AI開発の失敗はどこで起きるか|本番で止まる原因と発注前に確かめるデータ・運用条件

この記事のポイント
AI開発が試作の後に本番で止まる原因を、データ・人の確認負担・既存システムとの接続・保守担当に分け、発注前や再開前に確かめる証拠、是正の選択、止める条件を整理。経済産業省ガイドラインに沿った段階契約と、止まった開発を検証し直す範囲も解説。
AI開発の失敗は、試作(PoC)が動いたあとに本番の業務で使える条件が揃わず止まる形で起きることがあります。Gartner などの調査が止まる理由として挙げる点(データ品質、コスト、業務への組み込み不足など)は、データ・人の確認の手間・既存システムとの接続・保守の担当という発注前に確かめられる条件と重なります。
この記事では、本番で止まる原因ごとに「何を見れば分かるか」「どう直すか」「どうなったら止めるか」を整理し、すでに止まっているプロジェクトを再開する前に検証し直す範囲と、契約の分け方を公的資料に沿って説明します。
AI開発は実際どれくらい失敗しているのか

まず、失敗しているのは自社だけではありません。
- Gartnerは、生成AIプロジェクトの少なくとも30%が2025年末までに、試作の段階を終えた後に放棄されると予測しています。理由として挙げられたのは「データ品質の低さ」「不十分なリスク管理」「コストの増加」「ビジネス価値の不透明さ」の4点です(Gartner プレスリリース 2024-07-29)
- 自律的に業務を進めるタイプのAI(AIエージェント)については、プロジェクトの40%超が2027年末までに中止されるという予測も出ています(Gartner プレスリリース 2025-06-25)
- MITの研究プロジェクト NANDA による調査(The GenAI Divide: State of AI in Business 2025/2025年7月)では、企業の生成AI試験導入のうち95%が測定可能な投資対効果を出せていないと報告されました。経営層150名への聞き取りなどに基づくもので、原因はAIの性能ではなく業務の流れにうまく組み込めていないことだとされています
日本固有の事情もあります。総務省「令和7年版 情報通信白書」(2024年度調査)によると、生成AIを「積極的に活用する」「領域を限定して利用する」方針を定めた日本企業は49.7%(前年度42.7%)でした。一方で、生成AI導入に際しての懸念事項は日本では「効果的な活用方法がわからない」が最も多く30.1%でした。同じ項目は米国9.7%、中国10.4%、ドイツ26.5%です(同白書 図表I-1-2-15)。
これらの調査が挙げる理由は、データ品質、リスク管理、コスト、業務への組み込み、使い道の不明確さです。AIの性能そのものより、「どの業務の、どの作業を、どの条件で任せるか」を決めきらないまま発注していることが止まる原因になりやすい、と読めます。
失敗はどの工程で起き、止まったときに何を失うのか

「失敗した」と一言でいっても、止まった工程によって失うものと、次に使えるものが違います。工程ごとに、止まりやすい理由と、発注側が確かめられる証拠を並べます。
工程ごとに止まる理由と、確かめる証拠
工程 | 現場で起きること | 確かめる証拠 |
|---|---|---|
企画・要件定義 | 「AIを使いたい」で止まり、測れる目標(例:確認作業の時間を減らす件数)に落ちていない | 対象業務・使う人・成功の数値・中止の条件が1枚の文書になっているか |
データ整備 | 表記のばらつき、抜け、分類のずれが着手後に判明し、手戻りと追加費用が出る | 実データの一部(個人情報を除いたもの)を開発会社が実際に見たか。欠け・揺れの件数を数えたか |
PoC(試しに小さく作って効果を確かめる工程) | 終了条件と本番移行の基準を決めずに始め、何度も繰り返す | 「いつまでに・何が・どこまで届けば本番へ/届かなければ中止」が書かれているか |
本開発 | 試作時の結果が、本番の処理量・速度・権限・セキュリティ要件で再現しない | 本番で接続するシステム・権限・処理量を試作の段階で図にしたか |
運用・保守 | 監視・手直し・記録の担当がなく「作って終わり」になる | 納品後に誰が誤りを直し、誰が変更を判断するかが決まっているか |
期間は対象業務の数、データの状態、つなぐシステムによって大きく変わります。「3ヶ月で成果」のように期間だけを先に決めると、順調に進んでいても「失敗した」と判定されることがあります。期間より先に、各工程の終わりに何を見て続けるか・止めるかを決めてください。
止まった工程別に失うもの(仮定に基づく試算)
失う金額は「支払い済みの外部費用+社内で使った工数(人数×月の時間×月数×時給)− 次に使える成果物」で考えられます。下の表は、外部費用と工数を仮に置いた説明用の試算です。実際の金額は、契約内容と支払い済みの範囲で計算し直してください。社内工数は時給3,000円で換算しています。
止まった工程 | 外部費用(仮定) | 社内工数(仮定) | 合計(試算) |
|---|---|---|---|
企画・要件定義で止まる | 50万円 | 1名×月10時間×2ヶ月=20時間/6万円 | 56万円 |
試作の段階で止まる | 300万円(当社PoCの開始価格を仮に置いた場合) | 2名×月20時間×4ヶ月=160時間/48万円 | 348万円 |
本開発まで進んだが現場で使われない | 300万円+本開発費(個別に決まる) | 3名×月20時間×9ヶ月=540時間/162万円 | 462万円+本開発費 |
稼働後に運用費が重くて畳む | 月額の運用費×稼働月数 | 監視・手直しの工数 | 契約と稼働月数による |
この式から分かるのは、止まる工程が後になるほど、外部費用と社内工数の両方が積み上がることです。失敗を完全に防ぐことより、早い段階で「続けるか・止めるか」を判断できるようにしておく方が、失う金額を小さくしやすくなります。
もう一つの項は「次に使える成果物」です。整備したデータ、業務手順の書き出し、「この方法では届かなかった」という検証結果は、次の開発で使えることがあります。試作が止まっても全額が無駄になるとは限らないため、後半で切り分け方を扱います。
AI開発でよくある失敗と、発注側が防げるポイント
失敗を「本番で止まる原因」「組織側」「契約・見積」の3つに分けます。どれも、発注前か再開前に確かめられる条件です。
本番で止まる原因と、確かめる証拠
ここで挙げる原因は、AIの性能の限界を一律に言うものではありません。特定のデータと運用の条件が揃っていないときに起きる止まり方です。
1. 技術検証の成功を、業務の完了と取り違える
試作で「AIが正しく答えた割合」だけを測り、現場の作業がどこまで終わるか(入力・確認・転記・記録まで)を測っていないケースです。精度の報告は上がるのに、業務は減らない状態です。
- 確かめる証拠:試作の評価に、精度とは別に「1件の作業が最後まで終わる時間」「人が直した件数」が入っているか
- 是正の選択:評価の物差しを「業務の完了」に置き直し、対象業務を1種類に絞って再検証する
- 止める条件の例:対象を絞っても、人の作業時間が試作前より減らない
2. データが揃わない
発注時点では「データはある」と思っていても、部署ごとに書式が違う、必要な項目が空欄、過去分が紙、といった状態が着手後に分かることがあります。
- 確かめる証拠:契約前に、個人情報を除いた実データの一部を開発会社に見てもらい、欠け・揺れ・紙のままの範囲を数えたか
- 是正の選択:データ整備を別の工程(別の見積)として切り出す/これから溜める仕組みを先に作る/AIを使わない手順の整理で済ませる
- 止める条件の例:必要な項目が業務の記録として存在せず、今後も溜める見込みがない
3. 人の確認負担が増える
AIは100%正確にはなりません。誤りを見つける手順を決めずに入れると、AIの出力を全件人が見直すことになり、導入前より手間が増えます。
- 確かめる証拠:「何%以上なら業務に載せるか」と「間違えたときに誰が、どの画面で、どう直すか」が決まっているか。確認が必要な件だけを抜き出す仕組みがあるか
- 是正の選択:全件確認から「食い違い・自信の低い件だけ確認」へ設計を変える/確認画面と記録を開発範囲に入れる
- 止める条件の例:確認を絞る条件を決めても、確認にかかる時間が手作業の時間を上回る
4. 既存システムにつながらない
少量データ・手動実行なら動くが、本番の処理量、応答速度、社内のセキュリティ要件、既存システムとの接続で止まります。
- 確かめる証拠:本番でどのシステムと、どの方法(公開API・Webhook・CSV・画面操作)で、どの権限でつながるのかを、試作の段階で1枚の図にしたか。情報システム部門の審査を通したか
- 是正の選択:接続方法を変える(API がなければ CSV 連携から始める等)/接続部分だけを既存システムの改修として切り出す
- 止める条件の例:必要な接続が社内規程や契約上認められず、代わりの経路もない
5. 保守担当が決まらない
納品後に誤りを直す人、変更を判断する人がおらず、しばらくすると使われなくなります。何をどう作ったのか記録がなく、担当者も会社も変えられない状態になることもあります。
- 確かめる証拠:契約前に運用担当者が氏名で決まっているか。契約書に成果物の範囲(ソースコード、設定値、学習・整備したデータ、手順書)と権利の帰属が書かれているか
- 是正の選択:運用担当を決めてから本番化する/保守を外部に頼むか、社内でAIを使って直し続けるかを決め、その前提で手順書を作る
- 止める条件の例:本番化の時点で、社内にも外部にも保守を担う人がいない
このほか、使った分だけ課金される料金も止まる原因になります。生成AIは処理量に応じた課金が基本のため、試験導入時の少人数と全社展開では月額が大きく変わります。見積時に「利用者や処理件数が10倍になったときの月額」を出してもらってください。
上の5つを、公的・公式の資料が挙げる理由と並べると次のとおりです。
止まる原因 | 公的・公式資料での扱い | 発注前に確かめること |
|---|---|---|
技術検証と業務完了の取り違え | MIT NANDA は業務の流れへの組み込み不足を、Gartner は事業価値の不明確さを挙げる | 評価の物差しに業務の完了時間・人が直した件数があるか |
データが揃わない | Gartner がデータ品質の低さを挙げる | 実データの一部を見て欠け・揺れを数えたか |
人の確認負担が増える | IP BASE は、未知の事象に対する推論精度の保証が難しいことを契約上の前提として説明する | 確認する件の絞り方と、誤りの直し方が決まっているか |
既存システムにつながらない | 上記の資料では直接扱っていない(受託開発で一般に確認する工程から整理) | 接続方法・権限・審査が試作の段階で決まっているか |
保守担当が決まらない | 経産省ガイドラインは追加学習(稼働後)を独立した段階として扱う | 運用担当者と成果物の範囲・権利が契約前に決まっているか |
出典は記事末の参考資料にまとめています。
組織側の失敗(自社に原因があるもの)
開発会社が書く記事は「ベンダー選びが悪かった」に寄りがちですが、発注側に原因がある失敗もあります。正直に挙げます。
失敗 | 具体的に起きること | 発注側の打ち手 |
|---|---|---|
目的と撤退基準が曖昧 | 「DXのため」で始まり、何が達成できたら成功なのか誰も答えられない | 数値目標を1つと、中止する条件を先に文書化する |
決裁者が会議に出てこない | 現場と開発会社で決めた仕様が、最後に役員判断でやり直しになる | 開始時と各段階の判定会に決裁者を必ず入れる |
運用の担当者が決まっていない | 納品後に誰も面倒を見ず、しばらくすると使われなくなる | 契約前に運用担当者を氏名で決める |
現場が使わない | 既存の手順を変えずにAIを足したため、二重作業になる | 業務手順そのものを作り直す前提で設計する |
セキュリティ確認が後回し | 完成後に情報システム部門の審査で止まる | 企画段階で審査部門を巻き込む |
補助金ありきで始める | 締切に合わせて要件を膨らませ、使わない機能が増える | 補助金は資金の手段であって目的にしない |
補助金を使う場合は、締切と入金時期を先に確認してから要件を決めてください。制度側のスケジュールは変わるため、詳細はAI導入で使える補助金の締切と補助金申請でよくある失敗を参照してください。
導入したのに使われない、という段階の話は業務自動化が定着しない原因、セキュリティ要件の整理はAIエージェントのセキュリティ対策で詳しく扱っています。
契約・見積の失敗
失敗 | なぜ危険か | 発注側の打ち手 |
|---|---|---|
「AI開発一式」で1行の見積 | 何が含まれ、何が追加になるのか判定できない | 対象業務/データ範囲/成果物/作業者数に分解した見積を要求する |
検収の基準がない | 「完成した」の定義が双方で違い、支払いで揉める | 各段階の終わりに何を受け取るかを契約書に書く |
権利の帰属が未整理 | 作ったプログラムや学習させたデータを自社で使えない | プログラム・データ・成果物ごとに帰属を明記する |
途中で要望が増えていく | 費用と期間が膨らみ、責任の所在があいまいになる | 変更を受ける手順と追加費用の計算方法を契約時に決める |
契約の型が実態と合っていない | 完成責任の有無で認識がずれる(次の章で詳述) | 段階ごとに契約を分ける |
見積書の読み方はAI開発の見積もりの比較方法、依頼先の見極め方はAI開発会社の選び方で具体的に整理しています。
契約を段階に分けると、止める判断を早くできる

発注側が使いやすい打ち手の一つが、契約を段階に分けることです。段階ごとに見積と判定の会議が増えますが、止める判断を早い段階でできるようになります。
経済産業省が推奨している「段階を分けて進める」方式
経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(1.1版)」は、AI開発を4段階に分け、各段階の終わりに続けるか中止するかを判断する方式を推奨しています。同省は2025年2月に「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」も公開しており、契約前に確認すべき項目はここで一覧できます。どちらも無料で、発注側がそのまま商談に持ち込める資料です。
段階 | 目的 | 受け取るもの | 契約の型 |
|---|---|---|---|
①見極め | AIで実現できるかの初期検討 | 事業性・技術性の評価報告書 | 準委任 |
②試作 | 小さく作って仮説を検証する | 試作物・性能のデータ | 準委任 |
③開発 | 本格的なシステム構築 | 学習済みのモデル、動作プログラム | 準委任/請負を併用 |
④追加学習 | 稼働後の性能向上 | 更新された設定値 | 保守契約 |
一括で発注すると、①で「無理そうだ」と分かっても、契約によっては途中で止めにくくなります。段階を分けておけば、①の終了時点で止める判断ができます。先に示した試算で言えば、「本開発まで進んだが使われない」行ではなく、「企画・要件定義で止まる」行で止められる、ということです。
なぜAI開発は「完成を約束する契約」が難しいのか
契約の型は2つあります(特許庁 IP BASE「AI開発を受託する際の契約方式の選び方 請負型と準委任型」より)。
請負型 | 準委任型 | |
|---|---|---|
約束すること | 仕事の完成 | 適切な注意を払って作業を実施すること |
完成責任 | あり | なし |
不具合の責任 | 契約不適合責任。不具合を知ってから1年以内に開発会社へ通知すれば、知った日から5年以内かつ引渡しから10年以内の範囲で、修補・代金減額・損害賠償・解除を請求できる | 善管注意義務(専門家として通常求められる注意を払う義務)の範囲。完成しなかったこと自体は責任にならない |
報酬の発生 | 完成・引渡し時 | (i)作業した時間に応じて/(ii)成果の引渡し時 |
発注側が見落としやすいのは、この「知ってから1年以内の通知」です。請負型で契約していても、不具合に気づいてから放置すると請求できなくなります。おかしいと思った時点で、口頭ではなくメールなど記録の残る形で伝えてください。
AI開発が普通のシステム開発と決定的に違うのは、①性能の保証 ②検収 ③不具合の責任の3点です。AIの精度は学習データの量と質に左右され、まだ見たことのないデータに対する精度を事前に保証することが技術的に困難です。そのため請負型で性能まで保証するかは交渉の論点になりやすい一方、IP BASE は「AIだから性能保証は難しい」と決めつけず、開発対象に応じて条件を交渉するよう勧めています。
実務上の選択肢の一つが、準委任型のうち「成果完成型」です。成果物の引渡しと引き換えに報酬を支払う形のため、発注側は「何も出てこないのに満額払う」事態を避けやすくなります。IP BASE は、この型では開発会社が事実上、完成義務に近い立場に置かれると説明しています。作業した分を払う「履行割合型」とどちらにするかは、段階ごとに決めてください。
発注側が今日からできること
- 見積を「見極め」「試作」「本開発」に分けて出してもらう
- 各段階の終わりに、続けるか中止するかを判断する会議を契約書に入れる
- 各段階で受け取る成果物を、名前を付けて列挙する
- 中止した場合に、それまでの成果物を自社が使えることを明記する
この4つを入れておくと、止める判断を前の段階で下しやすくなります。当社では要件が固まっていない段階でも、この段階分けの設計から相談を受け付けています。初回相談は無料・30分(オンライン)で、相談後に依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします(止まっているAI開発の再検証範囲を相談する)。
内製と外注のどちらで進めるかを迷っている段階なら、生成AIを内製するか外注するかの判断も合わせて確認してください。
着手後、いつ何を見れば失敗に気づけるか

「こうすると失敗する」だけでは、進行中のプロジェクトの判断には使えません。時期ごとに見るものと赤信号を表にします。月1回、この表だけ確認してください。
時期 | 見るもの | 赤信号 |
|---|---|---|
契約前 | 見積書の粒度 | 「AI開発一式」で1行。対象業務・データ範囲・成果物が書かれていない |
着手1ヶ月目 | 成功の判定基準 | 「業務を効率化する」のまま。何がどれだけ変われば次に進むのかが文書になっていない |
着手2ヶ月目 | データの実物 | 実データを1件も扱えていない。「データは後で用意します」が続いている |
試作の終了時 | 本番移行の基準 | 精度の数字だけ報告され、現場の誰がいつ使うのかが決まっていない |
本開発の中盤 | 運用の担当者 | 納品後に面倒を見る人が空欄。情報システム部門の審査が未着手 |
本番移行の直前 | 月額の実測値 | 利用量が増えたときの月額が試算されていない |
稼働1ヶ月後 | 実際の利用者数 | 想定の3割未満しか使っていない。現場が元のExcelに戻っている |
撤退基準の決め方は難しく考える必要はありません。「①いつまでに ②何が ③どこまで達成できていなければ ④中止する」の4項目を1行で書くだけです。
例:「試作の開始から4ヶ月後に、対象業務3種類のうち2種類で判定精度85%に届いていなければ、本開発には進まない」
この1行を契約時に双方で持っておくと、進行中に「もう少し粘れば」で費用が積み上がる状況を防げます。
費用の目安と、立て直しの依頼の形
費用は「どの段階から入り直すか」で決まる
止まった開発を立て直す費用は、どの段階から入り直すか(見極め・試作・本開発・既存部分の改修)と、前の開発で残っている成果物で変わります。工程ごとの内訳はAI受託開発の費用相場、試作段階だけの金額感はAI PoCの費用で分解しています。
当社の価格
メニュー | 価格(税別) | 想定する使い方 |
|---|---|---|
既存システムの改修 | 100万円〜 | 止まったプロジェクトの一部だけを切り出して直す/今あるシステムへの機能や画面・帳票の追加、他のシステムとのデータ連携 |
PoC(試作) | 300万円〜 | 対象業務を絞り、本番に進む基準に届くかを確かめる |
本開発 | 個別見積 | PoCで効果が確認できた範囲を本番システムにする |
初回相談 | 無料 | 30分・オンライン(Google Meet)。要件が固まっていない状態でも可。相談後に相談メモをお送りします |
クラウド・外部API・ライセンス等の実費は別です。PoCの300万円は試作の開始価格で、本番システムの完成価格ではありません。
一度止まった後の読者にとっては、次の一歩がいつもPoCからとは限らないという点が大事です。例えば「書類の内容を読み取って基幹システムに入れる」業務で、読み取り部分は前の開発で動いていて、入力側だけが止まっているなら、入力側だけを既存システムの改修として切り出せる可能性があります。逆に、対象業務が多く、データも未整備なら、いきなり本開発に行かずPoCから入り直す方が安全です。
どちらに当たるかは、前の開発の成果物(ソースコード・設定値・仕様書・データ)と、その利用権を確認してから決めます。成果物の中身を読み解く調査が必要な場合は、有償の調査報告になります(事前に範囲と金額をお示しして合意を取ります)。どの段階から入り直すかの切り分けからご相談いただけます(止まっているAI開発の再検証範囲を相談する)。
すでに止まっているプロジェクトをどう畳むか
この章は、これから発注する人ではなくすでに1回止まっている人に向けて書きます。
まず、資産として残るものと捨てるものを切り分ける
全部が無駄になったと考える必要はありません。
次に使えるもの
- 整備したデータ(表記の統一、分類の付与が済んだもの)
- 業務の手順を書き出した資料(どの部署が何をどの順でやっているか)
- 「この方法では無理だった」という検証結果。同じ失敗を2回しないための情報です
- 稼働している部分(一部の機能だけ動いているなら、それは残す)
捨てる判断をしていいもの
- 使われていない機能。作った費用は戻りませんが、維持費は今日から止められます
- 記録が一切なく、誰も中身を説明できないプログラム。読み解く費用のほうが作り直すより高くつくことがあります
- 対象業務そのものが変わってしまった前提での設計
別の会社に引き継ぐときに確認すること
- 成果物の権利が自社にあるか(契約書の該当条項を確認。ここが自社に無いと引き継げません)
- ソースコード・設定値・仕様書・環境情報を受け取れるか(動いている画面だけでなく、中身の一式と、それを使ってよい権利)
- 整備済みのデータを受け取れるか(これが一番価値があります)
- 未払いと支払い済みの範囲(引き継ぎ時の交渉材料になります)
- 稼働中のものがあれば、止めずに移せるか
立て直しに向くケース/急いで作り直さない方がよいケース
早めに立て直した方がよい | いま急いで作り直さない方がよい |
|---|---|
対象業務が今も毎月発生していて、人手で回している | 対象業務そのものが縮小・廃止に向かっている |
データが整備済み、または整備の見通しがある | 使えるデータが社内にまだ存在しない |
一部でも動いていて、現場に使っている人がいる | 現場が誰も使っておらず、運用担当者も決まらない |
何が達成できたら成功か、数値で言える | 目的が「AIを導入すること」のままになっている |
維持費が毎月発生し続けている | まず業務手順の整理から着手すべき状態 |
右側に当てはまる場合、開発を発注するより先に業務の整理が必要です。当社もその状態では開発をお勧めしません。また、止めた開発の目的が、市販のSaaSや、いま使っているシステムに標準で付いている取込・連携機能で満たせる場合は、作り直す前にそちらで足りるかを確かめてください。
再開前に検証し直す範囲を決める
再開すると決めたら、前回と同じ範囲をそのままやり直さず、止まった原因に当たる部分だけを検証し直します。社内で ChatGPT や Claude などのAIを使って進められる部分も多いため、自社で進める部分と会社に頼む部分を分けてください。
作業 | 社内でAIを使って進めやすい | 会社に頼んだ方がよい |
|---|---|---|
止まった原因の整理 | 議事録・報告書の要約、論点の洗い出し | 原因が技術か運用かの見極め(ソースコードと動作を見る必要がある場合) |
データの確認 | 項目の一覧化、欠け・揺れの集計(個人情報を除いた写しで) | 本番データの取込・変換の設計、権限と保存先の決定 |
再検証の範囲 | 対象業務の候補出し、成功と中止の条件の下書き | 条件を満たすかを測る試験の設計と実施、結果の検収 |
既存システムとの接続 | 接続方法の候補を調べる | 実際の接続・権限設定・例外処理の実装と試験 |
運用 | 手順書の下書き、問い合わせ対応の文案 | 誤りが出たときの直し方の設計、変更の責任の持ち方 |
前の開発が止まった理由が記録から確認できない場合は、「データが原因」「接続が原因」などを仮説として置き、仮説ごとに確かめる証拠を決めてから再検証に入ります。原因を確かめないまま作り直すと、同じ場所で止まることがあります。
止まっている開発をどこから検証し直すかは、初回相談(無料・30分・オンライン)で一緒に切り分けます。セカンドオピニオンとして、前の開発会社の見積や成果物の一覧を見せていただく相談も歓迎します(止まっているAI開発の再検証範囲を相談する)。
当社の公開実績と、この記事の論点との関係
当社が公開できる受託開発の実績は次の2つです。どちらもAI開発の立て直し・引継ぎの事例ではありませんが、この記事で挙げた「データの取込」と「人の確認工程」に関わる内容です。顧客名・計算式・効果の数値は公開していません。
実績(匿名) | 内容 | この記事の論点との関係 |
|---|---|---|
通信事業 | 数万件の請求情報の取込・集計と、確認画面 | データが揃わない場合/人の確認負担が増える場合 |
薬局 | 複数店舗・数千人分の記録管理、権限、確認工程 | 人の確認負担が増える場合/既存システムにつながらない場合(権限設計) |
AI開発の失敗からの立て直しについて、匿名で公開できる事例はまだありません。この記事の原因と確かめる証拠は、上の公的・公式資料と、受託開発で一般に確認する工程から整理したものです。
相談から再検証までの流れ
段階 | やること | 費用(税別) |
|---|---|---|
1. 初回相談 | 30分・オンライン(Google Meet)。何が止まっているか、使っているシステム、手元にある成果物(ソースコード・仕様書・契約書・見積)の有無を伺う | 無料 |
2. 相談メモ | 確認した現状と課題、自社で進める・頼む・やらないの切り分け、進め方の候補と費用の目安、次に必要な資料をメールでお送りする | 無料 |
3. 提案・見積 | 資料を受け取ったうえで、再検証の範囲と見積をお出しする | 無料 |
3-a. 調査報告 | 既存のソースコード・システムの中身を読み解き、引き継ぐか作り直すかの材料をまとめる | 有償(事前に範囲と金額を合意) |
4-a. 既存システムの改修 | 止まった部分だけを切り出して直す | 100万円〜 |
4-b. PoC | 本番に進む基準に届くかを確かめる工程から入り直す | 300万円〜 |
5. 本開発・運用 | 効果が確認できた範囲を本番システムにする/監視と手直し | 個別見積 |
初回の30分では、確定見積や可否の断定はしません。相談メモの段階で終わっても構いません。「いま作るべきではない」という結論になることもあり、その判断が次の失敗を防ぎます。要件が固まっていない場合も、社内で方針が割れている場合も、前の開発会社との話が終わっていない場合も、ご相談いただけます。初回相談の前に秘密情報・本番の認証情報・実顧客データを送る必要はありません。
よくある質問
Q1. すでに一括で契約してしまいました。今から段階を分けることはできますか?
進行中でも、変更覚書を交わす形で分割できる場合があります。相手にとっても、揉めた状態で完成責任を負い続けるより、区切って一度精算する方が都合がよい場合があるためです。まず現在の契約書で「変更の手順」と「中途解約」の条項を確認してください。この2つがどう書かれているかで交渉の余地が決まります。
Q2. 前の開発会社が作ったものを、別の会社が引き継げますか?
引継ぎの可否は、契約書で成果物の権利が自社にあること、そしてソースコード・設定値・仕様書・環境情報を受け取れて使ってよいことが前提です。この前提が揃っていれば、技術的には引き継げる可能性があります。記録が残っていれば引き継ぎ、残っていなければ作り直しが候補になりますが、中身を読み解く調査の費用と、範囲を絞った作り直しの見積を比べてから決めてください。当社の初回相談(無料・30分)では、その場でどちらが安いかを断定せず、引継ぎと作り直しの判断に必要な資料(ソースコード・仕様書・環境情報)の有無と利用権を確認します。相談後に、進め方の候補と費用の目安を相談メモでお送りします。中身の調査が必要な場合は、有償の調査報告になります(事前に範囲と金額を合意します)。
Q3. 社内にデータがまだない状態でも相談していいですか?
問題ありません。むしろその段階でご相談いただく方が損失を小さく抑えやすくなります。データがない場合の選択肢は「これから溜める仕組みだけ先に作る」「既存の書類から作れるか検証する」「AIを使わずに業務手順の整理で解決する」の3つです。データがないまま試作に300万円を投じるのは、最も避けるべき進め方です。
Q4. 精度が何%あれば「成功」と考えればいいですか?
一律の基準はなく、間違えたときの損害の大きさで決まります。間違いを人が後から直せる業務(社内向けの下書き作成、書類の一次振り分けなど)なら、完全でない精度でも効果が出ることがあります。逆に、間違いが顧客対応や安全に直結する業務では、高い精度でも人の確認を外せないことがあります。決めるべきは精度の数字だけでなく、間違いを誰がどの工程で見つけて直すかです。ここまで決めてから発注してください。
Q5. 失敗した分の費用は返してもらえますか?
契約の型で大きく変わります。完成を約束する請負型なら、完成していない・契約内容に適合していないことを示せれば請求の余地があります。一方、準委任型は完成責任を負わない契約なので、適切に作業が行われていた場合は返金の対象になりません。発注時にどちらの型で契約したかを確認するのが最初の一歩です。個別の法的判断は弁護士にご相談ください。当社は法的判断は行いませんが、成果物が契約書の記載と合っているかの技術的な確認はお手伝いできます(有償の調査報告として、事前に範囲と金額を合意します)。
Q6. 補助金を使う前提でも進められますか?
進められますが、補助金の締切に合わせて要件を決めないでください。期限に間に合わせるために機能を膨らませ、使われない機能が増えるのが典型的な失敗です。順序は「やることを決める → 段階に分ける → その中で補助対象になる部分を確認する」です。
もう一点、補助金は原則として後払いです。採択されてから事業を実施し、実績報告と確定検査を経てはじめて振り込まれるため、開発費はいったん自社で立て替える必要があります。入金前提で資金繰りを組まないでください。制度のスケジュールは変わるため、AI導入で使える補助金の締切で最新の情報を確認してください。
Q7. 相談だけしたい場合、費用はかかりますか?
初回相談は無料・30分(オンライン)です。相談後にお送りする相談メモと、資料を受け取った後の提案・見積も無料です。既存のソースコードやシステムの調査報告、要件定義書の作成、PoC・開発は有償で、その前に範囲と金額をお示しして合意を取ります。相談したからといって発注いただく必要はなく、「いま作るべきではない」という結論をお伝えすることもあります。
Q8. 再検証は社内でAIを使って進められますか?
進められる部分は多くあります。止まった原因の整理、データの欠け・揺れの集計、成功と中止の条件の下書き、手順書の下書きは、ChatGPT や Claude などで十分に進められます。一方、本番データの扱い、既存システムとの接続と権限、誤りが出たときの直し方、検収と変更の責任は、その会社固有の条件で決まるため、外部に頼むか社内の担当を決めて進めてください。社内でAIを使って進める部分を残したまま、一部だけを頼む形も選べます。
AI開発の失敗を、次の発注で繰り返さないために
この記事の要点は3つです。
- 本番で止まる原因は、データ・人の確認負担・既存システムとの接続・保守担当に集まりやすい。どれも発注前に確かめる証拠があります
- 段階を分けて契約すれば、止める判断を前の段階で下せる。経済産業省のガイドラインも、段階ごとに続けるか止めるかを判断する進め方を示しています
- 止まった開発は、原因に当たる部分だけを検証し直す。整備したデータや動いている部分は、次に使えることがあります
止まっているプロジェクトをどこから検証し直すか、引き継ぐか作り直すか。初回相談(無料・30分・オンライン)で、手元にある成果物や資料の有無を伺い、相談後に依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。要件が固まっていない段階でも構いません。
既存システムの改修 100万円〜/PoC 300万円〜/本開発 個別見積(すべて税別・実費別)。公開している実績は、通信事業の請求情報の取込・集計・確認画面と、薬局の複数店舗の記録管理・権限・確認工程です。
参考資料
- Gartner「30% of Generative AI Projects Will Be Abandoned After Proof of Concept By End of 2025」(2024-07-29)
- Gartner「Over 40% of Agentic AI Projects Will Be Canceled by End of 2027」(2025-06-25)
- MIT NANDA「The GenAI Divide: State of AI in Business 2025」(2025年7月)
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年7月公表)
- 経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」1.1版(令和元年12月)
- 経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(令和7年2月)
- 特許庁 IP BASE「AI開発を受託する際の契約方式の選び方 請負型と準委任型」
依頼範囲と費用の目安を30分で整理します
この記事の著者

AI革命
編集部
AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。
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