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AI受託開発の費用相場|PoC・本開発・保守の実額と内訳【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/09
AI受託開発の費用相場|PoC・本開発・保守の実額と内訳【2026年9月最新】

この記事のポイント

AI受託開発の費用相場を系統別に整理。生成AI活用型は初期50万〜1,000万円、自社データ学習型は500万〜3,000万円。PoC・本開発・保守の実額、人月単価、見積書に出てこない追加費用まで数字で解説します。

AI受託開発の費用相場は、生成AIを既存業務に組み込むタイプで初期50万〜1,000万円、画像認識や需要予測のように自社データでAIに学習させるタイプで初期500万〜3,000万円です。同じ「AI開発」という言葉でも、この2つは下限で10倍の開きがあるため、自社の案件がどちらなのかを先に見分けるだけで予算感はかなり絞り込めます。

「AI開発は50万円から3,000万円です」という説明では、稟議書に何も書けません。この記事では、まず費用が60倍も開く原因を取り除いたうえで、自社の案件がどのレンジに入るのかを5つの質問で判定できるようにします。そのうえで、見積書の内訳の読み方、保守費が妥当かどうかの計算式、後から追加請求が発生する箇所と、それを事前に潰すための質問文まで示します。なお当社の価格はPoC 300万円〜、小規模改修 30万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)で、記事の後半で相場のどこに位置するかを示します。

AI受託開発の費用相場は、まず2つの系統に分ける

情報処理推進機構(IPA)が公開したソフトウェア開発データ白書2018-2019の表紙

出典: 情報処理推進機構(IPA) 公式サイト

費用の幅が極端に広く見えるのは、性質がまったく違う2種類の開発が1つの表に混ぜて説明されているからです。この2つを分けるだけで、自社の予算感はかなり絞り込めます。

生成AI活用型

従来型AI(自社データで学習)

つくるもの

社内資料をAIに読ませて根拠付きで答える仕組み、文書作成・要約、問い合わせ対応、システム間の転記・集計

画像から不良品を見つける、需要を予測する、設備の異常を検知する

学習データの準備

原則不要(既存のAIサービスを利用する)

必須。総工数の60〜80%がデータ整備に消える

PoC(試作検証)の費用

100〜300万円(内容により〜500万円)

500〜1,500万円

本開発

300万〜1,000万円

1,000万〜3,000万円以上

期間

1〜6ヶ月

6ヶ月〜1年以上

月次の運用費

5万〜50万円

30万〜200万円

※PoCとは、本格的に作り始める前に小さく試作して「本当に業務で使えるか」を確かめる工程のことです。

経営者・業務部門長の方が検討しているものの大半は、左の「生成AI活用型」です。請求書の転記、月次集計、問い合わせの一次対応、社内規程の検索といった業務は、既存のAIサービスを土台に組むため、AIそのものを一から作る必要がありません。ここを右の「従来型AI」の相場(PoCだけで500万円〜)で見積もられていたら、その見積書は自社の案件を誤解しています。

規模で見ると次のようになります。複数社が公開している目安がほぼ一致している範囲です。

規模

何をつくるか

初期費用

月次運用

期間

小規模

既存のAIサービスとノーコードを組み合わせ、業務1つを自動化する

50〜300万円

5〜20万円

1〜3ヶ月

中規模

社内資料の検索・回答、複数システムをまたぐ業務の自動化、既存システムとの連携

300〜1,000万円(案件により1,500万円)

10〜50万円

3〜6ヶ月(長いもので12ヶ月)

大規模

自社専用のAIモデル、全社横断のデータ基盤

1,000〜3,000万円以上

30〜100万円

6ヶ月〜1年以上

用途別ではこうなります。自社がやりたいことに近い行を見てください。

つくりたいもの

費用の目安

決められた選択肢を出すだけのチャットボット

初期0〜50万円/月額数千円〜5万円

社内文書を読んで答えるAIチャットボット

初期10〜100万円/月額10〜50万円

需要予測AI

300〜600万円

データ分析AI

300〜1,500万円

画像認識AI

100〜800万円(小規模)/1,000〜3,000万円(大規模)

業務を自動で進めるAIエージェント

500〜2,000万円以上

自社専用の言語AI(大規模言語モデル)の構築・高度な文書処理

500〜3,000万円以上

なお、ここに挙げた金額はいずれも各社が自社サイトで公開している「目安」であり、実際の取引額を集計した統計ではありません。統計としては情報処理推進機構(IPA)の「ソフトウェア開発分析データ集」がありますが、こちらは2022年版が最後で、事業終了により以降の発行予定がありません。2026年時点で「公的統計に基づくAI開発の相場」は存在しない、というのが正確な状況です。

AIエージェント型で検討している場合は費用の体系が少し異なるため、AIエージェント導入の費用相場も併せてご確認ください。

5つの質問で、自社の案件がどのレンジかを判定する

相場表を眺めても「で、うちはいくらなのか」は分かりません。費用を動かしている要因は限られているので、次の5問に答えれば当たりが付きます。

  1. AIに自社のデータを学習させる必要がありますか。 写真・センサーの値・過去の実績から予測させたいなら「はい」。文章を読ませて答えさせたい、転記や集計をさせたいだけなら「いいえ」。
  2. つなぐ既存システムは何本ですか。 販売管理、会計、CRM、電子カルテ、グループウェアなど、データをやり取りする相手の数です。
  3. 1日あたりの処理件数はどれくらいですか。 数十件/数百件/数千件以上のどれか。
  4. 判断ルールは文書になっていますか。 「この条件ならこう処理する」が担当者の頭の中にしかない状態か、マニュアルに書かれている状態か。
  5. 使うのは社内だけですか、社外の顧客も触りますか。

答えを次の表に当てはめます。

当てはまる状況

費用レンジの目安

Q1が「いいえ」+Q2が0〜1本+Q4が文書化済み

30万〜300万円

Q1が「いいえ」+Q2が2〜3本

300万〜1,000万円

Q1が「いいえ」+Q2が4本以上、または顧客が直接触る

1,000万円〜

Q1が「はい」(自社データで学習させる)

PoCだけで500万〜1,500万円

Q2の「つなぐシステムの本数」が効くのは、1本つなぐごとに接続方法の調査・認証・エラー処理・テストが発生するからです。Q5で顧客が直接触る場合に金額が跳ね上がるのは、AIの精度そのものではなく、止まらないための構成、誰が何をしたかの記録、個人情報の取り扱いといった周辺の要件が乗るためです。Q4が「文書になっていない」場合は、要件定義の期間が延び、その分だけ費用が上振れします。

この5問に答えたうえで自社の概算を知りたい場合は、受託開発の初回相談(無料)で、対象業務と使っているシステム名をお伝えいただければ、その場で費用レンジをお答えしています。

費用の内訳|何にいくら払っているのか

AI受託開発の費用内訳を表すオレンジ色の棒グラフ状のブロックと電卓

各社が公開している内訳を見ると、AI開発費の6〜7割は人件費です。GPUやAIの利用料が大半を占めていると思われがちですが、実際に払っているのは人の時間です。

職種・工程

月額単価の目安

AIモデルの本開発

100〜250万円/人月

システム開発(画面・連携・権限まわり)

80〜200万円/人月

データサイエンティスト

80〜150万円

機械学習エンジニア

70〜120万円

システムエンジニア

65〜110万円

プロジェクトマネージャー

110〜150万円

「AI開発は高い」と言われるのは、AIを扱える人の単価が一般的なシステム開発より1〜2割高いことに加え、後述するデータ整備の工数が乗るためです。

工程ごとの費用配分は概ね次の比率になります。総額しか書かれていない「一式」見積を分解するときに使えます。

工程

総額に占める比率

要件定義・PoC設計

10〜15%

データ収集・整備(表記ゆれ・重複・欠損の修正)

15〜30%

AIの開発・学習・精度の調整

20〜30%

システム統合・既存システム連携

15〜25%

テスト・評価

5〜10%

インフラ構築・環境整備

5〜15%

たとえば総額800万円の見積であれば、データ整備に120〜240万円、モデル開発に160〜240万円、既存システム連携に120〜200万円、といった配分になっているはずです。ここから大きく外れている場合、たとえばデータ整備が0円で計上されているなら、その作業は発注側の担当になっている可能性が高い、と読めます。見積書を受け取ったら「この総額を工程別に割ると、どういう比率になりますか」と一言聞くだけで、相手の見積の作り方が分かります。

PoCの費用と、300万円を無駄にしないための3つの条件

PoC(試作検証)を表す小さく光るキューブと、その先に並ぶ3つの判定ポイント

PoCの相場は、生成AI活用型で100〜300万円(内容により500万円まで)、従来型AIで500〜1,500万円です。ここで気をつけるべきなのは、PoCが本開発につながらず、そこで終わってしまう案件が少なくないことです。精度は出たのに業務の流れに乗せられなかった、現場が関与していなかったので誰も使わなかった、というのが典型的な終わり方です。

これは技術の問題ではなく、発注の設計の問題です。PoCに入る前に、次の3つを文書で決めてから発注してください。

  1. 合格ラインを数字で決める。 「精度が高いこと」ではなく、「対象100件のうち、人が修正なしで使えるものが85件以上」「1件あたり10秒以内で処理」のように、判定できる形にします。
  2. 合格したら本開発に進む、という条件を先に合意する。 誰が判断するのか、判断はいつ行うのか、本開発の概算はいくらか。ここを決めずにPoCを始めると、良い結果が出ても社内で止まります。
  3. 使うデータの範囲と提供期限を決める。 「どの部署の、いつからいつまでの、どの形式のデータを、いつまでに誰が渡すか」まで書きます。AI開発が止まる原因の上位が、着手後に「思ったよりデータがない」「あるが質が悪い」と発覚することです。

段階を分けて進めるこの考え方は、経済産業省が2018年6月に公表した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」でも推奨されています。同ガイドラインはAI開発を、①実現性の見立て(アセスメント)、②限定したデータでの検証(PoC)、③本番向けの開発、④運用後の追加学習、の4段階に分け、段階ごとに契約を結ぶ方式を示しています。一括で発注せず段階に分けることで、成果物の認識違いや開発が失敗するリスクを、その段階の費用の範囲に限定できるという考え方です。なお同省は2025年2月にも、AIの利用・開発に関する契約チェックリストを公表しています。

作ったものが現場で使われずに終わる問題については、業務自動化が定着しない原因でも整理しています。

保守・運用費は「年間で開発費の10〜20%」+AIの利用料で見る

AIの利用料(従量課金)の料金体系を示すOpenAIのAPI料金ページのイメージ

出典: OpenAI 公式サイト

見積で見落とされやすいのが、公開後にかかり続ける費用です。相場は次の通りです。

項目

目安

保守・運用(月額)

5万〜200万円

保守・運用(年額・生成AI活用型)

開発費の10〜20%

保守・運用(年額・従来型AI)

開発費の20〜40%

システム開発一般の年間保守費

開発費の15〜20%

生成AI活用型なら年間で開発費の10〜20%、自社データで学習させるタイプなら20〜40%が目安です(一般的なシステム開発は15〜20%)。年間保守費 ÷ 初期開発費が20%を大幅に超えていたら、内訳の説明を求めてください。 これは発注側がその場で使える判定式です。たとえば初期800万円の案件で年間保守240万円(30%)を提示されたら、その30%が何を含むのかを確認します。妥当なケースもあります。従来型AIは、時間の経過とともにデータの傾向が変わって精度が落ちるため、定期的な再学習が必要で、年20〜40%になるのは自然です。一方、生成AI活用型で30%を提示されているなら、監視だけの費用にしては高すぎます。

もう1つ、生成AI特有の費用があります。AIの利用料(従量課金)です。 多くの見積書は「月額運用費10〜50万円」としか書いておらず、それが保守する人の人件費なのか、AIの利用料なのかが区別されていません。処理件数が増えれば利用料も増えるため、ここが従量課金のままだと、業務が拡大したときに費用が想定を超えます。

見積書では、「月額にAIの利用料は含まれていますか。含まれている場合、月あたり何件・どれくらいの分量までが上限ですか」と必ず確認してください。当社が定額で提供している運用型のサービスでは、月1,000万〜1.2億トークン(トークンはAIが処理する文章量の単位)分の利用枠を月額料金(10〜50万円・税別)に含める形にしています。上限が明示されている見積かどうかで、翌年の予算の読みやすさが変わります。

保守費の考え方はRPAの保守コストが高くなる理由と共通する部分があります。また、補助金を使う場合、保守・運用費は対象外になることが多い点にも注意が必要です(補助金で保守費が対象外になるケース)。

見積書に書かれていない費用と、安い見積書の構造

追加請求が発生しやすいのは、ほぼ決まった箇所です。発生タイミング・金額感・事前に潰すための質問文を並べます。最後の列はそのまま見積依頼のメールに貼って構いません。

項目

いつ発覚するか

金額感

発注前に聞く質問

データの整備(表記ゆれ・重複・欠損の修正)

着手後1〜2ヶ月

総額の15〜30%

「データの整備は御社の作業範囲ですか、当社の作業ですか。当社の場合、想定工数はどれくらいですか」

学習用データへのタグ付け

従来型AIの開発中

件数×単価で別建てになることが多い

「タグ付けが必要な件数と、その費用は見積に含まれていますか」

既存システムとの連携

要件定義の後半

総額の15〜25%

「連携するシステムは何本を前提にした金額ですか。1本増えるといくらですか」

インフラ・実行環境

本番移行時

総額の5〜15%+月額

「サーバー費用は初期費用に含まれますか、月額で別請求ですか」

AIの利用料(従量課金)

公開後

処理量に比例

「月額に利用枠は含まれますか。上限を超えた場合の単価はいくらですか」

再学習・追加学習

公開から半年〜1年後

従来型AIは年20〜40%

「精度が落ちた場合の再学習は保守に含まれますか」

修正・やり直しの回数

テスト工程

上限を超えると都度見積

「修正は何回まで含まれますか。超えた場合の単価はいくらですか」

本番移行・現場教育

公開直前

別建てが多い

「マニュアル作成と現場向けの説明会は見積に入っていますか」

安すぎる見積書には構造があります。たいてい次の4つのいずれかでスコープが削られています。

  1. データ整備を「発注側の作業」として金額から外している
  2. 既存システムとの連携を含めていない
  3. 本番稼働と保守を別費用にしている
  4. 修正・評価の回数に上限を設けている

つまり、安い見積は不当なのではなく、同じものを見積もっていないのです。3社から見積を取るなら、金額を比べる前に、上の表の8項目それぞれが「含む/含まない」のどちらなのかを揃えてください。揃えた結果、最安と最高の差が2割以内に収まることは珍しくありません。

契約の形で金額が2〜3割変わる

同じ開発でも、契約形態によって金額が変わります。ここは発注側が交渉に使える論点なので、押さえておく価値があります。

  • 準委任契約:決められた時間・体制で作業する契約。成果物の完成義務を負わない代わりに、費用は実際にかかった工数に近くなります。
  • 請負契約:成果物の完成を約束する契約。完成しなければ報酬を請求できないため、受注側は不確実性のリスクを価格に載せます。同じ内容でも見積が2〜3割上がるのが一般的です。

AI開発では、前半のPoCは準委任、後半の本開発は請負が原則的な組み方です。理由は、AIは「どこまでの精度が出るか」を事前に約束できないためです。データを見る前に「正解率95%を保証します」と言う会社は、その保証料をどこかに乗せているか、実現できずに揉めるかのどちらかになります。

前述の経済産業省のガイドラインでも、AIの性能保証は技術的に困難であるとされ、保証するとしても「あらかじめ合意した評価用のデータに対する精度」に限定する、あるいは「成果完成型」の準委任契約を活用する、という考え方が示されています。

権利の扱いにも注意点があります。学習に使う元のデータや、学習によって出来上がったAIの内部の設定値は、そのままでは著作権や特許権が認められにくく、誰のものかが法律で明確に規定されていない領域です。したがって「権利は全部こちらのもの」という主張で争うより、「自社はこの用途で自由に使える」「受注側は他社の案件に転用しない」という利用条件を契約書に書くほうが実利があります。契約書を確認するときは、「権利の帰属」の条項だけでなく「利用条件」の条項を読んでください。

当社の費用|相場のどこに位置するか

ここまでが中立的な相場の話です。当社の価格は次の通りです(すべて税別)。

業界の目安

当社

PoC(試作検証)

100〜500万円(生成AI活用型)

300万円〜

小規模な改修・部分自動化

5〜50万円

30万円〜

本開発

300万〜3,000万円

個別見積

見ての通り、安売りはしていません。相場のほぼ中央です。当社が力を入れているのは価格ではなく、発注段階でつまずきやすい部分を先に潰すことです。具体的には次の2点です。

要件が固まっていない状態で相談できます。 「AIで何かできないか」「この業務を何とかしたいが、AIが合うのかも分からない」という段階で構いません。多くの案件は、要件定義の前段階、つまり「対象業務を1つに絞る」「データの所在を確認する」ところで止まっています。初回相談は無料で、この整理から一緒に行います。

AIが適さない場合は、そう申し上げます。 紙とFAXが起点になっている業務や、毎回その場の例外判断が必要な業務は、AI化の前に電子化やルールの整理が必要です。300万円のPoCを受注するより、30万円の改修で済ませたほうが結果的に長く使われるケースもあります。

費用の内訳、対応できる範囲、進め方の詳細は受託開発サービスのページに記載しています。

実際にやった事例

守秘の関係で社名は出せませんが、当社が実際に担当した案件を3つ、課題・作ったもの・変わったことの順で紹介します。

調剤薬局のケース(小規模改修・30万円〜の帯)

課題は、同じ情報を複数のシステムに入力し直していたことでした。1つのシステムに入力した内容を別の管理表へ手で転記する作業が毎日発生しており、繁忙期には転記漏れも起きていました。作ったものは、片方のシステムから出力したデータを整形し、もう一方の形式に変換して取り込めるようにする仕組みです。全社的なシステム刷新ではなく、詰まっている1箇所だけを対象にしました。変わったのは、転記作業そのものがなくなったことと、転記ミスを探して直すために使っていた時間が消えたことです。この規模なら、稟議も部門長の決裁で通ります。

医療機関のケース(PoC・300万円〜の帯)

課題は、蓄積されている文書や記録は多いのに、必要な情報を探すのに時間がかかっていたことでした。作ったものは、手元の資料をAIに読ませ、質問すると根拠となる箇所を示しながら答える仕組みです。いきなり全部門に展開せず、対象を1部門・1業務に絞ってPoCから始めました。ここで効いたのは、開始前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格とするか」を文書で決めておいたことです。判定の基準があったため、拡大するかどうかの意思決定が短期間で済みました。

インフラ企業のケース(本開発・個別見積の帯)

課題は、複数のシステムにまたがるデータを人が突き合わせて確認していたことでした。件数が多く、月末に負荷が集中していました。作ったものは、システム間のデータを自動で照合し、食い違いがある分だけを人に回す仕組みです。全件を人が見る運用から、例外だけを人が見る運用に切り替えました。変わったのは、確認作業の総量が減ったことに加え、月末に集中していた負荷が平準化されたことです。

費用対効果の考え方:たとえば、ある作業に担当者1名が毎月20時間かけているとします。時給3,000円換算で月6万円、年間72万円です。この作業を30万円の改修で解消できるなら、計算上は5ヶ月ほどで回収できます。逆に、月2時間の作業のために300万円のPoCを組むのは合いません。発注を検討する前に、その業務に月何時間かかっているかを実測してください。 この数字がないと、いくらの投資が妥当かを誰も判断できません。効果の測り方は自動化の効果測定で解説しています。

発注前にやると費用が下がる6つの準備

同じ会社に頼んでも、発注側の準備の有無で見積は変わります。要件定義の期間が短くなり、手戻りが減るためです。

  1. 対象業務を1つに絞る。 複数の業務を同時に相談すると、要件定義の費用が跳ね上がります。まず一番時間を食っている業務だけを対象にしてください。
  2. データの所在と形式を棚卸しする。 どのシステムに、どの形式(CSV・Excel・PDF・紙)で、いつからのデータがあるか。データ整備は総額の15〜30%を占める最大の変動要因です。
  3. つなぐ既存システムの本数を数える。 システム名と、それぞれのデータの出し入れ方法(CSVで出力できるか、外部連携の窓口があるか)まで分かると、より正確な見積が出ます。
  4. 判断ルールを文書化する。 「この条件のときはこう処理する」を書き出します。曖昧なままだと求める精度が決まらず、見積が安全側に大きく振れます。
  5. PoCの合格ラインを先に決める。 精度、処理時間、対象件数の3点です。
  6. 役割分担を要件定義書に書く。 データ提供は誰が、いつまでに行うか。「データ提供完了:◯月◯日まで」と日付まで入れてください。ここが曖昧な案件は、ほぼ確実に納期が延びます。

そもそも受託開発が必要かどうかも、先に検討する価値があります。既製のサービスやノーコードで足りるなら、そのほうが安く早く済みます(ノーコードとAIエージェントの違い)。費用を抑える手段としては補助金の活用もあり、条件が合えば数百万円規模の補助を受けられる制度があります(AI導入に使える補助金)。

相談から公開までの流れと期間

段階

期間の目安

発注側でやること

初回相談(無料)

1回・60分程度

困っている業務と、月にかかっている時間を話す

概算見積・進め方の提示

1〜2週間

社内で対象業務を1つに絞る

要件定義

1〜2ヶ月

データの棚卸し、現場ヒアリングへの協力、判断ルールの確認

PoC(必要な場合)

1〜2ヶ月

合格ラインの判定、現場での試用

本開発

小規模1〜3ヶ月/中規模3〜6ヶ月

中間確認、テストへの参加

本番移行・現場教育

2〜4週間

現場への周知、運用ルールの決定

運用・保守

継続

使われ方の共有、改善要望の集約

止まりやすいのは要件定義です。技術的な難しさではなく、発注側の社内で「対象業務が絞れない」「データがどこにあるか分からない」ために着手できない、という理由がほとんどです。逆に言えば、前章の6つの準備が済んでいれば、この期間は大きく短縮できます。準備が済んでいなくても構いません。その整理から一緒に行う前提で、受託開発の相談窓口をご利用ください。

よくある質問

Q1. 予算が300万円しかありません。この金額で何ができますか。

対象業務を1つに絞れば、できることはあります。すでに電子データがあり、つなぐシステムが1〜2本なら、300万円は生成AI活用型の本開発の下限からPoCの中心帯に入ります。具体的には、決まった形式のデータの転記・変換・集計の自動化、社内文書を読んで答える仕組みの部門単位での導入、といった範囲です。逆に、この予算で「全社のAI化」「自社データを使った独自AIの開発」に手を出すと、PoCだけで消えます。300万円を1つの業務に集中させて社内に成功事例を作り、次年度に横展開する進め方をおすすめします。当社の小規模改修(30万円〜)で足りる案件も実際にあります。

Q2. 相見積もりは何社くらい取るべきですか。渡す資料は何を揃えればいいですか。

3社程度が実務的です。それ以上になると、比較そのものに社内の工数がかかります。重要なのは社数より、全社に同じ資料を渡すことです。最低限、①対象業務の説明(現在の作業手順)、②つなぐシステムの一覧、③扱うデータの種類・形式・件数、④希望する時期と予算感、⑤本記事の「見積書に書かれていない費用」の8項目について含む/含まないを明記してもらう依頼文、の5点を揃えてください。これを渡さずに取った見積は、各社が違う前提で計算しているため、金額を比べても意味がありません。

Q3. 途中で要件が変わった場合、追加費用はどうなりますか。

要件が変わること自体は前提です。問題は決め方が契約に書かれていないことで、ここが揉める原因になります。契約前に「変更が発生したときの手順(誰が申請し、誰が承認し、いくらで、納期はどう動くか)」を1枚の文書にしておいてください。準委任契約であれば工数の増減として吸収しやすく、請負契約では原則として変更のたびに別見積になります。この違いも、契約形態を選ぶときの判断材料になります。

Q4. 社内にエンジニアがいませんが、発注できますか。誰が窓口になるべきですか。

発注できます。むしろ当社が担当してきた案件の多くは、社内にAIの専門人材がいない企業です。窓口は、技術に詳しい人ではなく、対象業務の現場を分かっている人が適任です。理由は、開発中に最も多く発生する質問が「この場合はどう処理していますか」という業務の確認だからです。情報システム部門の担当者が窓口になり、業務の質問に答えられずに毎回持ち帰る、という形が最も進みが遅くなります。現場の責任者を主担当、情報システム部門を副担当にする体制をおすすめします。

Q5. 作ってもらったシステムを、後から別の会社に引き継げますか。

契約時の取り決め次第です。引き継ぎを可能にしておきたい場合は、契約前に3点を確認してください。①ソースコードの引き渡しがあるか、②設計書・運用手順書が納品物に含まれるか、③使っている外部サービスのアカウントが自社の名義か受注側の名義か。とくに③は見落とされやすく、受注側の名義のままだと、契約終了と同時にシステムが止まります。納品物の一覧に「ソースコード一式」「設計書」「運用手順書」が明記されているかを、見積の段階で確認してください。

Q6. 外注せず、社内で人を採用して内製したほうが安く済みませんか。

継続的に作り続けるものがあるなら内製が有利になりますが、単発なら外注のほうが安く済むのが一般的です。目安として、システムエンジニアの人月単価は65〜110万円、機械学習エンジニアは70〜120万円です。仮に1名を採用した場合、年間の人件費だけでも数百万円から1,000万円規模になり、これに採用費と、その人が独力で運用まで担えるようになるまでの期間のコストが乗ります。年に1〜2件しか開発案件がない状態で専任を抱えると、稼働していない期間の費用を丸ごと負担することになります。まず外注で1件作り、社内に運用を残せるかどうかを見てから内製化を判断する順序が現実的です。

Q7. 補助金は使えますか。

AI導入やシステム開発を対象にした補助金制度は複数あり、条件が合えば数百万円規模の補助を受けられます。ただし、①制度ごとに対象となる経費の範囲が違う(保守・運用費は対象外になることが多い)、②公募の締切があり、交付が決定する前に発注すると対象外になる、③入金は事業が完了した後のため、いったんは全額を自社で立て替える必要がある、の3点に注意が必要です。制度の内容と締切は頻繁に変わるため、最新の情報はAI導入に使える補助金でご確認ください。

AI受託開発の費用でお悩みの方へ

AI受託開発の費用相場は、生成AIを業務に組み込むタイプで初期50万〜1,000万円、自社データで学習させるタイプで初期500万〜3,000万円です。保守は生成AI活用型で年間の開発費の10〜20%、自社データで学習させるタイプで20〜40%が目安で、生成AIの場合はここにAIの利用料が乗るかどうかを確認する必要があります。金額の6〜7割は人件費であり、その多くはデータの整備と既存システムとの連携に使われています。

  • 見積書に「AI開発一式」としか書かれておらず、内訳が分からない
  • 3社から見積を取ったが、金額が3倍違う理由が分からない
  • そもそもAIが適した業務なのか、判断がつかない

このいずれかに当てはまるなら、初回相談は無料です。当社の価格はPoC 300万円〜、小規模改修 30万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)で、医療機関・調剤薬局・インフラ企業での実績があります。要件が固まっていない段階、「AIで何かできないか」という段階からご相談いただけます。

ご相談の際は、①自動化したい業務の内容、②その業務に月何時間かかっているか、③使っているシステムの名前、の3点をお聞かせください。この3点があれば、概算の費用レンジと、そもそもAIで解くべき業務かどうかを、その場でお伝えできます。AIが適さないと判断した場合は、その理由と代わりの手段を正直に申し上げます。

関連記事:AIエージェント導入の費用相場ノーコードとAIエージェントの違いRPAの保守コストが高くなる理由自動化の効果測定業務自動化が定着しない原因

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