ビジネス活用2026年10月更新

システム保守費用(保守運用費)の相場と比率|開発費の何%か、内訳と範囲の比べ方【2026年10月】

公開日: 2026/09/14
更新日: 2026/10/10
システム保守費用(保守運用費)の相場と比率|開発費の何%か、内訳と範囲の比べ方【2026年10月】

この記事のポイント

システム保守費用の相場は開発費の年5〜30%で、目安は15%前後(500万円なら年75万円・月約6.3万円)。比率の早見表、月額に含む作業と別見積の分け方、障害・問い合わせ・AIモデル変更の責任分界表、見積を1時間あたりで比べる方法を解説。

システム保守費用の相場は、開発会社などの公開値で年間に開発費の5〜30%と幅があり、比率を示している4社の範囲にはいずれも15%が含まれます。開発費500万円のシステムなら、15%で年75万円(月約6.3万円)です。

ただし、この比率は統計ではなく経験則で、月額に「障害対応」「問い合わせ」「OSやAIモデルの変更への対応」「機能の追加」のどれが含まれるかで、妥当な金額は大きく変わります。この記事では、比率の早見表に加えて、保守・運用・追加開発の分け方、問い合わせや障害ごとの責任分界表、見積を1時間あたりで比べる方法、AIを組み込んだシステムで別に見る利用料とモデル変更の費用、納品後に社内でAIを使って直すときの取り決めを整理します。なお当社の受託開発の価格は、既存システムの改修100万円〜、PoC(本格的に作る前の試作検証)300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別。クラウドや外部APIなどの実費は別)で、保守・運用は作ったシステムに合わせて個別に提案しています。

システム保守費用の相場と比率|開発費の年5〜30%、目安は15%前後

まず、各社が公開している「開発費に対する年間の保守費用の比率」を並べます(2026年10月10日に各社の公開ページで確認)。

公開している会社

年間の保守費用(開発費に対する比率)

補足

発注ナビ(発注マッチングの発注ラウンジを運営)

約15%

―

FUNBREW(開発会社)

15〜25%

15〜20%の範囲はIPAの資料に由来するとしている

Enlyt(開発・保守会社)

10〜30%

―

オブライト(IT企業)

5〜15%

統計ではなく、経験的に語られてきた目安と説明

GXO(開発会社)

比率は示していない

開発費に比率を掛ける考え方は経験則で、見積の内訳で確かめるよう説明

比率を示している4社の範囲には、いずれも15%が含まれます。ただ、比率の根拠となる統計の表を示している会社は、確認した範囲ではありませんでした。FUNBREW社はIPA(情報処理推進機構)の資料に由来するとしていますが、当社はIPAの公開資料でこの比率を示した表を確認できていません。比率は「開発費のおおよそ何割を毎年見込むか」の最初の目安として使い、金額が妥当かどうかは月額に含まれる作業で確かめます。

なぜ5%から30%までばらつくのか

比率がばらつく根本の原因は、「保守」という言葉が指す作業の範囲が会社ごとに違うことです。ソフトウェアの保守について定めた日本産業規格(JIS X 0161)は、保守を次の4つに分けています。

保守の種類

業務の言葉にすると

例

是正保守

不具合が出たところを直す

運用を始めてから見つかった不具合の修正

予防保守

不具合が出る前に手を打つ

放置すると障害になりそうな箇所の修正

適応保守

周りの変化に合わせる

OSの更新、法改正、連携先サービスの仕様変更への対応

完全化保守

使いやすく直す

処理を速くする、直しやすい作りに改める

月額に「不具合が出たところを直す」だけを含める契約なら比率は低めになり、「周りの変化に合わせる」「使いやすく直す」まで含めれば高めになります。比率だけを見て高い・安いを判断できないのは、このためです。 見積を受け取ったら、この4つのうちどこまでが月額に含まれているかを最初に確認してください。

システムの種類で見た比率の目安

オブライト社は、システムの種類ごとに次の目安を示しています。これも1社の見解で、統計ではありません。

システムの種類

年間の保守費用(開発費に対する比率)

コーポレートサイト・LP

3〜8%

業務システム(社内利用)

5〜10%

顧客向けWebサービス・EC

10〜15%

スマートフォンアプリ

10〜20%

24時間稼働・止められないシステム

15〜20%超

社内だけで使い、日中に止まっても手作業で業務を回せるシステムは低め、顧客が使うシステムや夜間も止められないシステムは高め、と読めます。自社のシステムがどこに当たるかで、見込む比率を変えてください。

開発費別の早見表(年10%・15%・20%で計算)

計算式は「初期開発費 × 比率 = 年間の保守費用」、それを12で割ったものが月額です。

初期開発費

年10%

年15%

年20%

300万円

年30万円(月2.5万円)

年45万円(月約3.8万円)

年60万円(月5万円)

500万円

年50万円(月約4.2万円)

年75万円(月約6.3万円)

年100万円(月約8.3万円)

1,000万円

年100万円(月約8.3万円)

年150万円(月12.5万円)

年200万円(月約16.7万円)

3,000万円

年300万円(月25万円)

年450万円(月37.5万円)

年600万円(月50万円)

15%で5年使うと、保守費用だけで初期開発費の75%に達します。稟議書には初期費用だけでなく、この5年分を並べて書くのが安全です。作るか既製のサービスを使うかを5年総額で比べる方法は、業務システム開発の費用相場で解説しています。

保守運用費が重いと感じるのは、自社だけではない

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2026」によると、2025年度のIT予算のうち、今あるシステムの維持・運営に使われた割合は75.9%で、新しい取り組みに使われたのは24.1%でした。新しい取り組みの割合は2021年度以降24%前後で横ばいです。IT予算の約4分の3が「今あるものを動かし続ける費用」に消えているのは、多くの企業に共通する状況です。

保守運用費は何に払っているのか|固定・従量・スポットの3つに分ける

見積書で「保守運用費 月額◯万円」とひとまとめにされていると、何にいくら払っているのかが分かりません。まず「運用」と「保守」を分けます。

  • 運用:システムを止めずに回す日常の作業。稼働の監視、バックアップ、アカウントの管理、利用者からの問い合わせ対応など
  • 保守:システムそのものに手を入れる作業。不具合の修正、OSや部品の更新への対応、改修など

多くの見積書や解説記事は、この2つをまとめて「保守費」と呼んでいます。そのうえで、費用の性質で3つに分けると、自社の見積書をそのまま当てはめられます。

費用の性質

区分

主な作業・費目

固定(毎月ほぼ一定)

運用

稼働監視と異常時の一次対応、バックアップ、記録(ログ)の確認、問い合わせ対応、アカウント管理

固定

保守

月の作業時間枠の中で行う軽微な修正(文言変更、項目追加など)

固定

AI固有

AIの回答品質の抜き取り確認、AIへの指示文の調整、AIに読ませる資料の更新

従量(使った分だけ)

サーバー・クラウド

クラウド・サーバーの利用料のうち、アクセス数や処理量に比例する部分

従量

AI固有

AIの利用料(処理した文章量に応じた課金)

スポット(突発的・不定期)

保守

不具合の調査と修正(件数次第)、OS・部品・証明書のサポート終了への対応

スポット

AI固有

提供元のモデル終了に伴う乗り換えと再テスト、精度が落ちたときの再学習(自社データで学習させるAIの場合)

予算の組み方は、性質ごとに変えます。固定費は年額で確定させ、従量費は「想定の処理件数×単価」に上限を設け、スポット費は年間の予備枠として別に確保します。3つが1つの月額に混ざっている見積は、翌年の予算が読めません。 見積を依頼する段階で、この3区分で金額を分けて出してもらうよう伝えてください。

保守・運用・追加開発の範囲を決める|問い合わせ・障害・改修の責任分界表

比率が会社ごとにばらつくのは、月額に含む作業が違うためでした。見積を比べる前に、頼みたい作業を次の3つに分けます。

  • 運用:止めずに回す作業。稼働の監視、バックアップ、アカウントの管理、問い合わせの一次対応
  • 保守:今ある機能を、今のとおり動かし続ける作業。不具合の修正、OS・部品・証明書・外部サービス・AIモデルの変更への対応
  • 追加開発:機能や業務のルールを変える作業。画面・帳票の追加、承認条件の変更、新しい連携。月額の時間枠に入れるか、都度見積にするかを決める

そのうえで、問い合わせや障害が起きたときに「誰が受けて、誰が判断し、どこまでを月額で対応するか」を出来事ごとに決めておくと、比率では見えない差を比べられます。下の表は説明用の記入例で、実際の区分は契約ごとに決めます。

出来事

最初に受ける人

判断する人

記入例:月額か別見積か

契約前に決めること

利用者からの操作の質問

社内の担当者

社内の担当者

社内で完結。答えられないものだけ月額の時間枠で保守会社へ

保守会社に回す質問の範囲と、受付の手段

システムが止まる・エラーが出る

社内の担当者から保守会社へ

保守会社(原因の切り分け)

月額

対象にする障害の範囲、受付の時間帯、動き始めるまでの目標時間、連絡の順番

計算や集計の結果が合わない

業務の担当者

正しい値は業務側、原因は保守会社

原因が不具合なら月額、入力の誤りや業務ルールの変更なら別見積

正しい値を決める人、調査にかける時間の上限

OS・プログラム言語・証明書の期限

保守会社

保守会社が影響を報告し、発注側が承認

証明書の更新は月額、OSや言語の版上げは別見積

期限の何か月前に報告するか

外部サービス・AIモデルの仕様変更や提供終了

保守会社(通知を受ける)

保守会社が影響を報告し、発注側が承認

影響の報告は月額、乗り換えと再評価は別見積か年間の予備枠

通知を受けるアカウントの名義、影響を報告するまでの日数、再評価の範囲

画面・帳票の変更、業務ルールの変更

発注側

発注側

別見積(時間枠に余りがあれば枠内)

「軽微な修正」として枠内で受ける上限

社内でAIを使って変更した箇所の不具合

社内の担当者

発注側と保守会社で原因を確認

調査から別見積

変更履歴の残し方、保守会社に渡す情報(後述)

保守契約の終了・保守会社の切り替え

発注側

発注側

引き継ぎの作業は別見積

引き渡すもの(ソースコード、設計書、運用手順書、アカウント)と協力の範囲

月額に含む作業と別見積の記入例

見積を依頼するときに、次のような1枚を添えると、各社の回答を同じ形で並べられます。右の列は各社に記入してもらいます(説明用の記入例)。

区分

作業

記入例

各社の回答(金額・時間)

月額に含む

稼働の監視と障害の一次対応

平日の日中に受付

(記入)

月額に含む

不具合の調査と修正

月◯時間まで

(記入)

月額に含む

証明書の更新、バックアップの確認

含む

(記入)

月額に含む

月次報告(作業内容、作業時間、残りの時間、未対応の依頼)

含む

(記入)

別見積

画面・帳票の追加、業務ルールの変更

都度見積

(記入)

別見積

OS・言語の版上げ、外部サービス・AIモデルの乗り換えと再評価

影響の報告は月額、作業は都度見積

(記入)

実費

クラウドの利用料、AIの利用料、ライセンス

作業費と分けて請求

(記入)

対応時間と障害の範囲を決める

対応を速くし、受付の時間帯を広げるほど、保守費用は上がります。保守契約では、受付の時間帯(平日の日中だけか、夜間・休日も含むか)、連絡を受けてから動き始めるまでの目標時間、復旧の目標時間を取り決めます。これを「サービスレベル」と呼びます。

すべての機能に同じ水準は要りません。止まったときに業務がどれだけ困るかを機能ごとに分け、止まると困る機能だけを手厚くすると、費用を抑えられます。あわせて「どこまでを障害として受けるか」も文書にしてもらいます。たとえば、自社の端末やネットワークの不調、連携先サービス側の障害、利用者の操作の誤りを月額の対象に含めるかどうかは、会社によって扱いが分かれます。

保守会社を比べるときの質問

保守会社を選ぶとき、または替えるときは、月額を比べる前に、責任分界表の出来事ごとに次の4点を答えてもらうと比べやすくなります。

  1. 一次対応:誰が、どの手段(メール、チャット、電話など)で、どの時間帯に受けるか
  2. 判断:原因の切り分けと、直すかどうかを誰が決めるか。発注側の承認が要る作業は何か
  3. 連絡:障害が起きたとき、AIモデルの終了通知が来たときに、誰に、どの順で、何日以内に知らせるか
  4. 作業範囲:月額で直す範囲と、別見積になる範囲。その境目を判断した例

答えが「一式で対応します」だけの場合は、表の出来事を1つずつ挙げて聞き直してください。開発した会社と保守する会社が別になる場合は、ソースコード・設計書・アカウントの引き渡しと、開発した会社が引き継ぎの質問にどこまで答えるかも確認します。

見積が高いか安いかは「月額 ÷ 含まれる作業時間」で比べる

保守の月額プランは、「月に何時間までの作業を含むか」という時間枠で設計されているものがあります。各社が公開しているプランを、1時間あたりの金額に直して並べました。

会社

プラン

月額

含まれる作業時間

1時間あたり

Enlyt

ミニマム

66,000円

約8時間

約8,250円

Enlyt

ライト

198,000円

約24時間

約8,250円

Enlyt

ベーシック

330,000円

約40時間

約8,250円

FUNBREW

スタンダード

10万円〜

月5時間

約2万円

FUNBREW

プレミアム

30万円〜

月30時間

約1万円

※各社の公開ページに表示されている金額です(2026年10月10日確認。どちらのページにも税込・税別の表記はありません)。1時間あたりの金額は当社が割り算したもので、各社が示している単価ではありません。

同じ「月10万円前後」のプランでも、1時間あたりに直すと約8,000円から約2万円まで、2倍以上の差があります。これは片方が高すぎるという意味ではなく、時間枠の中に含まれる作業の中身が違うためです。たとえばEnlyt社は全プランに、障害が起きたときの復旧、不具合の調査と修正、ミドルウェア(システムを動かすための基本的なソフト)の更新、不明点への問い合わせ対応を含めると説明しています。監視体制や、夜間・休日に対応するかどうかによっても単価は変わります。

つまり、月額だけを並べて比べても意味がありません。見積を比べるときは、次の2つの計算式を使ってください。

  1. 年間保守運用費 ÷ 初期開発費:20%を大きく超えていたら、4種類の保守のうちどこまでが含まれているかの説明を求める
  2. 月額 ÷ 含まれる作業時間:1時間あたりの金額を出し、その時間で「何ができて、何ができないか」を具体的な作業例で確認する

もう1つ大切なのが、時間枠を何に使ったかの月次報告です。「月24時間」の枠があっても、実際に何時間を何に使ったかの報告がなければ、発注側は払っている金額が妥当かどうかを判断できません。契約前に、月次報告の有無と記載項目(作業内容、作業時間、残りの時間、未対応の依頼)を確認してください。複数社の見積を同じ条件で比べる方法は開発の見積もり比較でも整理しています。

AIを組み込んだシステムで増える費用と、変更後の再評価

Anthropicが提供する生成AI「Claude」の公式ロゴ画像

出典: Claude(Anthropic)公式サイト

ここまでの相場は、一般的なシステムの話です。生成AIを組み込んだシステムでは、次の費用と作業が加わります。AIを組み込んだシステムの保守費用が開発費の何%になるかを示した公的な統計は、確認できる範囲では見当たりません。比率でひとまとめにせず、利用料は実費、モデルの終了や変更への対応は突発的な作業、回答の確認と資料の更新は毎月の作業時間として、分けて見積もってもらうのが確実です。

1. AIの利用料|使った分だけ増える

生成AIの利用料は、AIが処理した文章量に応じた従量課金が基本です。料金は「トークン」(AIが処理する文章量の単位)100万あたりの米ドルで決められています。2026年10月10日時点の公式料金の例は次のとおりです。

提供元

モデル(AIの種類)

読み込ませる文章

AIが書き出す文章

Anthropic

Claude Sonnet 5.5

2ドル

10ドル

Anthropic

Claude Sonnet 5

2ドル

10ドル

Anthropic

Claude Haiku 5.5(読み込ませる文章が10万トークン以下の依頼)

0.10ドル

0.50ドル

Anthropic

Claude Haiku 4.5

1ドル

5ドル

OpenAI

gpt-5.6-sol

4ドル

20ドル

OpenAI

gpt-5.6-terra

2ドル

12ドル

OpenAI

gpt-5.6-luna

0.20ドル

1.20ドル

※いずれも100万トークンあたり。OpenAIは読み込ませる文章が27.2万トークン以下の場合の標準料金で、gpt-5.6-solは少なくとも2026年11月21日まで提供される期間限定価格と表示されています。急ぎでない処理をまとめて依頼する方式(Batch)では、Anthropicは50%割引、OpenAIも多くのモデルで約半額になります。

月額の見当は「件数 ×(1件あたりのトークン数 × 単価)」で出せます。仮に、問い合わせ1件で読み込ませる文章が3,000トークン、AIが書き出す文章が700トークン、月1万件を処理するとします。読み込ませる文章は月3,000万トークン、書き出す文章は月700万トークンです。

  • Claude Haiku 4.5:30 × 1ドル + 7 × 5ドル = 約65ドル
  • Claude Sonnet 5.5:30 × 2ドル + 7 × 10ドル = 約130ドル
  • gpt-5.6-luna:30 × 0.20ドル + 7 × 1.20ドル = 約14ドル

これは仮定に基づく試算で、社内の資料を毎回読み込ませる仕組みでは1件あたりの文章量が大きく増えます。1件あたりの金額は小さく見えますが、利用者や処理件数が増えればそのまま月額が増えます。さらに、同じ処理でもモデルを替えると請求額が変わることがあります。AnthropicはClaude 4.7以降のモデルで文章の区切り方を変えており、同じ文章でもトークン数が約30%増えると公表しています。

保守運用費の見積書に「月額運用費◯万円」とだけ書かれていると、保守する人の人件費とAIの利用料を区別できません。JUASの同じ報告書でも、IT予算が増える理由として「AI関連の投資・利用料増加」を挙げた企業は、2025年度計画の36.3%から2026年度予測で43.7%に増えています。利用料が膨らむ実態は企業のAIコスト問題で、単価の詳細はClaudeの料金で解説しています。

2. 提供元のモデル終了による乗り換え|何もしなければAIの部分が止まる

AIを組み込んだシステムの多くは、AnthropicやOpenAIが提供するAIを外部から呼び出して動いています。提供元は古いモデルを、予告期間を置いて提供終了にします。

提供元

公式の予告期間

2026年の実例・予定

Anthropic(Claude)

一般に公開したモデルは少なくとも60日前に通知

Claude Sonnet 4・Opus 4:4月14日に告知 → 6月15日に終了/Claude Opus 4.1:6月5日に告知 → 8月5日に終了/Claude Sonnet 4.5:9月30日に告知 → 11月30日に終了予定

OpenAI

一般提供モデルは最低6か月前、特化版は最低3か月前、試験提供版は2週間程度と短いことも

gpt-3.5-turbo・gpt-4・o1などの旧版:4月22日に告知 → 10月23日に終了予定/gpt-5(2025年8月7日版)・o3(2025年4月16日版):6月11日に告知 → 12月11日に終了予定/gpt-5.4-cyber:9月11日に告知 → 10月1日に終了

Anthropicは、終了日を過ぎたモデルへの呼び出しは失敗すると明記しています。保守で何も手を打たなければ、システムのAIの部分が止まります。 しかも、新しいモデルの名前に書き換えるだけで済むとは限りません。たとえばClaude 4.7以降のモデルでは、回答のばらつきを調整する設定に既定以外の値を渡すとエラーになるため、プログラムの修正が必要になります。

動作確認、AIへの指示文の調整、再テストで5〜15人日(1人日は1人が1日で行う作業量)かかり、1人日を3万〜5万円とすると、乗り換え1回あたり約15万〜75万円です(5人日×3万円〜15人日×5万円。仮定に基づく試算で、実際の工数はAIを呼び出す箇所の数と再評価の範囲で変わります)。数年使うシステムなら、使っている間に何度か起こる前提で予算に入れてください。なお、Amazon BedrockやGoogle Cloudを経由してAIを使っている場合、終了日はそれぞれのクラウド側が決めるため、提供元の告知と日付が違うことがあります。誰が払うべきかの考え方はシステム開発の追加費用で詳しく扱っています。

3. 回答品質の確認と、AIに読ませる資料の更新|人の作業が毎月発生する

社内の資料をAIに読ませて答えさせる仕組みでは、資料が古くなれば回答も古くなります。そのため、一般的なシステムにはない次の作業が毎月発生します。

  • AIの回答を抜き取りで確認し、誤りや古い答えがないかを見る
  • 回答がずれてきたら、AIへの指示文を調整する
  • 規程やマニュアルが改訂されたら、AIに読ませる資料を差し替え、読み込み直す
  • 利用料を監視し、上限に近づいたら知らせる仕組みを保つ
  • 失敗したときに何度やり直させるかの上限を管理する

この作業の時間は、資料の量、改訂の頻度、確認する件数で大きく変わり、公開されている比率や月額を当てはめにくい部分です。自社の規模では「月に何時間の作業が必要か」を開発会社に出してもらい、時間で比べるのが確実です。

4. モデルや指示文を変えたら、業務ごとに再評価する

モデルの乗り換え、指示文の調整、読ませる資料の差し替えのたびに、AIの結果が変わることがあります。変わらない場合もあるため、「一度作れば終わり」とも「必ず品質が落ちる」とも決めつけず、対象の業務で変更前後を測ってから、使い続けるかを決めるのが安全です。手順の例は次のとおりです(説明用の手順で、当社が実施した検証の結果ではありません)。

  1. 評価用の例を固定する:たとえば問い合わせの分類・抽出なら、通常の例、例外の例(複数の用件が混ざるなど)、答えてはいけない・答えられない例を用意する。実データではなく合成した文面でよい。正解は業務側の確認者が決める
  2. 変更前後を同じ条件で流す:モデル名、実行した日、設定、指示文の版、読ませた資料の版を記録する
  3. 正誤だけでなく、次の4点を見る

見ること

内容

正誤

分類や抽出の結果が、業務側の決めた正解と合っているか

不適切な実行

送ってはいけない連絡や、してはいけない更新をしようとしなかったか

保留

人に回すべきものを回したか。回さなくてよいものまで回していないか

処理費

1件あたりのトークン数と金額が、変更前と比べてどう変わったか

最後に、この4点の結果を見て、そのまま使う、前の版に戻す、改修する、のどれにするかを決めます。

評価用の例を作ったり、変更前後の結果を表に並べたりする作業は、社内でもAIを使って進められます。一方、本番で動いている呼び出し箇所の改修、記録を残す仕組み、不適切な実行を止める制御は、システムの中身を知る開発会社に頼む部分です。正解を決めるのは業務側、評価の仕組みと改修は開発会社、と分けておくと、責任の所在がはっきりします。評価用の例を最初に作っておけば、モデル終了の通知が来たときの乗り換え作業も短くなります。

2026〜2029年に保守の作業量を増やす外部要因

Claude Platform Docsのモデル提供終了予定(Model deprecations)ページのタイトル画像

出典: Claude Platform Docs(Anthropic 公式)

保守運用費の見積で「OS更新への対応」と一般論で書かれている部分は、実際には日付の決まった出来事として発生します。自社のシステムが影響を受けるかどうかは、この表で確認できます。

時期

出来事

影響を受けるシステム

2026年10月15日以降

Claude Haiku 4.5(2025年10月1日版)が終了しうる(「この日より前には終了しない」と公式に表示)

このモデルを呼び出しているAIシステム

2026年10月23日

OpenAI gpt-3.5-turbo・gpt-4・gpt-4-turbo・o1・o3-mini・o4-miniなどの提供終了

数年前に作られたAIシステム

2026年11月24日以降

Claude Opus 4.5(2025年11月1日版)が終了しうる

このモデルを呼び出しているAIシステム

2026年11月30日

Claude Sonnet 4.5(2025年9月29日版)の提供終了(9月30日に告知)

このモデルを呼び出しているAIシステム

2026年11月30日

OpenAIの「Agent Builder」(AIエージェントを画面上で組み立てる機能)と「Reusable Prompts API」(AIへの指示文を保存して使い回す機能)の提供終了

これらの機能で作った仕組み

2026年12月11日

OpenAI gpt-5(2025年8月7日版)・o3(2025年4月16日版)の提供終了

このモデルを使っているシステム

2026年12月31日

プログラム言語PHP 8.2 のセキュリティ修正の提供終了

PHP 8.2で動いているWebシステム

2027年1月

Windows Server 2016 の延長サポート終了

このOSのサーバーで動いているシステム

2027年1月6日

OpenAIの音声合成モデル(tts-1など)の提供終了

文章を音声にして読み上げる仕組み

2027年2月26日

OpenAIの文字起こしモデル(whisper-1など)の提供終了

音声を文字にする仕組み

2027年3月15日

サイトの暗号化に使う証明書(SSL/TLS証明書)の有効期間が最大100日に短縮

証明書を使うすべてのWebシステム

2027年4月1日

OpenAI gpt-5.1・gpt-5.3-codex・gpt-5.4-nanoの提供終了

このモデルを使っているシステム

2027年12月31日

PHP 8.3 のセキュリティ修正の提供終了

PHP 8.3で動いているWebシステム

2029年3月15日

SSL/TLS証明書の有効期間が最大47日に短縮

証明書を使うすべてのWebシステム

※AIモデルの予定は2026年10月10日時点で各社の公式ページに掲載されている情報です。終了予定は頻繁に追加・変更されるため、自社で使っているモデルは提供元の公式ページで確認してください。

とくに見落とされやすいのが証明書です。証明書の発行者とブラウザ各社でつくる業界団体(CA/Browser Forum)が2025年4月に採択した決定により、有効期間は398日から、2026年3月15日に200日へ、2027年3月15日に100日へ、2029年3月15日に47日へと段階的に短くなります(各段階の日付は認証局各社の告知による)。手作業で更新しているシステムでは、年1回だった更新が、2026年から年2回、2027年から年4回弱、2029年から年8回弱に増えます。 更新作業を月額に含める契約なら保守会社の作業量が、含めない契約なら都度の費用が増えます。

PHPやWindows Serverのサポート終了は、「保守費を払っているのに、OSの更新は別料金だと言われた」ということが起きる典型的な場面です。サポートが終わったOSや言語の上で動かし続けると、見つかった弱点が修正されないままになります。対応を月額に含むのか、別見積なのかを、終了日より前に確認してください。

保守運用費が妥当か判断する5つの確認項目

OpenAI Developersのモデル提供終了(Deprecations)ページのタイトル画像

出典: OpenAI Developers 公式ドキュメント

保守運用費をめぐって発注側と開発会社が揉めやすいのは、ほぼ次の5点です。右の列はそのまま開発会社への質問として使えます。

#

確認項目

開発会社に聞く質問

1

AIの利用料は月額に含まれるか

「月額にAIの利用料は含まれていますか。含まれる場合、月に何件・どれくらいの文章量までが上限で、超えたらいくらですか」

2

モデル終了への対応は保守に含むか

「提供元がモデルを終了したときの乗り換えと再テストは、月額に含まれますか、都度見積ですか。通知を受けてから、影響の報告までに何日かかりますか」

3

月の作業時間枠と、その使い道の報告

「月に何時間までの作業が含まれますか。使わなかった時間は繰り越せますか。超えた場合の1時間の単価と、月次報告の項目を教えてください」

4

納品直後の不具合を保守費で払っていないか

「納品から一定期間内に見つかった、仕様どおりに動かない不具合の修正は、保守費とは別に無償で対応していただけますか」

5

OS・証明書・言語の更新は含むか

「OSやプログラム言語のサポート終了への対応、証明書の更新は月額に含まれますか。自動化されていますか」

4番は、発注側が見落としやすい論点です。システムを完成させる約束をした契約(請負契約)の場合、2020年4月1日に施行された改正民法では、仕様どおりに動かない不具合は「不具合を知った時から1年以内に通知すれば」開発会社に修正などを求められます。この期間は契約で短くも長くもできます。IPAが公開しているモデル契約書は、期間の起算点を検収(納品物の受け入れ確認)が終わった日とし、開発会社に故意や重大な過失がある場合は期間の制限を当てはめない形にしています。本来は開発会社が負担すべき修正を、公開直後から保守費の時間枠で払っていないか、契約書で確認してください。個別の契約の判断は弁護士にご相談ください。

あわせて押さえておきたいのが、保守運用は一般に、作業に対して払う契約(準委任契約)で結ばれることです。成果物の完成を約束する契約ではないため、「直らなかった作業」にも時間分の費用がかかります。だからこそ、3番の月次報告で作業の中身を確認することが重要になります。契約の種類の違いはAI開発の契約形態で解説しています。

保守運用費を見直さなくてよいケース

次のような場合は、あえて見直す必要は薄いと考えてください。

  • 年間の保守運用費が開発費の5%未満で安定しており、改修の要望もない
  • 月次報告があり、時間枠の使い道に納得できている
  • 5つの確認項目がすべて契約書に書かれている

反対に、保守運用費が年々上がっているのに理由の説明がない、見積が「一式」で内訳が出てこない、という場合は見直す価値があります。そもそも自社専用のシステムを持ち続けるより、既製のクラウドサービスで足りる業務もあります。その判断は業務システム開発の費用相場の5年総額の比較を参考にしてください。

保守運用費を下げるために、作る段階で決めておくこと

SSL/TLS証明書を自動で発行・更新できる認証局「Let's Encrypt」の公式ロゴ

出典: Let's Encrypt 公式サイト

保守運用費の大半は、公開してから決まるのではなく、作る段階の設計で決まります。これから開発を発注するなら、要件定義の段階で次の6点を決めておくと、毎年の費用が読みやすくなります。

  1. 証明書の更新を自動にする:2029年に向けて更新の回数が増えても、人の作業が増えない
  2. AIを呼び出す箇所を1か所にまとめる:モデルが終了したときに直す範囲が限られ、乗り換え費用が下がる
  3. AIの利用料に上限と通知を設定する:処理件数が急に増えても、請求額が想定を超える前に気づける
  4. 稼働の監視と記録(ログ)を最初から組み込む:障害が起きたときの調査時間が短くなる。どのモデルをどれだけ使っているかも確認できる(AnthropicのClaude Consoleでは、利用状況をモデル別にCSVで出力できる)
  5. 運用手順書を納品物に含める:バックアップ、障害時の連絡先、権限の変更手順を文書にしておくと、保守会社を替えるときの引き継ぎ費用が下がる
  6. サーバーや外部サービスのアカウントを自社の名義にする:開発会社の名義のままだと、契約を終えたときにシステムが止まるおそれがある

AIの利用料そのものを下げる方法としては、簡単な処理には安いモデルを使う、同じ前置きの文章を毎回読み込ませない仕組み(プロンプトキャッシュ)を使う、急ぎでない処理をまとめて依頼して割引を受ける、といった方法が提供元の公式ドキュメントでも紹介されています。どこまで取り入れるかは、処理件数と求める応答の速さによって変わるため、開発会社と一緒に決めてください。

納品後も自社でAIを使って直し続ける場合の取り決め

いまは、発注側の社員がChatGPT・Claude・Codexなどを使って、納品されたシステムの文言や画面を自分で直すことも珍しくありません。小さな変更のたびに外注する必要はありません。一方で、社内の変更と保守会社の作業が混ざると、不具合が起きたときに「どの変更が原因か」が分からず、調査の時間がかさみます。禁止事項を増やすより、次の3点を契約前に合意しておくのが現実的です。

  1. 社内で変更してよい範囲:たとえば、文言や表示、設定値は社内で変更してよい。データベースの項目、権限、外部との連携は保守会社と相談してから
  2. 変更後に流す確認:自動テストがあれば必ず流す。なければ、確認手順書の項目を流す
  3. 保守を依頼するときに渡す情報:変更履歴(どの変更を、いつ、社内と保守会社のどちらが行ったか)、再現の手順、期待した結果と実際の結果、変更を戻したときの結果

架空のアプリで見る、変更ごとの確認と切り戻しの範囲

社内向けの申請・承認アプリ(架空)で、3つの変更を想定して整理しました。説明用の整理で、実際に変更・試験した結果ではありません。

変更

影響が及ぶ範囲

必要な確認

切り戻しの範囲

社内で進めやすいか

料金表示の変更(税込表示への切り替え、桁区切り)

画面と帳票の表示

表示するすべての画面・帳票・CSVで金額がそろっているか。計算そのものを変えていないか

その変更だけを戻せばよい

表示だけなら進めやすい

承認条件の変更(部長承認を10万円以上から5万円以上へ)

承認の流れ、通知、変更前に出た申請

境目の金額(49,999円と50,000円)、差し戻しと取り下げ、変更前に出た申請の扱い、権限

設定を戻すだけでなく、変更していた間に承認された申請の確認が要る

業務ルールを確かめる人がいれば進められる

データベースの項目変更(「部署」を1項目から2階層へ)

保存済みのデータ、検索、集計、CSV連携、権限

既存データの移し替え、集計結果が変更前と一致するか、連携先が取り込めるか、移し替えに失敗したときの復元

プログラムを戻すだけでは済まない。バックアップからデータを戻す手順が要る

保守会社と相談して進めるほうが安全

3つ目のように、保存済みのデータや連携先に影響する変更は、戻す手順まで含めて計画しないと切り戻せません。AIはコードの変更そのものは速く書けますが、既存データの中身、連携先の取り込みの決まり、誰がどこまで見てよいかといった、その会社に固有の条件はAIに聞いても分かりません。そこが、保守会社や開発会社に頼む価値の残る部分です。

契約前に確認しておくこと

  • ソースコードの保管場所、サーバー、外部サービスの権限が自社にあるか。変更履歴を、社内と保守会社が同じ場所に残せるか
  • 社内で変更した箇所が原因の不具合を、保守会社がどの条件で受けるか(月額の対象か、調査から都度見積か)
  • 保守会社の作業と社内の作業を見分ける方法(変更履歴の書き方、作業者の記録)
  • 自動テストや確認手順書を納品物に含めるか

ここで挙げたのは契約の確認論点で、法的な助言ではありません。個別の契約の判断は弁護士にご相談ください。当社の受託開発では、納品後に顧客が自社でAIを使って変更を続ける進め方も選べます。どこまでを社内で進め、どこからを当社に任せるかは、相談の段階で一緒に分けます。

保守費用の目安と、当社の対応範囲

ここまでの数字を1つの表にまとめます。予算を組むときや、今の見積を点検するときの基準として使ってください。

項目

目安

一般的なシステムの年間保守費用

開発費の5〜30%。比率を示した4社の範囲にはいずれも15%が含まれる(各社の見解で、統計ではない)

システムの種類別の比率

社内の業務システム5〜10%、顧客向けWeb・EC 10〜15%、24時間稼働15〜20%超(オブライト社の公開値)

公開されている保守プランの1時間あたりの金額

約8,000円〜約2万円(Enlyt・FUNBREWの公開値を当社が割り算)

AIの利用料

実費。件数 ×(1件あたりのトークン数 × 単価)で見当をつける

提供元のモデル終了による乗り換え

1回あたり約15万〜75万円(仮定に基づく試算)

回答の確認・資料の更新

月に必要な作業時間を出してもらい、時間で比べる

ここからは当社の場合です。当社の受託開発の価格と、保守運用との関係は次のとおりです(すべて税別)。

メニュー

費用

内容

既存システムの改修

100万円〜

保守契約の範囲に入らない改修。画面・帳票の追加や修正、CSV・API連携、既存の処理の修正。他社が作ったシステムの調査・改修も対象

PoC(試作検証)

300万円〜

本格的に作る前に、効果と実現性を確かめる段階の価格。この金額で本番のシステムが完成するという意味ではありません

本開発

個別見積

利用者数、機能、外部連携、データ移行、権限、運用を確認して見積

保守・運用

個別に提案

作ったシステムの構成と、必要な運用作業に合わせて範囲と費用を提案

実費

別途

クラウド利用料、外部AIなどの利用料、ソフトウェアのライセンス費

保守・運用を個別の提案にしているのは、この記事で書いたとおり、同じ開発費でも「どの出来事を月額で受けるか」「AIの利用料やモデル変更をどう扱うか」で妥当な金額が変わるためです。提案では、責任分界表の出来事ごとに月額か別見積かを分け、クラウドや外部AIの利用料などの実費は、人の作業にかかる費用とは分けて示します。夜間・休日の対応や復旧時間の取り決めが必要な場合は、対応できる範囲を個別に確認します。AIを組み込んだシステムでは、モデルの乗り換え、指示文の調整、評価用の例による再評価を、保守と追加開発のどちらで扱うかも相談のうえで決めます。

初回相談は無料・30分・オンライン(Google Meet)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。今の保守契約や見積、困っている出来事を伺い、自社で進める部分と任せる部分を一緒に切り分けます。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

▶ 導入後の運用と保守範囲を相談する

当社の開発実績から見る保守の論点

当社の受託開発で公開できる実績は、次の2件です(守秘のため社名・金額・効果は公開していません)。ここでは、同じ種類の仕組みを持つ会社が保守の範囲を決めるときに確認したい点を整理します。保守の論点は当社の整理で、各案件の保守契約の内容を示すものではありません。

通信事業|数万件の請求情報の取込・集計・確認画面

作ったもの:数万件規模の請求情報を取り込んで集計し、担当者が内容を確認する画面です。

保守の論点:この種の仕組みでは、取り込む元のファイルの形式(列の追加や並び替え)が変わったときの対応、集計の決まりが変わったときの改修、件数が増えたときの処理時間が、保守と追加開発の境目になりやすい点です。取り込む元の形式変更を「保守」で受けるのか「追加開発」で受けるのかを責任分界表で先に決めておくと、毎年の費用が読みやすくなります。

薬局|複数店舗・数千人分の記録管理、権限、確認工程

作ったもの:複数の店舗にまたがる数千人分の記録を管理し、誰がどの記録を見られるかの権限と、確認の工程を持つ仕組みです。

保守の論点:この種の仕組みでは、店舗の追加や統廃合、職員の異動に伴う権限の変更、確認工程の変更が起きます。権限の付け替えを社内の管理画面で行えるようにするか、保守会社に依頼するかで、運用の手間と月額が変わります。権限を変えたあとに、見えてはいけない記録が見えていないかを確かめる手順を保守の範囲に入れるかも、決めておきます。

2件に共通するのは、作る段階で「何が変わると保守会社の作業になるか」を決めておくと、公開後の保守範囲を絞れることです。保守費用は作ったあとに交渉して下げるより、作る範囲を決める段階で抑えるほうが効果が大きくなります。

保守運用を見直す・乗り換えるときの流れ

今の保守運用費に疑問がある場合は、いきなり他社に見積を取るのではなく、次の順で進めてください。

段階

やること

1. 現状の棚卸し

保守契約書、直近1年の請求書と月次報告、使っているAIモデル・OS・プログラム言語の版、サーバーや外部サービスのアカウントの名義を集める

2. 今の契約を点検する

この記事の「5つの確認項目」と責任分界表について、含む・含まないを表にする。外部要因の表で、近く対応が必要になるものを洗い出す

3. 今の保守会社と相談する

月次報告の追加、対象範囲の絞り込み、固定・従量・スポットの分離を依頼する

4. 他社の見積を取る(必要な場合)

1〜2で作った資料と「月額に含む作業と別見積の記入例」を全社に同じように渡し、同じ形で金額を出してもらう

5. 引き継ぎ(保守会社を替える場合)

現状の調査、契約と体制づくり、新旧の会社が並行して対応する期間、完全な移管の順で進む。期間は資料の有無とシステムの規模で変わるため、新旧両方の会社に工程表を出してもらう

保守会社を替える場合は、外部要因の表とあわせて時期を決めてください。OSのサポート終了やAIモデルの提供終了の直前に引き継ぎを始めると、対応を新旧どちらの会社が担うのかが曖昧になりやすいためです。

当社にご相談いただく場合、1の棚卸しの資料がそろっていなくても構いません。初回相談(無料・30分・オンライン)では、手元にある契約書や見積、困っている出来事を伺います。秘密情報、本番の認証情報、実際の顧客データは送らないでください。既存のコードやシステムの調査報告、要件定義書の作成は有償で、着手前に範囲と金額を示して合意をいただきます。相談の申し込みは導入後の運用と保守範囲を相談するから受け付けています。開発会社を選ぶときの見方は開発会社の選び方でも解説しています。

よくある質問

Q1. 保守契約を結ばずに、困ったときだけ頼むことはできますか。

受けている会社もありますが、時間と費用がかかりやすいと考えてください。理由は2つあります。1つは、システムの中身を知らない状態から調べ始めるため、最初の調査に時間がかかることです。もう1つは、ソースコード、サーバー、外部サービスの権限が手元にないと、作業に入れないことです。都度の依頼で済ませる場合は、ソースコード、設計書、運用手順書、アカウントを自社で持ち、変更履歴を残しておくと、依頼先が替わっても調査の時間を短くできます。依頼が年に数回なら、Q2のチケット制も選択肢です。

Q2. 定額制・従量制・チケット制は、どれを選べばよいですか。

依頼の頻度で選びます。定額制は毎月決まった金額で、時間枠の中の作業を頼む形です。毎月のように修正や問い合わせがあるシステムに合います。従量制は実際にかかった作業時間の分だけ払う形で、依頼が少ない、または時期が読めないシステムに合います。チケット制は作業時間をあらかじめまとめて買っておき、必要なときに使う形で、年に数回だけ依頼がある場合に使われます。どの形でも、使わなかった時間やチケットに有効期限があるかを契約前に確認してください。定額制で毎月時間が余っているなら、従量制やチケット制に切り替えたほうが安くなる可能性があります。

Q3. AIの利用料を定額にすることはできますか。

利用の枠に上限を設けた定額の形で提供しているサービスもありますが、自社専用に作るシステムでは、AIの利用料は実費として別に払う形が一般的です。その場合でも、月の上限額を決め、上限に近づいたら知らせる仕組みを入れておけば、請求額が想定を超えることは防げます。定額の形を選ぶときは、枠を超えたときに処理が止まるのか、超過分が請求されるのかを必ず確認してください。

Q4. 保守運用費に補助金は使えますか。

制度によっては一部使えますが、ずっと続く費用には使えません。デジタル化・AI導入補助金2026では、事務局に登録されたソフトウェアとあわせて導入する保守サポートの費用が、最大2年分まで補助の対象になり、3年目からは全額が自己負担です。この補助金の対象は、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用に限られるため、自社専用のシステムをゼロから作る受託開発は原則として対象外です。補助金を使う場合も、3年目以降の保守運用費を最初から予算に入れておく必要があります。詳しくは補助金で保守費が対象外になるケースで解説しています。

Q5. 保守運用を、社内の担当者だけで回すことはできますか。

「運用」の一部は社内で持てますが、「保守」を社内だけで担うのは、専任のエンジニアがいない限り難しいと考えてください。稼働状況の確認、バックアップの確認、アカウントの管理、利用者からの問い合わせの一次対応は、手順書があれば社内の担当者でも回せます。一方、プログラムの修正、AIモデルの乗り換え、OSのサポート終了への対応にはエンジニアが必要です。社内でエンジニアを1名専任にすると、1日8時間・年230日として年間約1,840時間分の人件費を抱えることになります。これに対して、1,000万円のシステムの年間保守運用費(開発費の15〜20%とすると150万〜200万円)は、公開されている保守プランの1時間あたり約8,000円〜約2万円で割ると、年75〜250時間分ほどです。作業量がこの程度であれば、専任者を置くより外部に頼むほうが割安になりやすいと言えます。運用を社内に移し、保守だけを外部に頼むと、外部に払う時間枠を小さくできます。判断の考え方は生成AIの内製と外注を参考にしてください。

Q6. 今の保守契約を解約・縮小するとき、何に気をつければよいですか。

解約の場合は、見落としやすい費用が3つあります。①解約を伝えてから契約が終わるまでの保守費(契約書で、何か月前に伝える決まりかを確認)、②新旧の会社が並行して対応する期間の二重払い、③足りない資料を作り直す費用です。あわせて、ソースコード、設計書、運用手順書、サーバーや外部サービスのアカウントを受け取れるか、引き継ぎへの協力費を請求されないかを、解約を伝える前に確認してください。全部をやめるのではなく、障害対応だけを残して改修は都度見積にする、といった「範囲を選ぶ」縮小のほうが、費用も手間も小さく済むことがあります。引き継ぎの注意点はシステム改修の費用でも整理しています。

Q7. 保守運用費は、毎年上がっていくものですか。

何もしなければ上がりやすい、というのが実情です。JUASの「企業IT動向調査報告書2026」では、IT予算が増える理由の1位が「既存システム・基盤の刷新・更新・増強」(2025年度計画で66.3%)でした。報告書は、既存システムの刷新・更新や、円安・値上げ・クラウド化によるランニングコストの増加といった、避けにくい要因の影響も大きいと指摘しています。これにAIの利用拡大に伴う利用料の増加が加わります。毎年の見直しの場で「前年から増えた金額の理由」を固定・従量・スポットの区分ごとに説明してもらうと、避けられない増加と、見直せる増加を分けて判断できます。

導入後の運用と保守範囲を相談したい方へ

システム保守費用の相場は、各社の公開値で年間に開発費の5〜30%、目安は15%前後とされるものの、統計ではなく経験則です。妥当な金額は、月額にどの出来事への対応が含まれるかで決まります。生成AIを組み込んだシステムでは、これに加えてAIの利用料、提供元のモデル終了に伴う乗り換え(1回約15万〜75万円の仮定に基づく試算)、変更後の再評価がかかり、2029年にかけては証明書の有効期間の短縮などで保守の作業量そのものも増えていきます。

  • 保守運用費を毎月払っているが、何にいくら使われているのか分からない
  • AIを組み込んだシステムの見積に、利用料やモデル終了への対応が書かれていない
  • これから作るシステムに、毎年いくら保守運用費を積めばよいか決められない
  • 納品後に社内でAIを使って直したいが、保守会社との分担が決まっていない

1つでも当てはまれば、初回相談をご利用ください。初回相談は無料・30分・オンライン(Google Meet)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。当社の受託開発は、既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別、実費は別)。保守・運用は作ったシステムに合わせて個別に提案します。公開できる実績は、通信事業の請求情報の取込・集計・確認画面と、薬局の複数店舗にまたがる記録管理・権限・確認工程です。

ご相談の際に、①今の保守契約書または見積書(社名や金額を伏せても構いません)、②困っている出来事(障害、問い合わせ、改修の依頼など)、③使っているシステムの種類とAIの有無、の3点をお知らせいただくと、どの出来事を月額に含め、どこを別見積にするかを整理しやすくなります。

▶ 導入後の運用と保守範囲を相談する

関連記事:AI受託開発の費用相場/業務システム開発の費用相場/システム開発の追加費用/システム改修の費用/RPAの保守コストが高くなる理由/開発の見積もり比較

参考資料

依頼範囲と費用の目安を30分で整理します

この記事の著者

AI革命

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編集部

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