ビジネス活用2026年10月更新

AI導入のROI試算|計算式3つと前提8項目、1,000万円で回収できる業務量の目安

公開日: 2026/09/15
更新日: 2026/10/10
AI導入のROI試算|計算式3つと前提8項目、1,000万円で回収できる業務量の目安

この記事のポイント

AI導入のROIは(5年間の効果額−総費用)÷総費用で試算します。仮定に基づく試算では、1,000万円の開発は月80時間の削減だと5年で回収できず、300時間なら約13ヶ月。前提を実測・見積・仮定に分ける方法、PoC段階の判断基準、自社と開発会社の役割分担を解説します。

AI導入のROI(投じたお金に対して、どれだけのお金が返ってくるかの割合)は、「(5年間の効果額 − 5年間の総費用)÷ 5年間の総費用」で試算し、時給・削減時間・保守費・AIの利用料といった前提を1つずつ根拠つきで置いて計算します。仮定に基づく試算では、PoC 300万円+本開発700万円の計1,000万円(税別)を投じる場合、月の削減時間が80時間なら5年たっても元が取れず(5年ROI −15.5%)、300時間なら約13ヶ月で回収できる(同 約217%)というように、同じ金額でも載せる業務の量で結論が逆転します。

「AI導入のROI」には、ChatGPTなどを社員の人数分契約した場合の利用料で計算する解説もあります。この記事が扱うのは、数百万〜1,000万円規模のAI開発を稟議に上げてよいかを判断するための試算です。計算式と評価期間の決め方、前提となる8つの数字の持ってき方、ケース別の試算例、PoC(本格的に作る前に小さく試作して、業務で使えるかを確かめる工程)から本開発まで段階ごとに判断する方法、そして「試算した結果、作らないほうがいい」ケースまでを順に示します。あわせて、試算の数字を「実測」「見積」「仮定」に分ける方法と、試算のうち自社と生成AIで作れる部分・開発会社に頼むと確度が上がる部分の分け方も、この記事の範囲です。なお当社の受託開発の価格は既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)で、後半で試算のどの欄に当たるかを示します。

AI導入のROI試算が外れる3つの理由

McKinseyの調査「The state of AI in 2025」(2025年11月公表)によると、AIを少なくとも1つの業務で使っている組織は88%に達する一方、AIによる営業利益への影響があったと答えた組織は39%で、その多くは影響が5%未満でした。使っている企業は多いのに、利益につながっていると言える企業は少数派です。導入前の試算がどこで外れるのかを見ると、原因はほぼ次の3つにまとまります。

理由1:「浮いた時間」がそのままではお金にならない

月300時間の作業が消えても、人を減らさず、残業も外注も変わらなければ、会社が払う人件費は1円も減りません。人件費は固定費だからです。削減時間を効果額として計上するなら、浮いた時間を「残業を減らす」「欠員を補充しない・採用を1名見送る」「外注をやめる」「売上につながる業務に回す」のどれで回収するかを、試算の段階で決めて書く必要があります。ここが空欄の試算は、経営会議で最初に突っ込まれます。

理由2:PoCで止まった場合の費用を入れていない

調査会社のGartnerは2024年7月、生成AIプロジェクトの少なくとも30%が2025年末までにPoCの後で中止されると予測し、理由としてデータの品質不足、リスク管理の不足、コストの増大、事業価値の不明確さを挙げました。2025年6月には、AIエージェント(複数の手順を自動で進めるAI)のプロジェクトの40%超が2027年末までに中止されるとの予測も出しています。「PoCに進めば必ず本開発まで行き、必ず効果が出る」という前提の試算は、この現実を織り込んでいません。

理由3:保守費とAIの利用料が抜けている

生成AIを業務に組み込むシステムの保守運用費は、監視・障害対応・連携先の変更への対応をどこまで含むかで大きく変わります。仮に年間で開発費の10〜20%とすると、5年使えば保守費だけで開発費の50〜100%に達します(考え方はシステム保守運用費の相場)。これにAIの利用料(処理した文章量に応じて課金される費用)が毎月加わります。初期費用しか見ていない試算は、回収期間が実際より大幅に短く見えます。

3つとも、計算式ではなく前提の置き方の問題です。次の章から、式と前提を1つずつ決めていきます。

ROIの計算式|分母は「総費用」、期間は「5年」と明記する

電卓と年ごとに高く積み上がる硬貨で、AI導入のROIと5年間の回収を計算するイメージ

使う式は3つ

指標

計算式

何に答えるか

ROI(%)

(期間内の効果額 − 期間内の総費用)÷ 期間内の総費用 × 100

投じたお金に対して、どれだけ上乗せで返ってくるか

回収期間(月)

初期費用 ÷(月の効果額 − 月の運用費)

本番稼働から何ヶ月で初期費用を取り戻せるか

必要な月の削減時間

(初期費用 ÷ 目標の回収月数 + 月の運用費)÷ 時給

目標の期間で回収するには、月何時間分の業務を載せる必要があるか

  • 初期費用 = PoC + 本開発
  • 月の運用費 = 保守運用費(年額 ÷ 12)+ AIの利用料
  • 期間内の総費用 = 初期費用 + 月の運用費 × 期間の月数

3つ目の「必要な月の削減時間」は、発注前の判断に特に役立ちます。削減時間を先に見積もるのではなく、「この金額を投じるなら、月何時間の業務を載せなければならないか」を逆算するための式です。

回収期間は本番稼働した月から数える点にも注意してください。PoCと本開発の期間中は、費用は出ていても効果はゼロです。PoCと本開発に数ヶ月単位の期間がかかれば、その分だけ回収の始まりが後ろにずれます(後述の「流れと期間」を参照)。

定義を書かないと、同じ案件のROIが−5%にも370%にもなる

ROIの数字が記事や会社ごとにばらつくのは、「何年分で見るか」「何を分母にするか」がそろっていないためです。後述の試算例のケース2(初期費用1,000万円、月の効果額90万円、月の運用費11.75万円)を、定義だけ変えて計算すると次のようになります。

定義

計算

ROI

1年・総費用を分母

(1,080万円 − 1,141万円)÷ 1,141万円

−5.3%

3年・総費用を分母

(3,240万円 − 1,423万円)÷ 1,423万円

約128%

5年・総費用を分母

(5,400万円 − 1,705万円)÷ 1,705万円

約217%

5年・初期費用だけを分母(運用費は効果から差し引き)

(5,400万円 − 705万円 − 1,000万円)÷ 1,000万円

約370%

どれも計算としては正しく、案件の中身もまったく同じです。稟議資料では、ROIの数字の横に「何年分か」「分母に何を入れたか」を必ず書いてください。月額で使うサービスのように運用費が小さい投資なら初期費用を分母にしても大差ありませんが、開発投資は保守費とAIの利用料が毎年かかるため、本記事では総費用を分母にします。

評価期間は「5年」を上限の目安にする

社内に「何年で回収すること」という投資基準があれば、それを使ってください。基準がない場合は、会計上の償却期間を上限の目安にするのが説明しやすい方法です。国税庁のタックスアンサー(No.5461)では、自社で使うソフトウェアの耐用年数は5年とされています(複写して販売するための原本や研究開発用は3年)。自社の仕様に合わせるための修正費用も取得価額に含まれます。

「5年で償却する資産に、5年で元が取れない投資をするのか」という問いは、経営会議でそのまま通じます。一方で、AIの分野は数年で使うモデルや仕組みが入れ替わるため、5年はあくまで上限です。前提がずれても2〜3年程度で回収できるかを併せて見ておくと安全です。なお、資産に計上するか費用として処理するかといった税務上の扱いは企業ごとに異なるため、顧問税理士に確認してください。

前提の置き方|8つの数字をどこから持ってくるか

時給の前提に使う賃金構造基本統計調査を公表している厚生労働省のロゴ

出典: 厚生労働省 公式サイト

ROIの試算は、式よりも前提で決まります。前提ごとに「本記事で使う値」「どこから持ってくるか」「どれくらいずれやすいか」をまとめると次のとおりです。

前提

本記事で使う値

持ってくる先

稟議に書くときの区分

ずれやすさ

1時間あたりの人件費

3,000円

公的統計から組み立てる。社内の人件費単価があれば置き換える

仮定

小

月の削減時間

業務ごとに実測

2週間のタイムシート + 理論値の7〜8割

実測(7〜8割は仮定)

大

PoCの費用

300万円(仮定)

開発会社の見積。本記事では当社PoCの開始価格を仮置き

見積

小

本開発の費用

700万円(仮定)

開発会社の見積。PoCの成果物に概算を含めてもらう

仮定 → PoC後に見積

中

保守運用費

本開発費の年15%(仮定)

見積で範囲と内訳を確認

見積

中

AIの利用料

月3万円(仮定)

まず仮置きし、PoCで実測して置き換える

仮定 → PoCで実測

中〜大

評価期間

5年

社内の投資基準。なければ自社で使うソフトウェアの耐用年数

社内の決定

—

補助金

なし

基本は「なし」で計算し、ありは別の列で示す

—

—

これに加えて、数字ではありませんが「浮いた時間を何で回収するか」も前提として書きます。「稟議に書くときの区分」の意味は、この章の最後で説明します。以下、判断を誤りやすいものを中心に補足します。

時給は3,000円でよいか

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の一般労働者の月の所定内給与(男女計)は340,600円で、企業規模別では大企業385,100円、中企業326,200円、小企業305,600円です。これを年間の所定内労働時間1,768時間(毎月勤労統計調査2025年分の一般労働者、労働政策研究・研修機構の算出)で割り、会社が負担する社会保険料などを加味するために、労働費用のうち現金給与が82.0%という比率(厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」)で割り戻すと、1時間あたりの人件費は次のようになります。

規模

所定内給与ベースの時給

会社負担を含めた概算

全体

約2,310円

約2,820円

大企業

約2,610円

約3,190円

中企業

約2,210円

約2,700円

小企業

約2,070円

約2,530円

※公的統計を当社で組み合わせた概算で、公式の値ではありません。所定内給与には賞与と残業代が含まれないため、実際の会社負担はこれより高くなる方向です。

統計から組み立てると2,500〜3,200円程度になるため、本記事では当社の他の試算と同じ時給3,000円を使います。時給の置き方は資料によって差があり、根拠が書かれていないものもあります。時給を高く置けば効果額はいくらでも大きくなるので、根拠のない時給は稟議で信用を失います。考え方の詳細は業務自動化の効果測定で解説しています。

削減時間は2週間実測し、理論値の7〜8割で見る

最もずれやすく、ROIを最も大きく動かすのが削減時間です。「担当者に聞いたら月100時間くらい」という概算のまま試算すると、稼働後の実測と合わず、試算そのものの信用を失います。

  • 対象業務を2週間(月次業務なら1サイクル以上)、タイムシートで実測する。 「データ収集」「表記ゆれの修正」「集計」「確認・差し戻し」のように、自動化される部分と人に残る部分が分かれる細かさで記録します
  • 件数も一緒に記録する。 「1件あたり何分 × 月何件」の形にしておくと、PoCで自動処理できた割合をそのまま掛けられます
  • 理論上の削減時間には、実現率として7〜8割を掛ける(本記事の仮定)。 すべての作業が消えることはなく、AIが判断に迷った案件は人に戻り、止まったときの復旧にも時間がかかります。補正の考え方は業務自動化の効果測定で詳しく扱っています

PwC Japanの「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」では、日本で「期待を上回る」効果を得た企業の割合は米国・英国の4分の1にとどまりました。同調査では、効果が出ている企業は業務を大きく置き換える前提で経営トップが推進していたのに対し、効果が出ていない企業は生成AIを「効率化ツール」として現場任せにしていました。今の手順のまま一部にAIを足す前提では、削減時間は小さくなります。どこまで業務を置き換えるかは、現場ではなく経営が決める前提だと考えてください。

開発費・保守費・AIの利用料

開発費は、作る中身(生成AIを業務に組み込むのか、自社のデータでAIに学習させるのか)と、既存システムとのつなぎ方で大きく変わります。相場の数字ではなく、見積で埋める欄です。本記事の試算は、当社のPoCの開始価格300万円(税別)と、本開発700万円という仮定の値を使っています。自社のデータでAIに学習させるタイプ(画像による検査や需要予測など)は、学習用データの準備や精度の検証、再学習の保守が加わるため、試算の桁が変わることがあります(費用の内訳の考え方はAI受託開発の費用相場)。

発注前の段階で本開発の見積が出ていない場合は、仮の値を置き、PoCの成果物に「本開発の概算見積」を含めてもらい、PoC終了時に置き換えるのが確実です。見積が後から膨らみやすい箇所はシステム開発の追加費用で整理しています。

AIの利用料は処理件数で変わるため、月額固定にはなりません。発注前は「月3万円」のように仮置きし、PoCで実際の処理件数と利用料を測って置き換えます。

もう1つ見落とされやすいのが、PoCにかかる自社側の時間です。ヒアリングへの立ち会い、データの提供、結果の判定などが必要になります。本記事では8週間のPoCで48〜72時間、時給3,000円で約14〜22万円相当と仮定します(AIのPoC費用の相場)。

補助金は「なし」で計算する

補助金は費用を減らしますが、試算の基本は「補助金なし」にし、補助金ありは別の列で示してください。理由は3つあります。

  1. 自社専用の開発には使えない制度がある。 デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)は、事務局に登録されたITツールの導入が対象です。ITツール登録要領では、スクラッチ開発(一から作る開発)を伴うソフトウェアや、特定の顧客向けに限定され一般に販売されていないものは登録の対象外と明記されています。つまり、自社専用に作るシステムの開発費に、この補助金の上限額(通常枠で最大450万円)を当てはめて試算するのは誤りです
  2. 使える可能性がある制度も、採択は保証されない。 自社の現場に合わせたシステムの構築なら、中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になります。第8回公募は2026年9月18日(金)に申請受付が始まり、補助率は中小企業1/2(最低賃金引き上げの特例で2/3)、小規模事業者2/3、補助上限は従業員5人以下で750万円〜101人以上で8,000万円です。労働生産性を年平均4%以上向上させる計画などが要件です。申請締切は2026年10月16日(金)17:00、採択発表は2027年2月上旬の予定です(2026年10月11日に公式スケジュールで確認)。次回以降の公募の日程は、公式サイトのスケジュールで確認してください
  3. 後払いで、立て替えが必要。 申請から入金までは最短でも5ヶ月、長いと11ヶ月程度かかり、その間は全額を自社で立て替えます(補助金の入金時期)

補助金を前提にしなければ回収できない案件は、不採択になった時点で投資として成り立たなくなります。対象になるツールの範囲はAI導入補助金の対象にまとめています。

効果は4種類に分け、回収期間の計算は2種類に絞る

効果額に何を入れるかも前提です。4種類に分けると、数字の確かさがまったく違います。

効果の種類

金額への換算

数字の確かさ

例

① 時間の削減

削減時間 × 時給

実測できれば高い

転記・照合・集計・資料探し

② 外注費・残業代の削減

実際に払わなくなった額

最も高い(現金が減る)

入力代行の外注、月末の残業

③ ミス・事故の防止

1件あたりの損失額 × 減った件数

中(過去の記録があれば)

誤発注、転記ミスの手戻り、クレーム対応

④ 売上への貢献

増えた件数 × 単価 × 粗利率

低い(他の要因と分けにくい)

対応件数の増加、納期の短縮

稟議で回収期間の計算に使うのは①と②だけにし、③と④は「上振れ要因」として別枠に書くのが安全です。④を試算に混ぜると、同じ時期の値上げや営業強化の効果とAIの効果が分けられず、稼働後に検証できなくなります。

試算の数字は「実測」「見積」「仮定」に分け、効果の保証と混同しない

稟議で試算が信用されるかどうかは、数字の出どころが書いてあるかで決まります。同じ「月300時間」でも、2週間測った値なのか、担当者の感覚なのかで重みがまったく違います。試算表の前提の欄ごとに、次の区分を書き添えてください。

区分

誰が出すか

本記事での例

稟議での書き方

実測

自社(タイムシート、PoCの結果、請求書)

削減時間と件数、PoCで測ったAIの利用料、外注費・残業代の実額

測った期間・人数・方法を書く(例:「2週間、担当3名で測定」)

見積

開発会社

PoC・本開発・保守の費用、AIの利用料が月額に含まれるか実費か

見積の日付、範囲、含まないもの(実費・外部サービスの利用料)を書く

仮定

試算を作る人

時給、実現率の7〜8割、見積前の本開発費、PoC前のAIの利用料

「仮定」と明記し、ずれた場合の数字(ケース2-a・2-bのような幅)を添える

社内の決定

経営・部門長

浮いた時間の使い道、評価期間、PoCの合格ライン

誰がいつ決めたかを書く

もう1つ分けておくべきなのが効果の保証です。試算の削減時間や回収期間は、実測と仮定から計算した見込みであって、開発会社が約束する数字ではありません。見積や契約で決まるのは、合意した範囲の作業・成果物と費用です(請負か準委任かで約束の中身が違うため、契約書で確認してください)。開発会社の提案書に「◯ヶ月で回収」と書かれていたら、それが保証なのか見込みなのか、外れた場合にどうなるのかを確認してください。この記事の試算例も、すべて仮定に基づく試算です。

区分を書いておくと、稼働後に実績と比べるときにも役立ちます。外れたのが「仮定」の欄なら試算の作り方、「実測」の欄なら測り方や業務そのものの変化、「見積」の欄なら追加費用、と原因を分けて説明できます。

試算例|同じ1,000万円でも回収は約13ヶ月と約6.8年に分かれる

ここまでの前提で、実際に計算します。以下はすべて仮定に基づく試算で、当社の実績値や見積額ではありません。

共通の前提は次のとおりです。

  • 時給3,000円
  • 初期費用:PoC 300万円 + 本開発700万円 = 1,000万円
  • 保守運用費:本開発費の年15% = 年105万円(月8.75万円)
  • AIの利用料:月3万円
  • 月の運用費:8.75万円 + 3万円 = 11.75万円(年141万円)
  • 5年間の総費用:1,000万円 + 141万円 × 5年 = 1,705万円
  • 削減時間は、実現率などで補正した後の値

ケース

月の削減時間(補正後)

月の効果額

運用費を引いた月の効果

回収期間

5年ROI

ケース1:業務1つだけを載せる(理論上は月120時間)

80時間

24万円

12.25万円

約82ヶ月(約6.8年)

−15.5%

ケース2:同じ仕組みに複数の業務を載せる(10名 × 月30時間)

300時間

90万円

78.25万円

約13ヶ月

約217%

ケース2-a:ケース2で削減時間が3割少なかった

210時間

63万円

51.25万円

約19.5ヶ月

約122%

ケース2-b:ケース2で本開発費が5割増えた(1,050万円、保守費も比例)

300時間

90万円

約73.9万円

約18.3ヶ月

約133%

※ケース2-bは、初期費用1,350万円、月の運用費16.125万円、5年間の総費用2,317.5万円で計算しています。

ケース1は、耐用年数の5年以内に回収できません。 月80時間、金額にして月24万円の業務は決して小さくありませんが、1,000万円の開発投資を取り戻すには足りません。この場合の選択肢は、同じ仕組みに載せる業務を増やすか、投資額を小さくするかのどちらかです。

ケース2は、前提がずれてもプラスを保ちます。 削減時間が3割少なくても、本開発費が5割増えても、回収は2年以内に収まります。稟議で本当に示すべきなのは標準の数字1つではなく、この「前提がずれてもまだ回収できる」という幅です。

規模を小さくした場合|100万円の既存システム改修で1か所の転記をなくす

ケース

月の削減時間

月の効果額

月の運用費

回収期間

5年ROI

ケース3:既存システムの改修で1か所の転記作業をなくす

20時間

6万円

1.25万円(保守のみ)

約21ヶ月

約106%

ケース3-a:同じ改修で、なくせる作業が月40時間ある

40時間

12万円

1.25万円

約9.3ヶ月

約311%

ケース3-b:ケース3にAIの処理を組み込み、利用料が月3万円かかる

20時間

6万円

4.25万円

約57ヶ月

約1%

※初期費用は100万円(当社の既存システムの改修の開始価格を仮置き)、保守運用費は年15%=年15万円(月1.25万円)。5年間の総費用はケース3・3-aが175万円、ケース3-bが355万円です。すべて仮定に基づく試算です。

月20時間の作業のために1,000万円を投じるのは合いませんが、100万円の改修なら2年足らずで回収できる計算になります。ただしケース3-bのように、効果の小さい改修に毎月の利用料がかかる仕組みを足すと、回収はほぼ5年に延びます。対象の業務時間が小さいなら、投資額と毎月の運用費のほうを業務に合わせるのが合理的です(システム改修の費用)。

逆算表|目標の回収期間から、必要な月の削減時間を出す

自社の案件に当てはめるときは、この表から入るのが早道です。時給3,000円、保守費は開発費の年15%、AIの利用料は月3万円で共通です。

目標の回収期間

初期1,000万円(月の運用費11.75万円)

初期300万円(月の運用費6.75万円)

12ヶ月

月 約317時間

月 約106時間

24ヶ月

月 約178時間

月 約64時間

36ヶ月

月 約132時間

月 約50時間

60ヶ月(5年で元が取れる下限)

月 約95時間

月 約39時間

※初期300万円の列は、対象を絞った小さめの開発を想定した仮定です。保守費は年45万円(月3.75万円)で計算しています。

1,000万円を投じるなら、補正後で月95時間を超える業務を載せないと、5年たっても元が取れません。「月何時間分の業務を載せる前提か」が書かれていないAI開発の稟議は、この表のどこにいるのかが誰にも分からない状態です。

PoCから本開発まで、段階ごとに判断する試算の組み方

小さな試作模型から完成した建物模型までを段階的に並べ、PoCから本開発まで段階ごとに判断する流れを表したイメージ

AIの開発投資は、1,000万円を一度に投じる判断ではありません。経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(平成30年6月)も、AI開発を段階に分け、段階ごとに契約する進め方を示しています。ROIの試算も同じように、段階ごとに「次に進む条件」と「ここで止めた場合の損失」をセットで出すと、経営会議での判断がしやすくなります。

段階

投じる金額(試算例)

次に進む条件

ここで止めた場合の損失

0. 業務の実測と試算

担当者が記録する手間のみ

実測した削減時間が、逆算表の必要時間を超えている

ほぼなし

1. PoC

300万円 + 自社側の時間48〜72時間(約14〜22万円相当、仮定)

①あらかじめ決めた合格ラインを満たす ②PoCで実測した削減時間・AIの利用料と本開発の概算見積に置き換えたうえで、前提が3割ずれても5年以内に回収できる

約314〜322万円が上限

2. 本開発

700万円(累計1,000万円)

旧来のやり方と並行して動かし、結果が一致する。人に戻る件数が想定の範囲に収まる

累計1,000万円が上限

3. 保守運用

年141万円

毎年、実測した削減時間と運用費で継続を判断する

その年の運用費

ポイントは、PoCに入る前に、PoCの合格ラインの中に「本開発に進んだ場合の回収条件」を入れておくことです。「対象100件のうち85件以上を人の修正なしで処理できる」という精度の条件だけでは、合格しても「では1,000万円を投じてよいのか」に答えられません。PoCの結果を試算表に代入し、回収期間が目標に収まるかどうかまでを判定の対象にすれば、PoCの300万円は「本開発に進むかどうかの判断を買う費用」になります。

PoCで不合格になっても、損失は約314〜322万円で止まります。本開発まで進めてから効果が出ないと分かった場合の累計1,000万円と比べると、損失はおよそ3分の1です。PoCが本開発につながらずに終わる典型的な理由はAI開発の失敗例にまとめています。

PoCの合格ラインに回収条件を組み込むところや、自動処理できる割合をどう確かめるかから相談したい場合は、ROI試算の前提と、PoC・改修・本開発のどこから始めるかを相談するからご連絡ください。今の業務とシステムを伺い、依頼範囲の候補と費用の目安を相談メモでお返しします。

試算した結果、開発しないほうがいいケース

試算は、プラスになることを確かめるためだけのものではありません。試算した結果として作らない判断をすべき案件があります。

  1. 載せる業務の時間が、逆算表の必要時間に届かない。 ケース1のように、1,000万円に対して月80時間しかない場合です。対象業務を増やせないなら、既存システムの改修(当社は100万円〜)で詰まっている1か所だけを直すか(ケース3)、手作業の手順を見直すほうが合います
  2. 削減時間を実測していない。 概算しかないまま試算しても、その数字は稟議の場で守れません。見積を取る前に、まず2週間測ってください。測ってみたら思ったより小さかったと分かるだけで、数百万円の判断を誤らずに済みます
  3. 毎回判断が変わる業務、紙やFAXが起点の業務。 担当者の経験や交渉で結果が変わる業務は、どこまで自動化できるかが読めず、削減時間の前提が置けません。紙が起点なら、AIより先に電子化の費用対効果を試算するのが順番です
  4. 浮いた時間の使い道が決まらない。 残業も外注も採用計画も変わらず、ほかの業務に回す当てもないなら、効果は「余裕ができた」で終わり、お金には変わりません
  5. 既製のサービスで7割方まかなえる。 市販のクラウドサービスや、プログラムを書かずに画面操作で仕組みを作れるツール(ノーコード)で足りるなら、作るより買うほうが安く、保守の手間もかかりません(生成AIの内製と外注)

初回相談でこれらに当てはまると分かった場合は、開発をおすすめせず、その理由と代わりの手段を相談メモに書いてお返しします。

実現する方法と費用の目安

業務の時間を減らす手段は、開発だけではありません。手段ごとの費用と、ROIを試算するときに気をつける点を並べます。

手段

費用の目安(税別)

合う規模

ROI試算で気をつける点

手作業の手順を見直す(Excelの関数・テンプレート・手順の統一)

0〜数万円(社内の工数のみ)

月20時間未満。1人で完結し、システムをまたがない

費用がほぼゼロなので回収は早いが、削減できる時間の上限が低い

既製のクラウドサービス・ノーコードのツール

月数千円〜数万円

業務の手順をツールに合わせられる

月額 × 利用人数 × 5年で総費用を出す。ツールに業務を合わせる手間も時間に入れる

既存システムの改修(受託開発)

当社は100万円〜。他社は見積で確認

詰まっている1か所をなくす。100万円なら月20時間で約21ヶ月、月40時間で約9ヶ月で回収する計算(ケース3)

連携先のシステムが変わったときの修正費を見込む。AIを組み込むなら利用料も

PoC+本開発(受託開発・生成AI活用型)

当社はPoC 300万円〜・本開発は個別見積。保守費とAIの利用料は見積で内訳を確認

複数の業務を1つの仕組みに載せる。初期1,000万円なら補正後で月95時間以上

PoCで止まった場合の損失、AIの利用料、自社側の時間を入れる

自社データで学習させる開発(画像による検査・需要予測など)

データの量と精度の目標で大きく変わるため見積で確認。再学習・精度の監視を保守に含むかも確認

見逃し1件・欠品1回あたりの損失が大きい業務

効果が時間より③ミス・事故の防止に出やすく、過去の損失の記録が試算の土台になる

毎月繰り返す定型業務を、開発ではなく月額制のサービスで自動化する方法もあります。その場合は初期費用が小さく回収の計算も変わるため、業務自動化の効果測定の早見表を使ってください。

稟議の試算で、自社(と生成AI)でできることと開発会社に頼むこと

試算表そのものは、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに式と前提を渡せば、表計算のひな形、ケース別の再計算、前提をずらした場合の表、稟議文の下書きまで短時間で作れます。公的統計から時給を組み立てる作業や、タイムシートの集計も同じです。この記事の式と逆算表も、そのまま自社の表計算に移せます。

一方で、生成AIにも開発会社にも代わりに決められないことと、既存の環境を見ないと出せない数字があります。

項目

誰が担うか

理由

式の表計算化、ケース別の再計算、稟議文の下書き

自社(生成AIを使って可)

一般的な計算で、自社の数字を入れれば済む

対象業務の時間と件数の実測

自社

現場の記録がないと出ない

浮いた時間の使い道、評価期間、PoCの合格ライン

自社(経営・部門長)

投資判断そのもの

何割を自動で処理でき、何割が人に戻るかの見立て

開発会社(PoCで実測)

実データの品質、書式のばらつき、例外の多さで決まる

既存システムとのつなぎ方と、その費用

開発会社

既存システムの仕様・API・権限・データの持ち方を調べないと分からない

保守の範囲と費用、AIの利用料の見込み

開発会社(見積)

監視・障害対応・連携先の変更への対応をどこまで含むかで変わる

本番での正しさの確認(検収)と、変更が出たときの責任

自社と開発会社で取り決め

誰が何をもって合格とし、仕様変更の費用を誰が持つかを契約で決める

開発会社に試算の相談をする意味があるのは、主に表の下半分です。式の計算を頼む必要はありませんが、「自動処理できる割合」「既存システムとのつなぎ方」「運用費の内訳」は、実データと既存の環境を見ないと仮定のまま残り、試算の中で最もずれやすい欄が埋まりません。

当社の費用

当社の受託開発の価格は次のとおりです(すべて税別。クラウド・外部API・ライセンスなどの実費は別)。

依頼の形

価格

試算で置き換える欄

既存システムの改修

100万円〜

ケース3の初期費用

PoC(試作検証)

300万円〜

前提表の「PoCの費用」。PoCの結果で削減時間とAIの利用料を実測に置き換える

本開発

個別見積

前提表の「本開発の費用」

PoCの300万円〜は試作検証の開始価格で、本番のシステムが完成する金額ではありません。

初回相談は無料・30分・オンライン(Google Meet)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。対象業務、その業務にかかっている月の時間(概算で可)、使っているシステムの名前を伺い、逆算表のどのあたりに入りそうか、自社でAIを使って進める部分と任せる部分の切り分け、改修・PoC・本開発のどれが合いそうかをお話しします。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。秘密情報や実際の顧客データは送らないでください。料金と対応範囲の詳細は受託開発サービスの費用と進め方に掲載しています。

公開できる範囲の実績と、試算での使いどころ

当社が公開できる受託開発の実績は次の2件です。守秘のため社名は出せず、削減時間・金額・期間は公開できる数値がないため書きません。ここでは、似た業務で試算を作るときにどの欄が大きく関わるかを整理します。

通信事業:数万件の請求情報の取込・集計・確認画面

作ったもの:数万件規模の請求情報を取り込み、集計し、担当者が確認するための画面です。

試算での使いどころ:件数の多い取込・集計の業務は、「1件あたり何分 × 月何件」で削減時間を組み立てやすい種類です。一方で、確認画面で人が見る作業は残ります。試算では、確認に残る件数と1件あたりの確認時間を別の行に分け、実現率の仮定(7〜8割)をそのまま掛けるのではなく、確認の手間を差し引いて置くのが安全です。

薬局:複数店舗・数千人分の記録管理、権限、確認工程

作ったもの:複数の店舗にまたがる数千人分の記録を管理する仕組みで、権限の設定と、記録を確認する工程を含みます。

試算での使いどころ:複数の拠点・権限・確認工程がある業務では、削減時間より先に「誰がどの記録を見てよいか」「どこで確認を残すか」が要件になり、その分が開発費に入ります。効果には①時間の削減だけでなく、③記録の不備や確認漏れによる手戻りの防止が入りやすい一方、③は過去の記録がないと金額にできません。導入前から不備や手戻りの件数を記録しておくと、試算の材料になります。

相談から試算・PoC・本開発までの流れと期間

試算は一度作って終わりではなく、段階が進むごとに仮定の数字を実測値と見積に置き換えていきます。

段階

期間

発注側でやること

試算表で置き換える数字

初回相談(無料)

30分・オンライン(Google Meet)

対象業務、月の作業時間(概算で可)、使っているシステムの名前を伝える

逆算表で規模の当たりを付ける

相談メモの受け取り

相談後にメールで届く

依頼範囲の候補・進め方・費用の目安を見て、社内で対象業務を絞る

開発費を「仮定」から「目安」に

業務の実測

2週間〜(月次業務は1サイクル以上)

タイムシートで作業時間と件数を記録する

削減時間を概算から実測に

資料を渡して提案・見積

資料の量と内容による

対象業務を絞り、浮いた時間の使い道を決める

PoC・本開発の費用を見積の値に

PoC

内容に応じて見積時に決める

合格ラインの合意、データの提供、現場での試用(自社側の時間も試算に入れる)

自動処理できる割合、AIの利用料、本開発の概算見積

本開発に進むかの判定

判定会議1回

前提が3割ずれても回収できるかを確認する

すべて実測値・見積値に置き換えて再計算

本開発

規模に応じて見積時に決める

中間確認、テストへの参加

追加費用が出たら本開発費を更新

並行稼働・切り替え

業務の周期に合わせて決める(月次業務なら1サイクル以上)

旧来のやり方と結果を見比べる

人に戻る件数の初期値

運用

継続

稼働3ヶ月で初回の効果確認、以後は年1回継続を判断

削減時間・運用費を実績に

本番稼働までの期間は案件の規模と社内の準備で変わり、その間は費用だけが出て効果はゼロです。止まりやすいのは、技術的な工程よりも「業務の実測」と「PoCでのデータ提供」で、発注側の社内で担当者の時間が取れないとここで止まります。期間の詳しい見通しはAI開発の期間、要件が固まっていない段階での進め方は要件が固まっていない開発の相談にまとめています。試算の前提づくりから一緒に進めたい場合は、ROI試算の前提と、PoC・改修・本開発のどこから始めるかを相談するからご連絡ください。

よくある質問

Q1. 人を減らす予定がない場合、時間の削減をROIに入れてもよいですか。

入れて構いませんが、「時間ベース」と「現金ベース」の2つの数字を並べて出すことをおすすめします。たとえばケース2の月300時間のうち、残業の削減と外注の停止で確実に現金が減るのが月150時間だけだとします。現金ベースでは月の効果が45万円、運用費を引いて33.25万円、回収は約30ヶ月、5年ROIは約58%です。時間ベースの約13ヶ月・約217%とは大きく違いますが、現金ベースでも5年以内に回収できるなら、経営会議で「人を減らさないなら意味がないのでは」と問われても答えられます。現金ベースで回収できない場合は、残り150時間をどの業務に回し、その業務でいくら稼ぐのかを具体的に書く必要があります。

Q2. PoCの費用を払うくらいなら、いきなり本開発したほうがROIは高くなりませんか。

うまくいった場合に限れば、計算上は高くなります。ケース2でPoCを省いて本開発の700万円だけで作れたとすると、回収は約9ヶ月です。ただし効果が出なかった場合、損失は700万円全額で、PoCで止めた場合の約314〜322万円の2倍以上になります。PoCを省いてよいのは、決まった形式のデータを変換して取り込む、毎月同じ集計をする、といった技術的に確かめることが実質的にない業務に限られます。判断ルールが人によって違う、扱う書類の形式がバラバラでAIが読めるか分からない、という業務でPoCを省くのは、ROIを上げるのではなく損失の上限を上げる選択です。

Q3. 試算の数字が稼働後の実績と外れたら、どう説明すればよいですか。

外れる前提で、稟議の段階から「どの前提がどれだけずれたら結論が変わるか」を示しておくことが一番の備えです。本記事のケース2-a・2-bのように、削減時間と開発費をそれぞれずらした数字を添えておけば、稼働後に外れても「想定していた幅の中か、外か」で説明できます。実績が出たら、差を「削減時間(自動処理できた割合)」「AIの利用料」「開発費の追加」「浮いた時間の使い道」の4つに分け、どの前提がずれたのかを報告してください。稟議に書く標準の数字は、楽観側ではなく控えめ側に置くのが原則です。「13ヶ月で回収」と書いて18ヶ月かかれば失敗扱いですが、「2年以内に回収」と書いて18ヶ月なら成功です。

Q4. 補助金の採択を待ってから発注したほうが、ROIは良くなりますか。

案件の大きさ次第です。補助金は一般に交付決定の前に発注・契約した経費が対象外になるため、使うなら待つ必要があります。待っている間、効果はゼロです。仮に補助の対象になる経費が700万円・補助率1/2で350万円が減るとしても、採択と交付決定まで半年待つなら、ケース2では運用費を引いた効果が月78.25万円 × 6ヶ月 = 約470万円失われ、待たないほうが得になります。一方、ケース1では失う効果は月12.25万円 × 6ヶ月 = 約74万円なので、補助金を待つ価値があります。月の効果が大きい案件ほど待つ損が大きく、小さい案件ほど補助金の効き目が大きい、と覚えておくと判断しやすくなります。いずれの場合も採択は保証されず、入金までの立て替えが必要な点は変わりません。

Q5. 開発費を資産に計上した場合、ROIの計算は変わりますか。

ROIと回収期間は現金の出入りで計算するため、会計上の処理方法では変わりません。変わるのは毎年の利益への見え方です。たとえば1,000万円を資産に計上して5年で償却すれば、利益を押し下げる費用は年200万円ずつに分かれます(PoCの費用を資産に含めるか費用として処理するかは、内容によって扱いが分かれます)。少額の資産を一括で費用にできる特例など、規模の小さい改修で使える税務上の扱いもあるため、稟議資料では「現金の回収期間」と「毎年の利益への影響」を分けて書き、適用できるかどうかは必ず顧問税理士に確認してください。

Q6. AIの利用料が想定より増えたら、試算はどれくらい変わりますか。

仮にAIの利用料が月3万円から月10万円に増えた場合、ケース2では回収が約13ヶ月から約14ヶ月に延び、5年ROIは約217%から約154%に下がります。まだ十分にプラスです。ところがケース1では、運用費を引いた月の効果が12.25万円から5.25万円に減り、回収は約190ヶ月(約16年)になります。効果が小さい案件ほど、利用料の増加が致命的な影響を与えるということです。対策は、PoCで実際の処理件数あたりの利用料を測ること、本番では月の利用料に上限と通知を設定すること、見積の段階で利用料が月額に含まれるのか実費なのかを確認することの3つです。AIの利用料が企業のコストとして膨らんでいる実態は企業のAIコスト問題で扱っています。

Q7. 開発会社が出してきたROI試算は、そのまま稟議に使ってよいですか。

そのまま使うのはおすすめしません。開発会社は受注したい立場にあるため、試算はどうしても楽観側に寄ります(当社も例外ではありません)。受け取ったら、次の3点を確認してください。1つ目は、削減時間を誰が出したかです。開発会社がヒアリングから推定した値なら、自社で実測した値に差し替えて計算し直します。2つ目は、計算表を、数字を書き換えられる形で受け取れるかです。回収期間の結論だけが載った資料では、時給やAIの利用料を自社の条件に置き換えられません。表計算ファイルでもらって前提の欄を自分で動かせるようにしておけば、経営会議で「この数字がずれたらどうなるのか」と聞かれてもその場で答えられます。3つ目は、「どういう条件なら作らないほうがよいか」を質問して、数字で答えが返ってくるかです。「月何時間を下回ると回収できない」と答えられない試算は、結論ありきで作られている可能性があります。複数社の見積を比べるときの見方はAI開発の見積もり比較を参考にしてください。

AI導入のROI試算でお悩みの方へ

AI導入のROIは、「(5年間の効果額 − 5年間の総費用)÷ 5年間の総費用」で、時給、実測した削減時間、保守費、AIの利用料を前提として明記したうえで試算します。仮定に基づく試算では、PoC 300万円+本開発700万円の計1,000万円なら、補正後で月95時間を超える業務を載せないと5年で元が取れず、月300時間を載せれば約13ヶ月で回収できます。前提の欄ごとに「実測」「見積」「仮定」を書き分け、試算の数字は効果の保証ではないと稟議で明示しておくことが、稼働後に外れたときの備えです。PoCの合格ラインに回収条件を入れておけば、不合格でも損失は約314〜322万円で止まります。

  • 数百万〜1,000万円規模のAI開発を稟議に上げたいが、回収期間の根拠を示せない
  • 試算の式は作れたが、自動処理できる割合や運用費が仮定のまま埋まらない
  • 開発会社から見積は出たが、載せる業務の時間が足りているのか分からない
  • PoCに進むべきか、既存システムの改修で済ませるべきか判断がつかない

このいずれかに当てはまる場合は、初回相談(無料・30分・オンライン(Google Meet))をご利用ください。要件が決まっていなくても大丈夫です。当社の受託開発の価格は既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別、実費は別)です。

ご相談の際は、①対象にしたい業務、②その業務にかかっている月の時間(概算で可)、③使っているシステムの名前、の3点をお聞かせください。自社でAIを使って進める部分と任せる部分を一緒に切り分け、相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。試算の結果、開発しないほうがよいと考えられる場合は、その理由と代わりの手段を相談メモに書きます。

▶ ROI試算の前提と、PoC・改修・本開発のどこから始めるかを相談する

関連記事:AI受託開発の費用相場/AIのPoC費用の相場/システム保守運用費の相場/業務自動化の効果測定/システム改修の費用/AI開発の失敗例/補助金の入金時期

参考資料

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この記事の著者

AI革命

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