AIツール2026年10月更新

NTT tsuzumi 2とは?政府Gennai(源内)での評価状況と日本語性能・料金・Azure提供を徹底解説【2026年10月】

公開日: 2026/04/26
更新日: 2026/10/19
NTT tsuzumi 2とは?政府Gennai(源内)での評価状況と日本語性能・料金・Azure提供を徹底解説【2026年10月】

この記事のポイント

tsuzumi 2は、NTTがフルスクラッチで開発した約300億パラメータの日本語特化LLMです。GPU1基で動き、機密データをオンプレミスで扱いたい企業・自治体に向けて提供されています。源内での5社契約と11月の再公募、茨木市の校務AI実証、Azure版の制約、料金と導入ルートを解説します。

tsuzumi 2(つづみ ツー)は、NTTがフルスクラッチで開発した約300億パラメータの日本語特化LLMです。GPU1基で動くため、機密情報をオンプレミスやプライベートクラウドで扱いたい企業・自治体・学校に向けて提供されています。 政府との関係では、デジタル庁のガバメントAI「源内(Gennai)」で試用する国産LLMの1つとして契約され、2026年10月時点では評価の途中です。「政府が正式に採用した」段階ではありません。

tsuzumi 2の要点(2026年10月時点)

  • 日本語性能: 公式の主張は「同じサイズ帯のモデルの中で世界トップクラス」。ChatGPTやClaudeなどの最上位モデルを全面的に上回る、という意味ではない
  • 政府との関係: 源内向けの国産LLMとしてデジタル庁が5社と契約し、tsuzumi 2はその1つ。2026年9〜11月にさくらのクラウド上でA/Bテストを行っている。有償での政府調達は、2026年11月に始まる予定の2027年度向け公募で決まる
  • 導入方法: Azureでの検証、NTTデータなどのプライベート環境、NTT西日本×エフサステクノロジーズのオンプレ一体型の3ルートがある。どのルートも公開の料金表はない
  • 最新の事例: 2026年10月13日から、大阪府茨木市の小中学校で、tsuzumi 2の最新版をオンプレミスで動かす校務AIの実証が始まった

国産LLM全体の中でどれを選ぶか迷っている場合は、国産LLM 7選の徹底比較もあわせて確認してください。

この記事でわかること

  • tsuzumi 2の基本スペック(パラメータ数・動作要件・学習データ)と初代tsuzumiとの違い
  • 図表理解のアップデート、Azure提供、オンプレ一体型、茨木市の校務AI実証までの最新動向
  • 「日本語最高性能」「政府Gennai採用」という言い方がどこまで正しいか
  • 源内の現状(3月の7件選定から6月の5社契約へ、11月の再公募の日程)
  • 料金の考え方と3つの導入ルート、PoCから本番までの進め方
  • ChatGPT・Claude・Geminiや他の国産LLMとの違い
  • tsuzumi 2が合う企業・合わない企業

誰向けの記事か

  • 金融・医療・自治体・電力・教育など、機密データを外部クラウドに出せない業務で生成AIを検討している情シス・DX担当者
  • NTTグループから提案を受け、tsuzumi 2を評価している購買・技術部門
  • 源内の動きを踏まえて、公共系の生成AI調達を準備している関係者
  • 海外のクラウド型LLMから国産・オンプレ型への切り替えを比べている企業

NTT tsuzumi 2とは

tsuzumi 2は、NTTが他社のベースモデルを使わずゼロから開発した大規模言語モデルです。2025年10月20日に提供が始まり、NTTデータ、NTTドコモビジネス、NTT西日本、NTT東日本などNTTグループ各社が法人・公共機関向けに提供しています。

NTT tsuzumi 2の日本語性能を同サイズ帯のモデルと比べたグラフ

出典: NTT 公式ニュースリリース

開発の狙いは「企業が自社環境に置ける大きさで、日本語の業務に十分な性能を出すこと」です。数千億パラメータ級の汎用モデルと規模で張り合うのではなく、GPU1基で推論できるサイズに抑え、そのぶん日本語と業界知識の学習に力を入れています。

基本スペック

項目

内容

正式名称

tsuzumi 2(NTT版LLM)

開発元

NTT株式会社

主な提供元

NTTデータ/NTTドコモビジネス/NTT西日本/NTT東日本などグループ各社

提供開始

2025年10月20日

パラメータ数

約300億(報道では30B、NTTの国際学会講演では28.6B)

学習データ

10兆トークンを超える多言語データ。日本語データを重視

トークナイザー

日本語の語彙や文法に合わせた設計

推論機能

推論(考えるステップ)のオン/オフを切り替えられる

動作要件

GPU1基で推論可能(報道ではNVIDIA A100 40GB 1基)

対応言語

日本語に特に強く、英語にも対応

開発手法

フルスクラッチ(他社のベースモデルを使わない)

個人向けプラン

なし(法人・公共機関向け)

後継モデル

2026年10月時点で発表なし

出典: NTT 報道発表(2025年10月20日) / NeurIPS 2025 NTT講演「tsuzumi: Advanced and Sovereign Japanese LLM」 / ITmedia AI+

パラメータ数は資料によって「30B」と「28.6B」の2通りの表記がありますが、どちらも同じモデルです。この記事では「約300億」と書いています。

「フルスクラッチ」が重視される理由

NTTがゼロからの開発にこだわる一番の理由は、学習データを自社で管理できることです。海外のオープンモデルをもとにすると、元のモデルが何で学習されたかを完全には説明できません。フルスクラッチなら、著作権・偏り・データ品質について説明しやすく、公共機関や金融機関の調達審査で有利になります(@IT)。

「国産LLM」と名乗るモデルの中には、海外モデルに追加学習しただけのものもあります。この違いが問題になった例として、楽天Rakuten AI 3.0のDeepSeek V3ベース問題も参考になります。

2026年の最新アップデートと動向

2026年に入ってから、tsuzumi 2には機能面では図表理解、提供面ではAzureとオンプレ一体型が加わりました。政府の源内では契約先が5社に絞られて評価が進み、10月には自治体の学校で使う実証も始まっています。

日付

内容

出典

2025年10月20日

tsuzumi 2提供開始。東京通信大学が学内LLM基盤として採用を決定

NTT

2026年1月26日

中国電力×NTTドコモビジネスが電力業務特化LLMの構築・検証を開始

NTTドコモビジネス

2026年2月

NTT島田社長が「国内の引き合い約2,000件」と説明(自治体・金融・医療が中心)

ITmedia AI+

2026年3月6日

デジタル庁が源内で試用する国産LLM7件を選定。tsuzumi 2(NTTデータ)も含まれる

ITmedia AI+

2026年4月20日

NTTデータ先端技術「INTELLILINK Private AI スタートパック」で対応検証を開始

NTTデータ先端技術

2026年5月19日

図表入り文書の理解、数値処理・論理的な思考力を強化するアップデートを発表

NTT

2026年5月20日

NTTデータがMicrosoft Foundry(Azure Marketplace)で提供開始(評価・検証用途)

NTTデータ

2026年5月29日

デジタル庁が2027年度向けに国産LLMを有償で調達する公募の方針を示す(報道)

ITmedia AI+

2026年6月3日

デジタル庁の会議で、源内向けの国産LLMは5社と契約したと報告(tsuzumi 2を含む。報道)

DX Magazine

2026年6月

NTTビジネスソリューションズがMCP連携によるAIエージェント実証を発表(8月中旬開始予定)

EnterpriseZine

2026年7月

デジタル庁が、さくらのクラウド上で国産LLM3モデル(tsuzumi 2・Takane 32B・PLaMo 2.0 Prime)を源内で試用すると公表

デジタル庁

2026年8月26日

NTT西日本×エフサステクノロジーズ「Private AI Platform on PRIMERGY」でtsuzumi 2が利用可能に(9月提供開始)

NTT西日本(PR TIMES)

2026年10月13日

NTT西日本×大阪府茨木市が、tsuzumi 2を使う小中学校向け校務AIの実証を開始(2027年3月31日まで)

NTT西日本(PR TIMES)

図表入り文書の理解に対応(2026年5月)

2026年5月19日のアップデートで、tsuzumi 2は文書を画像として読み込み、図表・グラフ・チャートの意味を理解できるようになりました。報道では「tsuzumi 2 Vision」とも呼ばれています。NTTは「機密情報を含む業務文書には図表が多い」点に着目したと説明しています。

tsuzumi 2が図表入りの日本語ビジネス文書を読み取るアップデートの説明図

出典: NTT 公式ニュースリリース(2026年5月19日)

  • 公式の利用例: 与信審査などで帳票から必要な項目を抜き出す/技術問い合わせで原因を切り分けるフロー図を理解する
  • 性能: 図表入り文書の理解で、同じサイズ帯のモデルと比べ世界トップレベルと公式が主張(クラウドWatch)
  • 動作環境: 引き続きGPU1基で動く
  • 同時に強化された点: 売上金額などの数値の扱い、APIドキュメントに書かれた関数の解釈

図表理解の機能がいつからどの提供ルートで使えるのか、Azure版に含まれるのかは、2026年10月時点で公式に示されていません。使う予定があれば提供元に確認してください。

AIエージェント用途への広がり

NTTビジネスソリューションズは、データ連携基盤にMCP(Model Context Protocol)機能を加え、tsuzumi 2を使うAIエージェントの実証を発表しました。外部ツールを呼び出して作業するエージェントでも、データを社外に出さない国産LLMを使いたい、という需要に合わせた動きです。実証の結果は2026年10月時点でまだ公表されていません。MCPの仕組みはMCPとは、エージェント全般はAIエージェントとはで解説しています。

tsuzumi 2の主な特徴・強み

tsuzumi 2の強みは、「GPU1基で動く」「日本語の業務文書に強い」「少ないデータで専門化できる」「データを手元に置ける」の4つです。

tsuzumi 2がGPU1基で動作することを示すNTTの説明図

出典: NTT 公式ニュースリリース

1. GPU1基で動き、自社で運用しやすい

70B級以上のモデルを自社で動かすには、一般的に複数のGPUを積んだサーバーが必要です。tsuzumi 2はGPU1基で推論できるため、ハードウェアの初期費用や電力・設置場所を抑えられます。NTTによると、引き合いの約6割がオンプレミスでの導入を希望しています(BUSINESS NETWORK)。

2. 日本語の業務文書に強い

公式によると、知識・解析・指示への従い方・安全性の評価で、Gemma-3 27BやQwen-2.5 32Bなど同じサイズ帯のモデルを上回り、数倍以上大きいフラッグシップモデルに匹敵する水準です。金融・医療・公共分野の知識も学習段階から強化されています。NTT社内の財務システムの問い合わせを使ったRAG(社内文書を検索して答える仕組み)の評価では、他社の先進モデルと同等以上だったとしています。

3. アダプター方式で少量のデータから専門化できる

モデル本体を書き換えず、「アダプター」と呼ぶ小さな部品だけを追加学習する方式です。NTTの検証では、FP(ファイナンシャル・プランニング技能士)2級試験の合格水準に達するまで、Gemma-2 27Bは追加学習で約1,900問かかったのに対し、tsuzumi 2は約200問で到達しました。手元の教材が少ない専門業務でも特化モデルを作りやすいということです。追加学習とRAGの使い分けはファインチューニングとRAGの比較が参考になります。

4. データを外部クラウドに出さずに使える

オンプレミスやプライベートクラウドに置けるので、患者情報・金融取引・行政文書・児童生徒の情報などを社外に出さずに処理できます。海外クラウドのLLMが規程上使いにくい組織では、「そもそも使えるかどうか」を左右する条件になります。

業務別の活用一覧

業務

tsuzumi 2の役割

期待できる効果

根拠・事例

社内問い合わせ対応

規程・マニュアルを検索して回答(RAG)

担当部署の問い合わせ対応を減らす

NTT社内の財務システム問い合わせでの評価

帳票・審査書類の処理

図表入りの帳票から必要な項目を抜き出す

与信審査などの転記作業を減らす

2026年5月アップデートの公式利用例

技術サポート

フロー図を読み取り、原因の切り分けを手伝う

対応が特定の担当者に偏るのを防ぐ

2026年5月アップデートの公式利用例

学校の校務

校務文書の検索・要約、文書作成の補助

教員の情報検索と文書作成の時間を減らす

茨木市の小中学校での実証(2026年10月〜)

業界特化アシスタント

少量の業務データで追加学習し、専門知識を持たせる

電力・金融など専門業務に使える

中国電力の電力業務特化LLMの検証

学内・行政のAI基盤

個人情報を外に出さずに対話AIを提供

個人情報を外部に出さずに運用できる

東京通信大学の学内LLM基盤

AIエージェント

外部ツールやデータ基盤とつないで業務を実行

定型業務の自動化

NTTビジネスソリューションズのMCP連携実証

RAGの基本的な仕組みはRAGとはで解説しています。

tsuzumi 2の弱み・制約

一方で、個人がすぐ試せない、価格が公開されていない、汎用性能では海外の大型モデルに及ばない場面がある、という制約があります。

  • 個人向けサービスがない: ChatGPTやClaudeのようにブラウザやアプリで使えるサービスはない
  • 公開の料金表がない: 本番導入は商談・見積もりが前提で、PoCを始めるまでに時間がかかりやすい
  • Azure版は検証用途: NTTデータは評価・検証が主な目的と明記している。本番運用や業界特化の利用、機密データはプライベート環境が前提で、Azure上での追加学習はできない
  • 公開されていない仕様が多い: コンテキスト長(一度に扱える文章量)、ライセンス条項、学習データの内訳は公式に公開されていない
  • 重みは公開されていない: Hugging Faceなどで自由にダウンロードできるオープンモデルではない(公開は確認できず)
  • 他のクラウドでの提供は確認できない: AWSやGoogle Cloudで提供されているという情報は見当たらない
  • 汎用性能には限界がある: 公式の主張は「同サイズ帯でトップ」。コーディング、高度な推論、多言語のグローバル用途では、海外の大型モデルが有利な場面が多いと考えられる

前世代tsuzumiとの違い

項目

tsuzumi(初代)

tsuzumi 2

発表・商用化

2023年11月発表、2024年3月商用化

2025年10月20日提供開始

パラメータ数

7B(70億)。超軽量版の0.6Bもあり

約300億

動作要件

GPU1基

GPU1基(40GBメモリ級)

日本語性能

軽量モデルとして実用水準

同サイズ帯でトップクラスと公式が主張

業界知識

汎用が中心

金融・医療・公共分野を強化

図表の読み取り

—

2026年5月のアップデートで対応

Azure提供

2024年11月〜(Azure上で追加学習も可能だった)

2026年5月〜(評価・検証用途。Azure上の追加学習は不可)

Azureでの提供条件は、初代とtsuzumi 2で違います。初代ではAzure上で追加学習(ファインチューニング)ができましたが、tsuzumi 2のAzure版ではできません。混同しやすいので注意してください。

依頼範囲と費用の目安を30分で整理します

初回相談は無料・30分(オンライン)。要件が決まっていなくても大丈夫です。改修100万円〜・PoC300万円〜(税別)

政府Gennai(源内)採用の意味

tsuzumi 2は、デジタル庁が源内で試用する国産LLMとして契約した5社のモデルの1つで、2026年10月時点では評価の途中です。 有償で政府が調達するかどうかは、2026年11月に始まる予定の2027年度向け公募で決まります。

デジタル庁のガバメントAI源内で国産LLMをさくらのクラウド上で試用する構成図

出典: デジタル庁 公式発表

「源内」とは

源内は、デジタル庁が運営する政府職員向けの生成AI利用環境です。行政の実務に合う国産LLMを比べて評価し、将来の調達につなげる役割も持っています。仕組みの詳細はガバメントAI「源内」とはで解説しています。

3月の7件選定から、6月の5社契約へ

2026年3月6日、デジタル庁は応募15件の中から、源内で試用する国産LLMを7件選びました。その後、6月3日のデジタル庁の会議で「5社と契約した」と報告されています(DX Magazine・ITmediaの報道。会議資料そのものは本記事では確認できていません)。

モデル

提供元

3月の選定(7件)

6月の契約(5社)

さくらのクラウドでの試用

tsuzumi 2

NTTデータ

○

○

○

Takane 32B

富士通

○

○

○

PLaMo 2.0 Prime

Preferred Networks

○

○

○

cotomi v3

NEC

○

○

—

Sarashina2 mini → Sarashina3 mini

ソフトバンク

○(Sarashina2 mini)

○(Sarashina3 mini)

—

Llama-3.1-ELYZA-JP-70B

KDDI/ELYZA

○

—

—

CC Gov-LLM

カスタマークラウド

○

—

—

出典: デジタル庁 公募結果(2026年3月6日) / DX Magazine(2026年6月30日) / ITmedia AI+(2026年5月29日) / デジタル庁(さくらのクラウドでの試用)

報道によると、選定の基準は国内で開発されたこと、行政実務での性能、デジタル庁の評価テストの結果、安全対策、法令の順守、ガバメントクラウドで動かすためのセキュリティ要件です。ソフトバンクのモデルは契約の段階で新しい世代に変わっています。Sarashina3についてはSarashina3とはで解説しています。

さくらのクラウドでのA/Bテスト(2026年9〜11月)

5社のうち、tsuzumi 2・Takane 32B・PLaMo 2.0 Primeの3モデルは、ガバメントクラウドとして使われるさくらのクラウド上で動かして試用されています。職員には開発元を伏せた2つの回答を見せ、どちらが実務に合うかを選んでもらう「A/Bテスト」を9〜11月に何度か行う計画です。比べる相手は源内ですでに使われている海外モデルで、Publickeyの報道ではAmazon Nova LiteやClaudeのモデルが挙がっています(Publickey)。

2026年10月時点で、評価の結果はまだ公表されていません。さくらのクラウドで国産LLMを動かす取り組みはデジタル庁の国産AIとはでまとめています。

今後のスケジュール:11月から2027年度向けの公募

3月の選定時には「2027年1月に評価結果を公表」という計画が示されていましたが、5月に2027年度向けの公募の日程が示され、予定が更新されました。初回の試用は無償が前提でしたが、2027年度向けは有償の政府調達です。

時期

予定・状況

2026年3月

試用する国産LLM7件を選定

2026年6月

5社と契約したと報告

2026年9〜11月

さくらのクラウド上でA/Bテスト(tsuzumi 2を含む3モデル)

2026年11月(予定)

2027年度向けの公募開始(有償の政府調達)

2026年12月(予定)

応募締め切り → 書類審査

2027年1月(予定)

評価テスト(300問)

2027年2月(予定)

結果の通知・入札

2027年3月(予定)

落札者の決定

2027年4月(予定)

源内で利用開始

出典: ITmedia AI+(2026年5月29日)。日程は5月時点の計画で、2026年10月時点では公募はまだ始まっていません。

ITmediaによると、2027年度向けの公募では評価テストが初回の50問から300問に増えます。問題はすべてテキストで、法令・制度、行政課題、日本語理解など8分野35の能力を測ります。応募は1社1モデルで、ガバメントクラウドで動くことが条件です。提出資料には、海外の最先端モデルとのベンチマーク比較、学習データの法令順守、価格なども含まれます。契約中の5社以外も応募できますが、初回の評価結果も考慮されます。

「日本語最高性能」「政府採用」はどこまで正しいか

tsuzumi 2は「日本語最高性能」「政府の生成AI基盤に採用」と紹介されることがありますが、どちらも公式の表現より強い言い方です。社内資料や提案書で使うなら、次のように言い換えるのが安全です。

よく見る表現

公式情報に沿った言い方

日本語最高性能のLLM

同サイズ帯のモデルと比べて日本語性能が世界トップクラス。数倍以上大きいモデルに匹敵する水準(NTT公式)

政府Gennai(源内)基盤に採用

デジタル庁が源内で試用する国産LLMとして契約した5社のモデルの1つ(2026年6月報告)。さくらのクラウドでの試用対象3モデルにも入っている

政府公認の国産LLM

2026年9〜11月のA/Bテストで評価中。有償の政府調達は2027年度向けの公募(2026年11月開始予定)で決まる

tsuzumi 2の活用事例

公開されている事例は教育・電力・ITベンダーの検証が中心で、どれも「データを外に出さない」ことが導入の理由になっています。

tsuzumi 2のRAG(社内文書検索)用途での性能評価

出典: NTT 公式ニュースリリース

大阪府茨木市×NTT西日本:小中学校の校務AI(2026年10月〜)

2026年10月13日、NTT西日本と大阪府茨木市は、tsuzumi 2を使った小中学校向けの校務AIの実証を始めました。期間は2027年3月31日までで、茨木市立の一部の小中学校が対象です(校名・校数は非公表)。

  • 使い方: チャットでの質問応答、サーバーに散らばった校務文書の検索・要約、文書作成の補助
  • 構成: tsuzumi 2の最新版を、オンプレミスの教育向け生成AIアプリとして学校側のローカル環境で動かす。比較的安価な生成AI用GPUサーバーを使い、利用者ごとに権限を管理する(機種名や設置場所は非公表)
  • 評価すること: 情報検索と文書作成にかかる時間、回答の役立ち度、操作のしやすさ、安全性・実用性、続けて使いたいか
  • 役割分担: 茨木市が実証の場の提供・教員へのヒアリング・広報、NTT西日本が全体の取りまとめ・アプリ開発・効果検証

NTT西日本によると、国産のプライベートLLMを小中学校の校務で使う実証は全国初です(同社の2026年9月時点の調査による)。学校は児童生徒の機微な情報を扱うため、安全性と使いやすさを両立させる目的でオンプレミスのLLMを選んだと説明しています。大きなデータセンターを持たない自治体や学校でも、GPU1基で動くモデルなら手元で運用できることを示す事例です(出典: NTT西日本(PR TIMES) / ITmedia NEWS)。教育現場のAI活用全体は教育のAI活用事例にまとめています。

東京通信大学:学内LLM基盤

2025年10月、東京通信大学がtsuzumi 2を学内のLLM基盤として採用することを決めました。学生の個人情報を外部クラウドに出さずに生成AIを使える環境を整える事例です。

中国電力×NTTドコモビジネス:電力業務特化LLM

2026年1月、中国電力とNTTドコモビジネスが、tsuzumi 2をもとにした電力業務特化LLMの構築・検証を始めました。規制の多い業種で、少量の業務データから専門モデルを作るアダプター方式の使い方を示す事例です。

NTTドコモビジネス×富士フイルムビジネスイノベーション

tsuzumi 2を使った生成AIソリューションの開発に向けて、協業の検討を始めています(2025年10月発表)。

NTTデータ先端技術:INTELLILINK Private AI スタートパック

2026年4月、オンプレミスでプライベートAI環境を立ち上げるためのパッケージで、tsuzumi 2への対応検証を始めました。

引き合いの状況

NTTの島田社長は2026年2月、国内の引き合いが約2,000件に達し、自治体・金融機関・医療機関が中心だと説明しました。自治体での生成AI活用の全体像は官公庁・自治体のAI活用事例にまとめています。

料金・導入方法

tsuzumi 2には公開の料金表がなく、料金は導入ルートごとの個別見積もりか、Azureの利用条件で決まります。 個人向けの無料プランや月額プランはありません。

NTTデータによるtsuzumiのMicrosoft Azure提供の構成イメージ

出典: NTTデータ tsuzumi 製品ページ

3つの導入ルートの比較

比較項目

① Azureで検証

② プライベート環境

③ オンプレ一体型(PRIMERGY)

提供元

NTTデータ

NTTデータ、NTTドコモビジネスなどグループ各社

NTT西日本+エフサステクノロジーズ

開始時期

2026年5月20日(日本国内)

提供中

2026年9月

主な用途

評価・検証(PoC)

本番運用、業界特化モデルの構築

官公庁・金融など機密情報を扱う組織の本番運用

データの置き場所

自社のAzureテナント内

専用のプライベート環境/自社環境

自社の設備内

追加学習

できない

できる

提供元に確認

料金の決まり方

従量課金の推論API。単価はAzure Marketplaceのカタログで確認

個別見積もり

非公表(個別見積もり)

前提条件

Azureサブスクリプション

NTTグループとの契約

ハードウェアの購入・設置

合うケース

まず自社のデータで精度を確かめたい

機密データで本格運用したい

サーバーの構築まで一括で任せたい

出典: NTTデータ(Azure提供開始) / NTT西日本(PR TIMES)

Azure版について、NTTデータは「従量課金型の推論APIなので、検証段階の初期投資を抑えられる」と説明しています。そのうえで、商用での導入や業務に特化した使い方、機密データを扱う用途はNTTデータのプライベート環境を使う前提だと明記しています。

コストの内訳と目安

オンプレミスで導入する場合、費用は大きく4つに分かれます。

費用項目

内容

目安

ハードウェア

GPUサーバー、ストレージ、ネットワーク

GPU1基の構成で数百万円規模からとする試算が多い(NTT公式の数値ではない)

ライセンス・利用料

モデルの利用権

個別見積もり

導入・カスタマイズ

社内データとの連携、アダプターによる追加学習

個別見積もり

運用・保守

モデル更新、障害対応、セキュリティ対応

個別見積もり

GPU1基で済むぶん、複数のGPUが必要な大型モデルを自社で運用する場合よりハードウェア費用は抑えやすくなります。RAGシステム全体の費用感はRAG導入の費用も参考にしてください。

導入の進め方(PoCから本番まで)

  1. 対象業務を1つ決める: 社内問い合わせ、帳票処理、校務文書の検索など、データの機密度が高く効果も見込める業務を選ぶ
  2. Azureで精度を確かめる: 機密度の低いサンプルデータで、日本語の回答品質と速度を確かめる。問い合わせ先はNTTデータ(nttd_tsuzumi@hml.nttdata.co.jp)
  3. 本番の置き場所を決める: 追加学習や機密データが必要なら、プライベート環境かオンプレ一体型を選ぶ
  4. 追加学習用のデータを整える: アダプター方式の効果は、業務マニュアルやQ&Aなど教材の質で決まる
  5. 運用体制を決める: モデルの更新、アクセス権限、ログの監査を誰が担うか決めてから本番に移る

本番に移る段階では、モデルの利用料とは別に、文書管理や問い合わせ窓口、帳票処理といった社内の業務システムとtsuzumi 2をつなぐ開発費がかかります。PoCから本開発までの費用の目安と見積もりの内訳は、AI開発の費用相場にまとめています。

個人利用はできない

ChatGPTやClaudeのように、個人がブラウザやアプリで使えるサービスはありません。個人で日本語に強い生成AIを使いたい場合は、ChatGPT・Claude・Geminiなどのサービスを選んでください。

ChatGPT・Claude・Geminiとの使い分け

tsuzumi 2は汎用性能で海外の大型モデルと競うモデルではなく、「データを外に出せない日本語の業務」で選ばれるモデルです。 比べるべきは性能の数値よりも、データの置き場所と導入のしやすさです。

比較項目

tsuzumi 2

海外の大型クラウドLLM(ChatGPT・Claude・Geminiなど)

提供形態

オンプレミス/プライベートクラウド/Azure(検証用)

クラウドのWebサービス・API

個人利用

できない

できる(無料プランあり)

料金

公開価格なし(個別見積もり・Azureは従量課金)

公開された月額プランとAPIの従量課金

日本語性能

同サイズ帯でトップクラスと公式が主張

最上位モデルは日本語でも高水準

汎用性能・コーディング

業務文書の処理が中心

幅広い作業で高性能

データの置き場所

自社環境に置ける

基本的に提供会社のクラウド

学習データの説明

フルスクラッチで自社管理

詳細は公開されていないことが多い

すぐ試せるか

商談や環境構築が必要

アカウント登録ですぐ使える

合う用途

規制業種・公共・学校の機密文書、社内RAG

全社の汎用業務、コーディング、調査

実務では「一般的な業務は海外のクラウドLLM、機密データを扱う業務だけtsuzumi 2」と使い分ける組織も考えられます。源内でも、既存の海外モデルとtsuzumi 2などの国産モデルを並べて比べている段階です。海外モデル同士の違いはClaude vs ChatGPT比較で解説しています。

他の国産LLMとの選び分け

国産LLMは「どう提供されるか」で性格が大きく分かれます。tsuzumi 2は閉じた環境で使う企業向けのモデルです。

タイプ

主な例

特徴

合うケース

閉域・企業向け(個別契約)

tsuzumi 2、cotomi、Takane など

オンプレやプライベート環境が前提。大手ベンダーが導入を支援

機密データを扱う、ベンダーの手厚い支援がほしい

API公開型

PLaMo、Sakana Namazu など

APIで手軽に試せるものが多い

まず低コストで日本語性能を試したい

オープンウェイト型

LLM-jp-4 など

重みが公開され、自社で自由に動かせる

社内に機械学習の人材がいて、自前で運用したい

各モデルの詳細はPLaMo 3.0 Primeとは、LLM-jp-4とは、Sakana Namazuとはで解説しています。料金や提供条件はモデルごとに変わりやすいため、最新情報は各公式で確認してください。

tsuzumi 2がおすすめの企業・おすすめしない企業

こんな企業・組織におすすめ

  • 金融機関: 顧客情報や取引データを外に出せない業務で、社内文書の検索・要約や帳票処理に使いたい
  • 医療機関・製薬会社: 診療情報や治験データなど、規制の厳しい情報を扱う
  • 官公庁・自治体: 行政文書の作成支援や職員向けの対話AIを、国産・閉域の環境で用意したい
  • 教育委員会・学校: 児童生徒の情報を含む校務文書を、外部クラウドに出さずに検索・要約したい(茨木市の実証が参考になる)
  • 電力・ガスなどのインフラ企業: 業務マニュアルや申請書類を学習させた専門アシスタントを作りたい
  • 製造業・研究機関: 図表を含む技術資料を社外に出さずに使いたい
  • NTTグループとすでに取引がある組織: ネットワークや保守も含めてまとめて相談できる

おすすめしない企業・ケース

  • 個人で使いたい人: 個人向けサービスがないため、ChatGPT・Claude・Geminiなどを選ぶ
  • 今日から試したい段階の企業: 商談や環境構築が必要。手軽に試すならAPI公開型の国産LLMやクラウドLLMのほうが早い
  • コーディングや高度な汎用推論が中心の業務: 海外の大型モデルが有利な場面が多い
  • 多言語・海外拠点での利用が中心の企業: 日本語特化のため、グローバル用途では強みが出にくい
  • GPUの運用やモデル更新を担う体制がない企業: オンプレ運用は自社の負担が大きい。保守込みの支援メニューを前提に検討する

ローカル環境でオープンモデルを手軽に動かしたいだけなら、Ollamaとはのような方法もあります。

導入時の注意点

オンプレミスで動かしても、それだけで安全になるわけではありません。 導入する側が受け持つ範囲を、事前に決めておく必要があります。

NTT西日本とエフサステクノロジーズのオンプレ一体型Private AI Platform on PRIMERGYの構成イメージ

出典: NTT西日本 ニュースリリース(PR TIMES)

  1. 「政府採用」の表現に気をつける: 社外向け資料では「源内で試用する国産LLMとしてデジタル庁と契約し、評価中」と書くのが正確。有償の政府調達は2027年度向けの公募で決まる
  2. Azure版に機密データを入れない: NTTデータもAzure版を評価・検証用途と位置づけている。本番の機密データはプライベート環境で扱う
  3. 運用の責任範囲を決める: GPU・OS・ミドルウェア・モデル更新の管理は、オンプレでは原則として自社の負担。保守契約でどこまでカバーされるか確認する
  4. アクセス制御とログ管理: RAGで検索する文書ごとに誰が見られるかを制御し、利用ログを監査できるようにする。茨木市の実証でも利用者ごとの権限管理を組み込んでいる
  5. プロンプトインジェクション対策: RAGやエージェント連携では、読み込んだ文書に仕込まれた指示でAIが誤動作するおそれがある。外部ツールに渡す権限は最小限にする
  6. 契約前に確認すること: コンテキスト長、ライセンス条項(商用の範囲・派生モデルの扱い)、モデル更新の頻度、図表理解機能の提供範囲は公式に公開されていない

生成AI全般のリスクは生成AIのセキュリティリスクで整理しています。

よくある質問(FAQ)

tsuzumi 2は無料で試せますか?

無料の個人向けサービスはありません。いちばん手軽なのは、Azureサブスクリプションを持つ企業がMicrosoft Foundry(Azure Marketplace)経由で検証用に使う方法です。従量課金なので、使った分の料金はかかります。

11月の公募でtsuzumi 2が政府に採用されることは決まっていますか?

決まっていません。2027年度向けの公募は、契約中の5社以外も応募でき、300問の評価テストや価格などを含めて審査されます。初回の評価結果も考慮されると報じられていますが、落札者の決定は2027年3月の予定です。

自治体が導入するには、源内の評価結果を待つべきですか?

源内は政府職員向けの環境で、自治体が個別に行う調達とは別です。茨木市のように、自治体が独自にtsuzumi 2を使う実証も始まっています。源内の評価結果が公表されれば、国産LLMを比べる際の参考にはなります。

「tsuzumi」と「tsuzumi 2」はどちらを選べばいいですか?

新しく導入するなら、現在の主力であるtsuzumi 2が検討の中心です。初代tsuzumi(7B)ですでに成果が出ている用途は、移行にかかる手間と精度がどれだけ上がるかを比べて判断してください。Azure上で追加学習まで行いたい場合は、モデルごとの提供条件の違いを提供元に確認する必要があります。

図表やPDFの画像を読み込めますか?

2026年5月19日のアップデートで、図表入りの文書を画像として読み込み、グラフやフロー図の意味を理解する機能が発表されました。ただ、どの提供ルートでいつから使えるかは公式に示されていないため、導入時に提供元へ確認してください。

コンテキスト長(一度に入力できる文章量)はどれくらいですか?

2026年10月時点で、コンテキスト長は公式に公開されていません。長い文書を扱う場合は、RAGで必要な部分だけをモデルに渡す構成が一般的です。

Hugging Faceからダウンロードして自分のPCで動かせますか?

tsuzumi 2の重みが一般公開されているという情報は確認できません。個人や小さなチームで日本語LLMを自前で動かしたいなら、重みが公開されている国産のオープンモデルを検討してください。

tsuzumi 3など後継モデルの予定はありますか?

2026年10月時点で、後継モデルの発表は確認できません。NTTはtsuzumi 2のアップデート(2026年5月の図表理解など)という形で機能を足しています。

まとめ:tsuzumi 2は「データを外に出せない日本語業務」のための国産LLM

tsuzumi 2は、NTTがゼロから開発した約300億パラメータの日本語特化LLMです。GPU1基で動く軽さ、学習データを自社で管理していることの説明のしやすさ、オンプレミスで使える提供形態が組み合わさり、自治体・金融・医療を中心に約2,000件の引き合いを集めています。

2026年に入ってからは、5月の図表理解アップデートとAzureでの検証提供、9月のオンプレ一体型、10月の茨木市の校務AI実証と、機能と使われる場面の両方が広がりました。政府の源内では5社の契約先の1つとして評価が進んでおり、次の節目は2026年11月に始まる予定の2027年度向け公募です。一方で、公開の料金表がないこと、公開されていない仕様が多いこと、「日本語最高性能」「政府採用」は公式より強い言い方であることは押さえておく必要があります。

検討の出発点は次の3つです。

  1. 扱うデータは、外部のクラウドに出せないものか
  2. 主な用途は、日本語の業務文書(図表入りを含む)の処理か
  3. オンプレミスやプライベート環境を運用する体制、または支援メニューを用意できるか

3つとも当てはまるなら、tsuzumi 2は有力な候補です。まずAzureで精度を確かめ、本番の置き場所はプライベート環境かオンプレ一体型から選ぶ進め方が現実的です。生成AI全体の基礎は生成AIとは、ツール選びは生成AIツールおすすめ比較も参考にしてください。

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この記事の著者

AI革命

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編集部

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