RPA保守コストが高い理由と年間総額の計算方法|AIエージェント・システム連携への置き換えと費用比較

この記事のポイント
RPAの保守コストは、WinActor1台・兼務担当1名の試算で年間約220〜270万円とライセンス費の約2倍。請求書に出ない人件費の内訳、データ連携の仕組みに作り直した場合の回収月数、RPAのまま残すべき業務を同じ式で解説します。
RPAの保守コストは、ライセンス費に社内の人件費と修正費を足すと、WinActor1台・兼務の担当者1名という構成の試算で年間約220〜270万円、ライセンス費の約2倍になります(担当者の時間と時給は仮定)。このうち担当者の対応時間(試算では年72万円、総額の約3分の1)は、ライセンス費のような請求書には出てきません。複数のシステムをまたぎ、画面の変更で何度も止まる業務は、画面を操作するロボットをやめてデータ連携で動く仕組みに作り直すと保守が軽くなる場合があります。一方、Windows 11に同梱された無償のPower Automateで月5万円以下に収まっている業務は、作り直さないほうが得です。
この記事では、保守コストが何で構成されているか、なぜライセンス費の何倍にもなるのか、ツール別に保守がどこに乗っているかを整理したうえで、年間総額と、業務を仕組みとして作り直した場合の投資回収を同じ式で計算します。RPAを全部やめるべきだという話ではありません。RPAのまま残したほうがよい業務も数字で示します。なお、「ロボットが止まる原因の切り分け」そのものは姉妹記事のRPAが動かない原因と対処法で扱っているため、本記事は費用に絞ります。
RPAの保守コストのどこに時間とお金がかかっているか

出典: 日立ソリューションズ 公式サイト
「RPAの保守」と聞くと、ベンダーに払うサポート費を思い浮かべる方が多いのですが、現場で実際に発生している作業は次の6つです。ラディックス、コクー、日立ソリューションズなどRPAベンダー各社が公開している保守作業の一覧を統合しました。
作業 | 発生するタイミング | 1回あたりの目安 |
|---|---|---|
停止の検知と原因の切り分け | ロボットが止まるたび | 数十分〜半日 |
ロボットの手順(シナリオ)の修正と再テスト | 操作する画面や帳票が変わるたび、業務手順が変わるたび | 半日〜2〜3日 |
止まっている間の手作業での代替処理 | ロボットが止まるたび | 業務量による |
OS・ブラウザ・RPAツール更新後の動作確認 | 月次〜四半期 | 半日〜1日 |
ロボット台帳・設計書の更新、担当交代時の引き継ぎ | 随時 | 放置されがち |
監視・実行ログの確認 | 毎日 | 15〜30分/日 |
このうち、請求書という形で会社に見えるのはベンダー委託分だけです。残りは担当者の勤務時間に含まれていて、費用としては見えていません。
「例外」と「変更」の2種類が、事前通知なしにやってくる
日立ソリューションズの公式コラムは、ロボットが止まる要因を2種類に分けています。1つは「例外」で、操作対象の画面のボタン仕様が変わった、ダウンロードされるファイルの拡張子が変わった、利用中のクラウドサービスがアップデートされた、といったパソコン環境の変化です。これらは事前通知がないため防ぎようがなく、起きるたびに手順を直すしかありません。もう1つは「変更」で、業務の手順や成果物(集計表に列が増えた等)が変わることによるものです。こちらは自社起因なので予告はできますが、修正時に「手本がない」状態になりやすく、ミスが起きやすいと同コラムは指摘しています。
どの程度の頻度で起きるのか。RPAベンダーのユーザックシステムが公開している顧客事例(丸善)では、画面の見た目を頼りに操作するタイプのRPAで「月に数回シナリオが中断し、その都度2〜3日の検証と微調整」が発生していました。同社が公開している失敗例には「メンテナンス工数が想定の3倍になった」「月10時間しか削減できない業務に年100万円を投じていた」というものも含まれています。
保守を担っているのは、半分近くがIT部門ではない
保守コストが見えにくい最大の理由は「誰がやっているか」にあります。日立ソリューションズが掲載しているストロボ社の調査(2020年1月・200名)では、RPAを管理・運用している人の職種はITエンジニアが約3割で、24%が事務・総務・法務、15%が営業でした。つまり半数近くは本来別の仕事を持つ人の兼務です。兼務者がロボットの世話に使った時間は、どの予算科目にも計上されません。「RPAの保守費」を訊かれた経営者がライセンス費しか答えられないのは、この構造のせいです。
RPAの保守コストが高い理由は5つ

出典: UiPath 公式サイト
保守コストが高くなるのは運用の巧拙ではなく、RPAという道具の構造によるものです。理由は5つに整理でき、それぞれ一次情報で裏付けられます。
理由1:画面の見た目に依存しているため、変更のたびに人が直す
RPAは「この位置にあるボタンを押す」「この項目名の欄に入力する」という形で画面を認識します。ボタンの位置や項目名が変われば止まり、直すのは人です。ベンダー側もこの弱点を認めていて、UiPathは画面変更に自動で追従する機能(Healing Agent)を2025年9月に提供しましたが、法人向けの最上位プラン(Enterprise)限定です。NTT-ATのWinActorは2026年9月販売開始のVer.7.7.0で、エラーの疑問に生成AIが答える「AIヘルプ」を搭載しましたが、AI連携機能を含むライセンスはフル機能版で年2,197,800円(税込)と、通常版(1,098,680円)の2倍です。安いプランほど、保守は人力のままです。
理由2:ライセンスは年額固定で、毎年同じ金額が続く
WinActorのライセンスは1年契約で、更新時には購入時と同額が毎年発生します(販売代理店のFAQで明記)。買い切りではありません。しかも2025年1月1日に全製品が約10%値上げされました(フル機能版 998,800円→1,098,680円)。使用頻度が下がったロボットにも、止まっていて直せていないロボットにも、同じ額を払い続けることになります。修正を外注していれば、1回5〜15万円(BizteX公開の相場)が都度加算されます。
理由3:保守が「人」に紐づいている
ロボットの中身を知っているのは作った人だけ、という状態が起きやすい道具です。RPAベンダーBizteXの2024年調査(RPA導入企業862名・ベンダー自社調査)では、全社展開できない理由の2位が「RPAスキル人材が一部部門にしかいない」(47.4%)でした。Power Automateにはさらに明確なリスクがあります。Microsoft公式のライセンスFAQ(2026年8月14日更新)によれば、フロー(Power Automateでのロボットの手順の呼び名)の所有者が退職してライセンスを失うと、そのフローは性能低下ののち14日以内に停止します。退職者のアカウントで動いていたロボットは、退職と同時に保守の対象から消えるのではなく、業務ごと止まります。
理由4:ロボットの本数が増えるほど、保守は本数以上に増える
ロボット同士が同じシステムを操作し、同じ帳票を参照していると、1つの画面変更が複数のロボットを同時に止めます。ユーザックシステムの事例(フランソア)では、200本を超えていたロボットの手順(スクリプト)を100本に精査した結果、エラー件数が3分の1に減り、復旧時間が30分から5分に短縮されました。裏を返せば、精査前は本数に対して不釣り合いな保守が発生していたということです。Deloitteの2018年の国際調査(回答530名)でも、50体を超えるロボットを運用できている組織は4%にとどまっていました。
理由5:コストの大半が「人件費」に隠れて、請求書に出ない
理由1〜4の結果として発生する作業の多くを、兼務の担当者が勤務時間内で処理しています。ベンダーからの請求書には出てきません。ストロボ社の2021年2月の調査(100名)では、RPA導入企業の93%がツールの追加・変更を検討または実施済みで、根本原因として「ロボットが停止する」「設定の柔軟性が足りない」が挙がっています。満足度も、2020年1月の同社調査で「満足」は約40%でした。「入れたのに手間が減らない」と感じている会社は、少数派ではありません。
2026年は「変更」の頻度そのものが上がる
理由1の前提となる画面の変更は、これから増えます。Chromeは2026年9月8日のバージョン153から、安定版の更新周期が4週間から2週間に短縮されました。ブラウザを操作するロボットは、更新のたびに止まる可能性がある回数が単純計算で倍になります。Windows 10のサポートは2025年10月14日に終了し、Windows 11への移行に伴うパソコンの入れ替えと再設定が各社で進行中です。RPAツール自体もWinActorで年1回のバージョンアップがあります。保守コストは、放っておいても下がる方向にはありません。
RPAの保守コストを年間総額で見る|月何時間×人件費で試算する

ここからが本題です。ライセンス費しか見えていない保守コストを、年間総額で計算し直します。式は次のとおりです。
RPAの保守コスト(月)= ライセンス費 + 社内担当者の対応時間 × 時給 + 外注の修正費・保守委託費
前提として、次のような構成を想定します。時給と時間は仮定なので、後述の式にご自身の数字を入れてください。
- ツール:WinActorノードロック(1台のパソコンに固定するタイプ)・フル機能版。年1,098,680円(税込・NTT-AT公式・2026年9月時点)=月約91,600円
- 社内担当者:兼務1名。毎日の監視(15〜30分)と、月1回程度の停止対応・更新後の動作確認を合わせて月20時間
- 時給:3,000円換算(社会保険料等を含んだ会社負担ベースの目安)
- 外注の修正:年4回、1回10万円(BizteX公開の相場「1回5〜15万円」の中央値)
パターン | 構成 | 月額の内訳 | 月額合計 | 年間総額 |
|---|---|---|---|---|
A:社内対応+修正のみ外注 | WinActorフル機能版1台 | ライセンス 91,600円 + 社内 20時間×3,000円=60,000円 + 外注修正 40万円÷12=33,300円 | 約18.5万円 | 約222万円 |
B:保守委託あり | 同上+ベンダー保守契約 月10万円 | ライセンス 91,600円 + 保守委託 100,000円 + 社内 10時間×3,000円=30,000円 | 約22.2万円 | 約266万円 |
C:無償のPower Automateで社内対応 | Windows 11同梱版(人がログインしている間だけ動く・他の人と共有できない) | ライセンス 0円 + 社内 15時間×3,000円=45,000円 | 約4.5万円 | 約54万円 |
D:Power Automate 無人実行 | Processライセンス 22,488円/ボット(ロボット1体)/月(税抜・Microsoft公式) | ライセンス 22,488円 + 社内 8時間×3,000円=24,000円 | 約4.6万円 | 約56万円 |
※ WinActorは税込、Power Automateは税抜の公式表示価格です。金額はすべて2026年9月時点。
パターンAで年間総額はライセンス費の約2倍、パターンBでは約2.4倍になります。第三者のRPA解説サイトには「保守運用費はライセンス費の10〜30%」「トータルコストはライセンスの2〜5倍」という目安が載っていますが、社内の人件費まで数えると、この試算でも下限ではなく2倍の側になりました。
同じ業務を仕組みとして作り直した場合の差額と投資回収
RPAが画面を操作して転記・照合している業務は、システムのAPI(システム同士がデータをやり取りするための窓口)やCSV出力を使って直接つなぎ直すと、画面の見た目が変わっても止まりにくくなります。ただし、作り直すには開発費がかかるうえ、作った後も、つないだ先のシステムが仕様を変えたときの改修や、クラウド・外部APIの利用料は残ります。保守がゼロになるわけではありません。
以下は仮定に基づく試算です。開発費は業務の範囲で大きく変わるため、100万円の場合と300万円の場合の2通りで計算します。
- 開発費(仮定):100万円の場合/300万円の場合(説明用の仮の金額で、特定の会社の見積や価格ではありません)
- クラウド・外部APIの利用料(仮定):月1万円
- 担当者による処理結果の確認(仮定):月5時間×3,000円=15,000円
- つないだ先の変更に合わせた改修費(仮定):年20万円=月約16,700円
- 作り直した後の月額:1万円+15,000円+約16,700円=約4.2万円
- Before(パターンA):担当者が月20時間をロボットの監視・切り分け・修正・更新後の確認に使い、年4回の外注修正とライセンスを合わせて月約18.5万円
- After:担当者の作業は処理結果の確認と、仕組みが人の確認に回してきた例外の判断。月約4.2万円
- 月の差額:約14.3万円
- 投資回収:開発費100万円なら 100万円÷14.3万円≒約7ヶ月、300万円なら 300万円÷14.3万円≒約21ヶ月
パターンB(保守委託あり)からなら差額は月約18万円で、回収は開発費100万円で約6ヶ月、300万円で約17ヶ月です。
3年間の総額で比べると、パターンAが約666万円、パターンBが約798万円に対し、作り直した場合は開発費100万円で約250万円(100万円+約4.2万円×36ヶ月)、300万円で約450万円です。
自社の数字で計算するときは、次の式を使ってください。
回収月数 = 開発費 ÷(現状の月額保守コスト − 作り直した後の月額)
ここで現状の月額保守コストには、必ず「担当者の対応時間×時給」を入れてください。それを入れずにライセンス費だけで比べると、作り直すかどうかの判断を誤ります。作り直した後の月額にも、利用料・確認の時間・改修費を入れてください。ここを0円と置くと、回収月数が実際より短く見えます。
なお、自社で仕組みを持たず、運用型のAIエージェントサービスに業務ごと任せる方法もあります。その場合は開発費の代わりに初期費用と月額を入れ、同じ式で比べられます。月額に「画面や帳票が変わったときの修正」と「止まったときの復旧」が含まれるかは、サービスごとに違うので必ず確認してください。
乗り換えないほうがよいケースも同じ式で分かる
パターンCとDは、月4.5〜4.6万円で回っています。作り直した後の月額(この試算で約4.2万円)とほとんど差がないため、開発費100万円でも回収に17年以上かかる計算になります。この場合は作り直さないでください。無償版のPower Automateで、担当者1人が有人で動かし、停止が月1回・復旧が1日以内で済んでいるなら、それは既に十分安い自動化です。検討の対象になるのは、目安としてライセンス費と人件費を足して月10万円を明確に超えている業務、または担当者が抜けた時点で止まる業務です。
姉妹記事では「月2回止まって復旧に2日かかる」パターン(月40時間)を扱っています。停止頻度が高い場合は、そちらの時間を上の式に入れたほうが実態に近くなります。
ツール別・保守コストはどこに乗っているか(2026年9月時点)

出典: マクロマン 公式サイト
同じ「RPAの保守」でも、ツールによって費用がどこに乗っているかが違います。ライセンスに含まれる「製品保守」と、自社で作ったロボットの「シナリオ保守」を分けて見ないと、比較を誤ります。公式サイトで確認できた価格のみ記載し、確認できなかったものは「要問い合わせ」としています。
ツール(国内シェア※) | ライセンス(公式) | 保守はどこに乗っているか | 画面変更への自動追従 | 担当者が抜けたときの影響 |
|---|---|---|---|---|
WinActor(中堅・大手2位) | フル機能版 1,098,680円/年、実行版 300,080円/年(税込・PC1台) | 年間ライセンスにメーカーサポート込み。ただし範囲は「マニュアルの問合せ・製品仕様・不具合修正版の提供」のみ。自社シナリオの修正は含まれず、販売代理店の有償サポートを別契約 | AI連携ライセンス(2,197,800円/年)とAIヘルプはあるが、修正作業は人 | シナリオが属人化しやすい |
Power Automate(中堅・大手1位、中小同率1位) | Premium 2,248円/ユーザー/月、Process(人がいなくても動く無人実行)22,488円/ボット(ロボット1体)/月(税抜)。Windows 11同梱の有人版(人が操作中のパソコンでのみ動く)は無償 | Microsoftの製品サポートのみ。シナリオ保守は自社 | 標準では自動追従なし | 所有者のライセンス失効で14日以内にフロー停止(公式FAQ) |
UiPath(中堅・大手3位) | Basic 25ドル/月〜(個人向け・ロボット2体まで)。Standard・Enterpriseは要問い合わせ | プランによる | Healing Agent(Enterprise限定) | パートナー契約の有無による |
BizRobo! Basic | 792万円/年(税別)+初期費用。同時実行1〜10・開発10ユーザー | サーバー型(1台のサーバーで複数のロボットを集中管理する方式)。シナリオ保守は自社または導入パートナー | 公式で確認できず | — |
マクロマン(中小同率1位) | ツール本体0円。スタンダード 月5万円+初期10万円、プレミアム 月10万円+初期20万円(税抜) | ライセンス無料で、保守サポートが料金の本体。ヘルプデスク・月1回相談・上位プランでカスタム開発 | 公式で確認できず | サポート契約があれば軽減 |
ロボパットAI(中小3位) | 公式サイトに価格非掲載(公式マガジンに「初期・保守費用無料、月額ライセンスのみ、月単位契約」) | 月額に含まれる範囲は要問い合わせ | 2026年3月にAIアドバイザー機能を追加(詳細は未確認) | — |
※ シェアはMM総研「RPA国内利活用動向調査2024」(2024年3月時点・1,599社)。同調査ではRPA導入率が中小企業(年商50億円未満)で15%、中堅・大手で44%です。2025年版の公開は確認できていません。
この表から読み取れることは2つあります。1つは、どのRPAでも「自社で作ったロボットを直す責任」は自社に残ることです。年間ライセンスに含まれる保守は製品そのものの保守であって、御社のロボットの保守ではありません。もう1つは、画面変更への自動追従はどのベンダーも上位プラン・追加費用の扱いであり、中堅・中小企業が使う価格帯では基本的に人が直す前提だということです。
自動化できる業務・できない業務の境界線
保守コストが高いからといって、すべてを作り直せるわけではありません。データ連携の仕組みに置き換えて保守を軽くできる業務と、置き換えにくい業務、RPAのまま残したほうがよい業務の3つに分けます。
仕組みに置き換えやすい(適用できる) | 置き換えにくい(適用できない) |
|---|---|
毎日・毎週・毎月、決まった周期で繰り返す | 年に数回、不定期にしか発生しない |
入力も出力もデジタルで完結する(業務システム・ファイル・メール・チャット) | 紙・FAX・対面が起点になっている |
判断のルールを文章に書き出せる(表記ゆれの解釈や条件分岐を含む) | 毎回、担当者の裁量や交渉が必要 |
複数のシステムをまたいで転記・照合・集計する | 最終決裁をAIや仕組みに委ねたい |
結果を人が確認して承認する運用でよい | 誤った場合に取り返しがつかない処理を無人で完結させたい |
具体的には、月次レポートの作成と配信、システム間のデータ転記、Excel集計、受発注データの照合といった業務は、RPAが担っていることが多く、データ連携の仕組みに置き換えやすい種類です。紙の書類が起点の業務は、OCRで基幹システムに登録する自動化のように紙を取り込む段階から設計し直す必要があり、単純な乗り換えにはなりません。
ただし、つなぎたいSaaS同士に標準の連携機能や既製の連携サービスがあるなら、まずそれを試してください。開発を頼むのは、標準の連携では足りない部分(自社独自の項目、例外の扱い、複数のシステムをまたぐ照合など)が残ったときで十分です。
RPAのまま残してよい業務
次の条件に当てはまるなら、無理に移す必要はありません。
- 1つのシステムの中で、同じ操作を大量に繰り返すだけの処理で、この1年止まっていない
- 無償版のPower Automateで、担当者1名が有人で動かしている
- ライセンス費と担当者の対応時間を足して、月5万円以下に収まっている
- 操作対象が自社開発のシステムで、画面の変更時期を自社でコントロールできる
逆に、「複数システムをまたいでいる」「画面や帳票の変更で月に何度も止まる」「作った人がいない」のいずれかに当てはまるロボットは、移す候補です。RPAと新しい仕組みは併用できるので、ロボット1本ごとに判断してください。
RPAの保守コストを下げる方法は3つある
保守コストを下げる方法は、大きく3つです。それぞれの費用と限界を偏りなく並べます。
方法①:保守を内製のまま軽くする
費用は担当者の時間だけで、追加の支出はありません。効果が確認されている打ち手は次の4つです。
- ロボット台帳を作る:ロボット名・用途・作成者・使っているIDとパスワード・直近の停止日・復旧にかかった時間を1枚にまとめる。「停止回数」と「復旧時間」の列を足すだけで、どのロボットが保守費を多く使っているかが見える
- 止まったことに気づく仕組みを入れる:処理完了時にメールを送り、決まった時刻までに届かなければ管理者に通知する。RPA運用支援会社の公開ブログには「止まっていたことに1週間気づかなかった」例が出ています
- 本数を減らす:似た処理をしているロボットを統合する。前述のとおり、200本超を100本に精査してエラーが3分の1になった事例があります
- 環境の変更時期を自社で管理する:Windows Updateの適用時間を業務時間外に固定する、Chromeは更新間隔が8週間の法人向け版(Extended Stable)に切り替える
限界は、「直す人がいない」問題は解決しないことです。台帳を作っても、画面が変われば誰かが直さなければなりません。止まる原因ごとの直し方はRPAが動かない原因と対処法にまとめています。
方法②:保守を外注する
社内に直せる人がいない場合の現実的な選択肢です。2026年9月時点で事業会社が公開している相場は次のとおりです(いずれも税別・公式価格ではなく各社コラムの公開値)。
形態 | 相場 | 出典 |
|---|---|---|
ベンダーへの保守委託(月額) | 月5〜30万円 | BizteX |
スポットのサポート | 5,000円/時〜 | ラディックス |
シナリオ修正(都度) | 1回5〜15万円 | BizteX |
シナリオ開発(新規) | 1本15〜50万円 | BizteX |
常駐エンジニアの委託 | 月60〜150万円 | コクー、ラディックス |
注意点は2つあります。1つは、外注してもライセンス費と社内の窓口対応は残ることです(前述のパターンBが約22.2万円/月になる理由です)。もう1つは、外注先の担当者交代で同じ属人化が起きることです。設計書を納品物として必ず受け取ってください。
方法③:画面操作をやめ、データ連携の仕組みに作り直す
RPAを直し続けるのではなく、その業務を、システム同士をAPIやCSVで直接つなぐ仕組みに作り直す方法です。表記ゆれの解釈や書類の読み取りなど、ルールだけでは決めにくい部分にはAIを組み込むこともできます。画面の見た目に頼らないため、理由1の「画面が変わるたびに人が直す」保守が減ります。費用は開発費と、作った後の利用料・改修費です(前述の試算を参照)。
この方法は、すべてを開発会社に頼む必要はありません。ChatGPTやClaudeなどのAIを使えば、自社でも次のところまでは進められます。
- ロボットのシナリオや操作手順を読ませて、何をしているかを文章にまとめる(ロボット台帳の下書き)
- エラーの文面を読ませて、止まった原因の見当をつける
- CSVの整形や照合のような小さな処理のプログラムを書かせ、手元のテスト用データで試す
一方で、会社に頼んだほうがよいのは、その会社にしかない事情が絡む部分です。どのシステムのどのデータに、どの権限でつなぐか。店舗や取引先ごとの例外をどう扱うか。本番のデータで結果が正しいことを誰がどう確かめるか(検収)。つないだ先の仕様が変わったときに、誰が直す責任を持つか。ここを決めずに作ると、RPAと同じく「作った人しか直せない仕組み」がまた一つ増えます。
AIを使う選択肢には、正直に書くべき制約もあります。
- Gartnerは2025年6月、エージェント型AIプロジェクトの40%超が2027年末までに中止されると予測しました。理由はコスト増大、価値の不明確さ、リスク管理の不足です。既存のRPAを「AIエージェント」と呼び替えただけの製品(同社の言う「agent washing」)にも注意が必要で、中身がRPAなら保守の構造は変わりません
- RPA導入企業375名を対象にしたTISI社の調査(2026年7月・マイナビTECH+掲載のPR記事)では、推進側の60.8%が「課金体系によるコスト管理の難しさ」、67.2%が「AIの出力の検証・修正の仕組みづくり」を課題に挙げています。現場側では51.6%が「スキルの空洞化」を懸念しています
- 作り直した仕組みも、運用型のAIエージェントサービスも、保守は無料ではありません。依頼する場合は「保守は月額に含まれるか、別契約か」「ソースコードと設計書を自社で受け取れるか」を必ず確認してください
AIエージェントという言葉自体の意味や、RPAとの違いはAIエージェントとはで解説しています。
費用の目安|RPAを持ち続ける場合と仕組みに作り直す場合を同じ表で

出典: AI革命 公式サイト
3つの方法を、前述の試算と同じ前提(時給3,000円)で並べます。作り直す場合の開発費と月額は、前述の仮定のとおりです。
選択肢 | 初期費用 | 月額 | 保守(変更追従・復旧)の責任 | 3年総額の目安 |
|---|---|---|---|---|
①RPAを社内保守+修正のみ外注(パターンA) | 0円(既存) | 約18.5万円 | 自社+外注(都度) | 約666万円 |
②RPA+保守委託(パターンB) | 0円(既存) | 約22.2万円 | 委託先(ライセンス・社内窓口は残る) | 約798万円 |
無償Power Automateで社内保守(パターンC) | 0円 | 約4.5万円 | 自社 | 約162万円 |
③データ連携の仕組みに作り直す(開発費100万円と仮定) | 100万円 | 約4.2万円(仮定) | 契約で決める(自社で直す/開発会社に頼む) | 約250万円 |
③データ連携の仕組みに作り直す(開発費300万円と仮定) | 300万円 | 約4.2万円(仮定) | 契約で決める(自社で直す/開発会社に頼む) | 約450万円 |
※ WinActorは税込、Power Automateは税抜の表示価格です。③の開発費と月額は仮定に基づく試算で、見積ではありません。
開発費が300万円かかっても、パターンA・Bより3年で200〜350万円ほど少なくなる計算です。ただし、これは止まる回数が多く、担当者の時間が月20時間かかっている前提での話です。パターンCのように月5万円以下で回っている業務では、開発費の分だけ高くなります。判断の分かれ目は、今の月額保守コストが作り直した後の月額をどれだけ上回っているかです。
当社(AI革命)も、この③の開発を受託しています。公開している価格は、既存システムの改修が100万円〜、PoC(本番の前に小さく作って確かめる段階)が300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別。クラウド・外部API・ライセンスなどの実費は別)。300万円〜はPoCの開始価格で、本番で使う仕組みの完成までの費用ではありません。上の試算の開発費100万円・300万円で本番まで作れるかは、業務の範囲と、既存システムの改修で済むか新しく作るかで変わります。RPAが担っている業務をAPI・CSV・画面操作のどれでつなぎ直すか、今のシステムを活かして改善できるかを一緒に決めるところから相談できます。
▶ RPAで動かしている業務を、止まりにくい仕組みに作り直せるか相談する
当社の受託開発で公開している事例と、RPA置き換えの構成例
RPAの置き換えそのものの事例として公開できるものは、現時点ではありません。近いものとして、当社が受託開発で公開している事例を2つ挙げます(顧客名は非公開)。
- 通信事業:数万件の請求情報を取り込み、集計し、確認する画面を作りました
- 薬局:複数店舗・数千人分の記録の管理に、閲覧・操作の権限と、確認の工程を組み込みました
どちらも、データを扱う仕組みに、人が確認する工程を組み込んだものです。RPAの置き換えでも、この「人が確認する工程をどこに置くか」が設計の中心になります。
以下は、RPAを置き換える場合の構成例です。説明用の架空の会社で、実在の案件ではありません。
課題
複数店舗を展開する会社で、各店舗から上がるExcelを本部が週次で整形・集計しているとします。店舗ごとにExcelの書式が微妙に違い、項目名が「数量」「個数」「入数」とばらつき、列の並びも揃っていません。RPAで組む場合、店舗ごとに別のロボットを作れば店舗数分の保守が発生し、書式を全店で統一させれば現場に負担がかかって結局守られません。どちらを選んでも、書式が少し変わるたびに誰かが直す保守が本部に残る構造です。
作るもの
各店舗のファイルとシステム上のデータを取り込み、本部の集計フォーマットに揃えて統合する仕組みです。項目名の表記ゆれはルールとして定義して吸収し、ルールで判断できないデータだけを、確認が必要なデータとして本部担当者に通知します。統合後の差異チェックまで自動で行い、レポートとして配信します。店舗が書式を少し変えても、ロボットのように止まるのではなく、解釈できる範囲は処理し、できない部分だけを人に回す設計です。
保守の何が変わるか
この構成なら、店舗ごとの書式変更に合わせて手順を直す作業は、確認に回ってきたものを人が判断する作業に変わります。処理が完了しなかった場合はその時点で担当者に通知が届くようにすれば、止まったことに気づくための監視も減らせます。一方で、表記ゆれのルールを足す改修や、取り込み元のシステムが変わったときの対応は、引き続き必要です。それを自社で行うか、開発会社に頼むかは、作る前に決めておく必要があります。
置き換えまでの流れ
RPAからの置き換えは、次の順で進めます。今動いているRPAは、置き換えが終わるまで止めません。
段階 | 内容 | 誰が・費用 |
|---|---|---|
① 現状の棚卸し | ロボット台帳(なければここで作成)、ライセンスの更新日、停止頻度、担当者の対応時間を整理し、本記事の式で現状の月額保守コストを出す | 自社(AIに台帳の下書きをさせてもよい) |
② 初回相談 | 何を解決したいか、自社でAIを使って進める部分と頼む部分の切り分け、依頼の形の候補(既存改修/PoC/本開発/調査のみ)を話す。相談後に相談メモをメールで受け取る | 無料・30分・オンライン |
③ 提案・見積 | 資料を受け取ったうえで、置き換える業務とRPAのまま残す業務を分け、範囲と金額を示す | 無料 |
④ 調査・PoC・開発 | 既存のシナリオがあれば手順書として参照し、つなぐ方法(API・CSV・画面操作)と例外の扱いを決めて作る | 有償(範囲と金額に合意してから) |
⑤ 並走運用 | 既存のRPAと新しい仕組みを同時に動かし、結果を突き合わせる | 自社+開発会社 |
⑥ 本稼働・RPA停止 | 差異がなくなってから切り替え。置き換えたロボットのライセンスは次回更新で解約 | 自社 |
保守コストの観点では、年間ライセンスの更新日から逆算して、余裕をもって①を始めてください。更新直後に置き換えると、使わないライセンスに1年分を払うことになります。どれくらい前から始めるべきかは業務の範囲で変わるので、②の相談で確認してください。②や③の段階で作り直さないほうがよいと分かれば、そこで終わりにしてかまいません。
よくある質問
Q1. 販売代理店との保守サポート契約を解約すると、RPAはどうなりますか?
ロボットは動き続けます。解約されるのは「問い合わせや修正を依頼できる権利」であって、ライセンスではありません。ただしWinActorのように年間ライセンスにメーカーサポートが含まれている場合でも、その範囲は製品仕様の問い合わせと不具合修正版の提供のみで、御社のロボットの修正は対象外です。保守契約を切るなら、画面変更のたびに誰が直すかを先に決めてください。決められないまま切ると、最初の停止で手作業に戻ります。
Q2. RPAベンダーのAIによる自己修復機能を使えば、保守コストは下がりますか?
下がる可能性はありますが、条件付きです。2026年9月時点で、UiPathの自動追従機能はEnterpriseプラン限定、WinActorのAI連携ライセンスは通常版の2倍の価格です。追加費用がライセンス費に上乗せされるため、「自己修復で減る人件費」が「上乗せ分」を上回るかを計算してください。ロボットが月に数回止まり、復旧に2〜3日かかっているなら上回りやすく、年に数回しか止まらないなら上回りません。MM総研の2024年3月の調査では、生成AIとRPAを組み合わせて本格活用している企業は10%でした。
Q3. AIを組み込んだ仕組みや運用型のAIエージェントの利用料は、処理量が増えると青天井になりませんか?
AIやクラウドの利用料には処理量に応じて増える料金体系のものがあり、その場合は何も決めなければ増えます。運用型のサービスを検討する場合は、「月額に処理量の上限が含まれているか」「超過時の単価はいくらか」「契約中に単価を変更できる条項があるか」の3点を確認してください。自社で仕組みを作る場合は、AIを使う処理と使わない処理を分けるのが基本です。転記や照合のようにルールで決まる処理は通常のプログラムで行い、AIは表記ゆれの解釈など必要な部分にだけ使うと、利用料を抑えやすくなります。前述のTISI社の調査でも、推進側の60.8%が「課金体系によるコスト管理の難しさ」を課題に挙げています。
Q4. 置き換えの期間中は、RPAのライセンスと新しい仕組みの費用を二重に払うことになりますか?
並走運用の期間は重なります。RPA側のライセンスは年契約なので、契約期間の途中で解約したときに返金があるかは契約によるため、契約書で確かめてください。二重払いを最小にするには、ライセンスの更新日を先に確かめ、更新日に合わせて本稼働させるよう逆算して進めるのが最も無駄がありません。
Q5. 今のRPA担当者は、置き換えた後に不要になりますか?
不要にはなりません。役割が変わります。RPAの手順を直す仕事は減りますが、仕組みが人の確認に回してきた例外の判断、処理結果の承認、業務ルールが変わったときに仕組みを直す側(自社の担当者または開発会社)への連絡は、業務を分かっている人にしかできません。むしろ、RPAのシナリオを作った担当者は業務の手順を最も正確に把握している人なので、置き換える業務の選定と判断ルールの文章化で中心になっていただくことになります。「スキルの空洞化」を懸念する声は現場の半数にありますが、消えるのは「ロボットを直すスキル」であって「業務を判断するスキル」ではありません。
Q6. RPAの保守コストは、社内でどう計上・管理すればよいですか?
最低限、ロボット台帳に「月の停止回数」「復旧にかかった時間」「対応した人」の3列を足してください。これに時給を掛ければ、請求書に出ない保守コストが月単位で見えます。ライセンス費は「ソフトウェア利用料」として計上されていても、この人件費はどこにも出ていないのが普通です。3ヶ月分を記録すれば、本記事の式で年間総額と置き換えの投資回収を自社の数字で計算できます。相談するときも、この3列の記録があると話が早く進みます。
Q7. IT導入補助金などは使えますか?
制度は年度ごとに対象や締切が変わるため、この記事では断定しません。使えるかどうかは、各制度の公式サイトで最新の公募要領を確認してください。補助金の有無で判断するより、本記事の式で「補助金なしでも回収できる業務」を先に選ぶほうが、結果的に失敗しません。
RPAの保守コストを「ライセンス費だけ」で見ていた方へ
RPAの保守コストは、ライセンス費に社内の対応時間と修正費を足して初めて実額になります。WinActor1台・兼務の担当者1名という構成の試算で年間220〜270万円、ライセンス費の約2倍です。そのうち約3分の1(試算では年72万円)は、請求書に出ない兼務の担当者の時間です。
- ライセンス費と担当者の対応時間を足すと、月10万円を明確に超えている
- 画面や帳票の変更で止まるたびに、直す人を探している
- 年間ライセンスの更新日が近づいていて、このまま払い続けるか迷っている
この3つのいずれかに当てはまるなら、画面を操作するロボットを、データ連携で動く仕組みに作り直す価値があります。この記事の仮定では、開発費100万円なら約6〜7ヶ月、300万円なら約17〜21ヶ月で回収する計算です。当てはまらない場合、とくに無償版のPower Automateで月5万円以下に収まっている業務は、今のRPAを続けるのが合理的です。
当社の初回相談は無料・30分(オンライン)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。動いているロボットの一覧、使っているシステムの名前、ライセンスの更新日、直近3ヶ月の停止回数が分かると話が早く進みます(パスワードなどの認証情報や実際の顧客データは送らないでください)。自社でAIを使って進める部分と任せる部分を一緒に切り分け、相談後に、作り直す範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。
▶ RPAで動かしている業務を、止まりにくい仕組みに作り直せるか相談する
関連記事:RPAが動かない原因と対処法/AIエージェント導入時のセキュリティ対策/Microsoft Skill RecorderとRPAの違い
依頼範囲と費用の目安を30分で整理します
この記事の著者

AI革命
編集部
AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。
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