ビジネス活用2026年10月更新

生成AIのセキュリティ要件と社内導入の構成|オンプレ・VPC・API構成の比較と判断基準

公開日: 2026/09/19
更新日: 2026/10/10
生成AIのセキュリティ要件と社内導入の構成|オンプレ・VPC・API構成の比較と判断基準

この記事のポイント

生成AIの社内導入のセキュリティ要件は、AIに入れる情報の区分で決まります。法人プラン(1人月約3,000円)、VPC+API(通信部分は月数千円〜、費用の中心は構築)、国内API、オンプレ(500万円〜)を審査の6つの質問と費用で比較。

生成AIを社内導入するときのセキュリティ要件は、AIに入れる情報が社外秘・顧客情報までであれば「法人プランを社員に配る(1人あたり月3,000円前後)」か、「自社のクラウドから、インターネットを通さずにAIを呼び出す(通信部分は月数千円〜十数万円。費用の中心は数十万〜数百万円の構築費)」のどちらかで満たせます。AIを動かす機材ごと自社に置く「オンプレ」が必要になるのは、契約や法令でデータの置き場所が決まっている場合に限られ、導入支援付きのパッケージの公開価格で500万円〜1,000万円弱から、しかも同時に使える人数に上限があることを前提に選ぶ必要があります。

この記事では、情報システム部門や法務の審査で必ず聞かれる6つの質問(学習に使われるか/どこに何日残るか/どこで処理されるか/記録は取れるか/事故のとき何をしてくれるか/乗り換えられるか)を基準に、社内導入の構成を5つに分けて、審査への答え・費用・期間を同じ表で比べます。あわせて、2026年に各社の方針が変わり、「閉域にすれば安全」「このクラウドなら国内で処理できる」が当てはまらなくなった点も、公式情報で整理します。

当社(AI革命株式会社)は受託開発の会社で、生成AIを使った社内向けの仕組みについても、画面・ログイン・閲覧権限・記録・既存システムとの連携の開発に対応しています(既存システムの改修100万円〜/小さく試す検証〔PoC〕300万円〜/本開発は個別見積、すべて税別・クラウドやAIの利用料は別)。ただし、法人プランで足りる会社に、作ることは勧めません。 その線引きも正直に書きます。なお、脆弱性診断・ペンテスト(侵入テスト)・第三者監査・セキュリティ認証の取得支援は、当社では行っていません。本記事の金額は特記のない限り税別、ドル建ての料金は1ドル=153円(2026年9月上旬の水準)で換算し、各社の方針・料金は2026年9月20日時点の公式情報に基づいています。

生成AIの社内導入が「セキュリティ審査」で止まる理由

IPA(情報処理推進機構)の公式ロゴ画像

出典: IPA(情報処理推進機構)公式サイト

帝国データバンクの2026年3月の調査(有効回答10,312社)では、生成AIを業務で活用している企業は34.5%でした。懸念・課題の上位には「情報の正確性」(50.4%)と並んで、「情報漏洩のリスク」(33.5%)が入っています(帝国データバンク)。

止まる場所もはっきりしています。生成AIを導入済みの企業の管理職1,008名を対象にした2026年1月の調査では、活用が進まない要因の1位が「セキュリティ面に懸念がある」(33.5%)、3位が「情報システム部門の理解・協力が得られない」(22.4%)でした(コーレ株式会社の調査)。調査の数字が示しているのは、現場は使いたいのに、情報システム部門や法務の審査で止まるという状況です。

審査する側が慎重になるのには理由があります。IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれ、いきなり3位に入りました(IPA)。

審査で聞かれる6つの質問

審査が止まる本当の原因は「AIが危ないから」ではなく、審査で聞かれる質問に、導入する側が答えを用意できていないことです。聞かれる内容は、ほぼ次の6つに集約されます。デジタル庁が2026年9月に施行した生成AIの調達ガイドラインでも、調達・契約時の確認事項として同じ論点(入力データの扱い、学習の有無と保存方法、事故時の対応、特定の提供元への依存の回避など)が並んでいます。

審査で聞かれること

業務の言葉にすると

1. 入力した内容はAIの学習に使われるか

自社の情報が、他社への回答の材料にならないか

2. どこに保存され、何日残るか

AIの提供元のサーバーに、入力内容が残らないか

3. どこで処理されるか

日本国外のサーバーで処理され、現地の法律の下に置かれないか

4. 記録は取れるか

誰が、いつ、何を入れ、何が返ってきたかを後から追えるか

5. 事故のとき、提供元は何をしてくれるか

原因を調べるための情報を出してもらえるか

6. 提供元を替えられるか

値上げやサービス終了のとき、別のAIに乗り換えられるか

この6つに答えられる構成を選び、答えを1枚の資料にまとめて出せば、審査は前に進みます。生成AIのリスクの全体像は生成AIのセキュリティリスクで、社員が会社の許可なくAIを使ってしまう問題と社内ルールの作り方はシャドーAIのリスクで解説しています。この記事は「どの構成で、いくらかけて満たすか」に絞ります。

最初に決めるのは「どの情報をAIに入れるか」

生成AIの調達・利活用ガイドラインを策定したデジタル庁の公式ロゴ画像

出典: デジタル庁 公式サイト

構成を選ぶ前に決めるべきは、AIに入れる情報の範囲です。ここが決まらないまま「一番安全な構成を」と考えると、必要以上に高い構成を選ぶことになります。

判断の拠り所になるのが、デジタル庁の「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」第2.0版(2026年6月12日策定、9月1日施行)です。直接の対象は政府機関ですが、民間企業が社内の基準を作るときの参考になります。このガイドラインは、生成AIの使い方を契約の形で3つに分けています。

区分

契約の形

扱える情報

A

規約に同意するだけで使えるサービス

原則として、機密を要する情報は扱えない

B

規約に加えて、個別の契約を結ぶ

Aで足りない要件を契約で補う

C

個別に開発し、個別の契約を結ぶ

要件に合わせて作る

ガイドラインは、不特定多数に提供され、規約への同意だけで使えるクラウド型の生成AIを業務で使う場合、「原則として要機密情報を取り扱うことはできない」と明記しています。申込画面で規約に同意するだけで契約できる法人プランは、この区分ではAに近い位置づけです。また、国外にサーバーがある場合は現地の法令が適用され、現地の政府による検閲や接収を受ける可能性があることも、利用者が理解しておくべき事項として挙げられています(デジタル庁 ガイドライン本文)。

これを民間企業向けに置き換えると、次のようになります。

AIに入れる情報

例

足りる構成

公開してよい情報・一般的な業務

公開済みの資料、一般的な文書の下書き、アイデア出し

① 法人プラン(学習に使わない設定、社内IDでのログイン、記録の取得)

社外秘・顧客情報

社内規程、会議の議事録、取引先とのやりとり、顧客リスト

個別の契約を結べる法人プラン、または ② 自社クラウドから閉域でAIを呼び出す構成

契約や法令で置き場所が決まっている情報

患者情報など特に配慮が必要な個人情報、顧客から預かった設計データ、国内保管が契約条件のデータ

国内処理+保存なしにした②、③ 国内事業者のAPI、④⑤ 自社でAIを動かす

医療機関・薬局で患者情報を扱う場合は、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」(令和8年6月)の対象にもなります。

国は「オンプレ」ではなく「管理されたクラウド」を選んだ

「機密情報を扱うならオンプレしかない」と考える前に、知っておきたい事実があります。デジタル庁が各府省庁に展開している生成AIの利用環境「ガバメントAI 源内」は、政府専用のクラウド(ガバメントクラウド)の上で外部のAIを呼び出す構成で、機密性2の情報(秘密文書ほどではないが、漏れると業務に支障が出る情報)まで入力できます(デジタル庁内での扱い。各府省庁はそれぞれのルールで設定)。2026年5月からは、全府省庁の約18万人を対象にした大規模な実証も始まっています(デジタル庁資料、2026年5月)。

2026年3月時点で選べたAIは、Anthropicの「Claude Sonnet 4.6」「Claude Sonnet 4.5」「Claude Haiku 4.5」と、AWSの「Nova Lite」です。国でさえ、社外秘レベルの情報は機材を自前で持たず、管理されたクラウドの中から外部のAIを使う形で扱っています。「機密情報だからオンプレ」と決める前に、管理されたクラウドで足りないかを確かめる価値があります。

「閉じる」には3つの意味がある|経路・保存・処理場所

OpenAIのAPIにおけるデータの保持・処理場所を解説した公式ドキュメントの画像

出典: OpenAI 公式

情報システム部門や開発会社との会話では、「閉域にすれば安全です」という言葉がよく出てきます。ただし「閉じる」には3つの意味があり、1つを閉じても、残りの2つは閉じていません。

何を閉じるか

業務の言葉にすると

主な手段

これだけでは防げないこと

経路

インターネットを通さずにAIを呼び出す

会社専用に区切ったクラウドの区画(VPC)、AIへの専用の接続口(Private Link)、社内とクラウドを結ぶVPN・専用線

提供元での保存、国外での処理

保存

AIの提供元に入力内容を残させない・学習させない

学習に使わない設定(法人向けは既定)、入力内容を一切残させない契約(ゼロデータ保持)、保存の設定

インターネット経由のまま、国外での処理

処理場所

AIが答えを作る処理を日本国内で行う

国内のデータセンターを指定、国内事業者のAI、オンプレ

使えるAIが限られる、料金が上がる

たとえば、自社のクラウドからAIまでを専用の接続口でつないでも、閉じたのは「経路」だけです。OpenAIのAIを直接契約で使う場合、入力内容は不正利用の監視のために既定で最大30日保持されます。保存先に日本を指定しても、公式の対応表では日本は「保存のみ」の扱いで、AIが答えを作る処理そのものは米国または欧州で行われます(OpenAI公式、2026年9月20日確認)。

審査で「閉域にしたので安全です」と答えると、「では提供元に何日残るのか」「どこで処理されるのか」と聞き返されます。3つを分けて答えを用意しておくことが、審査を一度で通す近道です。

生成AIの社内導入の構成は5つ|審査で聞かれる質問への答えで比べる

国内で完結するAI活用基盤「さくらのAI」の公式画像

出典: さくらのAI Engine 公式サイト

社内導入の構成は、大きく5つに分かれます。審査で聞かれる質問への答え、費用、期間を1枚にまとめると次のとおりです。

審査で聞かれること

① 法人プランを配る

② 自社クラウドから閉域でAPI

③ 国内事業者のAPI

④ 自社クラウドで自前のAI

⑤ オンプレ

学習に使われないか

使われない(既定)

使われない(既定)

使われない

外部に渡らない

外部に渡らない

インターネットを通らないか

通る

通らない構成にできる

公式に記載なし(必要なら事前に確認)

通らない構成にできる

通らない

提供元に残らないか

プラン・設定次第

既定では一定期間残る場合あり。「保存なし」は設定・審査で可能(モデルにより不可)

残らない(公式に明記)

残らない

残らない

日本国内で処理されるか

国外が中心

条件付きで可能(使えるAIが限られ、約1割高)

される

される(国内のデータセンターを選択)

される

最新・最高性能のAIを使えるか

使える

使える(国外での処理を許す場合)

公開モデル・国産モデル中心

公開モデル中心

公開モデル中心

記録・部署ごとの閲覧権限を作り込めるか

プランの機能の範囲内

作り込める

作り込める

作り込める

作り込める

初期費用

ほぼ0円

構築費(数十万〜数百万円)

構築費

構築費

機材のみ81.2万円〜/パッケージ500万円〜

月額

1人約3,000円

通信部分 月数千円〜十数万円+AI利用料

AI利用料(月15,000問で約2,700円)

AI用の計算機(GPU)代 月約18万〜113万円

保守・電気・更新

期間(公開例)

契約は即日

最短1か月〜約3か月

AIの利用開始は即日(画面・権限づくりは別途)

公開例なし

1か月〜6週間程度

運用の負担

小さい

中程度

中程度

大きい

大きい

以下、それぞれの中身と、合う会社・合わない会社を見ていきます。

① 法人プランを社員に配る

最も手軽で、最初に検討しやすい構成です。主なサービスの1人あたり月額は次のとおりです。

サービス

1人あたり月額

条件

ChatGPT Business

年払い$20(約3,060円)/月払い$25(約3,830円)

2名以上

Claude Team

年払い$20(約3,060円)/月払い$25

2〜150名

Microsoft 365 Copilot Business

3,148円(2026年7月1日〜12月31日の年契約は初年度2,698円)

Microsoft 365 Business系の契約が前提

Google Workspace Business Standard

1,600円(Gemini込み。年間プランは約16%引き)

—

各社とも、法人向けプランの入力内容は既定でAIの学習に使わないとしています。社員100名に配ると月30万円前後です。

弱みは3つあります。1つ目は、インターネット経由で使うことです。2つ目は、AIが答えを作る処理は国外が中心であることです(ChatGPT Enterpriseのように、新規のワークスペースで日本での保存を選べるものはありますが、保存と処理は別です)。3つ目は、前述のデジタル庁の基準に当てはめると、規約への同意だけで契約する形は「機密を要する情報は原則扱えない」側に入ることです。上位のEnterprise契約(ChatGPT Enterprise、Claude Enterprise)は個別の見積・契約になり、Claude Enterpriseでは社員アカウントの自動管理や操作の記録(監査ログ)も使えます。

  • こんな会社に合う:公開情報や一般的な業務文書が中心/まず全社員にAIを使わせたい
  • こんな会社には合わない:顧客情報や社外秘を入れたい/日本国内での処理が契約条件になっている

全員に配るか、自社専用に1つ作るかの費用の分かれ目は、社内AIチャットボットの費用相場で社員数別の5年総額として比べています。

② 自社のクラウドから、インターネットを通さずにAIを呼び出す(VPC+API)

会社専用に区切ったクラウドの区画(VPC)を用意し、その中からインターネットを通らない専用の接続口で、AIの機能だけを借りる(API)構成です。画面、ログインの仕組み、閲覧権限、記録は自社側に作ります。前述の「源内」もこの型です。

主な提供元は、Microsoft(Azure上のMicrosoft Foundry)、AWS(Amazon Bedrock)、Google Cloudの3社です。いずれも入力内容を既定でAIの学習に使わないとしています。そのうえで、次のような違いがあります。

  • Azure経由でOpenAIのAIを使う場合、入力と出力はOpenAIには渡らず、他の顧客からも見えないと公式に明記されています(Microsoft Learn)
  • Amazon Bedrockでは、AIの開発元(Anthropicなど)は入力・出力にアクセスできません。さらに、入力内容を一切保存しない設定を、会社のアカウント全体に強制できます(AWS公式)
  • Amazon Bedrockには、東京と大阪の間だけで処理を振り分け、日本国内で処理を完結させる使い方があります。料金は全世界で処理する場合より約1割高く、2025年10月の発表時点で対応していたのはClaude Sonnet 4.5とClaude Haiku 4.5でした(AWSブログ)

インターネットを通さないための通信部分の費用は小さく、専用の接続口はAzureで1本月約1,100円、AWSで約3,100円(2つの拠点に置いた場合)です。費用の中心は、画面・ログイン・閲覧権限・記録の仕組みを作る構築費と、それを回し続ける運用です(後述の「構成別の費用の目安」で試算します)。

  • こんな会社に合う:社外秘・顧客情報を扱いたい/社内システムとつなぎたい/部署ごとに見せる資料を変えたい
  • こんな会社には合わない:構築後の設定確認や更新を担う人を、社内にも委託先にも置けない

AWS上でClaudeを使う場合の管理のしかたはClaude Platform on AWSで解説しています。

③ 国内事業者の、国内で完結するAIを使う

国内のクラウド事業者が日本国内のサーバーでAIを動かして提供するサービスを、APIで借りる構成です。たとえば、さくらインターネットの「さくらのAI Engine」は、「入力データは学習・保存されません」「すべて国内クラウドで完結」と公式に明記しています。料金は、公開モデル(中身が公開されていて、自社の機材でも動かせるAI)のgpt-oss-120bや国産のllm-jp-3.1-8x13bで、入力1万トークンあたり0.15円、出力0.75円です(トークンはAIが文字量を数える単位)。月3,000リクエストまでは無料枠があります(さくらのAI Engine)。

1問あたり、質問と社内資料の抜粋を合わせて約8,000トークンを読ませ、800トークンの答えを書かせるとすると、1問約0.18円、月15,000問でも約2,700円です(無料枠を差し引く前)。

弱みは、使えるAIが公開モデルや国産モデル中心で、GPT・Claude・Geminiの最上位モデルは使えないことです。業務で使える精度が出るかどうかは、実際の業務データで試して測るしかありません。また、インターネットを通さない接続ができるかは公式ページに記載がないため、必要な場合は事前の確認が必要です。

  • こんな会社に合う:日本国内での処理が必須だが、機材は持ちたくない
  • こんな会社には合わない:最新・最高性能のAIでなければ業務の精度が出ない

④ 自社のクラウドの中で、自前のAIを動かす

クラウド上にAI用の高性能な計算機(GPU)を借り、その中で公開モデルを動かす構成です。入力内容はAIの提供元に一切渡りません。たとえばOpenAIの公開モデル「gpt-oss-120b」(商用利用できるApache 2.0ライセンス)は、80GBのGPU1枚に収まる設計です。

費用はGPUの時間料金で決まります。Azureの東日本の価格(2026年9月20日時点)は次のとおりです。

GPUの種類

1時間あたり

業務時間のみ(1日10時間×22日)

24時間稼働

A100(1枚)

$5.326

約18万円

約59万円

H100(1枚)

$10.121

約34万円

約113万円

APIで借りる②③が「使った分だけ」なのに対し、④は使っても使わなくても、動かしている時間の分だけ固定でかかります。 利用量が少ないうちは割高です。

  • こんな会社に合う:利用量が多く、入力内容を外部のAIに一切渡したくない。ただし機材は持ちたくない
  • こんな会社には合わない:利用者が少ない/使う時間帯が読めない

⑤ オンプレ(自社の建物・データセンターにAIを置く)

AIを動かす機材を自社で買い、社内のネットワークの中だけで使う構成です。公開されている価格は次のとおりです。

製品・サービス

公開価格

規模・期間

NVIDIA DGX Spark(NTTPC販売)

機材のみ81.2万円(税別)

1台で最大約2,000億パラメータ(AIの規模を表す単位)のモデルに対応

インテック「ローカルLLMの導入支援」

参考価格500万円〜(初期導入費用は別途見積)

AI本体、業務の流れを組む仕組み、社内資料の読み込み、構築・運用支援。最短1か月

APOLLO11「EdgeLLM」

初期費用980万円〜(税込・参考)+月額固定費

同時利用は約5人(基本パック)。標準導入期間5〜6週間

NTT「tsuzumi 2」

非公開(個別商談)

GPU1基で動く設計

リコー「オンプレLLMスターターキット」

個別見積

270億パラメータのリコー製AI+業務の流れを組む仕組み(Dify)

オンプレで見落とされやすいのは、同時に使える人数が機材で決まることです。EdgeLLMの基本パックでは同時利用は約5人で、全社員に使わせようとすると機材費が跳ね上がります。また、GPT・Claude・Geminiの最上位モデルは、原則としてオンプレでは動かせません。

  • こんな会社に合う:外部との接続そのものが許されない環境で、限られた人数が使う
  • こんな会社には合わない:全社員に使わせたい/最新のAIを使いたい

2026年に変わった「国内で処理」「データを残さない」の注意点

Amazon Bedrockで日本国内に閉じたClaudeの推論(日本国内クロスリージョン推論)を紹介するAWS公式ブログの画像

出典: AWS 公式ブログ

「Azureなら国内で完結する」「ゼロデータ保持の契約をすれば何も残らない」といった数年前の説明のまま審査資料を作ると、2026年9月時点では事実と合わない部分があります。

最新のAIほど「残さない」が使えない

  • Anthropicは2026年6月9日から、最上位クラスのAI(Claude Mythos 5/5.1と、同じ中身のClaude Fable 5/5.1)について、入力と出力を30日間保持しています。入力内容を残さない契約を結んでいる会社でも、これらのAIを使うには保存を有効にする必要があります。対処法として公式が示しているのは、これらのAIを使うワークスペースだけ保存を有効にし、他のワークスペースは保存なしのまま残すやり方です(Anthropic公式)
  • Amazon Bedrock経由でも、Claude Fable 5/5.1は「AWSによる人の確認」を許可する設定にしないと使えず、入力と出力はAWSの中で最大30日保持されます(Anthropicには渡りません)。一方、Claude Opus 4.8は保存なしで使えます。同じClaudeでもモデルごとに扱いが違うため、会社全体に「保存なし」を強制すると、Fable 5は使えなくなります(AWS公式)

つまり、「最新のAIを使いたい業務」と「機密情報を扱う業務」は、使う環境を分けて設計する必要があります。詳しくはClaude Fable 5の企業導入の落とし穴で解説しています。

「国内で処理」を選ぶと、最新のAIが後回しになり、料金は約1割上がる

提供元

日本国内での処理

注意点

OpenAI(直接契約)

日本は「保存のみ」。処理は米国または欧州(公式の対応表)

保存地域の指定は、2026年3月5日以降に公開されたモデルで料金10%上乗せ。米国以外の地域指定は、保存を減らす契約の事前承認が前提

Anthropic(直接契約)

選べる処理地域は「全世界」か「米国」のみ

米国限定は料金1.1倍。日本国内で処理するにはBedrockなどを経由する必要がある

Amazon Bedrock

東京・大阪の間で完結させる使い方がある

全世界で処理する場合より約10%高い。対応するAIが限られる

Microsoft(Azure)

国内に限った配置は可能

新しいAIは「全世界 → 地域ブロック(米国・EU・アジア太平洋)→ 国単位」の順に提供され、国単位は最後で、提供日の保証はない

Microsoft 365 Copilot

日本国内での処理は2028年予定

豪州・インド・英国・米国などは2026年末、カナダは2027年で、日本はその後

出典:OpenAI/Anthropic/Microsoft Learn/Microsoft 365 Blog

Microsoft 365中心の会社でも、「日本国内で処理すること」を要件にすると、当面はCopilotだけでは満たせません。

使う機能によっては、保存の設定と関係なくデータが残る

  • Azure:会話の続きを覚えておく機能(Responses API、Assistants)や、まとめて処理する機能(Batch)では、自社のクラウドの中にデータが保存されます。まとめて処理する機能は全世界での処理です
  • Anthropic:まとめて処理する機能(29日保持)、ファイルの保存機能、プログラムの実行機能(最大30日)は、ゼロデータ保持の対象外です
  • Google:Geminiは既定で、入力と出力を最大24時間一時的に保持します(保存なしにするには一時保持の無効化が必要)。不正の疑いで検知された場合は、最大90日保存されます

審査資料には「どのAIを使うか」だけでなく、「どの機能を使うか」まで書く必要があります。OpenAIのゼロデータ保持の実際は、OpenAI Private Safety Processingで詳しく解説しています。

どの構成を選んでも必要な5つの設定

経路・保存・処理場所の3つをすべて閉じても、防げない事故があります。社内の人が、本来見てはいけない資料にAI経由でたどり着く事故です。構成とは別に、次の5つの設定が必要です。

1. 社内のIDでログインさせる

会社のアカウントでそのままログインできる仕組み(シングルサインオン)にすると、退職者や異動者の利用を止められ、誰が使ったかが記録に残ります。①の法人プランでは、この機能が使えるプランかどうかを契約前に確認してください。

2. 部署・役職ごとに、AIが読める資料を分ける

社内の資料をAIに読ませて答えさせる仕組み(RAG)では、何も設定しないと、営業部の社員の質問に、人事部しか見られないはずの資料の内容が混ざって答えられることがあります。デジタル庁のガイドラインも、AIに読ませる資料への参照権限を「ユーザーや役割に応じて適切に設定する」こと、権限のない人への回答に使わない仕組みにすることを求めています。閲覧権限の作り込みにかかる費用はRAG導入の費用で扱っています。

3. 入力・出力・アクセスの記録を残す

同じガイドラインは、「生成AIシステムへの入力や出力、アクセス履歴等のログの取得及び管理を適切に行う必要がある」としています。何日分残すか、誰が見るかまで決めてください。②④⑤の構成なら、記録を自社の側に残せます。

4. 入れてはいけない情報を、仕組みで止める

ルールを作るだけでは止まりません。中小企業の社員などを対象にした2026年7月の調査(114名と小規模)では、機密情報の入力に不安を感じる人が87.7%いる一方、入力を機械的に止める仕組みがあると答えたのは11.4%でした(ヤマネックスの調査)。個人情報などを送信前に検知して止める仕組みや、使いすぎを防ぐ利用上限を、構成の中に組み込みます。

5. AIに任せる操作の範囲を決める

AIが答えるだけでなく、社内システムを操作する(AIエージェント)場合は、「読むだけ」「下書きまで」「実行は人が承認してから」のどこまで任せるかを決める必要があります。総務省が2026年3月に公表したAIセキュリティの技術ガイドラインは、AIエージェントを「技術が発展途上」として対象外にしているため、この線引きは自社で決めるしかありません。海外のセキュリティ団体OWASPが2026年8月に公開した生成AIアプリの10大リスクでは、「AIに与えた権限が大きすぎる」が6位から3位に上がったと解説されています。設計の考え方はAIエージェントのセキュリティ対策にまとめています。

構成別の費用の目安

社員100名が使う場合の費用を、構成別に並べます。AIの利用料は月15,000問(1人1日約7問)、1問あたり約8,000トークンを読ませて800トークンを書かせる前提です。

構成

初期費用

月額(社員100名の例)

月額の中身

① 法人プランを配る

ほぼ0円

約30.6万〜31.5万円

ChatGPT Business年払い(約3,060円)、Claude Team年払い(約3,060円)、Microsoft 365 Copilot Business(3,148円)× 100名

② 自社クラウドから閉域でAPI

構築費(公開例:初期150万円+サポート月20万円、2023年時点)

約10万〜19万円+運用

専用の接続口、社内とクラウドを結ぶVPN、利用の記録と上限を管理する「関所」、AI利用料(下の試算)

③ 国内事業者のAPI

構築費

AI利用料 約2,700円+画面・権限の運用

入力1万トークン0.15円/出力0.75円

④ 自社クラウドで自前のAI

構築費

約18万〜113万円

GPU1枚の時間料金(A100を業務時間のみ〜H100を24時間稼働)

⑤ オンプレ

機材のみ81.2万円〜/導入支援付きパッケージ500万円〜980万円〜

保守・電気・更新(EdgeLLMは別途月額固定費)

同時に使える人数は機材で決まる

②の月額の試算(Azureで小さく組んだ場合)

項目

月額

AIへの専用の接続口(Private Endpoint)1本

約1,100円

社内とクラウドを結ぶVPN(VPN Gateway)

約2.1万円

利用の記録と上限を管理する「関所」(API Management Basic v2)

約2.3万円

AI利用料(OpenAIの中位モデル gpt-5.6-terra、月15,000問)

約5.9万円

合計

約10.4万円

※Azure・OpenAIの公式価格(2026年9月20日時点)から試算。専用の接続口には別途データ処理料がかかります。

関所を大規模向け(Standard v2、約10.7万円)にすると合計は約18.8万円、不正な通信を止める防火壁(Azure Firewall Standard、約14万円+通信量)を足すとさらに増えます。AWSの場合、専用の接続口は2つの拠点で約3,100円、社内とつなぐVPNは約5,400円です。日本国内での処理を選ぶと、AI利用料が約1割上がります。

ここから分かるのは、インターネットを通さないための費用そのものは月数千円〜数万円にすぎないということです。費用の大半は、画面・ログイン・閲覧権限・記録の仕組みを作る構築と、設定の確認やAIの入れ替えに対応し続ける運用、つまり人の作業です。

構築を外部に頼む場合の公開例と当社の価格

依頼先

内容

価格(税別)

期間

IIJ

Azure上の検証環境(Teamsから使えるAI、会話履歴、禁止ワードの制御、利用状況の確認)

初期150万円+サポート月20万円+Azure利用料(2023年9月時点の公表)

申込から約1か月

SCSK Minori

Azure上の環境構築、社内文書の登録支援

非公開

最短1か月

BeeX

Azure等の安全な環境の構築支援

公式サイトに掲載なし

引き渡しまで約3か月を想定

ラック

Azure上の環境構築(閉域接続、アクセス監視、利用制限に対応)

個別見積

—

当社

構成の検討、画面・ログイン・閲覧権限・記録・既存システム連携の開発

PoC 300万円〜/既存システムの改修100万円〜/本開発は個別見積

範囲により個別

出典:IIJ(IT Leaders)/SCSK Minori/BeeX/ラック

当社のPoC 300万円〜は、環境を用意するだけの構築サービス(IIJの公開例では初期150万円)より高くなります。これは隠しません。PoCは環境づくりだけでなく、実際の業務データで答えの正しさと使い勝手を確かめる作業を含むためです。どの会社に頼む場合でも、PoCの見積を受け取ったら、次の4点が成果物に入っているかを確認してください。

  • 開始前に決める合格ライン(どの業務の、どの質問に、どの水準で答えられたら合格か)
  • 合格ラインに対する実測の結果と、測った条件(使ったデータ・件数・評価した人)
  • 本番にする場合の構成案と、審査の6つの質問(学習・保存場所と日数・処理場所・記録・事故時の対応・乗り換え)への答え
  • 本開発の概算と、運用を誰が担うかの案

当社が担当するのは、構成の検討と、画面・ログイン(社内IDでのシングルサインオン)・部署ごとの閲覧権限・入力と出力の記録・既存システムとの連携の開発です。一方、脆弱性診断・ペンテスト・第三者監査・セキュリティ認証の取得は行っていません。 審査でこれらの提出を求められる場合は、専門の診断会社に別途ご依頼ください。開発の範囲と診断の範囲を分けて見積もると、審査資料も作りやすくなります。

一方で、法人プランで足りる会社には、そうお伝えします。 すでにCopilotや法人プランを使っていて、足りないのが社内システムとの連携なら、既存システムの改修(100万円〜)で済む場合があり、部署ごとの閲覧設定だけなら法人プランの管理画面の設定で足りることもあります。どちらの場合も、300万円の検証を組むのは発注側にとって損だからです。対応範囲と費用の詳細は受託開発サービスのページにまとめています。PoCの中身と費用配分はAIのPoC費用、受託開発全体の費用内訳はAI受託開発の費用相場をご覧ください。

説明用の構成例|審査資料に書く「データ・権限・運用」

審査を通すには、構成の名前(「VPCで閉域」など)ではなく、どのデータを入れ、誰が見られて、誰が運用するかを書く必要があります。ここでは架空の会社を例に、審査資料に書く中身を示します。以下は説明用の架空の設定で、当社の実案件や実測ではありません。

設定(架空):社員300名の製造業。営業部が、社内規程と過去の見積書・取引先とのやりとりをAIに読ませて、問い合わせへの回答の下書きを作りたい。見積書には取引先名と金額が入る。Microsoft 365は全社で使っている。

審査で聞かれること

審査資料に書く答え(説明用)

決めるのは誰か

1. 何をAIに入れるか

社内規程(全社員が閲覧可)と、営業部の見積書・やりとり(営業部と経営層のみ閲覧可)。人事・経理の資料は入れない

情報を持つ部署と情報システム部門

2. どの構成で使うか

取引先名と金額が入るため、法人プランの配布ではなく②(自社クラウドから閉域でAPI)。保存なしの設定と、使う機能(会話履歴・まとめて処理など)まで書く

情報システム部門

3. 誰が何を見られるか

AIが参照する資料を、社員のアカウントの権限で絞る。営業部以外の社員の質問には見積書を使わない。異動・退職で自動的に外れる

情報システム部門と各部署

4. 記録をどう残すか

誰が・いつ・何を入れ・何が返ってきたかを自社のクラウドに保存する。保存期間と、記録を見られる人を決める

情報システム部門と法務

5. AIに何を任せるか

回答の下書きまで。取引先への送信は、人が確認してから行う

営業部長

6. 誰が運用するか

権限の定期的な棚卸し、AIのモデルを入れ替えるときの保存・処理場所の再確認、利用上限の見直しの担当者

情報システム部門または委託先

この表のうち、1・5・6は技術ではなく社内の決めごとです。開発会社に頼む前にここが決まっているほど、見積もりの幅は狭くなります。逆に、3(権限で資料を絞る)と4(記録)は、仕組みとして作り込み、試験で確かめる部分です。権限の試験には、「営業部以外のアカウントで質問して、見積書の内容が答えに出ないこと」のように、見えてはいけないものが見えないことを確かめる項目を入れてください。

AIで自社で進められる部分と、会社に頼む部分

いまはChatGPTやClaudeなどのAIを使って、構成の調べもの、審査資料の下書き、小さな試作、テストの作成まで自社で進められます。各社の公式ドキュメントを読み比べるのも、コードを書くのも、AIは得意です。外部に頼む理由は「AIにはできないから」ではなく、自社の環境・データ・権限に固有の部分と、その正しさに責任を持つ部分にあります。

区分

主な内容

自社(+AI)で進めやすい

各社の保存・処理場所の条件の調査、6つの質問への答えの下書き、法人プランの試用、公開情報だけを使った試作

開発会社に頼む価値がある

既存の社内ID・ファイル共有・業務システムとの接続、部署ごとの閲覧権限の作り込みとその試験、記録の保存と検索の仕組み、例外(異動・退職・例外的な共有権限)の扱い、本番での検収と変更時の再確認

別の専門会社に頼む

脆弱性診断・ペンテスト、第三者監査、セキュリティ認証の取得

AIで作った試作がすでにある場合も、捨てる必要はありません。認証・データの権限・テスト・障害時の復旧・運用を見て、残す部分と直す部分を分けられます。自社でAIを使って開発を続けながら、権限や連携など一部だけを頼む進め方も選べます。

導入までの流れと期間

段階

この段階で手元に残るもの

発注側でやること

初回相談(無料・30分・オンライン)

相談メモ(依頼範囲の候補、進め方、費用の目安、次に必要な資料)

AIに入れたい情報の種類と、審査で止まっている点を伝える(秘密情報・実際のデータは送らない)

対象業務・合格ライン・入れる情報の決定

最初の対象業務、AIに入れる情報の区分、合格ライン

最初の1部門・1業務を決め、入れる情報の区分と合格ラインを決裁者と合意する

構成の決定と審査資料の準備

審査の6つの質問への答え(保存場所・保存日数・処理場所・記録・事故時の対応・乗り換え)

情報システム部門・法務の確認を受ける

小さく試す(PoC)

合格ラインに対する実測の結果、本番の構成案と概算

実際の業務データで、答えの正しさと使い勝手を判定する

本番の構築

閲覧権限の試験結果、記録の確認結果、運用の手順

社内IDでのログイン、閲覧権限、記録の取得を確認する

展開と定着

設定の定期確認の記録

設定を定期的に確認する。AIを新しいモデルに入れ替えるときは、保存・処理場所の条件を再確認する

他社の公開例では、クラウド上の閉域環境の構築が最短1か月(SCSK Minori)〜約3か月(BeeX)、オンプレのパッケージが最短1か月(インテック)〜標準5〜6週間(EdgeLLM)です。法人プランは契約自体は即日できますが、社内の審査やルール整備にかかる期間は会社によって大きく違い、公開された目安はありません。

時間がかかりやすいのは技術の作業ではなく、「どの情報をAIに入れてよいか」が社内で決まらないことと、審査の質問と回答が何往復もすることです。最初に6つの質問への答えを揃えておくと、この往復が減ります。期間の考え方はAI開発の期間、社内の稟議の通し方は生成AIの稟議資料、発注時に審査項目を仕様に入れる方法はシステム開発の相見積もりとRFPで解説しています。

相談の時点で、構成や要件が決まっている必要はありません。初回相談は無料・30分・オンライン(Google Meet)で、「審査で止まっているが、何を用意すればいいか分からない」という段階でも大丈夫です。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

▶ 生成AIの社内導入の構成と、開発が必要な範囲を相談する

よくある質問

Q1. 社員が個人のChatGPTに業務資料を貼り付けてしまいます。構成を整える前に、まず何をすべきですか。

禁止の通知だけでは止まりません。会社が用意したAIがない状態では、社員は仕事を早く終わらせるために個人のアカウントを使います。個人のアカウントは会社の管理の外にあるため、記録も入力の制限も効きません。現実的な順番は、①公開してよい情報に限って使える法人プランをすぐに用意する、②個人アカウントへの業務情報の入力を禁止する、③社外秘を扱う構成は並行して検討する、です。会社として認めるAIの一覧の作り方や、利用状況の見える化はシャドーAIのリスクで解説しています。

Q2. 顧客の個人情報をAIに入れても、法律上問題ありませんか。

個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、個人情報を含む内容を入力する場合は利用目的の範囲内かを十分に確認すること、本人の同意なく個人データを入力し、それが回答を作る以外の目的で扱われる場合は法律違反になる可能性があること、提供元が入力内容を機械学習に使わないことを十分に確認することを求めています(個人情報保護委員会)。つまり確認すべきは「学習に使われないか」だけでなく、「回答以外の目的で残されないか」です。氏名などを記号に置き換えてから入力する運用も、あわせて検討してください。

Q3. オンプレにすれば、月々の費用はかからないのでは。社内にエンジニアがいなくても運用できますか。

月々の費用はかかります。保守、電気代、故障したGPUの交換、新しいAIへの入れ替え、脆弱性への対応が続くからです。前掲のEdgeLLMも、使った分の課金はない代わりに月額固定費がかかります。機材の値上がりも無視できず、DGX Sparkは2026年2月に米国価格が3,999ドルから4,699ドルに上がったと報じられています。社内にエンジニアがいない場合、①法人プランと③国内事業者のAPIは比較的運用しやすく、④⑤は外部への委託が前提です。②はその中間で、設定の定期確認を誰が担うかを決めておく必要があります。運用費の中身はシステム保守運用費の相場をご覧ください。

Q4. Microsoft 365を全社で使っています。Copilotで十分ではありませんか。

公開情報や社内の一般的な文書が中心なら、Copilotから始めるのが順当です。注意点は2つあります。1つは、日本国内での処理が2028年予定のため、「国内で処理すること」が契約条件になっている情報には当面使えないこと。もう1つは、Copilotは社員が開ける資料なら何でも答えの材料にするため、ファイル共有(SharePoint)の共有設定がゆるいままだと、見せるべきでない資料がAI経由で見つかることです。Microsoft自身も、SharePointの共有設定は既定で最も寛容な設定になると注意を促しています。Copilotを入れる前に、共有設定を見直してください。足りない部分だけを作る考え方は社内AIチャットボットの費用相場で、Copilotのエージェント機能はMicrosoft 365 Copilotのエージェントで解説しています。

Q5. DeepSeekやQwenなど、海外製の公開モデルを自社のサーバーで動かすのは問題ありませんか。

入力内容が外部に出ない点では、海外のサービスをそのまま使う場合よりリスクは小さくなります。ただし、審査では別の点を問われます。デジタル庁の生成AIガイドライン第2.0版は、DeepSeek等の業務利用に関する注意喚起(2025年2月6日)を引用しており、海外製のAIや国外のサーバーの扱いは必ず確認の対象になります。自社で動かす場合も、①モデルの開発元とライセンス、②今後も更新が続くか、③別のモデルに入れ替えられる作りになっているか、の3点は説明できるようにしておいてください。国産の選択肢としては、GPU1基で動くよう設計されたNTTのtsuzumi 2などがあります。

Q6. AIの提供元で情報漏えいなどの事故が起きたら、何をしてもらえますか。

規約に同意するだけのサービスでは、事故時の対応は規約の範囲に限られ、個別に交渉する余地はほとんどありません。デジタル庁のガイドラインは、契約時の確認事項として「インシデント発生時の事業者の対応義務と範囲(原因特定のための情報・データ提供を含む)」を挙げています。個別の契約を結ぶなら、この点を契約書に入れてください。また、②④⑤のように記録を自社の側に残せる構成なら、提供元の協力を待たずに「誰が、いつ、何を入れたか」を自社で調べられます。事故の損害は小さくありません。IBMの2026年の調査では、情報漏えい1件あたりの被害額は世界平均で499万ドル(約7.6億円)、悪意ある侵害の4件に1件はAIを使った攻撃でした(IBM)。

Q7. 補助金は使えますか。

自社専用に作る受託開発は、原則として対象外です。 デジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金)は、事務局に登録されたITツールの導入を対象とする制度で、個別に開発するシステムは対象になりません。登録されている既製のサービスであれば対象になり得ます。2026年10月10日に公式スケジュールを確認した時点で、公表されている通常枠の締切は2026年10月30日(金)17:00、交付決定は2026年12月10日(木)予定、事業の実施と実績報告の期限は2027年5月31日(月)17:00(予定)で、以降の回は随時公表とされています(公式スケジュール)。補助金は実績報告のあとに交付される後払いなので、導入費用はいったん全額を自社で支払う前提で資金繰りを組んでください。法人プランや登録済みの既製サービスで要件を満たせるなら、補助金を使ってそちらを導入する方が合います。対象の範囲はAI導入補助金の対象ツールにまとめています。自社の環境に合わせた権限や連携の開発が必要な場合は、補助金の有無とは切り離して開発の範囲を検討してください。

生成AIの社内導入の構成でお悩みの方へ

生成AIの社内導入で求められるセキュリティ要件は、AIに入れる情報の区分で決まります。公開情報が中心なら法人プラン(1人月3,000円前後)、社外秘・顧客情報なら自社のクラウドから閉域でAIを呼び出す構成(通信部分は月数千円〜、費用の中心は構築と運用)、置き場所が契約や法令で決まっている情報なら、国内処理・保存なしの構成かオンプレ(導入支援付きパッケージで500万円〜)です。「閉域にすれば安全」ではなく、経路・保存・処理場所の3つを分けて答えを用意することが、審査を通す近道です。

  • 情報システム部門や法務の審査で、生成AIの導入が止まっている
  • 法人プランで足りるのか、閉域の構成やオンプレが必要なのか判断できない
  • 開発会社から「閉域なら安全」と説明されたが、保存場所や処理場所の答えがない

このいずれかに当てはまるなら、初回相談(無料・30分・オンライン〔Google Meet〕)をご利用ください。要件が固まっていない段階でも大丈夫です。当社の価格は既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別、クラウドやAIの利用料は別)です。

ご相談の際は、①AIに入れたい情報の種類(実際のデータではなく、どんな情報かの説明で十分です)、②審査で止まっている質問(あれば)、③使う社員の人数と、今使っているシステム・ツール名、の3点をお聞かせください。自社でAIを使って進められる部分と、頼んだ方がよい部分を一緒に切り分け、相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。法人プランで足りる場合や、足りない部分だけの改修で済む場合は、そうお伝えします。秘密情報・本番の認証情報・実際の顧客データは、相談の段階では送らないでください。

▶ 生成AIの社内導入の構成と、開発が必要な範囲を相談する

関連記事:生成AIのセキュリティリスク/シャドーAIのリスク/社内AIチャットボットの費用相場/RAG導入の費用/AIのPoC費用

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この記事の著者

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