ビジネス活用2026年9月更新

RAG導入の費用|社内文書に入れるPoC・本番・運用の実額と期間【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/18
RAG導入の費用|社内文書に入れるPoC・本番・運用の実額と期間【2026年9月最新】

この記事のポイント

RAGを社内文書に導入する費用は、PoC 50万〜300万円、本番300万〜1,000万円、運用月10万〜50万円が相場。AIとクラウドの利用料は月3万〜7万円程度で、残りは人の作業です。自治体の実額、本番で増える費用、期間の内訳まで解説。

RAGを社内文書に導入する費用は、開発会社の公開相場で小さく試す検証(PoC)が50万〜300万円、本番の構築が300万〜1,000万円(全社展開や社内システムとの連携が多い場合は数千万円)、運用が月10万〜50万円、期間はPoCが2週間〜3か月、本番の構築が2〜4か月です。このうちAIとクラウドの利用料は社員300名規模でも月3万〜7万円程度にすぎず、費用の大半は「資料を整える」「答えが正しいかを確かめる」という人の作業に払うことになります。

RAG(検索拡張生成)とは、社内の規程・マニュアル・過去の問い合わせ記録などをAIに読ませて、答えと一緒に「どの資料のどこに書いてあるか」を示せるようにする仕組みです。仕組みそのものはRAGとはで解説しているため、本記事ではRAGで作ると決めた、または候補に挙がった会社が、PoC→本番→運用でいくら・何か月かかるかに絞ります。社員全員にChatGPTなどを配るか、1つ作るかで迷っている段階なら、先に社内AIチャットボットの費用相場をご覧ください。

当社も受託開発でRAGを作っています(PoC 300万円〜/小規模改修 30万円〜/本開発は個別見積、すべて税別)。ただし、資料の量によってはRAGを作らなくていい会社もあります。 その判断の目安も数字で書きます。本記事の金額は特記のない限り税別、ドル建ての料金は1ドル=153円(2026年9月上旬の水準)で換算しています。

RAG導入の費用は「PoC・本番・運用」の3段階で決まる|実額の一覧

PoC・本番・運用の3段階で費用が積み上がるRAG導入のイメージ

RAGの見積もりは、1つの金額で見るより3段階に分けて見るほうが比べやすくなります。開発会社8社が自社サイトで公開している相場(2025年11月〜2026年9月公開・更新分)をまとめると、次のとおりです。

段階

公開相場

期間の目安

この段階で決まること

小さく試す(PoC)

50万〜300万円(範囲を広げると500万円)

2週間〜3か月

合格ラインに届くか/資料の整備がどれだけ要るか/本番の概算

本番の構築

300万〜1,000万円(軽量なら300万〜500万円、全社・社内システム連携込みで1,500万〜5,000万円)

2〜4か月(一から作る大規模案件は3〜12か月)

社内IDでのログイン、閲覧制限、利用ログ、社内システムとの連携

運用

月10万〜50万円(上限側で月80万円。年間で構築費の20〜30%とする会社もある)

継続

答えの正しさの定期確認、資料の差し替え、利用者からの問い合わせ対応、改善

出典:GXO、ルートチーム、OptiMax、TWOSTONE&Sons、MoMo、AQUA、ニューラルオプト、riplaの各社公開値。第三者の統計ではなく、開発会社が示している相場です。

PoCの下限と本番の上限では100倍の開きがあります。この幅を生むのは、①資料の量と形式、②資料の重複と版違い、③閲覧制限、④社内システムとの連携、⑤どこまで正確なら使うかという合格ラインの5つで、本番ではこれに利用者の規模が加わります(後の章で1つずつ確認します)。1つの目安として、GXOが示す社員300名の見積例は、PoC 100万円+本番600万円+運用 月約20万円で、初年度の総額は約940万円です。

公的機関の実額:横浜市は税抜526万1,600円で契約

相場とは別に、金額が公開されている実例もあります。横浜市が2025年10月に入札を行った「RAG機能と高度モデルを備えた生成AIサービスの提供及び活用支援業務委託」は、落札額が税抜526万1,600円、もう1社の入札額は税抜850万円でした(横浜市 入札結果)。

ただし、これは一から作る開発ではなく、RAG機能付きのサービスの提供と、活用の支援を合わせた委託です。履行期間・利用者数・資料の量は、公開資料では確認できませんでした。「既製のサービスに支援を付けた形でも、数百万円規模になる」という物差しとしてお使いください。

社内文書のRAGは、どこに費用と時間がかかっているか

横須賀市 生成AI推進チームによるRAG実証結果報告のタイトル画像

出典: 横須賀市 公式「自治体AI活用マガジン」

発注前に知っておきたいのは、RAGの精度が出ない原因の大半は、AIではなく資料と探し方にあるということです。

キヤノンITソリューションズが社内で行った検証では、実際の社内問い合わせ228件にRAGで答えさせたところ、役に立った回答は約3分の1でした。役に立たなかった原因の内訳は次のとおりです(キヤノンITソリューションズ テクニカルレポート、2025年4月)。

役に立たなかった原因

割合

業務の言葉にすると

文書の不備・不足

46%

そもそも資料に書いていない、書き方が古い・曖昧

検索の精度

42%

資料はあるのに、該当する箇所を探し当てられなかった

生成AIの精度

12%

探し当てたのに、AIが正しくまとめられなかった

9割近くは「資料」と「探し方」の問題で、AIを高性能なものに替えて解決できるのは12%分だけです。たとえば「パソコンを修理に出してから戻るまでの期間」のような実務的な質問は、マニュアルに基本的な情報があっても答えられませんでした。

社内文書で実際に起きているのは、次のようなことです。

  • 同じ規程の旧版と新版が両方残っている。 どちらが正しいかは、AIには判断できません
  • 同じ内容が複数の資料に重複している。 横須賀市の実証では、似た文ばかりが上位に来て、必要な情報が埋もれました
  • スキャンしたPDFや、表・図が中心の資料が多い。 文字として読み取れる形に直す作業が要ります
  • 「前項」「次項」を参照し合う規程や法令がある。 デジタル庁は、一般的なRAGでは難しく独自の作り込みが必要だとしています
  • そもそも資料がなく、担当者の頭の中にしかない。 横須賀市は、文書が古い、文書がなく口伝のみというケースもあったと報告しています

横須賀市は、2024年12月から約4か月かけて章立てを組み直し、意味が通じる単位に資料を整え、重複した資料を一本化した結果、27問中24問に正しく答えられるようになりました。担当チームはこの経験を「傷んだ食材で、いくら高級なシェフがいても美味しい料理は作れない」と表現しています(横須賀市 生成AI推進チーム、2025年6月)。横浜市も、法令書籍約4,500ページと昭和46年以降の質疑応答記録約3,000件を読ませて回答精度約9割に達するまでに、資料の構造化や文字化けの修正などに相当な労力をかけたと述べています(NTT東日本の導入事例)。

つまり、RAGの予算は「どのAIを使うか」より「資料を整え、答えを確かめる作業にどれだけ人をかけるか」で決まります。

費用の中身|AIとクラウドの利用料は月数万円、残りは人の作業

OpenAI API 料金ページ(Pricing)の公式画像

出典: OpenAI Developers 公式サイト

では、見積もりのうち「AIとクラウドに払うお金」はいくらなのか。2026年9月19日時点の各社の公式単価から計算しました。RAGで利用料がかかる部品は、大きく3つです。

部品

何をするか

公式単価からの試算

資料の下ごしらえ

資料を、AIが探せる形に変換する(初回と資料の更新時)

1万ページで約30〜310円(OpenAI・Googleの変換用AI)

検索の置き場所(Azure)

変換した資料を置き、質問に合う箇所を探す

Azure AI Search(東日本のデータセンター):Basic 月約1.5万円/Standard S1 月約5.0万円

検索の置き場所(AWS)

同上

Amazon Bedrock Managed Knowledge Base:資料10GB・月1万回の検索で月約9,200円

検索の置き場所(OpenAI)

同上

OpenAI File Search:資料10GBの保管で月約4,100円+検索1万回で約3,800円

回答を作るAI

探し当てた箇所を読んで答えを書く

1問あたり約0.4〜7.3円(下表)

資料の下ごしらえは、1ページをAIの利用料を数える単位(トークン)で約1,000と仮定した計算です。1万ページでも数百円以下で、費用の本体ではありません。

回答を作るAIの利用料は、読ませる量と答えの長さで決まります。1問あたり「探し当てた資料の抜粋を含めて約8,000トークンを読ませ、約800トークンで答える」と仮定すると、次のとおりです。

回答を作るAI(OpenAI、2026年9月時点の公式単価)

1問あたり

月15,000問(社員300名×1人月50問)

gpt-5.6-luna(低価格帯)

約0.4円

約5,900円

gpt-5.4-mini

約1.5円

約2.2万円

gpt-5.6-terra

約3.9円

約5.9万円

gpt-5.6-sol(上位)

約7.3円

約11万円

社員300名・月15,000問・資料10GBの会社で合計すると、

  • Azure AI Search(S1)+gpt-5.4-mini:月約7.2万円
  • Bedrock Managed Knowledge Base(10GB・月1.5万回で約1万円)+gpt-5.4-mini:月約3.2万円

です。Azure AI Searchは1台分を月730時間で換算した金額で、止まらないように複数台で構成すると台数分増えます。Bedrock Managed Knowledge Baseは、回答を作るAIの利用料が別にかかる前提で足しています。為替や単価の改定で金額は動きます(出典:Azure AI Search 価格Amazon Bedrock 価格OpenAI API 価格)。

一方、開発会社の運用費の相場は月10万〜50万円でした。利用料との差、つまり月数万〜40万円強は、人の作業への支払いです。中身は次のとおりです。

  • 答えの正しさの定期確認:実際の問い合わせから作ったテスト用の質問に答えさせ、正誤を採点する
  • 資料の差し替え:規程やマニュアルが変わるたびに、古い版を外して新しい版を取り込む
  • 問い合わせ対応と原因調査:答えられなかった質問が、資料・探し方・AIのどこで詰まったかを調べる
  • 改善の繰り返し:DeNAの社内ITヘルプデスクでは、検索結果の並べ替えを入れて正答率が69%→74%、質問の言い換えを入れて76%→79%と、1つの改善で上がるのは数ポイント単位でした。最終的に50%台から80%超まで上げていますが、それは地道な繰り返しの積み重ねです(DeNA Engineering、2025年11月)

見積もりを比べるときは、クラウド代の安さで比べても意味がありません。 比べるべきは、月額に上の作業がどこまで含まれているかです。運用費の中身はシステム保守運用費の相場で詳しく解説しています。

2026年の変化:検索の仕組みは「借りる」ものになった

2026年6月17日、Amazon Bedrock Managed Knowledge Baseが正式に提供開始されました。資料の読み取り、下ごしらえ、検索結果の並べ替えまでが、資料1GBあたり月5ドル+検索1,000回あたり1ドルの従量課金に含まれます。公式の料金例では、資料50GB・月10万回の検索で月350ドル(約5.4万円)です。Azure AI Searchにも、使った分だけ払う方式(Serverless。2026年9月時点では試験提供の段階)が加わっています。

これで、本番構築費のうち「検索の仕組みを一から作り、運用する」部分は圧縮しやすくなりました。DeNAも、一から作った仕組みの構築・運用に多大な工数がかかったことから、AWSの既製の仕組み(Bedrock Knowledge Bases)に移し、精度の改善に人を集中させています(DeNA Engineering、2025年11月)。ただし、資料の整備、答えの確認、閲覧制限の設計は、借りる仕組みにしても減りません。 数年前のAIの料金や構成を前提にした見積もりが出てきたら、検索の仕組みを作る部分が割高になっていないか確認してください。

費用が膨らむ5つの条件|見積もり前に自社で確認できること

見積もりの幅を決める5つの条件は、開発会社に相談する前に、社内で答えを用意できます。

条件

見積もり前に自社で確認すること

費用への影響

①資料の量と形式

対象の資料は何ファイル・何ページか。スキャンPDF、表や図が中心の資料、紙の資料はどれくらいあるか

資料の整備が必要な場合、追加で200万〜1,000万円という公開相場もある(TWOSTONE&Sons)

②重複と版違い

同じ規程の旧版が残っていないか。最新版を決められるのは誰か

一本化の作業が増える。最新版の判断は発注側にしかできない

③閲覧制限

部署や役職で、見せてよい資料が違うか

資料ごとの閲覧設定と、その確認の作業が乗る

④社内システムとの連携

申請の進み具合、在庫、登録情報など「今の状態」も答えさせたいか

連携込みの本番は2,000万〜5,000万円という公開相場(TWOSTONE&Sons)

⑤合格ライン

何問中何問に正しく答えれば使うか。間違えたときの影響はどれくらいか

合格ラインが高いほど、改善の繰り返し回数が増える

特に③の閲覧制限は、見積書から抜けやすい項目です。生成AIを使ったアプリの主要なセキュリティリスクをまとめたOWASPの「LLM Top 10」(2025年版)は、RAG特有のリスクとして「権限設定の不備で、閲覧権限のない人がAI経由で機密資料にたどり着く」「部署間で検索結果が混ざる」「資料に悪意ある内容を混ぜられる」を挙げています(OWASP LLM08:2025)。対策は、資料単位の閲覧制御、取り込む資料の確認、検索ログの保存です。この3点が見積もりに含まれているかを必ず確認してください。閲覧権限の整理の進め方は社内AIチャットボットの費用相場で詳しく書いています。

④の連携も、費用の桁が変わる分かれ目です。資料を読むだけのRAGは、「この申請は今どの段階か」「在庫はいくつか」には答えられません。答えはシステムの中にあるからです。答えさせたいなら社内システムへの照会を作る必要があり、既存システムとのつなぎ込みの考え方は既存システムへのAI組み込みで解説しています。

PoCから本番に進むと増える費用|北海道の調達仕様から見る

本番運用で必要になるログイン管理・閲覧制限・利用ログとサーバー設備のイメージ

PoCで「使える」と分かったあと、本番では何にお金がかかるのか。それを具体的に示している公開資料が、北海道の「生成AIサービス(RAG)提供業務」の業務処理要領です。北海道は令和7年度に実証(PoC)を行い、令和8年度(サービス提供は2026年6月〜2027年3月)に全庁での本番運用に移しています(北海道 入札公告・関係書類)。本番で要件として並んだのは、PoCではほとんど必要なかったものばかりです。

本番で増える項目

北海道の要件

民間企業に置き換えると

利用者の管理

全職員約16,000人分のアカウント、同時接続300以上、CSVでの一括登録

社内IDでのログイン、人事異動の反映

記録

日時・ID・入力内容・利用量を記録した利用ログの保存と出力

監査や情報漏えい時の追跡

情報の守り

個人情報などの入力ブロック、入力内容をAIの学習に使わない、専用領域、接続元の制限、政府のクラウド安全評価制度(ISMAP)に登録されたクラウド、国内所在

情報システム部門のセキュリティ審査への対応

規模

1つのRAGに700件以上のファイル、全体で100GB以上

部署ごとのRAGを複数持つ

答えの信頼性

参照した資料名と箇所の表示、回答ごとの評価機能と精度向上の助言、資料の前処理・構造化の技術支援

答えの正しさの定期確認と改善

定着

研修2回以上(全員向け/各所属のリーダー向けに「RAGの構築方法」)、月1回以上の定例打ち合わせ、利用状況の分析

現場への展開と使われ方の確認

止まらない約束

稼働率95.0%、障害時は2開庁日以内に報告、平日9〜17時の問い合わせ窓口

保守契約の範囲

料金の形

定額。月2億トークンまでで、超えても追加費用なし

使うほど請求が増える形を避ける

北海道の案件の予定価格と落札額は、公表ページでは確認できませんでした。それでも、この一覧を見れば本番の見積もりがPoCの数倍になる理由は分かります。こうした項目が一度に加わるからです。PoCの見積もりしか出ていない段階で、上の項目のうちどれが自社の本番に必要かを開発会社と確認しておくと、本番の見積もりで驚かずに済みます。PoCと本番を分けて発注する契約の考え方は段階的な発注をご覧ください。

RAGを導入する3つの方法と費用の違い

デジタル庁Techブログ「行政実務用RAGの開発と府省庁向けの展開について」の公式画像

出典: デジタル庁 公式note(Techブログ)

RAGの導入方法は、大きく3つに分かれます。どれが正解かは、資料の量・閲覧制限の細かさ・社内システムとの連携の有無で決まります。

方法

初期費用

月額

期間

合う会社

合わない会社

①既製サービスに資料を読ませる

0〜50万円

3万〜20万円

1〜2週間

資料が規程やマニュアル中心で、閲覧制限が単純

部署別の閲覧制限が細かい、社内システムとつなぎたい

②クラウドの部品を組み合わせて作る

50万〜300万円

5万〜30万円

1〜3か月

資料の置き場所(SharePoint等)に合わせたい、1〜2部門から始めたい

数千人規模で厳密な権限管理と監査が要る

③一から作る

300万〜1,500万円以上

年間で構築費の20〜30%が目安

3〜12か月

複数の社内システムとの連携、業務の流れへの組み込みが必要

まだ何に使うか決まっていない

出典:初期費用・月額・期間はAQUA(2026年3月更新)の方式別相場、③の運用費はOptiMax・TWOSTONE&Sons・MoMoの公開値。

①の具体例として、ChatSenseの資料を読ませる機能は月98,000円(原稿用紙100万枚分まで)、サイオステクノロジーのSharePoint(Microsoftの社内ファイル共有)連携・閲覧権限の管理込みの構築サービスは初期260万円〜・月10万円〜・最短2営業日と公表しています。既製に近い形でも、閲覧制限まで含めると初期200万円台からになるということです。

②には、前述のBedrock Managed Knowledge Baseのように「検索の仕組みを丸ごと借りる」作り方も入ります。参考になるのがデジタル庁の例です。デジタル庁は2026年4月、行政向けAI基盤「源内」を無償公開し、その中にAWS上でRAGを作るひな形(商用利用可)を含めました。設定ファイル1つで約10分で新しいRAGの環境を作れ、資料の登録と調整は業務の担当者が主体、エンジニア数名で約30件のRAGを同時に運用しているとしています(デジタル庁「行政実務用RAG」、2026年7月)。エンジニアの関与を最初の立ち上げに限り、資料の更新を業務側に置く設計は、民間企業が運用費を抑えるうえでも参考になります。

どの方法を選んでも、資料の整備と答えの確認は発注側の仕事として残ります。 既製サービスで済ませるか、自社向けに作るかの判断基準はSaaSとカスタム開発の判断でも整理しています。

RAGを作らないほうがいいケースと、元が取れるかの目安

当社は受託開発会社ですが、次に当てはまる場合は、RAGを一から作ることをおすすめしません。

  1. 資料が少ない。 デジタル庁は「数百程度のQAや数万文字程度のマニュアルに則って回答させるだけなら」、一度に大量の文章を読める最新のAIを使えば「RAGなしでも十分実用的」としています(デジタル庁「源内における生成AIのデータ参照パターン」、2026年5月)。資料が少なければ、探す仕組みを作らず、資料ごとAIに渡せば足ります
  2. 資料そのものがない。 担当者の頭の中にしかない知識は、AIに読ませられません。資料を作るほうが先で、これはAIの発注では解決しません
  3. 社員全員が汎用のAIを使えれば足りる。 この場合は社内AIチャットボットの費用相場で比べている「全員に配る」選択肢が合います
  4. 答えさせたいのが「今の状態」だけ。 申請の進み具合や在庫はシステムの中にあるため、RAGではなく社内システムとの連携の話になります
  5. 対象業務にかかっている時間が小さい。 次の計算で判断してください

元が取れるかは「月に何時間減るか」で決まる

GXOが示す社員300名の見積例(PoC 100万円+本番600万円+運用 月約20万円)を、時給3,000円換算で考えます。

  • 運用費の月20万円を賄うだけで、月約67時間分の作業が減る必要があります(20万円÷3,000円)
  • 初期費用700万円を3年で回収するには、さらに月約19万円分、月約65時間が必要です(700万円÷36か月÷3,000円)
  • 合わせて、月130時間前後の削減が見込めなければ、3年では元が取れない計算です

仮に社員300名が、1人あたり月30分ずつ「資料を探す」「詳しい人に聞いて返事を待つ」時間を減らせれば、月150時間になります。一方で、デジタル庁の行政実務用RAGで確認された効果は、職員からの問い合わせ件数の10%程度の削減でした。問い合わせがゼロになるわけではない前提で、まず今、社内の問い合わせ対応と資料探しに月何時間使っているかを測ってから、発注額を決めてください。計算の手順はAI導入のROI試算で詳しく解説しています。

受託開発でRAGを導入する場合の費用(当社の価格)

受託開発でRAGを導入する場合の、当社の価格と公開相場です。

依頼の形

当社(税別)

公開相場

含まれるもの

小さく試す(PoC)

300万円〜

50万〜300万円

対象を1部門・1業務に絞った試作、合格ラインの文書化、実際の問い合わせから作ったテスト用の質問での実測、資料の整備量の見立て、本番の概算見積、運用体制案

足りない部分だけ作る(小規模改修)

30万円〜

資料が少なくRAGが不要な場合の、AIへの資料の組み込み。既製サービスへの資料取り込みや閲覧設定の追加

本番の仕組みを作る(本開発)

個別見積(PoC終了時に概算を提示)

300万〜1,000万円(連携込みで数千万円)

社内IDでのログイン、閲覧制限、利用ログ、社内システムとの連携、運用の立ち上げ

当社のPoC 300万円〜は、公開相場の上端です。これは隠しません。この金額には、開始前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格とするか」を文書で決め、終了時に本番へ進むかどうかを判定できる材料を揃えることが含まれます。前半で見たとおり、RAGの精度を左右するのは資料と探し方です。PoCの段階で資料の整備量を見立てずに安く済ませると、本番の見積もりが読めないまま次の判断を迫られます。

また、RAGが不要な案件には30万円〜の改修を提案します。 資料が数万文字程度なら、探す仕組みを作らずに資料ごとAIに渡すだけで足りるからです。対応範囲と進め方は受託開発サービスのページにまとめています。PoCの工程と費用配分はAIのPoC費用、受託開発全体の費用内訳はAI受託開発の費用相場もあわせてご覧ください。

実際にやった事例|医療機関のRAG PoC(約3か月)

守秘の関係で社名は出せませんが、当社が担当した案件の構造をお伝えします。

課題:蓄積されている文書や記録は多いのに、必要な情報を探すのに時間がかかっていました。

作ったもの:手元の資料をAIに読ませ、質問すると根拠となる箇所を示しながら答える仕組みです。いきなり全部門に展開せず、対象を1部門・1業務に絞ったPoC(300万円〜の価格帯)として進めました。期間の内訳は次のとおりです。

工程

期間

対象業務の絞り込みと合格ラインの設定

2週間

資料の受領と整形

3週間

試作と調整

5週間

現場での試用と判定

2週間

「資料の受領と整形」だけで全体の4分の1を占めています。本記事の前半で見た「費用の大半は資料の整備」という構造は、当社の案件でも同じです。

何がどう変わったか:開始前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格とするか」を文書で決めていたため、終了時には合格ラインに対する実測値、本開発の概算見積、本番移行時の運用体制案が揃い、拡大するかどうかを2週間で判断できました。 ここが曖昧な案件は、この判定だけで1〜2か月延びます。

このほか、インフラ企業では、社内文書を参照するだけでなく、必要に応じて別のシステムに照会して「今の状態」を取ってきたうえで答える仕組みを作っています。前述の5つの条件でいえば④にあたる案件で、承認や決裁そのものはAIに行わせず、人が判断するための情報を揃えるところまでにしています。

相談から本番稼働までの流れと期間

段階

期間の目安

発注側でやること

初回相談(無料)

1回

答えさせたい質問の例、資料の置き場所とおおよその量を伝える

進め方と概算の提示

1〜2週間

対象を1部門・1業務に絞る

稟議・契約

2週間〜2か月

決裁を取る(この間に資料の棚卸しを並行して進める)

小さく試す(PoC)

約3か月(上の事例)

合格ラインを決裁者と合意する、資料を提供する、試用に参加する

本番の構築

2〜4か月(大規模なら3〜12か月)

社内IDでのログイン、閲覧制限、情報システム部門の審査に対応する

運用

継続

資料の更新、使われ方の確認

相談から本番稼働までは、早くて半年前後です。最も遅れやすいのは資料の提供で、理由は技術ではなく「どれが最新版か社内で決まらない」「提供の承認が下りない」ことです。期間が延びる原因と対策はAI開発の期間で詳しく解説しています。

発注側に残る仕事も見ておいてください。横須賀市は、RAGには①AIに与える情報の事前の整理、②作成・更新時の答えの検証、③運用開始後の情報の更新という3つの手間が必要だとまとめ、「AIで仕事を楽にしたいのに、AIのための仕事が増える」と率直に書いています。特に③は、規程やマニュアルが変わったときに誰が差し替えるかを、部署単位で名前入りで決めておくことが大切です。ここが曖昧だと、半年後には古い規程で答えるAIになります。

相談の時点で要件が固まっている必要はありません。「社内の資料をAIに読ませたいが、何から決めればいいか分からない」という段階からでも、受託開発の無料相談で整理を始められます。要件が固まっていない段階での進め方は要件が固まっていない段階での開発相談もご覧ください。

よくある質問

Q1. PoCで合格ラインに届かなかったら、費用は無駄になりますか。

届かなかった理由が分かれば、無駄にはなりません。PoCの成果物として「どの質問に答えられなかったか」「その原因が資料・探し方・AIのどれにあるか」が切り分けられていれば、次の手(資料を整える/対象をさらに絞る/RAG以外の方法にする)が決まります。原因が資料側にあると分かれば、追加の開発費ではなく社内の資料整備に予算を回す判断もできます。逆に、合格ラインを決めずに始めたPoCは「惜しいが判断できない」で終わりがちです。契約前に、届かなかった場合に何が納品されるのかを書面で確認してください。PoCが止まる典型的な原因はAI開発の失敗パターンにまとめています。

Q2. AIの新しいモデルが出るたびに、作り直しが必要ですか。

作り方次第です。RAGは「資料を探す部分」と「答えを書くAI」が分かれているため、AIの差し替えは本来、設定の変更と、テスト用の質問での再採点で済みます。資料を探せる形に変換し直す場合も、利用料は1万ページで数百円程度です(作業時間は別途)。注意したいのは、AIの料金そのものも変わる点です。たとえばGoogleのGemini 3.8 Flashは、2027年1月1日以降は単価が2倍になると料金表に明記されています。複数のAIを差し替えられる作りになっているか、差し替えにかかる作業と費用はいくらかを、契約前に確認してください。

Q3. まずDifyなどのノーコードツールで自作して、うまくいかなければ外注する進め方はありですか。

ありです。資料が少なく質問が単純なら、ノーコードで足りることもあります(Difyの概要はDifyとは)。ただし横須賀市は、2024年時点でGPTsとDifyを試したところ、文書の形式に合った情報の取り出しができず、実務で使える精度が出なかったと報告しています(Difyはその後アップデートされています)。自作の時間を無駄にしないために、①実際の問い合わせから集めた質問と正解のリスト、②どの資料が最新版かの整理、の2つを残しておいてください。外注に切り替えたとき、この2つがあればPoCの「合格ラインの設定」と「資料の受領と整形」が短くなります。

Q4. 利用者や質問の数が増えると、毎月の費用はどのくらい増えますか。

AIとクラウドの利用料は質問数にほぼ比例しますが、増え方は小さいです。本記事の試算(社員300名・月15,000問)で質問が倍の月30,000問になっても、回答を作るAI(gpt-5.4-mini)は約2.2万円→約4.4万円、Bedrock Managed Knowledge Baseの検索料は1,000回あたり1ドルなので約2,300円増えるだけです。Azure AI Searchは台数単位の月額なので、容量や処理に余裕があるうちは変わりません。増えるのはむしろ人の側で、利用する部署が増えるほど、閲覧設定、部署ごとの資料の追加、問い合わせ対応が増えます。月額の運用費がどの規模まで同じ金額なのかを、契約時に確認してください。

Q5. AIに社内資料を追加で学習させる方法(ファインチューニング)と、どちらが安く済みますか。

規程やマニュアルのように改定がある資料を答えさせたいなら、RAGのほうが総額を抑えやすい構造です。RAGは資料を差し替えるだけで最新の内容に答えられ、AIを学習し直す必要がありません。学習させる方式は、改定のたびに学習をやり直す手間と費用が積み上がります。また、RAGは答えの根拠となる資料の箇所を示せるため、人が正しさを確かめやすいという利点もあります。まず目的が「資料に書いてあることを答えさせたい」のか、「特定の書き方や判断の型を身につけさせたい」のかを分けて考えてください。前者ならRAGから検討するのが順当です。

Q6. 補助金は使えますか。

自社向けに作る受託開発は、原則として対象外です。 デジタル化・AI導入補助金2026は、事務局に登録されたITツールの導入が対象で、個別に開発するシステムは対象になりません。一方、登録されている既製のサービスであれば対象になり得ます。公式サイトで公表されている1次締切は2026年9月29日(火)17:00、交付決定は2026年11月9日(予定)、事業実施と実績報告の期限は2027年4月30日17:00(予定)です(公式スケジュール、2026年9月19日確認)。2次締切以降の日程は本記事執筆時点で未発表のため、公式サイトで最新の情報を確認してください。補助金は実績報告のあとに交付される後払いなので、導入費用はいったん全額を自社で支払う前提で資金繰りを組む必要があります。詳しくはAI導入補助金の対象補助金の入金時期をご覧ください。

Q7. PoCと本番を、別の開発会社に頼むことはできますか。

できます。ただし、PoCの契約時に次の3点を押さえておかないと、本番で作り直しになります。①PoCで整えた資料データとAIへの指示(プロンプト)を引き渡してもらえるか、②テスト用の質問と採点結果が納品物に入っているか、③設計資料の権利がどちらに帰属するかです。北海道の調達でも、実証で作ったRAGのデータとプロンプトを本番に引き継いで初期構築する要件が入っていました。ここを作り直すと、費用の本体である資料の整備をもう一度払うことになるからです。本番で相見積もりを取る場合は、PoCの結果(合格ラインに対する実測値、資料の量と状態)を依頼書に書くと、各社の見積もりの幅が縮まります。依頼書の作り方は相見積もり用RFPのテンプレート、見積もりの読み方はAI開発の見積もり比較をご覧ください。

RAG導入の費用でお悩みの方へ

RAGを社内文書に導入する費用は、公開相場でPoC 50万〜300万円、本番の構築300万〜1,000万円(連携込みで数千万円)、運用月10万〜50万円です。AIとクラウドの利用料は社員300名規模でも月3万〜7万円程度で、費用の大半は資料の整備と答えの確認という人の作業にかかります。資料が数万文字程度なら、RAGを作らずに済むこともあります。

  • PoCの見積もりは取ったが、本番でいくらになるのか読めない
  • 社内の資料が整っておらず、どこから手を付けるべきか分からない
  • 各社の見積もりが数倍違い、何が含まれているのか判断できない
  • 資料の量からして、そもそもRAGを作る必要があるのか確かめたい

このいずれかに当てはまるなら、初回相談は無料です。当社の価格はPoC 300万円〜、小規模改修 30万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)で、医療機関・調剤薬局・インフラ企業での実績があります。要件が固まっていない段階からご相談いただけます。

ご相談の際は、①答えさせたい質問の例、②対象の資料のおおよその量(ファイル数やページ数)と置き場所、③部署ごとに見せてよい資料が違うかどうか、の3点をお聞かせください。RAGを作るべきか、資料ごとAIに渡せば足りるのか、既製サービスで十分なのかを、概算の費用とあわせてお伝えします。作らないほうがいいと判断した場合は、そう申し上げます。

RAG導入の費用・進め方の無料相談はこちら

関連記事:RAGとは社内AIチャットボットの費用相場AIのPoC費用AI開発の期間AI受託開発の費用相場

補助金の枠内で導入できる範囲を試算します

補助金前提で相談する

この記事の著者

AI革命

AI革命

編集部

AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。

経理・事務作業・開発を、AI革命にまとめて任せられます

ご相談は無料です。オンラインで完結します