ビジネス活用2026年10月更新

AIのPoC費用は何で変わるか|見積で比べる成果物と本開発の判断材料

公開日: 2026/09/09
更新日: 2026/10/10
AIのPoC費用は何で変わるか|見積で比べる成果物と本開発の判断材料

この記事のポイント

AIのPoC費用は、データ量・業務数・連携・評価・現場試用・報告・本開発概算の範囲で変わり、金額だけでは良し悪しを決められません。見積で比べる7項目、自社側の時間、PoCが不要なケース、当社PoC 300万円〜(税別)の位置づけを解説。

AIのPoC(試作を作って、業務で使えるかどうかを確かめる工程)の費用は、データ量、対象業務の数、既存システムとの連携の数、評価の方法、現場での試用、報告と本開発の概算の有無で大きく変わります。そのため、金額の高い・安いだけではPoCの良し悪しは決められません。見積で比べるべきなのは、その金額で「何が分かり、何が手元に残るか」です。

この記事では、見積で揃えて比べる項目、外注費とは別にかかる自社側の時間、PoCを飛ばしたほうがよいケースを順に整理します。当社の価格はPoC 300万円〜、既存システムの改修 100万円〜、本開発は個別見積(すべて税別。クラウド・外部API等の実費は別)です。300万円は当社PoCの開始価格であり、本番システムが完成する金額ではありません。100万円の改修で終わる話に300万円のPoCを組むのは、発注側にとっても受注側にとっても損です。

総務省「令和8年版 情報通信白書」によると、生成AIを「積極的に活用する方針」と「領域を限定して利用する方針」を合わせた企業の割合は日本で68.9%(前年度調査49.7%)、何らかの業務で生成AIを利用している企業は86.4%に達しています。利用している業務で最も多いのは「議事録・資料作成補助」(7割)で、「営業・販売」(約6割)、「社内ヘルプデスク」(約5割)が続きます。生成AIを使うこと自体はすでに広がっており、PoCを検討する段階では、自社の業務データや既存システムと組み合わせて本番の業務で使えるかどうかが問われます。

出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」生成AIの活用方針等/同「生成AIの業務利用状況」

PoCの費用が見積ごとに大きく違う理由

生成AI活用型と従来型でPoCの費用規模が大きく異なることを表したイメージ

「AI PoC 費用」で検索すると、数十万円台から千万円を超える金額まで、さまざまな数字が出てきます。どれかが間違っているとは限りません。同じ「PoC」という言葉で、検証する範囲も費用のかかり方も違う仕事を指しているからです。大きく分けると、次の2種類があります。

生成AIを業務に組み込むPoC

自社データで学習させる従来型のPoC

やること

既存のAIサービスを呼び出し、自社の業務手順に当てはめて試す

自社に溜まったデータでAIに学習させ、精度が出るか試す

典型例

文書を読ませて回答させる、書類の内容を読み取って転記する、問い合わせの一次対応

画像による外観検査、需要予測、設備の異常検知

費用が増えやすいところ

業務の手順の整理、指示文の設計、既存システムとの連携、評価

データの収集・整理と、AIに学習させるための正解付け作業

費用を動かす主な条件

対象業務の数、連携の数、評価に使う件数

正解付けが必要な件数、データの散らばり具合

学習データの整備

原則不要

必須。件数が多いほど作業量が増える

分岐点は「AIに新しく覚えさせる必要があるか」です。既存のAIサービスがすでにできることを、自社の業務の形に当てはめるだけなら学習は要らないので、費用は業務の整理と連携と評価に集まります。逆に、自社にしかないデータ(自社製品の不良品画像、自社の販売実績)から判断させたいなら、データを集めて1件ずつ正解を付ける作業が発生し、その件数に応じて費用が膨らみます。

自社の案件がどちらかを見分ける3つの質問

  1. AIに判断させたい内容は、一般的な言葉や書類の読み書きで表現できますか。 できるなら生成AI型です。「契約書からこの項目を抜き出す」「問い合わせ内容を分類する」はこちらに入ります。
  2. 判断の根拠が、自社にしかないデータの中にありますか。 自社製品の写真、自社設備のセンサー記録、自社の過去の販売実績から判断させたいなら従来型です。
  3. その判断の「正解」を、誰かが1件ずつ付ける必要がありますか。 必要なら従来型で、その作業量がそのまま費用になります。

1つ目だけに当てはまるなら、費用は主に業務の数と連携の数で決まります。2つ目・3つ目に当てはまるなら、正解付けの件数を先に見積もらないと予算が組めません。見積を取る前にこの判定をしておくと、各社の金額を同じ土俵で比べられるようになります。

PoCの費用は何で変わるか|見積で確認する7つの項目

PoCの5つの工程とデータ準備の作業を表したイメージ

PoCの見積は、次の7項目のどこまでを含むかで金額が変わります。2社の見積を比べるときは、金額より先にこの7項目を横に並べてください。同じ項目が同じ条件で入っていない見積同士は、金額を比べても意味がありません。

項目

費用が増える方向の条件

見積で確認すること

1. データ量

対象の件数が多い、複数のシステムに散らばっている、匿名化や形式の変換が必要

何件のデータで検証するか。データの抽出・整形を誰がやるか

2. 対象業務の数

1つの業務ではなく、複数の業務・部署を同時に試す

検証する業務が1つに絞られているか

3. 連携の数

既存システムからの取り込み・書き戻しを実際につなぐ

連携は実際につなぐのか、CSVの手渡しで代用するのか

4. 評価

合格ラインを数値で決め、正解データを用意して照合する

合格ラインを誰がいつ決めるか。評価に使う件数と正解の作り方

5. 現場での試用

現場の担当者が実際の業務の中で一定期間使う

試用の人数・期間と、意見をどう集めるか

6. 報告

結果だけでなく、失敗した条件や残る課題まで文書化する

報告書に何が書かれるか(実測値、対象外にしたもの)

7. 本開発の概算

本番化に必要な費用・期間・体制の見通しまで出す

本開発の概算見積と工程表が納品物に入っているか

金額が低い見積が、必ずしも手を抜いた見積とは限りません。データを数十件に絞る、連携はCSVの手渡しで代用する、現場試用は行わない、といった形で範囲を狭くした正当なPoCもあります。最初に「AIがこの書類を読めるか」だけを確かめたいなら、それで十分な場合もあります。問題になるのは、範囲が狭いことではなく、狭い範囲の結果で本開発の判断までしようとすることです。

とくに確認してほしいのが項目4です。合格ラインを決める作業が見積に入っていないPoCは要注意です。 合格ラインを決めずに始めると、終わってから「精度80%は高いのか低いのか」を議論し始めることになり、その議論に結論が出ないまま追加の検証を重ねて費用が膨らみます。

PoCを独立した契約として切るのは、国が推奨している進め方

「なぜ本開発と分けて、わざわざPoCだけを発注するのか」という疑問を社内で受けることがあります。これは思いつきの商習慣ではありません。

経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(平成30年6月)は、AI開発では契約の時点で性能や内容を確定できないという問題に対して、「探索的段階型開発方式」を提示しています。開発を「①アセスメント → ②PoC → ③開発 → ④追加学習」の4段階に分け、段階ごとに別の契約を結ぶという考え方です。同ガイドラインはアセスメント・PoC・開発の各段階に対応するモデル契約(秘密保持契約書/導入検証契約書/ソフトウェア開発契約書)まで示しており、PoC段階に対応するのが「導入検証契約書」です。

さらに2025年2月18日には、生成AIの普及を踏まえて経済産業省から「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(令和7年2月)が公表されています。AI利活用の実務になじみのない事業者を含め、実務上使いやすい形式で契約上の論点を整理したものです。

稟議で「なぜ一括発注ではなくPoCから始めるのか」を説明する必要があるとき、この2つはそのまま資料に引用できる一次情報です。「国のガイドラインが段階を分けて契約する進め方を示している」と書けるのは、社内で説明するときに役立ちます。

出典:経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」/経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(2025年2月18日公表)

PoCの成果物は何が納品されるのか

PoCが終わったとき、手元に何が残るのか。ここが曖昧なまま契約すると、終わったときに「レポート1冊だけだった」ということが起こります。本開発に進むかどうかを判断するために確認したいのは、次の4点です。見積書の納品物の欄に、どれが入っていて、どれが入っていないかを確認してください。

成果物

中身

何に使えるか

動く試作

実際にデータを入れて結果が出るもの。デザインや例外処理は未完成

現場に触ってもらい、使えそうかの実感を得る

評価レポート

合格ラインに対する結果。精度、処理時間、対象件数の実測値

稟議書の「効果」欄の根拠

本開発の概算見積と工程表

本番稼働までにかかる費用と期間

稟議書の「費用」欄の根拠

移行判断資料

本番に進む場合のリスク、運用体制、想定される追加コスト

経営会議での質疑への備え

判断の基準は「稟議を通すために使えるか」です。 PoCの目的は動くものを手に入れることではなく、次の投資をするかどうかを決める材料を手に入れることです。そう考えると、動く試作より評価レポートと概算見積のほうが重要になる場面もあります。

逆に、社内で「まず現場に触らせないと話が進まない」という状況なら、動く試作の完成度に予算を寄せるべきです。どちらに寄せるかを発注前に決めて伝えると、同じ予算でも成果物の中身が変わります。 ここを伝えずに発注すると、4点を薄く揃えた見積になりやすく、どれも稟議には少し足りない、という結果になりがちです。

見積書に載らない費用|自社側が出す時間の試算

PoCの費用を調べている方が見落としがちなのが、外注費とは別に自社側が出す時間です。PoC期間中、発注側は次のことをやります。

  • 対象業務の担当者へのヒアリングに立ち会う
  • 現状のデータを探して提供する(これが一番時間を食います)
  • 出てきた結果を見て、正しいか間違っているかを判定する
  • 現場に試用してもらい、意見を集める
  • 定例会に出て、方針の判断をする

生成AI型のPoCを8週間で行うと仮定した場合の試算が次の表です。週あたりの時間と時給は説明用の仮定で、実際の値は対象業務と体制で変わります。

役割

週あたり(仮定)

8週間の合計

時給(仮定)

金額換算

対象業務の現場担当者(主担当)

2〜4時間

16〜32時間

3,000円

4.8〜9.6万円

データ提供・システムの窓口担当

1〜2時間

8〜16時間

3,500円

2.8〜5.6万円

決裁者・責任者(定例と判定会議)

1時間

8時間

5,000円

4.0万円

試用に参加する現場メンバー(3〜5名)

合計2時間

合計16時間

3,000円

4.8万円

合計

—

48〜72時間

—

約16〜24万円

計算式は「各役割の合計時間 × 時給」の合算です(例:主担当 16時間×3,000円=4.8万円)。この仮定では、自社側でおよそ48〜72時間、金額にして約16〜24万円相当の時間が必要になります。外注費が300万円なら、5〜8%程度の上乗せに当たります。

金額そのものより重要なのは、この時間を空けずに発注すると期間が延びることです。データの提供が遅れると開発会社側は次の工程に入れず、待ちが発生します。時間単価で精算する契約なら、延びた分がそのまま費用に跳ね返ることもあります。契約時に「期間が延びた場合の扱い」を確認しておいてください。

対策は難しくありません。発注前に、社内で「誰が週何時間出せるか」を名前入りで決めておいてください。 「情報システム部で対応します」ではなく「◯◯さんが毎週火曜の午後2時間」まで決めておくと、データの提供や結果の判定で止まりにくくなります。業務にかかっている時間の測り方は自動化の効果測定でも解説しています。

同じ「PoC」の見積を比べる|当社の300万円〜の位置づけ

AIのPoC費用の予算を検討する場面をイメージした机上の写真

金額の違う2つの見積を受け取ったとき、どう並べればよいか。次の表は説明用の架空の例で、実在する会社の見積ではありません。

項目

見積A(範囲を絞ったPoC)

見積B(本開発の判断まで含むPoC)

データ量

手元のサンプル数十件

実データ数百件(抽出・整形を含む)

対象業務

1業務

1業務

連携

なし(CSVの手渡し)

既存システム1つと実際に接続

評価

担当者が出力を目で見て確認

合格ラインを事前に合意し、正解データと照合

現場での試用

なし

現場担当者3名で一定期間

報告

結果の簡易報告

実測値・対象外にした条件・残る課題

本開発の概算

含まない

概算見積と工程表を含む

この見積で分かること

AIがこの書類を読めそうか

本番に進むか、いくらかかるか

見積Aが安いのは、範囲が狭いからです。同じ条件で手を抜いているわけではありません。「まず読めるかだけ知りたい」なら見積Aで足ります。一方で、見積Aの結果だけで本開発の稟議を書こうとすると、連携・評価・本開発の概算が抜けたまま判断することになります。 必要な判断材料から逆算して、どちらの範囲が要るかを決めてください。

PoCの後に発生する費用も先に押さえておいてください。本番化すると、AIサービスの利用料、システムを動かす基盤の費用、保守の費用が毎月かかります。金額は利用量と構成で変わるため、PoCの報告に「本番での月額の見通し」を入れてもらうよう依頼するのが確実です。本開発と保守も含めた費用の全体像はAI受託開発の費用相場にまとめています。

当社の価格と、300万円〜という金額の位置づけ

当社の価格は次の通りです(すべて税別。クラウド・外部API・ライセンス等の実費は別)。

区分

当社の価格

位置づけ

PoC

300万円〜

検証の開始価格。本番システムの完成費用ではない

既存システムの改修・部分自動化

100万円〜

確かめるべき点がなく、直接作れる案件

本開発

個別見積

PoCの結果や要件を踏まえて見積

当社のPoCは300万円からです。上の7項目のうち何を含むかは案件ごとに異なります。当社の見積でも他社の見積でも、含むもの・含まないもの・発注側に求められる協力の時間を見積書の上で確認してください。 他社の見積と比べる場合も、金額ではなく同じ7項目で並べて比べてください。範囲を絞った低額のPoCで目的が足りるなら、そちらを選ぶのが合理的です。

当社が価格以外で重視しているのは2点です。1つは、要件が固まっていない段階から相談を受けること。 「この業務にAIが合うのかも分からない」という状態で構いません。初回相談は無料です。もう1つは、PoCが不要なら不要と申し上げること。 次章の通り、PoCより既存システムの改修や既製品で済ませたほうが良い案件はあります。

PoCで何を確かめたいのか、その結果を何の判断に使うのかが固まっていない段階でも構いません。▶ 検証したい仮説と判断材料を整理する(初回相談は無料)

開発費用の目安を出す

5つの質問に答えると、改修・PoC・本開発のどれに当たるかの目安と、次に決めることを表示します。

質問 1 / 5何をしたいですか

PoCをやらないほうがいいケース

PoCを提供する側の説明は、「PoCはやるべきもの」という前提に立ちやすくなります。実際には、PoCを飛ばして直接作ったほうが安く早く終わる案件があります。 当てはまるのは次の3つです。

1. 確かめるべき技術的な不確実性が、実質的にない場合

「できるかどうか」ではなく「やるかどうか」で止まっているだけなら、PoCで検証すべき問いはありません。たとえば、決まった形式のCSVを別の形式に変換して取り込む、毎月同じ集計をして同じ宛先に送る、といった処理です。これらは実装方法が確立しており、動くことが分かっている作業です。この場合は既存システムの改修として直接作るほうが合理的です。当社では、こうした処理をまとめた改修や、システム間のデータ連携を受託開発の既存システムの改修(100万円〜・税別)として承っています。具体例は月次レポートの自動化やデータ転記の自動化をご覧ください。

2. PoCで得られる判断に、その費用ほどの価値がない場合

PoCそのものは作業時間を減らしません。PoCは「本開発に進むかどうか」を決めるための費用で、削減効果が出るのは本開発と運用が始まってからです。そのため、対象業務の規模が小さく、本開発を含めても投資に見合わない見込みなら、PoCの前に止める判断ができます。 判定のために、まず対象業務に月何時間かかっているかを実測してください。

仮定に基づく試算で考えます。月20時間の作業を時給3,000円で換算すると、月6万円、年間72万円です(20時間×3,000円×12か月)。この業務を対象に300万円のPoCを行うと、PoCの費用だけで年間の作業額の4年分以上になり、さらに本開発と運用の費用が加わります。一方、確かめるべき点がなく100万円の改修で解消できるなら、改修費は作業額の約17か月分で、PoCの費用の3分の1です(100万円÷6万円≒16.7か月)。この比較の結論は業務の規模と時給の前提で変わるため、自社の実測値で計算し直してください。

3. 既製のサービスやノーコードのツールで足りる場合

作る前に、買って済むかを確認してください。市販のサービスで必要な機能の大半がまかなえるなら、そちらのほうが安く、早く、保守も要りません。判断の材料はノーコードとAIエージェントの違いにまとめています。

逆に、PoCをやるべきなのは次のような場合です。 対象業務の判断ルールが人によって違い、文書化されていない。扱う書類の形式がバラバラで、AIが正しく読めるか読めないかが事前に分からない。本開発の費用が大きく、いきなり全額を投じるのはリスクが大きい。この「分からない」を検証で解消し、次の大きな投資の判断を確かなものにするのがPoCの役割です。

AIで自分で試せる範囲と、PoCとして頼む範囲

ChatGPTやClaudeなどの生成AIは、書類の読み取りや分類、簡単な画面や処理の試作までかなりの部分をこなせます。「AIがこの種類の書類を読めるか」の当たりを付けるだけなら、外注する前に社内で試せることが多くあります。社内で試す場合は、利用するサービスの規約と社内規程を確認し、個人情報や機密情報は匿名化したサンプルで行ってください。

社内でAIを使って試せること

会社に頼む価値が出やすいこと

匿名化したサンプル数件〜数十件で、読み取り・分類の当たりを付ける

実データの件数と散らばり方を踏まえた評価(正解データの作成と照合)

指示文を変えて、出力の傾向を比べる

既存システムとの接続、アクセス権限、データの持ち出し方の設計

簡単な画面や処理の試作を作る

例外的なケースの洗い出しと、誤りが出たときの扱いの決定

社内向けの説明資料のたたき台を作る

合格ラインの合意と検収、本開発の概算、本番化後の変更への対応

社内で当たりを付けたうえで、自社のデータ・既存の仕組み・例外・責任の範囲が絡む部分だけをPoCとして切り出すと、検証の範囲が狭まり、見積も比べやすくなります。

当社が公開している実績

当社が受託開発で公開している実績は、次の2件です。いずれも守秘のため社名は出していません。どちらもPoCの事例として公開しているものではないため、この記事のPoC費用の根拠には使っていません。どの程度の規模・工程を担当してきたかの参考としてご覧ください。

業種

担当した内容

通信事業

数万件の請求情報の取り込み・集計と、確認用の画面

薬局

複数店舗・数千人分の記録の管理、権限の設定、確認の工程

このほか、Webシステム・業務システムの開発、既存システムの改修、画面、帳票、CSVやAPIによるシステム連携に対応しています。対応範囲の詳細は受託開発サービスのページに記載しています。

PoCから本開発へ進むかどうかの判断

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のロゴ

出典:IPA「DX動向2025」

PoCが終わったあと、本番に進むかどうかを決める場面で見るべき点は4つです。精度の数字だけで決めないでください。 精度が出ても、運用の体制や費用の見通しがなければ本番で使い続けられません。

判断の観点

具体的に見ること

進めない場合のサイン

業務への効果

削減できる時間を、月何時間という形で数字にできるか

「便利になった気がする」しか出てこない

3年間の総費用

本開発費+3年分の運用費(AIの利用料・基盤・保守)の合計と、削減額を比べる

運用費を計算していない

運用の負担

AIが間違えたとき、誰がどう気づき、どう直すかが決まっているか

誤りの対応手順が白紙

運用責任者

本番後にこの仕組みの面倒を見る人が、名前で決まっているか

「情報システム部で」としか決まっていない

とくに4つ目です。運用責任者が名前で決まっていないと、本番移行しても使われなくなるおそれがあります。 これはAIの性能とは別の、社内の体制の問題です。PoCの評価会議で必ず確認してください。

また、本番移行はPoCで検証した1部署・1工程だけに絞って始めるのが安全です。 PoCがうまくいくと、社内から「うちの部署にも」という声が上がりがちですが、ここで対象を広げると要件が発散し、費用も期間も膨らみます。まず1か所で一定期間動かして問題が出ないことを確認してから、横に広げてください。

なお、IPA「DX動向2025」(日本・米国・ドイツの企業を比較)によれば、日本企業のDXの目的と成果はコスト削減・業務効率化に偏っており、米国とドイツでは売上高や利益の増加といった成果が多いという結果が出ています(IPA DX動向2025)。PoCの合格ラインを「削減時間」だけで置くと、その先の売上への貢献が測れないまま終わります。 対象業務によっては、対応スピードや品質のばらつきといった指標も合格ラインに入れておくことをおすすめします。

相談から検証完了までの流れ

かかる期間は、対象業務の数、データの準備状況、連携の有無で変わります。期間は見積の段階で個別に確認してください。ここでは各段階で何が決まれば次へ進めるかを整理します。

段階

発注側でやること

次へ進む条件

初回相談(無料)

困っている業務と、月にかかっている時間を話す

検証したいことが言葉になっている

PoCが必要かどうかの検討

対象業務を1つに絞る

PoC・既存システムの改修・既製品のどれで進めるかが決まる

契約・体制の確定

週何時間出せるかを、担当者の名前入りで決める

7項目の範囲と協力体制が契約書・見積に書かれている

合格ラインの決定

何ができたら合格かを決裁者と合意する

合格ラインが数値で文書になっている

データの準備

対象データの提供(ここが最も遅れやすい)

検証に使うデータが揃い、提供の承認が下りている

試作の作成

途中の出力を見て、正誤を判定する

試作が評価できる状態で動いている

評価とレポート

現場での試用、意見の集約

合格ラインに対する実測値が出ている

本開発へ進むかの判定会議

前章の4つの観点で判断する

進む・止める・範囲を変えるのいずれかが決まる

最も遅れやすいのはデータの準備です。理由は技術的な難しさではなく、発注側の社内でデータの所在が分からない、あるいは提供の承認が下りないことにあります。相談前に、対象のデータがどこにあり、誰が提供を承認するかを確認しておくと進みやすくなります。

相談の時点で要件が固まっている必要はありません。対象業務が絞れていない、データがどこにあるか分からない、という状態から整理を始めても構いません。

よくある質問

Q1. PoCの費用を、その後の本開発の費用に充当してもらうことはできますか。

交渉の余地はあります。同じ会社に本開発を発注する場合、PoCで作った設計や試作コードの一部がそのまま本開発に使えるため、その分を本開発の見積から差し引く形での調整は実務上あり得ます。ただしこれは商習慣であって標準ではないため、こちらから切り出さなければ提案されないこともあります。 交渉するなら、PoCの契約前が確実なタイミングです。「本開発を貴社に発注した場合、PoC費用の一部を充当いただけますか。可能な場合、その条件を契約書に記載できますか」と質問し、口頭の合意で終わらせず契約書に残してください。

Q2. PoCで期待した結果が出なかった場合、その費用は無駄になりますか。

無駄にはなりません。ただしそう言い切れるのは、開始前に合格ラインを決めていた場合に限ります。 「精度70%が合格ラインだったが55%だった」と分かれば、それは「この方法では現時点で難しい」という確定情報であり、大きな本開発費を投じる前に止められたという意味があります。加えて、検証の過程でデータの不備や業務ルールの曖昧さが見つかれば、それは別の手段を採る場合にも使えます。一方、合格ラインを決めずに始めていると、結果が良いのか悪いのかを誰も判定できず、報告書だけが残ります。PoCが無駄になる原因は結果ではなく、判定基準の欠如です。

Q3. 社内のデータが整理されていませんが、PoCを始められますか。

始められます。むしろ整理されていない状態が普通です。ただし、それが費用に反映されることは知っておいてください。データの準備は、見積の中で最もブレ幅が大きくなりやすい部分です。見積を安定させたいなら、相談前に3点だけ確認してください。①対象のデータがどのシステムに入っているか、②どの形式で取り出せるか(CSV/Excel/PDF/紙)、③いつからのデータが何件あるか。この3点が分かるだけで、概算の精度が変わります。 分からない場合は「分からない」とお伝えいただければ、その確認から一緒に行います。なお、紙とFAXが起点になっている業務は、AIの前に電子化の検討が必要になることがあります。その場合はそう申し上げます。

Q4. PoCは複数社に同時に依頼して、結果を比べるべきですか。

同時並行はおすすめしません。発注側の工数がおおむね社数倍になり、前述の試算(1社で48〜72時間)なら2社で96〜144時間になります。現場が疲弊してPoC自体の質が落ちます。比べるならPoCそのものではなく、PoCの提案内容を複数社で比較してください。 比較のポイントは金額ではなく、①合格ラインの決め方を提案に書いているか、②この記事の7項目のどれを含み、どれを含まないかが明記されているか、③発注側に週何時間の協力を求めるかが書かれているか、の3点です。この3点が書かれていない提案は、後から範囲や追加費用の認識がずれやすくなります。

Q5. 補助金は使えますか。

PoCや受託開発そのものは、原則として対象外です。 現行の「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金」(通称:デジタル化・AI導入補助金2026、旧・IT導入補助金)は、事務局に登録されたITツールの導入を対象とする制度であり、個別に開発するシステムやPoCは対象になりません。公式サイトで公表されている次の締切は、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠・複数者連携デジタル化・AI導入枠のいずれも2026年10月30日(金)17:00(交付決定 2026年12月10日(木)予定)です(公式スケジュール・2026年10月8日確認)。これより後の回は、確定した回から順次公表される運用です。制度は年度ごとに変わるため、最新の締切はAI導入補助金の締切、対象になるツールの範囲はAI導入補助金の対象をご確認ください。

Q6. 補助金が使える場合でも、資金は先に用意する必要がありますか。

必要です。補助金は原則として後払いで、交付決定後に事業を実施し、実績報告を出し、確定検査を経てから入金されます。上記の回では、事業実施と実績報告の期限が2027年5月31日(予定)とされており、入金はそれより後になります。その間、費用は自社で立て替えることになります。PoCの費用を補助金前提で計画すると、資金繰りに行き詰まります。詳しい時間軸は補助金の入金時期にまとめています。

Q7. PoCの契約は、通常のシステム開発と同じ契約書でよいですか。

分けることをおすすめします。通常のシステム開発の契約書は「発注した仕様どおりのものが完成すること」を前提に作られていますが、PoCはそもそも「できるかどうか分からない」ことを確かめる工程なので、完成義務を負わせる契約形態はなじみません。経済産業省のガイドラインも、PoC段階には「導入検証契約書」という専用のモデル契約を用意しています。契約書で最低限確認すべきは、①検証で得られたデータや試作物の権利が誰に帰属するか、②期待した結果が出なかった場合の扱い、③提供したデータの利用範囲と検証終了後の取り扱い、の3点です。とくに③は、自社の業務データを外部に渡す以上、必ず書面で確認してください。

Q8. 社内にAIに詳しい人がいませんが、PoCの窓口は誰にすべきですか。

技術に詳しい人ではなく、対象業務の現場を分かっている人が適任です。PoC期間中に多く発生するのは「この場合はどう処理していますか」という業務の確認だからです。情報システム部門の担当者が単独で窓口になると、業務の質問に答えられずに毎回持ち帰ることになり、それだけで時間が失われます。おすすめの体制は、現場の責任者を主担当、情報システム部門をデータ提供の副担当とし、そこに決裁権のある責任者が定例に出る形です。この3者が揃っていれば、社内にAIの専門人材がいなくてもPoCは回ります。

AIのPoC費用でお悩みの方へ

AIのPoC費用は、データ量、対象業務の数、連携の数、評価の方法、現場での試用、報告、本開発の概算をどこまで含むかで変わります。金額の高い・安いではなく、その範囲で何が分かり、本開発の判断に足りるかで見積を比べてください。外注費とは別に、自社側の時間(この記事の仮定では8週間で48〜72時間)も必要です。

  • PoCの見積を受け取ったが、この範囲で本開発の判断ができるのか分からない
  • 各社の見積の金額が大きく違い、何が違うのか分からない
  • そもそもPoCが必要な案件なのか、既存システムの改修や既製品で済むのかが分からない

このいずれかに当てはまるなら、ご相談ください。初回相談は無料で、要件が固まっていない段階でも構いません。当社の価格はPoC 300万円〜、既存システムの改修 100万円〜、本開発は個別見積(すべて税別。実費は別)です。

ご相談の際は、①検証したい業務の内容、②その業務に月何時間かかっているか、③関係するシステムの名前、の3点をお聞かせください。手元に他社の見積がある場合は、何を含む見積なのかを整理する相談としてお使いいただいても構いません。PoCが不要で既存システムの改修や既製品で足りると判断した場合は、そう申し上げます。なお、初回のお問い合わせフォームには、本番の認証情報や実際の顧客データは書かないでください。

▶ 検証したい仮説と判断材料を整理する(初回相談は無料)

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