業務自動化と受託開発はどちらを選ぶべきか|5つの質問で分かる判断フロー【2026年9月最新】

この記事のポイント
業務自動化と受託開発のどちらを選ぶべきかを5つの質問で判断できる形に整理。自動化は初期100万円+月額10万円〜、受託開発は小規模改修30万円〜・PoC300万円〜。削減時間の試算と適用できない業務の線引きまで数字で解説します。
すでに人が毎月繰り返している作業をなくしたいなら業務自動化(初期100万円+月額10万円〜、導入1〜2ヶ月)、まだ存在しない仕組みを作りたい・既存システムを直したいなら受託開発(小規模改修30万円〜、PoC300万円〜)です。(いずれも税別)そして月20時間未満の作業であれば、時給3,000円換算で月6万円にしかならないため、どちらにも投資せず手順の見直しだけで済ませたほうが得になります。
この記事では、その切り分けを5つの質問で自分で判断できる形にまとめます。判断を間違えたときにいくら損をするのか、安いほうから試すのは正しいのか、という実務的な話まで含めて扱います。
業務自動化と受託開発は、そもそも並べて比べるものではない
最初にひとつ整理させてください。この2つは同じ土俵にある選択肢ではありません。
- 業務自動化 = 目的。「人がやっている繰り返し作業を、人がやらなくていい状態にする」こと
- 受託開発 = 手段のひとつ。「必要な仕組みを外部の会社に作ってもらう」こと
つまり正しくは「業務自動化か受託開発か」ではなく、「業務自動化という目的を、どの手段で達成するか。そして今回の困りごとはそもそも自動化の話なのか、新しい仕組みを作る話なのか」という問いです。
この混乱が起きるのには理由があります。「業務自動化」で検索すると自動化ツールの紹介記事が出てきて、「受託開発」で検索すると開発会社のリスト記事が出てくる。どちらも自分の会社のサービスを前提に書かれているため、読み比べても「で、うちはどっちなんだ」の答えが出てきません。
実務では、両者は次のように使い分けられています。
困りごとの形 | 実態 | 進め方 |
|---|---|---|
「この作業、毎月同じことをやっている」 | 業務はすでに存在し、手順も固まっている | 自動化(作業を機械に渡す) |
「そもそもこの業務を回す仕組みがない」 | 業務自体をこれから設計する | 受託開発(仕組みを作る) |
「基幹システムにこの機能がなくて手作業している」 | 仕組みはあるが穴がある | 受託開発(改修)→ その後に自動化 |
「効果があるか分からないので試したい」 | 判断材料そのものがない | 受託開発(小さく試す) |
3つ目と4つ目のように、受託開発と自動化は順番に並ぶことのほうが多いというのが現場感覚です。対立させて片方を選ぶ問題ではありません。
どちらを選ぶか、5つの質問で決める

ここからが本題です。上から順にYES/NOで答えてください。5問目まで行くと答えが出ます。
質問1:その困りごとは「すでに人が毎月やっている作業」ですか?
- YES → 質問2へ
- NO(作業自体がまだ存在しない/回す仕組みがない) → 受託開発。作るものが新規事業やサービスなら、いきなり本開発せずPoC(小さく作って試す検証工程)から入るのが一般的です。PoCは300万円〜が目安です
質問2:その作業に月20時間以上かかっていますか?
時給3,000円換算で、月20時間=月6万円、年間72万円です。
- YES → 質問3へ
- NO → どちらもまだ不要です。投資対効果が合いません。似た作業の統合、入力フォーマットの統一、承認ステップの削減といった手順の見直しを先にやってください。費用0円〜数万円の範囲で解決することが珍しくありません
ここで正直に線を引いておきます。月20時間未満の作業に初期100万円をかけると、回収に何年もかかります。「やらない」も立派な答えです。
質問3:入力も出力も、パソコン上で完結しますか?
紙の書類を人が見て判断する、電話で聞き取る、対面で本人確認する——こうした工程が必須の業務は、その部分を機械に渡せません。
- YES → 質問4へ
- NO → まず紙や対面をなくす工程が先です。紙の書類を読み取ってデータに変える仕組み(AI-OCR)の部分導入で初期数十万円〜、そもそも受け取り方から作り直すなら受託開発の範囲になります
質問4:毎回人が考えて決める「例外判断」は、全体の何割ですか?
ここが最大の分岐点です。実務での目安は2割です。
- 2割未満 → 質問5へ
- 2割以上だが、判断のルール自体は言葉で説明できる → 自動化で8割を処理し、人は例外だけを見る形が成立するか要相談。全部を自動にしようとせず、切り分けることが前提になります
- 判断のルールが言葉にできない(ベテランの勘に依存している) → 受託開発。ルールを整理して定義するところからの作業になります。業務の棚卸し・要件整理だけで数十万円〜百数十万円がかかる領域です
質問5:必要なデータは、既存システムから取り出せますか?
他のシステムと自動でデータをやり取りする「口」があるか、という話です。CSVで書き出せるか、他のソフトから読みに行けるか、と言い換えてもかまいません。
- YES → 業務自動化。AIエージェント型のサービスなら初期100万円+月額10〜50万円、導入は標準1〜2ヶ月です
- NO(画面を人が見て転記するしかない) → 受託開発 → 業務自動化の順。まずデータを取り出せるようにする改修(30万円〜)を行い、そのうえで自動化します。順番を逆にすると自動化の作り込みが無駄になります
答えの早見表
あなたの状況 | 答え | 費用の入口(税別) |
|---|---|---|
毎月同じ手順の作業をなくしたい | 業務自動化 | 初期100万円+月額10万円〜 |
既存システムに機能を足したい | 受託開発(小規模改修) | 30万円〜 |
効果が出るか分からないので試したい | 受託開発(PoC) | 300万円〜 |
新しい事業・サービスを立ち上げたい | 受託開発(本開発) | 個別見積 |
月20時間未満の作業 | どちらも不要 | 0円(手順見直し) |
紙・対面が必須の業務 | まず紙をなくす工程から | 部分導入で数十万円〜 |
判断が「業務自動化」に着地した方はシゴハヤエージェントのサービス内容を、「受託開発」に着地した方は受託開発のサービス内容をご覧ください。以降では、この判断の根拠になる数字を順に出していきます。
現場のどこに時間がかかっているか

質問2の「月20時間」を判断するために、まず自社の作業時間を把握する必要があります。よくある業務と、現場で実際にかかっている時間の目安は次のとおりです。
業務 | よくある所要時間 | 着地しやすい方向 |
|---|---|---|
担当1名で月20時間前後 | 自動化 | |
月10〜40時間 | 自動化(データを取り出せる場合) | |
営業1人あたり月10時間前後 | 自動化 | |
月20〜60時間 | 自動化(例外が少なければ) | |
時間より事故と属人化が問題 | 受託開発 | |
基幹システムに欲しい機能がない | — | |
新しいサービス・業務フローを立ち上げたい | — | 受託開発(PoCから) |
「自社の情シスでやる」が現実的かどうか
第3の選択肢として「内製」を検討する会社は多いのですが、ここには公的な調査データがあります。
IPA(情報処理推進機構)が2026年7月に公開した「DX動向2026」(調査対象1,799社)によると、DX推進人材が「やや不足」「大幅に不足」と回答した企業は85.5%にのぼります。また、AI導入率は従業員1,001人以上の企業で78.3%である一方、従業員101人以下では16.6%にとどまっています。
つまり、中堅・中小規模の会社にとって「社内の人材でAI活用を進める」は、人がいないという一点で成立しにくいのが現状です。内製と外注のどちらが安く付くかは、生成AIの内製と外注の分岐点で別途整理しています。
もうひとつ、判断に効く数字があります。同調査ではAI導入の効果として「業務効率化」を挙げた企業が91.6%だったのに対し、「売上・利益の向上」は3.9%、「顧客満足度の向上」は4.5%でした。期待した効果を得られた企業も31.8%です。
これは「AIで売上を伸ばそうとすると外れやすく、効率化に絞ると当たりやすい」ということです。社内の作業時間を削る目的なら自動化、売上を作る新しい仕組みを狙うなら小さく試す受託開発から、という使い分けの根拠にもなります。
自動化で対応できる業務・できない業務の境界線
自動化サービスは万能ではありません。適用できないケースを先に書きます。
自動化できる | 自動化できない |
|---|---|
毎日・毎週・毎月、繰り返し発生する | 年に1〜2回しか起きない |
入力も出力もデジタルで完結する | 紙の原本確認・対面・電話が必須 |
判断のルールを言葉で定義できる | ベテランの勘に依存していて説明できない |
例外が全体の2割未満 | 毎回状況が違い、都度考えて決めている |
決まった場所からデータを取り出せる | 画面を目で見て転記するしかない |
人が最終確認する前提で回せる | 最終決裁そのものを機械に委ねたい |
例外率2割が境界になる理由
例外が2割を超えると、「機械が処理した分の検算」と「例外を人が処理する手間」の合計が、もとの作業時間に近づいてきます。自動化したのに楽になっていない、という状態です。
ただしこれは「例外率が高い業務は諦める」という意味ではありません。例外を先に分離して、標準パターンだけを自動化の対象にするという設計ができます。たとえば受発注の突合なら、金額と数量が完全一致する取引だけを自動処理し、差異があるものを人の確認リストに回す。この形なら例外率が4割でも成立します。どこまでを機械に渡せるかの線引きは、AIエージェントに任せられる作業の範囲でより細かく扱っています。
「データを取り出せない」場合に起きること
質問5でNOだった場合、自動化の話はいったん止まります。データを取り出す口がないシステムを相手にすると、画面の位置を覚えさせて操作させる方式になり、相手側の画面が少し変わるたびに止まります。ここが後述する「作り直しコスト」の最大の発生源です。
この場合の正しい順番は、取り出せるようにする改修を先にやる(30万円〜)→ そのうえで自動化するです。既存システムからデータを取り出す方法そのものは、連携用の口がないシステムからデータを取り出す方法にまとめています。
削減できる時間と金額の試算
判断の最後は金額です。時給3,000円換算(社会保険料等を含む会社負担ベース)で計算します。
月の削減時間 × 3,000円 = 月の削減額
これを、自動化サービスの費用(初期100万円+月額10万円、税別・10名規模の場合)と突き合わせます。
月の削減時間 | 削減額(月) | 月額10万円との差引 | 初期100万円の回収期間 |
|---|---|---|---|
20時間 | 6.0万円 | −4.0万円(赤字) | 回収不可 |
34時間 | 10.2万円 | +0.2万円 | 実質不可 |
50時間 | 15.0万円 | +5.0万円 | 20ヶ月 |
80時間 | 24.0万円 | +14.0万円 | 約7.2ヶ月 |
120時間 | 36.0万円 | +26.0万円 | 約3.8ヶ月 |
読み取れることは3つです。
- 月額10万円を正当化するには、最低でも月34時間の削減が必要(10万円 ÷ 3,000円)
- 初期100万円を1年で回収するには、月約61時間の削減が必要(100万円÷12ヶ月+10万円=月18.3万円 ÷ 3,000円)
- 月20時間の単一業務では合わない。複数業務をまとめて対象にして初めて成立する
3番目が実務上いちばん重要です。月次レポート20時間+データ転記30時間+商談記録の入力10時間+突合40時間で合計100時間、といった形で束ねると、月30万円の削減に対して月額10万円という構図になります。1業務ずつ検討していると永久に採算が合いません。
受託開発側の回収計算
受託開発は月額が発生しない代わりに初期がかかるため、計算が変わります。小規模改修30万円で月10時間(3万円)の手作業がなくなるなら、10ヶ月で回収です。PoC300万円は効果測定そのものが目的なので、回収ではなく「本開発に進むかどうかの判断材料をいくらで買うか」で考えます。より細かい算出方法はAI導入のROI試算を参照してください。
実現する手段は大きく4つある

出典: UiPath 公式サイト
判断の方向が決まったら、手段の選択です。自社サービス以外も含めてフラットに並べます。
① 手作業の効率化・手順の見直し(0円〜数万円)
作業そのものをなくす、頻度を落とす、入力フォーマットを統一する、承認ステップを削る。月20時間未満の作業はここで終わらせるべきです。費用はほぼかかりません。
② RPA・ノーコードツール(月額数千円〜数万円+構築費)
人がパソコンでやっている操作の手順を記録して、機械に繰り返させるツール群です。公式に公開されている価格は以下のとおりです(2026年9月時点)。
ツール | プラン | 公開価格 |
|---|---|---|
Microsoft Power Automate | Premium | 2,248円/ユーザー/月相当(年払い・税抜) |
Microsoft Power Automate | Process | 22,488円/ボット/月相当(年払い・税抜) |
Microsoft Power Automate | Hosted Process | 32,233円/ボット/月相当(年払い・税抜) |
Zapier | Free | 無料(100タスク/月) |
Zapier | Professional | $19.99/月〜(年払い・750タスク/月) |
Zapier | Team | $69/月〜(年払い・2,000タスク/月) |
UiPath | Automation Cloud ベーシック | 月額$25から(上位プランは要問い合わせ) |
※ドル表記のものは為替により円換算額が変動します。Zapierは年払いで月払い比33%の割引が適用されます。
注意点はライセンス費用が総額ではないことです。手順を組む作業(シナリオ構築)が別途かかり、公表されている相場では、ノーコード型で1業務あたり5万円〜10万円、本格的なRPA開発で1業務あたり数十万円〜百万円台前半です。さらに連携先の画面や手順が変わるたびに修正が必要で、外部委託していると1回あたり5万円〜15万円が発生します。この維持費の実態はRPAの保守費用で詳しく扱っています。
③ AIエージェント型の自動化サービス(初期100万円+月額10万円〜)
手順を記録させるのではなく、業務のルールを渡して処理そのものを任せる方式です。画面の変更に強く、例外の振り分けや文面の生成といった「毎回少しずつ違う作業」に対応できるのが②との差です。一方で、判断ルールが定義できない業務には使えません。②との使い分けはノーコードツールとAIエージェントの違いにまとめています。
④ 受託開発(小規模改修30万円〜/PoC300万円〜/本開発は個別見積)
仕組みそのものを作る、または既存システムを直す方式です。公表されている一般的な相場では、個別システム開発が100万円〜500万円以上、複数のシステムやクラウドサービスをつなぐ連携基盤の構築が数十万円〜数百万円、生成AIを組み込んだシステムが数百万円〜とされています。発注先の規模によっても幅があり、大手のシステム開発会社は3,000万円以上、中堅のシステム開発会社は1,000万〜5,000万円、フリーランスのチームは300万〜1,500万円が想定規模とされています(エンジニア1人を1ヶ月確保する費用は、60万〜150万円が一般的な目安です)。
4つの比較
① 手順見直し | ② RPA・ノーコード | ③ AIエージェント型 | ④ 受託開発 | |
|---|---|---|---|---|
初期費用 | 0円〜 | 5万〜100万円台(構築) | 100万円 | 30万円〜(改修)/300万円〜(PoC) |
月額 | 0円 | 数千円〜3万円台/ボット | 10万〜50万円 | 保守分(数万〜数十万円) |
立ち上がり | 即日〜 | 数週間〜 | 1〜2ヶ月 | 要件次第(数週間〜数ヶ月) |
例外への強さ | — | 弱い(想定外で止まる) | 中〜強 | 設計次第で強い |
仕様変更への強さ | — | 弱い(都度修正5万〜15万円) | 中 | 強い(ただし改修費) |
向く場面 | 月20時間未満 | 手順が完全に固定の単純作業 | 繰り返し+一部判断がある業務 | 仕組みがない/既存を直す |
①→②→③→④の順に、費用と自由度が上がります。 自社の困りごとがどの段の話なのかを見誤らないことが、この記事全体の趣旨です。
費用の目安と、3年で見たときの総額

出典: Zapier 公式サイト
単年度の初期費用だけで比べると判断を誤ります。3年の総額で並べます。前提は「月40〜100時間の定型作業を対象にする」場合です。
手段 | 3年総額の目安 | 内訳の前提 |
|---|---|---|
② ツールを自社で契約して運用 | 約340万〜1,000万円 | ライセンス月2.2万円×36ヶ月=約81万円/構築外注15万〜30万円(1業務5〜10万円×3業務)/修正 年4回×5万〜15万円=3年で60万〜180万円/保守 月5万〜20万円=180万〜720万円 |
③ AIエージェント型サービス | 460万円(10名規模)/820万円(30名規模) | 初期100万円+月額10万円×36ヶ月/30名規模は月額20万円×36ヶ月 |
④ 受託開発(業務システムを作る) | 280万〜1,220万円 | 開発100万〜500万円+保守 月5万〜20万円×36ヶ月 |
※すべて税別。②の保守を社内人員で持てる場合は下限側、外部委託する場合は上限側に寄ります。
この表で伝えたいのは「安い手段が3年で見ても安いとは限らない」という一点です。②は入口が月数千円から始められますが、修正費と保守費が積み上がると③を上回ります。逆に、対象業務が1つだけで手順が完全に固定なら②が最も安く済みます。
当社の価格は表の中に入っている数字がそのままです。
- シゴハヤエージェント:初期100万円(税別)+月額10万〜50万円(税別)。月額は処理量に連動し、10名規模で月10万円、30名規模で月20万円が目安です。月1,000万〜1.2億トークン分(AIが処理できる作業量の枠)が含まれます。導入は標準1〜2ヶ月です。→ シゴハヤエージェントの詳細・ご相談
- 受託開発:小規模改修30万円〜、PoC300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)。初回相談は無料で、要件が固まっていない段階でもご相談いただけます。→ 受託開発の詳細・ご相談
費用の内訳をさらに細かく確認したい場合は、AI受託開発の費用相場、業務システム開発の費用相場、保守運用費の相場もあわせてご覧ください。
判断を間違えると何が起きるか
ここは他の記事があまり書かないところですが、金額が動くので書いておきます。
誤り1:受託開発が必要な案件を、ツールで無理に自動化した
最も損失が大きいパターンです。データを取り出す口がないシステムに対して、画面操作を記録させる方式で作り込む。動いた瞬間は成功に見えますが、相手側の画面が変わると止まります。修正のたびに5万〜15万円、年に数回発生すれば維持費だけで年20万〜60万円です。
そして耐えられなくなって作り直すと、それまでの構築費(1業務あたり数十万円〜)が丸ごと消えます。先に改修(30万円〜)をしていれば発生しなかった損失です。
誤り2:自動化で済む話に、いきなりシステムを作った
逆方向の誤りです。月次レポートの作成を自動化したいだけなのに、レポート作成システムを新規開発する。開発費100万〜500万円をかけて、既製のサービスと同じものを手に入れることになります。作る前に「これは買えないか/任せられないか」を確認するだけで防げます。既製品と自社開発の線引きはSaaSとカスタム開発の判断で扱っています。
誤り3:管理者がいないまま自動処理が増えた
作った人が異動して、誰も中身を把握していない自動処理が社内に残る状態です。台帳がなく、止め方も分からない。障害が起きたときに原因の切り分けができず、対応が長引きます。ツールベンダー各社が「野良ロボット」として繰り返し注意喚起している現象です。手段を選ぶ前に、誰が管理し、誰が止められるのかを決めておく必要があります。失敗の類型はAI開発でよくある失敗にまとめています。
「安いほうから試す」は正しいのか
有効なケース:対象業務が1〜2個、手順が完全に固定、データがCSVで出せる。この条件なら、まず無料〜月数千円のツールで試し、効果が見えてから広げるのが合理的です。失敗しても損失は数万円です。
二重投資になるケース:対象業務が5個以上ある、データを取り出す口がない、例外処理が2割を超える。この場合、安いほうから始めても遠からず限界が来て、作り直しになります。最初から段を上げたほうが、3年総額では安く済みます。
両方を組み合わせる場合の順番
実際の案件でいちばん多いのは、受託開発と自動化を順番に組み合わせる形です。
標準的な順番:受託開発(改修)→ 業務自動化
- データを取り出せるようにする改修(30万円〜、数週間)
- 取り出せるようになったデータを使って自動化(初期100万円+月額10万円〜、1〜2ヶ月)
合計130万円+月額10万円から。1の工程を飛ばして2から入ると、前述の「画面操作を記録させる方式」になり、作り直しのリスクを抱え込みます。
逆順が成立する条件:既存システムからCSVで日次出力できる場合です。この場合は改修なしで自動化に入れます。運用してみて「この項目も自動で取れたら」という要望が出てきた段階で、改修を足す。こちらのほうが投資判断としては安全です。
やってはいけない順番:自動化とシステム改修を同時に発注することです。改修側の仕様が固まらないと自動化側の設計ができず、どちらも止まります。必ず順番に区切ってください。
実際にやった事例

当社が実際に取り組んだケースから、「自動化で済んだ例」と「開発が必要だった例」を1件ずつ紹介します。守秘契約のため社名は伏せます。
調剤薬局のケース:自動化で済んだ例
課題:発注データと納品データの突合、在庫の棚卸し集計に、事務担当者が月40時間規模の時間を使っていました。品目数が多く、卸ごとにデータの形式が違うため、Excelに貼り付けて目視で照合する作業が発生していました。
作ったもの:卸ごとのデータを自動で取り込み、形式を揃えて突合する処理です。完全一致するものはそのまま確定し、数量や単価に差異があるものだけを確認リストに出す形にしました。判断ルールが明確で、入出力がすべてデジタルで完結する業務だったため、システムを新規に作る必要はありませんでした。
何がどう変わったか:担当者の作業が「全件を照合する」から「差異が出た数件を確認する」に変わりました。月40時間規模の作業が、例外確認だけの時間に置き換わっています。時給3,000円換算で月12万円相当の作業量です。
なお同じ薬局でも、処方箋の原本確認や患者対応は紙と対面が前提のため、自動化の対象外として最初から切り分けています。調剤薬局の在庫管理を自動化するで同種の業務を扱っています。
医療機関のケース:開発が必要だった例
課題:部門ごとに別々のExcel台帳で患者関連の記録を管理しており、同時に開けない、誰がいつ更新したか分からない、集計のたびに転記が発生する、という状態でした。
なぜ自動化では解決しなかったか:Excel台帳への転記作業を自動化しても、台帳が分かれている構造そのものは残ります。同時編集できない問題も、更新履歴が残らない問題も解決しません。これは「作業を機械に渡す」話ではなく「仕組みを作り直す」話でした。
作ったもの:分散していた台帳を1つのデータベースに統合し、権限と更新履歴を持つ形に作り替えました。規制業種のため、どのデータをどこに置くかの設計に時間をかけています。
何がどう変わったか:転記工程そのものがなくなり、集計は画面上で完結するようになりました。誰がいつ何を変えたかが追えるようになった点は、時間削減よりも大きな変化です。
この2件の違いが、この記事の判断フローそのものです。 前者は「すでにある作業をなくす」、後者は「仕組みがないので作る」。困りごとの表面は似ていても、着地は別になります。
導入までの流れと期間
業務自動化を選んだ場合
段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
1 | 対象業務の洗い出しと作業時間の実測 | 1〜2週間 |
2 | 例外率とデータの取り出し可否の確認 | 1週間 |
3 | 処理ルールの定義・設計 | 2〜3週間 |
4 | 構築とテスト稼働 | 2〜4週間 |
5 | 本稼働・チューニング | 継続 |
標準で1〜2ヶ月です。最も時間がかかるのは1と3、つまり社内側の整理です。
受託開発を選んだ場合
小規模改修(30万円〜)は数週間、PoC(300万円〜)は数ヶ月、本開発は規模次第です。要件が固まっていない段階での相談を前提にしています(初回相談無料)。「何を作ればいいか分からない」が出発点でも問題ありません。要件が固まる前の相談の進め方は要件が決まっていない状態での開発相談にまとめています。
どちらに該当するか判断がつかない場合も、受託開発の相談窓口から業務内容をお伝えいただければ、自動化で足りるのか作る必要があるのかを含めて整理します。
補助金を使う場合のタイミング
「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧IT導入補助金。事業名は中小企業デジタル化・AI導入支援事業)を使う場合、発注のタイミングが制度に縛られます。2026年9月21日時点で公式サイトの事業スケジュールに掲載されている内容は以下のとおりです。
枠 | 公表されている直近の締切 | 交付決定日(予定) | 事業実績報告期限(予定) |
|---|---|---|---|
通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型/電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠 | 第5次締切:2026年9月29日(火)17:00 | 2026年11月9日(月) | 2027年4月30日(金)17:00 |
複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 第3次締切:2026年10月30日(金)17:00 | 2026年12月10日(木) | 2027年5月31日(月)17:00 |
通常枠などは第6次・第7次の募集回が設けられていますが、その締切日は本記事執筆時点で未発表です。複数者連携枠も第3次までしか公表されていません(公式サイトに「確定している募集回のスケジュールのみ公表」と明記されています)。
注意点は2つあります。
- 交付決定より前に発注・契約すると補助の対象外になります。締切から逆算してスケジュールを組む必要があります
- 入金は事業完了・実績報告のあとです。上記の通常枠なら実績報告期限が2027年4月末なので、それまでの期間は初期費用を全額自社で立て替えることになります
締切と入金時期の詳細は補助金の締切スケジュールと補助金が入金されるまでの資金繰りを参照してください。制度は随時更新されるため、申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
よくある質問
Q1. 社員10名の会社でも自動化サービスは使えますか?
使えます。料金は処理量に連動するため、10名規模なら月額10万円(税別)が目安です。ただし規模よりも対象業務の合計時間が判断基準になります。全社で集めても月20時間程度しか削減対象がないなら、投資に見合いません。まず作業時間を実測してください。
Q2. すでにRPAを導入済みですが、乗り換えるかどうかの判断基準はありますか?
年間の維持費を合算して比べてください。ライセンス費+シナリオ修正費(1回5万〜15万円×年間発生回数)+保守費(月数万〜20万円)の合計です。ここに「止まったときに現場が手作業で埋めている時間」も金額換算して足します。合計が年200万円を超えているなら、比較検討の価値があります。逆に修正が年1回以下で安定して動いているなら、そのまま使い続けるのが合理的です。
Q3. 依頼したあと、社内にノウハウは残りますか?
残るかどうかは成果物の定義次第です。稼働する仕組みだけを受け取ると、中身がブラックボックス化します。業務フロー図と判断ルールの一覧を成果物に含めることを、契約前に明示してください。これがあれば、将来別の会社に引き継ぐこともできます。当社の案件では処理ルールの定義書を必ずお渡ししています。
Q4. 自動化と受託開発を、同じ会社に両方頼むメリットはありますか?
あります。最大の利点は「これは作らなくていい」と言ってもらえることです。開発だけを扱う会社に相談すると開発案が、ツールだけを扱う会社に相談するとツール案が返ってきやすい構造があります。両方を扱っていれば、判断フローの質問1〜5を一緒に回したうえで、必要な側だけを提案できます。ただし発注は必ず順番に区切ってください(同時発注は双方が止まります)。
Q5. 相見積もりを取る場合、何社くらいが適切ですか?
3社程度が現実的です。それ以上増やすと、各社への説明コストと比較検討の時間が、価格差のメリットを上回ります。比較の際は総額だけでなく、保守費の月額・仕様変更1回あたりの費用・成果物に何が含まれるかの3点を必ず同じ条件で出してもらってください。この3点が揃っていないと、見積書を並べても比較になりません。
Q6. 効果が出なかった場合はどうなりますか?
受託開発のPoC(300万円〜)は、そもそも「効果が出るかを確かめる」ための工程です。結果が芳しくなければ本開発に進まない、という判断を含めた投資と考えてください。自動化サービスは月額契約のため、対象業務を減らす・停止するといった調整が可能です。初期に全額を投じる形を避けられるかどうかを、契約形態の確認ポイントにしてください。
Q7. 繁忙期に導入作業の負担がかかるのが不安です。
導入で社内側の負担が集中するのは、作業時間の実測と処理ルールの言語化の工程です。繁忙期の1〜2ヶ月前に着手するのが理想的なスケジュールです。逆に、繁忙期の作業内容を記録しておくと、そのまま設計の材料になります。閑散期に着手して繁忙期に稼働させる、という組み方が最も負担が小さくなります。
Q8. 判断フローの質問3で「紙が必須」になりました。もう打つ手はないですか?
あります。ただし順番が変わります。紙をなくす工程(受け取り方の変更、読み取りの導入)が先で、自動化はそのあとです。読み取りの部分導入は初期数十万円〜が目安です。また、紙の工程は全体の一部であることが多いので、前後のデジタルで完結している工程だけを切り出して自動化する、という進め方も可能です。業務全体を1つの塊として見ないことがポイントになります。
判断がついたら、該当する側にご相談ください
この記事の5つの質問で、自社がどちらに該当するかを言い切れる状態になっていれば目的は達成です。
「すでに人がやっている繰り返し作業をなくしたい」に着地した方へ
御社専用のAI社員が定型業務を自動実行するサービスです。初期100万円(税別)+月額10万〜50万円(税別)、導入は標準1〜2ヶ月。対象業務の洗い出しと作業時間の実測からご一緒します。
「まだない仕組みを作りたい/既存システムを直したい」に着地した方へ
新規事業・業務効率化・AI導入・既存システム改修を、構想から実装まで対応します。小規模改修30万円〜、PoC300万円〜(税別)。初回相談は無料、要件が固まっていない段階でも構いません。 医療機関・薬局・インフラ企業での実績があります。
まだ判断がつかない方へ
「どちらに該当するか分からない」という状態でのご相談も受け付けています。現在の業務内容と、そこにかかっている時間をお伝えいただければ、そもそも投資が必要かどうかを含めて整理してお返しします。月20時間未満で手順の見直しだけで済む場合は、そのようにお伝えします。
補助金の枠内で導入できる範囲を試算します
補助金前提で相談するこの記事の著者

AI革命
編集部
AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。
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