AIツール2026年8月更新

DeepSeek V4 Flash 0731とは?Terminal Bench 82.7・DeepSWE 7倍改善・入力0.14ドル/1Mの激安料金とV4.1/V4 Proとの違いを解説【2026年8月最新】

公開日: 2026/08/02
DeepSeek V4 Flash 0731とは?Terminal Bench 82.7・DeepSWE 7倍改善・入力0.14ドル/1Mの激安料金とV4.1/V4 Proとの違いを解説【2026年8月最新】

この記事のポイント

DeepSeek-V4-Flash-0731は2026年7月31日公開の正式版。設計も料金も据え置きのままDeepSWEが7.3→54.4に改善しました。料金・ベンチマーク・「V4.1」との関係・セキュリティ・移行手順を整理します。

DeepSeek-V4-Flash-0731は、中国・杭州のDeepSeekが2026年7月31日に公開したV4-Flashの正式版で、APIの入力単価は100万トークンあたり0.14ドル(キャッシュヒット時0.0028ドル)、コンテキスト長は100万トークンのオープンウェイト(MITライセンス)モデルです。 最大の特徴は、アーキテクチャもモデルサイズも料金もプレビュー版から一切変えず、ポストトレーニングをやり直しただけで、エージェント系ベンチマークのDeepSWEが7.3→54.4(約7.4倍)、Terminal Bench 2.1が61.8→82.7へ跳ね上がった点にあります。

なお、日本語圏でよく検索される「DeepSeek V4.1」は、2026年8月3日時点でDeepSeek公式の製品名としては存在しません。公式の現行ラインはdeepseek-v4-flashdeepseek-v4-proの2本です。

HuggingFaceで公開されているDeepSeek V4 Flashの公式モデルリポジトリ

出典: HuggingFace DeepSeek-AI 公式リポジトリ

この記事でわかること

  • 「V4.1」と呼ばれてきたものと、V4-Flash-0731の関係
  • 0731版で何が変わったのか(設計は同一・料金据え置き・性能だけ向上)
  • ベンチマークの正しい読み方(V4-Proを逆転した点と、Claude Opus 4.8との差)
  • 公式API・OpenRouter・セルフホストそれぞれの料金と円建ての実コスト
  • 既存実装からの移行時に踏むべきチェック項目
  • 中国系モデル特有のデータ主権リスクと、MITオープンウェイトを使った現実的な回避策

APIコストを下げたいエンジニア、コーディングエージェントの実行基盤を選定しているプロダクト責任者、中国系モデルの業務利用可否を判断する情報システム担当者に向けた記事です。DeepSeekそのものの基礎から知りたい場合はDeepSeekとは?特徴・料金・使い方・ChatGPTとの違い、V4シリーズ全体の位置づけはDeepSeek V4とは?性能・料金・V3との違いを先に読むと理解が早くなります。

DeepSeek V4 Flash 0731の要点は3つ

  1. 「同じ設計・同じ値段のまま、ポストトレーニングだけで性能が上がった」モデル。 公式Change Logは「アーキテクチャとモデルサイズはV4-Flash-Previewと同一」と明言しています。新設計ではなく再ポストトレーニング(re-post-training)による性能向上であり、API側の料金は据え置きです。
  2. エージェント用途で下位モデルが上位モデルを逆転した。 アクティブパラメータ13BのFlashが、アクティブ49B・総1.6TのV4-Pro-PreviewをTerminal Bench 2.1で10.6ポイント上回りました。パラメータ数がそのまま実務性能にならないことを示す事例です。
  3. ただしフロンティアモデルには届いていない。 公開されている全ベンチマーク項目でClaude Opus 4.8に劣後しています。「Opus 4.8超え」ではなく「Opus 4.8に肉薄する項目がある一方、難タスクでは差が残る」が正確な理解です。

用途としては、大量に呼び出すコーディングエージェント・社内自動化・長文バッチ処理でコストを一桁下げたい人向けのモデルです。逆に、最難関の設計・研究タスクや画像入力が必要な場面では選択肢になりません。

「DeepSeek V4.1」とは何だったのか

2026年8月3日時点で、DeepSeek公式に「V4.1」という製品名は存在しません。 公式APIドキュメント(api-docs.deepseek.com)のModels & Pricing/Change Logに掲載されている現行モデルはdeepseek-v4-flashdeepseek-v4-proの2つだけです。

「V4.1」は2026年5〜6月に第三者メディアやコミュニティで流通した通称・観測情報で、公式リポジトリ名やAPIのモデルIDとしては確認できていません。当時「V4.1 Flash」と呼ばれていたものは、V4-Flash系統の反復改良(現在の0731版につながる流れ)を指していた可能性が高いものの、公式に紐付けを断定できる根拠はありません。

呼称

公式ステータス

実体

DeepSeek-V4-Flash-0731

公式・正式版(2026/7/31公開)

APIモデルID deepseek-v4-flash の現行中身

DeepSeek-V4-Flash-Preview

公式・プレビュー(2026/4/24公開)

0731に置き換えられた前バージョン

DeepSeek-V4-Pro

公式・プレビュー扱い

正式版は「今後リリース予定」と公式が明記

「V4.1」「V4.1 Flash」

公式名称ではない

第三者メディア・コミュニティの通称

したがって、「V4.1を使いたい」という目的で情報を探している場合、実際に触るべきモデルはdeepseek-v4-flash(=0731版)になります。「V4.1」という呼称がどう広がったかの経緯はDeepSeek V4.1とは?V4との違いと噂の切り分けで詳しく整理しています。

DeepSeek V4 Flash 0731の基本スペック

DeepSeek公式サイトのイメージ

出典: DeepSeek 公式サイト

スパースMoE(Mixture-of-Experts)構成で、総パラメータ284B・アクティブ13B、コンテキスト長100万トークン、テキスト専用のオープンウェイトモデルです。

項目

内容

正式モデル名

DeepSeek-V4-Flash-0731

APIモデルID

deepseek-v4-flash(呼び出し方は従来どおり。中身が0731に更新)

公開日

2026年7月31日(APIはPublic Beta)

アーキテクチャ

スパースMixture-of-Experts(MoE)

総パラメータ

284B(HuggingFaceリポジトリ表記は304B。差分はDSpark投機的デコーディングモジュール分)

アクティブパラメータ

13B/トークン

エキスパート構成

共有エキスパート1+ルーテッドエキスパート256、トークンあたり6エキスパート起動

アテンション

Compressed Sparse Attention+Heavily Compressed Attentionのハイブリッド

学習量

32兆トークン超、Muonオプティマイザ

コンテキスト長

100万トークン(A4換算でおよそ1,500ページ相当)

最大出力

384Kトークン(high/max reasoning effort時の推奨上限)

入出力

テキストのみ(画像・音声・動画の入出力なし)

ライセンス

MIT(申請不要でダウンロード可)

API同時実行上限

2,500

注意点として、総パラメータの表記に284Bと304Bの2種類が出回っています。これは推論高速化用の投機的デコーディング(DSpark)モジュールを含むかどうかの差で、モデル本体は284Bと理解しておけば混乱しません。

0731版で何が変わったのか

変わったのはポストトレーニングだけです。 公式Change Logは「アーキテクチャとモデルサイズはV4-Flash-Previewと同一」と明記しており、パラメータ数もコンテキスト長もAPI料金も変わっていません。それでいてエージェント系ベンチマークのスコアが大きく動いた、というのがこのリリースの本質です。

実務的に影響が大きい変更点は次のとおりです。

  • エージェント・ツール利用向けの再学習 — function calling、structured outputs(構造化出力)を伴う多段タスクの成功率が上がっています。
  • Responses API形式のネイティブサポートCodex向けアダプテーションが公式Change Logに明記されました(Responses API対応はFlashのみで、Proは対象外)。
  • トークン効率の改善 — Artificial Analysisの評価では、同じIndex評価を通すのに必要な出力トークンが約234M→約206Mへ12%減っています。思考の冗長さが減ったぶん、実費も下がります。
  • ハルシネーション率の低下 — 同評価で95%→84%へ改善。ただし正答率そのものは横ばいで、「知らないことを知らないと言える割合が増えた」という性質の改善です。

一方で、モデルサイズが同じである以上、ハードウェア要件や推論コスト構造は前バージョンと変わりません。セルフホストしている場合、既存の構成のままウェイトを差し替えられるのが利点です。

ベンチマークをどう読むか

独立系ベンチマーク機関Artificial Analysisの公式サイトイメージ

出典: Artificial Analysis 公式サイト

Terminal Bench 2.1で82.7を記録し、上位モデルであるV4-Pro-Preview(72.1)を10.6ポイント上回りました。ただしClaude Opus 4.8には公開全項目で届いていません。 公式モデルカードおよびChange Logに掲載された数値を整理します。

ベンチマーク

V4-Flash-0731

V4-Flash-Preview

V4-Pro-Preview

Claude Opus 4.8

Terminal Bench 2.1

82.7

61.8

72.1

85.0

DeepSWE

54.4

7.3

12.8

58.0

Cybergym

76.7

38.7

52.7

83.1

NL2Repo

54.2

39.4

38.5

69.7

Toolathlon-Verified

70.3

49.7

55.9

76.2

DSBench-FullStack※

68.7

71.6

DSBench-Hard※

59.6

71.7

Agent Last Exam

25.2

※DSBench-FullStack/DSBench-HardはDeepSeekの内部テストセットで、第三者による検証結果ではありません。

1. DeepSWEの7.3→54.4が最大の変化。 約7.4倍という数字は、「エージェントとしてほぼ機能しなかったものが実用域に入った」ことを意味します。プレビュー版でDeepSeek V4-Flashをエージェント用途に試して諦めた経験がある場合、再評価する価値があります。

2. 下位モデルが上位モデルを逆転した。 アクティブ13BのFlashが、アクティブ49B・総1.6TのV4-Pro-Previewをエージェント系ベンチで上回りました。TechTimesは「9つのエージェントベンチで自社フラッグシップを上回った」と報じています。ただしこれはV4-Proがプレビューのまま更新されていないためでもあり、Pro正式版が出れば構図は変わり得ます。

3. フロンティアとの差は残っている。 Terminal Benchで−2.3ポイント、DSBench-Hardでは−12.1ポイントと、難易度が上がるほどClaude Opus 4.8との差が開きます。「Opus 4.8を超えた」という表現は誤りです。比較対象の詳細はClaude Opus 4.8とは?性能・料金・使いどころを参照してください。

第三者評価(Artificial Analysis)

独立系ベンチマーク機関Artificial Analysisの評価では、Intelligence Indexが40→50へ10ポイント上昇しました。

指標

Artificial Analysis Intelligence Index

50(前バージョンは40)

同スコア帯

Gemini 3.6 Flash(50)と同点

上位モデル

GPT-5.6 Luna(51)、Muse Spark 1.1(51)に1点差、Kimi K3(57)に7点差

エージェント評価(GDPval-AA v2)

1559 Elo

Index評価にかかった実費

72.02ドル

コスト効率

GPT-5.6 Lunaと同等知能で、タスクあたりコストは約60%安い

Artificial Analysisはこの結果を「価格性能のパレートフロンティアに大きなスパイクを作った」と表現しています。知能の絶対値で首位を取ったわけではなく、同じ知能をどれだけ安く買えるかという軸で突出したモデル、という位置づけです。知能面での上位モデルについてはKimi K3とは?性能・料金・特徴も比較材料になります。

料金|入力0.14ドル/1M・キャッシュヒットは50分の1

OpenRouterのDeepSeekモデル一覧ページのイメージ

出典: OpenRouter 公式サイト

DeepSeek公式APIでの現行価格は、入力0.14ドル/出力0.28ドル(いずれも100万トークンあたり・USD)で、プレビュー版から据え置きです。

モデル

入力(キャッシュヒット)

入力(キャッシュミス)

出力

コンテキスト

最大出力

同時実行

deepseek-v4-flash(=0731)

$0.0028

$0.14

$0.28

1M

384K

2,500

deepseek-v4-pro

$0.003625

$0.435

$0.87

1M

384K

500

押さえておきたい実務ポイントは次のとおりです。

  • キャッシュヒット時の入力単価は通常の50分の1(約98%引き)。同じシステムプロンプトや同じリポジトリ文脈を繰り返し投げるエージェント用途では、この差がコストを支配します。Artificial Analysisが算定するブレンド単価は約0.06ドル/1Mトークンです。
  • V4-Proの0.435ドル/0.87ドルは、2026年5月22日に75%割引を恒久価格化した結果であり、期間限定プロモーションではありません。
  • 公式ドキュメントにはピーク時間帯(北京時間09:00–12:00/14:00–18:00=日本時間10:00–13:00/15:00–19:00)の2倍課金に関する記載がありますが、現時点では正式アナウンス待ちで未適用の扱いです。将来的な変動要因として頭に入れておく程度が妥当です。
  • コンシューマ向けチャット(chat.deepseek.com/公式アプリ)は執筆時点で無料です。課金はAPIの従量課金のみで、サブスクリプション型のプラン区分はありません。無料枠の仕様は変わり得ます。

サードパーティ経由の価格

公式API以外の入口もあります。プロバイダによって単価が異なるため、公式価格とは分けて考えてください。

提供元

入力

出力

備考

DeepSeek公式API

$0.14

$0.28

キャッシュヒット時入力$0.0028

OpenRouter

$0.09

$0.18

複数プロバイダへルーティング。公式より安いケースあり

Baseten

$0.13

$0.26

キャッシュ$0.028。プロバイダにより微差あり

複数モデルを1つのAPIキーで切り替えたい場合はOpenRouter経由が扱いやすく、その仕組みはOpenRouterとは?使い方・料金・対応モデルで解説しています。

他モデルとの単価比較

モデル

入力($/1M)

出力($/1M)

備考

DeepSeek V4-Flash-0731

$0.14

$0.28

AA Index 50

DeepSeek V4-Pro

$0.435

$0.87

恒久割引後

GPT-5.6 Luna

$0.20

$1.20

2026/7/30に80%値下げ

Gemini 3.6 Flash

$1.50

$7.50

AA Index 50

GLM-5.2(Z.AI)

$1.40

$4.40

中国系オープンウェイト

Kimi K3

$3

$15

AA Index 57

Claude Sonnet 5

$3

$15

Claude Fable 5

$10

$50

出力トークン単価で見ると、V4-Flash-0731はGPT-5.6 Lunaの約4分の1、Claude Sonnet 5の約54分の1、Claude Fable 5の約179分の1です。それでいてAA Intelligence IndexはLunaと1点差、Gemini 3.6 Flashと同点という位置にあります。GPT-5.6側の値下げ背景はGPT-5.6 Lunaが80%値下げ|AI価格競争の現在地で扱っています。

円建ての実コスト試算

単価だけでは判断しづらいので、コーディングエージェントの1タスクを「入力50万トークン・出力5万トークン」と仮定して概算します(1ドル=約155円の執筆時点レートによる概算)。

モデル

1タスクあたり

1,000タスク実行時

V4-Flash-0731(キャッシュミス想定)

約$0.084(約13円)

約$84(約1.3万円)

GPT-5.6 Luna

約$0.16(約25円)

約$160(約2.5万円)

Claude Sonnet 5

約$2.25(約350円)

約$2,250(約35万円)

システムプロンプトやリポジトリ文脈が繰り返しキャッシュヒットする実運用では、V4-Flash側の入力コストはさらに下がります。「エージェントを回しっぱなしにするとコストが読めない」という課題に対して、最も現実的な解の1つになっているのが現状です。

できること・できないこと

DeepSeek API ドキュメントのイメージ

出典: DeepSeek API Docs 公式

できること

  • 100万トークンの長文コンテキスト処理(リポジトリ全体・長大な仕様書や議事録の一括読み込み)
  • reasoning effort(推論努力度)をlow〜high/maxで切り替え、レイテンシ・トークン消費と思考の深さを調整
  • function calling、structured outputs(構造化出力)を使ったツール連携・エージェント実行
  • Responses API形式のネイティブ利用、OpenAI ChatCompletions互換/Anthropic API互換インターフェースでの呼び出し
  • MITライセンスのオープンウェイトをHuggingFaceから取得しての商用利用・オンプレ運用・ファインチューン
  • 投機的デコーディング(DSpark)モジュールを使った推論高速化

できないこと・制約

  • マルチモーダル非対応。テキスト入出力のみで、画像・音声・動画は扱えません(一部の第三者記事にvision対応との記述がありますが、公式仕様およびArtificial Analysisの記載はテキストのみです)。
  • 最難関タスクではフロンティアモデルに届かない。公開ベンチ全項目でClaude Opus 4.8に劣後し、AA IndexでもKimi K3に7点差があります。
  • V4-Proはまだプレビュー扱い。公式Change Logは「V4-Proの正式版は今後リリース予定」と明記しており、2026年8月3日時点で正式版が存在するのはFlash系のみです。
  • ローカル実行のハードルは高い。アクティブ13Bとはいえ、MoEは全パラメータをメモリに載せる必要があるため、フル精度のセルフホストは大規模GPU・大容量メモリ前提です。
  • APIはPublic Beta。本番基幹での利用にはSLAや仕様変更のリスクを織り込む必要があります。
  • 日本語専用の公式ベンチは非公開。第三者の実利用レビューでは「日本語の文章品質は自然」との評価が複数ありますが、数値的な裏付けは存在しません。
  • Responses API対応はFlashのみで、Proは非対応です。

使い方|3つの入口と推奨設定

HuggingFaceのDeepSeek-AI公式組織ページのイメージ

出典: HuggingFace deepseek-ai 公式組織ページ

利用ルートは「公式API」「サードパーティ経由」「セルフホスト」の3つで、機密データの扱い方によって選ぶべきルートが変わります。

入口

手順の概要

適したケース

DeepSeek公式API

platform.deepseek.comでAPIキー発行 → OpenAI互換エンドポイントにmodel: "deepseek-v4-flash"で投げる

最短で試したい。非機微データのバッチ処理

OpenRouter等の中継

OpenRouterのAPIキー1つでdeepseek/deepseek-v4-flash-0731を指定

複数モデルを比較・切り替えたい

セルフホスト

HuggingFaceからMITウェイトを取得し、vLLM/SGLang等で起動

機密データを外部に出せない企業

コーディングエージェントに繋ぐ場合、公式がCodex向けアダプテーション済みと明記しているため、OpenAI互換エンドポイントを設定できるツール(Codex系・OpenCode系など)であれば、ベースURLとモデル名の差し替えだけで動かせるケースが大半です。ツール側の選定はAIコーディングツールおすすめ比較も参考になります。

公式の推奨サンプリング設定

  • temperature = 1.0
  • エージェント用途は top_p = 0.95、それ以外は top_p = 1.0

実装上の注意として、チャットテンプレートがJinja形式ではなく専用のエンコーディング用Pythonスクリプトとして同梱されています。既存のテンプレート処理をそのまま流用すると噛み合わないことがあるため、モデルカードの手順を確認してください。

セルフホストについては、vLLMがday-0レシピを公開しており、Unslothが実行ガイドとGGUF量子化版を、コミュニティがApple Silicon向けMLX変換版を公開しています。量子化版であればローカル実行の現実的な入口になりますが、それでも個人PCで気軽に、という水準ではありません。

移行時のチェックリスト

既にDeepSeek APIを使っている場合、0731への移行そのものは容易ですが、直前に別の破壊的変更が入っている点に注意が必要です。

  • deepseek-chat / deepseek-reasoner は2026年7月24日に廃止済み。レガシーモデル名を残したままだと呼び出しが通りません。deepseek-v4-flash または deepseek-v4-pro に置き換えます。
  • deepseek-v4-flash の中身は自動的に0731へ更新済み。モデルIDの変更は不要ですが、出力の傾向は変わっているため、プロンプトと評価セットの再確認をおすすめします。
  • サンプリング設定を公式推奨値に合わせる(temperature 1.0、エージェント時 top_p 0.95)。
  • Responses APIを使う場合はFlashのみ対応。Proに切り替える前提の設計にしていないか確認します。
  • 最大出力384Kを前提にタイムアウト・課金上限を見直す。reasoning effortをhighにすると出力トークンが伸びます。
  • APIはPublic Betaのため、本番投入前にフォールバック先モデルを用意しておきます。

セキュリティとデータ主権の扱い方

DeepSeekを業務で使う際の最大の論点は性能でも料金でもなく、データがどこに保管されるかです。 DeepSeekのプライバシーポリシーは、ユーザーデータを中国国内のサーバに保管すると明記しており、準拠法・裁判管轄が中国になり得ます。

日本国内での公的な対応は次のとおりです(いずれも全面禁止ではなく注意喚起レベルである点が重要です)。

  • 2025年2月3日:個人情報保護委員会が「DeepSeekに関する情報提供」を公表。個人データが中国のサーバに保存され、中国の法令が適用される点を注意喚起。
  • 2025年2月6日:デジタル社会推進会議幹事会事務局が各省庁向けに「DeepSeek等の生成AIの業務利用に関する注意喚起」を発出。利用する場合はNISC・デジタル庁に助言を求めるよう指示。

海外では、米NASAが政府支給端末での使用を内部通達で禁止、オーストラリア政府が全政府機関でのインストール・利用を禁止するなど、機関単位の制限事例があります。また、公式API経由では政治的話題に対する回答制限(検閲)も指摘されています。

実務的な回避策

ここで効いてくるのが、V4-Flash-0731がMITライセンスの完全なオープンウェイトであるという事実です。利用ルートごとにデータの行き先が変わります。

使い方

データが中国に渡るか

適したケース

公式チャット/公式アプリ

渡る

個人の非機微な用途のみ

公式API

渡る

非機微データのバッチ処理・検証

OpenRouter等の第三者ルーティング

プロバイダ次第(要確認)

中程度の要件

オープンウェイトのセルフホスト

渡らない

機密データ・オンプレ要件のある企業

つまり「DeepSeekは危険だから使わない」ではなく、「機密データはセルフホスト、非機微データは公式APIでコストを取る」という使い分けが現実解になります。オープンウェイトを自社サービスに組み込む際の注意点は、ライセンス表記の問題として実際に議論になった事例(楽天Rakuten AI 3.0のDeepSeek V3リブランド騒動)も参考になります。エージェントを業務に組み込む際の権限設計はAIエージェントのセキュリティ対策で整理しています。

V4-Flash-0731とV4-Pro、どちらを選ぶか

現時点では、エージェント・コーディング用途ならFlash-0731が優先候補です。 理由は3つあります。

  1. Terminal Bench 2.1をはじめ、複数のエージェント系ベンチでFlash-0731がV4-Pro-Previewを上回っている
  2. 料金がProの約3分の1(入力・出力とも)で、同時実行上限も2,500対500とFlashが有利
  3. Responses API対応はFlashのみ

比較ポイント

V4-Flash-0731

V4-Pro

ステータス

正式版(2026/7/31)

プレビュー。正式版は今後リリース予定

アクティブ/総パラメータ

13B/284B

49B/1.6T

入力(キャッシュミス)

$0.14

$0.435

出力

$0.28

$0.87

同時実行上限

2,500

500

Responses API

対応

非対応

エージェント系ベンチ

上回る項目が多い

Previewのまま未更新

一方、長文の論理的一貫性や難易度の高い推論タスクでProが優位に立つ場面は残ります。Proを本格採用するなら、正式版のリリースを待って再評価するのが妥当です。V4シリーズ全体の設計思想はDeepSeek V4とは?性能・料金・V3との違いで解説しています。

こんな人におすすめ/おすすめしない人

おすすめできるケース

  • コーディングエージェントを大量に回している — 1タスクあたり十数円で済むため、試行回数を増やしても予算が壊れません。DeepSWEの7.4倍改善が最も効くのがこの用途です。
  • 社内ツールの自動化・バッチ処理 — 同じシステムプロンプトを繰り返し使うため、キャッシュヒット単価0.0028ドルの恩恵を最大化できます。
  • 長文コンテキストを扱いたい — 100万トークンで大規模リポジトリや長大な資料をまとめて投入できます。
  • オンプレ・閉域要件がある企業 — MITライセンスのオープンウェイトなので、自社環境で完結させられます。
  • 中国系モデルを含めた選択肢を検証したい — 中国系モデル全体の勢いは中国製AIモデルがOpenRouter利用の60%超え、同系統の比較対象はGLM-5.2とはが参考になります。

おすすめしない・慎重に判断すべきケース

  • 最難関の設計・数学・研究タスクが中心 — Claude Opus 4.8やKimi K3との差が明確に出ます。ここでコストを削るとやり直しコストの方が高くつきます。
  • 画像・音声・動画を扱いたい — テキスト専用のため要件を満たしません。
  • 機密データを公式API経由で流したい — データ保管先の問題が解消しないため、セルフホストに切り替えるか、他ベンダーを選ぶべきです。
  • SLAが必要な本番基幹システム — APIがPublic Betaのため、可用性保証を前提とした設計には向きません。
  • 日本語の品質を数値で担保したい — 公式の日本語ベンチが存在せず、自前で評価セットを作る前提になります。

よくある質問

Q. モデル名をdeepseek-v4-flash-0731と指定する必要がありますか?
公式APIではdeepseek-v4-flashのままで問題ありません。既存のモデルIDの中身が0731に差し替えられています。一方、OpenRouterなどの中継サービスではバージョン付きの識別子(deepseek/deepseek-v4-flash-0731)を使うため、プロバイダごとの表記を確認してください。

Q. プレビュー版を使っていたアプリは、何もしなくても性能が上がりますか?
APIのモデルIDが同じなので、呼び出し側の変更なしに0731の挙動になります。ただし出力の傾向やトークン消費量は変わっているため、プロンプトの微調整と回帰テストは実施すべきです。

Q. 無料で試せますか?
公式チャット(chat.deepseek.com)と公式アプリは執筆時点で無料です。APIは従量課金ですが、単価が低いため、数十円分のクレジットでも実用的な検証量を回せます。

Q. 商用サービスに組み込んでもライセンス上問題ありませんか?
MITライセンスのため、商用利用・改変・再配布が可能です。ただし著作権表示とライセンス条文の同梱は必要で、これを怠るとライセンス違反になります。自社モデルとして宣伝する場合は特に注意が必要です。

Q. GPUを何枚用意すればセルフホストできますか?
総パラメータ284Bのすべてをメモリに載せる必要があるため、フル精度では大規模なGPUクラスタが前提になります。現実的な入口はGGUF等の量子化版で、vLLMやUnslothが公開している構成を出発点にするのが早道です。

Q. V4-Proの正式版はいつ出ますか?
公式Change Logは「今後リリース予定」と述べるにとどまり、時期は公表されていません。Pro採用を検討している場合は、Flash-0731で先に検証を進めておくのが実務的です。

まとめ

DeepSeek-V4-Flash-0731は、設計もサイズも料金も変えずに、ポストトレーニングのやり直しだけでエージェント性能を実用域まで引き上げたモデルです。DeepSWE 7.3→54.4、Terminal Bench 2.1 61.8→82.7という数字は、パラメータ数の増加ではなく学習後の作り込みで性能が動くことを示しています。

導入判断の軸をまとめると次のようになります。

  • コストが最優先で、用途がエージェント/コーディング/長文処理なら第一候補(入力$0.14・キャッシュヒット$0.0028)
  • 最難関タスクやマルチモーダル要件があるなら対象外(Claude Opus 4.8等との差は残る)
  • 機密データを扱うなら、MITオープンウェイトのセルフホストで回避する
  • 「V4.1」を探していたなら、触るべきはdeepseek-v4-flash(=0731版)

料金とベンチマークが短期間で動く領域のため、実際に採用する際は公式のPricingページとChange Logを直前に確認してください。他モデルとの比較検討を進める場合はDeepSeek V4とGPT-5.5の比較、DeepSeek全体の理解はDeepSeekとはから辿るのが効率的です。

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