ビジネス活用2026年10月更新

システムの改修とリプレイスを比較|どちらが安いか、5年総額と現状調査・切戻し条件で判断する

公開日: 2026/09/20
更新日: 2026/10/10
システムの改修とリプレイスを比較|どちらが安いか、5年総額と現状調査・切戻し条件で判断する

この記事のポイント

システムの改修とリプレイスはどちらが安いかを、5年総額と損益分岐年数の試算で比較。改修・リプレイスの公開相場に加え、判断前に集める現状の証拠、一部だけ置き換えるときの切り方と切戻し条件、設計書がない場合の進め方を解説します。

システムの改修とリプレイス(入れ替え)は、目先の見積では改修が安く見えます。判断は5年程度の総額と、今のシステムが改修できる状態か(ソースコード・テスト・運用の引継ぎ)の2つで行ってください。後述の仮定に基づく試算では、毎年の改修費が保守費と同じくらい積み上がっているシステムは3年目の途中で入れ替えの方が安くなり、改修がほとんど発生していないシステムは入れ替えても費用が下がりませんでした。

当社に依頼いただく場合の費用は、既存システムの改修が100万円〜、PoC(試験導入)が300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別。クラウド・外部API・ライセンス等の実費は別)。初回相談は無料・30分・オンラインです。一般的な相場は、改修が30万〜1,500万円、リプレイスが500万円〜1億円超とされています(後述、開発会社各社の公開値)。

この記事では、費用と期間の比較表、5年総額の試算と損益分岐年数の計算式に加えて、判断の前に集める現状の証拠、一部だけ置き換えるときの切り方と、試験運用で旧システムに戻す条件(切戻し条件)、2択ではない6つの選択肢を順に解説します。最後に、いま手元にある改修見積が妥当かどうかを確かめる方法も書きました。

なお、判断の対象が基幹システム(販売管理・会計・生産管理など会社の中心となるシステム)で、保守の終了期限が迫っている場合は、基幹システムの刷新判断の方が近い内容です。この記事は小〜中規模の業務システムを主な対象に、「直すか、作り直すか」の判断に絞っています。

システムの改修とリプレイスは何が違うのか|費用構造の違い

既存システムの制御盤と新しいサーバーラックを並べ、改修と入れ替えという2つの選択肢を表したイメージ

言葉の使い分けから整理します。現場では「更改」「刷新」「再構築」「マイグレーション」など複数の呼び方が混ざりますが、発注側が判断するうえで意味があるのは次の違いだけです。

システム改修

システムリプレイス

やること

今のシステムを残したまま、一部を直す・足す

今のシステムをやめて、別のものに入れ替える

初期費用

小さい(数十万円〜)

大きい(数百万円〜)

毎年の費用

今の保守契約が続く。直すたびに積み上がる

入れ替え後は下がることが多いが、ゼロにはならない

設計の自由度

今の設計の範囲内でしかできない

業務のやり方から変えられる

データ移行

原則不要

必要。ここでトラブルが起きやすい

現場の負担

小さい(操作はほぼ変わらない)

大きい(教育・マニュアル・並行稼働が発生)

期間

数週間〜9か月

3か月〜2年

費用構造で決定的に違うのは「初期費用の大小」ではなく、「毎年いくら出ていくか」が変わるかどうかです。改修は今の保守契約をそのまま引き継ぐので、毎年の固定費は変わりません。変わらないまま、改修費だけが毎年上乗せされていきます。リプレイスは初期に大きく払う代わりに、毎年の固定費を下げられる可能性があります。この「毎年いくら」の差が、後述する損益分岐年数を決めます。

入れ替えにも段階がある

「リプレイス」と一口に言っても、どこまで手を入れるかで費用が数倍変わります。開発の現場では次の4つに分けて考えます(VALTES、SHIFT、FPTジャパンなどの解説で定義の大枠は一致しています)。カタカナの用語を覚える必要はありませんが、見積書に出てきたときに何を指しているかは知っておいてください。

入れ替えの度合い

中身

費用・期間の傾向

置き場所だけ移す(リホスト)

プログラムには手を入れず、動かすサーバーだけを新しい環境やクラウドへ移す

最も安く、最も短い

土台を入れ替える(リプラットフォーム)

OSやデータベースなど、土台の製品を新しいものに入れ替える

中間

書き換える(リライト)

業務のやり方はそのままで、古いプログラム言語を新しい言語に書き換える

中間

作り直す(リビルド)

業務の決め方から見直して、ゼロから作り直す

置き場所を移すだけの数倍の規模になることもある

見積を取るときに「リプレイスでお願いします」とだけ伝えると、会社によってこの4つのどれを想定するかが変わり、金額が桁違いにばらつきます。「動かす場所だけ移したいのか、業務のやり方も変えたいのか」を先に決めてから見積を依頼してください。

システム改修とリプレイスの費用・期間の比較表

電卓と見積用の表、カレンダーを並べ、改修とリプレイスの費用と期間を見積もる場面を表したイメージ

各社が公開している相場をまとめました。同じ「改修」でも対象システムの規模が違えば金額が10倍変わるため、必ず規模とセットで見てください。数字はいずれも開発会社・比較メディアの公開値であり、公的統計ではありません。

改修側の費用と期間

区分

費用の目安

期間

公開元

システム改修の全体相場

30万〜160万円程度

—

システム幹事

部分改修

数十万〜300万円

1〜3か月

SucSak

中規模システムの部分改修

200万〜1,000万円

1〜3か月

Y's

中規模改修

300万〜1,500万円

3〜9か月

SucSak

「30万〜160万円」と「200万〜1,000万円」は矛盾しているように見えますが、前者は画面追加や帳票追加といった単発の作業、後者は中規模システムの機能単位の改修を指しており、対象が違うだけです。自社がどちらに当たるかは、直したい箇所が1〜2か所なのか、業務の流れごと変えたいのかで判断してください。単発作業の作業別の目安と、費用が高くなる条件はシステム改修の費用で細かく解説しています。

リプレイス側の費用と期間

区分

費用の目安

期間

公開元

市販製品(パッケージ)の導入

初期 数十万〜200万円+月額5〜30万円

小規模3〜6か月

みんなシステムズ

市販製品+必要な改修

100万〜500万円

中規模6〜12か月

みんなシステムズ

スクラッチ開発(ゼロから)

200万〜1,000万円以上

大規模1年以上

みんなシステムズ

全面リプレイス

数千万円以上

6か月以上(基幹は複数年)

Y's

全面刷新

500万円〜1億円超

1〜2年

SucSak

基幹システムでは数百万円から数億円まで実例の幅があります(パソナ、SucSak)。市販製品に業務を合わせるか、業務に合わせて作るかで総額が2倍以上になることがあるという指摘もあります(SucSak)。この分かれ道の考え方はSaaSとカスタム開発の判断にまとめています。

見積の中身がどう積み上がっているか

金額の妥当性を判断するには、内訳の比率を知っておくと役立ちます。

  • 工程別の比率:要件定義15〜20% / 設計・開発50〜60% / テスト15〜20%(みんなシステムズ)
  • 初期費用の6要素:ソフトウェアのライセンス、サーバーなどの環境、導入支援・要件定義、自社向けの作り込み、データ移行、教育とマニュアル整備(SucSak)
  • 年間の保守費は、構築費またはライセンス費の15〜20%が目安(SucSak ほか複数の解説で一致)

人件費の単価も公開されています(システム幹事)。見積の総額を人月単価で割ると、何人が何か月かかる想定かが逆算できます。

役割

1か月あたりの単価

システムエンジニア(上級)

120万〜160万円

システムエンジニア(中級)

100万〜120万円

システムエンジニア(初級)

80万〜100万円

プログラマー(大手所属)

60万〜100万円

プログラマー(中小・下請け)

40万〜60万円

たとえば600万円の改修見積なら、中級エンジニア1人で約5〜6か月、あるいは2人で3か月程度が想定されている計算になります。提示された期間と人数が、この計算と合っているかを確認してください。 合っていない場合は、どこかに見えていない作業が含まれているか、逆に見積漏れがあります。保守費側の妥当性はシステム保守運用費の相場で、金額の比べ方まで解説しています。

5年でいくらかかるか|総額シミュレーションと損益分岐年数

年々高くなる硬貨の山と上昇する光の線で、5年間の総額と損益分岐点を表したイメージ

ここがこの記事の中心です。改修とリプレイスは、初期見積ではなく5年の総額で比べてください。 計算式は次の1つだけです。

損益分岐年数 = リプレイスの初期費用 ÷(いまのシステムの年間維持費 − 新しいシステムの年間維持費)

「年間維持費」は、年間の保守費 + 1年に発生している改修費の平均です。この記事では比較期間を5年に置きます。この年数が5年以内に収まれば費用面で説明しやすく、5年を超えるなら、保守終了や法改正など費用以外の理由が必要になります。以下は仮定に基づく試算です。3つのケースの数字はすべて説明用に置いたもので、実在の案件ではありません。自社の数字を当てはめて使ってください。

ケース1:毎年の改修が積み上がっている中規模の業務システム

当初の構築費が1,000万円規模、利用者30名程度。法改正や業務変更で毎年1〜2回の改修が発生しているとします。

いまのまま改修を続ける

市販製品+改修でリプレイス

初期費用

0円

500万円

年間の保守費

180万円(構築費の18%)

100万円

年間の改修費

150万円

50万円

年間維持費の合計

330万円

150万円

5年総額

1,650万円

1,250万円

損益分岐年数は 500万円 ÷(330万円 − 150万円)= 約2.8年。3年目の途中で逆転し、5年では400万円リプレイスの方が安くなります。つまりこのケースでは、改修を続ける判断が5年で400万円高くつくということです。

ケース2:改修がほとんど発生していない小規模システム

同じシステムでも、年に1回あるかどうかの軽微な修正しか発生していない場合です。

いまのまま

リプレイス

初期費用

0円

500万円

年間の保守費

60万円

100万円

年間の改修費

30万円

50万円

年間維持費の合計

90万円

150万円

5年総額

450万円

1,250万円

分母が 90万円 − 150万円 = マイナス60万円。つまり入れ替えた後の方が毎年の費用が高く、何年経っても初期費用は回収できません。5年総額では800万円の差で、いまのまま使い続ける方が安くなります。「古いから入れ替える」という理由だけで動くと、このパターンに入ります。

ケース3:基幹システムを全面リプレイスする

いまのまま

全面リプレイス

初期費用

0円

3,000万円

年間の保守費

400万円

300万円

年間の改修費

300万円

150万円

年間維持費の合計

700万円

450万円

5年総額

3,500万円

5,250万円

損益分岐年数は 3,000万円 ÷(700万円 − 450万円)= 12年。5年では1,750万円リプレイスの方が高くなります。

この試算の条件では、全面リプレイスを費用削減だけで説明することはできません。 その場合に入れ替えの理由になるのは、「このままではできないことがある」という事情です。具体的には、保守が終了して障害時に直せない、法改正に期日内に対応できない、取引先が要求する仕組みに接続できない、事業のやり方そのものを変えたい、といった理由です。社内の稟議では、費用対効果ではなくリスクと事業要件で説明した方が伝わります。

この試算に入っていない費用に注意

上の3ケースは、外部に支払う金額だけの比較です。実際には次の費用が上乗せされます。

  • 社内の担当者の時間:要件定義や受け入れテストへの参加。リプレイスでは数か月にわたって発生します
  • 並行稼働の費用:旧システムと新システムを一定期間同時に動かすと、その間は保守費が二重になります
  • 教育とマニュアル整備:操作が変わるため、現場が慣れるまでは一時的に生産性が落ちます
  • データ移行と、移行前のデータ整理:データの量と汚れ具合によっては、プログラムの修正より時間がかかることもあります

これらは見積書に載らないまま進行して後から追加請求になりやすい項目です。何が追加費用になりやすいかはシステム開発の追加費用にまとめています。

「来年度まで待つ」の費用も計算に入れる

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の『企業IT動向調査2026』(2025年9〜10月に調査、957社回答)の速報では、2025年度のIT予算を前年度より「増加」と答えた企業が52.6%と報じられました(年度途中の調査のため計画値を含む回答です)。調査の概要版では、IT予算の増加理由について「既存システムの更新や値上げ等の不可避的要因の影響が大きい」とまとめられています。

ここから言えるのは、先送りしても単価が下がるとは限らないということです。ケース1の条件なら、1年待つあいだに年間維持費330万円がそのまま出ていき、その間に見積額自体も上がる可能性があります。「待つ」は無料の選択肢ではありません。

改修か作り直しかを決める前に集める現状の証拠

費用を比べる前に、今のシステムで何が起きているかと、そのシステムを直せる状態かを確かめます。ここが曖昧なまま見積を取ると、改修の見積には「調査しないと分からない」部分の余裕が乗り、作り直しの見積には今の仕様を知らないための見落としが残ります。

不満を「不具合」と「新しい要望」に分ける

「使いにくい」「古い」という不満には、性質の違う2つが混ざっていることがよくあります。ここ1年ほどの問い合わせ・障害記録・改修依頼を1行ずつ書き出し、次の2つに分けてください。

区分

例

判断への影響

不具合(今あるはずの機能が正しく動かない)

計算結果がずれる、特定の操作で止まる、夜間処理が朝までに終わらない

同じ箇所に集中していれば、その部分の改修で解決できる見込みが高い。全体に散らばっていれば、作りそのものの問題を疑う

新しい要望(今の機能に無いことをしたい)

外部サービスと連携したい、スマートフォンで見たい、権限を細かく分けたい

今のデータの持ち方のまま足せるかが分かれ目。足せない要望が事業上必須なら、一部置換や作り直しの理由になる

書き出した結果、不具合が数か所に集中しているだけなら、作り直す理由にはなりません。新しい要望のうち「今の構造では実現できないもの」がどれだけ必須かが、入れ替えを検討する本当の理由になります。

改修できる状態かを、引継ぎの状態で見る

同じ不具合でも、ソースコード・テスト・運用の手順がどこまで残っているかで、改修の現実性が変わります。次の表で自社の状態を確認してください。表は説明用の目安で、実際には調査で確かめます。

確認すること

揃っている場合

欠けている場合

ソースコードと利用権

最新のソースコードが手元にあり、契約上も自社が改修を発注できる

改修も作り直しも、まず今の保守会社との契約(著作権・ソースコードの引渡し)の確認から始める

動いている環境の情報

サーバー・OS・データベースの版と、外部とのつなぎ先が分かる

本番環境を調べる作業が先に必要。保守期限が近ければ、一部置換や載せ替えの検討を早める

テスト

自動テスト、または手順書どおりに確かめる受入れの手順がある

直した箇所以外がおかしくなっていないかを確かめる手段がない。改修の前に、主要な業務の確認手順を作る費用を見込む

運用の手順と分かる人

夜間処理・月次処理・障害時の対応が書かれている、または説明できる人がいる

「何のためにあるか分からない処理」が残る。作り直す場合ほど、この調査が欠かせない

データ

主要なデータを一括で出力できる

一部置換や移行の前に、データの取り出し方と費用を今の保守会社に確認する

ソースコードやその利用権が無い場合を除けば、欠けているものの多くは改修の前に補えます。欠けていることだけを理由に作り直しへ進むと、今の仕様が分からないまま新しいシステムを作ることになり、かえって危険です。

AIで自分で進められる部分と、会社に頼む部分

いまは ChatGPT や Claude などの生成AIに手元のソースコードを読ませて処理の概要をまとめたり、障害記録を分類したり、テストで確かめる観点を洗い出したりできます。社内に開発の分かる人がいれば、上の書き出しや一次的な整理は、かなりの部分を自社で進められます。

一方で、次の部分は会社固有の事情に左右され、AIの出力だけでは決められません。

  • 本番環境・本番データに触れる権限と、情報の扱い(ソースコードや業務データを外部のAIサービスに渡してよいか)
  • 月末・年度末だけの処理や特定の取引先だけの扱いなど、業務上の例外が正しく再現できているかの確認
  • 直した結果が正しいかを判定する基準と、受入れの確認
  • 切替の当日に問題が出たときの判断(戻すか進めるか)と、その後の変更の責任

当社に相談いただく場合も、自社でAIを使って進める部分と、任せる部分を一緒に切り分けます。調査だけを依頼して改修は社内で進める、という分け方もできます。

改修で足りるケース・リプレイスが必要なケース

費用の計算とは別に、そもそも改修では解決できない種類の問題があります。ここを取り違えると、改修を重ねた末に結局入れ替えることになり、二重に払うことになります。

改修で足りる

リプレイスが必要

直したい箇所が1〜2か所に特定できている

困りごとがシステム全体に散らばっている

今の画面・データの構造のままで実現できる

データの持ち方そのものを変えないと実現できない(例:夜間の一括処理をその場で反映する形に変えたい)

今のシステムを作った会社、または引き継げる会社がいる

中身が分かる人が社内にも保守会社にもいなくなった

OS・データベースの保守期限まで3年以上ある

保守期限が切れている、または2〜3年以内に切れる

法改正への対応が、期日内に間に合っている

毎回の法改正対応が期日ぎりぎり、または間に合っていない

年間の改修費が、年間の保守費より小さい

年間の改修費が年間の保守費を超え、毎年増えている

利用者数・データ量が今後も大きくは変わらない

拠点や利用者が増え、今の構成では処理が追いつかない

外部のサービスとつなぐ必要がない

クラウドサービスやAIとデータを連携させたいが、データを外に出す手段がない

最後の行のように、データを外に出せないことが理由で改修が成立しない場合、システム本体を入れ替える前に試せる方法があります。詳しくはAPI連携できないシステムからデータを取り出す方法をご覧ください。

なお、右側に1つでも当てはまれば即リプレイス、ではありません。 右側に当てはまった項目が「システムのどの部分か」を特定できれば、その部分だけを置き換える選択肢が残ります。それが次に説明する6つの選択肢です。

改修かリプレイスかの前に|選択肢は6つある

改修とリプレイスを比較する解説の多くは2択で書かれていますが、実務では次の6つが選べます。 2択で考えると、100万円で済む話に500万円を払うか、逆に500万円かけるべき問題を100万円の改修で先送りするかのどちらかになりがちです。

#

選択肢

中身

費用の目安

期間

1

そのまま使う

保守だけ継続し、何も作らない

年間の保守費のみ(構築費の15〜20%)

—

2

外側からAIや自動化で補う

本体には手を入れず、出力されたデータを加工・連携して手作業をなくす

100万円〜(当社の既存システムの改修の開始価格)

範囲による

3

設計書だけ起こす(現状分析)

中身を解析して仕様書を復元し、判断材料を作る

調査の範囲による(当社では有償。着手前に範囲と金額を提示)

範囲による

4

一部だけ置き換える(段階移行)

困っている機能だけを切り出して作り直し、残りは今のまま

部分改修 数十万〜300万円/中規模 300万〜1,500万円(SucSak)

1〜9か月

5

市販製品・クラウドサービスに載せ替える

業務を市販製品に寄せ、足りない部分だけ作り込む

初期 数十万〜200万円+月額5〜30万円/改修込みで100万〜500万円(みんなシステムズ)

3〜12か月

6

作り直す(全面リプレイス)

業務の決め方から見直してゼロから

500万円〜1億円超(SucSak)

1〜2年

費用が高い順に並んでいるが、効果の順ではない

6つを上から順に検討するのが合理的です。理由は、下に行くほど費用と期間が増えるのに、現場の困りごとが解決するとは限らないからです。月末の転記作業がつらいという課題に対して6を選んでも、1〜2年後まで何も変わりません。2なら本体に手を入れない分、短い期間で解消できる場合があります。

「現行踏襲でお願いします」と書かないこと

どの選択肢を選ぶ場合でも、依頼時に「今と同じように作ってください」とだけ伝えるのは避けてください。 今の仕様を正確に説明できる資料がない状態でこの言葉を使うと、進行中に「この処理は何のためにあるのか」が次々と判明し、そのたびに追加費用と遅延が発生します。稼働後のトラブルの原因としても、複数の開発会社が共通して指摘している点です。発注側で最低限決めておくべき項目は要件定義の進め方に整理しています。

一部だけ置き換えるときの切り方と切戻し条件

選択肢4(段階移行)は、全面リプレイスより費用と停止のリスクを抑えやすい方法です。ただし切り方を誤ると、新旧2つのシステムを同時に保守し続けることになります。着手前に次の3点を決めてください。

切り出す単位の決め方

切り出しやすいのは、受け取るデータと渡すデータがはっきりしている機能です。たとえば帳票の出力、外部への連携、特定の部署だけが使う画面は、今のシステムからデータを受け取る形にすれば、本体を触らずに置き換えられることがあります。逆に、複数の機能が同じデータを書き換えている部分(受注と在庫の引当てなど)は、切り出すと新旧でデータが食い違いやすいため、後回しにするか、まとめて置き換えます。

  • 切り出す機能が読むデータ・書き込むデータを一覧にする
  • 新旧どちらが正しいデータを持つかを決める(同じデータを両方で更新しない)
  • 置き換える順番は、不具合が集中している機能、要望が多い機能から

作り直す費用以外の移行リスク

見積書の金額には出てこないリスクとして、次を確認してください。

  • 止められる時間:切替のために業務を何時間止められるか。止められない場合は、並行稼働や段階的な切替の費用がかかります
  • データの食い違い:移したデータが旧システムと一致しているかを、どう照合するか
  • 設計書に無い仕様:書かれていない計算や例外処理。同じデータを新旧両方に通し、出力を見比べて洗い出します
  • 外部とのつなぎ先:取引先や他のシステムとの連携の切替日と、相手側の作業
  • 現場の操作:画面が変わる人と時期、問い合わせの窓口

試験運用と切戻しの条件を先に決める

切り替える前に、どの状態になったら旧システムに戻すかを決め、旧システムを戻せる状態で残しておきます。決めておく項目の例です(説明用)。

決めること

例

試験運用の範囲

1部署・1拠点だけ、または1か月分の締め処理だけを新システムで行う

合格の基準

同じ入力に対して、新旧の帳票・集計結果が一致する。一致しない場合は原因を説明できる

切戻しの条件

締め処理が期日までに終わらない、金額の差が説明できない、業務を止める障害が決めた時間内に直らない

切戻しの手順

旧システムへのデータの戻し方、誰が戻すと判断するか、取引先への連絡

旧システムを残す期間

新システムで締め処理を数回終えるまでは、停止・解約しない

切戻しの手順は、試験運用の前に一度実際に試しておくと確実です。戻せない状態で切り替えると、問題が出ても進めるしかなくなります。並行稼働の期間を削らない理由も同じです。

設計書がない・分かる人がいない場合にどうするか

古いバインダーと書類が残る無人のオフィス。設計書や担当者が失われた状態を表したイメージ

改修か作り直しかの判断が止まりやすい状況が、「設計書が残っていない」「作った人がもういない」です。この状態では、改修の見積もリプレイスの見積も精度が出ません。どの会社に聞いても「調査しないと分かりません」と返ってくるのはこのためです。

ここで使えるのが、生成AIにプログラムを読ませて、人が読める仕様書に復元する方法です(いわゆるAIリバースエンジニアリング)。国内でも富士通や東芝デジタルエンジニアリングなどがサービスとして提供しています。東芝デジタルエンジニアリングは、生成AIでプログラムの構造を解析し、技術者が内容を検証して設計書を整える方式です(電波新聞デジタル 2024年4月10日)。前の節のとおり、社内でAIに読ませて概要をつかむこともできます。

ただし、そのまま鵜呑みにはできない

この方法には次の限界があります。

  • AIが条件分岐を読み違えることがあります。復元された仕様書をそのまま信じて設計すると、後の工程で欠陥として表面化します。必ず技術者がレビューする工程を挟んでください
  • プログラムを外部に送ることになるため、情報の取り扱い条件を契約で確認してください。個人情報や取引先情報を扱うシステムでは特に重要です
  • 生成されたプログラムに、利用条件の厳しい無償公開プログラム(オープンソース)が混ざる可能性があります。自社の製品やサービスに組み込めなくなることがあるため、納品物の権利関係を確認してください

つまり、AIで設計書を起こすのは「安く早く済ませる魔法」ではなく、判断材料を作る時間を短縮する道具だと考えてください。当社では、調査だけのご依頼も、調査のうえ改修までのご依頼も受けています。最初に、ソースコード・仕様書・環境情報の有無と、その利用権を確認します。システムの調査報告は有償で、着手前に範囲と金額をお示しし、合意をいただいてから始めます。どこまで調査すればよいか分からない段階でも、初回相談(無料・30分・オンライン)で範囲の候補を一緒に決められます。

▶ 改修と作り直しの判断を相談する

いまの改修見積が妥当か確かめる方法

「改修の見積が高いので、いっそリプレイスした方が安いのでは」と考えたときは、先に今の見積が妥当かを確かめてください。この判断は、相見積もりを取ると覆ることがあります。

改修費が高止まりする原因の1つに、いわゆるベンダーロックインがあります。設計書が整備されていない、独自の作り方をしているといった理由で他社が引き継げず、保守費・改修費が適正かどうかを比べる相手がいない状態です。社内にも中身を理解している人がいなくなると、今の会社に頼み続けるしかなくなります。この状態では、提示された金額が高いのか妥当なのか、そもそも判断できません。

相見積もりで揃えるべき7項目

複数社に声をかけるときは、次を全社に同じ条件で伝えてください。ここが揃っていないと、金額を並べても比較になりません。

  1. 対象業務の範囲(どの業務の、どこからどこまでか)
  2. 拠点数・利用者数・年間のデータ量
  3. 自社向けの作り込みをどこまで許容するか(業務を製品側に合わせる意思があるか)
  4. データ移行の範囲(何年分を、どこまで整理して移すか)
  5. 要件定義を誰が主導するか(発注側か、開発会社か)
  6. 保守の内容と、5年分の総額(月額いくらで、何時間分の作業が含まれるか)
  7. 契約の形態と、追加費用が発生する条件

特に6番を抜くと、初期費用の安い提案が総額では最も高くなります。声をかける文書の書き方はシステム開発の相見積もり・RFPの作り方にひな形を用意しています。

今の会社を切り替えなくてもよい

相見積もりの目的は乗り換えではなく、金額の妥当性を確認することです。結果として今の会社が最も安いなら、それを社内に説明する根拠になります。実際、「他社にも見てもらった」と伝えた時点で見積が見直されるケースもあります。当社への相見積もりも、比較の1社としてお使いいただいて構いません。

費用の目安|当社に依頼する場合

ここまでは一般的な相場です。当社に依頼いただく場合の費用を書きます(すべて税別。クラウド・外部API・ライセンス等の実費は別)。

依頼の種類

費用

内容

既存システムの改修

100万円〜

機能追加、データの出力・取込、システム間の連携、手作業の自動化。本体を作り直さずに困りごとを解消する範囲

調査(調査報告)

有償(着手前に範囲と金額を提示)

ソースコード・環境・データの持ち方を確認し、改修できる範囲と、一部置換・作り直しの候補をまとめる

PoC(試験導入)

300万円〜

一部置換や新しい仕組みを、本格的に作る前に限定した範囲で試作し、効果を確かめる

本開発

個別見積

一部の置き換え、システムの作り直し、新規開発

初回相談は無料・30分・オンライン(Google Meet)です。要件が決まっていなくても、保守会社から届いた見積書1枚の段階でも構いません。今のシステムと困っている操作を伺い、前述の6つの選択肢のどれに当たりそうか、上の価格のどこに当たりそうかの目安をお伝えします。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。事前にお送りいただく資料には、秘密情報・本番の認証情報・実顧客データを含めないでください。

▶ 改修と作り直しの判断を相談する

当社は市販製品を売っている会社ではないため、「入れ替えないという結論」も選択肢として提示できます。 上のケース2のように入れ替えても費用が下がらないと判断できる場合は、その計算をお見せしたうえで、そのまま使い続けることをお勧めすることもあります。市販製品やクラウドサービスの標準機能で業務が回る場合や、相見積もりで今の保守会社の見積が妥当と確認できた場合は、当社に開発を依頼する必要はありません。

当社の公開実績(参考)

当社が公開している受託開発の実績は次の2件です(匿名)。どちらも「改修か作り直しか」を判断した事例として紹介するものではなく、既存のデータや業務の流れを扱う開発の実績です。

  • 通信事業:数万件の請求情報の取込・集計・確認画面
  • 薬局:複数店舗・数千人分の記録管理、権限、確認工程

同じ業界でも、システムの状態が違えば結論は変わります。上の「現状の証拠」を確かめてから判断してください。

相談の流れと、無料・有償の範囲

当社に相談いただく場合の流れです。

  1. 初回相談(無料・30分・オンライン/Google Meet):何を解決したいか(対象業務・使う人・今のシステム)、保守契約の内容、すでに取得している見積があればその内容を伺います。自社でAIを使って進められる部分と、会社に頼んだ方がよい部分を切り分け、依頼の形の候補(既存システムの改修/PoC/本開発/調査のみ)と進め方をお伝えします。要件が決まっていなくても大丈夫です
  2. 相談メモの送付(無料):相談後に、確認した現状と課題、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安、次に必要な資料をまとめた相談メモをメールでお送りします
  3. 提案・見積(無料):資料を受け取った後の提案・見積は無料です。前述の6つの選択肢のどれに当たるかを示し、入れ替えない方がよいと判断した場合は、その計算をお見せします
  4. 調査(有償):既存のコードやシステムを確認しないと判断できない場合は、システムの調査報告を有償でお受けします。着手前に範囲と金額をお示しし、合意をいただいてから始めます
  5. 契約・着手:既存システムの改修は100万円〜、PoCは300万円〜、本開発は個別見積です(税別)

初回の30分では、確定見積や設計書、その場での可否の断定はお出ししません。その代わり、判断に何が足りないか、次にどの資料を確認すればよいかをお伝えします。

現状分析にかかる期間は、システムの規模と、設計書や分かる人がどれだけ残っているかで大きく変わります。保守期限や法改正の期日が決まっている場合は、そこから逆算して、遅くとも期日の1年前には判断を始めてください。 期日が近づくほど選べる選択肢は減り、費用は上がります。

よくある質問

Q1. 改修を頼んでいる会社とは別の会社に、リプレイスを依頼してもいいですか。

問題ありません。ただし着手前に3点を確認してください。1つ目は現行システムのプログラムと設計書の権利が自社にあるか(契約書の著作権の条項を確認)、2つ目は移行期間中も今の保守契約を継続できるか、3つ目はデータを取り出す協力が得られるかです。3つ目でつまずくことがあり、旧システムからデータを出すこと自体に別途費用を請求されることがあります。見積を取る前に、今の会社に「データの一括出力は可能か、有償か」を先に聞いておいてください。

Q2. サポートが切れたOSやデータベースのまま使い続けると、何が起きますか。

すぐに止まるわけではありませんが、実務上は3つの不都合が出ます。1つ目は、不具合が見つかっても修正プログラムが提供されないこと。2つ目は、取引先や監査でセキュリティ要件を問われたときに説明できないこと。3つ目が最も現実的で、新しい機器やソフトとつながらなくなることです。プリンタを買い替えたら印刷できない、といった形で表面化します。サポート切れの期日が2〜3年以内なら、この記事の損益分岐の計算より先に、期日から逆算した計画を立ててください。

Q3. 改修とリプレイスを同時に進めることはできますか。

できます。実際、リプレイスの完了まで1〜2年かかる案件では、その間にも法改正対応などの改修が必要になることがあります。 ただし2点注意してください。1つは、旧システムへの改修は入れ替え時に捨てることになるため、期日が法令で決まっているものだけに絞ること。もう1つは、旧システムに加えた変更を新システムの要件に反映する担当者を明確に決めておくことです。ここが抜けると、新システムが動き出した時点で法改正前の仕様に戻っている、というトラブルが起きます。

Q4. 稼働中のシステムを止めずに入れ替えられますか。

完全に止めずに切り替える方法はありますが、費用は上がります。一般的なのは、一定期間だけ新旧を同時に動かす並行稼働と、機能ごと・拠点ごとに順番に切り替える段階的な切替です。並行稼働の期間を費用削減のために短くすると、切替後にデータ形式の違い、商品・取引先などの基本データの食い違い、帳票の出力エラーが見つかっても、旧システムの結果と比べて原因を切り分けることが難しくなります。並行稼働の期間と切戻しの手順は、削るのではなく最初から予算と計画に入れておく項目です(前述の「試験運用と切戻しの条件を先に決める」)。業務の繁忙期を避けて切替日を設定することも重要です。

Q5. 改修とリプレイスで、社内の担当者にかかる負担はどれくらい違いますか。

外部への支払額以上に差が出ます。改修は、直したい箇所の説明と完成後の確認が中心で、担当者1名が断続的に関わる程度です。リプレイスは、要件定義(見積全体の15〜20%を占める工程)に現場の各部門が参加し、受け入れの確認では実際の業務データを使った検証を部門ごとに行います。数か月にわたって、複数部門から実務担当者の時間が取られると見込んでください。この社内の工数を予算に入れていないと、繁忙期と重なって検討が止まります。リプレイスを決める前に、各部門から誰を出せるかを確認してください。

Q6. 見積が予算を超えました。どこを削れば費用を下げられますか。

削る順番は次のとおりです。まず自社向けの作り込みを減らし、業務を製品の標準機能に合わせられないかを検討します。作り込みは初期費用だけでなく、その後の保守費も押し上げ続けるためです(SucSak)。次にデータ移行の範囲を絞ります(過去何年分を移すか。古いデータは参照用に別途保管する方法もあります)。3番目に対象範囲を分割し、年度をまたいで段階的に進めます。逆に、削ってはいけないのはテストの工程と並行稼働の期間です。ここを削ると、稼働後の手戻りで削った額以上の費用が発生します。

Q7. 社内の稟議では、どちらを選んだかをどう説明すればいいですか。

この記事の損益分岐年数の計算結果を1枚にまとめるのが最も伝わります。「現状の年間維持費○○万円」「入れ替え後の年間維持費○○万円」「初期費用○○万円」「回収まで○年」の4つの数字だけで構いません。あわせて、選ばなかった選択肢をなぜ選ばなかったかを1行ずつ添えてください。 6つの選択肢のうち検討したものを並べておくと、「もっと安い方法はないのか」という質問に先回りできます。なお、5年で回収できない全面リプレイスを費用対効果で説明しようとすると行き詰まりやすくなります。 その場合は、保守終了の期日、法令対応の期日、事業側の要求といったリスク側の言葉で書いてください。

システムの改修とリプレイスで迷っている方へ

改修とリプレイスの判断で本当に難しいのは、どちらが正しいかではなく、判断するための材料が社内にないことです。設計書がない、中身が分かる人がいない、提示された見積が妥当か比べる相手がいない。この状態のまま金額だけを見比べても、決められません。

まずは、不満を不具合と新しい要望に分け、ソースコード・テスト・運用の引継ぎがどこまで残っているかを確かめてください。ここまでは自社でAIを使って進められます。当社は市販製品を売っていないため、「入れ替えない」という結論も含めて提示できます。

  • 既存システムの改修:100万円〜(本体を作り直さずに困りごとを解消する範囲)
  • 調査報告:有償(着手前に範囲と金額を提示)
  • PoC:300万円〜(限定した範囲で試作し、効果を確かめる)
  • 本開発:個別見積
  • すべて税別。クラウド・外部API・ライセンス等の実費は別

初回相談は無料・30分・オンライン(Google Meet)です。要件が決まっていなくても大丈夫です。保守会社から届いた見積書1枚、「来年度で保守を終了します」という通知1通の段階からご相談いただけます。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

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依頼範囲と費用の目安を30分で整理します

この記事の著者

AI革命

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編集部

AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。

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既存システムの改修 100万円〜・PoC 300万円〜(税別)。相談内容を送っていただくと、2営業日以内に担当者からご返信します