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AI開発の失敗はどこで起きるか|原因・損失額と発注側が防げるポイント【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/10
AI開発の失敗はどこで起きるか|原因・損失額と発注側が防げるポイント【2026年9月最新】

この記事のポイント

AI開発の失敗は技術力ではなく発注の仕方で決まります。どの工程でいくら損失が出るか、経産省ガイドラインに沿った段階契約で損失を1桁下げる方法、止まったプロジェクトを30万円台から立て直す手順を、公的資料と相場の数字で解説します。

AI開発の失敗は、技術力の差ではなく発注の仕方でほぼ決まります。契約を一括にせず段階に分けて発注すれば、本来なら460万円規模になっていた失敗を、最初の見極め段階で46万円前後に抑えて止められます。

この記事では、実際にどの工程でいくら溶けるのか、発注側が手を打てるのはどこか、そしてすでに止まってしまったプロジェクトをいくらで立て直せるのかを、公的資料と実際の相場の数字で説明します。

AI開発は実際どれくらい失敗しているのか

試作段階で中止となり使われなくなった会議室。AI開発プロジェクトの約3割が試作後に放棄されるとされる

まず、失敗しているのは自社だけではありません。

  • Gartnerは、生成AIプロジェクトの少なくとも30%が2025年末までに、試作の段階を終えた後に放棄されると予測しています。理由として挙げられたのは「データ品質の低さ」「不十分なリスク管理」「コストの増加」「ビジネス価値の不透明さ」の4点です(Gartner プレスリリース 2024-07-29
  • 自律的に業務を進めるタイプのAI(AIエージェント)については、プロジェクトの40%超が2027年末までに中止されるという予測も出ています(Gartner プレスリリース 2025-06-25
  • MITの研究プロジェクト NANDA による調査(The GenAI Divide: State of AI in Business 2025/2025年7月)では、企業の生成AI試験導入のうち95%が測定可能な投資対効果を出せていないと報告されました。経営層150名への聞き取りなどに基づくもので、原因はAIの性能ではなく業務の流れにうまく組み込めていないことだとされています

日本固有の事情もはっきりしています。総務省「令和7年版 情報通信白書」(2024年度調査)によると、生成AIを「積極的に活用する」「領域を限定して利用する」と回答した日本企業は49.7%(前年度42.7%から約7ポイント増)。一方で導入時の課題の1位は「効果的な活用方法がわからない」で30.1%でした。同じ設問で米国は9.7%、中国は10.4%。日本だけが約3倍高いのです。

つまり日本のAI開発の失敗は、技術が足りないから起きているわけではありません。「何に使うか」を決めきらないまま発注していることが最大の原因です。

失敗はどの工程で、いくら溶けるのか

工程が進むごとに費用が積み上がり、止まった段階によって損失額が大きく変わることを表したイメージ

「失敗した」と語られる記事は多いのに、いくら消えたのかを書いている記事はほとんどありません。ここが発注判断で一番知りたいところなので、工程ごとに整理します。

工程と期間の目安

工程

期間の目安

現場で起きること

企画・要件定義

2週間〜2ヶ月

「AIを使いたい」で止まり、測れる目標(例:欠品を20%減らす)に落ちていない

データ整備

工程全体の6〜8割の工数を占める

表記のばらつき、抜け、分類のずれ。着手後に判明して手戻りと追加費用が出る

PoC(試しに小さく作って効果を確かめる工程)

3〜6ヶ月

終了条件と本番移行の基準を決めずに始め、何度も繰り返す

本開発

3〜6ヶ月

試作時の精度が、本番の処理量・速度・セキュリティ要件で再現しない

運用・保守

継続

再学習・監視・記録の設計がなく「作って終わり」になる

見落とされがちなのは、試作に3〜6ヶ月+本開発に3〜6ヶ月=着手から本番稼働まで最短でも半年〜1年という時間感覚です。3ヶ月で成果を求める前提で発注すると、順調に進んでいても「失敗した」と判定されてしまいます。

止まった工程別・損失の目安

外部への支払いは公開されている相場、社内工数は時給3,000円換算で計算した目安です。

止まった工程

外部に払った費用

社内で消えた工数

実質の損失

企画・要件定義で止まる

40〜200万円

担当1名×月10時間×2ヶ月=20時間/約6万円

約46〜206万円

試作の段階で止まる(最も多い)

100〜300万円

担当2名×月20時間×4ヶ月=160時間/約48万円

約148〜348万円

本開発まで進んだが現場で使われない

300万円〜

担当3名×月20時間×9ヶ月=540時間/約162万円

約462万円〜

稼働後に運用費が重くて畳む

月5〜200万円×稼働月数

監視・手直しに張り付く工数

年60〜2,400万円

早い段階で止まるほど損失は小さく、進んでから止まるほど桁が変わります。失敗を完全に防ぐ努力より先に、「早く気づいて早く止める設計」に投資したほうが金額的な効果が大きいのはこの構造が理由です。

もう一つ知っておくべき点があります。試作費用の内訳の6〜7割はデータの収集・整理・分類作業に使われます。つまり「試作が失敗した」場合でも、整備したデータ自体は次に使える資産として残ります。全額が無駄になるわけではありません。この切り分けは後ほど詳しく扱います。

AI開発でよくある失敗と、発注側が防げるポイント

失敗を「AI固有」「組織側」「契約・見積」の3つに分けます。このうち組織側と契約・見積は、発注側だけで手を打てます。

AI固有の失敗

1. 学習させるデータが社内に足りない/使える形になっていない

発注時点では「データはある」と思っていても、実際に見せてもらうと部署ごとに書式が違う、必要な項目が空欄、過去分が紙、といった状態が普通です。

防ぎ方:契約前に、実データを100〜500件だけ開発会社に見てもらう。ここで整備の追加費用(数十万〜数百万円)が読めます。

2. 精度への過剰な期待

AIは100%正確にはなりません。80〜90%の精度は業務によっては十分な成果ですが、100%を前提にしていると同じ結果が「失敗」と判定されます。

防ぎ方:契約前に「何%以上なら業務に載せるか」と「間違えたときに誰がどう直すか」を決めておく。この2つを決めるだけで、成否の判定で揉めなくなります。

3. 試作は成功したのに本番に行けない

少量データ・手動実行なら動くが、本番の処理量、応答速度、社内のセキュリティ要件、既存システムとの接続で止まります。

防ぎ方:試作の段階で「本番でどのシステムと、どの権限でつながるのか」を1枚の図にしておく。

4. 使った分だけ課金される料金でコストが膨らむ

生成AIは処理量に応じた課金が基本です。試験導入時の利用者5名では月数万円だったものが、全社200名で月数十万円になることがあります。

防ぎ方:見積時に「利用者が10倍になったときの月額」を必ず出してもらう。

5. 中身が引き継げない

何をどう作ったのか、なぜその判断にしたのかが記録されておらず、担当者も会社も変えられない状態になります。

防ぎ方:契約書に成果物の範囲(プログラム、設定値、学習させたデータ、手順書)と権利の帰属を明記する。

組織側の失敗(自社に原因があるもの)

開発会社が書く記事は「ベンダー選びが悪かった」に寄りがちですが、実際には発注側に原因がある失敗も同じくらいあります。正直に挙げます。

失敗

具体的に起きること

発注側の打ち手

目的と撤退基準が曖昧

「DXのため」で始まり、何が達成できたら成功なのか誰も答えられない

数値目標を1つと、中止する条件を先に文書化する

決裁者が会議に出てこない

現場と開発会社で決めた仕様が、最後に役員判断でやり直しになる

開始時と各段階の判定会に決裁者を必ず入れる

運用の担当者が決まっていない

納品後に誰も面倒を見ず、3ヶ月で使われなくなる

契約前に運用担当者を氏名で決める

現場が使わない

既存の手順を変えずにAIを足したため、二重作業になる

業務手順そのものを作り直す前提で設計する

セキュリティ確認が後回し

完成後に情報システム部門の審査で止まる

企画段階で審査部門を巻き込む

補助金ありきで始める

締切に合わせて要件を膨らませ、使わない機能が増える

補助金は資金の手段であって目的にしない

補助金を使う場合は、締切と入金時期を先に確認してから要件を決めてください。制度側のスケジュールは変わるため、詳細はAI導入で使える補助金の締切補助金申請でよくある失敗を参照してください。

導入したのに使われない、という段階の話は業務自動化が定着しない原因、セキュリティ要件の整理はAIエージェントのセキュリティ対策で詳しく扱っています。

契約・見積の失敗

失敗

なぜ危険か

発注側の打ち手

「AI開発一式」で1行の見積

何が含まれ、何が追加になるのか判定できない

対象業務/データ範囲/成果物/作業者数に分解した見積を要求する

検収の基準がない

「完成した」の定義が双方で違い、支払いで揉める

各段階の終わりに何を受け取るかを契約書に書く

権利の帰属が未整理

作ったプログラムや学習させたデータを自社で使えない

プログラム・データ・成果物ごとに帰属を明記する

途中で要望が増えていく

費用と期間が膨らみ、責任の所在が消える

変更を受ける手順と追加費用の計算方法を契約時に決める

契約の型が実態と合っていない

完成責任の有無で認識がずれる(次の章で詳述)

段階ごとに契約を分ける

見積書の読み方はAI開発の見積もりの比較方法、依頼先の見極め方はAI開発会社の選び方で具体的に整理しています。

契約の分け方だけで、損失は1桁変わる

一括契約ではなく企画・試作・本開発と段階に分けて締結した契約書のイメージ

発注側が使える最も効果の大きい打ち手がここです。しかも追加コストはかかりません。

経済産業省が推奨している「段階を分けて進める」方式

経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(1.1版)」は、AI開発を4段階に分け、各段階の終わりに続けるか中止するかを判断する方式を推奨しています。同省は2025年2月に「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」も公開しており、契約前に確認すべき項目はここで一覧できます。どちらも無料で、発注側がそのまま商談に持ち込める資料です。

段階

目的

受け取るもの

契約の型

①見極め

AIで実現できるかの初期検討

事業性・技術性の評価報告書

準委任

②試作

小さく作って仮説を検証する

試作物・性能のデータ

準委任

③開発

本格的なシステム構築

学習済みのモデル、動作プログラム

準委任/請負を併用

④追加学習

稼働後の性能向上

更新された設定値

保守契約

ここが重要です。一括で発注すると、①で「無理そうだ」と分かっても最後まで払うことになります。段階を分けておけば、①の終了時点で止められます。前の章の損失表で言えば、462万円の失敗を46万円で止められるということです。

なぜAI開発は「完成を約束する契約」が難しいのか

契約の型は2つあります(特許庁 IP BASE「AI開発を受託する際の契約方式の選び方 請負型と準委任型」より)。

請負型

準委任型

約束すること

仕事の完成

適切な注意を払って作業を実施すること

完成責任

あり

なし

不具合の責任

契約不適合責任。不具合を知ってから1年以内に開発会社へ通知すれば、知った日から5年以内かつ引渡しから10年以内の範囲で、修補・代金減額・損害賠償・解除を請求できる

善管注意義務(専門家として通常求められる注意を払う義務)の範囲。完成しなかったこと自体は責任にならない

報酬の発生

完成・引渡し時

(i)作業した時間に応じて/(ii)成果の引渡し時

発注側が見落としやすいのは、この「知ってから1年以内の通知」です。請負型で契約していても、不具合に気づいてから放置すると請求できなくなります。おかしいと思った時点で、口頭ではなくメールなど記録の残る形で伝えてください。

AI開発が普通のシステム開発と決定的に違うのは、①性能の保証 ②検収 ③不具合の責任の3点です。AIの精度は学習データの量と質に左右され、まだ見たことのないデータに対する精度を事前に保証することが技術的に困難です。そのため開発会社は請負型に難色を示すのが一般的で、受けたとしてもリスク分を上乗せした高い見積になります。

実務上の落としどころは「成果完成型の準委任」です。成果物を受け取った時点で支払いが発生するため、発注側は「何も出てこないのに満額払う」事態を避けられ、開発会社は保証できない性能への完成責任を負わずに済みます。

発注側が今日からできること

  1. 見積を「見極め」「試作」「本開発」に分けて出してもらう
  2. 各段階の終わりに、続けるか中止するかを判断する会議を契約書に入れる
  3. 各段階で受け取る成果物を、名前を付けて列挙する
  4. 中止した場合に、それまでの成果物を自社が使えることを明記する

この4つを入れるだけで、失敗の金額は前の章の表の1段上(=小さい方)に移ります。当社では要件が固まっていない段階でも、この段階分けの設計から相談を受け付けています(AI開発・システム開発のご相談|初回相談無料)。

内製と外注のどちらで進めるかを迷っている段階なら、生成AIを内製するか外注するかの判断も合わせて確認してください。

着手後、いつ何を見れば失敗に気づけるか

進捗と精度を定点で確認し、失敗の兆候を早期に検知するチェックの様子

「こうすると失敗する」だけでは、進行中のプロジェクトの判断には使えません。時期ごとに見るものと赤信号を表にします。月1回、この表だけ確認してください。

時期

見るもの

赤信号

契約前

見積書の粒度

「AI開発一式」で1行。対象業務・データ範囲・成果物が書かれていない

着手1ヶ月目

成功の判定基準

「業務を効率化する」のまま。何がどれだけ変われば次に進むのかが文書になっていない

着手2ヶ月目

データの実物

実データを1件も扱えていない。「データは後で用意します」が続いている

試作の終了時

本番移行の基準

精度の数字だけ報告され、現場の誰がいつ使うのかが決まっていない

本開発の中盤

運用の担当者

納品後に面倒を見る人が空欄。情報システム部門の審査が未着手

本番移行の直前

月額の実測値

利用量が増えたときの月額が試算されていない

稼働1ヶ月後

実際の利用者数

想定の3割未満しか使っていない。現場が元のExcelに戻っている

撤退基準の決め方は難しく考える必要はありません。「①いつまでに ②何が ③どこまで達成できていなければ ④中止する」の4項目を1行で書くだけです。

例:「試作の開始から4ヶ月後に、対象業務3種類のうち2種類で判定精度85%に届いていなければ、本開発には進まない」

この1行を契約時に双方で持っておくと、進行中に「もう少し粘れば」で費用が積み上がる状況を防げます。

費用の目安と、失敗した後にいくらで立て直せるか

公開されている相場

工程

相場(税別)

企画・要件定義

40万〜200万円

試作(小さく作って効果を確かめる工程)

100万〜300万円(大規模なものは500万〜1,500万円)

本開発(設計・実装・テスト)

300万円〜数千万円

運用・保守

月5万〜200万円

データ整備・分類作業

数十万〜数百万円(別途発生することが多い)

試作の相場が「100〜300万円」と「500〜1,500万円」に分かれるのは、扱うデータ量とつなぐシステムの数で規模が二分されるためです。中堅企業の業務1〜3種類が対象なら、前者のレンジで収まるのが一般的です。工程ごとの内訳はAI受託開発の費用相場、試作段階だけの金額感はAI PoCの費用で分解しています。

当社の価格

メニュー

価格(税別)

想定する使い方

小規模改修

30万円〜

止まったプロジェクトの一部だけを切り出して作り直す/既存システムの手直し

試作(PoC)

300万円〜

業務1〜3種類を対象に、効果が出るかを確かめる

本開発

個別見積

試作で効果が確認できた範囲を本番システムにする

初回相談

無料

要件が固まっていない状態でも可

一度失敗した後の読者にとって重要なのは、次の一歩が300万円である必要はないという点です。前の開発で作ったものやデータが一部でも残っているなら、範囲を絞って30万円台から作り直せるケースは珍しくありません。

例えば「見積書の内容を読み取って基幹システムに入れる」という業務のうち、読み取り部分は前の開発で動いていた場合、入力側だけを作り直せば済みます。この規模なら30万〜60万円、期間2〜4週間が目安です。逆に、対象業務が5種類以上あり、データも未整備なら、いきなり本開発に行かず300万円〜の試作から入るべきです。

どちらに当てはまるかは、前の開発の成果物を見れば判定できます。判定だけのご相談も受け付けています(AI開発・システム開発のご相談はこちら)。

すでに止まっているプロジェクトをどう畳むか

「AI開発 失敗」で調べている方の多くは、これから発注する人ではなくすでに1回止まっている人です。ここが本題という方に向けて書きます。

まず、資産として残るものと捨てるものを切り分ける

全部が無駄になったと考える必要はありません。

次に使えるもの

  • 整備したデータ(表記の統一、分類の付与が済んだもの)。前述のとおり試作費用の6〜7割はここに使われています
  • 業務の手順を書き出した資料(どの部署が何をどの順でやっているか)
  • 「この方法では無理だった」という検証結果。同じ失敗を2回しないための情報です
  • 稼働している部分(一部の機能だけ動いているなら、それは残す)

捨てる判断をしていいもの

  • 使われていない機能。作った費用は戻りませんが、維持費は今日から止められます
  • 記録が一切なく、誰も中身を説明できないプログラム。読み解く費用のほうが作り直すより高くつくことがあります
  • 対象業務そのものが変わってしまった前提での設計

別の会社に引き継ぐときに確認すること

  1. 成果物の権利が自社にあるか(契約書の該当条項を確認。ここが自社に無いと引き継げません)
  2. プログラム本体と設定値を受け取れるか(動いている画面だけでなく、中身の一式)
  3. 整備済みのデータを受け取れるか(これが一番価値があります)
  4. 未払いと支払い済みの範囲(引き継ぎ時の交渉材料になります)
  5. 稼働中のものがあれば、止めずに移せるか

立て直しに向くケース/急いで作り直さない方がよいケース

早めに立て直した方がよい

いま急いで作り直さない方がよい

対象業務が今も毎月発生していて、人手で回している

対象業務そのものが縮小・廃止に向かっている

データが整備済み、または整備の見通しがある

使えるデータが社内にまだ存在しない

一部でも動いていて、現場に使っている人がいる

現場が誰も使っておらず、運用担当者も決まらない

何が達成できたら成功か、数値で言える

目的が「AIを導入すること」のままになっている

維持費が毎月発生し続けている

まず業務手順の整理から着手すべき状態

右側に当てはまる場合、開発を発注するより先に業務の整理が必要です。当社もその状態では開発をお勧めしません。その判断も含めて、初回相談は無料で受け付けていますセカンドオピニオンとして、前の開発会社の見積や成果物を見せていただく相談も歓迎します。

実際にやった事例

守秘義務があるため社名は出せませんが、実際に手を動かした内容として書きます。

調剤薬局のケース:複数システムへの二重入力で止まっていた

課題

前の開発で「処方データをAIで読み取る」部分までは作られていたものの、読み取った内容を薬歴システムと在庫システムの2箇所に人が手入力し直していました。結果としてAIを入れる前より確認作業が増え、現場から「使いにくい」と言われて放置されていました。

作ったもの

読み取り部分は既存のものを残し、転記の部分だけを作り直しました。2つのシステムに同じ内容を流し込み、内容が食い違ったときだけ担当者に確認画面を出す形です。全部作り直さず範囲を絞ったため、小規模改修の枠で収まりました。

何がどう変わったか

二重入力そのものがなくなり、担当者が目視するのは「食い違いが出た件」だけになりました。前の開発で作られていた読み取り部分が資産として活きたため、追加投資は最小限で済んでいます。

インフラ企業のケース:試作の終了条件がなく1年止まっていた

課題

「点検記録をAIで分析する」という取り組みが、試作を繰り返して1年以上続いていました。何ができたら本番にするのかが決まっておらず、精度の報告だけが毎月上がってくる状態でした。

作ったもの

最初にやったのは開発ではなく、判定基準の作成です。対象を点検記録3種類に絞り、「どの精度に届いたら本番に進む/届かなければ中止する」を1行で決めました。そのうえで、基準を満たした1種類だけを本番システムに載せています。

何がどう変わったか

残る2種類は「現時点では見送る」と正式に判断し、費用の流出を止めました。中止を決められたこと自体が成果です。曖昧なまま続けていれば、前述の表で言う「本開発まで進んだが現場で使われない」(約462万円〜)のパターンに入っていました。

相談から立て直しまでの流れと期間

段階

やること

期間

費用(税別)

1. 初回相談

現状のヒアリング。前の開発の成果物・契約書・見積を見せていただく

1回60分

無料

2. 切り分け

使えるもの/捨てるものの判定、次の一歩の提案

1〜2週間

無料(範囲が広い場合は見極め段階の見積を提示)

3-a. 小規模改修

範囲を絞って作り直す

2週間〜2ヶ月

30万円〜

3-b. 試作

効果が出るかを確かめる工程から入り直す

3〜6ヶ月

300万円〜

4. 本開発

効果が確認できた範囲を本番システムにする

3〜6ヶ月

個別見積

5. 運用・改善

監視と手直し

継続

個別見積

2で終わっても構いません。「いま作るべきではない」という結論になることもあり、その判断こそが次の失敗を防ぎます。要件が固まっていない、社内で方針が割れている、前の開発会社との話が終わっていない——どの状態でもご相談いただけます。

よくある質問

Q1. すでに一括で契約してしまいました。今から段階を分けることはできますか?

進行中でも、変更覚書を交わす形で分割できる場合があります。相手にとっても、揉めた状態で完成責任を負い続けるより、区切って一度精算する方が有利になることが多いためです。まず現在の契約書で「変更の手順」と「中途解約」の条項を確認してください。この2つがどう書かれているかで交渉の余地が決まります。

Q2. 前の開発会社が作ったものを、別の会社が引き継げますか?

契約書で成果物の権利が自社にあること、そしてプログラム本体と設定値を受け取れることが条件です。この2つが揃っていれば技術的には引き継げます。判断の目安は単純で、記録が残っていれば引き継ぎ、残っていなければ作り直しです。中身を読み解く調査だけで数十万円かかることがあり、その額が作り直しの見積(範囲を絞れば30万円〜)を超えるなら、引き継がない方が安く済みます。当社では初回相談の時点で、どちらが安いかを先に判定してお伝えします。

Q3. 社内にデータがまだない状態でも相談していいですか?

問題ありません。むしろその段階でご相談いただく方が損失は小さくなります。データがない場合の選択肢は「これから溜める仕組みだけ先に作る(小規模改修の枠で対応できることが多い)」「既存の書類から作れるか検証する」「AIを使わずに業務手順の整理で解決する」の3つです。データがないまま試作に300万円を投じるのは、最も避けるべき進め方です。

Q4. 精度が何%あれば「成功」と考えればいいですか?

一律の基準はなく、間違えたときの損害の大きさで決まります。間違いを人が後から直せる業務(社内向けの下書き作成、書類の一次振り分けなど)なら80%台でも十分に効果が出ます。逆に、間違いが顧客対応や安全に直結する業務では95%でも人の確認を外せません。決めるべきは精度の数字だけでなく、間違いを誰がどの工程で見つけて直すかです。ここまで決めてから発注してください。

Q5. 失敗した分の費用は返してもらえますか?

契約の型で大きく変わります。完成を約束する請負型なら、完成していない・契約内容に適合していないことを示せれば請求の余地があります。一方、準委任型は完成責任を負わない契約なので、適切に作業が行われていた場合は返金の対象になりません。発注時にどちらの型で契約したかを確認するのが最初の一歩です。個別の法的判断は弁護士にご相談ください。当社は法的判断は行いませんが、成果物が契約書の記載と合っているかの技術的な確認はお手伝いできます。

Q6. 補助金を使う前提でも進められますか?

進められますが、補助金の締切に合わせて要件を決めないでください。期限に間に合わせるために機能を膨らませ、使われない機能が増えるのが典型的な失敗です。順序は「やることを決める → 段階に分ける → その中で補助対象になる部分を確認する」です。

もう一点、補助金は原則として後払いです。採択されてから事業を実施し、実績報告と確定検査を経てはじめて振り込まれるため、開発費はいったん自社で立て替える必要があります。入金前提で資金繰りを組まないでください。制度のスケジュールは変わるため、AI導入で使える補助金の締切で最新の情報を確認してください。

Q7. 相談だけしたい場合、費用はかかりますか?

初回相談は無料です。前の開発の見積書や成果物を見ての判定も、この範囲で対応します。その場で発注いただく必要はありません。「いま作るべきではない」という結論をお伝えすることもあります。

AI開発の失敗を、次の発注で繰り返さないために

この記事の要点は3つです。

  1. 失敗の大半は技術ではなく発注の仕方で起きる。日本企業の課題1位は「効果的な活用方法がわからない」(30.1%)で、これは発注側で解決できる問題です
  2. 段階を分けて契約すれば、損失の桁が変わる。一括発注で462万円失う失敗を、見極めの段階で止めれば46万円で済みます。経済産業省のガイドラインも段階を分ける方式を推奨しています
  3. 一度失敗しても、次の一歩は30万円台から踏める。整備したデータと動いている部分は資産として残ります

止まっているプロジェクトをどう畳むか、次はどこから手を付けるか。前の開発会社の見積書や成果物を見せていただければ、引き継ぐべきか作り直すべきかを判定してお返しします。要件が固まっていない段階でも構いません。

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参考資料

  • Gartner「30% of Generative AI Projects Will Be Abandoned After Proof of Concept By End of 2025」(2024-07-29)
  • Gartner「Over 40% of Agentic AI Projects Will Be Canceled by End of 2027」(2025-06-25)
  • MIT NANDA「The GenAI Divide: State of AI in Business 2025」(2025年7月)
  • 総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年7月公表)
  • 経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」1.1版(令和元年12月)
  • 経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(令和7年2月)
  • 特許庁 IP BASE「AI開発を受託する際の契約方式の選び方 請負型と準委任型」

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この記事の著者

AI革命

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編集部

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