AIツール2026年10月更新

K-EXAONE 2.0とは?LG AI研究院の750Bオープンウェイトモデル|Apache 2.0の商用条件・日本語性能・韓国ソブリンAIの現在地

公開日: 2026/10/06
K-EXAONE 2.0とは?LG AI研究院の750Bオープンウェイトモデル|Apache 2.0の商用条件・日本語性能・韓国ソブリンAIの現在地

この記事のポイント

K-EXAONE 2.0は、LG AI研究院が2026年7月に公開した総パラメータ750B・アクティブ37BのMoE型オープンウェイトLLMで、Apache 2.0により商用利用できます。スペック、ベンチマークの得意・不得意、日本語性能の公表状況、旧ライセンスとの違い、デモ・API・セルフホストの使い方、韓国ソブリンAI事業の2次評価結果まで整理します。

K-EXAONE 2.0は、韓国LGグループのAI研究機関「LG AI研究院(LG AI Research)」が2026年7月31日に公開した、総パラメータ750B(7,500億)・アクティブ約37BのMoE型オープンウェイトLLMです。 ライセンスはApache 2.0で、商用利用・改変・再配布ができます。長文脈の読解と韓国文脈の安全性では最上位クラスの数値を出していますが、知識・数学・コーディングの多くの項目では、比較対象のQwen3.5・GLM-5.1・DeepSeek V4 Proを下回ります。

韓国政府の「独自AIファウンデーションモデル」事業(いわゆる韓国版ソブリンAIプロジェクト)向けに開発されたモデルで、2026年8月の2次評価は通過しました。ただし、総合点は通過3チーム中3位です。

この記事でわかること:

  • K-EXAONE 2.0のスペックと、公式ベンチマークから見える得意分野・苦手分野
  • 日本語性能について現時点で公表されていること・いないこと
  • Apache 2.0で「できること・守ること・含まれないこと」と、初代K-EXAONEの独自ライセンスとの違い
  • デモ・API・セルフホストの3つの使い方と、必要なGPU・コストの目安
  • 韓国ソブリンAI事業の2次評価結果と、2026年12月の最終選考までの流れ
  • Qwen3.5・GLM-5.1・DeepSeek V4 Pro・SKテレコム「A.X K2」との比較

想定読者は、オープンウェイトLLMの採用を検討している企業の技術担当者・法務担当者、国産・ソブリンAIの動向を追っている方、韓国発の大型モデルを業務で試したい開発者です。内容はLGの公式発表・Hugging Faceのモデルカード・技術レポート・韓国や日本の報道をもとにしています。

K-EXAONE 2.0とは:まず押さえたい5つのポイント

LG AI研究院によるK-EXAONE 2.0発表ビジュアル(750Bパラメータの基盤モデル)

出典:LG AI Research 公式ニュース

K-EXAONE 2.0は「巨大で、ライセンスは使いやすいが、総合性能は中国勢フラッグシップの一歩手前」というのが現時点での妥当な見方です。

  1. 韓国で学習された750B級のオープンウェイトモデル。 LGは「設計・データ・学習・推論インフラまで全工程を自社で独自に完了した」と説明しています。2026年1月公開の初代K-EXAONE(236B-A23B)をアップサイクリングして、規模を3倍以上に拡大しました。
  2. ライセンスがApache 2.0に変わった。 初代は独自の「K-EXAONE AI Model License」で、商用目的の第三者配布には別途契約が必要でした。2.0では標準的なOSSライセンスになり、法務レビューがしやすくなっています。
  3. 長文脈と安全性は強い。 262Kトークンの文脈を扱え、長文脈ベンチ「OpenAI-MRCR」は94.4で、比較対象の中で最高でした。韓国文脈の安全性ベンチ(KGC-Safety 99.8)もトップです。
  4. コーディング・知識・難問推論では劣後する。 SWE-bench Verifiedは68.2で、Qwen3.5(76.4)やDeepSeek V4 Pro(80.6)に届きません。Humanity's Last Examは18.3と大きく差があります。
  5. 手元のPCでは動かせない。 公式の構成例はNVIDIA H200を8基×2ノード(計16GPU)です。個人や中小企業が試すなら、デモかAPI経由が現実的です。

基本情報

項目

内容

正式名称

K-EXAONE-2.0-750B-A37B

開発元

LG AI Research(LG AI研究院)

公開日

2026年7月31日(Hugging Face)

技術レポート

arXiv:2608.04505(2026年8月5日投稿)

ライセンス

Apache License 2.0

提供形態

オープンウェイト(BF16 / FP8 / NVFP4 / DSpark)、FriendliAI経由のAPI、Webデモ(k.exaone.ai)

前モデル

K-EXAONE(236B-A23B、2026年1月11日公開)

出典:LG AI Research 公式ニュース、Hugging Face モデルカード、arXiv 技術レポート

K-EXAONE 2.0の主なスペック

Hugging Faceで公開されているK-EXAONE-2.0-750B-A37Bのモデルページ

出典:Hugging Face(LGAI-EXAONE/K-EXAONE-2.0-750B-A37B)

K-EXAONE 2.0は、256のエキスパートからトークンごとに8つ(+共有1つ)を選んで計算するMoE(Mixture of Experts)構造です。1トークンあたりの計算に使うのは約37Bですが、メモリには750B分の重みをすべて載せる必要があります。

項目

値

総パラメータ / アクティブ

750B / 37B

レイヤー数

78(Dense 2層+Sparse 76層)+MTP 1層

アテンション

スライディングウィンドウ(4,096トークン)3層+グローバル1層を1組とするハイブリッド構成

MoE

256エキスパート、トークンあたり8活性+共有エキスパート1

コンテキスト長

262,144トークン(公称256K)

語彙数

153,600

対応言語

韓国語・英語・スペイン語・ドイツ語・日本語・ベトナム語・フランス語・イタリア語・ポーランド語・ポルトガル語(10言語)

モダリティ

テキストのみ(画像・音声入力は非対応)

知識カットオフ

モデルカード上の表記は「2025 Q2」

推論モード

推論(Thinking)モードがデフォルトON。enable_thinking で切り替え

ツール呼び出し

OpenAI互換のfunction calling

初代K-EXAONEの6言語から、フランス語・イタリア語・ポーランド語・ポルトガル語の4言語が加わりました。日本語は初代から引き続き公式サポート言語です。

学習は「継続事前学習 → 難易度重視のmid-training → ポストトレーニング」の3段階で行われ、ポストトレーニングでは推論、エージェント型のコーディング、多言語、韓国社会の文化に根差した安全性が重点項目とされています。

知識カットオフには注意が必要です。 2026年7月公開のモデルですが、モデルカードには「2025 Q2」と書かれています。最新の製品情報や法改正などを扱う場合は、検索やRAG(社内文書検索)と組み合わせる前提で考えたほうが安全です。

ベンチマークで見る実力:得意分野と苦手分野

Artificial AnalysisによるK-EXAONE 2.0の評価ページ

出典:Artificial Analysis

公式ベンチマークを素直に読むと、K-EXAONE 2.0が明確に勝っているのは長文脈と安全性です。知識・数学・コーディングの多くでは、比較対象の中国勢フラッグシップを下回ります。 LGの公式発表は「24ベンチマーク(9領域)の平均が70.1で、初代の63.3から10%以上改善」と前世代との比較を強調していますが、他社モデルとの差もあわせて見ておくべきです。

公式ベンチマーク比較(抜粋)

分野

ベンチマーク

K-EXAONE 2.0

初代K-EXAONE

Qwen3.5

GLM-5.1

DeepSeek V4 Pro

知識

MMLU-Pro

83.5

83.8

89.8

86.0

87.5

知識

GPQA-Diamond

82.2

79.1

88.4

86.2

90.1

難問

Humanity's Last Exam

18.3

13.6

28.7

31.0

37.7

数学

AIME 2026

92.3

92.2

91.3

95.3

95.2

コーディング

SWE-bench Verified

68.2

49.4

76.4

73.6

80.6

エージェント

Terminal-Bench 2.1

43.8

30.3

51.3

61.8

64.0

指示追従

IFEval

92.4

89.7

92.6

93.9

94.0

長文脈

OpenAI-MRCR

94.4

52.3

93.0

71.5

92.9

韓国語

KMMLU-Pro

69.1

67.3

77.4

75.8

80.5

多言語

MMMLU

86.6

86.2

90.6

89.7

89.6

安全性

KGC-Safety

99.8

96.1

92.0

69.3

82.8

安全性

ROK-Fortress

89.5

60.9

86.1

73.2

47.6

出典:Hugging Face モデルカード(太字は各行の最高値)。比較列のDeepSeek V4 Proは、韓国報道では「DeepSeek V4 Pro Max」と表記されています。

得意なこと

  • 長い文書の読解・情報抽出:OpenAI-MRCRは初代の52.3から94.4へ大きく改善しました。契約書・議事録・技術文書をまとめて読ませる用途とは相性がよいと考えられます。
  • 安全性を重視する応答:韓国の社会文化・地政学的な文脈で調整された安全性ベンチ2種で最高値です。
  • 前世代からのコーディング改善:SWE-bench Verifiedは49.4から68.2へ、Terminal-Bench 2.1は30.3から43.8へ伸びています。

苦手なこと

  • 最難関の推論・知識問題:Humanity's Last Examは18.3で、DeepSeek V4 Pro(37.7)の半分以下です。
  • 自律的なエージェントコーディング:Terminal-Bench 2.1でGLM-5.1・DeepSeek V4 Proと約20ポイントの差があります。
  • 韓国語の知識問題ですら首位ではない:KMMLU-Pro・CLIcKなど韓国語ベンチでも、Qwen3.5やDeepSeek V4 Proが上回っています。

第三者評価のArtificial Analysisでも、K-EXAONE 2.0(同サイト上の名称は「K-EXAONE 2.0 0803」)の総合指数はオープンウェイトモデルの中で中位程度です。指数の値は集計バージョンによって変わるため、具体的な数字よりも相対的な位置で捉えるのが安全です。比較対象モデルの詳細は、DeepSeek V4 Proとは、GLM-5.1とはで解説しています。

日本語性能はどうか:公式の日本語ベンチマークはない

日本語は公式サポート言語ですが、日本語専用ベンチマーク(JGLUEやJapanese MT-Benchなど)の公表値は、現時点ではありません。 日本語でどこまで使えるかを、公式データだけで判断することはできないのが実情です。

手がかりになるのは、日本語を含む多言語ベンチマークの数値です。

ベンチマーク

内容

K-EXAONE 2.0

Qwen3.5

DeepSeek V4 Pro

MMMLU

多言語版MMLU(知識)

86.6

90.6

89.6

GlobalMMLU-Lite

多言語の知識問題

86.6

92.1

92.0

PolyMath

多言語の数学

71.3

73.3

80.9

多言語の総合値を見るかぎり、Qwen3.5やDeepSeek V4 Proより数ポイント低い水準です。ただし、これは日本語単独の性能を示す数字ではありません。

日本語業務での利用を考えているなら、次の進め方をおすすめします。

  1. Webデモ(k.exaone.ai)やAPIで、自社の実際の文書・質問を使って試す
  2. 敬語、固有名詞、日本の法制度・商習慣が絡む質問など、つまずきやすいケースを重点的に確認する
  3. 同じ質問を国産LLMや他のオープンウェイトモデルにも投げて比較する

日本語に強いモデルを優先したい場合は、国産LLM 7選の比較や、国産LLMのLLM-jp-4、Sarashina3も候補になります。

ライセンス条件:Apache 2.0で何ができるか

K-EXAONE 2.0はApache License 2.0で公開されており、商用利用・改変・ファインチューニング・再配布ができます。 Hugging FaceのLICENSEファイルはApache 2.0の標準文面に「Copyright 2026 LG AI Research」を加えたもので、本調査の範囲ではモデル独自の追加利用制限(AUP)は確認できませんでした。

Apache 2.0で「できること・守ること・含まれないこと」

区分

内容

できること

商用利用、社内システムへの組み込み、改変、ファインチューニング、派生モデルの配布、有償サービスでの提供

守ること

再配布時にライセンス文と著作権表示を残す、変更したファイルにはその旨を明示する、NOTICEファイルがあれば内容を引き継ぐ

付与されるもの

貢献者からの特許ライセンス(特許訴訟を起こすと失効する条項あり)

含まれないこと

「EXAONE」「LG」などの商標の使用許諾(Apache 2.0 第6条)。派生モデルやサービス名に勝手に使うことはできない

保証

無保証。出力の誤りによる損害はLGに請求できない

初代K-EXAONE(236B)のライセンスとの違い

初代K-EXAONEは独自の「K-EXAONE AI Model License Agreement」で公開されており、このライセンスは現在も変わっていません。「EXAONEシリーズならすべてApache 2.0」ではない点に注意してください。

項目

K-EXAONE 2.0(750B)

初代K-EXAONE(236B)

ライセンス

Apache 2.0

K-EXAONE AI Model License

商用利用

可

可

派生モデルの命名

制約なし(ただし商標は使えない)

名称を「K-EXAONE」で始める必要あり

商用目的の第三者配布・サブライセンス

可

LGとの別途契約が必要

リバースエンジニアリング

制限なし

禁止

準拠法・紛争解決

定めなし(Apache標準)

韓国法、ソウルでの商事仲裁

出典:K-EXAONE 2.0 モデルカード、K-EXAONE 236B LICENSE

一部の解説記事では「750Bが重いなら236B版が現実的」と紹介されていますが、236B版をファインチューニングして自社製品として外部に提供する場合は、LGとの別途契約が必要になる可能性があります。 サイズだけで選ばず、ライセンスも合わせて確認してください。なお、EXAONE 3.x・4.0系も非商用中心の独自ライセンスでした。

Apache 2.0の大型オープンウェイトモデルは他にもあります。比較したい場合はArcee Trinity LargeやReflection Beamの解説も参考になります。

K-EXAONE 2.0の使い方:デモ・API・セルフホストの3つの方法

K-EXAONE 2.0のAPIを提供するFriendliAIのロゴ

出典:FriendliAI 公式サイト

試すだけならWebデモ、アプリに組み込むならFriendliAIのAPI、データを外に出せないならセルフホスト、というのが基本的な選び方です。セルフホストは大規模なGPU基盤が前提になります。

方法

手軽さ

コスト

主な用途

主な注意点

Webデモ(k.exaone.ai)

◎

未確認

日本語の品質確認、使用感の把握

利用条件・入力データの扱いは要確認。機密情報は入れない

FriendliAI API

○

従量課金(単価は公式で要確認)

自社アプリへの組み込み、PoC

送信データの取り扱いはFriendliAIの規約を確認

セルフホスト

△

GPU基盤の費用が大きい

閉域運用、データ主権の確保、独自チューニング

H200×16が公式例。推論エンジンはフォーク版が必要

方法1:Webデモで試す

LGが公開しているデモサイト(k.exaone.ai)で、ブラウザから会話できます。無料かどうか、回数制限、入力データが学習に使われるかどうかは、本調査では確認できませんでした。社外秘の情報は入力せず、品質の確認用と割り切るのが無難です。

方法2:FriendliAIのAPIを使う

推論サービスのFriendliAIが、K-EXAONE 2.0をAPIで提供しています(Model APIと専用エンドポイントの2形態)。OpenAI互換APIなので、既存のOpenAI SDKを使ったコードであれば、ベースURLとモデル名を変えるだけで呼び出せます。

from openai import OpenAI

client = OpenAI(
    base_url="https://api.friendli.ai/serverless/v1",
    api_key="YOUR_FRIENDLI_TOKEN",
)

response = client.chat.completions.create(
    model="LGAI-EXAONE/K-EXAONE-2.0-750B-A37B",
    messages=[{"role": "user", "content": "この契約書の解除条項を要約してください。"}],
    temperature=1.0,
    top_p=0.95,
)
print(response.choices[0].message.content)

※ エンドポイントURLとモデルIDは、利用前にFriendliAIのモデルページで確認してください。推奨サンプリング設定(temperature 1.0 / top_p 0.95)はモデルカードの記載です。

料金について:FriendliAIの公式モデルページでは、執筆時点で単価を確認できませんでした。第三者のモデル比較サイトでは「入力100万トークンあたり0.60ドル/出力2.40ドル」と表示されていますが、これは公式の数値ではありません。見積もりの前に、FriendliAIの公式料金ページかアカウント画面で最新の単価を確認してください。

推論(Thinking)モードはデフォルトでONです。短い分類や抽出など推論が不要な処理では、enable_thinking をOFFにするとトークン消費と待ち時間を抑えられます。エージェントのように何ターンも続く処理では、推論内容を引き継ぐ preserve_thinking=True が推奨されています。

方法3:セルフホストする

重みはHugging Faceから無料でダウンロードできます。ただし、必要な環境は大規模です。

項目

目安

公式の構成例

NVIDIA H200(8基)×2ノード=計16GPU(テンソル並列16)

高スループット構成

TP8×DP2

重みサイズ(BF16)

約1.5TB(第三者試算)

重みサイズ(FP8)

約750GB(第三者試算)

重みサイズ(4bit)

約375〜420GB(第三者試算)

推論エンジン

SGLang または vLLM(いずれもLG側開発者のフォーク版)+Transformersのフォーク版

高速化

MTP / DSparkによる投機的デコーディングで約3〜5倍(モデルカード)

セルフホストでつまずきやすいのは、メモリ容量・長文脈時の負荷・推論エンジンの出どころです。

  • 37Bアクティブでも、メモリは750B分が必要。 MoEで減るのは計算量で、使わないエキスパートの重みもメモリに載せる必要があります。
  • 長文脈はさらにメモリを使う。 262Kの文脈をフルに使うとKVキャッシュが膨らみます。実運用では、扱う文脈長ごとにスループットを実測してから構成を決めてください。
  • 推論エンジンが本家ではなくフォーク版。 公開時点では、vLLM・SGLang・Transformersのいずれも、LG側開発者のフォークをインストールする手順になっていました。本家への取り込み状況は未確認です。社内に導入する場合は、ソフトウェアサプライチェーンの観点でリポジトリの出どころを確認しておきましょう。

750B版の公式GGUF(llama.cpp・Ollama向け形式)は確認できませんでした。手元のPCで動かしたい場合は、同じLG AI研究院のEXAONE 4.5(33B、GGUFあり。ライセンスは要確認)や、Apache 2.0のQwen3.8-27Bのような中型モデルを検討するほうが現実的です。ローカル実行環境はOllamaとはで詳しく紹介しています。

韓国ソブリンAIの現在地:2次評価は通過、総合3位

LG AI研究院(LG AI Research)のロゴ

出典:LG AI Research 公式サイト

K-EXAONE 2.0は、韓国政府の「独自AIファウンデーションモデル」事業の2次評価(2026年8月)を通過しました。ただし総合点は通過3チーム中3位で、2026年12月の最終評価で「国家代表AI」の2枠に残れるかは決まっていません。

事業の概要

韓国科学技術情報通信部(MSIT)が2025年8月に始めた事業で、海外モデルに頼らない国産の基盤モデルを、段階的な評価で絞り込みながら育てる「サバイバル方式」をとっています。最終的には国民向けの国家AIサービスなどの基盤になることが想定されています。

時期

出来事

2025年8月

MSITが精鋭5チームを選定

2025年12月〜2026年1月

1次評価。Naver CloudとNC AIが脱落し、1チームが追加(Naverは海外モデルの重み利用が問題視されたと報じられた)

2026年1月11日

LGが初代K-EXAONE(236B)を公開

2026年7月29日

SKテレコムが「A.X K2」(688B)を公開

2026年7月31日

LGがK-EXAONE 2.0(750B)を公開

2026年8月18日

2次評価の結果発表。LG・SKテレコム・Upstageが通過、Motif Technologiesが脱落

2026年8月27日

Motifの異議を受け、MSITが詳細点数を公開

2026年12月(予定)

3次(最終)評価で2チームを選定

出典:TechTimes、ZDNet Korea、inews24

2次評価の点数(100点満点)

評価の配点は、ベンチマーク40点・専門家評価35点・利用者評価25点です。

順位

チーム

モデル(規模)

総合点

1位

SKテレコム

A.X K2(688B)

70.6

2位

Upstage

Solar Open2(250B)

69.9

3位

LG AI研究院

K-EXAONE 2.0(750B)

69.0

脱落

Motif Technologies

(314B)

65.8

LGは専門家評価(35点中29.5点)と一般国民による評価ではトップでした。一方、ベンチマーク部門は合計20.6点で最下位、その中のArtificial Analysisの指数に基づく項目も7.8点で4チーム中最下位でした。人間による評価は高いのに、グローバルな自動評価では伸び悩んだという結果です。1次評価では全指標でトップだったことを考えると、「パラメータ数が最大=性能が最高」ではないことがよくわかります。

通過チームには、政府からのGPU支援(NVIDIA B200)が768基から1,000基規模に拡大される予定と報じられています。最終評価に向けて、LGが後継モデルや追加チェックポイントを出すかが次の注目点ですが、現時点では新たな発表は確認できていません。

日本の取り組みとの違い

日本では経済産業省・NEDOの「GENIAC」による計算資源支援のもとで、LLM-jp-4やSarashina3など複数の国産LLMが並行して開発されています。中小型モデルや特定用途向けモデルの開発も多いのが特徴です。韓国は、少数のチームを段階評価で絞り込み、700B級の巨大モデルで世界のフロンティアモデルと競う設計になっています。

「国産」の定義が問われる点は両国に共通しています。日本でも楽天AI 3.0がDeepSeekベースだった問題が議論になりました。UAEのK2 Horizonや、欧州のMistralの資金調達とソブリンAI戦略と並べて見ると、各国の「ソブリンAI」の考え方の違いがわかります。

他のオープンウェイトモデルとの比較

同じ韓国の700B級で比べるならSKテレコムのA.X K2、総合性能を重視するならQwen3.5・GLM-5.1・DeepSeek V4 Proが比較対象になります。 ライセンスと規模を中心に整理しました。

モデル

開発元

総パラメータ / アクティブ

コンテキスト長

ライセンス

特徴

K-EXAONE 2.0

LG AI研究院(韓国)

750B / 37B

262K

Apache 2.0

長文脈・安全性に強い。236Bからアップサイクリング

A.X K2

SKテレコム(韓国)

688B / 33B

262K

Apache 2.0

FP8でスクラッチ学習。2次評価1位

Solar Open2

Upstage(韓国)

250B

最大100万トークン処理が評価された

未確認

2次評価2位

Qwen3.5(397B-A17B)

Alibaba(中国)

397B / 17B

262K

Apache 2.0

知識・多言語ベンチで高スコア。画像入力にも対応

GLM-5.1

Z.ai(中国)

754B / 40B

200K

MIT

エージェント系ベンチに強い

DeepSeek V4 Pro

DeepSeek(中国)

1.6T / 49B

100万

MIT

比較表の多くの項目で最高値

※ Qwen3.5・GLM-5.1・DeepSeek V4 Proのスペックは各社の公開情報にもとづきます。バージョン更新で変わる場合があります。

中国勢の詳細なスペックやライセンスは各モデルの解説記事で整理しています:DeepSeek V4 Pro、DeepSeek V4 Flash、GLM-5.1、GLM-5.3、Qwen3.8-Max-Preview、Kimi K3。

用途別の選び方

こんなとき

候補

理由

長い文書をまとめて読ませたい

K-EXAONE 2.0

MRCR 94.4で比較対象中トップ

韓国語・韓国市場向けのサービスを作る

K-EXAONE 2.0 / A.X K2

韓国文脈で調整された安全性。国内調達の要件を満たしやすい

コーディングエージェントを動かしたい

DeepSeek V4 Pro / GLM-5.1

SWE-bench・Terminal-Benchで大きく上回る

とにかく総合性能を重視

DeepSeek V4 Pro / Qwen系

知識・推論の多くの項目で上位

手元のGPUで動かしたい

Qwen3.8-27Bなど中型モデル

750B級は個人環境では動かせない

日本語の品質を最優先

国産LLM+自社評価

K-EXAONE 2.0には日本語専用ベンチの公表値がない

中国製モデルを避ける社内方針がある

K-EXAONE 2.0 / A.X K2 / 米欧のApacheモデル

韓国発で、ライセンスも標準的

利用時の注意点・セキュリティ

オープンウェイトなので閉域運用でデータ主権を確保できる一方、韓国文脈の安全性チューニング、古い知識カットオフ表記、フォーク版推論エンジンといった固有の注意点があります。

  • セルフホストならデータを外部に出さずに済む:自社のデータセンターや国内クラウドで動かせば、入力データを外部APIに送る必要がありません。オープンウェイトの大きな利点です。
  • API利用時は提供事業者の規約を確認する:FriendliAI経由の場合、データの保存期間・学習利用の有無・データの処理拠点を、同社の規約で確認してください(本調査では詳細を確認できていません)。
  • 応答方針は韓国の価値観に合わせて調整されている:公式は安全性を「韓国の社会文化・地政学的な文脈」に基づいて調整したと説明しています。日本の業務で使う場合、拒否の基準や歴史・外交に関する記述の傾向が想定と異なる可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
  • 知識が古い可能性がある:モデルカードの知識カットオフは「2025 Q2」です。最新情報が必要な業務では、検索やRAGと組み合わせてください。
  • ハルシネーションはゼロではない:Artificial Analysisの幻覚抑制に関する指標で世界9位と報じられるなど評価は比較的よいものの、モデルカードには事実誤り・偏った応答が出る可能性があると明記されています。
  • 推論エンジンの出どころを確認する:公開時点では個人開発者のフォーク版が必要でした。本番環境に入れる前に、コードの出どころと更新状況を確認してください。
  • 商標は使えない:Apache 2.0でも「EXAONE」「LG」の名称を自社サービス名や派生モデル名に使う許諾は含まれません。

オープンウェイトモデルの公開をめぐる考え方の違いについては、Anthropicのオープンウェイトに対する立場も参考になります。

K-EXAONE 2.0がおすすめな人・おすすめしない人

こんな人におすすめ

  • 複数ノードのGPU基盤を持ち、閉域で大型モデルを運用したい企業:Apache 2.0なので、法務レビューの負担が比較的軽くなります。
  • 長い文書の読解・要約が中心の業務:契約書、規程集、技術文書、議事録の横断検索など。
  • 韓国語・韓国市場向けのサービスを開発する企業:韓国文脈の安全性で高い数値を出しています。
  • 中国製モデルを避けたいが、大型オープンウェイトモデルを使いたい組織:調達方針上の選択肢になります。
  • ソブリンAIの動向を調べている研究者・企画担当者:政府主導で育てられた700B級モデルの実例として参考になります。

おすすめしない人

  • 手元のPCやGPU 1〜2枚で動かしたい個人・中小企業:公式の構成例はH200×16です。
  • 最高水準のコーディングエージェントが必要な開発者:SWE-bench・Terminal-BenchではDeepSeek V4 ProやGLM-5.1が上回ります。
  • 日本語の品質が公式データで保証されていることを求める人:日本語専用ベンチマークの公表値はありません。
  • 画像や音声も扱いたい人:テキストのみ対応です。画像を扱うならEXAONE 4.5や他のマルチモーダルモデルが候補になります。
  • 最新の時事情報をそのまま答えさせたい人:知識カットオフの表記が古く、検索との組み合わせが必要です。

よくある質問(FAQ)

K-EXAONE 2.0は無料で使えますか?

モデルの重み自体はApache 2.0で無料公開されています。ただし動かすには大規模なGPU環境が必要で、その費用は利用者の負担です。FriendliAIのAPIは従量課金で、単価は公式ページで確認する必要があります。Webデモの利用条件は、本調査では確認できませんでした。

商用サービスに組み込んで、ファインチューニングしたモデルを販売できますか?

Apache 2.0の範囲では可能です。ライセンス文と著作権表示を残し、変更したファイルにはその旨を明示してください。ただし製品名に「EXAONE」や「LG」を使う許諾は含まれません。初代K-EXAONE(236B)をベースにする場合は条件が異なり、商用目的の第三者配布にはLGとの別途契約が必要です。

「EXAONE」と「K-EXAONE」は何が違いますか?

EXAONEはLG AI研究院のモデルシリーズ全体の名称で、EXAONE 3.x・4.0・4.5などがあります。K-EXAONEは、韓国政府の独自AIファウンデーションモデル事業向けに開発された大型モデルの系列です。ライセンスはモデルごとに異なるため、個別に確認してください。

日本の企業が使っても問題ありませんか?

ライセンス上、利用者の国籍や地域による制限は確認されていません。実務上は、日本語性能を自社データで評価すること、韓国文脈で調整された応答方針が自社の用途に合うかを確認すること、API利用時はデータの処理拠点を確認することがポイントです。

236B版のほうが軽いので、そちらを使えばよいですか?

計算資源だけを見れば236B版のほうが扱いやすいですが、ライセンスは独自の「K-EXAONE AI Model License」のままです。社内利用のみなら問題になりにくい一方、派生モデルを外部に配布する予定があるなら、2.0(Apache 2.0)を選ぶか、LGに条件を確認してください。

「国家代表AI」に選ばれることは決まっていますか?

決まっていません。2026年8月の2次評価は通過しましたが総合3位で、最終2チームは2026年12月予定の3次評価で決まります。

まとめ

  • K-EXAONE 2.0は、LG AI研究院が2026年7月31日に公開した750B(アクティブ37B)のMoE型オープンウェイトLLM。Apache 2.0で商用利用・改変・再配布ができる
  • 長文脈(MRCR 94.4)と韓国文脈の安全性では比較対象中トップ。一方、知識・難問推論・コーディングではQwen3.5・GLM-5.1・DeepSeek V4 Proを下回る項目が多い
  • 日本語は公式サポート言語だが、日本語専用ベンチの公表値はない。自社データでの評価が前提
  • 初代K-EXAONE(236B)は独自ライセンスのままで、商用目的の第三者配布には別途契約が必要。商標はどちらのライセンスでも使えない
  • 使い方はWebデモ、FriendliAIのAPI(OpenAI互換)、セルフホスト(H200×16が公式例)の3つ
  • 韓国ソブリンAI事業の2次評価は通過したが総合3位。2026年12月の最終評価が次の節目

まず試すならデモかAPIで、自社の文書を使って日本語の品質と応答方針を確かめるのが近道です。生成AIの基本から整理したい方は生成AIとはもあわせてご覧ください。

このツールを自社の毎月の業務に組み込むと何が変わるか、ご提案します

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この記事の著者

AI革命

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編集部

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