ビジネス活用2026年9月更新

システム保守運用費の相場|開発費の何%か・AIシステムで増える費用【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/14
システム保守運用費の相場|開発費の何%か・AIシステムで増える費用【2026年9月最新】

この記事のポイント

システム保守運用費の相場は年間で開発費の15〜20%前後(500万円なら月6.3万〜8.3万円)。基準がない理由、見積を1時間あたりで比べる方法、AIシステムで増える利用料とモデル終了対応費、2029年までの外部要因を解説。

システムの保守運用費の相場は、開発会社各社の公開値で年間に開発費の15〜20%前後です。500万円で作ったシステムなら月6.3万〜8.3万円程度で、生成AIを組み込んだシステムでは、これとは別にAIの利用料(使った分だけ課金)と、提供元のモデル終了に伴う乗り換え費用(1回あたり約15万〜75万円の試算)がかかります。

ただし、この「15〜20%」には業界で決まった基準がありません。同じ500万円のシステムでも、月額に何が含まれているかで、妥当な金額は倍以上変わります。この記事では、保守運用費の中身を「毎月一定の費用」「使った分だけの費用」「突発的な費用」の3つに分け、見積が高いか安いかを判断する2つの計算式を示します。そのうえで、AIを組み込んだシステムで増える費用と、2029年までに保守の作業量を増やす外部要因を、公式に発表されている日付つきで整理します。なお当社の受託開発の価格は、PoC(本格的に作る前の試作検証)300万円〜、小規模改修30万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)です。

システム保守運用費の相場は「年間で開発費の15〜20%前後」。ただし基準はない

まず、各社が公開している「開発費に対する年間の保守運用費の比率」を並べます。

公開している会社

年間の保守運用費(開発費に対する比率)

秋霜堂、シースリーインデックス、アレグビット(いずれも開発会社)

15〜20%

FUNBREW、GXO(いずれも開発会社)

15〜25%

Enlyt(開発・保守会社)

10〜30%

発注ラウンジ(発注マッチング)、GeNEE(開発会社)

約15%

レバテック(IT人材サービス)

5〜15%

最も多くの会社が挙げているのが15〜20%です。ただ、どの会社もこの比率の出典を示していません。GXO社は、15〜25%という目安は情報処理推進機構(IPA)の公式統計ではなく、IPAの資料には保守費の開発費比率の相場は含まれていない、と明記しています。2026年9月時点で、公的機関が保守運用費の開発費比率を相場として示した統計は、確認できる範囲では見当たりません。

なぜ5%から30%までばらつくのか

比率がばらつく根本の原因は、「保守」という言葉が指す作業の範囲が会社ごとに違うことです。ソフトウェアの保守について定めた日本産業規格(JIS X 0161)は、保守を次の4つに分けています。

保守の種類

業務の言葉にすると

是正保守

壊れたところを直す

運用を始めてから見つかった不具合の修正

予防保守

壊れる前に手を打つ

放置すると障害になりそうな箇所の修正

適応保守

周りの変化に合わせる

OSの更新、法改正、連携先サービスの仕様変更への対応

完全化保守

使いやすく直す

処理を速くする、直しやすい作りに改める

月額に「壊れたところを直す」だけを含める契約なら5〜10%台に収まりやすく、「周りの変化に合わせる」「使いやすく直す」まで含めれば20〜30%になっても不自然ではありません。比率だけを見て高い・安いを判断できないのは、このためです。 見積を受け取ったら、この4つのうちどこまでが月額に含まれているかを最初に確認してください。

開発費別の早見表(年15〜20%で計算)

15〜20%を当てはめると、金額は次のようになります。

初期開発費

年間の保守運用費

月額に直すと

5年間の累計

300万円

45万〜60万円

3.8万〜5万円

225万〜300万円

500万円

75万〜100万円

6.3万〜8.3万円

375万〜500万円

1,000万円

150万〜200万円

12.5万〜16.7万円

750万〜1,000万円

3,000万円

450万〜600万円

37.5万〜50万円

2,250万〜3,000万円

5年使うと、保守運用費だけで初期開発費の75〜100%に達します。稟議書には初期費用だけでなく、この5年分を並べて書くのが安全です。作るか既製のサービスを使うかを5年総額で比べる方法は、業務システム開発の費用相場で解説しています。

システムの規模・種類で見た目安

比率ではなく金額で公開している会社もあります。いずれも各社の見解で、統計ではありません。

公開している会社

区分

保守運用費の目安

GeNEE

小規模

月3万〜10万円

GeNEE

中規模

月10万〜50万円

GeNEE

大企業向け

月60万円〜

シースリーインデックス

ECサイト・Webサイト

年50万〜200万円

シースリーインデックス

社内ツール

年50万〜150万円

シースリーインデックス

スマホアプリ

年100万〜300万円

シースリーインデックス

中小規模の基幹システム

年300万〜800万円

シースリーインデックス

大規模の基幹システム

年800万円以上

GeNEE社は、月額の算出方法を「(定期作業の工数+障害対応の想定工数+予備)×技術者の単価」と説明しています。比率はあくまで結果であり、実際の見積はこの式で作られている、と考えると見積書が読みやすくなります。

保守運用費が重いと感じるのは、自社だけではない

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2026」によると、2025年度のIT予算のうち、今あるシステムの維持・運営に使われた割合は75.9%で、新しい取り組みに使われたのは24.1%でした。新しい取り組みの割合は2021年度以降24%前後で横ばいです。IT予算の約4分の3が「今あるものを動かし続ける費用」に消えているのは、多くの企業に共通する状況です。

保守運用費は何に払っているのか|固定・従量・スポットの3つに分ける

見積書で「保守運用費 月額◯万円」とひとまとめにされていると、何にいくら払っているのかが分かりません。まず「運用」と「保守」を分けます。

  • 運用:システムを止めずに回す日常の作業。稼働の監視、バックアップ、アカウントの管理、利用者からの問い合わせ対応など
  • 保守:システムそのものに手を入れる作業。不具合の修正、OSや部品の更新への対応、改修など

多くの見積書や解説記事は、この2つをまとめて「保守費」と呼んでいます。そのうえで、費用の性質で3つに分けると、自社の見積書をそのまま当てはめられます。

費用の性質

区分

主な作業・費目

固定(毎月ほぼ一定)

運用

稼働監視と異常時の一次対応、バックアップ、記録(ログ)の確認、問い合わせ対応、アカウント管理

固定

保守

月の作業時間枠の中で行う軽微な修正(文言変更、項目追加など)

固定

AI固有

AIの回答品質の抜き取り確認、AIへの指示文の調整、AIに読ませる資料の更新

従量(使った分だけ)

サーバー・クラウド

クラウド・サーバーの利用料のうち、アクセス数や処理量に比例する部分

従量

AI固有

AIの利用料(処理した文章量に応じた課金)

スポット(突発的・不定期)

保守

不具合の調査と修正(件数次第)、OS・部品・証明書のサポート終了への対応

スポット

AI固有

提供元のモデル終了に伴う乗り換えと再テスト、精度が落ちたときの再学習(自社データで学習させるAIの場合)

予算の組み方は、性質ごとに変えます。固定費は年額で確定させ、従量費は「想定の処理件数×単価」に上限を設け、スポット費は年間の予備枠として別に確保します。3つが1つの月額に混ざっている見積は、翌年の予算が読めません。 見積を依頼する段階で、この3区分で金額を分けて出してもらうよう伝えてください。

見積が高いか安いかは「月額 ÷ 含まれる作業時間」で比べる

保守の月額プランは、「月に何時間までの作業を含むか」という時間枠で設計されていることが多くあります。各社が公開しているプランを、1時間あたりの金額に直して並べました。

会社

プラン

月額

含まれる作業時間

1時間あたり

Enlyt

ミニマム

66,000円

約8時間

約8,250円

Enlyt

ライト

198,000円

約24時間

約8,250円

Enlyt

ベーシック

330,000円

約40時間

約8,250円

FUNBREW

スタンダード

10万円〜

月5時間

約2万円

FUNBREW

プレミアム

30万円〜

月30時間

約1万円

GeNEE(Hossh)

定額保守

10万円〜

公開ページで確認できず

秋霜堂(TechBand)

保守

10万円〜

公開ページで確認できず

※各社の公開ページに表示されている金額です(2026年9月15日確認。Enlyt・FUNBREWのページには税込・税別の表記がありません)。1時間あたりの金額は当社が割り算したもので、各社が示している単価ではありません。

同じ「月10万円前後」のプランでも、1時間あたりに直すと約8,000円から約2万円まで、2倍以上の差があります。これは片方が高すぎるという意味ではなく、時間枠の中に含まれる作業の中身が違うためです。たとえばEnlyt社は全プランに、障害が起きたときの復旧、不具合の調査と修正、システムの土台になるソフトの更新、不明点への問い合わせ対応を含めると説明しています。監視体制や、夜間・休日に対応するかどうかによっても単価は変わります。

つまり、月額だけを並べて比べても意味がありません。見積を比べるときは、次の2つの計算式を使ってください。

  1. 年間保守運用費 ÷ 初期開発費:20%を大きく超えていたら、4種類の保守のうちどこまでが含まれているかの説明を求める
  2. 月額 ÷ 含まれる作業時間:1時間あたりの金額を出し、その時間で「何ができて、何ができないか」を具体的な作業例で確認する

もう1つ大切なのが、時間枠を何に使ったかの月次報告です。「月24時間」の枠があっても、実際に何時間を何に使ったかの報告がなければ、発注側は払っている金額が妥当かどうかを判断できません。契約前に、月次報告の有無と記載項目(作業内容、作業時間、残りの時間、未対応の依頼)を確認してください。複数社の見積を同じ条件で比べる方法は開発の見積もり比較でも整理しています。

AIを組み込んだシステムで増える3つの費用

Anthropicが提供する生成AI「Claude」の公式ロゴ画像

出典: Claude(Anthropic)公式サイト

ここまでの相場は、一般的なシステムの話です。生成AIを組み込んだシステムでは、次の3つの費用が加わります。相場として、生成AIを業務に組み込むタイプは年間で開発費の10〜20%、自社データでAIに学習させるタイプ(画像検査や需要予測など)は、精度を保つための再学習が必要になるため20〜40%が目安です(AI受託開発の費用相場で整理した値)。会社によっては、生成AIを使うシステムの年間運用費を初期費用の20〜30%とする見方もあります。

1. AIの利用料|使った分だけ増える

生成AIの利用料は、AIが処理した文章量に応じた従量課金が基本です。料金は「トークン」(AIが処理する文章量の単位)100万あたりの米ドルで決められています。2026年9月15日時点の公式料金の例は次のとおりです。

提供元

モデル(AIの種類)

読み込ませる文章

AIが書き出す文章

Anthropic

Claude Sonnet 5

2ドル

10ドル

Anthropic

Claude Haiku 4.5

1ドル

5ドル

OpenAI

gpt-5.6-terra

2ドル

12ドル

OpenAI

gpt-5.6-luna

0.20ドル

1.20ドル

※いずれも100万トークンあたり。急ぎでない処理をまとめて依頼する方式(Batch)では、両社とも50%割引になります。

Anthropicの公式の試算では、Claude Haiku 4.5で問い合わせ1万件(1件あたり平均約3,700トークン)を処理すると約37ドルです。1件あたりの金額は小さく見えますが、利用者や処理件数が増えればそのまま月額が増えます。さらに、同じ処理でもモデルを替えると請求額が変わることがあります。AnthropicはClaude 4.7以降で文章の区切り方を変えており、同じ文章でもトークン数が約30%増えると公表しています。

保守運用費の見積書では、多くの場合「月額運用費◯万円」とだけ書かれ、保守する人の人件費とAIの利用料が区別されていません。JUASの同じ報告書でも、IT予算が増える理由として「AI関連の投資・利用料増加」を挙げた企業は、2025年度計画の36.3%から2026年度予測で43.7%に増えています。利用料が膨らむ実態は企業のAIコスト問題で、単価の詳細はClaudeの料金で解説しています。

2. 提供元のモデル終了による乗り換え|何もしなければAIの部分が止まる

AIを組み込んだシステムの多くは、AnthropicやOpenAIが提供するAIを外部から呼び出して動いています。提供元は古いモデルを、予告期間を置いて提供終了にします。

提供元

公式の予告期間

2026年の実例・予定

Anthropic(Claude)

少なくとも60日前にメールで通知

Claude Sonnet 4・Opus 4:4月14日に告知 → 6月15日に終了/Claude Opus 4.1:6月5日に告知 → 8月5日に終了

OpenAI

一般提供モデルは最低6か月前、特化版は最低3か月前、試験提供版は2週間程度と短いことも

gpt-3.5-turbo・gpt-4・o1などの旧版:4月22日に告知 → 10月23日に終了予定/gpt-5(2025年8月7日版)・o3(2025年4月16日版):6月11日に告知 → 12月11日に終了予定/gpt-5.4-cyber:9月11日に告知 → 10月1日に終了予定

Anthropicは、終了日を過ぎたモデルへの呼び出しは失敗すると明記しています。保守で何も手を打たなければ、システムのAIの部分が止まります。 しかも、新しいモデルの名前に書き換えるだけで済むとは限りません。たとえばClaude Opus 4.7以降では、回答のばらつきを調整する設定に既定以外の値を渡すとエラーになるため、プログラムの修正が必要になります。

動作確認、AIへの指示文の調整、再テストで5〜15人日(1人日は1人が1日で行う作業量)かかるとすると、1人日3万〜5万円で乗り換え1回あたり約15万〜75万円です(当社の試算)。数年使うシステムなら、使っている間に何度か起こる前提で予算に入れてください。なお、Amazon BedrockやGoogle Cloudを経由してAIを使っている場合、終了日はそれぞれのクラウド側が決めるため、提供元の告知と日付が違うことがあります。誰が払うべきかの考え方はシステム開発の追加費用で詳しく扱っています。

3. 回答品質の確認と、AIに読ませる資料の更新|人の作業が毎月発生する

社内の資料をAIに読ませて答えさせる仕組みでは、資料が古くなれば回答も古くなります。そのため、一般的なシステムにはない次の作業が毎月発生します。

  • AIの回答を抜き取りで確認し、誤りや古い答えがないかを見る
  • 回答がずれてきたら、AIへの指示文を調整する
  • 規程やマニュアルが改訂されたら、AIに読ませる資料を差し替え、読み込み直す
  • 利用料を監視し、上限に近づいたら知らせる仕組みを保つ
  • 失敗したときに何度やり直させるか、の上限を管理する

この人件費をどう見積もるかは会社によって差があります。たとえばripla社は、AIエンジニアの稼働を月20万〜50万円、AIに読ませる資料の更新担当を月15万〜40万円としています。専任の担当者を置く大企業を前提にした解説では、AIシステムの運用費を月60万〜200万円とするものもあります。いずれも出典の示されていない事業会社・メディアの見解なので、自社の規模では「月に何時間の作業が必要か」を開発会社に出してもらい、時間で比べるのが確実です。

2026〜2029年に保守の作業量を増やす外部要因

Claude Platform Docsのモデル提供終了予定(Model deprecations)ページのタイトル画像

出典: Claude Platform Docs(Anthropic 公式)

保守運用費の見積で「OS更新への対応」と一般論で書かれている部分は、実際には日付の決まった出来事として発生します。自社のシステムが影響を受けるかどうかは、この表で確認できます。

時期

出来事

影響を受けるシステム

2026年9月29日以降

Claude Sonnet 4.5(2025年9月29日版)が終了しうる(「この日より前には終了しない」と公式に表示)

このモデルを呼び出しているAIシステム

2026年10月1日

OpenAI gpt-5.4-cyber の提供終了(9月11日の告知から20日後)

このモデルを使っているシステム

2026年10月15日以降

Claude Haiku 4.5(2025年10月1日版)が終了しうる

このモデルを呼び出しているAIシステム

2026年10月23日

OpenAI gpt-3.5-turbo・gpt-4・o1などの旧版の提供終了

数年前に作られたAIシステム

2026年11月24日以降

Claude Opus 4.5(2025年11月1日版)が終了しうる

このモデルを呼び出しているAIシステム

2026年11月30日

OpenAIの「Agent Builder」(AIエージェントを画面上で組み立てる機能)と「Reusable Prompts API」(AIへの指示文を保存して使い回す機能)の提供終了

これらの機能で作った仕組み

2026年12月11日

OpenAI gpt-5(2025年8月7日版)・o3(2025年4月16日版)の提供終了

このモデルを使っているシステム

2026年12月31日

プログラム言語PHP 8.2 のセキュリティ修正の提供終了

PHP 8.2で動いているWebシステム

2027年1月

Windows Server 2016 の延長サポート終了

このOSのサーバーで動いているシステム

2027年3月15日

サイトの暗号化に使う証明書(SSL/TLS証明書)の有効期間が最大100日に短縮

証明書を使うすべてのWebシステム

2027年12月31日

PHP 8.3 のセキュリティ修正の提供終了

PHP 8.3で動いているWebシステム

2029年3月15日

SSL/TLS証明書の有効期間が最大47日に短縮

証明書を使うすべてのWebシステム

※2026年9月15日時点で各公式ページに掲載されている情報です。AIモデルの終了予定は頻繁に追加・変更されるため、自社で使っているモデルは提供元の公式ページで確認してください。

とくに見落とされやすいのが証明書です。証明書の発行者とブラウザ各社でつくる業界団体(CA/Browser Forum)が2025年4月に採択した決定により、有効期間は398日から、2026年3月15日に200日へ、2027年3月15日に100日へ、2029年3月15日に47日へと段階的に短くなります(各段階の日付は認証局各社の告知による)。手作業で更新しているシステムでは、年1回だった更新が、2026年から年2回、2027年から年4回弱、2029年から年8回弱に増えます。 更新作業を月額に含める契約なら保守会社の作業量が、含めない契約なら都度の費用が増えます。

PHPやWindows Serverのサポート終了は、「保守費を払っているのに、OSの更新は別料金だと言われた」という場面が生まれる典型です。サポートが終わった土台の上で動かし続けると、見つかった弱点が修正されないままになります。対応を月額に含むのか、別見積なのかを、終了日より前に確認してください。

保守運用費が妥当か判断する5つの確認項目

OpenAI Developersのモデル提供終了(Deprecations)ページのタイトル画像

出典: OpenAI Developers 公式ドキュメント

保守運用費をめぐって発注側と開発会社が揉めやすいのは、ほぼ次の5点です。右の列はそのまま開発会社への質問として使えます。

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確認項目

開発会社に聞く質問

1

AIの利用料は月額に含まれるか

「月額にAIの利用料は含まれていますか。含まれる場合、月に何件・どれくらいの文章量までが上限で、超えたらいくらですか」

2

モデル終了への対応は保守に含むか

「提供元がモデルを終了したときの乗り換えと再テストは、月額に含まれますか、都度見積ですか。通知を受けてから、影響の報告までに何日かかりますか」

3

月の作業時間枠と、その使い道の報告

「月に何時間までの作業が含まれますか。使わなかった時間は繰り越せますか。超えた場合の1時間の単価と、月次報告の項目を教えてください」

4

納品直後の不具合を保守費で払っていないか

「納品から一定期間内に見つかった、仕様どおりに動かない不具合の修正は、保守費とは別に無償で対応していただけますか」

5

OS・証明書・言語の更新は含むか

「OSやプログラム言語のサポート終了への対応、証明書の更新は月額に含まれますか。自動化されていますか」

4番は、発注側が見落としやすい論点です。システムを完成させる約束をした契約(請負契約)の場合、2020年4月1日に施行された改正民法では、仕様どおりに動かない不具合は「不具合を知った時から1年以内に通知すれば」開発会社に修正などを求められます。この期間は契約で短くも長くもできます。IPAが公開しているモデル契約書は、期間の起算点を検収(納品物の受け入れ確認)が終わった日とし、開発会社に故意や重大な過失がある場合は期間の制限を当てはめない形にしています。本来は開発会社が負担すべき修正を、公開直後から保守費の時間枠で払っていないか、契約書で確認してください。個別の契約の判断は弁護士にご相談ください。

あわせて押さえておきたいのが、保守運用は一般に、作業に対して払う契約(準委任契約)で結ばれることです。成果物の完成を約束する契約ではないため、「直らなかった作業」にも時間分の費用がかかります。だからこそ、3番の月次報告で作業の中身を確認することが重要になります。契約の種類の違いはAI開発の契約形態で解説しています。

保守運用費を見直さなくてよいケース

次のような場合は、あえて見直す必要は薄いと考えてください。

  • 年間の保守運用費が開発費の5%未満で安定しており、改修の要望もない
  • 月次報告があり、時間枠の使い道に納得できている
  • 5つの確認項目がすべて契約書に書かれている

反対に、保守運用費が年々上がっているのに理由の説明がない、見積が「一式」で内訳が出てこない、という場合は見直す価値があります。そもそも自社専用のシステムを持ち続けるより、既製のクラウドサービスで足りる業務もあります。その判断は業務システム開発の費用相場の5年総額の比較を参考にしてください。

保守運用費を下げるために、作る段階で決めておくこと

SSL/TLS証明書を自動で発行・更新できる認証局「Let's Encrypt」の公式ロゴ

出典: Let's Encrypt 公式サイト

保守運用費の大半は、公開してから決まるのではなく、作る段階の設計で決まります。これから開発を発注するなら、要件定義の段階で次の6点を決めておくと、毎年の費用が読みやすくなります。

  1. 証明書の更新を自動にする:2029年に向けて更新の回数が増えても、人の作業が増えない
  2. AIを呼び出す箇所を1か所にまとめる:モデルが終了したときに直す範囲が限られ、乗り換え費用が下がる
  3. AIの利用料に上限と通知を設定する:処理件数が急に増えても、請求額が想定を超える前に気づける
  4. 稼働の監視と記録(ログ)を最初から組み込む:障害が起きたときの調査時間が短くなる。どのモデルをどれだけ使っているかも確認できる(AnthropicのClaude Consoleでは、利用状況をモデル別にCSVで出力できる)
  5. 運用手順書を納品物に含める:バックアップ、障害時の連絡先、権限の変更手順を文書にしておくと、保守会社を替えるときの引き継ぎ費用が下がる
  6. サーバーや外部サービスのアカウントを自社の名義にする:開発会社の名義のままだと、契約を終えたときにシステムが止まるおそれがある

AIの利用料そのものを下げる方法としては、簡単な処理には安いモデルを使う、同じ前置きの文章を毎回読み込ませない仕組み(プロンプトキャッシュ)を使う、急ぎでない処理をまとめて依頼して割引を受ける、といった方法が提供元の公式ドキュメントでも紹介されています。どこまで取り入れるかは、処理件数と求める応答の速さによって変わるため、開発会社と一緒に決めてください。

保守運用費の目安と、当社の対応範囲

ここまでの数字を1つの表にまとめます。予算を組むときや、今の見積を点検するときの基準として使ってください。

項目

目安

一般的なシステムの年間保守運用費

開発費の15〜20%前後(会社によって5〜30%)

生成AIを業務に組み込むタイプ

開発費の10〜20%/年 + AIの利用料(従量課金)

自社データでAIに学習させるタイプ

開発費の20〜40%/年

公開されている保守プランの1時間あたりの金額

約8,000円〜約2万円

提供元のモデル終了による乗り換え

1回あたり約15万〜75万円(試算)

保守を別の会社に引き継ぐときの初期費用

保守費の1〜3か月分、または30万〜100万円程度(three dots.社の公開情報)

ここからは当社の場合です。当社の受託開発の価格と、保守運用との関係は次のとおりです(すべて税別)。

メニュー

費用

内容

小規模な既存システム改修

30万円〜

保守契約の範囲に入らない改修に対応します。画面の追加・修正、帳票の追加、CSV出力、軽微な外部連携、既存の処理の修正

PoC(試作検証)

300万円〜

課題と検証内容の整理、簡易的な要件定義、設計と開発、検証環境、結果の整理、本開発の提案

本開発

個別見積

利用者数、機能数、外部連携、データ移行、セキュリティ、運用、止まらない仕組みの要否を確認して見積

保守・運用

開発内容に合わせて個別見積

作ったシステムの構成と、必要な運用作業に合わせて決めます

実費

別途

クラウド利用料、外部AIなどの利用料、ソフトウェアのライセンス費

保守・運用を個別見積にしているのは、この記事で書いたとおり、同じ開発費でも「どの種類の保守を含めるか」「AIの利用料をどう扱うか」で妥当な金額が変わるためです。当社では、クラウドや外部AIの利用料などの実費を、人の作業にかかる費用とは分けて示しています。導入時には権限、データ移行、運用手順を確認し、バックアップ、操作の記録、障害時の連絡、権限の変更、データの削除といった運用の手順を整理します。導入後は、導入前後の処理時間や費用を比べ、必要な修正を行います。

初回のご相談は無料です。これから作るシステムの保守運用費を最初から設計したい、今払っている保守運用費に何が含まれているのか整理したい、という段階からお話を伺います。費用と対象範囲の詳細は受託開発サービスの費用と対象範囲に掲載しています。

実際にやった事例|保守運用費の観点で見る

守秘の関係で社名は出せませんが、当社が担当した案件を3つ、課題・作ったもの・変わったことの順に紹介します。あわせて、その仕組みの形が公開後の保守運用費にどう関わるかを整理します。

調剤薬局のケース|本体に手を入れず、つなぐ部分だけを作った

課題:同じ情報を、複数のシステムに入力し直していました。あるシステムに入力した内容を別の管理表へ手で書き写す作業が毎日あり、忙しい時期には書き写し漏れも起きていました。

作ったもの:一方のシステムから出力したデータを整え、もう一方のシステムの形式に変換して取り込む仕組みです。今のシステムを作り直すのではなく、手間がかかっている1か所だけに絞りました。実際に時間がかかったのは、プログラムよりも過去データの名寄せ(表記の違う同じデータを1つにまとめる作業)でした。

変わったこと:書き写す作業がなくなり、書き写しのミスを探して直していた時間もなくなりました。1か所に絞ったので、部門長の決裁で進められる規模に収まりました。

保守運用費の観点では:システム本体に手を入れていないため、保守の対象は「変換する仕組み」1つに限られます。一方でこの形の仕組みは、つないでいるどちらかのシステムが出力の形式を変えると、変換側の修正が必要になります。つなぐ仕組みを作ったら、連携元のシステムの更新予定を把握しておくことが、保守の要点になります。

医療機関のケース|合格基準を文書にしてから、AIに資料を読ませた

課題:蓄積されている文書や記録は多いのに、必要な情報を探すのに時間がかかっていました。

作ったもの:手元の資料をAIに読ませ、質問すると根拠となる箇所を示しながら答える仕組みです。いきなり全部門に広げず、1部門・1業務に絞ってPoCから始めました。開始前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格とするか」を文書で決め、既存システムからデータを取り出せるかどうかも先に確認しました。

変わったこと:判定の基準があったため、拡大するかどうかの判断が短期間で済みました。後から「データを取り出せないので追加費用が必要」という事態も避けられました。

保守運用費の観点では:この形の仕組みは、この記事で挙げたAI固有の3つの費用(利用料、モデル終了への対応、回答品質の確認と資料の更新)がすべて当てはまります。開始前に文書にした合格基準は、公開後に回答品質を抜き取りで確認するときの物差しにもなります。「何ができたら合格か」が決まっていないAIの仕組みは、保守の段階でも「どこまで直せば終わりか」が決まらず、作業時間が膨らみやすくなります。

インフラ企業のケース|全件ではなく、食い違いだけを人に回した

課題:複数のシステムにまたがるデータを、人が突き合わせて確認していました。件数が多く、月末に負荷が集中していました。

作ったもの:システム間のデータを自動で照合し、食い違いがある分だけを人に回す仕組みです。旧来のやり方と新しい仕組みを一定期間並行して動かし、結果が一致することを確認してから切り替えました。

変わったこと:全件を人が見る運用から、例外だけを人が見る運用に変わり、確認作業の総量が減りました。月末に集中していた負荷も平準化されました。

保守運用費の観点では:例外だけを人に回す仕組みでは、人に回ってくる食い違いの件数そのものが、仕組みが正しく動いているかの目安になります。件数が急に増えたら、連携元のシステムの変更やデータの形式の変化を疑う、という形で監視の手間を小さくできます。

3件に共通するのは、対象を絞って作った仕組みほど、公開後に保守する範囲も小さくなることです。保守運用費は作ったあとに交渉して下げるより、作る範囲を決める段階で抑えるほうが効果が大きくなります。

保守運用を見直す・乗り換えるときの流れと期間

今の保守運用費に疑問がある場合は、いきなり他社に見積を取るのではなく、次の順で進めてください。

段階

やること

期間の目安

1. 現状の棚卸し

保守契約書、直近1年の請求書と月次報告、使っているAIモデル・OS・プログラム言語の版、サーバーや外部サービスのアカウントの名義を集める

2. 今の契約を点検する

この記事の「5つの確認項目」について、含む・含まないを表にする。外部要因の表で、近く対応が必要になるものを洗い出す

3. 今の保守会社と相談する

月次報告の追加、対象範囲の絞り込み、固定・従量・スポットの分離を依頼する

4. 他社の見積を取る(必要な場合)

1〜2で作った資料を全社に同じように渡し、3区分で金額を出してもらう

5. 引き継ぎ(保守会社を替える場合)

現状調査に2〜4週、契約と体制づくりに2〜4週、新旧の会社が並行して対応する期間が1〜2か月、完全な移管に1〜2週

中小規模のシステムで2〜4か月(three dots.社の公開情報)

保守会社を替える場合は、外部要因の表とあわせて時期を決めてください。引き継ぎには2〜4か月かかるため、たとえばOSのサポート終了やAIモデルの提供終了の直前に引き継ぎを始めると、対応を新旧どちらの会社が担うのかが曖昧になりやすいためです。

当社にご相談いただく場合は、ご相談、課題・要件の整理、提案・見積もり、PoCまたは本開発、導入・改善の5段階で進めます。保守運用だけを見直したい場合も、まずは1の棚卸しで集めた資料のうち、手元にあるものだけお持ちいただければ構いません。進め方の詳細は受託開発の相談窓口でご確認いただけます。開発会社を選ぶときの見方は開発会社の選び方でも解説しています。

よくある質問

Q1. 障害が起きたときの対応の速さは、保守運用費にどう影響しますか。

対応を速くするほど高くなります。保守契約では、対応する時間帯(平日の日中だけか、24時間か)、連絡を受けてから動き始めるまでの時間、復旧の目標時間を「サービスレベル」として取り決めます。GXO社は、標準的な取り決めより手厚くすると20〜40%、さらに手厚い取り決めでは50〜100%上乗せになるとしています。すべての機能を24時間対応にする必要はありません。システムが止まったときに1時間あたりどれだけの損失が出るかを業務ごとに見積もり、止まると困る機能だけを手厚くすると、費用を抑えられます。

Q2. 定額制・従量制・チケット制は、どれを選べばよいですか。

依頼の頻度で選びます。定額制は毎月決まった金額で、時間枠の中の作業を頼む形です。毎月のように修正や問い合わせがあるシステムに合います。従量制は実際にかかった作業時間の分だけ払う形で、依頼が少ない、または時期が読めないシステムに合います。チケット制は作業時間をあらかじめまとめて買っておき、必要なときに使う形で、年に数回だけ依頼がある場合に使われます。どの形でも、使わなかった時間やチケットに有効期限があるかを契約前に確認してください。定額制で毎月時間が余っているなら、従量制やチケット制に切り替えたほうが安くなる可能性があります。

Q3. AIの利用料を定額にすることはできますか。

「上限つきの定額枠」という形であれば可能です。たとえば当社が定額で提供している運用型のサービスでは、月1,000万〜1.2億トークン分の利用枠を、月額料金(10万〜50万円・税別)に含めています。一方、自社専用に作るシステムでは、AIの利用料は実費として別に払う形が一般的です。その場合でも、月の上限額を決め、上限に近づいたら知らせる仕組みを入れておけば、請求額が想定を超えることは防げます。定額の形を選ぶときは、枠を超えたときに処理が止まるのか、超過分が請求されるのかを必ず確認してください。

Q4. 保守運用費に補助金は使えますか。

制度によっては一部使えますが、ずっと続く費用には使えません。デジタル化・AI導入補助金2026では、事務局に登録されたソフトウェアとあわせて導入する保守サポートの費用が、最大2年分まで補助の対象になり、3年目からは全額が自己負担です。この補助金の対象は、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用に限られるため、自社専用のシステムをゼロから作る受託開発は原則として対象外です。補助金を使う場合も、3年目以降の保守運用費を最初から予算に入れておく必要があります。詳しくは補助金で保守費が対象外になるケースで解説しています。

Q5. 保守運用を、社内の担当者だけで回すことはできますか。

「運用」の一部は社内で持てますが、「保守」を社内だけで担うのは、専任のエンジニアがいない限り難しいと考えてください。稼働状況の確認、バックアップの確認、アカウントの管理、利用者からの問い合わせの一次対応は、手順書があれば社内の担当者でも回せます。一方、プログラムの修正、AIモデルの乗り換え、OSのサポート終了への対応にはエンジニアが必要です。社内でエンジニアを1名専任にすると、1日8時間・年230日として年間約1,840時間分の人件費を抱えることになります。これに対して、1,000万円のシステムの年間保守運用費(150万〜200万円)は、公開されている保守プランの1時間あたり約8,000円〜約2万円で割ると、年75〜250時間分ほどです。作業量がこの程度であれば、専任者を置くより外部に頼むほうが割安になりやすいと言えます。運用を社内に移し、保守だけを外部に頼むと、外部に払う時間枠を小さくできます。判断の考え方は生成AIの内製と外注を参考にしてください。

Q6. 今の保守契約を解約・縮小するとき、何に気をつければよいですか。

解約の場合は、見落としやすい費用が3つあります。three dots.社の公開情報によると、①解約を伝えてから契約が終わるまでの保守費(3〜6か月分)、②新旧の会社が並行して対応する期間の二重払い(1〜2か月分)、③足りない資料を作り直す費用です。あわせて、ソースコード、設計書、運用手順書、サーバーや外部サービスのアカウントを受け取れるか、引き継ぎへの協力費を請求されないかを、解約を伝える前に確認してください。全部をやめるのではなく、障害対応だけを残して改修は都度見積にする、といった「範囲を選ぶ」縮小のほうが、費用も手間も小さく済むことがあります。引き継ぎの注意点はシステムの小規模改修の費用でも整理しています。

Q7. 保守運用費は、毎年上がっていくものですか。

何もしなければ上がりやすい、というのが実情です。JUASの「企業IT動向調査報告書2026」では、IT予算が増える理由の1位が「既存システム・基盤の刷新・更新・増強」(2025年度計画で66.3%)でした。報告書は、既存システムの刷新・更新や、円安・値上げ・クラウド化によるランニングコストの増加といった、避けにくい要因の影響も大きいと指摘しています。これにAIの利用拡大に伴う利用料の増加が加わります。毎年の見直しの場で「前年から増えた金額の理由」を固定・従量・スポットの区分ごとに説明してもらうと、避けられない増加と、見直せる増加を分けて判断できます。

システムの保守運用費でお悩みの方へ

システムの保守運用費の相場は、年間で開発費の15〜20%前後です。ただし業界で決まった基準はなく、月額にどの種類の保守が含まれているかで妥当な金額は変わります。生成AIを組み込んだシステムでは、これに加えてAIの利用料と、提供元のモデル終了に伴う乗り換え費用(1回約15万〜75万円の試算)がかかり、2029年にかけては証明書の有効期間の短縮などで保守の作業量そのものも増えていきます。

  • 保守運用費を毎月払っているが、何にいくら使われているのか分からない
  • AIを組み込んだシステムの見積に、利用料やモデル終了への対応が書かれていない
  • これから作るシステムに、毎年いくら保守運用費を積めばよいか決められない

1つでも当てはまれば、まずは無料の初回相談をご利用ください。当社の受託開発は、PoC 300万円〜、小規模改修 30万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別)。保守・運用は開発内容に合わせて個別に見積もり、クラウドや外部AIの利用料などの実費は分けてお示しします。医療機関・薬局・インフラ企業での開発実績があり、要件が固まっていない段階からご相談いただけます。

ご相談の際に、①今の保守契約書または見積書、②直近の請求額と月次報告(あれば)、③使っているシステムの種類とAIの有無、の3点をお知らせいただくと、どこまでが含まれていて、どこに見直す余地があるかをお伝えしやすくなります。

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参考資料

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この記事の著者

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