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生成AIは内製と外注どちらが得か|人件費・期間・維持コストで3年比較【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/09
生成AIは内製と外注どちらが得か|人件費・期間・維持コストで3年比較【2026年9月最新】

この記事のポイント

生成AIは内製と外注どちらが得か。人件費・期間・維持コストで比較し、3年総額を4パターン試算しました。専任採用3,090万円、外注2,032万円。PoC300万円〜という受託開発の実価格まで数字で解説します。

結論から言うと、生成AIの開発テーマが年1本程度なら外注、年2本以上を継続的に回すなら専任を置いた内製が有利です。 3年間の総額で見ると、専任1名を採用する内製が約3,090万円、外注が約2,032万円、担当者の兼任で済ませる内製が約972万円という試算になり、判断を分けるのは「1年目にいくらかかるか」ではなく「2年目以降に何を何本作り続けるか」です。

ただし、この比較には前提があります。総務省『令和8年版 情報通信白書』(2026年7月)によれば、社員が生成AIを使ったアプリやAIエージェントを開発できる技術環境が整っている日本企業は15.3%しかありません。内製と外注を比べる前に、多くの企業はまず「自社は内製という選択肢を選べる状態にあるのか」を確認する必要があります。

この記事では、公的統計と市場の公開価格をもとに、人件費・期間・維持コストの3つで内製と外注をフラットに比べ、最後に当社(AI革命)が受託開発でいくらから対応しているかまで具体的な金額で示します。

内製と外注の判断を間違えると、どこで損が出るか

作成者が退職し、誰も改修できなくなった社内システムの担当席のイメージ

最初に、判断を誤ったときに何が起きるかを見ておきます。損失が出るのは開発費そのものではなく、たいてい「作った後」です。

情報システム部門の支援を行う事業者が公開している事故事例には、次のようなものがあります。

  • 営業部門が独断で顧客データベースを作り、3カ月後に認証なしで全情報が閲覧できる状態だったことが判明した
  • 外部との連携部分に認証がなく、URLを知っているだけで社外から中身が見えていた
  • 作成者が退職した後、後任が改修できずゼロから作り直しになり、半年分の開発投資が無駄になった
  • 勤怠管理ツールの作成者が「AIに作らせただけで、仕組みは自分も分からない」と言い残して退職した

最後の2つは、生成AIで内製のハードルが下がったからこそ増えている新しい形の属人化です。従来の属人化は「作れる人が1人しかいない」でしたが、いまは「作った本人も中身を説明できない」という状態が生まれます。

NTTデータ経営研究所も、生成AI業務アプリの内製化の成否を決めるのは開発力ではなく継続して運用する力だと指摘しています。作った人が異動すれば設定の意図が失われ、外部AIサービスの仕様変更と社内の制度改正の両方から品質が落ちていく。これは、かつてRPAが辿った道と同じ構図です。

RPAの保守が想定以上に膨らんだ経験がある場合は、RPAの保守コストが膨らむ理由も合わせて確認しておくと、同じ失敗を繰り返さずに済みます。

つまり内製と外注の判断は、「安く作れるのはどちらか」ではなく「3年間動かし続けられるのはどちらか」で決めるべきものです。

そもそも自社は内製できる状態か|総務省データで確認する6項目

総務省 令和8年版 情報通信白書の表紙

出典: 総務省 令和8年版 情報通信白書 公式サイト

内製を選べるかどうかは、意欲ではなく環境で決まります。総務省『令和8年版 情報通信白書』(2026年7月公表)は、生成AIによる業務変革に向けた環境整備の状況を国別に調べています。

環境整備の項目

日本

米国

中国

生成AI活用の検討に向けた予算や人員が確保されている

37.4%

50.0%

50.2%

業務プロセス見直しやAI活用のスキル・ノウハウを学ぶ環境がある

39.9%

62.7%

71.7%

専門家によるアドバイスやサポート体制がある

22.1%

27.2%

24.6%

分析・活用できる社内データの整備が進んでいる

26.1%

33.0%

44.0%

社内データをAIに参照させられる仕組みを構築している

24.5%

57.2%

73.0%

社員がAIを使ったアプリやAIエージェントを開発できる技術環境がある

15.3%

22.1%

31.1%

特に実施している施策はない・把握していない

19.9%

0.7%

0.3%

※ 総務省「令和8年版 情報通信白書(概要)」2026年7月/日本 n=326、米国 n=276、中国 n=293

注目すべきは下から2行目です。内製の前提となる開発環境がある日本企業は15.3%、およそ7社に1社。さらに、社内データが整っている企業は26.1%、社内データをAIに参照させられる仕組みまで作れている企業は24.5%にとどまります。

同じ白書では、生成AIを1つ以上の業務で使っている日本企業は86.4%に達している一方、「組織的な取り組みはない」が27.0%(米国1.4%)と突出しています。個人が使ってはいるが、会社としての仕組みにはなっていない。これが日本の平均的な現在地です。

PwC Japanの『生成AIに関する実態調査2026 春』も同じ方向を示しています。日本企業の活用・推進度は87%まで上がっているのに、効果が「期待を大きく上回った」と答えた割合は9%で6カ国中最低、1年以内に効果が出ると考えている企業は41%(米国66%)でした。導入はした、けれど効果の実感が薄い。作ることではなく、回すことでつまずいているわけです。

自己診断の目安

上の6項目のうち、4つ以上に「はい」と答えられないうちは、フル内製は現実的ではありません。特に次の2つが揃っていない場合、内製に踏み切ると高い確率で止まります。

  • 社内データが、部署をまたいで同じ定義で整理されている
  • 出てきた答えが業務上正しいかどうかを判定できる担当者が、業務側にいる

この2つは外注しても代わりにはなりません。外に出せるのは「作ること」であって、「正しさを決めること」ではないからです。

人件費で比較する|内製1名を1年抱えるといくらか

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)のロゴ

出典: 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)『DX動向2025』公式サイト

内製の費用を「ツールの月額」で計算してしまうと、必ず見誤ります。実際にかかるのは人件費です。

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)が示すAIエンジニアの全国平均年収は約610万円です(令和7年賃金構造基本統計調査ベース。求人ベースの集計では558万円とする数字もあり、あくまで採用予算の目安として見てください)。

ここに社会保険料と間接費が乗るため、複数の開発会社が公開している目安では1人あたりの年間総人件費は650万〜1,000万円になります。加えて、採用そのものにも費用がかかります。

費目

金額の目安

AIエンジニアの年収

550万〜800万円(平均約610万円)

年間総人件費(社会保険料・間接費込み)

650万〜1,000万円/人

採用費(成功報酬型)

1人あたり100万〜200万円

全社で使う生成AIツール

月2,000〜3,000円 × 人数

AIの従量課金

月数千円〜数万円規模(用途による)

自社サーバーで動かす場合の運用費

月20万〜100万円超

そして、この採用は簡単ではありません。IPA『DX動向2025』では、DX推進人材の「量」が不足していると答えた日本企業が8割を超えています(米国は2割台)。経済産業省の『IT人材需給に関する調査』(2019年4月時点の推計)でも、2030年にはAI人材だけで約12.4万人の需給ギャップが生じるとされていました。2019年の推計であることは差し引く必要がありますが、需給が緩む方向に動いていないことは、採用単価を見れば分かります。

採用にかかる時間も費用です。 求人を出して入社まで3〜6カ月、立ち上がりにさらに3カ月を見れば、採用を決めてから戦力になるまで半年から1年。その間、開発は1行も進みません。

一方、外注の人件費は人月単価という形で見えます。国内の受託開発の人月単価は約100万〜150万円、ベトナムなどのオフショア(実務経験のある層)で月40万〜50万円が公開されている相場です。専任1名を年800万円で抱えるのと、人月120万円を年6.7人月使うのは、額面上ほぼ同じことになります。

違いは払い続けるかどうかです。人件費は仕事がない月も発生し、外注費は使った分だけ発生します。

期間で比較する|「作る時間」より「作る前の時間」が長い

期間の議論で、多くの記事は開発期間しか語りません。実際に稟議を書く立場からすると、もっと長いのは作り始める前の社内プロセスです。

社内プロセス

所要期間の目安

法務レビュー

2〜6週間

セキュリティ審査

2〜4週間

稟議承認

1〜8週間

合計

最大18週間(約4カ月)

この4カ月は、内製でも外注でも同じようにかかります。むしろ内製の場合、「自社でやるのだから審査は軽くていい」と考えて手続きを飛ばし、後から情報システム部門に止められて振り出しに戻るケースが少なくありません。

外注の場合、この期間を開発着手と並行して進められるという利点があります。契約書の雛形、セキュリティチェックシートへの回答、データの取り扱いに関する説明資料を、受注側が過去案件の蓄積として持っているためです。ここは経験値の差がそのまま期間の差になります。

開発そのものの期間は次のようになります。

  • 一般的なシステム開発では、要件定義・設計といった上流工程が全体の20〜30%
  • 生成AIのプロジェクトでは、上流に40〜50%を割くのが推奨される(何を実現したいかが曖昧だと、後工程の手戻りが極端に大きくなるため)
  • AIならではの工程(指示文の設計と調整、精度を測るための正解データ作成、出力の検証)が全体の15〜20%を占めることがある
  • 要件が固まっている場合の標準的な流れは、要件定義・設計に約1カ月+開発に約3カ月+テストに約2カ月=およそ半年

つまり、社内手続きに最大4カ月、開発に半年。思い立ってから本番稼働まで、内製でも外注でも10カ月前後を見ておくのが現実的です。ここを3カ月で見積もった計画は、ほぼ確実に崩れます。

維持コストで比較する|生成AIには「経年劣化」がある

株式会社NTTデータ経営研究所の公式サイトイメージ

出典: 株式会社NTTデータ経営研究所 公式サイト

従来のシステム開発と生成AI開発の最大の違いは、作った瞬間から品質が落ち始めることです。劣化の原因は2つあります。

1つ目は、AIモデルの世代交代です。 生成AIのモデルは数カ月から1年程度で世代が変わり、古い世代は順次提供が終わります。モデルが変われば、同じ指示文を投げても出力の傾向が変わります。これは不具合ではなく仕様なので、変わるたびに指示文の調整と再検証が必要になります。

2つ目は、業務側の変化です。 制度改正、商品マスタの更新、業務フローの見直し。AIに読ませているデータや判断のルールが古くなれば、出力はそのまま古い前提で返ってきます。しかも、システムのようにエラーで止まってくれるわけではなく、もっともらしい間違いを返し続けるため、気づくのが遅れます。

維持にかかる費用の目安は次の通りです。

費目

金額の目安

保守・運用(外注)

1人日3万〜5万円/月額数十万円〜

軽微な改修(画面追加・帳票追加など)

数十万円〜

自社サーバーで動かす場合の運用費

月20万〜100万円超

内製の場合の実質保守費

担当者の人件費に埋もれて見えない

内製の維持コストが厄介なのは、費用として計上されないことです。担当者が月20時間かけて指示文を直していても、その20時間はどこにも数字として出てきません。だから安く見えます。そして担当者が異動した瞬間、その20時間分の知見ごと消えます。

外注の保守費が「高い」と感じる場合は、内製時に誰かが無償でやっている作業を金額に直して比べてみてください。月20時間×時給3,000円で月6万円、年72万円。外注の保守(月2人日=月8万円、年96万円)と、それほど変わりません。

3年間の総額シミュレーション|1年目の安さで決めると逆転する

ここまでの数字を使って、3年間の総額を4パターンで比較します。

前提

  • 従業員50名規模の企業
  • 全社員が生成AIツールを利用
  • 開発テーマは年1本(社内文書検索の仕組みや、業務システムへのAI組み込みを1件)
  • 社内工数は時給3,000円換算(年収500万円台の社員を社会保険料込みで見た場合の目安)
  • 金額はすべて税別

全パターンに共通してかかる費用

  • 生成AIツール:月2,500円 × 50名 = 月12.5万円 = 年150万円
  • AIの従量課金:月2.5万円 = 年30万円
  • 合計 年180万円

4パターンの3年総額

パターン

1年目

2年目

3年目

3年合計

① 兼任で内製(専任を置かない)

324万円

324万円

324万円

972万円

② 専任1名を採用して内製

1,130万円

980万円

980万円

3,090万円

③ すべて外注

1,280万円

376万円

376万円

2,032万円

④ 工程を分けて外注(企画・評価は自社)

1,352万円

355万円

355万円

2,062万円

内訳

  • ①兼任内製:共通180万円+社内工数(2名が月20時間ずつ=月40時間×3,000円=月12万円)年144万円
  • ②専任採用:1年目は共通180万円+採用費150万円+年間総人件費800万円。2年目以降は共通180万円+人件費800万円
  • ③全部外注:1年目は共通180万円+PoC 300万円+本開発800万円。2年目以降は共通180万円+保守(月2人日×4万円)年96万円+年1回の改修100万円
  • ④工程分割:③に自社の企画・評価工数を上乗せ(1年目は月20時間=年72万円、2年目以降は月8時間=年29万円)。その代わり、改修の要否を自社で判断できるため改修費を年50万円に圧縮

この表の正しい読み方

額面だけを見れば①の兼任内製が圧倒的に安く見えます。ただし972万円は「動くものができた場合の金額」ではなく、単に「使った金額」です。

兼任体制での内製は、検証段階に3〜6カ月かかり、成果が出る保証はありません。前半で挙げたとおり、保守できずに作り直しになれば、本開発相当の費用(この試算では800万円)を改めて払うことになります。その場合の3年合計は1,772万円となり、外注(2,032万円)との差はほぼ消えます。しかも、そこまでに2年を失っています。

②の専任採用は、1年目に1,130万円、2年目以降も年980万円が固定で乗り続けるのが特徴です。この980万円で年に何本作れるかが分岐点になります。

  • 外注は1本あたり約1,100万円(PoC 300万円+本開発800万円)
  • 専任1名が年980万円

専任1名で年2本以上を安定して出せるなら内製が有利、年1本以下なら外注が有利、というのが単純な計算です。ただし現実には、専任1名は既存システムの保守や社内からの相談対応も抱えるため、新規で作れるのは年1本程度に落ち着きます。だから多くの中堅企業では、③または④が現実解になります。

そして③と④の3年総額はほぼ同じ(2,032万円と2,062万円、差は30万円)。同じ金額を払うなら、ノウハウが社内に残る④を選ぶべきというのが、この試算から出る最も重要な結論です。

自動化や開発の投資対効果をどう測るかについては、自動化の効果測定の考え方も参考にしてください。

費用の目安と、どこから始めるか

AI革命の受託開発サービスのイメージ

出典: AI革命 受託開発サービス 公式サイト

市場に公開されている外注費の相場をまとめると次の通りです。いずれも各開発会社が自社サイトで公開している目安であり、公的な統計ではない点にご注意ください。

フェーズ

相場レンジ

期間の目安

要件定義

数十万円〜

2週間〜1カ月

PoC(実証実験)

100万〜500万円(簡易な検証は30万円〜)

1〜3カ月

本開発

500万〜1,500万円(規模により3,000万円超)

数カ月〜1年

保守・運用

1人日3万〜5万円/月額数十万円〜

継続

国内の人月単価

約100万〜150万円

用途別に見ると、金額の幅はもう少し具体的になります。

用途

検証期間

検証段階の費用

初年度の総額目安

社内の問い合わせ対応

4〜8週間

150万〜500万円

400万〜1,200万円

文書の作成・要約

2〜6週間

100万〜400万円

300万〜900万円

社内文書を検索して根拠付きで答えさせる仕組み

4〜12週間

200万〜700万円

600万〜1,800万円

画像生成・デザイン業務

4〜10週間

150万〜800万円

500万〜2,000万円

自社データでAIを調整する

2〜8週間〜

200万円〜

500万〜数千万円

社内文書検索の仕組みが100万〜800万円と幅広いのは、データの整理状態が金額を支配するためです。ファイルサーバーに同じ資料の版違いが5つ並んでいる状態から始めるのか、最新版が一元管理されているのかで、必要な工数が数倍変わります。見積もりが高いと感じたときは、値引きを求める前に自社のデータ状態を確認したほうが早く安くなります。

当社(AI革命)の価格

当社の受託開発は、次の価格で対応しています(すべて税別、クラウド利用料・API利用料・ソフトウェアライセンスは実費が別途)。

プラン

価格

含まれる内容

PoC(実証実験)

300万円〜

課題整理、簡易要件定義、設計・開発、検証環境の構築、結果整理、本開発の提案まで

小規模改修

30万円〜

画面の追加・修正、帳票の追加、CSV出力、軽微な外部システム連携

本開発

個別見積

利用者数・機能数・外部連携・データ移行・セキュリティ要件・運用性から算定

市場のPoC相場が100万〜500万円ですから、300万円〜は中央からやや上の位置づけです。安さで選ばれることを狙っていません。代わりに、PoCの成果物に本開発の提案までを含めています。検証で終わって「うまくいきませんでした」で解散する、いわゆる検証止まりを避けるための構成です。

また、いきなりPoCから入る必要もありません。既存システムに帳票を1本足したい、CSV出力を追加したいといった話であれば30万円から着手できます。まず小さく1本外に出して、進め方と相性を確かめてから本番の規模を決める——これが失敗の少ない入り方です。

費用のご相談はAI革命の受託開発サービスからご覧いただけます。初回相談は無料で、要件が固まっていない段階でもご相談いただけます。

費用の内訳をさらに細かく確認したい場合は、AI受託開発の費用相場PoCにかかる費用も合わせてご覧ください。

工程で分けるという現実解|企画・データ・作る・評価・運用

「全部内製か、全部外注か」の二択で考えると、たいてい判断を誤ります。生成AIのプロジェクトは5つの工程に分かれており、工程ごとに置き場所を決めるのが実務的です。

工程

自社に置くべき条件

外に出しやすい条件

企画(何を解決するか決める)

業務の変化を自社の言葉で説明できる

最初は「決め方の設計」だけ依頼する

データ(AIに読ませる情報を整える)

社内データがあり、正解を判定できる人がいる

量が多く、期間限定の作業になる

作る(開発する)

触って直し続ける人が社内にいる

人手が足りない、または速度を優先したい

評価(出力の正しさを判定する)

業務側で合否を判定できる

測り方の設計だけ外注する

運用(動かし続ける)

異常に気づける業務担当者がいる

24時間の対応が必要

推奨は、企画と評価を先に自社へ寄せることです。理由は単純で、この2つは外注先が代わりにできないからです。

「この出力は業務上OKか」を判定できるのは、その業務を毎日やっている人だけです。ここを外注先に丸投げすると、発注側が良し悪しを判断できないまま納品を受け取ることになり、稼働後に「思っていたものと違う」が発生します。逆に、作ること(実装)は最も外に出しやすい工程です。

なお、社内に情報システム部門がない場合の進め方については、エンジニアがいない会社の業務自動化で詳しく整理しています。

外注してもノウハウを社内に残す発注のしかた

「外注するとノウハウが残らない」とよく言われます。これは半分正しく、半分は誤解です。残らないのではなく、残す設計をせずに発注しているだけというケースがほとんどです。

納品物として必ず受け取るべき7点

契約前に、以下が納品物に含まれるかを確認してください。含まれていなければ、含めた場合の見積もりを別途出してもらいます。

  1. 整えたデータ(AIに読ませるために加工した後のもの)
  2. 構築したプログラム一式
  3. 精度を測るための検証用データと、測定の手順書
  4. AIへの指示文と設定値(ここが実質的なノウハウの本体)
  5. 環境の構築手順書
  6. 失敗記録(試したがうまくいかなかった方法とその理由)
  7. 成果物の権利の扱いを明記した書面

特に4番の指示文と設定値は、生成AIのプロジェクトにおける中核資産です。ここが納品されないと、外注先を替えた瞬間にゼロからやり直しになります。そして6番の失敗記録も見落とされがちですが、これがないと後任が同じ失敗を繰り返します。

契約で確認すべき4点

経済産業省の『AI・データの利用に関する契約ガイドライン』は、AI開発では生データ・学習用データセット・学習済みモデル・中間生成物と成果物が多層になるため、権利の帰属と利用条件を細かく設定する必要があると指摘しています(契約チェックリストは令和7年2月版が最新)。確認すべきは次の4点です。

  • 「成果物として引き渡す」のか「使用を許諾するだけ」なのか(同ガイドラインは両方の形を想定しています)
  • 納品されたものを、自社で改変してよいか
  • 別の業者に保守を引き継げるか
  • 引き渡し期間(測定をやり直すのに1カ月程度は必要)と、その間の対応費用

そして最も実務的なコツは、見積もり段階で「引き渡しを含む場合」と「含まない場合」の金額を分けて提示してもらうことです。差額が明示されれば、ノウハウを残すのにいくら払っているのかが分かります。この一手間で、3年目に外注先を替える自由度が手に入ります。

当社は受託開発において、この7点の引き渡しを前提に見積もりを組んでいます。将来の内製化を見据えて「どこまで引き取れる形で作るか」からご相談いただけます。

複数社から見積もりを取る際の比べ方は、AI開発の見積もり比較のポイントにまとめています。

そもそも作らずに済む業務もある

内製と外注を比べる前に、一度だけ確認しておくべきことがあります。その業務は、本当に新しく開発する必要があるのかです。

以下に当てはまる業務は、システムを一から開発するよりも、繰り返し作業をそのまま代行させる運用型のサービスを使うほうが、初期費用も期間も抑えられます。

  • 毎日・毎週・毎月、同じ手順で繰り返し発生している
  • 入力も出力もデータ上で完結している(紙や対面が前提になっていない)
  • 判断のルールが言葉で説明できる

逆に、次の場合は開発が必要です。

  • 自社独自の業務フローに合わせた画面や帳票が要る
  • 既存の基幹システムと深く連携させる必要がある
  • 顧客に提供する新しいサービスそのものを作りたい

参考までに、繰り返し作業を任せる運用型のサービス(当社のシゴハヤエージェント)は初期100万円+月額10万〜50万円(税別)、導入期間は1〜2カ月が標準です。PoCから本開発まで進むと1年目で1,000万円を超えることを考えると、定型業務の置き換えが目的なら、開発しないほうが早くて安い場合があります。

判断がつかない場合の費用感については、AIエージェント導入の費用も参考にしてください。

実際にやった事例

当社は医療機関・調剤薬局・インフラ企業での開発実績があります(守秘のため社名は非公開です)。工程の分け方が実際にどう機能したかをご紹介します。

調剤薬局のケース|複数システムをまたぐ転記作業

課題:レセプトシステム、在庫管理、本部への報告書類がそれぞれ別のシステムで動いており、同じ数字を人が3回入力し直していました。月末は特定の担当者が残業で処理する状態が固定化し、その担当者が休むと業務が止まるリスクを抱えていました。

作ったもの:各システムからデータを取り出して突き合わせ、報告用の書式に整えるまでを自動で行う仕組みです。ここで重視したのは、どの数字がどこから来たかを画面上で追えるようにしたことでした。AIの出力をそのまま信じるのではなく、担当者が根拠を確認して承認する形にしています。

何が変わったか転記と突き合わせの作業がなくなり、担当者の役割が「入力する人」から「確認して承認する人」に変わりました。手順書と指示文を納品物に含めたため、担当者が交代しても運用が継続できる状態になっています。

医療機関のケース|文書の下書き作成

課題:定型的な文書の作成に時間がかかり、専門職の時間が事務作業に取られていました。書式は決まっているものの、患者ごとに内容が変わるため、単純なテンプレートでは対応できませんでした。

作ったもの:過去の文書と入力情報をもとに下書きを生成し、専門職が確認・修正して確定させる仕組みです。最終判断は必ず人が行う設計とし、AIが出したままの内容が外に出ることがないようにしています。

何が変わったか:ゼロから書いていた作業が「確認して直す」作業に変わりました。医療分野では出力の正しさを判定できるのは現場の専門職だけなので、評価の工程は最初から病院側に置き、当社は仕組みの構築と測定手順の設計を担当しました。

インフラ企業のケース|既存システムへの機能追加

課題:長年使っている業務システムに新しい帳票と外部連携を足したいが、当時の開発ベンダーとの契約が終了しており、改修を頼める先がありませんでした。

作ったもの:既存システムの構造を調査したうえで、必要な機能を追加しました。小規模改修として着手し、動作を確認しながら段階的に範囲を広げています。

何が変わったか:システム全体を作り直す(数千万円規模)という選択肢を取らずに済みました。まず小さく発注して相性を確かめてから範囲を広げるという進め方が、そのまま費用の抑制につながった例です。

相談から導入までの流れと期間

当社の受託開発は次の流れで進みます。

ステップ

内容

期間の目安

1. 相談

課題をお聞きします。要件が固まっていない段階で構いません(初回相談無料)

1回1時間程度

2. 課題・要件の整理

何を解決するか、どこまでを対象にするかを一緒に決めます

2週間〜1カ月

3. 提案・見積もり

進め方と金額をご提示します。引き渡しを含む/含まない金額も分けて提示します

1〜2週間

4. PoC または本開発

検証から入るか、本開発から入るかを規模に応じて選びます

PoC 1〜3カ月/本開発 数カ月〜

5. 導入・改善

実際の業務で使いながら調整します

継続

この期間とは別に、御社側の法務レビュー・セキュリティ審査・稟議で最大4カ月かかることを前提に逆算してください。社内手続きを開始するタイミングを早めることが、実は最も効果の大きい期間短縮策です。当社は過去案件のセキュリティチェックシートへの回答や契約書の雛形をご用意できるため、審査と設計を並行して進められます。

対応領域は、AIを使った業務システム、新規事業の実証実験・試作、社内業務システム、既存システムの改修、外部システム連携、データ分析や管理画面などです。

よくある質問

Q1. 生成AIの内製化を始めるには、最低何人必要ですか。

専任で開発を担当する人が1名では足りません。実務上は、開発できる人1名+業務側で出力の正しさを判定できる人1名+社内手続きを通せる人1名の計3名が最低ラインです。開発できる人だけを採用しても、判定する人がいなければ「動いているが正しいか分からない」状態になり、稼働に踏み切れません。3名を確保できない場合は、開発部分を外に出して、判定と手続きの2役を社内に残す形が現実的です。

Q2. 情報システム部門がない会社でも内製できますか。

できないわけではありませんが、セキュリティ審査と本番運用の責任を誰が持つかを先に決める必要があります。情報システム部門がない会社で起きやすいのは、現場が良かれと思って作ったものが認証なしで外部に露出しているケースです。部門がない場合は、開発を外部に任せたうえで、セキュリティ設計のレビューだけ外部の専門家にスポットで依頼する方法もあります(30分〜1時間のスポット相談として、1件5,000円〜3万円程度で対応する事業者もあります)。

Q3. PoC(実証実験)で作ったものは、そのまま本番で使えますか。

原則として使えません。PoCは「実現できるか」を確認するもので、同時にアクセスする人数への対応、エラー時の処理、権限管理、ログの記録などが省かれているのが通常です。本番化には別途1〜6カ月と追加費用がかかります。PoCの見積もりを取る際は、本番化に何が足りないのかを成果物に含めてもらってください。当社のPoCが本開発の提案までを含んでいるのは、この確認を検証段階で終わらせるためです。

Q4. 途中から内製に切り替えることはできますか。

できます。ただし、切り替えられるかどうかは発注時点の契約と納品物で決まります。本記事で挙げた7点の納品物と改変権を確保していれば、社内に担当者を採用したタイミングで引き継ぎができます。逆に、使用許諾のみの契約で、指示文や設定値が納品対象に入っていない場合は、実質的に作り直しになります。切り替えを検討する可能性が少しでもあるなら、最初の見積もり依頼の時点でその旨を伝えてください。引き渡しの範囲は、後から追加するより最初に含めるほうが安く済みます。

Q5. 外注先が撤退・倒産したら、システムはどうなりますか。

プログラム一式と環境構築手順書が手元にあり、改変と第三者への保守委託が契約で認められていれば、別の会社に引き継げます。これが揃っていないと、動いている間は使えても、修正が必要になった時点で作り直しになります。契約書で「別業者への保守移管の可否」を確認しておくことが、この状況への唯一の備えです。実際、当社に持ち込まれるご相談には「以前のベンダーと連絡が取れず改修できない」というケースが少なくありません。

Q6. 補助金は内製と外注のどちらでも使えますか。

制度によって扱いが異なります。一般的に、外部への委託費は対象になりやすい一方、自社の人件費や、稼働後の保守・運用費は対象外とされる制度が多い傾向があります。また補助金は原則として後払い(先に支払い、後から入金される)であるため、資金繰りの計画も必要です。公募要領は年度ごとに変わるため、必ず最新の要領で対象経費を確認してください。詳しくは補助金で保守費が対象外になる理由をご覧ください。

Q7. 見積もりを依頼するとき、最低限そろえておくべき資料は何ですか。

次の4点があれば、初回の相談から具体的な金額の話ができます。①対象業務の現在の手順(箇条書きで構いません)②扱うデータの種類と、どのシステムに入っているか ③その業務に関わっている人数と、月に何時間かかっているか ④社内のセキュリティ規程で、外部サービスにデータを出せるかどうか。特に④は、後から発覚すると設計を丸ごとやり直すことになる項目なので、早い段階で確認しておいてください。逆に、機能一覧や画面イメージは事前に用意する必要はありません。

まとめ|判断の順番

  1. 内製できる状態かを確認する。社内データの整理と、出力の正しさを判定できる人。この2つがなければ内製は成立しません(開発環境が整っている日本企業は15.3%)
  2. そもそも作る必要があるかを確認する。繰り返しの定型業務なら、開発せず運用型のサービスで足りることがあります
  3. 年に何本作るかで決める。年1本以下なら外注、年2本以上を継続的に回すなら専任を置いた内製
  4. 外注する場合は、工程を分ける。企画と評価は自社、データ整備と開発は外部へ
  5. 引き取れる形で発注する。納品物7点と改変権を、見積もり段階で金額として明示させる

3年で見れば、すべて外注(約2,032万円)と工程を分けた外注(約2,062万円)の差はわずか30万円です。同じ金額なら、ノウハウが残る形を選ぶべきです。

ご相談ください

「内製と外注のどちらにすべきか」の段階からご相談いただけます。要件が固まっていなくても構いません。まずは現在の業務と、社内にどんなデータがあるかをお聞かせいただければ、開発が必要なのか、そもそも作らずに済む話なのかを含めてご提案します。

  • PoC(実証実験):300万円〜(本開発の提案まで含みます)
  • 小規模改修:30万円〜(画面追加、帳票追加、CSV出力、外部連携)
  • 本開発:個別見積
  • ※すべて税別。クラウド利用料・API利用料・ライセンス費は実費が別途かかります
  • 医療機関・調剤薬局・インフラ企業での実績があります

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参考にした主な資料

  • 総務省「令和8年版 情報通信白書(概要)」2026年7月(PDF
  • IPA「DX動向2025」(リンク
  • 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」2019年4月(PDF
  • 経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」/「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」令和7年2月版
  • 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」AIエンジニア
  • PwC Japan「生成AIに関する実態調査2026 春」(リンク
  • NTTデータ経営研究所「生成AI業務アプリの内製化は『運用力』がカギ」(リンク
  • 費用相場は複数の開発会社が公開している目安を突合したものであり、公的統計ではありません

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この記事の著者

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