSを入れても手作業はなくなっていません。業務システムを提供する株式会社オロが2026年3月に全国の事務系会社員433人に行った調査では、SaaSを導入していても、Excelへの転記や二重入力が「頻繁にある」「たまにある」と答えた人が56.6%いました。

二重入力が起きる理由(複数回答)

割合

複数のシステムが連携していない

23.7%

部門ごとに管理方法が違う

18.0%

SaaSを導入してもExcelを併用している

15.9%

紙・手書きの業務が残っている

15.5%

二重入力が起きている業務は、経費精算(32.7%)、請求書・売上処理(28.2%)、予実管理・会議資料の作成(26.1%)、工数・プロジェクト管理(23.2%)、営業案件の管理(20.8%)の順でした。

使うSaaSの数も増えています。フリー株式会社の「情シスのSaaS利用実態レポート2025年版」では、有料のSaaSを使っている企業の半数が6個以上を利用していました。部門ごとに便利なSaaSを入れた結果、SaaSとSaaS、SaaSとExcelのあいだを人の手でつないでいるのが多くの会社の実態です。この状態で足りていないのは「SaaSか開発か」の選択ではなく、あいだをつなぐ部分です。

「SaaSで足りていない」5つのサイン

すでにSaaSを使っている場合、次のどれかに当てはまるなら、今の使い方を見直す時期です。

  • SaaSに入れたデータを、毎月Excelに書き写して集計している
  • 部門ごとに別のSaaSを入れていて、同じ顧客や取引先を何度も入力している
  • 標準の機能で足りない部分を、チェック表やダブルチェックといった人の運用ルールで補っている
  • 利用人数が増えて月額が導入時の見込みを大きく超えた、または値上げの通知が届いた
  • ほしい連携を実現するために、上位のプランへの変更を求められている

当てはまったからといって、すぐに作るべきとは限りません。次の7つの質問で、どこまでをSaaSに任せ、どこから作るかを切り分けます。

SaaSかカスタム開発かの判断フロー|7つの質問

DXの方向性を示すIPA(情報処理推進機構)のロゴ

出典: IPA(情報処理推進機構) 公式サイト

判断フローの行き先(出口)は、次の3つです。二択にせず、あいだに「SaaS+足りない部分だけ作る」を置くのがポイントです。

出口

進め方

費用の目安(税別)

① SaaSをそのまま使う

業務のやり方をSaaSの標準に合わせる

kintoneなら1人あたり月1,000〜1,800円(最小10ユーザー)

② SaaS+足りない部分だけ作る

標準の部分はSaaSに任せ、書き写し・突き合わせの1か所だけを仕組みにする

SaaSの月額+つなぐ部分の開発30万円〜

③ 作る

1つの業務・1つの部門に絞ってPoC(小さく作って効果を確かめる段階)を行い、その結果を見て本開発に進む

PoC 300万円〜、本開発は個別見積

質問1〜3で出口の候補を決め、質問4〜7で、その候補が連携・費用・規制・補助金の面で成り立つかを確かめます。

質問1:その業務のやり方は、他社との違い(強み)そのものですか

  • いいえ → 経理・勤怠・メール・ファイル共有など、どの会社でも同じやり方で回る業務です。出口①(SaaSに業務を合わせる)の候補です
  • はい → 独自の見積の計算方法、取引先ごとに違う納品のルール、自社で工夫してきた点検の手順などです。質問2へ

この質問の根拠は、「他社と同じでよい業務には、お金をかけて独自の仕組みを作らない」という考え方です。IPA(情報処理推進機構)は、経済産業省の「DXレポート2」を受けて、製品やサービスの競争力に関係しない領域は複数の企業で共通の仕組みを使い、コストとリスクを下げるべきだという方向性を示しています。お金をかけて作る価値があるのは、強みになっている業務です。

質問2:候補のSaaSで、業務のやり方を変えずに回せますか

資料やデモ画面で判断せず、無料のお試し期間に実際の業務データを入れて、現場の担当者に使ってもらって確かめます。kintoneなら30日間、人数の制限なく試せます。

  • 回せる → 出口①の候補
  • 一部だけ合わない → 質問3へ
  • 大半が合わない、または合う製品が見つからない → 出口③(作る)を比べる対象に入れる

「業務をSaaSに合わせる」と決めた場合、やり方を変えるのは現場です。商習慣や取引先の都合、法令への対応で変えられない手順があるなら、それは「合わない」に数えてください。

質問3:合わないのは、システム同士のデータの受け渡しだけですか

  • はい(書き写し・突き合わせ・集計のための転記だけが合わない) → 出口②(SaaS+足りない部分だけ作る)
  • いいえ(画面、承認の流れ、計算のルールそのものが業務に合わない) → 出口③(作る)

質問4:必要な連携は、そのSaaSの契約プランでできますか

SaaSは、料金プランによって他のシステムとつなげられるかどうか自体が変わります。kintoneの場合、ライトコース(1人あたり月1,000円・税別)では、外部のシステムとデータを自動でやりとりする機能(API連携)も追加機能(プラグイン)も使えず、スタンダードコース(月1,800円)以上が必要です。スタンダードコースでも、自動のやりとりは1つのアプリ(kintone上で業務ごとに作るデータの台帳)につき1日1万回までという上限があります。

  • できる → 候補の出口のまま
  • できない → 上位プランに変えたときの月額の増加分と、つなぐ部分を作る費用を比べる

質問5:5年総額で比べて、SaaSの月額の積み上げが作る費用を上回りませんか

SaaSの費用は「人数×単価×60か月」で出し、値上げの可能性も含めて比べます(計算例は後述)。

  • 上回らない → SaaS側(出口①か②)
  • 上回る、または利用人数が大きく増える見込みがある → 出口③も比べる対象に入れる

質問6:データの置き場所や安全管理に決まりがある業務ですか

  • はい → 医療情報などを扱う場合は、SaaSの提供元が最新のガイドラインに沿っているかを確認します。沿っていなければ、自社で管理できる環境に作ることも比べる対象に入れます(後述)
  • いいえ → 判断には影響しません

質問7:補助金を使う前提ですか

  • はい → 補助金の対象は、事務局に登録されたSaaSなどのITツールです。自社専用に作るシステムは対象外なので、出口①か、出口②のSaaS部分が対象になります(後述)
  • いいえ → 判断には影響しません

SaaSで足りるケース・一部だけ作るケース・作るべきケースの境界線

7つの質問の答えを、3つの出口ごとにまとめると次のようになります。

① SaaSで足りる

② SaaS+一部だけ作る

③ 作るべき

業務の性質

どの会社でも同じ

業務の大半は一般的だが、システムのあいだに手作業がある

自社のやり方が強みになっている

SaaSとの合い方

お試しで実データを入れて回る

合わないのはデータの受け渡しだけ

画面・承認の流れ・計算のルールが合わない、または合う製品がない

現場のやり方

SaaSに合わせて変えられる

ほぼ変わらない

変えられない手順がある

5年総額

SaaSの月額の合計が、作る費用を下回る

SaaSの月額+つなぐ部分の費用が、作り直す費用を下回る

利用人数が多い・増える見込みで、SaaSの月額の合計が作る費用を上回る

補助金

登録ITツールなら対象になりうる

SaaS部分のみ対象になりうる

自社専用の開発は対象外

出口①に当てはまる場合、開発会社に相談する必要はありません。 SaaSの提供元や、導入を支援している販売会社に相談するほうが早く、費用も抑えられます。作らなくてよいものに予算を使わずに済むことが、SaaSを選ぶいちばんの利点です。

判断を誤りやすいのは、②と③の境目です。「SaaSが合わないから全部作り直す」と決める前に、合わないのが本当に画面や業務の流れなのか、それともシステムのあいだの書き写しだけなのかを切り分けてください。後者なら、使い慣れたSaaSを残したまま、手作業の1か所だけを直せます。手作業がExcelに集まっている場合は、Excel業務のシステム化の判断基準も参考になります。

実現する方法は3つ|SaaSのまま・一部だけ作る・作る

3つの出口を、比べるときに見るべきポイントごとに並べます。

比較ポイント

① SaaSをそのまま使う

② SaaS+足りない部分だけ作る

③ 作る

使い始めるまで

契約後すぐ。無料お試しあり(kintoneは30日)

SaaSの導入+つなぐ部分の開発期間

要件定義(何を作るかを決める作業)から始まる

初期費用

0円〜(kintoneは初期費用無料)

つなぐ部分の開発30万円〜(当社の場合)

PoC 300万円〜(当社の場合)

業務への合わせ方

業務をSaaSの標準に合わせる

標準はSaaSに合わせ、合わない1か所だけ作る

業務に合わせて作る

他のシステムとの連携

契約プランと回数の上限で決まる

つなぐ部分を作る

自由に設計できる

毎月の費用

人数×単価で増える。値上げの可能性あり

SaaSの月額+作った部分の保守費

保守費

補助金

登録ITツールなら対象になりうる

SaaS部分のみ対象になりうる

自社専用の開発は対象外

やめるとき

データの持ち出しと乗り換えの手間

左に加えて、作った部分の扱い

作ったものは自社に残る(納品物と権利は契約次第)

① SaaSをそのまま使う

こんな場合に選ぶ:業務がどの会社でも同じで、お試し期間に実データで回ることを確認できた。利用人数がそれほど多くない。

選ばないほうがいい場合:変えられない独自の手順がある。すでに他のSaaSとのあいだで書き写しが発生している。

注意したいのは、SaaSの機能と価格を決めるのは提供元だという点です。SaaSは多くの企業が同じ仕組みを使うことで安く提供されているため、個別の会社に合わせた作り込みには原則として応じない方針の提供元もあります。価格も提供元が改定します(後述の値上げの実例を参照)。

② SaaS+足りない部分だけ作る

こんな場合に選ぶ:SaaSの画面や業務の流れには不満がなく、困っているのはSaaSとSaaS、SaaSとExcel、SaaSと社内の既存システムのあいだの書き写しや突き合わせだけ。

選ばないほうがいい場合:つなぐ先のSaaSが、契約中のプランで外部との連携に対応していない(上位プランへの変更費用まで含めて比べる)。つなぐ部分が増えすぎて、何本もの連携を管理することになる。

作るのは、一方のシステムから出したデータをもう一方の形式に変えて取り込む仕組みや、2つのシステムのデータを照合して食い違いだけを知らせる仕組みなどです。ZapierやMakeのようなプログラムを書かない連携ツールで済む場合もありますが、データの量や例外の多さによっては限界があります。詳しくはZapierやMakeの限界で解説しています。

なお、1か所をつなぐのではなく、複数のシステムにまたがる毎月の定型作業(集計してレポートを配信する、データを照合するなど)をまとめて任せたい場合は、作業そのものをAIに代行させる月額型の方法もあります。当社ではシゴハヤエージェント(初期100万円+月額10万円〜・税別)として提供しています。

③ 作る

こんな場合に選ぶ:自社のやり方が強みで、SaaSに合わせると強みが失われる。合う製品がない。利用人数が多く、5年総額でSaaSの月額の合計が作る費用を上回る。

選ばないほうがいい場合:業務がどの会社でも同じ。作ったものの改善や保守を、依頼先と一緒に続ける社内の担当者を置けない。効果を確かめないまま、いきなり全社向けに作ろうとしている。

作る場合も、最初から全社向けの本番システムを作る必要はありません。1つの業務・1つの部門に絞ってPoCで効果を確かめ、現場で使われることを確認してから広げます。小さく始めて広げる発注の仕方は段階的な開発の発注で解説しています。

5年総額で比べる|SaaS・一部だけ作る・作るの費用の目安

5年総額の計算例に使ったkintoneの公式ロゴ画像

出典: kintone 公式サイト

SaaSの5年総額は、人数と値上げで大きく変わる

kintoneスタンダードコース(1人あたり月1,800円・税別)の公式価格から単純に計算した例です。

利用人数

月額

5年総額(値上げなし)

3年目から20%値上がりした場合の5年総額

10名

1.8万円

108万円

約121万円

30名

5.4万円

324万円

約363万円

50名

9万円

540万円

約605万円

100名

18万円

1,080万円

約1,210万円

「20%の値上がり」は大げさな仮定ではなく、実際に起きた幅です。

  • kintone(2024年11月):ライトコースが1人あたり月780円→1,000円(約28%増)、スタンダードコースが1,500円→1,800円(20%増)になり、最小契約ユーザー数も5→10に変わりました。サイボウズは理由を、運用や開発を含めた運営全体への投資の拡大と説明しています
  • Salesforce(2025年8月):ITmedia NEWSの報道によると、Sales CloudやService CloudなどのEnterprise/Unlimited Editionが平均6%値上げされました

値上げは、提供元がサービスを改善し続けるための投資でもあるので、それ自体を悪いと考える必要はありません。ただ、5年総額を出すときに「契約時の価格が5年間続く」と置くと、見込みがずれます。

手作業が残るコストも5年で数える

SaaSの月額だけで比べると、SaaSのあいだに残っている手作業のコストが抜け落ちます。仮の条件で計算してみます。

SaaSからExcelへの書き写しと集計に、担当者2人がそれぞれ月10時間(合計月20時間)かけている場合
20時間 × 時給3,000円 = 月6万円、年72万円、5年で360万円

つなぐ部分を30万円で作れた場合、作業がすべてなくなる前提の単純計算で、5か月で取り戻せます。確認の作業が残り、作業時間が半分にしか減らなければ10か月です。反対に、書き写しが月3時間程度なら月9,000円なので、30万円を取り戻すのに約33か月かかります。この場合は作る前に、SaaSの標準機能の使い方を見直すほうが先です。時給3,000円は計算のための仮の値なので、自社の人件費に置き換えて計算してください。

30名がkintoneスタンダードコースを5年使い(324万円)、つなぐ部分を30万円で作ると、合計354万円+作った部分の保守費です。質問2で「一部だけ合わない」と答えた場合は、システム全体を作り直す見積を取る前に、まずこの組み合わせで足りるかを確かめてください。

作る場合は、開発費に保守費を5年分加えて比べます。保守費は、年に開発費の10〜20%程度が目安です。規模別の開発費の相場と、SaaSとの5年総額の比べ方は業務システム開発の費用相場で、保守費の中身は保守運用費の相場で詳しく解説しています。

当社に依頼する場合の費用

出口

当社のメニュー

費用(税別)

内容

小規模な既存システムの改修

30万円〜

画面の追加・修正、簡単な帳票の追加、CSVファイル(Excelで開ける形式)でのデータ出力、軽微な他のシステムとの連携、既存の処理の修正

③の最初の段階

PoC

300万円〜

課題と検証内容の整理、簡易的な要件定義、設計と開発、検証環境、結果の整理、本開発の提案

本開発

個別見積

利用者数、機能の数、外部との連携、データ移行、セキュリティ、運用体制、止められない時間帯などの条件を伺って見積もります

クラウドの利用料、外部サービスの利用料(API利用料)、ソフトウェアのライセンス料などの実費は、内容に応じて別途かかります。また、300万円はPoCの開始価格で、本番システム一式の費用ではありません。同じように30万円は簡単な改修の開始価格なので、つなぐシステムの数が多い場合や、照合のルールが複雑な場合はこの範囲を超えます。

SaaSか作るかのご相談では、今使っているSaaSと、どこで書き写しや突き合わせが起きているかを伺ったうえで、3つの出口のどれに当たるかをお伝えします。SaaSのままで足りる場合は、その旨を正直にお伝えします。 対応範囲と費用の詳細は受託開発サービスの対応範囲と費用をご覧ください。30万円の改修でどこまでできるかはシステムの小規模改修の費用で解説しています。

補助金の対象は登録されたSaaSなど。自社専用の開発には使えない

デジタル化・AI導入補助金2026の公式ロゴ

出典: デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト

SaaSか作るかで、費用の見え方を大きく変えるのが補助金です。中小企業のIT導入を支援する「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧IT導入補助金)の対象は、IT導入支援事業者が事務局に事前に登録したITツールだけです。事務局の「ITツール登録要領」では、次のようなものが登録の対象外とされています。

  • 業務の流れに影響するような、大幅なカスタマイズが必要なもの
  • 製品として完成しておらず、ゼロから作る開発を伴うソフトウェア(特定の顧客向けに作ったプログラムを、別の顧客の要件に合わせて作り足すものを含む)
  • 特定の顧客向けに限られ、一般に販売されていないもの

つまり、補助金を使いたいなら登録されたSaaSなどを選ぶことになり、自社専用に作るシステムにはこの補助金は使えません。 当社の受託開発も、この補助金の対象にはなりません。

通常枠の概要は次のとおりです。

項目

内容

補助の対象

ソフトウェアの購入費、クラウド利用料(最大2年分)、機能拡張・データ連携ツール・セキュリティなどのオプション、導入の相談・設定・研修・保守サポート

補助額

対象になる業務の工程(プロセス)が1つ以上:5万円以上150万円未満/4つ以上:150万円以上450万円以下

補助率

1/2以内(一定の条件を満たすと2/3以内)

直近の締切

2026年9月29日(火)17:00(交付決定は2026年11月9日(月)の予定)

事業の実施と実績報告の期限

2027年4月30日(金)17:00(予定)

次の回の締切

本記事執筆時点で未発表

5年総額で比べるときに見落としやすいのが、クラウド利用料が補助されるのは最大2年分という点です。3年目以降の月額は全額が自社の負担になります。先ほどの30名・スタンダードコースの例で、仮に補助の対象になったとしても、対象は最初の2年分(129.6万円)までで、補助率1/2なら補助額は最大で約65万円です。5年総額324万円の約2割にとどまります。使いたいSaaSが登録ITツールかどうかは、申請の時点で確認してください。

補助金は、事業を終えて実績を報告した後に支払われる後払いです。交付が決まる前に発注・契約・支払いをした費用は対象になりません。対象になるツールの詳細はAI導入補助金の対象ツールで解説しています。制度は変わることがあるので、申請前に必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。

医療・薬局など、データの扱いに決まりがある業務での判断

医療情報システムの安全管理に関するガイドラインを公表している厚生労働省のロゴ

出典: 厚生労働省 公式サイト

医療情報を扱う業務では、SaaSを選ぶ場合も作る場合も、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への対応を確認する必要があります。現行の最新版は第7.0版(2026年6月)です。概説編・経営管理編・企画管理編・システム運用編に、保守を委託する事業者向けの「保守委託機関編」が新たに加わり、5編の構成になりました。「第6.0版が最新」と説明している資料もまだ残っているので、版数を確認してください。

判断フローの質問6に当てはまる場合に確認することは、次のとおりです。

  • SaaSを選ぶ場合:提供元が第7.0版に沿った対応をしているか。データをどこに保存しているか。提供元の保守の体制はどうなっているか
  • 作る場合:どの情報を、何の目的で、どこに保存するか。外部のサービスを使うか。誰がどの情報を見られるか。運用の体制をどうするか

ガイドラインが求める個別の要件は、社内の担当部署やシステムの提供元と一緒に確認してください。当社は医療情報を扱うシステムの開発経験があり、お客様が契約しているクラウド環境の中にシステムを作ることにも対応しています。薬局でのシステムの使われ方は薬局チェーンのシステムで解説しています。

実際にやった事例|全部を作り直さず、あいだだけを作ったケース

守秘義務のため社名は出せませんが、当社が担当した2つのケースを、判断フローに当てはめて紹介します。どちらも、既存のシステムを入れ替えるのではなく、システムのあいだで人が手を動かしていた部分だけを仕組みにしたケースです。

調剤薬局のケース(出口②・小規模な改修の価格帯)

課題:複数のシステムを使っていて、あるシステムに入力した情報を、別のシステム用に人が書き写していました。

判断:困っていたのはシステム同士のデータの受け渡しで、質問3に「はい」と答えられる状態でした。そのため、システムを入れ替えるのではなく、つなぐ部分だけを作る出口②を選びました。

作ったもの:一方のシステムから出したデータを、もう一方のシステムの形式に変換して取り込む仕組みです。

変わったこと:人による書き写しの作業がなくなりました。システム自体は入れ替えていないので、現場が使い慣れた画面や操作はそのままです。

インフラ企業のケース(出口②・本開発の価格帯)

課題:複数のシステムにまたがるデータを、人が突き合わせて確認していました。件数が多く、月末に負荷が集中していました。

判断:問題はそれぞれのシステムではなく、システムのあいだの突き合わせの作業にありました。そこで、システムを1つにまとめて作り直すのではなく、突き合わせの部分だけを仕組みにする出口②を選びました。つなぐ部分だけを作る場合でも、照合するシステムが複数にまたがり件数も多いと、小規模な改修の範囲には収まりません。このケースも本開発の価格帯になりました。

作ったもの:複数のシステムのデータを自動で照合し、食い違いがあるものだけを人に回す仕組みです。

変わったこと:すべてのデータを人が確認する運用から、食い違いがあるものだけを人が確認する運用に変わりました。

2つのケースに共通するのは、作り直す範囲を決める前に、人の手が止まっている場所を特定したことです。「システムが合わない」と感じたときほど、画面や業務の流れの問題なのか、あいだの手作業の問題なのかを先に切り分けてください。

相談から稼働までの流れと期間

社内で判断を進める手順と、当社に相談いただく場合の流れを分けて紹介します。

社内で判断を進める7つのステップ

ステップ

やること

目安・根拠

1. 対象の業務を1つに絞る

どの業務に月何時間かかっていて、どこで書き写しが起きているかを書き出す

SaaS導入後も二重入力の経験が56.6%(オロ調査)

2. 既製品で試す

候補のSaaSに実際の業務データを入れ、現場に使ってもらう

kintoneは30日間の無料お試し

3. 合わない点を書き出す

「業務を変えれば済むもの」と「変えられないもの(法令・取引先の都合・強み)」に分ける

質問1〜3

4. つながりを確認する

他のシステムとの連携が、そのプランでできるかを確かめる

kintoneライトコースは外部連携不可

5. 5年総額で比べる

SaaSは人数×単価×60か月+値上げ、作る場合は開発費+保守費

kintoneは2024年にスタンダードコースが20%値上げ

6. 補助金の有無を確認する

SaaSなら登録ITツールかを確認する。自社専用に作るなら対象外

ITツール登録要領

7. 作るなら小さく試す

1つの業務・1つの部門でPoCを行う

下記のJUASのデータ

作る場合に、小さく試すべき理由

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「ソフトウェア・メトリクス調査2025」には、作る場合の計画に役立つデータがあります。主に大企業のシステム開発のデータなので、中堅企業の小さな案件の期間を見積もるのには使えませんが、傾向として参考になります。

  • 小さな開発ほど予定より延びやすい:開発の規模が50人月(1人が1か月働く量の50倍)未満のプロジェクトでは、82件中46件(56%)が標準的な工期を超えていました
  • 要件定義は工期の2割を占める:工期の比率は「要件定義:設計から部分ごとのテストまで:全体を通したテスト=20:50:30」です。要件定義は人数を増やして分担しにくいため、作業量に占める比率(13%)より期間に占める比率のほうが大きくなっています

いきなり全社向けに作ると、予定より延びたときの影響も大きくなります。1つの業務・1つの部門でPoCを行い、現場で使われるか、業務に組み込めるか、費用に見合うかを確かめてから本開発に進むのが安全です。また、業務のルールを決める要件定義の期間を削ると、後から作り直しが発生しやすくなります。発注する側での進め方は発注側の要件定義の進め方で解説しています。

当社に相談いただく場合の流れ

段階

内容

1. ご相談(初回無料)

今使っているSaaS、困っている業務、その業務に月にかかっている時間を伺います

2. 課題・要件の整理

3つの出口のどれに当たるかを一緒に整理します。要件が固まっていなくても構いません

3. 提案・見積

出口②なら改修の範囲と費用を、出口③ならPoCで確かめる内容と費用をご提案します

4. 改修・PoC・本開発

開発と、途中での確認

5. 導入・改善

現場での利用開始と、使われ方をふまえた改善

開発期間は、対象の範囲の広さと確認の工程の数によって変わるため、ご相談の時点で内容を確認して目安をお伝えします。ご相談の前に次の4つが分かっていると、話が早く進みます。すべて揃っていなくても構いません。

  • 今使っているSaaSの名前、契約プラン、利用人数
  • どのシステムからどのシステムへ、誰が何を書き写しているか
  • その作業に、月に何時間かかっているか
  • 判断フローの7つの質問への答え(分からない項目があっても構いません)

進め方と対応範囲は受託開発サービスのページでご確認いただけます。判断がつかない段階での相談の仕方は要件が固まっていない段階で開発会社に相談する方法で解説しています。

よくある質問

Q1. 今使っているSaaSをやめて作り直すと、これまで蓄積したデータはどうなりますか。

解約する前に、データを自社で取り出しておく必要があります。取り出せる範囲と形式(添付ファイル、変更の履歴、コメントなどを含むか)はサービスごとに違うので、解約を決める前に提供元の資料で確認してください。取り出したデータは、項目の並びや持ち方が違うため、そのままでは新しいシステムに入らないのが普通です。項目を対応させて形を整える「データ移行」の作業が必要になるので、作り直しの見積を取るときは、データ移行が費用に含まれているかを必ず確かめてください。これからSaaSを契約する場合も、解約時にデータを一括で取り出せるかを契約前に確認しておくと、将来の選択肢を狭めずに済みます。

Q2. SaaSの設定や連携を外部に頼むのと、ゼロから作ってもらうのとでは、どちらが安いですか。

「SaaSを使うのだから、外部に頼む費用も安い」とは限りません。JUASの「ソフトウェア・メトリクス調査2025」では、外部に頼んだ開発の人月単価(1人が1か月働く分の費用)の平均が、ゼロから作る開発で96万円(99件)、パッケージ製品(既製の業務ソフト)を使う開発で144万円(39件)、SaaSを使う開発で144万円(15件)でした。調査では、製品を使いこなすスキルが必要なぶん単価が高くなっていると考察しています。ただし、SaaSを使う開発は件数が少なく、調査でも参考情報とされています。主に大企業のデータでもあるので、単価だけでなく、作業量(何人月かかるか)とあわせて見積を比べてください。

Q3. kintoneのプラグインや、プログラムを書かない連携ツールで足りない部分を補うのは、「作る」に入りますか。

費用の出方は「SaaSを使う」側ですが、管理の手間は「作る」側に近いと考えてください。kintoneでプラグインや外部との連携を使うには、スタンダードコース以上が必要です。30名がライトコース(月1,000円)からスタンダードコース(月1,800円)に変えると、それだけで月2.4万円、5年で144万円増えます。また、プラグインや連携の設定が増えるほど、誰がそれを把握し、提供元の仕様が変わったときに誰が直すのかという問題が出てきます。つなぎの数が少ないうちはプログラムを書かないツールで十分ですが、数が増えたり例外が多かったりする場合は、作ったものと同じように管理する前提で比べてください。プログラムを書かないツールとAIエージェントの違いはノーコードとAIエージェントの違いで解説しています。

Q4. 作ったシステムの保守を、将来別の会社に引き継ぐことはできますか。

契約の内容しだいです。引き継げる状態にしておくには、契約前に次の3点を確認してください。①プログラム本体(ソースコード)と設計資料が納品物に含まれるか、②ソースコードの保管場所(GitHubなど)やサーバーのアカウントを自社の名義にできるか、③作ったものの権利がどちらのものになるか。これらが揃っていれば、別の会社が中身を確認したうえで保守を引き継ぐ前提が整います。当社は、契約内容に基づいて、GitHub上のプログラムの保管場所(リポジトリ)、ソースコード、設計資料などをお引き渡ししています。納品物として何を受け取るべきかはシステム開発の納品物で解説しています。

Q5. AIで開発費が下がったと聞きました。SaaSを使うより、作るほうが安くなったのですか。

小さな業務システムなら作る選択肢が現実的になってきていますが、「作るほうが安い」と言い切れる状況ではありません。社内ツールを作るサービスを提供する米Retoolが2026年2月に公表した調査では、回答者817人の35%が少なくとも1つのSaaSを自社で作ったものに置き換えていて、78%が2026年にさらに自作のツールを増やす予定でした。ただし回答者はRetoolの顧客と利用者で、米国が中心です。作る側に偏った結果なので、割り引いて見る必要があります。同じ調査では、60%が過去1年にIT部門の管理外でソフトウェアを作っていて、AIが書いたプログラムを修正なしで使う人は8%にとどまりました。AIで速くなるのは主にプログラムを書く部分で、何を作るかを決める作業や、作った後の保守とセキュリティの責任はなくなりません。

Q6. SaaSの値上げは、契約の途中でも適用されますか。

契約の条件によって違うため、一律には言えません。年契約の期間中は価格が据え置かれるのか、更新時から新価格になるのか、値上げの何か月前に通知されるのかは、サービスごとの利用規約や契約書で確認してください。契約前に確認しておきたいのは、①値上げの通知の時期と方法、②年契約や複数年契約で価格が固定されるか、③最小契約人数など、単価以外の条件も改定の対象になるか、の3点です。kintoneの2024年の改定では、単価と一緒に最小契約ユーザー数も5から10に変わりました。

Q7. 補助金でSaaSを導入し、足りない部分だけ自費で作ることはできますか。

補助の対象になるのはSaaSなど登録されたITツールの部分で、自社専用に作る部分は自費になると考えてください。組み合わせる場合に気をつけたいのは2点です。1つ目は時期で、交付が決まる前にSaaSの発注・契約・支払いをすると、SaaS部分も補助の対象から外れます。つなぐ部分の開発を急ぐ場合も、SaaSの契約は交付決定の後になるよう計画してください。2つ目は費用の切り分けで、補助の対象になるツールの費用と、自費で作る部分の費用が見積書や契約のうえで混ざらないようにし、どこまでが補助の対象かを申請を支援するIT導入支援事業者に事前に確認してください。

SaaSかカスタム開発かで迷っている方へ

SaaSか作るかは、二択で考えると判断を誤りやすくなります。どの会社でも同じ業務はSaaSに合わせる、SaaSのあいだに残った手作業は1か所だけ直す、強みになっている業務は小さく試してから作る。この3つに分けて考えるのが、この記事の結論です。

  • SaaSを入れたのに、Excelへの書き写しや二重入力がなくならない
  • SaaSが業務に合わず、作り直すべきか、今のSaaSを残して足りない部分を直すべきか判断がつかない
  • 利用人数の増加や値上げで、SaaSの月額が見込みを超えてきた

いずれかに当てはまるなら、初回のご相談は無料です。当社の価格は、小規模な既存システムの改修が30万円〜、PoCが300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別。クラウド利用料などの実費は別途)。医療機関・薬局・インフラ企業での開発実績があり、要件が固まっていない段階からご相談いただけます。

今使っているSaaSと、どこに手作業が残っているかをお聞かせいただければ、3つの出口のどれに当たるかと、おおよその費用をお伝えします。SaaSのままで足りる場合は、作ることをおすすめしません。

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