RPA保守コストが高い理由と年間総額の計算方法|AIエージェントとの費用比較【2026年9月最新】

この記事のポイント
RPAの保守コストはライセンス費の約2倍、中堅企業の標準構成で年間220〜270万円です。請求書に出ない人件費の内訳、ツール別の保守の乗り方、AIエージェント(初期100万円+月10万円〜)に移すと安くなる条件を数字で解説します。
RPAの保守コストは、ライセンス費に社内の人件費と修正費を足すと、中堅企業でよくある構成(WinActor1台・社内担当1名)で年間約220〜270万円、ライセンス費の約2倍になります。その半分以上は請求書に出ない社内の人件費で、毎月繰り返す定型業務なら保守込みで月額10万円〜(初期100万円・税別)のAIエージェントに移したほうが安くなる一方、Windows 11に同梱された無償のPower Automateで月5万円以下に収まっている業務は移さないほうが得です。
この記事では、保守コストが何で構成されているか、なぜライセンス費の何倍にもなるのか、ツール別に保守がどこに乗っているかを整理したうえで、年間総額とAIエージェントへ移した場合の投資回収を同じ式で計算します。RPAを全部やめるべきだという話ではありません。RPAのまま残したほうがよい業務も数字で示します。なお、「ロボットが止まる原因の切り分け」そのものは姉妹記事のRPAが動かない原因と対処法で扱っているため、本記事は費用に絞ります。
RPAの保守コストのどこに時間とお金がかかっているか

出典: 日立ソリューションズ 公式サイト
「RPAの保守」と聞くと、ベンダーに払うサポート費を思い浮かべる方が多いのですが、現場で実際に発生している作業は次の6つです。ラディックス、コクー、日立ソリューションズなどRPAベンダー各社が公開している保守作業の一覧を統合しました。
作業 | 発生するタイミング | 1回あたりの目安 |
|---|---|---|
停止の検知と原因の切り分け | ロボットが止まるたび | 数十分〜半日 |
ロボットの手順(シナリオ)の修正と再テスト | 操作する画面や帳票が変わるたび、業務手順が変わるたび | 半日〜2〜3日 |
止まっている間の手作業での代替処理 | ロボットが止まるたび | 業務量による |
OS・ブラウザ・RPAツール更新後の動作確認 | 月次〜四半期 | 半日〜1日 |
ロボット台帳・設計書の更新、担当交代時の引き継ぎ | 随時 | 放置されがち |
監視・実行ログの確認 | 毎日 | 15〜30分/日 |
このうち、請求書という形で会社に見えるのはベンダー委託分だけです。残りは担当者の勤務時間の中に溶けています。
「例外」と「変更」の2種類が、事前通知なしにやってくる
日立ソリューションズの公式コラムは、ロボットが止まる要因を2種類に分けています。1つは「例外」で、操作対象の画面のボタン仕様が変わった、ダウンロードされるファイルの拡張子が変わった、利用中のクラウドサービスがアップデートされた、といったパソコン環境の変化です。これらは事前通知がないため防ぎようがなく、起きるたびに手順を直すしかありません。もう1つは「変更」で、業務の手順や成果物(集計表に列が増えた等)が変わることによるものです。こちらは自社起因なので予告はできますが、修正時に「手本がない」状態になりやすく、ミスが起きやすいと同コラムは指摘しています。
どの程度の頻度で起きるのか。RPAベンダーのユーザックシステムが公開している顧客事例(丸善)では、画面の見た目を頼りに操作するタイプのRPAで「月に数回シナリオが中断し、その都度2〜3日の検証と微調整」が発生していました。同社が公開している失敗例には「メンテナンス工数が想定の3倍になった」「月10時間しか削減できない業務に年100万円を投じていた」というものも含まれています。
保守を担っているのは、半分近くがIT部門ではない
保守コストが見えにくい最大の理由は「誰がやっているか」にあります。日立ソリューションズが掲載しているストロボ社の調査(2020年1月・200名)では、RPAを管理・運用している人の職種はITエンジニアが約3割で、事務・総務・法務が24%、営業が15%でした。つまり半数近くは本来別の仕事を持つ人の兼務です。兼務者がロボットの世話に使った時間は、どの予算科目にも計上されません。「RPAの保守費」を訊かれた経営者がライセンス費しか答えられないのは、この構造のせいです。
RPAの保守コストが高い理由は5つ

出典: UiPath 公式サイト
保守コストが高くなるのは運用の巧拙ではなく、RPAという道具の構造によるものです。理由は5つに整理でき、それぞれ一次情報で裏付けられます。
理由1:画面の見た目に依存しているため、変更のたびに人が直す
RPAは「この位置にあるボタンを押す」「この項目名の欄に入力する」という形で画面を認識します。ボタンの位置や項目名が変われば止まり、直すのは人です。ベンダー側もこの弱点を認めていて、UiPathは画面変更に自動で追従する機能(Healing Agent)を2025年9月に提供しましたが、法人向けの最上位プラン(Enterprise)限定です。NTT-ATのWinActorは2026年9月販売開始のVer.7.7.0で、エラーの疑問に生成AIが答える「AIヘルプ」を搭載しましたが、AI連携機能を含むライセンスはフル機能版で年2,197,800円(税込)と、通常版(1,098,680円)の2倍です。安いプランほど、保守は人力のままです。
理由2:ライセンスは年額固定で、毎年同じ金額が続く
WinActorのライセンスは1年契約で、更新時には購入時と同額が毎年発生します(販売代理店のFAQで明記)。買い切りではありません。しかも2025年1月1日に全製品が約10%値上げされました(フル機能版 998,800円→1,098,680円)。使用頻度が下がったロボットにも、止まっていて直せていないロボットにも、同じ額を払い続けることになります。修正を外注していれば、1回5〜15万円(BizteX公開の相場)が都度加算されます。
理由3:保守が「人」に紐づいている
ロボットの中身を知っているのは作った人だけ、という状態が起きやすい道具です。RPAベンダーBizteXの2024年調査(RPA導入企業862名・ベンダー自社調査)では、全社展開できない理由の2位が「RPAスキル人材が一部部門にしかいない」(47.4%)でした。Power Automateにはさらに明確なリスクがあります。Microsoft公式のライセンスFAQ(2026年8月14日更新)によれば、フロー(Power Automateでのロボットの手順の呼び名)の所有者が退職してライセンスを失うと、そのフローは性能低下ののち14日以内に停止します。退職者のアカウントで動いていたロボットは、退職と同時に保守の対象から消えるのではなく、業務ごと止まります。
理由4:ロボットの本数が増えるほど、保守は本数以上に増える
ロボット同士が同じシステムを操作し、同じ帳票を参照していると、1つの画面変更が複数のロボットを同時に止めます。ユーザックシステムの事例(フランソア)では、200本を超えていたロボットの手順(スクリプト)を100本に精査した結果、エラー件数が3分の1に減り、復旧時間が30分から5分に短縮されました。裏を返せば、精査前は本数に対して不釣り合いな保守が発生していたということです。Deloitteの2018年の国際調査(回答530名)でも、50体を超えるロボットを運用できている組織は4%にとどまっていました。
理由5:コストの大半が「人件費」に隠れて、請求書に出ない
理由1〜4の結果として発生する作業の多くを、兼務の担当者が勤務時間内で処理しています。ベンダーからの請求書には出てきません。ストロボ社の2021年2月の調査(100名)では、RPA導入企業の93%がツールの追加・変更を検討または実施済みで、根本原因として「ロボットが停止する」「設定の柔軟性が足りない」が挙がっています。満足度も、2020年1月の同社調査で「満足」は約40%でした。「入れたのに手間が減らない」と感じている会社は、少数派ではありません。
2026年は「変更」の頻度そのものが上がる
理由1の前提となる画面の変更は、これから増えます。Chromeは2026年9月8日のバージョン153から、安定版の更新周期が4週間から2週間に短縮されます。ブラウザを操作するロボットは、更新のたびに止まる可能性がある回数が単純計算で倍になります。Windows 10のサポートは2025年10月14日に終了し、Windows 11への移行に伴うパソコンの入れ替えと再設定が各社で進行中です。RPAツール自体もWinActorで年1回のバージョンアップがあります。保守コストは、放っておいても下がる方向にはありません。
RPAの保守コストを年間総額で見る|月何時間×人件費で試算する

ここからが本題です。ライセンス費しか見えていない状態を、年間総額に直します。式は次のとおりです。
RPAの保守コスト(月)= ライセンス費 + 社内担当者の対応時間 × 時給 + 外注の修正費・保守委託費
前提として、次のような構成を想定します。時給と時間は仮定なので、後述の式にご自身の数字を入れてください。
- ツール:WinActorノードロック(1台のパソコンに固定するタイプ)・フル機能版。年1,098,680円(税込・NTT-AT公式・2026年9月時点)=月約91,600円
- 社内担当者:兼務1名。毎日の監視(15〜30分)と、月1回程度の停止対応・更新後の動作確認を合わせて月20時間
- 時給:3,000円換算(社会保険料等を含んだ会社負担ベースの目安)
- 外注の修正:年4回、1回10万円(BizteX公開の相場「1回5〜15万円」の中央値)
パターン | 構成 | 月額の内訳 | 月額合計 | 年間総額 |
|---|---|---|---|---|
A:社内対応+修正のみ外注 | WinActorフル機能版1台 | ライセンス 91,600円 + 社内 20時間×3,000円=60,000円 + 外注修正 40万円÷12=33,300円 | 約18.5万円 | 約222万円 |
B:保守委託あり | 同上+ベンダー保守契約 月10万円 | ライセンス 91,600円 + 保守委託 100,000円 + 社内 10時間×3,000円=30,000円 | 約22.2万円 | 約266万円 |
C:無償のPower Automateで社内対応 | Windows 11同梱版(人がログインしている間だけ動く・他の人と共有できない) | ライセンス 0円 + 社内 15時間×3,000円=45,000円 | 約4.5万円 | 約54万円 |
D:Power Automate 無人実行 | Processライセンス 22,488円/ボット(ロボット1体)/月(税抜・Microsoft公式) | ライセンス 22,488円 + 社内 8時間×3,000円=24,000円 | 約4.6万円 | 約56万円 |
※ WinActorは税込、Power Automateは税抜の公式表示価格です。金額はすべて2026年9月時点。
パターンAで年間総額はライセンス費の約2倍、パターンBでは約2.4倍になります。第三者のRPA解説サイトには「保守運用費はライセンス費の10〜30%」「トータルコストはライセンスの2〜5倍」という目安が載っていますが、社内の人件費まで数えると、この試算でも下限ではなく2倍の側に着地しました。
同じ業務をAIエージェントに移した場合との差額と投資回収
同じ定型業務を、当社のシゴハヤエージェントに移した場合の費用は、初期100万円(税別)+月額10万円(税別・10名規模の処理量)です。操作対象の画面や帳票が変わったときの追従と、止まったときの復旧は当社が月額の範囲内で行います。社内で直す人を置く必要はなく、外注の修正費も発生しません。
- Before(パターンA):担当者が月20時間をロボットの監視・切り分け・修正・更新後の確認に使い、年4回の外注修正とライセンスを合わせて月約18.5万円
- After:担当者の作業は処理結果の確認と承認のみ。変更追従・復旧込みで月10万円
- 月の差額:約8.5万円
- 投資回収:初期100万円 ÷ 8.5万円 ≒ 約12ヶ月
パターンB(保守委託あり)なら差額は月約12.2万円で、回収は約8ヶ月です。
3年間の総額で比べると、パターンAが約666万円、パターンBが約798万円に対し、シゴハヤエージェント(10名規模)は100万円+10万円×36ヶ月=460万円です。
自社の数字で計算するときは、次の式を使ってください。
回収月数 = 初期費用100万円 ÷(現状の月額保守コスト − 乗り換え後の月額)
ここで現状の月額保守コストには、必ず「担当者の対応時間×時給」を入れてください。それを入れずにライセンス費だけで比べると、乗り換えの判断を誤ります。
乗り換えないほうがよいケースも同じ式で分かる
パターンCとDは、月4.5〜4.6万円で回っています。月額10万円のAIエージェントに移すと、月のコストはむしろ増えます。この場合は移さないでください。無償版のPower Automateで、担当者1人が有人で動かし、停止が月1回・復旧が1日以内で済んでいるなら、それは既に十分安い自動化です。乗り換えの検討対象になるのは、ライセンス費と人件費を足して月10万円を明確に超えている業務、または担当者が抜けた時点で止まる業務です。
姉妹記事では「月2回止まって復旧に2日かかる」パターン(月40時間・回収約9ヶ月)で試算しています。停止頻度が高い場合はそちらの数字のほうが実態に近いはずです。
ツール別・保守コストはどこに乗っているか(2026年9月時点)

出典: マクロマン 公式サイト
同じ「RPAの保守」でも、ツールによって費用がどこに乗っているかが違います。ライセンスに含まれる「製品保守」と、自社で作ったロボットの「シナリオ保守」を分けて見ないと、比較を誤ります。公式サイトで確認できた価格のみ記載し、確認できなかったものは「要問い合わせ」としています。
ツール(国内シェア※) | ライセンス(公式) | 保守はどこに乗っているか | 画面変更への自動追従 | 担当者が抜けたときの影響 |
|---|---|---|---|---|
WinActor(中堅・大手2位) | フル機能版 1,098,680円/年、実行版 300,080円/年(税込・PC1台) | 年間ライセンスにメーカーサポート込み。ただし範囲は「マニュアルの問合せ・製品仕様・不具合修正版の提供」のみ。自社シナリオの修正は含まれず、販売代理店の有償サポートを別契約 | AI連携ライセンス(2,197,800円/年)とAIヘルプはあるが、修正作業は人 | シナリオが属人化しやすい |
Power Automate(中堅・大手1位、中小同率1位) | Premium 2,248円/ユーザー/月、Process(人がいなくても動く無人実行)22,488円/ボット(ロボット1体)/月(税抜)。Windows 11同梱の有人版(人が操作中のパソコンでのみ動く)は無償 | Microsoftの製品サポートのみ。シナリオ保守は自社 | 標準では自動追従なし | 所有者のライセンス失効で14日以内にフロー停止(公式FAQ) |
UiPath(中堅・大手3位) | Basic 25ドル/月〜(個人向け・ロボット2体まで)。Standard・Enterpriseは要問い合わせ | プランによる | Healing Agent(Enterprise限定) | パートナー契約の有無による |
BizRobo! Basic | 792万円/年(税別)+初期費用。同時実行1〜10・開発10ユーザー | サーバー型(1台のサーバーで複数のロボットを集中管理する方式)。シナリオ保守は自社または導入パートナー | 公式で確認できず | — |
マクロマン(中小同率1位) | ツール本体0円。スタンダード 月5万円+初期10万円、プレミアム 月10万円+初期20万円(税抜) | ライセンス無料で、保守サポートが料金の本体。ヘルプデスク・月1回相談・上位プランでカスタム開発 | 公式で確認できず | サポート契約があれば軽減 |
ロボパットAI(中小3位) | 公式サイトに価格非掲載(公式マガジンに「初期・保守費用無料、月額ライセンスのみ、月単位契約」) | 月額に含まれる範囲は要問い合わせ | 2026年3月にAIアドバイザー機能を追加(詳細は要確認) | — |
シゴハヤエージェント(当社) | 初期100万円+月額10〜50万円(税別)。10名規模で月10万円、30名規模で月20万円 | 画面・帳票の変更追従と停止時の復旧を当社が月額内で実施 | 画面操作への依存を最小化した設計。変更時の修正は当社側 | 当社が保守するため担当者依存なし |
※ シェアはMM総研「RPA国内利活用動向調査2024」(2024年3月時点・1,599社)。同調査ではRPA導入率が中小企業(年商50億円未満)で15%、中堅・大手で44%です。2025年版の公開は確認できていません。
この表から読み取れることは2つあります。1つは、どのRPAでも「自社で作ったロボットを直す責任」は自社に残ることです。年間ライセンスに含まれる保守は製品そのものの保守であって、御社のロボットの保守ではありません。もう1つは、画面変更への自動追従はどのベンダーも上位プラン・追加費用の扱いであり、中堅・中小企業が使う価格帯では基本的に人が直す前提だということです。
自動化できる業務・できない業務の境界線
保守コストが高いからといって、すべてをAIエージェントに移せるわけではありません。AIエージェントに移して保守コストごとなくせる業務と、移せない業務、RPAのまま残したほうがよい業務の3つに分けます。
AIエージェントに移せる(適用できる) | 移せない(適用できない) |
|---|---|
毎日・毎週・毎月、決まった周期で繰り返す | 年に数回、不定期にしか発生しない |
入力も出力もデジタルで完結する(業務システム・ファイル・メール・チャット) | 紙・FAX・対面が起点になっている |
判断のルールを文章に書き出せる(表記ゆれの解釈や条件分岐を含む) | 毎回、担当者の裁量や交渉が必要 |
複数のシステムをまたいで転記・照合・集計する | 最終決裁をAIに委ねたい |
結果を人が確認して承認する運用でよい | 誤った場合に取り返しがつかない処理を無人で完結させたい |
具体的には、月次レポートの作成と配信、システム間のデータ転記、Excel集計、受発注データの照合といった業務は、RPAが担っていることが多く、AIエージェントに移しやすい種類です。紙の書類が起点の業務は、OCRで基幹システムに登録する自動化のように紙を取り込む段階から設計し直す必要があり、単純な乗り換えにはなりません。
RPAのまま残してよい業務
次の条件に当てはまるなら、無理に移す必要はありません。
- 1つのシステムの中で、同じ操作を大量に繰り返すだけの処理で、この1年止まっていない
- 無償版のPower Automateで、担当者1名が有人で動かしている
- ライセンス費と担当者の対応時間を足して、月5万円以下に収まっている
- 操作対象が自社開発のシステムで、画面の変更時期を自社でコントロールできる
逆に、「複数システムをまたいでいる」「画面や帳票の変更で月に何度も止まる」「作った人がいない」のいずれかに当てはまるロボットは、移す候補です。RPAとAIエージェントは併用できるので、ロボット1本ごとに判断してください。
RPAの保守コストを下げる方法は3つある
保守コストを下げる方法は、大きく3つです。それぞれ費用と限界をフラットに並べます。
方法①:保守を内製のまま軽くする
費用は担当者の時間だけで、追加の支出はありません。効果が確認されている打ち手は次の4つです。
- ロボット台帳を作る:ロボット名・用途・作成者・使っているIDとパスワード・直近の停止日・復旧にかかった時間を1枚にまとめる。「停止回数」と「復旧時間」の列を足すだけで、どのロボットが保守費を食っているかが見える
- 止まったことに気づく仕組みを入れる:処理完了時にメールを送り、決まった時刻までに届かなければ管理者に通知する。RPA運用支援会社の公開ブログには「止まっていたことに1週間気づかなかった」例が出ています
- 本数を減らす:似た処理をしているロボットを統合する。前述のとおり、200本超を100本に精査してエラーが3分の1になった事例があります
- 環境の変更時期を自社で握る:Windows Updateの適用時間を業務時間外に固定する、Chromeは更新間隔が8週間の法人向け版(Extended Stable)に切り替える
限界は、「直す人がいない」問題は解決しないことです。台帳を作っても、画面が変われば誰かが直さなければなりません。止まる原因ごとの直し方はRPAが動かない原因と対処法にまとめています。
方法②:保守を外注する
社内に直せる人がいない場合の現実的な選択肢です。2026年9月時点で事業会社が公開している相場は次のとおりです(いずれも税別・公式価格ではなく各社コラムの公開値)。
形態 | 相場 | 出典 |
|---|---|---|
ベンダーへの保守委託(月額) | 月5〜30万円 | BizteX |
スポットのサポート | 5,000円/時〜 | ラディックス |
シナリオ修正(都度) | 1回5〜15万円 | BizteX |
シナリオ開発(新規) | 1本15〜50万円 | BizteX |
常駐エンジニアの委託 | 月60〜150万円 | コクー、ラディックス |
注意点は2つあります。1つは、外注してもライセンス費と社内の窓口対応は残ることです(前述のパターンBが約22.2万円/月になる理由です)。もう1つは、外注先の担当者交代で同じ属人化が起きることです。設計書を納品物として必ず受け取ってください。
方法③:保守ごとAIエージェントに移す
RPAを直し続けるのではなく、その業務をAIエージェントに引き継がせ、変更追従と復旧の責任をベンダー側に移す方法です。当社のシゴハヤエージェントは初期100万円(税別)+月額10〜50万円(税別)で、保守は月額に含まれます。導入は標準1〜2ヶ月です。
ただし、AIエージェントにも正直に書くべき制約があります。
- Gartnerは2025年6月、エージェント型AIプロジェクトの40%超が2027年末までに中止されると予測しました。理由はコスト増大、価値の不明確さ、リスク管理の不足です。既存のRPAを「AIエージェント」と呼び替えただけの製品(同社の言う「agent washing」)にも注意が必要で、中身がRPAなら保守の構造は変わりません
- RPA導入企業375名を対象にしたTISI社の調査(2026年7月・マイナビTECH+掲載のPR記事)では、推進側の60.8%が「課金体系によるコスト管理の難しさ」、67.2%が「AIの出力の検証・修正の仕組みづくり」を課題に挙げています。現場側では51.6%が「スキルの空洞化」を懸念しています
- AIシステムの保守運用も無料ではありません。第三者の相場では、保守対応が月10〜50万円、AIモデルの運用が月10〜100万円とされます。当社の場合は月額に保守を内包しているため別途費用は発生しませんが、他社に依頼する場合は「保守は月額に含まれるか、別契約か」を必ず確認してください
AIエージェントという言葉自体の意味や、RPAとの違いはAIエージェントとはで解説しています。
費用の目安|RPAを持ち続ける場合とAIエージェントに移す場合を同じ表で

出典: AI革命 公式サイト
3つの方法を、前述の試算と同じ前提(時給3,000円)で並べます。
選択肢 | 初期費用 | 月額 | 保守(変更追従・復旧)の責任 | 3年総額の目安 |
|---|---|---|---|---|
①RPAを社内保守+修正のみ外注(パターンA) | 0円(既存) | 約18.5万円 | 自社+外注(都度) | 約666万円 |
②RPA+保守委託(パターンB) | 0円(既存) | 約22.2万円 | 委託先(ライセンス・社内窓口は残る) | 約798万円 |
無償Power Automateで社内保守(パターンC) | 0円 | 約4.5万円 | 自社 | 約162万円 |
③シゴハヤエージェント(10名規模) | 100万円 | 10万円 | 当社 | 460万円 |
③シゴハヤエージェント(30名規模) | 100万円 | 20万円 | 当社 | 820万円 |
※ WinActorは税込、Power Automateは税抜、当社は税別の表示価格が混在しています。正確な比較は見積時に揃えます。
処理量が多く30名規模(月20万円)になる場合、3年総額はパターンBとほぼ並びます。この場合の判断は費用差ではなく、「担当者が抜けても止まらない体制を月額で買うかどうか」です。逆に10名規模で収まる業務なら、パターンA・Bのどちらからでも3年で200〜340万円の差が出ます。
シゴハヤエージェントの月額は処理量に連動し、月1,000万〜1.2億トークン(AIが処理する文字量の単位)の枠が含まれているため、通常の定型業務で従量課金が青天井になることはありません。料金の詳細と処理量の目安はシゴハヤエージェントのサービスページに記載しています。現状の保守コストの試算は、無料相談の段階でこちらから提示します。
実際にやった事例|調剤薬局のケースで保守費がどう消えたか
当社が支援した調剤薬局のケースです(守秘のため社名は非公開です)。姉妹記事では業務の中身を紹介しましたが、ここでは「保守にかかっていた手間がどこに消えたか」に絞って書きます。
課題
複数店舗を展開する調剤薬局で、レセプトコンピュータ(保険請求用のシステム)、在庫管理システム、本部の集計用Excelが別々に動いており、各店舗から上がるExcelを本部が週次で整形・集計していました。店舗ごとにExcelの書式が微妙に違い、項目名が「錠数」「数量」「個数」とばらつき、列の並びも揃っていません。RPAで組む場合、店舗ごとに別のロボットを作れば店舗数分の保守が発生し、書式を全店で統一させれば現場に負担がかかって結局守られない。どちらを選んでも、書式が少し変わるたびに誰かが直す保守が本部に残る構造でした。
作ったもの
各店舗のファイルとシステム上のデータを自動で取得し、本部の集計フォーマットに揃えて統合する仕組みを構築しました。項目名の表記ゆれはルールとして定義して吸収し、ルールで判断できないデータだけを「要確認」として本部担当者のチャットに通知します。統合後の差異チェックまで自動で行い、日次レポートとして配信します。店舗が書式を少し変えても、ロボットのように止まるのではなく、解釈できる範囲は処理し、できない部分だけを人に回す設計です。
何がどう変わったか
保守の観点で消えたものは3つです。第一に、店舗ごとの書式変更に合わせて手順を直す作業がなくなりました。表記ゆれの吸収はルールとして持たせてあるため、新しいゆれが出ても「要確認」に回るだけで、処理全体は止まりません。第二に、止まったことに気づくための監視が不要になりました。処理が完了しなかった場合はその時点で担当者と管理者に通知が届く設計を標準にしているためです。第三に、構築後の変更対応と復旧は当社側の責任になったため、本部に「直せる人」を確保し続ける必要がなくなりました。本部担当者の仕事は、週次の整形・集計から、日次で上がってくる結果の確認と例外対応だけになっています。
医療機関やインフラ企業でも、複数システムをまたぐ照合・転記の自動化を同じ考え方で手がけています。
導入までの流れと期間
RPAからの乗り換えは、標準で1〜2ヶ月です。今動いているRPAは、移行が終わるまで止めません。
段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
① 現状の棚卸し(無料相談) | ロボット台帳(なければこの場で作成)、ライセンスの更新日、停止頻度、担当者の対応時間を確認し、現状の月額保守コストを試算 | 1〜2週間 |
② 対象業務の選定と見積 | 試算で「移したほうが安い」業務だけを対象にする。RPAのまま残す業務も明示する | 1週間 |
③ 構築 | 業務の判断ルールを文章に落とし、AIエージェントを構築。既存のシナリオがあれば手順書として参照 | 3〜5週間 |
④ 並走運用 | 既存のRPAとAIエージェントを同時に動かし、結果を突き合わせる | 2週間 |
⑤ 本稼働・RPA停止 | 差異がなくなってから切り替え。移行したロボットのライセンスは次回更新で解約 | — |
保守コストの観点で1つ助言があります。年間ライセンスの更新日から逆算して、3ヶ月前には①を始めてください。更新直後に移行すると、使わないライセンスに1年分を払うことになります。①の段階で移さないほうがよいと判断した場合は、その旨をお伝えして終わります。契約が発生するのは②の見積に合意してからです。相談はシゴハヤエージェントのページから受け付けています。
よくある質問
Q1. 販売代理店との保守サポート契約を解約すると、RPAはどうなりますか?
ロボットは動き続けます。解約されるのは「問い合わせや修正を依頼できる権利」であって、ライセンスではありません。ただしWinActorのように年間ライセンスにメーカーサポートが含まれている場合でも、その範囲は製品仕様の問い合わせと不具合修正版の提供のみで、御社のロボットの修正は対象外です。保守契約を切るなら、画面変更のたびに誰が直すかを先に決めてください。決められないまま切ると、最初の停止で手作業に戻ります。
Q2. RPAベンダーのAIによる自己修復機能を使えば、保守コストは下がりますか?
下がる可能性はありますが、条件付きです。2026年9月時点で、UiPathの自動追従機能はEnterpriseプラン限定、WinActorのAI連携ライセンスは通常版の2倍の価格です。追加費用がライセンス費に上乗せされるため、「自己修復で減る人件費」が「上乗せ分」を上回るかを計算してください。ロボットが月に数回止まり、復旧に2〜3日かかっているなら上回りやすく、年に数回しか止まらないなら上回りません。MM総研の2024年3月の調査では、生成AIとRPAを組み合わせて本格活用している企業は10%でした。
Q3. AIエージェントの月額は、処理量が増えると青天井になりませんか?
当社の場合はなりません。月額は処理量に応じた段階制(10名規模で月10万円、30名規模で月20万円)で、各段階に月1,000万〜1.2億トークンの処理枠が含まれています。通常の定型業務がこの枠を超えることは想定していません。他社サービスを検討する場合は、「月額に処理量の上限が含まれているか」「超過時の単価はいくらか」「契約中に単価を変更できる条項があるか」の3点を確認してください。RPA導入企業の調査で推進側の6割が「課金体系によるコスト管理の難しさ」を挙げているのは、この確認が抜けているケースが多いためです。
Q4. 移行期間中は、RPAのライセンスとAIエージェントの月額を二重に払うことになりますか?
並走運用の期間(標準2週間)は重なります。ただし初期費用100万円には構築と並走運用が含まれるため、月額10万円が発生するのは本稼働からです。RPA側のライセンスは年契約なので、契約期間の途中で解約しても返金はないのが一般的です。二重払いを最小にするには、ライセンス更新日の3ヶ月前に相談を始め、更新日に合わせて本稼働させるのが最も無駄がありません。
Q5. 今のRPA担当者は、移行後に不要になりますか?
不要にはなりません。役割が変わります。RPAの手順を直す仕事はなくなりますが、AIエージェントが「要確認」として回してきた例外の判断、処理結果の承認、業務ルールが変わったときの当社への連絡は、業務を分かっている人にしかできません。むしろ、RPAのシナリオを作った担当者は業務の手順を最も正確に把握している人なので、②の対象業務の選定と③の判断ルールの文章化で中心になっていただきます。「スキルの空洞化」を懸念する声は現場の半数にありますが、消えるのは「ロボットを直すスキル」であって「業務を判断するスキル」ではありません。
Q6. RPAの保守コストは、社内でどう計上・管理すればよいですか?
最低限、ロボット台帳に「月の停止回数」「復旧にかかった時間」「対応した人」の3列を足してください。これに時給を掛ければ、請求書に出ない保守コストが月単位で見えます。ライセンス費は「ソフトウェア利用料」として計上されていても、この人件費はどこにも出ていないのが普通です。3ヶ月分を記録すれば、本記事の式で年間総額と乗り換えの投資回収を自社の数字で計算できます。当社の無料相談でも、まずこの3列の記録があるかを伺います。
Q7. IT導入補助金などは使えますか?
制度は年度ごとに対象や締切が変わるため、この記事では断定しません。相談時点での公募状況を確認したうえで、使える可能性があればご案内します。補助金の有無で判断するより、本記事の式で「補助金なしでも12ヶ月以内に回収できる業務」を先に選ぶほうが、結果的に失敗しません。
RPAの保守コストを「ライセンス費だけ」で見ていた方へ
RPAの保守コストは、ライセンス費に社内の対応時間と修正費を足して初めて実額になります。中堅企業の標準的な構成で年間220〜270万円、ライセンス費の約2倍です。そのうち請求書に出るのは半分以下で、残りは兼務の担当者の時間に隠れています。
- ライセンス費と担当者の対応時間を足すと、月10万円を明確に超えている
- 画面や帳票の変更で止まるたびに、直す人を探している
- 年間ライセンスの更新日が近づいていて、このまま払い続けるか迷っている
この3つのいずれかに当てはまるなら、シゴハヤエージェントで初期100万円+月額10万円(税別・10名規模)から、保守込みで乗り換えられます。試算上の投資回収は8〜12ヶ月です。当てはまらない場合、とくに無償版のPower Automateで月5万円以下に収まっている業務については、「今のRPAを続けてください」と正直にお伝えします。
まずは、動いているロボットの一覧と、ライセンスの更新日、直近3ヶ月の停止回数をお聞かせください。現状の年間総額と、乗り換えたほうが安いかどうかの判断を、無料でご提示します。
関連記事:RPAが動かない原因と対処法/AIエージェント導入時のセキュリティ対策/Microsoft Skill RecorderとRPAの違い
補助金の枠内で導入できる範囲を試算します
補助金前提で相談するこの記事の著者

AI革命
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