AIツール2026年11月更新

ERNIE 5.5 Flash Baseとは?百度の280Bベースモデルの性能・ライセンス・必要GPU・使い方を解説【2026年11月】

公開日: 2026/11/05
ERNIE 5.5 Flash Baseとは?百度の280Bベースモデルの性能・ライセンス・必要GPU・使い方を解説【2026年11月】

この記事のポイント

ERNIE 5.5 Flash Baseは、百度が2026年11月5日に重みを公開した280B(活性14B)のベースモデルで、チャットAIではなく追加学習の土台です。ERNIE 5.5 Flashとの違い、ベンチマークの読み方、売上5,000万ドルの条件やEU・英国・韓国の除外、必要なGPUを公式情報で整理します。

ERNIE 5.5 Flash Baseは、中国の百度(Baidu)が2026年11月5日に重みを公開した、総パラメータ280B・活性パラメータ14BのテキストMoEモデルです。 事前学習を終えた時点のベースモデルです。質問に答えるチャットAIではなく、文章の続きを生成するモデルで、自社データで追加学習するための土台として公開されました。

重みは無料でダウンロードできますが、オープンソースのように自由には使えません。独自ライセンスにはEU・英国・韓国の除外や売上5,000万ドルの条件があり、動かすにはFP8版でもB300を2基、またはH100を8基といったデータセンター級のGPUが必要です。

この記事でわかること

  • ERNIE 5.5 Flash Baseの基本スペックと、ERNIE 5.5 FlashやチャットAIとの違い
  • できること、強み、弱み
  • ベンチマークの結果と、数字を読むときの注意点
  • 料金とライセンスの条件
  • 必要なGPUと、公式手順での動かし方
  • DeepSeek、Tencent、Xiaomiの同規模ベースモデルとの違い
  • 日本企業が使う前に確認したい点

こんな方に向けた記事です: 公開モデルの追加学習を検討している開発者や研究者、新しい中国製モデルを業務で使えるか判断したい情報システム担当者、「ERNIE 5.5」の名前を見てどんなモデルか知りたい方。

要点まとめ:ERNIE 5.5 Flash Baseを3行で

今すぐ使う価値があるのは、GPU環境を持ち、自社でモデルを追加学習する人です。チャットAIとして使いたい方は、事後学習版のERNIE 5.5 Flashの公開を待つか、別のモデルを選ぶほうが現実的です。

  1. 位置づけ: 指示に従う学習をしていないベースモデル。対話用の完成品ではなく、ドメイン適応や指示チューニング、強化学習研究の出発点
  2. 性能: 百度の自社測定では、同規模の公開ベースモデル3種との比較で30項目中24項目が首位。第三者による再現は、現時点で確認できていない
  3. 注意点: 公式のAPIと料金は確認できていない。ライセンスは独自で、地域の除外、売上の条件、他モデルの改善の禁止がある

生成AIの基本から確認したい方は、生成AIとはを先に読むと、この記事の用語がつかみやすくなります。

ERNIE 5.5 Flash Baseとは:基本スペック

ERNIE 5.5 Flashのモデル構成図。43層のバックボーンとMoE、アテンションの構造を示している

出典: ERNIE 公式ブログ

ERNIE 5.5 Flash Baseは、百度のERNIEチームが公開した、テキスト専用の疎なMoE(Mixture of Experts)モデルです。公式ブログは、事前学習の終わりの時点で、中間学習と事後学習の前にあたるチェックポイントだと説明しています。

項目

内容

開発元

Baidu ERNIE Team(百度)

公開日

2026年11月5日

提供形態

重みの配布(Hugging Face、ModelScope)

入出力

テキスト入力、テキスト出力

総パラメータ

280B(2,800億)

活性パラメータ

14B(140億)/トークン。総数の5%

層数

43層(Dense 1層+MoE 42層)

エキスパート

ルーティング対象512個から上位10個を選択、共有1個

コンテキスト長

学習時は最大128K(131,072)、ファインチューニングと推論は1M(1,048,576)

事前学習

33.5Tトークン。ゼロから学習

重みの形式

FP8版、BF16版(別リポジトリ)

ファイルサイズ

FP8版 約288GB、BF16版 約573GB(Hugging Faceの実ファイルの合計)

言語タグ

英語、中国語(日本語の明記なし)

ライセンス

ERNIE 5.5 Flash Base Model License Agreement v1.0(独自)

MoEは、モデル全体のうち入力ごとに一部の「専門家」だけを動かす仕組みです。活性パラメータは、1トークンの処理で実際に動く量のことです。このモデルでは、280Bのうち動くのは14Bだけなので、計算量は全体の規模より小さく抑えられます。ただし、GPUのメモリには280B分の重みをすべて載せる必要があります。

重みの配布先はFP8版とBF16版に分かれています。ChainCatcherの報道によると、数千億パラメータ級の言語モデルの重み公開は、2025年6月のERNIE 4.5以来約16か月ぶりで、ERNIE 5.0と5.1の重みは非公開です。

ベースモデルとは

ベースモデルとは、大量の文章で「次に来る語」を予測する学習だけを終えた段階のモデルです。質問に答える、指示に従うといった振る舞いは、その後の事後学習で身につけます。

一般的にベースモデルへ「この文章を要約して」と入力しても、要約が返るとは限りません。モデルはこの入力を「続きを書く文章」として扱うため、別の依頼文を書き足すこともあります。公式の用途がテキスト補完とされ、completions エンドポイントで使うのはこのためです。

ERNIE 5.5 FlashやチャットAIとの違い

名前の似た「ERNIE 5.5 Flash」は、対話向けに事後学習されるモデルで、2026年11月5日時点では未公開です。公式ブログは「続いて公開する」と書いていますが、日付は示していません。

比較項目

ERNIE 5.5 Flash Base

ERNIE 5.5 Flash

一般的なチャットAI

状態

公開済み

未公開(日付の記載なし)

サービスごとに提供中

主な用途

テキスト補完、追加学習の土台

チャット、推論、ツール呼び出し

質問応答、文章作成など

指示への追従

学習前

事後学習で対応

対応

形式

FP8/BF16

FP8/FP4/BF16

製品やモデルによる

使う場所

自前のGPU環境

未確認

Web、アプリ、APIなど

ERNIE 5.5 Flashの用途と形式は、vLLM-ERNIEの記載によるものです。ERNIE 5.5 Flash BaseをGPTやClaudeなどのチャットモデルと点数で並べても、学習段階が違うため意味のある比較になりません。

ERNIE 5.5 Flash Baseでできること

できることの中心は、文章の続きの生成と、追加学習の土台としての利用です。

用途

内容

テキスト補完

与えた文章の続きを生成する

ドメイン適応

自社や業界の文書で追加学習し、専門知識を持たせる

指示チューニング

指示と回答の例を学習させ、対話できるモデルへ仕上げる

強化学習の研究

事後学習の手法を試す共通の出発点として使う

長文処理

公式の対応長は1Mトークン。設定の変更が必要

画像、音声、動画は扱えません。業務の文書を読ませて質問に答えさせたい場合は、このモデルを単体で使うのではなく、指示チューニングなどを自社で行う前提になります。

ERNIE 5.5 Flash Baseの強み

ERNIE 5.5 Flash Baseと同規模のベースモデル3種を30項目で比べたベンチマークのグラフ

出典: ERNIE 公式ブログ

強みは、公開ベースモデルとして上位に入る百度の自社測定スコアと、長い文脈を軽く保持する設計です。

同規模のベースモデルで30項目中24項目が首位

公式の比較では、DeepSeek V4 Flash Base、Hy3 preview Base、MiMo V2.5 Baseを相手に、30項目中24項目で首位でした。4モデルとも公開チェックポイントから、同じ評価環境、プロンプト、few-shot例、LLM判定器で測定したと公式は説明しています。

分類

首位の項目数

試験

4/4

知識

4/5

STEM

3/3

推論

3/4

多言語

2/3

コード

4/5

長文

4/6

項目数は、公式の表から当社で集計しました。主な項目の点数は次のとおりです。

ベンチマーク

ERNIE 5.5 Flash Base

DeepSeek V4 Flash Base

Hy3 preview Base

MiMo V2.5 Base

MMLU-Pro

78.4

69.2

66.9

65.7

SimpleQA

34.1

29.1

25.9

20.8

GPQA

60.2

55.9

50.2

51.4

HumanEval+

82.3

69.5

78.0

74.4

LiveCodeBench

40.1

31.9

33.5

32.4

LongBench-v2

48.7

44.5

39.8

44.6

首位を取れなかった6項目も確認しておきます。

ベンチマーク

ERNIE 5.5 Flash Base

順位

首位のモデルと点数

ChineseSimpleQA

73.0

3位

DeepSeek 75.3

BBH(CoT)

89.2

3位

Hy3 preview 90.0

INCLUDE-lite

79.5

2位

DeepSeek 79.8

FullStackBench

54.6

2位

Hy3 preview 56.7

HELMET-Rerank

56.2

3位

DeepSeek 60.0

InfiniteBench

46.5

3位

DeepSeek 48.0

これらの数字には、読むときの注意点もあります。

  • すべて百度の自社測定で、第三者の再現は現時点で確認できていない
  • 差が大きい項目はMMLU-Pro(2位と9.2点差)など。CMMLUは0.3点差、RepoQAは0.4点差、MultiLoKoは0.5点差で、ほぼ並んでいる
  • 比較相手3モデルのHugging Faceリポジトリは2026年4月の作成で、ERNIEより約半年前のもの
  • ベースモデルの点数は、事後学習後の性能をそのまま示すものではない

長い文脈を圧縮して保持する

43層のうち37層はHCAと呼ばれる方式で、128トークンを1件に圧縮して保持します。残りの6層はMLAと疎アテンションを組み合わせ、全文脈に細かくアクセスします。多くの層で文脈を圧縮し、一部の層で細部を確認する分担です。

ただし、公式の長文ベンチマークは1M長での精度を示すものではありません。1Mトークン時の精度データは、公式情報に見当たりませんでした。

ECHOで生成を高速化できる

ECHOは、最終層を再利用して先のトークンを予測する仕組みで、投機的デコーディングの下書きモデルを兼ねます。投機的デコーディングとは、先の語を仮に予測し、本体でまとめて検証して生成を速める方法です。

確認できた速度の指標は、SGLang Cookbookに載っているECHOの平均受理長だけです。GSM8K、バッチサイズ1の条件で、下書きを1、2、3ステップにしたときの値はそれぞれ1.93、2.28、2.36トークンでした。スループットとレイテンシの公式値は見当たりません。

ERNIE 5.5 Flash Baseの弱みとできないこと

最大の弱みは、そのままでは業務に使える状態ではないことと、動かすだけでも大きなGPU環境が要ることです。現時点でわかっている制約は次のとおりです。

  • 対話に対応しない: チャット、推論、ツール呼び出しの学習前で、用途はテキスト補完
  • テキスト専用: 画像、音声、動画は扱えない
  • 一般的なPCでは動かない: FP8版でも重みだけで約288GBある
  • 日本語の性能が不明: 言語タグは英語と中国語のみで、日本語の評価は個別に公表されていない
  • 安全性の情報が少ない: 公式ブログに制約事項の節はなく、モデルカードにも安全性評価の記載が見当たらない
  • 提供の約束がない: ライセンス上、百度はホスト型推論、更新、サポート、将来版の提供を約束していない

料金とライセンス

Hugging Faceで公開されているERNIE 5.5 Flash Baseのモデルページの画像

出典: Baidu 公式(Hugging Face)

モデルの重みは無料でダウンロードできますが、公式のAPI料金は確認できていません。実際の費用は、自前で用意するGPUの費用が中心です。

項目

2026年11月5日時点の状況

重みのダウンロード

無料。Hugging Faceの申請手続きなし

ライセンス料

非商用と、関連売上5,000万ドル以下の商用利用はなし

公式API

提供を確認できず

API料金

未確認。千帆の料金ページにERNIE 5.5系の掲載なし

実質コスト

GPUの購入またはレンタルの費用

千帆には別モデルのERNIE 5.1の料金が掲載されていますが、ERNIE 5.5 Flash Baseの料金ではありません。別モデルの単価を流用して見積もらないよう注意してください。

利用区分ごとの条件

ライセンス全文では、用途と売上で条件が分かれます。

利用区分

条件

非商用(研究、教育、評価、個人の実験)

無料。通知は不要で、売上のしきい値も適用されない

商用(関連売上が5,000万ドル以下)

ライセンス料なし。使い始める前に1回の利用通知を送り、「Powered by ERNIE」を表示する

商用(関連売上が5,000万ドル超)

使い始める前に百度の書面許可が必要。費用は個別契約

EU、英国、韓国

許諾の対象外

日本は除外地域に入っていません。商用利用の通知先は Baidu_ERNIE@baidu.com で、事業者、モデル名とバージョン、関連製品と用途、連絡先を伝えます。通知後は返信を待たずに開始できます。

前世代のERNIE 4.5はApache 2.0で公開されていました。今回は独自ライセンスに変わったため、本記事では「オープンソース」ではなく「オープンウェイト(重みの公開)」と表記しています。公開された重みとライセンスをめぐる議論は、Anthropicのオープンウェイトモデルに対する立場でも整理しています。

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動かすのに必要な環境

最小構成の一つに挙げられているNVIDIA H100の基板

出典: NVIDIA H100 公式サイト

vLLM-ERNIEとSGLang Cookbookが示す最小構成は、FP8版でB300またはGB300が2基、B200またはGB200が4基、H100が8基です。BF16版はその2倍のメモリを必要とします。

GPU

FP8版(重み約280GB)

BF16版(重み約560GB)

B300/GB300(288GB)

2基

4基

B200/GB200(192GB)

4基

8基(GB200は2トレイ×4基)

H100(80GB)

8基

2ノード×8基

表の重みの量は公式の目安で、実ファイルの合計はFP8版で約288GB、BF16版で約573GBです。SGLang Cookbookによると、検証の状況と長文利用の条件は次のとおりです。

  • FP8版の単一ノード構成は、B300、GB300、B200、GB200、H100で検証済み
  • BF16版で検証済みなのはB300のみ。ほかの構成は同じメモリ計算からの導出
  • 1Mで使うときは、プリフィルに数十GBの活性メモリが追加で必要。2×B300では同時実行数を1桁にする

vLLMで動かす場合、vLLM-ERNIEの記載ではプラグインはNVIDIA GPU専用です。80GBのGPUでは1Mコンテキストを使えず、上限は262,144トークンです。

追加学習に必要な環境

モデル全体のSFT(教師ありファインチューニング)には、推論よりはるかに大きな環境が要ります。公式が案内するNVIDIA Megatron Bridgeのレシピは、GB300を64基(16ノード×4基)使う構成です。検証済みはBlackwell世代のGB200とGB300で、Hopper世代は各部品が対応するものの未検証です。同じページにLoRAなど軽量な学習の記載はありません。

ERNIE 5.5 Flash Baseの使い方

百度が公開している推論プラグインvLLM-ERNIEのGitHubリポジトリの画像

出典: Baidu 公式(GitHub)

使い方の流れは、推論サーバーを起動し、/v1/completions へ文章を送る形です。チャット用の /v1/chat/completions ではなく、補完用のエンドポイントを使います。次の手順はモデルカードの記載に沿ったもので、どちらの起動例もGPU4基を想定した設定です。手元のGPUの数に合わせて、並列数を変更してください。

SGLangで起動する

docker run -d -it --name ernie55 --gpus all --network host --ipc host \
  -v ~/.cache/huggingface:/root/.cache/huggingface \
  lmsysorg/sglang:dev-ernie-55-flash

sglang serve --model-path baidu/ERNIE-5.5-Flash-Base \
  --tp 4 --attn-dp-size 4 --context-length 131072 \
  --max-running-requests 1024 --host 0.0.0.0 --port 30000

ほかのGPU構成の起動オプションは、SGLang Cookbookでハードウェアと精度を選ぶと確認できます。

vLLMで起動する

uv venv --python 3.12 ernie5-venv
source ernie5-venv/bin/activate
uv pip install vllm==0.32.0
uv pip install git+https://github.com/baidu/vLLM-ERNIE.git

vllm serve baidu/ERNIE-5.5-Flash-Base --kv-cache-dtype fp8 \
  --enable-expert-parallel --data-parallel-size 4 \
  --max-model-len 131072 --port 30000 --moe-backend humming

--moe-backend humming は、Blackwell世代のGPUでFP8版を使うときの指定です。H100などのHopper世代では外します。80GBのGPUでFP8版を動かす場合、vLLM-ERNIEは --data-parallel-size 8 と --gpu-memory-utilization 0.93 を指定するよう案内しています。

文章の続きを生成する

curl http://localhost:30000/v1/completions -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{"model":"baidu/ERNIE-5.5-Flash-Base","prompt":"Large language models are","max_tokens":256,"temperature":0}'

prompt には質問ではなく、続きを書かせたい文章を入れます。サンプルの上限は131,072トークンです。1Mで使う場合、SGLangでは --context-length 1048576 を指定し、同時実行数などを下げます。

Transformersでも読み込めます。公式サンプルはBF16版を使っており、入力の先頭にBOSトークンが必要なので add_special_tokens=True のままにします。

サーバーの公開範囲に注意してください。 vLLM-ERNIEは、サンプルが認証なしで 0.0.0.0 にバインドすると注意を促しています。信頼できないネットワークでは、APIキーを設定するか、127.0.0.1 にバインドします。

他社のベースモデルとの違い

性能では百度の自社測定で首位が多い一方、ライセンスの自由度ではMITのDeepSeekとMiMoが有利です。比較できる相手は、同じ段階のベースモデルに限られます。

比較項目

ERNIE 5.5 Flash Base

DeepSeek V4 Flash Base

Hy3 preview Base

MiMo V2.5 Base

開発元

百度

DeepSeek

Tencent

Xiaomi

総/活性パラメータ

280B/14B

284B/13B

295B/21B

310B/15B

ライセンス

独自

MIT

Tencent Hy Community

MIT

商用の主な条件

関連売上5,000万ドルのしきい値

MITの範囲

公開時の月間利用者1億人超で別途許諾

MITの範囲

地域の除外

EU、英国、韓国

なし

EU、英国、韓国

なし

MMLU-Pro

78.4

69.2

66.9

65.7

HumanEval+

82.3

69.5

78.0

74.4

LongBench-v2

48.7

44.5

39.8

44.6

点数はすべて百度の自社測定です。EU、英国、韓国の除外はERNIEだけの条件ではなく、Hy3 preview Baseにも同じ除外があります。なお、Tencentの正式版Hy3はApache 2.0のタグが付いており、preview Baseとは条件が異なります。

選び分けの目安は次のとおりです。

重視すること

候補

ベンチマークの点数を重視して追加学習を試したい

ERNIE 5.5 Flash Base

地域の制約がなく、条件の単純なライセンスで製品に組み込みたい

DeepSeek V4 Flash Base、MiMo V2.5 Base

チャットやAPIですぐに使いたい

事後学習済みのモデル

比較相手の系統のモデルについては、DeepSeek V4 Flashとは、Hy3 Previewとは、Xiaomi MiMo V2.5とはで解説しています。正式版はTencent Hy3とはで確認できます。

APIですぐ試せる同時期のモデルとしては、MITで公開されたGLM-5.3-Flashや、重みも公開されたKimi K3.1 Proがあります。自社のGPUで動かす前提で、より小さいMoEを探すならQwen3.8-Flash-Nextも候補です。

日本企業が使う前に確認したい点

日本は許諾地域に含まれますが、顧客の所在地と製品全体の売上によっては条件に抵触するおそれがあります。次の表はライセンス原文から読み取れる論点で、法的な判断ではありません。商用利用の前に法務へ確認してください。条文は改定される可能性もあり、ライセンスの内容は2026年11月5日時点で確認したものです。

確認項目

ライセンスの内容

実務で見る点

地域(第5.3条)

モデル、派生モデル、出力は、除外地域で使用、複製、改変、配布、表示できない

韓国、EU、英国に顧客や拠点がないか

売上の数え方(第1.7条)

関連製品の売上の全額を直近12か月で判定する。同じ支配下の事業体の売上も合算する

一部の機能に組み込むだけでも、製品全体の売上が対象になる

しきい値の超過(第4.3条)

超える前に書面許可が必要。許可がなければ超えた時点で該当の利用を停止する

売上の見込みと、許可を得るまでの期間

他モデルの改善(第5.5条)

モデル、派生モデル、出力を使って他のAIを改善できない

出力を別モデルの学習データにする計画がないか

派生モデル(第1.5条)

量子化、枝刈り、マージ、アダプター、蒸留、合成データ学習によるモデルも含む

自社で作ったモデルにも条件が及ぶ

表示(第3.2条)

商用製品に「Powered by ERNIE」を表示する。API等は開発者向け文書、社内利用は社内文書でも可

表示する場所を決める

第三者への提供(第5.6条)

不正利用を防ぐ安全策、違反の報告窓口、調査と停止の対応が必要

運用体制を用意できるか

禁止用途(Exhibit A)

軍事利用、許認可のない金融、法律、医療等の専門業務、重大な自動判断、機械生成と明示しない公開、マルウェア作成など

採用、与信、医療などの判断に使わないか

紛争(第9.1条、第9.2条、第6.6条)

香港法、香港の裁判所の専属管轄。モデルや出力の権利侵害を主張する訴訟を起こすと、ライセンスは自動終了する

自社の法務基準に合うか

日本から提供するWebサービスに海外からアクセスされた場合、第5.3条の「表示」がどう適用されるかは原文だけでは判断できません。EUや韓国のユーザーが見込まれるサービスでは、特に慎重な確認が必要です。

データの扱いについては、自社環境で動かす場合に、入力が百度へ送られる仕組みの記載はありません。ただし、実際の通信経路は構成によって変わり、当社で通信の有無を検証したものではありません。vLLMでGitHubのプラグインを導入する場合は、そのコードも社内の審査対象に含めてください。

また、安全性の調整が済んでいるという説明はありません。社外向けに提供するなら、不適切な出力を防ぐ仕組みを自社で用意する必要があります。中国製モデルの業務利用全般のリスクは、中国製AIモデルの台頭と日本企業への影響が参考になります。

新しいモデルを自社の業務システムへ組み込むときは、API経由で使うか、自社環境で動かすかによって方法と費用が大きく変わります。開発の範囲ごとの費用の目安は、AI開発の費用相場で確認できます。

こんな人におすすめ/おすすめしない人

使うかどうかは、GPU環境と追加学習の体制があるかで分かれます。

こんな人におすすめ

  • 自社データで追加学習したい研究チームやモデル開発者
  • 事後学習の手法を、最新のベースモデルで検証したい研究者
  • 複数のGPUをすでに運用している企業
  • 関連売上が5,000万ドル以下で、EU、英国、韓国に提供しない製品を作る事業者

おすすめしない人

  • ChatGPTのように、すぐ質問して使いたい人
  • データセンター級のGPU環境を持たない人
  • EU、英国、韓国の顧客にサービスを提供する企業
  • 制約の少ないライセンスを重視する企業
  • 医療、金融、採用などで自動判断をしたい企業
  • 日本語の性能を確認済みのモデルが必要な人

状況ごとの判断は次の表にまとめました。

あなたの状況

おすすめの判断

チャットAIとして使いたい

使わない。事後学習版を待つか、別のモデルを選ぶ

APIで手軽に試したい

現時点では公式APIを確認できないため、API提供のあるモデルを選ぶ

研究や評価で触りたい

非商用として利用できる。GPU環境があれば試す価値がある

自社製品に組み込みたい

地域、関連売上、表示義務を確認してから判断する

日本語の業務に使いたい

自社の文書で性能を検証してから判断する

他モデルの学習データを作りたい

ライセンス第5.5条の禁止に当たるおそれがあるため、法務に確認する

ERNIE 5.5 Flash Baseのよくある質問

ERNIE 5.5 Flashはいつ公開されますか?

公式は「続いて公開する」と書いていますが、日付は出ていません。vLLM-ERNIEでも「coming soon」の扱いです。FP4版の提供も同じく予定の段階です。

Hugging Faceの表示が286Bなのはなぜですか?

Hugging Faceの表示は、safetensorsの実数値(286,245,697,882)に基づくものです。モデルカード本文の表記は280Bです。差の内訳について、百度の公式説明は確認できていません。

GGUFなどの量子化版はありますか?

公式のGGUFや低ビット量子化版は確認できていません。第三者が量子化したモデルはライセンス上の派生モデルにあたるため、利用する場合も同じ条件を確認する必要があります。

Macで動かせますか?

動作は確認できていません。vLLMプラグインはNVIDIA GPU専用で、公式が示す構成もデータセンター向けのGPUです。

非商用の評価から商用へ移るときに必要な手続きはありますか?

商用利用を始める前に、利用通知と「Powered by ERNIE」の表示が必要です。関連売上が5,000万ドルを超える場合は、通知ではなく事前の書面許可に切り替わります。

ERNIE 5.5 Flash Baseの出力を公開しても問題ありませんか?

禁止用途の一つに、機械生成と明示しない公開があります。Webサイトや資料に出力を使う場合は、機械生成であることの明示が必要か確認してください。除外地域で出力を表示できない点にも注意が必要です。

まとめ

ERNIE 5.5 Flash Baseは、百度が公開した280B・活性14Bのベースモデルで、追加学習の土台として使うものです。自社測定では同規模の公開ベースモデルの中で30項目中24項目が首位でしたが、チャットAIとしてそのまま使えるモデルではありません。

使うかどうかは、用途、環境、ライセンスの条件で判断します。

  • 用途: 対話やAPI利用が目的なら、事後学習版の公開を待つか別のモデルを選ぶ
  • 環境: FP8版でもB300を2基またはH100を8基、モデル全体のSFTではGB300を64基使う構成が示されている
  • ライセンス: 無料で入手できるが、地域、関連売上、他モデルの改善、表示義務の条件がある

事後学習版やAPI料金、第三者の評価はまだ出ていません。商用利用を検討する場合は、公式ブログと最新のライセンスを確認してから判断してください。

このツールを自社のシステムや業務にどう組み込むか、ご提案します

この記事の著者

AI革命

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編集部

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