ビジネス活用2026年9月更新

自動化候補の洗い出し方|「毎月同じ作業」を見つける4ステップと合格ライン【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/20
自動化候補の洗い出し方|「毎月同じ作業」を見つける4ステップと合格ライン【2026年9月最新】

この記事のポイント

自動化候補の洗い出しには合格ラインがあります。月40〜50時間分が集まれば外注を検討する水準です。洗い出しの4ステップ、シートの11項目、自動化できる業務の境界線、時給3,000円換算での損益分岐と費用相場を具体的な金額で解説します。

自動化候補の洗い出しには合格ラインがあります。合計で月40〜50時間分が集まれば外注を検討する価値があり、月20時間以下なら外注せず手順の見直しで済ませたほうが得です。(時給3,000円換算で月40時間は年144万円。初期100万円+月額10万円・税別のサービスの3年間の支払総額460万円と、ほぼ釣り合う水準です)

洗い出しの手順そのものは4ステップで、1つの部署だけなら半日〜1日で終わります。この記事では、その手順と、集まった候補を「自分たちでやる」「自動化サービスに出す」「開発を依頼する」の3つに仕分ける基準までをまとめます。

「毎月同じ作業をしている」のに、何がムダか言えないのはなぜか

経営者や部門長が「うちはムダが多い」と感じていても、いざ「では何を自動化しますか」と聞かれると答えられない。これは記憶力の問題ではなく、業務時間の積み上がり方に理由があります。

1回10分の作業は、誰も問題だと思わない

1回10分の作業でも、月に40回発生すれば400分、月約7時間です。年に直せば80時間になります。1日15分の作業なら月5時間・年60時間、同じ作業を3人がやっていれば年180時間です。どれも特別な計算ではなく、掛け算をしただけの数字です。

問題は、この7時間や60時間が誰の目にも一度に見えないことです。現場の担当者にとっては「10分で終わる簡単な作業」であり、わざわざ上司に報告する対象になりません。結果として、時間を最も多く吸い取っている作業ほど、候補リストに上がってこないという逆転が起きます。

現場で実際に起きていること

洗い出しの前段階で、多くの会社に共通して見られる状態です。

  • 複数の管理画面からCSVを落として、Excelに手で貼り付けている。しかも部署ごとに別の人が別の画面で同じことをしている
  • 手順が担当者の頭の中にしかなく、聞いても本人が言語化できない
  • 月次の集計が「前任者が作ったExcelを、意味は分からないが同じ手順で動かしている」状態になっている
  • 転記ミスの確認のために、さらに確認作業が追加されている

最も抜け落ちるのは管理職の細切れ時間

洗い出しをすると、視線は自然に「現場の作業」に向かいます。しかし実際には、承認・確認・転送・催促といった管理職側の細切れ作業が相当量あり、これがほぼ確実に候補から漏れます。

1件2分の承認でも、日に15件あれば30分、月にすれば10時間です。しかも判断ルールが「金額◯万円以下は承認」のように明確なことが多く、自動化との相性は現場作業より良い場合すらあります。洗い出しの対象には、必ず管理職自身の業務も含めてください。

自動化候補を洗い出す4つのステップ

付箋とスプレッドシートを使って業務を洗い出す作業机のイメージ

ここからは実際の手順です。特別なツールは不要で、スプレッドシート1枚あれば始められます。

ステップ1:範囲を決める(全社から一度にやらない)

最初に決めるのは「どこまでを対象にするか」です。全社一斉の棚卸しは、ほぼ確実に途中で止まります。 現場からは「通常業務に加えて余計な仕事が増えた」と受け取られ、回収率が下がり、集まったシートの粒度もバラバラになります。

最初は1部署、もしくは1つの業務プロセスに絞ってください。目安は10〜15業務です。経理なら「月次決算まわり」、営業事務なら「受注から請求まで」のように、始まりと終わりが言える単位で切るとうまくいきます。

ステップ2:1週間、「2回以上出てきた作業」を書き出す

記憶で書かせると必ず漏れます。1週間だけ、実際にやった作業をその場で書き出すやり方が最も精度が高くなります。

ルールは1つだけで、「その1週間に2回以上出てきたもの」を対象にします。月次・四半期の業務は週内に出てこないため、週の記録が終わったあとに「月に1回やっていること」「四半期に1回やっていること」を別途追記してください。

この段階では判断を入れさせないことが重要です。「これは自動化できないから書かなくていい」と現場に判断させると、後述する「実は自動化できた業務」が最初から消えます。書けるものは全部書くが原則です。

ステップ3:シートに落とす

集まった作業を1行1業務でシートに整理します。項目は次章で詳しく扱いますが、ここで必ず埋めるのは発生頻度・1回あたりの所要時間・使用しているシステムの3つです。この3つが欠けたシートは、あとで金額に換算できず、使いものになりません。

所要時間は本人の自己申告で構いません。ただし「だいたい10分」と言われた作業は、前後の準備や確認を含めると実際は15〜20分かかっていることが多いため、少なめに出てきている前提で見てください。

ステップ4:年間工数に換算する

最後に、全行を同じ単位に揃えます。

年間工数(時間)= 1回あたりの所要時間 × 月間発生回数 × 12 ÷ 60

そして金額に直します。時給3,000円換算(年収換算でおおよそ500万円台の社員を想定した実務上の目安で、公的統計の数値ではありません)で、年間工数×3,000円が、その業務に毎年払っている金額です。

ここまで来て初めて、「1回10分・月40回の作業」が「年間80時間・24万円の作業」として経営の言葉になります。並べ替えると、多くの場合は想定していなかった業務が上位に来ます。これが洗い出しをやる本当の目的です。

なお、この作業にかかる時間の目安は、1部署・10〜15業務なら半日〜1日、全社3〜5部署なら現場の記入待ちを含めて2〜3週間です。公開された統計があるわけではなく、実務上の目安としてお考えください。

洗い出しシートに入れる11の項目

多くの棚卸しシートは「業務名・担当者・時間」程度で止まりますが、それだと自動化できるかどうかの判定には足りません。判定まで一気に進めるための項目を挙げます。

#

項目

記入例

なぜ必要か

1

部署・担当者

営業事務/2名

同じ作業を何人でやっているかが分かる

2

業務名

受注データの基幹システム入力

3

業務内容(手順)

メール添付のExcelを開き、20項目を手入力

手順が書けない=属人化の証拠

4

発生頻度

毎日/週2回/月末

5

1回あたりの所要時間

12分

6

月間発生回数

40回

7

年間工数・金額

96時間/28.8万円

優先順位はここで決まる

8

使用システム

Gmail、販売管理システムA

連携できるかの判定材料

9

例外判断の割合(%)

約1割(単価が違う時だけ確認)

○×ではなく割合で記録する

10

入出力がデジタルで完結するか

入力:メール/出力:システム=完結

紙・対面・電話が挟まると難易度が跳ね上がる

11

データの取り出し可否

CSV出力あり/APIなし

自動化で済むか、開発が必要かの決定打

太字の3つが、一般的な棚卸しシートには入っていない項目です。それぞれ理由があります。

9. 例外判断の割合:「判断が必要か?」を○×で聞くと、ほとんどの業務に○が付きます。人間は何かしら判断しているからです。しかし実務で効いてくるのは「全体の何割で例外が出るか」であり、例外が2割を超えると自動化は成立しにくくなります。1割なのか5割なのかを、担当者の感覚で構わないので割合で書かせてください。

10. デジタル完結:紙の書類を見ながら入力する、電話で聞いた内容を打ち込む、といった工程が1つでも挟まると、そこで自動化は切れます。逆に「紙の部分だけ切り離せば、残りは自動化できる」という発見にもつながります。

11. データの取り出し可否:これが最も重要です。既存システムからCSV(表計算ソフトで開ける形のデータファイル)で書き出せる、またはAPI(システム同士がデータを自動でやり取りするための受け渡し口)が用意されているなら自動化サービスの範囲ですが、画面でしか見られない・出力機能がない場合、話は自動化ではなく開発になります。後述の仕分けで使います。

自動化できる業務・できない業務の境界線

画面操作の自動化に使われるRPAツールUiPathのロゴ

出典: UiPath 公式サイト

洗い出した候補は、次の基準で絞り込みます。できないケースを先に外すほうが、結果的に早く進みます。

自動化できる

自動化できない・別の手段が要る

毎日・毎週・毎月など繰り返し発生する

年に1〜2回しか発生しない

入力も出力もパソコン上で完結する

紙の原本確認・対面・電話が前提

判断ルールを言葉にできる(金額◯万円以下は承認、など)

毎回その場で考えて決めている

例外の発生が全体の2割以下

例外が3割以上、または毎回違う

必要なデータを既存システムから取り出せる

画面でしか見られず、出力手段がない

間違えたときに人が気づける/やり直せる

最終決裁そのものを機械に委ねたい

例外率2割が境界になる理由

自動化の仕組みは、例外に当たるたびに「人に戻す」処理を作ります。例外が1割なら、担当者の作業は「全件処理する」から「例外の1割だけ見る」に変わり、体感で9割近くが軽くなります。

ところが例外が3割を超えると、担当者は自動処理の結果が正しいかを毎回確認するようになります。こうなると作業時間はほとんど減らず、むしろ「確認する」という新しい仕事が増えます。実際に自動化が定着しない原因の多くがここにあり、RPA(人がパソコン画面でやっている操作を記録して、機械に同じ手順を繰り返させるツール)を導入したのに使われなくなる例もほぼ同じ理由です。詳しくは業務自動化が定着しない理由RPAが動かなくなる原因で扱っています。

「できない」と判定された業務も捨てない

境界線の外に出た業務にも、使い道があります。

  • 紙が挟まる業務:紙の工程だけを切り出し、残りが自動化できないか見る。受け取りだけ人がやり、入力以降は自動という形が成立することがあります
  • データが取り出せない業務:これは自動化の失格ではなく、開発案件の候補です。別リストとして残してください
  • 例外が多い業務:手順そのものを見直すと例外が減る場合があります。自動化より先に、ルールの整理が効きます

削減できる時間と金額の試算:どこまで集まれば外注する価値があるか

ここが、洗い出しで最も判断を間違えやすいところです。多くの記事は「優先順位をつけましょう」で終わりますが、いくら分集まれば外注すべきなのかという線を示しません。

時給3,000円換算での損益分岐

自動化サービス(初期100万円+月額10万円・税別)を想定した場合の目安です。この構成の3年間の支払総額は460万円になります。

洗い出した候補の合計

年間の人件費換算

3年間の削減額

判定

月10時間

36万円

108万円

月額分にすら届かない。ノーコード(プログラムを書かずに設定だけで組む)ツールで自力対応する水準

月20時間

72万円

216万円

1業務だけでは足りない。同種の業務を束ねられるかを見る

月34時間

約122万円

約367万円

月額10万円(年120万円)とようやく釣り合う。初期100万円は回収できない

月40時間

144万円

432万円

3年の支払総額460万円とほぼ釣り合う。検討を始めてよいライン

月50時間

180万円

540万円

3年で差し引き約80万円のプラス。明確に検討に値する

月80時間

288万円

864万円

投資対効果は明確。優先度を上げてよい

計算根拠は次のとおりです。初期100万円+月額10万円の3年総額は460万円(月あたり約12.8万円)で、時給3,000円換算では月42.6時間分に相当します。2年で見るなら総額340万円(月あたり約14.2万円)=月47時間分です。ここから「月40〜50時間」という合格ラインが出ます。

ここで見落とされやすいのが、月額がかかり続ける点です。 月額10万円は年120万円、時給3,000円換算では月33時間分が毎年出ていく計算になります。削減できた時間がこの水準を超えて初めて、初期100万円の回収が始まります。月40時間なら差し引きは年24万円で、初期費用を取り戻すのに4年前後かかります。月50時間なら差し引き年60万円となり、1年8ヶ月ほどで取り戻せます。月33時間付近に境目があり、そこを越えた途端に採算が急に良くなるのがこの構造の特徴です。候補をあと1〜2本足せるかどうかで結論が変わるため、このあとで扱う束ね方を先に詰めてください。

なお、この試算は月額10万円(10名規模)を前提にしています。月額は処理量と規模に応じて10万円〜50万円(税別)まで変動し、30名規模で20万円、50名規模で30万円、100名規模で50万円が目安です。月額20万円なら3年総額は820万円となり、釣り合うのはおおむね月76時間分です。自社の規模に合わせて置き換えて計算してください

1業務単位で計算すると、ほぼ必ず「回収できない」になる

月20時間の業務が1本見つかったとします。年72万円です。この1本だけで初期100万円+月額10万円を回収しようとすると、3年で460万円に対して216万円にしかならず、赤字です

ここで「自動化は割に合わない」と結論づけてしまう会社が非常に多いのですが、これは数え方の問題です。自動化は1業務ではなく、同じ性質の業務を束ねて発注したときに初めて成立します

束ね方の考え方はこうです。

  • 同じ作業を複数人がやっている:営業事務3名が同じ入力作業をしているなら、20時間ではなく60時間
  • 同じ仕組みで処理できる:「A社のCSVを取り込む」「B社のCSVを取り込む」は別業務に見えて、作る仕組みはほぼ同じ。まとめて1件として数える
  • 前後の工程がつながっている:データ取り込み→突合→レポート作成が別々に書かれていたら、1本の流れとして数える

洗い出しシートを眺めて、使用システムと成果物が似ている行をグループ化する。これをやるだけで、単体では20時間だった候補が50時間を超えることは珍しくありません。効果の測り方そのものは自動化の効果測定AI導入のROI試算で詳しく扱っています。

洗い出した候補を3つに仕分ける

ノーコード自動化ツールMakeの公式イメージ

出典: Make 公式サイト

合計時間が見えたら、候補を行き先別に分けます。すべてを外注する必要はありません。

仕分けの判断フロー

上から順に見てください。

1. 合計が月20時間未満か? → はい:自力で対応する。手順の見直し、Excelの関数化、ノーコードツールで十分です。この規模で外注すると費用のほうが上回ります。

2. 必要なデータを、既存システムから取り出せないか? → 取り出せない:開発を検討する。画面でしか見られない、出力機能がない、部署ごとに別々のExcel台帳で管理している——こうした状態は「作業を機械に渡す」話ではなく「仕組みを作り直す」話です。ここを見誤って無理に自動化すると、動くには動くが壊れやすい仕組みができあがります。

3. 例外判断が3割以上か? → はい:まず手順を整理する。自動化はそのあとです。

4. 上記のいずれにも当てはまらず、合計が月40時間以上あるか? → はい:自動化サービスの対象です。繰り返し発生し、デジタルで完結し、判断ルールが定義できる業務が束で存在している状態です。

この仕分けで「開発」に振り分けられた候補は、既存システムの改修や、分散した台帳の統合といった案件になります。当社の場合は小規模改修が30万円〜、PoC(試験的に作って効果を確かめる段階)が300万円〜、本開発は個別見積です(いずれも税別)。どこまでが改修で済み、どこからが作り直しになるかは、受託開発の相談窓口で要件が固まる前の段階からご相談いただけます。初回相談は無料です。

一方で「自動化サービス」に振り分けられた候補は、御社専用のAI社員が定型業務を実行するシゴハヤエージェントの対象になります。初期100万円+月額10万円〜(税別)、導入期間は標準1〜2ヶ月です。

候補が1つに絞れたあとの「自動化か開発か」の判断は、業務自動化と受託開発はどちらを選ぶべきかで5つの質問に整理しています。この記事が「候補を見つけて数える」段階を扱うのに対し、そちらは「見つかった候補をどちらに出すか決める」段階です。

実現する手段と費用の目安

アプリ間連携を自動化するZapierの公式イメージ

出典: Zapier 公式サイト

仕分けの結果を、実際の手段と費用に接続します。金額はすべて税別、2026年9月時点で確認した公開価格です。

手段

費用

向く候補

手順の見直し・Excelの関数化

0円〜数万円

合計が月20時間未満。まずここから

ノーコードツール(Zapier)

無料枠100タスク/月/有料は月$19.99(年払・750タスク)〜、$49.00で2,000タスク

アプリ間のデータ受け渡し。担当者が自分で組める

ノーコードツール(Make)

無料枠1,000クレジット/月(シナリオ2本・15分間隔)/Core 月$9、Pro 月$16、Teams 月$29

分岐のある処理。Zapierより安価

Power Automate

Premium ¥2,248/ユーザー/月、Process ¥22,488/ボット/月

Microsoft 365中心の環境

RPA(デスクトップ型)

初期0〜10万円程度+月額1〜5万円程度、買い切り10〜50万円程度

画面操作の自動化。シナリオ構築を外注すると業務1本20〜80万円程度

RPA(サーバー型)

初期100〜500万円程度

全社展開・大量処理

自動化サービス(シゴハヤエージェント)

初期100万円+月額10〜50万円

合計月40時間以上。社内にエンジニアがいない

受託開発

小規模改修30万円〜/PoC 300万円〜/本開発は個別見積

データが取り出せない・仕組み自体がない

Zapier と Make はドル建てのため、円換算額は為替で変動します。RPAの相場はベンダー各社の公開情報をもとにした目安で、製品により幅があります。

費用を見るときの注意点

ツール料金の比較だけで決めると、ほぼ確実に見誤ります。実際にかかるのはツール料金+作る人の工数+動かし続ける人の工数です。

月$9のツールでも、シナリオを組める人が社内にいなければ外注費がかかり、組んだ本人が異動すれば誰も直せなくなります。RPAのシナリオ構築を外注すると業務1本20〜80万円程度が目安で、業務が3本あれば構築費だけで60〜240万円になります。「安いツール+高い人件費」と「高いサービス+人件費ゼロ」のどちらが安いかは、候補の本数で決まります。

ノーコードツールと自動化サービスの違いはノーコードとAIエージェントの違い、費用の内訳はAIエージェント導入の費用で詳しく扱っています。補助金を使う選択肢もあり、その場合はデジタル化・AI導入補助金の締切で最新の日程をご確認ください。

洗い出しが失敗する4つのパターンと、その対処

洗い出しは「やること自体」は難しくありません。失敗するのは決まったパターンです。

1. Excelにまとめて終わり、更新されずに死ぬ

最も多い失敗です。立派なシートができあがり、報告資料になり、そのまま誰も開かなくなります。

対処は1つだけで、洗い出しが終わったら1業務だけ先に着手して、成果を出すことです。全体計画を作り込むより、月7時間の業務を1本止めて「これがなくなった」と見せるほうが、社内の空気が変わります。精神論ではなく順番の問題です。

2. 現場が「余計な仕事」と受け取って協力しない

洗い出しの目的が「人を減らすため」と伝わると、現場は必ず所要時間を少なく申告します。これでは数字が使えません。

対処は、目的を先に明示することです。「この作業をなくして、本来やってほしい仕事に時間を回したい」と言い切る。加えて、記録期間を1週間に限定し、いつ終わるかを最初に伝えると回収率が上がります。

3. 粒度がバラバラで比較できない

「月次決算」と書く人と、「銀行明細のダウンロード」と書く人が混在すると、時間の合計が意味をなさなくなります。

対処は、記入例を2〜3行先に埋めて配ることです。ルールを文章で説明するより、埋まったシートを見せるほうが早く揃います。目安は「1つの作業が終わって、次の人に渡るまで」を1行とすることです。

4. 自動化できる業務を、現場が最初から除外している

「これは無理だと思うので書きませんでした」が後から出てくるケースです。実際には、現場が無理だと思っている業務ほど自動化の余地が大きいことがあります。判断は集めたあとに行い、記録の段階では判断させないでください。

実際にやった事例:洗い出しの結果どうなったか

当社が関わったケースから、洗い出しの段階で何が起きたかを紹介します。守秘契約のため社名は伏せます。

調剤薬局のケース:束ねたら合格ラインを超えた

課題:「なんとなく事務が忙しい」という状態で、何から手を付けるか決まっていませんでした。1週間の記録を取ったところ、発注データと納品データの突合、在庫の棚卸し集計など、似た性質の作業が複数の行に分かれて出てきました。

洗い出しで分かったこと:単体で見ると1業務あたり月10〜15時間で、どれも「外注するほどではない」規模でした。しかし使用システムと成果物が同じ行をグループ化したところ、合計で月40時間規模になりました。1業務で判断していたら、この案件は「割に合わない」で終わっていたということです。

何がどう変わったか:卸ごとに形式の違うデータを自動で取り込み、一致するものは確定、差異が出たものだけを確認リストに出す形にしました。担当者の作業は「全件を照合する」から「差異の数件を確認する」に変わっています。時給3,000円換算で月12万円相当の作業量です。

なお同じ薬局でも、処方箋の原本確認と患者対応は紙と対面が前提のため、洗い出しの段階で対象外として切り分けています。全部をやろうとしなかったことが、結果的に早く終わった理由でした。

医療機関のケース:洗い出しで「開発案件」だと分かった

課題:部門ごとに別々のExcel台帳で記録を管理しており、集計のたびに転記が発生していました。当初は「転記作業を自動化したい」という相談でした。

洗い出しで分かったこと:シートの「データの取り出し可否」の列を埋める段階で、台帳が部署ごとに分かれていて同時に開けず、更新履歴も残らないことが判明しました。転記を自動化しても、台帳が分かれている構造そのものは残ります。 つまりこれは自動化の候補ではなく、開発の候補でした。

何がどう変わったか:分散していた台帳を1つに統合し、権限と更新履歴を持つ形に作り替えました。転記工程そのものがなくなり、集計は画面上で完結します。規制業種のためデータの置き場所の設計に時間をかけており、当社では情報処理安全確保支援士がセキュリティ面のレビューに入っています。

この2件の差は、洗い出しシートの列の差でした。 「業務名と時間」だけを集めていたら、どちらも同じ「転記作業の自動化」に見えます。データが取り出せるかどうかを1列足しておくだけで、行き先が変わります。分散したExcelの扱いはExcel業務のシステム化でも扱っています。

洗い出しから導入までの流れと期間

候補が固まったあとの進み方です。

段階

やること

期間の目安

1. 範囲の決定

対象部署・対象プロセスを決める

1日

2. 記録

1週間分の作業を書き出す+月次業務を追記

1週間

3. シート化・換算

11項目に整理し、年間工数と金額に直す

半日〜1日

4. 仕分け

自力/自動化/開発の3つに振り分ける

半日

5. 相談・見積

候補リストを持って外部に相談する

1〜2週間

6. 構築・テスト

環境構築、並行運用での検証

1〜2ヶ月(自動化サービスの場合)

7. 本番稼働

運用開始、例外対応の見直し

1部署であれば、ステップ1から4まで実質2週間で到達できます。全社を対象にする場合は現場の記入待ちが入るため、2〜3週間を見ておいてください。

段階5で外部に相談する際は、埋めたシートをそのまま持参するのが最も早い進め方です。「何がどれくらい自動化できますか」と白紙で聞くより、「この11項目が埋まった15行があります」と出したほうが、見積の精度も速度も上がります。当社では無料相談の段階で対象業務と効果の整理から一緒に行っています。

自動化を任せられる業務の範囲についてはAIエージェントに任せられる業務の範囲も参考になります。

よくある質問

Q1. 洗い出しを外部に手伝ってもらうことはできますか。その場合いくらかかりますか。

可能です。当社では無料相談の中で対象業務の整理まで行っており、洗い出し自体に別途費用はいただいていません。本格的な業務分析を独立した案件として外注する場合、コンサルティング会社の業務棚卸し支援はおおむね数十万円〜の規模になりますが、10〜15業務の範囲であれば社内で十分に実施できます。まずは1部署で自力で試し、詰まった箇所だけ相談するのが費用対効果は高くなります。

Q2. 社員10名以下の会社でも、洗い出しをやる意味はありますか。

あります。ただし結論が「外注しない」になる可能性は高くなります。10名規模だと合計が月20時間前後で止まることが多く、その場合はノーコードツール(Make なら月$9〜)で自力対応するのが合理的です。洗い出しの価値は外注判断だけでなく、属人化している業務を特定できることにもあります。担当者が1人しかいない業務が何本あるかを把握しておくだけでも、退職時のリスクが下がります。

Q3. 繁忙期しか発生しない業務は、候補に入れるべきですか。

月あたりの平均に直して入れてください。「3月に集中して40時間」なら年40時間、月換算で3.3時間です。金額では年12万円となり、単体では外注の対象になりません。ただし繁忙期業務は残業代や派遣費用が実際に発生していることが多く、その場合は時給3,000円ではなく実支払額で計算してください。数字が変わります。

Q4. 洗い出した候補を、どの順番で着手すべきですか。

年間工数が多い順ではなく、「年間工数が多い × 例外率が低い」の順です。工数だけで選ぶと、最も重い業務が同時に最も例外の多い業務であることが多く、初回から難易度の高い案件に当たります。最初の1本は、規模は中くらいでも例外率が1割以下のものを選んでください。成功例が1本できると、2本目以降の社内調整が明らかに楽になります。

Q5. 洗い出しシートは、どのくらいの頻度で更新すべきですか。

半年に1回が目安です。ただし「定期的に全部を見直す」運用はまず続きません。現実的なのは、新しい業務が発生したときにその行だけ足す運用にして、半年に1度まとめて時間を再確認する形です。人事異動の直後は所要時間が大きく変わっているため、異動があった部署だけは都度見直してください。

Q6. すでにRPAを入れていますが、改めて洗い出す意味はありますか。

あります。RPAを導入済みの会社でよく見つかるのが、シナリオが動かなくなって手作業に戻っている業務です。画面の仕様変更やシステム更新で止まったまま放置され、現場が黙って手でやり直しているケースがあります。洗い出しの「使用システム」列を埋める過程でこれが表面化します。稼働中のシナリオ本数と、実際に効果が出ている本数を突き合わせてみてください。

Q7. 候補が月40時間に届かなかった場合、相談しても意味がないですか。

意味はあります。ただし、その場合はご提案する内容が変わります。月20〜40時間であれば、自動化サービスではなくノーコードツールの構成や、小規模改修(30万円〜)で済む可能性を先にお話しします。届かない場合に無理に大きな提案をすることはありません。 数字が出ている状態で相談いただければ、その数字に見合う手段からご案内します。

Q8. 洗い出しの途中で「この業務自体が不要では」と気づいた場合はどうすべきですか。

その場合は自動化せず、やめてください。これは洗い出しの副産物として最も価値のある発見です。前任者の頃から続いているだけで誰も見ていない資料、二重にチェックしている工程などは実際に見つかります。不要な作業を自動化すると、不要な作業が高速で回り続けるだけになります。まず「やめる」、次に「減らす」、最後に「自動化する」の順で検討してください。

候補リストができたら、その内容に合う側へご相談ください

洗い出しの結果は、大きく2つに分かれます。

繰り返し発生する定型業務が、合計で月40時間以上集まった場合 — 御社専用のAI社員が定型業務を実行するサービスの対象です。初期100万円+月額10万円〜(税別、規模により月額50万円まで)、導入期間は標準1〜2ヶ月。埋めたシートをお持ちいただければ、どの行が対象になり、どの行が対象外かを最初の相談でお伝えします。

シゴハヤエージェントに相談する

「データが取り出せない」「台帳が分かれている」など、仕組み自体を作り直す必要が出た場合 — 受託開発の対象です。小規模改修30万円〜、PoC 300万円〜(いずれも税別)。医療機関・調剤薬局・インフラ企業での実績があり、要件が固まっていない段階からご相談いただけます。初回相談は無料です。

受託開発を相談する

どちらに該当するか判断がつかない場合は、まず前者にご相談ください。洗い出しシートを見た時点で、開発が必要な案件かどうかはお伝えできます。

補助金の枠内で導入できる範囲を試算します

補助金前提で相談する

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AI革命

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編集部

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