AI開発会社の選び方|発注前に確認する20項目と危ない兆候【2026年9月最新】

この記事のポイント
AI開発会社の選び方を、発注前に確認する20項目のチェックリストで整理。依頼先5タイプの違い、商談での良い回答と危ない兆候、要件定義40万円〜・PoC100万〜500万円という費用相場、契約で押さえるデータと権利の条件まで解説します。
AI開発会社の選び方で見るべきなのは、技術力の高さではなく「作った後の運用まで引き受けられる会社かどうか」です。費用は、要件定義だけなら40万〜200万円、試しに作って確かめる工程(PoC)で100万〜500万円、本開発で300万〜3,000万円が2026年時点の公開相場で、当社の場合はPoC 300万円〜/既存システムの小規模改修 30万円〜/本開発は個別見積(すべて税別)です。
この記事は、複数のAI開発会社から提案を受けている段階の経営者・事業責任者が、何を確認し、どの答えが返ってきたら合格とするかを判断するためのものです。他社の実名比較は載せていません。当社自身が受託開発会社であり、実名で他社を採点することが読者の判断の役に立たないためです。代わりに、依頼先のタイプ別の向き不向き、確認する20項目、商談での良い回答と悪い回答の見分け方、そして国が公表している発注者向けの文書の使い方を載せます。
AI開発会社選びで失敗するのは、技術力を見すぎるから

出典: 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)公式サイト
発注側が失敗するときの型は、ほぼ1つに集約されます。動くものはできたのに、現場で使われないまま終わるというものです。
数字で見ると状況がはっきりします。Confluentが2026年6月16日に発表した「Data Streaming Report 2026」(14カ国4,625名、うち日本275名の調査)では、AIエージェントを本番運用まで持っていけている日本企業は17%でした。グローバル平均は32%、1位のインドは37%で、日本は調査対象14カ国中の最下位です。ベンダーによる調査である点は割り引いて読む必要がありますが、20ポイント差は誤差では説明できません。
同じ調査で、AI活用が進まない理由の上位3つは「AIのスキル・専門知識が足りない」80%、「データの品質やタイムリーさに確信が持てない」71%、「リアルタイムのデータやインフラの制約」69%でした。どれも「作る技術がない」という話ではありません。 社内に知見がなく、データが整っておらず、既存の仕組みに繋がらない。つまり、詰まっているのは開発の手前と後ろです。
IPAが2026年7月16日に公表した「DX動向2026」(国内1,799社、調査期間2026年4月17日〜6月12日)も同じ方向を示しています。AI導入の効果として「業務が効率化したり迅速化した」を挙げた企業は91.6%あるのに対し、「売上や利益が向上した」は3.9%にとどまりました。効率化には効いている、つまり作ったものは動いている。それでも事業の数字に接続できていない企業が大半だということです。
ここから導かれる選定の基準は次の1点です。
「作れますか」ではなく「運用に乗せて、最後は自社だけで回せる状態にできますか」で選ぶ。
技術力は最低条件であって、差がつく場所ではありません。差がつくのは、業務を理解して要件に翻訳できるか、現場に定着させる工程まで設計できるか、そして手を引くときに引き継げる形で置いていけるかです。作ったものが現場に根づかない理由は自動化が定着しない原因に整理しています。
選定を始める前に、自社で決めておく3つ
選定がうまくいかない原因の半分は、発注側の準備不足です。次の3つが決まっていない状態で複数社に声をかけると、各社がバラバラな前提で提案を作るため、比較ができなくなります。
1. どの業務を対象にするか(1つに絞る)「AIで全社的に効率化したい」は依頼になりません。対象業務を1つ決めてください。決められない場合は、その業務に月何時間かかっているかを実測するところから始めます。時間が測れない業務は、効果も測れません。
2. 誰が使うか現場の担当者が使うのか、管理者だけが見るのか。使う人が決まると、必要な精度と画面の作り込みが決まり、金額が半分になることもあります。
3. どうなったら成功とするか「作業時間が月20時間減る」「転記ミスがゼロになる」など、開発が終わったあとに測れる形で書きます。ここが曖昧なままだと、納品後に誰も合否を判定できません。
この3つが埋まらない段階で相見積もりを取ると、選定作業に費やした数週間が丸ごと無駄になります。埋まらないなら、選定を始めるより先に1社と話して整理したほうが早い。 当社も要件が固まっていない状態からの相談を受けており、受託開発の初回相談は無料です。そもそも外注すべきかどうかの判断は生成AIの内製と外注の分かれ目にまとめています。
AI開発の依頼先は5タイプある|どこに頼むのが合うか

「AI開発会社」と一括りにされていますが、実態は性格の違う5タイプに分かれます。タイプを間違えると、どれだけ丁寧に選定しても合いません。
タイプ | 得意なこと | 費用感 | 合うケース |
|---|---|---|---|
大手SIer | 基幹システムとの連携、大規模・長期、社内稟議の通しやすさ | 数千万円〜 | 全社基盤に組み込む。監査対応が厳しい |
AI専門ベンダ | 画像認識・需要予測など、高い精度が要る領域 | 数百万〜数千万円 | 精度そのものが事業価値になる |
受託開発会社 | 業務の言語化から実装、既存システムの改修 | 30万〜数千万円 | 業務の詰まりを解消したい。段階的に進めたい |
コンサルティング会社 | 課題整理、投資判断の材料づくり | 数百万円〜 | 何をやるかが社内で決まらない |
フリーランス・ノーコード事業者 | 小さく速く作る | 10万〜100万円 | 部門内で完結する。止まっても業務は回る |
見落とされやすいのは、コンサルティング会社に実装まで頼むと外部の開発会社に再委託されることがある点と、フリーランスに頼んだものは担当者が離れると保守が止まる点です。どちらも悪ではありませんが、契約前に把握しておく必要があります。
なお、そもそも開発せずに既製の仕組みで済む業務もあります。毎月同じ手順で繰り返される定型作業なら、作らずに済ませたほうが安く早い場合があります。判断材料はAIエージェント導入の費用を参照してください。
AI開発会社の選び方チェックリスト20項目

提案を受けている会社ごとに、そのまま印刷して○×を付けられる形にしました。20項目のうち、契約とデータの権利の5項目(13〜17)は1つでも空欄なら契約前に必ず埋めてください。 残りは満点である必要はありません。
体制・実績(4項目)
- 1. 同じ「業務」の実績があるか。 同じ技術の実績ではありません。「製造業での画像認識」より「自社と同じ在庫照合の業務」の経験のほうが効きます。
- 2. 実際に手を動かすのは自社の社員か。 再委託がある場合、どこに何を出すかを聞きます。再委託自体は問題ではなく、伏せられることが問題です。
- 3. 案件に入る人数と役割が提案書に書かれているか。 「弊社エンジニアが対応」だけの提案は、体制が決まっていないか、これから探すかのどちらかです。
- 4. こちらの業務の話を、業務の言葉で返してくるか。 専門用語をそのまま返してくる会社は、業務を理解しないまま作ります。
進め方とPoC(4項目)
- 5. 小さく試す工程から始められるか。 いきなり本開発しか提案しない会社は、発注側にリスクを寄せています。
- 6. 試作の合格条件を、着手前に文書で決めるか。 「どの質問に、どの水準で答えられたら合格か」を書面にします。ここが最も重要です。
- 7. 試作と本開発の契約が分かれているか。 一括契約にすると、途中でやめる判断ができなくなります。
- 8. 途中で範囲が変わったときの手順が決まっているか。 「誰が承認し、金額と納期をいつ再提示するか」が決まっていれば、揉めません。
費用と見積(4項目)
- 9. 見積が工程ごとに割れているか。 「AI開発一式」の見積書は、社内で説明できません。
- 10. 見積の前提条件が書かれているか。 データの整備を誰がやるか、繋ぐシステムは何本か。前提のない見積は必ず追加請求になります。
- 11. AIの利用料を誰が負担するか明記されているか。 処理量に応じた従量課金です。月数万円で済むこともあれば数十万円になることもあります。
- 12. 運用・保守の範囲と月額が確定しているか。 相場は月10万〜100万円、または年間で開発費の10〜20%です。ここが白紙の提案は、運用の設計をしていません。
見積そのものの読み方はAI開発の見積もり比較、内訳の相場はAI受託開発の費用相場に分けて書いています。
契約とデータの権利(5項目・空欄不可)
この5項目は、経済産業省が2025年2月18日に公表した「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」の観点を、発注者が使う言葉に置き換えたものです。同チェックリストは、AIの技術や法務に詳しくない企業でも使えるように作られており、預けるデータ(インプット)とAIが出したもの(アウトプット)それぞれについて、特定・提供・利用・外部提供・権利の帰属・処理の成果という6つの観点で確認事項を並べています。
- 13. 預けたデータの利用目的が契約書で限定されているか。 定義から外れた情報は、開発会社側が自由に使える扱いになり得ます。
- 14. 預けたデータをAIの学習に使わないと書かれているか。 使う場合は、その対価と範囲を書きます。
- 15. 契約終了時のデータ削除と、削除した証拠の提出が定められているか。 「削除します」だけでは足りません。削除したことを示す記録まで求めます。
- 16. 出来上がったものの権利が自社に来るか、どこまで来るか。 同チェックリストが挙げる主要リスクの1つが、知的財産権が無対価で移転することです。自社が渡したデータに関する権利は、原則として自社に帰属する形が望ましいとされています。
- 17. 請負か準委任か、そして「完成」の定義が決まっているか。 次の項で詳しく扱います。
運用と引き継ぎ(3項目)
- 18. AIのモデルを後から乗り換えられる作りになっているか。 AIの性能と価格は年単位で変わります。特定の1社のAIに深く結びついた作りは、数年後の負債になります。
- 19. クラウドやAIサービスのアカウントが自社名義か。 開発会社名義で作られると、契約を解消したときに自社のデータごと動かせなくなります。発注実務で最も多い事故の1つです。
- 20. 他社でも引き継げる形で納品されるか。 プログラム本体だけでなく、設計書と運用手順書まで納品物に含めます。
商談で聞く質問と、良い回答・悪い回答
チェックリストを埋めるための質問です。回答の内容そのものより、答え方に会社の性格が出ます。
質問 | 良い回答 | 危ない回答 |
|---|---|---|
この業務の何が難しいと思いますか | 「データの表記ゆれが多そうなので、その整理に時間がかかります」など、具体的な難所を挙げる | 「弊社の技術なら問題ありません」 |
試作で何ができたら合格ですか | 「合格条件はこちらで決めます。案として3つ出します」と、判定基準の議論を始める | 「まず作ってみて、それから考えましょう」 |
実際に手を動かすのはどなたですか | 名前と経歴を出す。再委託があれば先方も明示する | 「担当は受注後に調整します」 |
預けたデータは学習に使いますか | 「使いません。契約書のこの条項に書きます」と条文の場所を示す | 「セキュリティは万全です」(質問に答えていない) |
うまくいかなかった案件の話を聞かせてください | 失敗の構造を説明できる。「合格条件を決めずに始めた案件が止まった」など | 「失敗した案件はありません」 |
運用開始後、月々いくらかかりますか | 保守費とAIの利用料を分けて、幅を持たせた数字で答える | 「運用は別途お見積もりです」 |
特に注目すべきは5つ目の質問です。失敗を構造として説明できる会社は、同じ失敗を避ける手順を持っています。「失敗はない」と答える会社は、案件数が少ないか、失敗を振り返っていないかのどちらかです。
提案・見積・体制に出る危ない兆候
以下は、1つでも該当したら発注を止めるという意味ではありません。該当した理由をその場で聞き、納得できる説明が返ってこなければ外すという使い方をします。
- 「AI開発一式」で金額が1行しかない。 社内で説明できず、追加請求の余地も残ります。
- 試作を挟まず、いきなり数千万円の本開発を勧めてくる。 発注側が撤退できない構図になります。
- 精度を「保証します」と言い切る。 AIの出力は投入するデータに左右されるため、事前の保証は原理的にできません。経済産業省の契約チェックリストも、100%正しい出力は期待できないことを前提に、人による確認・補正を組み込んだ運用設計を求めています。言い切る会社は、AIを扱った経験が浅い可能性があります。
- クラウドやAIサービスのアカウントを開発会社の名義で作ろうとする。 解約時に自社データが人質になります。
- 再委託先を明かさない。 誰が実装したか分からないものは、保守も引き継ぎもできません。
- 提案書に自社の業務の言葉が一度も出てこない。 他案件の資料の流用です。
- 補助金の締切を理由に契約を急がせる。 補助金は原則として交付決定より前に契約すると対象外になります。急がされたら順序を必ず確認してください。詳細はAI補助金の締切と申請の流れにあります。
契約で必ず決める項目|国が出している文書を使う

出典: 特許庁 IP BASE 公式サイト
AI開発の契約は、通常のシステム開発と同じ形では収まりません。判断の拠り所として、2025年以降に国が公表した発注者向けの文書が3本そろっています。選び方を扱う記事のほとんどが触れていない領域です。
請負か準委任か(特許庁 IP BASE)
契約方式 | 内容 |
|---|---|
請負型 | 仕事の完成を約束し、法的責任を負う。完成できなければ報酬は発生せず、損害賠償の対象にもなる |
準委任型 | 決められた注意義務のもとで作業することに対価が発生する。完成そのものには法的責任を負わない。作業に応じて支払う型と、成果の引渡しと引き換えに支払う型がある |
特許庁のIP BASEは、AI開発では「成果の引渡しと引き換えに支払う準委任」が折衷案として機能すると整理しています。AIは学習データに依存するため精度の事前保証が難しく、開発会社は請負型に難色を示す。一方で発注側は成果がほしい。そこで、法的な完成責任は負わないが事実上の完成を目指す形にする、という考え方です。ただし「完成」の定義は案件ごとに決める必要があるため、ここを詰めずに契約書に印を押さないでください。システム全体を作る案件であれば、請負型を選ぶ合理性も残ります。
契約チェックリスト(経済産業省・2025年2月)
同チェックリストは契約を「利用型」と「開発型」に大別し、さらに3つの形に分けています。ChatGPTなどを規約に同意して使うだけの汎用的AIサービス利用型(利用型)、開発会社が自社向けに構築するカスタマイズ型、専用のAIをゼロから作る新規開発型(後の2つが開発型)です。生成AIを使った実務で最も多いのは真ん中のカスタマイズ型で、ここは交渉の余地があります。
チェックリストが警告している主なリスクは、知的財産権の無対価での移転、目的外の利用、本人の同意がないまま個人情報が第三者に渡ること、営業秘密の流出、他人の著作物を無断で入力してしまうことです。発注側が意識せずに踏むものばかりなので、契約書のレビュー時にこの5点を照合してください。
同チェックリストは、開発を委託する契約について、精度の評価基準を事前に定義しておくことも求めています。正解率だけでなく、誤ったときにどれくらい重大かという観点も含めて決めます。
AI事業者ガイドライン第1.2版(総務省・経済産業省/2026年3月31日)
2024年4月の初版から2度目の改定です。今回、AIエージェントが「特定の目標達成のために自律的に行動するAIシステム」として定義され、どこまで権限を与えるか、どこで人が介在するかの設計が重要だと明記されました。あわせて、過度な依存(AIの出力を疑わなくなること)がリスクとして追記され、AIの開発者・提供者・利用者それぞれの役割も整理されています。
自律的に動くAIの導入を検討している場合、「どの操作までAIに任せ、どこから人が承認するか」を提案書に書かせる根拠として使えます。
民事責任の手引き 第1.0版(経済産業省/2026年4月9日)
AIが原因で損害が出たとき誰が責任を負うのかを、既存の法律と裁判例に基づいて整理した文書です。法的拘束力はなく、責任の範囲を予見して契約を設計するための実務指針という位置づけです。AIを人を補助するものとして使う場合と、人の判断を置き換えるものとして使う場合で枠組みを分けているのが特徴で、物流・不動産審査・製造業・カスタマーサポートなど7つの事例が載っています。
発注前に「このAIは補助なのか、判断の置き換えなのか」を社内で決めておくと、契約交渉で押さえるべき点が自動的に決まります。
費用の目安と、当社の場合

金額を出さない選び方の記事に意味はないので、相場と当社の価格を並べます。
段階ごとの相場(各社の公開値)
段階 | 費用 | 期間 |
|---|---|---|
構想・打ち合わせ | 0円 | 1〜2ヶ月 |
実現できるかの調査 | 0〜100万円 | 2週間〜1ヶ月 |
要件定義 | 40万〜200万円 | 1〜2ヶ月 |
試作(PoC) | 100万〜500万円 | 1〜3ヶ月 |
本開発 | 300万〜3,000万円 | 3〜9ヶ月 |
月額運用 | 10万〜100万円 | 継続 |
用途ごとの相場
用途 | 試作 | 本開発 | 月額運用 |
|---|---|---|---|
社内文書を検索して答えさせる | 100万〜300万円 | 300万〜1,000万円 | 10万〜50万円 |
問い合わせ対応の自動化 | 50万〜200万円 | 200万〜800万円 | 10万〜40万円 |
画像で判定する仕組み | 100万〜300万円 | 500万〜1,500万円 | 10万〜50万円 |
需要予測 | 100万〜300万円 | 300万〜1,000万円 | 10万〜40万円 |
人を月単位で借りる形での単価は、プロジェクト管理者が月100万〜180万円、データ分析の専門職が月120万〜250万円、AIエンジニアが月100万〜200万円が公開されている水準です。提案書の金額をこの単価で割ると、何人が何ヶ月入る想定なのかが逆算できます。ここが自社の想定と合わなければ、その提案は範囲を読み違えています。
当社の価格
- 既存システムの小規模改修:30万円〜(税別)
- 試作(PoC):300万円〜(税別)
- 本開発:個別見積(税別)
- 初回相談は無料。要件が固まっていない状態でも相談を受けています
相場表の中では、試作の帯で中位から上、小規模改修の帯では低めに位置します。試作を安く請けない理由は、合格条件の設計と現場データでの検証まで含めているためです。動くものだけを見せる試作なら、もっと安く作る会社があります。金額の判断材料が必要な場合は、受託開発の相談ページから、他社の提案と並べる前提でお問い合わせください。
「選ぶ」だけで6〜12週間かかる|選定作業そのもののコスト
見積書に出ない費用があります。発注側が選定に使う時間です。
工程 | 期間 | 主に動くのは |
|---|---|---|
課題を言葉にする | 1〜2週間 | 発注側 |
実現方法を検討する | 2〜4週間 | 発注側+開発会社 |
依頼内容を書いて声をかける | 1〜2週間 | 発注側 |
提案を比較して決める | 2〜4週間 | 発注側 |
合計で6〜12週間。ここは丸ごと発注側の人件費です。金額に直すと次のようになります。
担当者2名が、週5時間ずつ、10週間かけて選定した場合。2名 × 5時間 × 10週 = 100時間。時給3,000円換算で30万円です。役員が関われば、この数字はさらに上がります。
つまり、30万円の小規模改修なら、5社に声をかけて丁寧に選定した時点で、選定コストが開発費と同額になります。 金額の帯によって、選定にかける労力を変えるべきだということです。目安は次の通りです。
- 〜100万円:1〜2社に相談して即決する。相見積もりのコストが合わない
- 100万〜500万円:2〜3社。試作の合格条件をめぐる議論の質で選ぶ
- 500万円〜:3〜5社。依頼内容を文書にして、条件を揃えて比較する
実際にやった事例
社名は出せないため、課題と作ったもの、変わったことだけを書きます。いずれも選定の段階で何が論点だったかを添えました。
調剤薬局のケース(小規模改修・30万円〜の帯)
課題:業務システムから毎日CSVを出し、Excelで加工して別のシステムに手入力していた。担当者が休むと業務が止まる状態だった。
作ったもの:既存システムはそのままに、CSVの取り込みと加工、次のシステムへの受け渡しを自動で行う仕組みを追加した。新しいシステムは導入していない。
何が変わったか:手入力の工程がなくなり、担当者が休んでも業務が流れるようになった。選定時の論点は「新しいシステムを入れる必要があるか」で、他社からは基幹システムの入れ替えを含む提案も出ていた。やりたいことが同じでも、既存システムを残す前提かどうかで金額は一桁変わります。提案を比べるときは、どの会社が一番小さく解いているかを見てください。
医療機関のケース(試作・300万円〜の帯)
課題:AIで効率化したい業務の候補が複数あり、どれから手を付けるか社内で決められなかった。全部やる前提で見積もると数千万円になり、稟議が通らない。
作ったもの:候補の中から1業務に絞り、実際の業務データを使って現場の担当者が触れるものを試作として構築した。着手前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格か」を文書で決めた。
何が変わったか:現場の言葉で「使える/使えない」が判断できるようになり、本開発に進む範囲を数字で説明できるようになった。選定時の論点は「合格条件を誰が決めるか」でした。ここを開発会社任せにすると判定が甘くなり、本番運用に乗らない試作が出来上がります。試作の設計はAI PoCの費用と進め方に詳しく書いています。
インフラ企業のケース(本開発・個別見積の帯)
課題:複数のシステムにまたがるデータを人が突き合わせて確認していた。件数が多く、月末に負荷が集中していた。
作ったもの:システム間のデータを自動で照合し、食い違いがある分だけを人に回す仕組み。全件を人が見る運用から、例外だけを人が見る運用に切り替えた。
何が変わったか:確認作業の総量が減り、月末に集中していた負荷が平準化された。選定時の論点は「AIにどこまで判断させるか」でした。全件の可否をAIに判定させる案もありましたが、誤りの重大性を考えて、最終判断は人に残す設計にしています。AI事業者ガイドラインが求める「人が介在する設計」は、まさにこの部分の話です。
相談から開発着手までの流れと期間
段階 | 内容 | 期間 | 費用 |
|---|---|---|---|
初回相談 | 課題を聞き、そもそも作るべきかを一緒に判断する | 1回1時間程度 | 無料 |
課題整理 | 対象業務を1つに絞り、成功の条件を決める | 1〜2週間 | 無料〜 |
見積・提案 | 工程ごとに金額を割った提案を出す | 1〜2週間 | 無料 |
試作(PoC) | 現場データで使えるかを検証し、合格条件で判定する | 1〜3ヶ月 | 300万円〜 |
本開発 | 本番で使うものを作る | 3〜9ヶ月 | 個別見積 |
運用 | 監視・改修・AIの乗り換え対応 | 継続 | 個別 |
小規模な改修だけであれば試作を挟まず、相談から1ヶ月前後で着手できる場合もあります。逆に基幹システムと繋ぐ案件は、相談から本番稼働まで1年前後を見ておくのが現実的です。
よくある質問
Q1. 守秘義務で社名を出せない実績しか示されない場合、どう見極めればいいですか。
社名が出ないこと自体は普通のことで、判断材料になりません。見るべきは、「どんな課題を」「何を作って」「何がどう変わったか」の3点を、社名抜きでどこまで具体的に話せるかです。業種、対象業務、関わった人数、期間、途中で手戻りした箇所まで答えられれば実在します。「大手企業の実績多数」「導入◯◯社」とだけ言い、中身を聞くと曖昧になる会社は外してください。最も効くのは「その案件で一番手戻りしたのはどこですか」という質問です。守秘の範囲内で答えられる問いなので、答えられない理由が守秘でないことがすぐ分かります。
Q2. 大手SIerと小規模な開発会社では、どちらが安全ですか。
安全さの種類が違います。大手は倒産の心配が小さく、監査や社内稟議に強い一方、担当者が案件を掛け持ちしやすく、小さな改修は単価が合いません。小規模な会社は意思決定が速く安いものの、担当者1名に依存する構造になりがちです。小規模な会社に頼む場合は、設計書と運用手順書を納品物に明記しておけば、依存のリスクは大きく下がります。
Q3. ISO27001やプライバシーマークは必須ですか。
医療・金融・公共など、取引先から求められる業界では実質必須です。それ以外では、認証の有無より契約書にデータの扱いがどう書かれているかのほうが効きます。認証は組織としての管理体制を示すもので、自社が預けるデータの扱いを個別に保証するものではありません。認証があっても、学習に使うかどうかや削除の証明が契約書に書かれていなければ意味がありません。
Q4. 依頼内容の文書(提案依頼書)は必ず作らなければいけませんか。
500万円以上の案件では作ったほうが結果的に安く済みます。ただし形式は問いません。「対象業務」「現状の作業手順」「使う人」「成功と判断する条件」「予算の上限」「希望時期」「渡せるデータ」の7項目をA4で1〜2枚にまとめれば、比較できる提案が返ってきます。100万円未満の案件でこの文書を作り込むのは、時間の使い方として合いません。
Q5. 提案を断るとき、気をつけることはありますか。
断る理由を1つだけ具体的に伝えてください。「予算が合わなかった」「試作の設計の考え方が合わなかった」など。理由を伝えると、範囲を変えた再提案が出てくることがあり、それが最良の選択肢になる場合があります。逆に、他社の金額だけを伝えると、範囲を削って安くした提案が返ってきて、比較が振り出しに戻ります。
Q6. 開発の途中で、開発会社が対応できなくなったらどうなりますか。
契約書に引き継ぎの条件を書いていなければ、途中の成果物を受け取れないことがあります。防ぐ方法は3つで、工程ごとに納品物を受け取ること、プログラム一式と設計書の引き渡しを契約に書くこと、クラウドとAIサービスのアカウントを自社名義で作ることです。この3つを満たしていれば、別の会社への引き継ぎは現実的な作業になります。チェックリストの19番・20番はこのための項目です。
Q7. すでに他社に依頼して失敗した業務でも、相談できますか。
相談できます。むしろ、前回の提案書と成果物が残っている案件は、何が原因で止まったかを短時間で特定できます。多いのは「合格条件を決めずに始めた」「対象業務が広すぎた」「アカウントが開発会社の名義だった」の3つです。前の案件の資産を活かせるかどうかも含めて、判断材料をお出しします。
Q8. 社内にIT担当がいなくても発注できますか。
できます。ただし、業務を一番よく知っている人を1名、窓口として出してください。 必要なのはITの知識ではなく、その業務の例外パターンを説明できることです。「こういうときはこう処理する」を答えられる人がいれば、要件は固まります。逆に、業務を知らない担当者が窓口になると、作ったものが現場で合わなくなります。
発注先を決める前の、条件整理から相談できます
複数社から提案を受けている段階で、「20項目のうちどこが埋まっていないか」「その金額はどの範囲を見積もったものか」を一緒に整理するところから相談を受けています。当社の金額は、既存システムの小規模改修が30万円〜、試作(PoC)が300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)です。要件が固まっていない段階でも、他社と比較する前提でも構いません。
判断の材料として、AI受託開発の費用相場、AI PoCの費用と進め方、AI開発の見積もり比較もあわせてご覧ください。そもそも外注すべきかどうかは生成AIの内製と外注の分かれ目、補助金を使う場合の順序はAI導入に使える補助金にまとめています。
補助金の枠内で導入できる範囲を試算します
補助金前提で相談するこの記事の著者

AI革命
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