ビジネス活用2026年10月更新

RAG導入の費用と見積もり方|文書整備・権限・回答評価まで含めたPoC・本番・運用の実額

公開日: 2026/09/18
更新日: 2026/10/10
RAG導入の費用と見積もり方|文書整備・権限・回答評価まで含めたPoC・本番・運用の実額

この記事のポイント

RAGを社内文書に導入する費用は公開相場でPoC 50万〜300万円、本番300万〜1,000万円、運用月10万〜50万円。差を生む文書整備・権限・回答評価の作業量と、見積もり前に作る3つの確認表を解説します。

RAGを社内文書に導入する費用は、開発会社の公開相場で小さく試す検証(PoC)が50万〜300万円、本番の構築が300万〜1,000万円(全社展開や社内システムとの連携が多い場合は数千万円)、運用が月10万〜50万円、期間はPoCが2週間〜3か月、本番の構築が2〜4か月です。このうちAIとクラウドの利用料は、社員300名規模の試算でも月3万〜7万円程度です。費用の大半は「資料を整える」「閲覧権限を守る」「答えが正しいかを確かめる」という人の作業に払うことになります。

RAG(検索拡張生成)とは、社内の規程・マニュアル・過去の問い合わせ記録などをAIに読ませて、答えと一緒に「どの資料のどこに書いてあるか」を示せるようにする仕組みです。仕組みそのものはRAGとはで解説しているため、本記事ではRAGで作ると決めた、または候補に挙がった会社が、PoC→本番→運用でいくら・何か月かかるか、自社の文書と権限の条件で見積もりがどう変わるかに絞ります。契約中のChatGPTやMicrosoft 365の標準の接続機能で社内検索を済ませられるかをまだ確かめていないなら、先に社内検索は標準連携で足りるかをご覧ください。社員全員にChatGPTなどを配るか、1つ作るかで迷っている段階なら、社内AIチャットボットの費用相場が合います。

当社は受託開発会社で、RAGの構築にも対応しています(PoC 300万円〜/既存システムの改修 100万円〜/本開発は個別見積、すべて税別。クラウドやAIの利用料などの実費は別)。ただし、資料の量によってはRAGを作らなくていい会社もあります。 その判断の目安も数字で書きます。本記事の金額は特記のない限り税別、ドル建ての料金は1ドル=153円(2026年9月上旬の水準)で換算しています。

RAG導入の費用は「PoC・本番・運用」の3段階で決まる|実額の一覧

PoC・本番・運用の3段階で費用が積み上がるRAG導入のイメージ

RAGの見積もりは、1つの金額で見るより3段階に分けて見るほうが比べやすくなります。開発会社8社が自社サイトで公開している相場(2025年11月〜2026年9月公開・更新分)をまとめると、次のとおりです。

段階

公開相場

期間の目安

この段階で決まること

小さく試す(PoC)

50万〜300万円(範囲を広げると500万円)

2週間〜3か月

合格ラインに届くか/資料の整備がどれだけ要るか/本番の概算

本番の構築

300万〜1,000万円(軽量なら300万〜500万円、全社・社内システム連携込みで1,500万〜5,000万円)

2〜4か月(一から作る大規模案件は3〜12か月)

社内IDでのログイン、閲覧制限、利用ログ、社内システムとの連携

運用

月10万〜50万円(上限側で月80万円。年間で構築費の20〜30%とする会社もある)

継続

答えの正しさの定期確認、資料の差し替え、利用者からの問い合わせ対応、改善

出典:GXO、ルートチーム、OptiMax、TWOSTONE&Sons、MoMo、AQUA、ニューラルオプト、riplaの各社公開値。第三者の統計ではなく、開発会社が示している相場です。

PoCの下限と本番の上限では100倍の開きがあります。この幅を生むのは、①資料の量と形式、②資料の重複と版違い、③閲覧制限、④社内システムとの連携、⑤どこまで正確なら使うかという合格ラインの5つで、本番ではこれに利用者の規模が加わります(後の章で1つずつ確認します)。1つの目安として、GXOが示す社員300名の見積例は、PoC 100万円+本番600万円+運用 月約20万円で、初年度の総額は約940万円です。

公的機関の実額:横浜市は税抜526万1,600円で契約

相場とは別に、金額が公開されている実例もあります。横浜市が2025年10月に入札を行った「RAG機能と高度モデルを備えた生成AIサービスの提供及び活用支援業務委託」は、落札額が税抜526万1,600円、もう1社の入札額は税抜850万円でした(横浜市 入札結果)。

ただし、これは一から作る開発ではなく、RAG機能付きのサービスの提供と、活用の支援を合わせた委託です。履行期間・利用者数・資料の量は、公開資料では確認できませんでした。「既製のサービスに支援を付けた形でも、数百万円規模になる」という物差しとしてお使いください。

社内文書のRAGは、どこに費用と時間がかかっているか

横須賀市 生成AI推進チームによるRAG実証結果報告のタイトル画像

出典: 横須賀市 公式「自治体AI活用マガジン」

発注前に知っておきたいのは、RAGの精度が出ない原因の大半は、AIではなく資料と探し方にあるということです。

キヤノンITソリューションズが社内で行った検証では、実際の社内問い合わせ228件にRAGで答えさせたところ、役に立った回答は約3分の1でした。役に立たなかった原因の内訳は次のとおりです(キヤノンITソリューションズ テクニカルレポート、2025年4月)。

役に立たなかった原因

割合

業務の言葉にすると

文書の不備・不足

46%

そもそも資料に書いていない、書き方が古い・曖昧

検索の精度

42%

資料はあるのに、該当する箇所を探し当てられなかった

生成AIの精度

12%

探し当てたのに、AIが正しくまとめられなかった

9割近くは「資料」と「探し方」の問題で、AIを高性能なものに替えて解決できるのは12%分だけです。たとえば「パソコンを修理に出してから戻るまでの期間」のような実務的な質問は、マニュアルに基本的な情報があっても答えられませんでした。

社内文書で実際に起きているのは、次のようなことです。

  • 同じ規程の旧版と新版が両方残っている。 どちらが正しいかは、AIには判断できません
  • 同じ内容が複数の資料に重複している。 横須賀市の実証では、似た文ばかりが上位に来て、必要な情報が埋もれました
  • スキャンしたPDFや、表・図が中心の資料が多い。 文字として読み取れる形に直す作業が要ります
  • 「前項」「次項」を参照し合う規程や法令がある。 デジタル庁は、一般的なRAGでは難しく独自の作り込みが必要だとしています
  • そもそも資料がなく、担当者の頭の中にしかない。 横須賀市は、文書が古い、文書がなく口伝のみというケースもあったと報告しています

横須賀市は、2024年12月から約4か月かけて章立てを組み直し、意味が通じる単位に資料を整え、重複した資料を一本化した結果、27問中24問に正しく答えられるようになりました。担当チームはこの経験を「傷んだ食材で、いくら高級なシェフがいても美味しい料理は作れない」と表現しています(横須賀市 生成AI推進チーム、2025年6月)。横浜市も、法令書籍約4,500ページと昭和46年以降の質疑応答記録約3,000件を読ませて回答精度約9割に達するまでに、資料の構造化や文字化けの修正などに相当な労力をかけたと述べています(NTT東日本の導入事例)。

つまり、RAGの予算は「どのAIを使うか」より「資料を整え、答えを確かめる作業にどれだけ人をかけるか」で決まります。

費用の中身|AIとクラウドの利用料は月数万円、残りは人の作業

OpenAI API 料金ページ(Pricing)の公式画像

出典: OpenAI Developers 公式サイト

見積もりのうち「AIとクラウドに払うお金」がいくらになるかを、2026年9月19日時点の各社の公式単価から計算しました。RAGで利用料がかかる部品は、大きく3つです。

部品

何をするか

公式単価からの試算

資料の下ごしらえ

資料を、AIが探せる形に変換する(初回と資料の更新時)

1万ページで約30〜310円(OpenAI・Googleの変換用AI)

検索の置き場所(Azure)

変換した資料を置き、質問に合う箇所を探す

Azure AI Search(東日本のデータセンター):Basic 月約1.5万円/Standard S1 月約5.0万円

検索の置き場所(AWS)

同上

Amazon Bedrock Managed Knowledge Base:資料10GB・月1万回の検索で月約9,200円

検索の置き場所(OpenAI)

同上

OpenAI File Search:資料10GBの保管で月約4,100円+検索1万回で約3,800円

回答を作るAI

探し当てた箇所を読んで答えを書く

1問あたり約0.4〜7.3円(下表)

資料の下ごしらえは、1ページをAIの利用料を数える単位(トークン)で約1,000と仮定した計算です。1万ページでも数百円以下で、費用の本体ではありません。

回答を作るAIの利用料は、読ませる量と答えの長さで決まります。1問あたり「探し当てた資料の抜粋を含めて約8,000トークンを読ませ、約800トークンで答える」と仮定すると、次のとおりです。

回答を作るAI(OpenAI、2026年9月時点の公式単価)

1問あたり

月15,000問(社員300名×1人月50問)

gpt-5.6-luna(低価格帯)

約0.4円

約5,900円

gpt-5.4-mini

約1.5円

約2.2万円

gpt-5.6-terra

約3.9円

約5.9万円

gpt-5.6-sol(上位)

約7.3円

約11万円

社員300名・月15,000問・資料10GBの会社で合計すると、

  • Azure AI Search(S1)+gpt-5.4-mini:月約7.2万円
  • Bedrock Managed Knowledge Base(10GB・月1.5万回で約1万円)+gpt-5.4-mini:月約3.2万円

です。Azure AI Searchは1台分を月730時間で換算した金額で、止まらないように複数台で構成すると台数分増えます。Bedrock Managed Knowledge Baseは、回答を作るAIの利用料が別にかかる前提で足しています。為替や単価の改定で金額は動きます(出典:Azure AI Search 価格、Amazon Bedrock 価格、OpenAI API 価格)。

一方、開発会社の運用費の相場は月10万〜50万円でした。利用料との差、つまり月数万〜40万円強は、人の作業への支払いです。中身は次のとおりです。

  • 答えの正しさの定期確認:実際の問い合わせから作ったテスト用の質問に答えさせ、正誤を採点する
  • 資料の差し替え:規程やマニュアルが変わるたびに、古い版を外して新しい版を取り込む
  • 問い合わせ対応と原因調査:答えられなかった質問が、資料・探し方・AIのどこで詰まったかを調べる
  • 改善の繰り返し:DeNAの社内ITヘルプデスクでは、検索結果の並べ替えを入れて正答率が69%→74%、質問の言い換えを入れて76%→79%と、1つの改善で上がるのは数ポイント単位でした。最終的に50%台から80%超まで上げていますが、それは地道な繰り返しの積み重ねです(DeNA Engineering、2025年11月)

見積もりを比べるときは、クラウド代の安さで比べても意味がありません。 比べるべきは、月額に上の作業がどこまで含まれているかです。運用費の中身はシステム保守運用費の相場で詳しく解説しています。

2026年の変化:検索の仕組みは「借りる」ものになった

2026年6月17日、Amazon Bedrock Managed Knowledge Baseが正式に提供開始されました。資料の読み取り、下ごしらえ、検索結果の並べ替えまでが、資料1GBあたり月5ドル+検索1,000回あたり1ドルの従量課金に含まれます。公式の料金例では、資料50GB・月10万回の検索で月350ドル(約5.4万円)です。Azure AI Searchにも、使った分だけ払う方式(Serverless。2026年9月時点では試験提供の段階)が加わっています。

これで、本番構築費のうち「検索の仕組みを一から作り、運用する」部分は圧縮しやすくなりました。DeNAも、一から作った仕組みの構築・運用に多大な工数がかかったことから、AWSの既製の仕組み(Bedrock Knowledge Bases)に移し、精度の改善に人を集中させています(DeNA Engineering、2025年11月)。ただし、資料の整備、答えの確認、閲覧制限の設計は、借りる仕組みにしても減りません。 数年前のAIの料金や構成を前提にした見積もりが出てきたら、検索の仕組みを作る部分が割高になっていないか確認してください。

費用が膨らむ5つの条件|見積もり前に自社で確認できること

見積もりの幅を決める5つの条件は、開発会社に相談する前に、社内で答えを用意できます。

条件

見積もり前に自社で確認すること

費用への影響

①資料の量と形式

対象の資料は何ファイル・何ページか。スキャンPDF、表や図が中心の資料、紙の資料はどれくらいあるか

資料の整備が必要な場合、追加で200万〜1,000万円という公開相場もある(TWOSTONE&Sons)

②重複と版違い

同じ規程の旧版が残っていないか。最新版を決められるのは誰か

一本化の作業が増える。最新版の判断は発注側にしかできない

③閲覧制限

部署や役職で、見せてよい資料が違うか

資料ごとの閲覧設定と、その確認の作業が乗る

④社内システムとの連携

申請の進み具合、在庫、登録情報など「今の状態」も答えさせたいか

連携込みの本番は2,000万〜5,000万円という公開相場(TWOSTONE&Sons)

⑤合格ライン

何問中何問に正しく答えれば使うか。間違えたときの影響はどれくらいか

合格ラインが高いほど、改善の繰り返し回数が増える

特に③の閲覧制限は、見積書から抜けやすい項目です。生成AIを使ったアプリの主要なセキュリティリスクをまとめたOWASPの「LLM Top 10」(2025年版)は、RAG特有のリスクとして「権限設定の不備で、閲覧権限のない人がAI経由で機密資料にたどり着く」「部署間で検索結果が混ざる」「資料に悪意ある内容を混ぜられる」を挙げています(OWASP LLM08:2025)。対策は、資料単位の閲覧制御、取り込む資料の確認、検索ログの保存です。この3点が見積もりに含まれているかを必ず確認してください。閲覧権限の整理の進め方は社内AIチャットボットの費用相場で詳しく書いています。

④の連携は、費用の桁が変わる分かれ目です。資料を読むだけのRAGは、「この申請は今どの段階か」「在庫はいくつか」には答えられません。答えはシステムの中にあるからです。答えさせたいなら社内システムへの照会を作る必要があり、既存システムとのつなぎ込みの考え方は既存システムへのAI組み込みで解説しています。

見積もり前に作る3つの確認表|文書棚卸し・権限・評価用質問

上の5つの条件を、開発会社が見積もりに使える形にまとめたのが、次の3つの表です。どれも社内の担当者が作れます。ChatGPTやClaudeなどの生成AIに、ファイル一覧から表の下書きを作らせたり、問い合わせ記録から質問を拾わせたりしてもかまいません。3つの表を添えて見積もりを頼むと、各社の前提がそろい、金額の差を比べやすくなります。

①文書棚卸し表|検索したい文書と利用者を決める

最初に決めるのは「どの文書を、誰に検索させるか」です。全社の共有フォルダをまとめて読ませる前提で見積もりを取ると、対象が決まらないまま整備の作業が膨らみます。文書群ごとに1行ずつ、次の項目を埋めてください。

項目

書く内容

見積もりへの影響

文書群と置き場所

例:就業規則・経費規程(SharePointの総務サイト)

置き場所ごとに取り込みの仕組みが要る。置き場所が増えるほど作業が増える

量

ファイル数とおおよそのページ数

数万文字程度なら、RAGを作らずに済むこともある(後述)

形式

文字を選べるPDF・Word/スキャンPDF/表や図が中心の資料/Excel

スキャンや表・図が多いと、文字に直す作業とその確認が増える

版の管理

旧版が同じ場所に残っているか。最新版を決める担当者は誰か

旧版を外すルールを作る作業が増える。どれが最新版かは社内でしか決められない

更新の頻度と担当

月に何回変わるか。差し替えるのは誰か

自動で取り込み直すか、手作業で差し替えるか。運用費の大きさを左右する

見てよい人

全社員/特定の部署/役職者だけ

次の権限表に引き継ぐ

利用者と場面

誰が、どんな場面で検索するか(例:新任の管理職が、部下の休暇申請に答える前に)

評価用の質問の作り方と合格ラインを決める

説明用の記入項目です。実際の項目は、社内の文書と体制に合わせて増減してください。

②権限表|権限をまたがせない条件

RAGで最も事故につながりやすいのは、本来は見られない人に、AIが答えの形で機密資料の中身を見せてしまうことです(前述のOWASP LLM08:2025)。対策の基本は、元の置き場所の閲覧権限を、検索の段階で引き継ぐことです。答えを作ったあとで隠すのでは間に合いません。

引き継ぎ方は、使う仕組みで変わります。Microsoftの公式資料では、Azure AI Searchで文書ごとの閲覧を制御する方法として、利用者やグループのIDを文字列で照合する「セキュリティフィルター」(一般提供)と、SharePointやAzure Data Lake Storage Gen2の権限情報をそのまま取り込む方法(プレビュー)などを挙げています。権限情報を取り込む方法では、元の場所で権限を変えても、索引に同期されるまでは検索結果に反映されません。 SharePointでは、サイトやフォルダから引き継いだ権限の変更は、明示的に同期し直す必要があるとしています(Microsoft Learn「Document-level access control in Azure AI Search」、2026年10月10日確認)。Amazon Bedrock Knowledge Basesについては、文書に部署や役職などの属性を付け、検索のときにその属性で絞り込む方法をAWSが紹介しています(AWS Machine Learning Blog)。

見積もりで差が出るのは、次の確認がどこまで作業に含まれているかです。

確認すること

見積書・提案書で確かめる点

権限の元はどこか

元の置き場所(SharePoint等)の権限を引き継ぐのか、RAG側で別に設定するのか。別に設定するなら、誰が保守するのか

権限の変更がいつ反映されるか

異動や退職のあと、どのくらいで検索結果に反映されるか。同期の頻度と、急いで外すときの手順

分けた断片にも権限が付くか

文書を細かく分けて索引に入れるとき、分けた断片それぞれに権限の情報が付くか

根拠の表示

答えに付ける資料名・箇所のリンクが、権限のない人に資料名だけを見せてしまわないか

権限の試験

権限の違う試験用アカウントで、見えてはいけない文書が答えや根拠に出ないことを確かめる試験が、作業に入っているか

記録

誰が何を質問し、どの文書を根拠にしたかを記録するか。保存期間はどれくらいか

部署や役職で見せる資料が変わらない会社なら、この表はほとんど空になり、その分だけ見積もりは小さくなります。逆に、人事・経営・顧客の情報など見せる相手を絞る資料が混ざるなら、最初のPoCから権限の試験を入れておくと、本番で作り直さずに済みます。

③評価用質問セット|回答の評価方法を先に決める

「精度が高い」「使える」という評価は、質問の選び方で大きく変わります。発注前に、自社の実際の問い合わせから評価用の質問セットを作っておくと、PoCの合格ラインがはっきりし、本番に進むか、改善で何が良くなったかを同じ物差しで測れます。前述のキヤノンITソリューションズは社内問い合わせ228件、横須賀市は27問で答えの正しさを確かめていました。

質問には、少なくとも次の5種類を混ぜてください。

種類

例(説明用)

正しい振る舞い

普通の質問

「出張の日当はいくらか」

正しい答えと、根拠の資料名・箇所を示す

旧版と新版がある質問

「改定で金額が変わった手当はいくらか」

新版の内容で答え、旧版を根拠にしない

権限で答えてはいけない質問

一般社員のアカウントで「役員報酬の規程」を聞く

中身を答えず、資料名も出さない

資料に答えがない質問

「パソコンを修理に出すと何日で戻るか」(どの資料にも書いていない場合)

推測で答えず、「資料に記載がない」と返す

今の状態を聞く質問

「私の申請は今どこで止まっているか」

RAGでは答えられないと返す(答えさせるなら社内システムとの連携が必要)

1問ごとに「質問」「正しい答え」「根拠の資料と箇所」「質問する人の権限」「合格の条件」を表にしておきましょう。採点は、答えの正しさ、根拠の表示が合っているか、権限外の情報を出していないか、答えがないときに「記載がない」と返せたか、の4つに分けて数えます。権限外の情報は、1件でも出たら不合格とするのが現実的です。正答率は平均で見られても、漏れた1件は平均では埋め合わせられないからです。

この質問セットは、PoCの成果物として開発会社から引き渡してもらい、本番での改善や、AIのモデルを替えるときの再採点にも使います(よくある質問のQ2・Q7)。

3つの表から、見積もりのどこが増えるか

確認表の結果

見積もりで増える作業

置き場所が複数あり、スキャンPDFや表が多い

置き場所ごとの取り込みの仕組み、文字に直す作業とその確認

旧版が混ざり、最新版を決める担当がいない

版の整理(社内の作業)と、旧版を外すルールの実装

部署・役職で見せる資料が違う

権限の引き継ぎ、同期の設計、権限の試験、記録

資料が月に何度も変わる

自動で取り込み直す仕組み、または差し替えの運用(運用費に反映)

「今の状態」を聞く質問が多い

社内システムとの連携(RAGとは別の開発)

合格ラインが厳しい(権限外の情報は1件でも不合格など)

評価と改善を繰り返す回数

一方で、社内で生成AIを使って進められる部分も多くあります。ファイル一覧からの棚卸し表の下書き、重複や旧版の候補の洗い出し、問い合わせ記録からの質問の抜き出しと正解案の下書きは、担当者がAIを使って進めてかまいません。開発会社に頼んだほうがよいのは、実際の権限情報を引き継ぐ仕組みを作って試験すること、根拠の表示と記録を本番の運用に合わせて作ること、評価を何度でも同じ条件で実行できる形にし、変更の責任を持つことです。

PoCから本番に進むと増える費用|北海道の調達仕様から見る

本番運用で必要になるログイン管理・閲覧制限・利用ログとサーバー設備のイメージ

PoCで「使える」と分かったあと、本番で何にお金がかかるのかを具体的に示している公開資料が、北海道の「生成AIサービス(RAG)提供業務」の業務処理要領です。北海道は令和7年度に実証(PoC)を行い、令和8年度(サービス提供は2026年6月〜2027年3月)に全庁での本番運用に移しています(北海道 入札公告・関係書類)。本番で要件として並んだのは、PoCではほとんど必要なかったものばかりです。

本番で増える項目

北海道の要件

民間企業に置き換えると

利用者の管理

全職員約16,000人分のアカウント、同時接続300以上、CSVでの一括登録

社内IDでのログイン、人事異動の反映

記録

日時・ID・入力内容・利用量を記録した利用ログの保存と出力

監査や情報漏えい時の追跡

情報の保護

個人情報などの入力ブロック、入力内容をAIの学習に使わない、専用領域、接続元の制限、政府のクラウド安全評価制度(ISMAP)に登録されたクラウド、国内所在

情報システム部門のセキュリティ審査への対応

規模

1つのRAGに700件以上のファイル、全体で100GB以上

部署ごとのRAGを複数持つ

答えの信頼性

参照した資料名と箇所の表示、回答ごとの評価機能と精度向上の助言、資料の前処理・構造化の技術支援

答えの正しさの定期確認と改善

定着

研修2回以上(全員向け/各所属のリーダー向けに「RAGの構築方法」)、月1回以上の定例打ち合わせ、利用状況の分析

現場への展開と使われ方の確認

稼働と障害対応

稼働率95.0%、障害時は2開庁日以内に報告、平日9〜17時の問い合わせ窓口

保守契約の範囲

料金の形

定額。月2億トークンまでで、超えても追加費用なし

使うほど請求が増える形を避ける

北海道の案件の予定価格と落札額は、公表ページでは確認できませんでした。それでも、この一覧を見れば本番の見積もりがPoCの数倍になる理由は分かります。こうした項目が一度に加わるからです。PoCの見積もりしか出ていない段階で、上の項目のうちどれが自社の本番に必要かを開発会社と確認しておくと、本番の見積もりで驚かずに済みます。PoCと本番を分けて発注する契約の考え方は段階的な発注をご覧ください。

RAGを導入する3つの方法と費用の違い

デジタル庁Techブログ「行政実務用RAGの開発と府省庁向けの展開について」の公式画像

出典: デジタル庁 公式note(Techブログ)

RAGの導入方法は、大きく3つに分かれます。どれが正解かは、資料の量・閲覧制限の細かさ・社内システムとの連携の有無で決まります。ChatGPTやMicrosoft 365の標準の接続機能で社内文書を検索させる方法は①に近い選択肢で、標準機能で足りるか、追加の開発が要るかの見分け方は社内検索は標準連携で足りるかで比べました。

方法

初期費用

月額

期間

合う会社

合わない会社

①既製サービスに資料を読ませる

0〜50万円

3万〜20万円

1〜2週間

資料が規程やマニュアル中心で、閲覧制限が単純

部署別の閲覧制限が細かい、社内システムとつなぎたい

②クラウドの部品を組み合わせて作る

50万〜300万円

5万〜30万円

1〜3か月

資料の置き場所(SharePoint等)に合わせたい、1〜2部門から始めたい

数千人規模で厳密な権限管理と監査が要る

③一から作る

300万〜1,500万円以上

年間で構築費の20〜30%が目安

3〜12か月

複数の社内システムとの連携、業務の流れへの組み込みが必要

まだ何に使うか決まっていない

出典:初期費用・月額・期間はAQUA(2026年3月更新)の方式別相場、③の運用費はOptiMax・TWOSTONE&Sons・MoMoの公開値。

①の具体例として、ChatSenseの資料を読ませる機能は月98,000円(原稿用紙100万枚分まで)、サイオステクノロジーのSharePoint(Microsoftの社内ファイル共有)連携・閲覧権限の管理込みの構築サービスは初期260万円〜・月10万円〜・最短2営業日と公表しています。既製に近い形でも、閲覧制限まで含めると初期200万円台からになります。

②には、前述のBedrock Managed Knowledge Baseのように「検索の仕組みを丸ごと借りる」作り方も入ります。参考になるのがデジタル庁の例です。デジタル庁は2026年4月、行政向けAI基盤「源内」を無償公開し、その中にAWS上でRAGを作るひな形(商用利用可)を含めました。設定ファイル1つで約10分で新しいRAGの環境を作れ、資料の登録と調整は業務の担当者が主体、エンジニア数名で約30件のRAGを同時に運用しているとしています(デジタル庁「行政実務用RAG」、2026年7月)。エンジニアの関与を最初の立ち上げに限り、資料の更新を業務側に置く設計は、民間企業が運用費を抑えるうえでも参考になります。

どの方法を選んでも、資料の整備と答えの確認は発注側の仕事として残ります。 既製サービスで済ませるか、自社向けに作るかの判断基準はSaaSとカスタム開発の判断でも整理しています。

RAGを作らないほうがいいケースと、元が取れるかの目安

当社は受託開発会社ですが、次に当てはまる場合は、RAGを一から作ることをおすすめしません。

  1. 資料が少ない。 デジタル庁は「数百程度のQAや数万文字程度のマニュアルに則って回答させるだけなら」、一度に大量の文章を読める最新のAIを使えば「RAGなしでも十分実用的」としています(デジタル庁「源内における生成AIのデータ参照パターン」、2026年5月)。資料が少なければ、探す仕組みを作らず、資料ごとAIに渡せば足ります
  2. 資料そのものがない。 担当者の頭の中にしかない知識は、AIに読ませられません。資料を作るほうが先で、これはAIの発注では解決しません
  3. 社員全員が汎用のAIを使えれば足りる。 この場合は社内AIチャットボットの費用相場で比べている「全員に配る」選択肢が合います。契約中のサービスの標準連携で社内文書まで検索できるかは、社内検索は標準連携で足りるかで確かめられます
  4. 答えさせたいのが「今の状態」だけ。 申請の進み具合や在庫はシステムの中にあるため、RAGではなく社内システムとの連携の話になります
  5. 対象業務にかかっている時間が小さい。 次の計算で判断してください

元が取れるかは「月に何時間減るか」で決まる

GXOが示す社員300名の見積例(PoC 100万円+本番600万円+運用 月約20万円)を、時給3,000円換算で考えます。

  • 運用費の月20万円を賄うだけで、月約67時間分の作業が減る必要があります(20万円÷3,000円)
  • 初期費用700万円を3年で回収するには、さらに月約19万円分、月約65時間が必要です(700万円÷36か月÷3,000円)
  • 合わせて、月130時間前後の削減が見込めなければ、3年では元が取れない計算です

仮に社員300名が、1人あたり月30分ずつ「資料を探す」「詳しい人に聞いて返事を待つ」時間を減らせれば、月150時間になります。一方で、デジタル庁の行政実務用RAGで確認された効果は、職員からの問い合わせ件数の10%程度の削減でした。問い合わせがゼロになるわけではない前提で、まず今、社内の問い合わせ対応と資料探しに月何時間使っているかを測ってから、発注額を決めてください。計算の手順はAI導入のROI試算で詳しく解説しています。

受託開発でRAGを導入する場合の費用(当社の価格)

受託開発でRAGを導入する場合の、当社の価格と公開相場です。

依頼の形

当社(税別)

公開相場

相談で決める成果物の例

小さく試す(PoC)

300万円〜

50万〜300万円

対象を1部門・1業務に絞った試作、文書棚卸し表・権限表・評価用質問セット、合格ラインの文書化と実測、資料の整備量の見立て、本番の概算見積、運用体制案

足りない部分だけ作る(既存システムの改修)

100万円〜

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資料が少なくRAGが不要な場合の、今あるシステムへのAI機能や画面の追加、既製サービスとのデータ連携

本番の仕組みを作る(本開発)

個別見積(PoC終了時に概算を提示)

300万〜1,000万円(連携込みで数千万円)

社内IDでのログイン、閲覧権限の引き継ぎと試験、利用ログ、社内システムとの連携、運用の立ち上げ

当社のPoC 300万円〜は、公開相場の上端です。これは隠しません。当社でPoCを行う場合は、開始前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格とするか」を評価用質問セットとして決め、終了時に本番へ進むかどうかを判定できる材料を揃えることを提案します。成果物の範囲は、相談のうえで見積もりに書きます。前半で見たとおり、RAGの精度を左右するのは資料と探し方です。PoCの段階で資料の整備量を見立てずに安く済ませると、本番の見積もりが読めないまま次の判断を迫られます。

また、RAGが不要な案件には、既製サービスや標準の接続機能で済ませる方法か、100万円〜の既存システムの改修を提案します。 資料が数万文字程度なら、探す仕組みを作らずに資料ごとAIに渡すだけで足りるからです。文書と権限の条件から依頼の範囲を決めたい場合は、文書と権限に合わせた導入範囲を相談するからご連絡ください。PoCの工程と費用配分はAIのPoC費用、受託開発全体の費用内訳はAI受託開発の費用相場もあわせてご覧ください。

説明用:1部門に絞ったPoCの工程と成果物の例

以下は、社内文書のRAGを1部門・1業務に絞って試す場合の説明用の工程例です。特定の案件の実績ではありません。期間は、公開相場のPoC期間(2週間〜3か月)の中で、資料の整形に時間がかかる場合を想定しています。

工程

期間の例

終わったときに手元に残るもの

対象業務の絞り込みと合格ラインの設定

2週間

文書棚卸し表、権限表、評価用質問セットと合格の条件

資料の受領と整形

3週間

取り込んだ文書の一覧、外した旧版とその理由

試作と調整

5週間

試作の仕組み、評価用質問での採点結果(改善のたびに記録)

現場での試用と判定

2週間

合格ラインに対する実測値、答えられなかった質問の原因(資料・探し方・AIのどれか)、本番の概算見積、運用体制案

この例では「資料の受領と整形」が全体の4分の1を占めます。前半で見た「精度が出ない原因の大半は資料と探し方」という公開事例の傾向を、工程に置き直したものです。最後の判定に使う材料は、最初の2週間で決めた評価用質問セットと合格の条件から生まれます。ここを決めずに始めると、試用が終わっても本番に進むかどうかを判断できません。

なお、当社が受託開発サービスのページで公開している実績には、薬局の複数店舗・数千人分の記録を管理し、権限と確認の工程を設けた案件があります。RAGの事例ではありませんが、利用者ごとに見られる範囲を分ける設計と、その試験は、社内文書のRAGでも同じように必要になります。

相談から本番稼働までの流れと期間

段階

期間の目安

発注側でやること

初回相談(無料・30分・オンライン)

30分

答えさせたい質問の例、資料の置き場所とおおよその量、部署ごとに見せる資料が違うかを伝える(秘密情報や実際の資料は送らない)

相談メモの受け取り

相談のあと

依頼範囲の候補・進め方・費用の目安を確認し、対象を1部門・1業務に絞る。3つの確認表を作り始める

稟議・契約

2週間〜2か月

決裁を取る(この間に資料の棚卸しを並行して進める)

小さく試す(PoC)

2週間〜3か月(公開相場)

合格ラインを決裁者と合意する、資料を提供する、試用に参加する

本番の構築

2〜4か月(大規模なら3〜12か月)

社内IDでのログイン、閲覧制限、情報システム部門の審査に対応する

運用

継続

資料の更新、使われ方の確認

上の目安を足すと、相談から本番稼働までは短くても3か月以上かかり、規模が大きいと1年を超えます。最も遅れやすいのは資料の提供で、理由は技術ではなく「どれが最新版か社内で決まらない」「提供の承認が下りない」ことです。期間が延びる原因と対策はAI開発の期間で詳しく解説しています。

発注側に残る仕事も見ておいてください。横須賀市は、RAGには①AIに与える情報の事前の整理、②作成・更新時の答えの検証、③運用開始後の情報の更新という3つの手間が必要だとまとめ、「AIで仕事を楽にしたいのに、AIのための仕事が増える」と率直に書いています。特に③は、規程やマニュアルが変わったときに誰が差し替えるかを、部署単位で名前入りで決めておくことが大切です。ここが曖昧だと、半年後には古い規程で答えるAIになります。

相談の時点で要件が固まっている必要はありません。「社内の資料をAIに読ませたいが、何から決めればいいか分からない」という段階からでも、文書と権限に合わせた導入範囲を相談するから整理を始められます。初回相談は無料・30分(オンライン、Google Meet)で、相談後に依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。要件が固まっていない段階での進め方は要件が固まっていない段階での開発相談もご覧ください。

よくある質問

Q1. PoCで合格ラインに届かなかったら、費用は無駄になりますか。

届かなかった理由が分かれば、無駄にはなりません。PoCの成果物として「どの質問に答えられなかったか」「その原因が資料・探し方・AIのどれにあるか」が切り分けられていれば、次の手(資料を整える/対象をさらに絞る/RAG以外の方法にする)が決まります。原因が資料側にあると分かれば、追加の開発費ではなく社内の資料整備に予算を回す判断もできます。逆に、合格ラインを決めずに始めたPoCは「惜しいが判断できない」で終わりがちです。契約前に、届かなかった場合に何が納品されるのかを書面で確認してください。PoCが止まる典型的な原因はAI開発の失敗パターンにまとめています。

Q2. AIの新しいモデルが出るたびに、作り直しが必要ですか。

作り方次第です。RAGは「資料を探す部分」と「答えを書くAI」が分かれているため、AIの差し替えは本来、設定の変更と、テスト用の質問での再採点で済みます。資料を探せる形に変換し直す場合も、利用料は1万ページで数百円程度です(作業時間は別途)。AIの料金そのものも変わる点には注意が必要です。たとえばGoogleのGemini 3.8 Flashは、2027年1月1日以降は単価が2倍になると料金表に明記されています。複数のAIを差し替えられる作りになっているか、差し替えにかかる作業と費用はいくらかを、契約前に確認してください。

Q3. まずDifyなどのノーコードツールで自作して、うまくいかなければ外注する進め方はありですか。

ありです。資料が少なく質問が単純なら、ノーコードで足りることもあります(Difyの概要はDifyとは)。ただし横須賀市は、2024年時点でGPTsとDifyを試したところ、文書の形式に合った情報の取り出しができず、実務で使える精度が出なかったと報告しています(Difyはその後アップデートされています)。自作の時間を無駄にしないために、①実際の問い合わせから集めた質問と正解のリスト、②どの資料が最新版かの整理、の2つを残しておいてください。外注に切り替えたとき、この2つがあればPoCの「合格ラインの設定」と「資料の受領と整形」が短くなります。

Q4. 利用者や質問の数が増えると、毎月の費用はどのくらい増えますか。

AIとクラウドの利用料は質問数にほぼ比例しますが、増え方は小さいです。本記事の試算(社員300名・月15,000問)で質問が倍の月30,000問になっても、回答を作るAI(gpt-5.4-mini)は約2.2万円→約4.4万円、Bedrock Managed Knowledge Baseの検索料は1,000回あたり1ドルなので約2,300円増えるだけです。Azure AI Searchは台数単位の月額なので、容量や処理に余裕があるうちは変わりません。増えるのはむしろ人の側で、利用する部署が増えるほど、閲覧設定、部署ごとの資料の追加、問い合わせ対応が増えます。月額の運用費がどの規模まで同じ金額なのかを、契約時に確認してください。

Q5. AIに社内資料を追加で学習させる方法(ファインチューニング)と、どちらが安く済みますか。

規程やマニュアルのように改定がある資料を答えさせたいなら、RAGのほうが総額を抑えやすい構造です。RAGは資料を差し替えるだけで最新の内容に答えられ、AIを学習し直す必要がありません。学習させる方式は、改定のたびに学習をやり直す手間と費用が積み上がります。また、RAGは答えの根拠となる資料の箇所を示せるため、人が正しさを確かめやすいという利点もあります。まず目的が「資料に書いてあることを答えさせたい」のか、「特定の書き方や判断の型を身につけさせたい」のかを分けて考えてください。前者ならRAGから検討するのが順当です。

Q6. 補助金は使えますか。

自社向けに作る受託開発は、原則として対象外です。 デジタル化・AI導入補助金2026は、事務局に登録されたITツールの導入が対象で、個別に開発するシステムは対象になりません。一方、登録されている既製のサービスであれば対象になり得ます。公式スケジュールでは、通常枠の締切が2026年10月30日(金)17:00、交付決定が2026年12月10日(予定)、事業実施と実績報告の期限が2027年5月31日17:00(予定)と公表されています(公式スケジュール、2026年10月10日確認)。公式サイトは確定した回の日程だけを公表しているため、申請の前に最新の情報を確認してください。補助金は実績報告のあとに交付される後払いなので、導入費用はいったん全額を自社で支払う前提で資金繰りを組む必要があります。詳しくはAI導入補助金の対象と補助金の入金時期をご覧ください。

Q7. PoCと本番を、別の開発会社に頼むことはできますか。

できます。ただし、PoCの契約時に次の3点を押さえておかないと、本番で作り直しになります。①PoCで整えた資料データとAIへの指示(プロンプト)を引き渡してもらえるか、②テスト用の質問と採点結果が納品物に入っているか、③設計資料の権利がどちらに帰属するかです。北海道の調達でも、実証で作ったRAGのデータとプロンプトを本番に引き継いで初期構築する要件が入っていました。ここを作り直すと、費用の本体である資料の整備をもう一度払うことになるからです。本番で相見積もりを取る場合は、PoCの結果(合格ラインに対する実測値、資料の量と状態)を依頼書に書くと、各社の見積もりの幅が縮まります。依頼書の作り方は相見積もり用RFPのテンプレート、見積もりの読み方はAI開発の見積もり比較をご覧ください。

RAG導入の費用でお悩みの方へ

RAGを社内文書に導入する費用は、公開相場でPoC 50万〜300万円、本番の構築300万〜1,000万円(連携込みで数千万円)、運用月10万〜50万円です。AIとクラウドの利用料は社員300名規模の試算で月3万〜7万円程度で、費用の大半は資料の整備、閲覧権限の管理、答えの確認という人の作業にかかります。見積もりの幅は、文書の形式と更新、権限、回答の評価の条件で決まります。資料が数万文字程度なら、RAGを作らずに済むこともあります。

  • PoCの見積もりは取ったが、本番でいくらになるのか読めない
  • 社内の資料が整っておらず、どこから手を付けるべきか分からない
  • 各社の見積もりが数倍違い、何が含まれているのか判断できない
  • 部署ごとに見せる資料が違い、権限をどう守るか決めきれていない
  • 資料の量からして、そもそもRAGを作る必要があるのか確かめたい

このいずれかに当てはまるなら、初回相談(無料・30分・オンライン)でご相談ください。要件が決まっていなくても大丈夫です。当社の価格はPoC 300万円〜、既存システムの改修 100万円〜、本開発は個別見積(すべて税別、クラウドなどの実費は別)です。

ご相談の際は、①答えさせたい質問の例、②対象の資料のおおよその量(ファイル数やページ数)と置き場所、③部署ごとに見せてよい資料が違うかどうか、の3点をお聞かせください(初回の時点では、秘密情報や実際の資料は送らないでください)。自社でAIを使って進める部分と任せる部分を一緒に切り分け、RAGを作るべきか、資料ごとAIに渡せば足りるのか、標準の接続機能や既製サービスで十分なのかを話し合います。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。作らないほうがいいと判断した場合は、そう申し上げます。

▶ 文書と権限に合わせた導入範囲を相談する

関連記事:RAGとは/社内検索は標準連携で足りるか/社内AIチャットボットの費用相場/AIのPoC費用/AI開発の期間/AI受託開発の費用相場

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この記事の著者

AI革命

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編集部

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