ビジネス活用2026年9月更新

社内AIチャットボットの費用相場|ノーコード・RAG・フルスクラッチを5年総額で比較【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/18
社内AIチャットボットの費用相場|ノーコード・RAG・フルスクラッチを5年総額で比較【2026年9月最新】

この記事のポイント

社内AIチャットボットの費用は既製サービスで月2万〜5万円、自社専用に作ると初期260万〜1,000万円+月10万〜50万円。5つの作り方を社員数別の5年総額で比べ、見積もりに出にくい費用と作らないほうがいい会社も解説します。

社内AIチャットボットの費用は、既製の社内向けサービスなら月2万〜5万円程度、社内の資料をAIに読ませて自社専用に作るなら初期260万〜1,000万円+月10万〜50万円、ChatGPTやCopilotを社員全員に配るなら1人あたり月3,000円前後(社員300名で5年約5,500万円)です。どれが安いかは「社員数」と「社内の質問に答えさせることだけが目的か」の2点で決まり、社員100名前後を境に、全員に配るより1つ作って全員で使うほうが5年総額で安くなるケースが出てきます。

この記事では、社内AIチャットボットの作り方を「既製サービスを契約する」「汎用AIを全員に配る」「ノーコードツールで自作する」「社内の資料を読ませて自社専用に作る(RAG構築)」「フルスクラッチで大規模に作る」の5つに分け、初期費用・月額・5年総額を同じ表で比べます。あわせて、見積書に載りにくい「資料を整える費用」「答えの正しさを確かめる費用」「見せてはいけない資料を隠す費用」も数字で示します。

当社も受託開発で社内向けのAIを作っています(小さく試す検証〔PoC〕300万円〜/小規模改修30万円〜/本開発は個別見積、すべて税別)。ただし、既製サービスや全員への配布で足りる会社もあります。 どういう会社なら作らずに済むのかも、正直に書きます。なお、本記事の金額は特記のない限り税別、ドル建ての料金は1ドル=153円(2026年9月上旬の水準)で換算しています。

社内AIチャットボットの費用が「月2万円」から「数千万円」まで開く理由

生成AIの試験導入後に全社で定着した企業は50.5%にとどまったことを示す双日テックイノベーションの調査グラフ

出典: 双日テックイノベーション 公式(大企業における「AI PoC定着」に関する実態調査)

「社内 AIチャットボット 費用」で調べると、月2万円前後の料金表と、数千万円の開発事例が同時に出てきます。どちらも間違いではありません。同じ「社内AIチャットボット」という言葉が、できることの違う3段階のものを指しているからです。

段階

何ができるか

費用の目安(税別)

① 登録した質問に答える

人が登録した「質問と回答」の組の中から答える

月1.8万〜5万円程度

② 社内の資料を読んで答える

規程・マニュアル・手順書・過去資料をAIが探し、根拠の箇所を示して答える

初期260万〜1,000万円+月10万〜50万円

③ 社内システムまで見に行って答える

「この申請は今どの段階か」「この設備の登録情報は」など、社内システムに照会して“今の状態”を答える

初期500万〜1,500万円以上+月50万〜200万円

段階が上がるほど費用は大きく跳ね上がります。自社がどの段階を求めているかを決めないまま見積もりを取ると、各社が別々の段階を想定して金額を出すため、見積もりが10倍以上違って比べられなくなります。

現場で起きていること|配っても、作っても、止まる

費用の差を生んでいるのは、AIそのものの性能ではありません。双日テックイノベーションが2026年7月31日〜8月3日に行った調査(従業員1,000名以上で生成AIの試験導入を行った企業の社員111名)では、試験導入のあと全社に定着したのは50.5%でした。定着を阻んだ要因として挙がったのは「AIが社内データ・情報と接続されていない」52.7%、「期待した成果・精度が出なかった」47.3%。効果を数字で測れている企業は36.0%にとどまります(調査概要)。

つまり、ChatGPTを配っただけでは「うちの就業規則ではどうなっているか」には答えられず、社内の資料につないでも、資料が古かったり矛盾していたりすれば正しく答えません。この「つなぐ」「整える」「確かめる」にかかる人の手間が、費用の大半を決めています。

一方で、社内の問い合わせ対応の負担は確実に存在します。キヤノンMJの調査(2024年8月、従業員300〜1,000名の企業の情報システム担当者108名)では、47.6%が業務時間の20%以上をヘルプデスク対応に使っていると回答しています。問い合わせ対応の時間がどれだけ減り、元が取れるかの計算は社内問い合わせの自動化で扱っています。この記事は「作るなら、作り方ごとにいくらかかるか」に絞ります。

作り方は5つある|初期費用・月額・5年総額の比較

ノーコードでAIチャットボットを自作できるツールDifyの公式イメージ

出典: Dify 公式サイト

社員300名の会社を例に、5つの作り方を並べます。5年総額は「初期費用+月額×60か月」で、社内の人件費は含めていません。

作り方

初期費用

月額

5年総額(社員300名の例)

合う会社

弱点

1. 既製の社内向けサービスを契約

5,000円〜

1.8万〜5万円〜

約300万円〜

質問の種類が決まっていて、数百件の回答集で足りる

質問と回答を人が登録・更新し続ける(登録型の場合)

2. 汎用AIの法人プランを全員に配る

ほぼ0円

1人約3,000円(300名で約90万円)

約5,500万〜5,700万円

文書作成・要約など社内の質問以外にも使わせたい

社員が開ける資料は何でも答えの材料になる。社内システムの“今の状態”は答えない

3. ノーコードツールで自作(Dify・Copilot Studio)

ツール代0円〜。構築は社内の作業時間

Dify約2万円+AI利用料/Copilot Studio約3万円〜(使った分だけ増える)

Dify約120万円+AI利用料/Copilot Studio約1,440万円(月15,000問の場合)

まず早く試作したい。Microsoft 365中心の会社

部署別の閲覧制限・大量の資料・精度の確認の作り込みで止まりやすい

4. 社内の資料を読ませて自社専用に作る(RAG構築)

260万〜1,000万円

10万〜50万円

約860万〜1,900万円(作り込みが多い上限側の条件なら約4,000万円)

社員100名以上で、社内の質問に答えさせるのが主目的

資料の整備と精度の確認に人手がかかる

5. フルスクラッチで大規模に作る

500万〜1,500万円以上

50万〜200万円

約3,500万円〜

基幹システムとの連携、数千人規模、業界の規制への対応が必要

本番まで6〜12か月。要件が固まっていないと費用が膨らむ

以下、それぞれの中身を見ていきます。

1. 既製の社内向けサービスを契約する

最も安く、最も早い方法です。たとえばリコーの「RICOH Chatbot Service」は、STARTERが初期5,000円・月18,000円(登録できる質問と回答が50件)、STANDARDが月50,000円〜(200〜500件)、ENTERPRISEが個別見積(10,000件・Teams連携・カスタマイズ対応)と公開されています(公式価格ページ)。

このタイプは人が質問と回答を登録する方式なので、規程が変わるたびに回答を直す仕事が社内に残ります。資料をそのまま読ませるタイプの既製サービスもあり、同じリコーの「生成AIチャット from 社内ナレッジ」は月3,000回の質問回答、資料の登録容量5GB(最大50GB)、利用者数による課金なし、1か月の無料トライアルありという条件ですが、価格は公式ページに掲載されておらず問い合わせ制です。

部署ごとに見せる資料を変える、社内システムの情報を答えに含める、といった自社固有の作り込みは、上位プラン・個別見積の範囲になるか、対応できない場合があります。

2. 汎用AIの法人プランを全社員に配る

社内向けの選択肢として最も現実的なのに、費用比較の記事ではあまり扱われない方法です。

サービス

1人あたり月額(税別)

条件

Microsoft 365 Copilot Business

3,148円(年払い)。2026年7月1日〜12月31日の契約は初年度2,698円

300名以下、Microsoft 365 Business系の契約が前提。月払いは3,778円

Microsoft 365 Copilot(大企業向け)

4,497円相当(年払い)

大企業向けのMicrosoft 365(E3/E5等)の契約が前提

ChatGPT Business

$20(約3,050円・年払い)/$25(約3,850円・月払い)

2名以上

Claude Team

$20(約3,000円・年払い)/$25(月払い)

2〜150名。151名以上はEnterpriseプラン

Google Workspace Business Standard

1,600円(月払い。年間プランは約16%引き)

GeminiとGemini Notebook(旧NotebookLM)込み

出典:Microsoft 365 Copilot 価格ChatGPT Business FAQClaude 料金Google Workspace 料金。ChatGPT Businessの円建て価格は為替や料金改定の影響を受けるため、契約前に公式の表示を確認してください。

この方法の強みは、社内の質問に答えるだけでなく、メールの下書き、会議の要約、資料作成にも効くことです。すでにGoogle Workspace Business Standard以上を使っている会社なら、追加費用なしでGemini Notebookに社内資料を読ませて質問する使い方から試せます。

弱点は2つあります。1つは、AIは社員が開ける資料なら何でも答えの材料にすることです(後述の「閲覧権限の整理」を参照)。もう1つは、社内システムに入っている“今の状態”(申請の進み具合、在庫、設備の登録情報)には答えられないことです。詳しくはMicrosoft 365 Copilotのエージェント生成AIの料金比較にまとめています。

3. ノーコードツールで自作する(Dify・Copilot Studio)

プログラムを書かずに、画面操作で社内向けのAIを組み立てる方法です。

  • Dify:無料プラン(資料50件まで)、Professional 年$590(約9万円・メンバー3名・資料500件・5GB)、Team 年$1,590(約24万円・メンバー50名・資料1,000件・20GB)、Enterpriseは個別見積(社内のログインIDでそのまま使える仕組み〔シングルサインオン〕などはEnterprise)。これとは別に、使うAIの利用料が実費でかかります(Dify 料金
  • Copilot Studio:25,000クレジット(回答するたびに消費される利用枠)/月で29,985円(会社全体で共有)。1回の回答で消費するクレジットは、決まった文面を返すだけなら1、AIが文章を作って答えると2、社内全体の資料を横断検索して答えると10。社内資料を探して文章で答える1回で12クレジット消費する例が公式に示されており、前払いパックなら1問あたり約14円です。Microsoft 365 Copilotのライセンスを持つ社員が社内で使う分は課金されませんMicrosoft Learn、2026年8月3日更新)

ノーコードの落とし穴は「作るのは安いが、使われるほど高くなる」構造です。Copilotのライセンスを持たない社員300名が月15,000問使うと、18万クレジット=8パックで月約24万円、5年で約1,440万円。簡単な定型回答中心(1問2クレジット)の作りなら月約6万円で済みますが、社内資料を探して答えるという本来の用途ほど高くつきます。また、前払い分の125%を超えるとAIが停止し、使い残しは翌月に繰り越せません。

Difyは料金面では最も安く済みますが、試作は数日で作れても、部署ごとの閲覧制限、社内ログインとの連携、数千件の資料の取り込み、答えの正しさの確認といった「社内で本番運用するための作り込み」で止まりやすい傾向があります。詳しくはDifyとはをご覧ください。

4. 社内の資料を読ませて自社専用に作る(RAG構築)

質問が来たら、まず社内の資料から関係する箇所を探し、その箇所をAIに渡して答えさせる仕組みです。一般にRAGと呼ばれます。答えと一緒に「どの資料のどこに書いてあるか」を示せるので、社員が自分で確かめられます。

提供元

内容

金額(税別)

期間

サイオステクノロジー(パッケージ型の構築サービス)

SharePoint(Microsoftの社内ファイル共有)との連携、社内IDでのログイン、閲覧権限の管理、利用者研修込み

初期260万円〜・月10万円〜

最短2営業日

GXO(開発会社の公開相場)

小さく試す検証 → 本番構築

検証100万〜300万円/本番300万〜1,000万円/月10万〜50万円

検証2〜6週間/本番2〜4か月

同社が示す従業員300名の例

検証100万円 → 本番600万円 → 月20万円

ニューラルオプト(開発会社の公開相場)

個別開発

検証150万〜250万円/本番500万〜1,500万円・月50万〜200万円

検証2〜3か月/本番6〜12か月

出典:サイオステクノロジーGXOニューラルオプト

最大の特徴は、費用が社員数にほぼ比例しないことです。10名で使っても300名で使っても、作る費用はほとんど変わりません(AIの利用料は増えますが、後述のとおり小さい金額です)。社内IDでのログイン、部署別の閲覧制限、Teamsからの利用、利用ログの保存といった社内向け特有の要件も、この方法なら作り込めます。仕組みの詳細はRAGとはで解説しています。

5. フルスクラッチで大規模に作る

画面・資料の探し方・社内システムとのつなぎ込みまで、すべてを一から作る方法です。前掲のニューラルオプトが示す個別開発の本番相場(本番構築500万〜1,500万円、月50万〜200万円、期間6〜12か月)がこの帯の目安です。

必要になるのは、基幹システム(申請・在庫・設備台帳など)に照会して“今の状態”を答えさせたい、利用者が数千人規模になる、患者情報のように置き場所に決まりがあるデータを扱う、といった場合です。まずは、4の方法に必要な連携だけを足して済まないかを検討してください。 最初からフルスクラッチを前提にした見積もりが出てきたら、その理由を確認してください。

社員数で変わる5年総額|全員に配るか、1つ作るか

社員全員に配る選択肢として比較するChatGPTの公式ロゴ画像

出典: ChatGPT Business 公式サイト

「全員に配る」は人数に比例して費用が増え、「1つ作る」は人数が増えてもほとんど変わりません。この差が、社員数によって逆転を生みます。

社員数

ChatGPT Businessを全員に(年払い約3,050円)

Microsoft 365 Copilot Businessを全員に(3,148円)

自社専用に1つ作る(RAG構築)

50名

月15.3万円/5年約915万円

月15.7万円/5年約944万円

5年約860万〜1,900万円

100名

月30.5万円/5年約1,830万円

月31.5万円/5年約1,889万円

5年約860万〜1,900万円

300名

月91.5万円/5年約5,490万円

月94.4万円/5年約5,666万円

5年約860万〜1,900万円

自社専用に作る場合の幅は、パッケージ型の下限(初期260万円+月10万円)で約860万円、開発会社が示す300名の例(初期700万円+月20万円)で約1,900万円です。部署別の閲覧制限や社内システムとの連携を多く作り込み、上限側の条件(初期1,000万円+月50万円)になると5年で約4,000万円です。その場合、ChatGPT Businessを全員に配る費用と並ぶのは社員220名前後になります。

読み取れることは3つです。

  • 50名なら、配るほうが安いか同程度。 作る理由が費用以外(閲覧制限、社内システム連携)にない限り、配るか既製サービスで足ります
  • 100名前後で並びます。 ここが判断の分かれ目です
  • 300名なら、ChatGPT Businessを全員に配る場合と比べて、作るほうが5年で約3,600万〜4,600万円安い計算です。上限側の約4,000万円で作った場合でも、約1,500万円安くなります

ただし、この比較には注意点があります。全員に配る方法は、社内の質問に答える以外の効果(文書作成・要約・会議の記録)も含んだ金額です。 社内の質問対応だけが目的なら作るほうが合理的ですが、全社員の日常業務でAIを使わせたいなら、配る費用は別の効果で回収されます。実際には、日常業務でAIを多く使う一部の社員にだけライセンスを配り、社内の質問窓口は1つ作って全員で使う、という組み合わせも選べます。

AIの利用料は、運用費の主役ではない

自社専用に作る場合、AIの利用料は「読ませた文字量と書かせた文字量」に応じた従量課金です。1問あたり、質問と探してきた資料の抜粋でおよそ8,000トークン(トークンはAIが文字量を数える単位)を読み、800トークンを書くと仮定すると、次のとおりです。

AIのグレード

1問あたり

月3,000問

月15,000問

軽量

約0.4円

約1,200円

約5,900円

標準

約1.5円

約4,400円

約2.2万円

中位

約3.9円

約1.2万円

約5.9万円

上位

約7.3円

約2.2万円

約11万円

※OpenAIの2026年9月時点の公式単価(軽量=gpt-5.6-luna、標準=gpt-5.4-mini、中位=gpt-5.6-terra、上位=gpt-5.6-sol)で試算。

社内の資料1万ページを検索できる形に下ごしらえする費用も、$0.1(15円程度)です。社員300名が毎月15,000問使っても、AIの利用料は月約6,000円〜11万円程度に収まります。 運用費の大半は、次に説明する人の作業です。

見積もりに出にくい4つの費用

社内AIヘルプデスクの正答率を80%まで高めたRAG精度改善を解説するDeNA Engineeringの記事画像

出典: DeNA Engineering 公式ブログ

開発会社のGXOは、社内資料を読ませるAIの構築費の配分を次のように示しています。本番構築600万円の場合に当てはめると、金額は右列のとおりです。

費用の項目

構築費に占める割合

本番600万円の場合

資料の整備(集める・古いものを外す・書き方をそろえる)

20〜30%

120万〜180万円

資料を探す仕組みづくり

15〜25%

90万〜150万円

AIの呼び出しまわり

10〜20%

60万〜120万円

画面づくり・社内システムとの連携

30〜40%

180万〜240万円

AIそのものより、資料を整える作業と画面・連携づくりの人件費が大半を占めます。 そのうえで、見積書の「一式」に埋もれやすい費用が4つあります。

1. 資料の整備

AIは資料に書いていないことには正しく答えられません。 資料が古い、同じ内容で版違いが複数ある、担当者の個人フォルダに散らばっている、という状態では、どれだけ高いAIを使っても精度は上がりません。見積もりに資料の整備が含まれているのか、それとも自社の作業なのかを必ず確認してください。

2. 答えの正しさを確かめる作業

回答の精度は、最初から高くはありません。DeNAの社内問い合わせツールでは、正答率を約50%から80%に引き上げるまでに、直近1か月の実際の問い合わせから約100件のテスト用の質問を作り、AIによる自動採点(5段階で3点以上を合格)と人の評価基準をそろえ、読ませる資料の絞り込みと書き方の統一を行っています。同社自身が「地道で時間のかかる作業」と書いています(DeNA Engineering Blog、2025年10月)。この作業が見積もりにない会社は、公開後に精度が出ずに止まります。

3. 閲覧権限の整理

社内向けで最も見落とされる費用です。Microsoftは公式に、Copilotとエージェントは「既存のアクセス許可、共有設定、ポリシーを尊重」するとしたうえで、「既定では、SharePoint は共有設定を最も寛容なオプションに設定します」と注意を促しています(Microsoft Learn、2026年7月16日更新)。

業務の言葉に直すと、共有設定がゆるいままAIを入れると、給与表や人事評価の資料がAI経由で見つかってしまうということです。これは全員に配る方法でも、自社専用に作る方法でも同じです。Microsoftはアクセス状況のレポートや、リスクの高いサイトをAIの検索対象から外す機能を用意していますが、それを設定する人の工数は必ずかかります。

4. 使ってもらうための費用

作っても、全員が使うわけではありません。パナソニック コネクトの社内AI「ConnectAI」(国内約11,800人)は、2025年度に利用361万回、削減時間78.8万時間(総労働時間の3.4%)、1回あたり33分の削減という成果を出していますが、月に1回以上使う社員の割合は61%でした(前年度は49.1%)(パナソニック ホールディングス発表、2026年7月29日)。成功している大企業でも、使うのは社員の約6割です。Teamsなど普段使う画面への組み込み、周知、研修の費用も計画に入れてください。

社内資料に悪意のある指示を紛れ込ませてAIを誤作動させる手口など、セキュリティ面の注意はRAGとはで、試験導入で止まる典型的な原因はAI開発の失敗例で解説しています。

自社専用に作ったほうがいい会社・作らないほうがいい会社

社内向けのAIエージェントを作成できるMicrosoft Copilot Studioの管理画面

出典: Microsoft Copilot Studio 公式サイト

作るかどうかは、次の表で判断できます。

判断のポイント

作らないほうがいい(既製サービスや配布で足りる)

作ったほうがいい

社員数

50名未満

100名以上

目的

文書作成・要約など、幅広い業務でAIを使いたい

社内の質問に答えさせることが主目的

資料の状態

規程やマニュアルがほぼない、または古い

資料はあるが、探すのに時間がかかっている

見せる範囲

全員が同じ資料を見てよい

部署・役職によって見せてよい資料が違う

答える内容

規程や手順の説明で足りる

申請の進み具合・在庫・設備情報など“今の状態”も答えたい

今の環境

Microsoft 365 Copilotを全員に配布済み

Copilotのライセンスを持たない社員が多い/患者情報など置き場所に決まりがあるデータを扱う

左の列に3つ以上当てはまるなら、作る前に既製サービスか全員への配布を試してください。とくに資料がほぼない会社は、AIの前に資料を作るのが先です。資料がないまま作っても、答えの根拠がないので正しく答えられません。また、Microsoft 365 Copilotを全員に配っているなら、Copilot Studioで社内向けのエージェントを追加費用なしで作れるので、まずそちらを試すのが順当です。

逆に、右の列に当てはまる項目が多いほど、既製サービスでは届かない部分が増えます。ただし、右の列でも「全部作る」とは限りません。 すでに使っているCopilotや既製サービスに、足りない社内システムとの連携や部署別の閲覧設定だけを足す、という選択肢があります。既製品か開発かの判断手順はSaaSかカスタム開発かにまとめています。

受託開発で作る場合の費用の目安

受託開発で社内AIチャットボットを作る場合の、当社の価格と公開相場です。

依頼の形

公開相場(開発会社の公表値)

当社(税別)

含まれるもの

小さく試す(PoC)

100万〜300万円(GXO)/150万〜250万円(ニューラルオプト)

300万円〜

対象を1部門・1業務に絞った試作、合格ラインの決定、合格ラインに対する実測、本開発の概算見積、本番運用の体制案

足りない部分だけ作る(小規模改修)

30万円〜

使っているCopilotや既製サービスに、社内システムからのデータ取り込みや部署別の閲覧設定を足す

本番の仕組みを作る(本開発)

300万〜1,000万円(GXO)/500万〜1,500万円(ニューラルオプト)

個別見積(PoCの終了時に概算を提示)

社内IDでのログイン、閲覧制限、Teams等への組み込み、利用ログ、社内システムとの連携

当社のPoC 300万円〜は、公開相場の上端寄りです。これは隠しません。そのかわり、開始前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格とするか」を文書で決め、終了時に本番へ進むかどうかを判定できる材料を揃えて納めます。 前述の調査で効果を数字で測れている企業が36.0%にとどまっていたように、試験導入が止まる原因の1つは「うまくいったのかどうかを誰も判定できない」ことだからです。PoCの中身と費用配分はAIのPoC費用で詳しく解説しています。

また、PoCが不要な案件には30万円〜の改修を提案します。 既製サービスやCopilotで足り、足りないのが社内システムとのつなぎ込みだけなら、300万円の検証を組むのは発注側にとって損だからです。AIが向かない業務であれば、そうお伝えします。対応範囲と費用の詳細は受託開発サービスのページにまとめています。受託開発全体の費用内訳はAI受託開発の費用相場もあわせてご覧ください。

実際にやった事例

守秘の関係で社名は出せませんが、当社が担当した案件の構造をお伝えします。

医療機関のケース|1部門・1業務に絞って小さく試した(PoC・300万円〜の帯)

課題:蓄積されている文書や記録は多いのに、必要な情報を探すのに時間がかかっていました。

作ったもの:手元の資料をAIに読ませ、質問すると根拠となる箇所を示しながら答える仕組みです。いきなり全部門に展開せず、対象を1部門・1業務に絞りました。開始前に「どの質問に、どの水準で答えられたら合格とするか」を文書で決めています。

何がどう変わったか:終了時に、合格ラインに対する実測値、本開発の概算見積、本番移行時の運用体制案を成果物として揃えました。判定の基準が先にあったため、全部門に広げるかどうかの意思決定が短期間で済みました。 社内AIチャットボットの試験導入が「便利そうだが、判断がつかない」まま止まるのを防いだ例です。

インフラ企業のケース|社内システムを見に行って“今の状態”を答える

課題:「この申請は今どの段階か」「この設備の登録情報はどうなっているか」といった質問に答えるため、担当者が複数のシステムを開いて調べてから返していました。資料を読ませるだけのAIでは答えられない種類の質問です。

作ったもの:AIが社内文書を参照するだけでなく、必要に応じて別のシステムに照会して現在の状態を取ってきたうえで答える仕組みです。承認や決裁そのものはAIに行わせず、人が判断するための情報を揃えるところまでにしています。

何がどう変わったか:「調べれば分かるが、調べるのに時間がかかる」種類の質問が、担当者の手を煩わせずに解決するようになりました。前述の3段階でいえば③にあたり、既製サービスや全員への配布では届かない部分です。

2件に共通しているのは、AIに最終判断をさせず、人が判断するための材料を揃えるところまでに留めていることです。また医療機関のケースのように、対象を1部門・1業務に絞って始めると、全社に広げるかどうかの判断も早くなります。

相談から稼働までの流れと期間

段階

期間の目安

発注側でやること

初回相談(無料)

1回

答えさせたい質問の例と、資料の置き場所を伝える

対象と合格ラインの決定

1〜2週間

最初の1部門・1業務を決め、「どの質問にどの水準で答えられたら合格か」を決裁者と合意する

資料の整理(必要な場合)

1〜2か月

古い資料を外し、どれが最新版かを決める

小さく試す(PoC)

2週間〜3か月

実際の問い合わせから作ったテスト用の質問で、答えの正誤を判定する

本番の構築

2〜4か月(大規模なら6〜12か月)

社内IDでのログイン、閲覧制限、Teamsからの利用を確認する

展開と定着

継続

周知と研修、使われ方の確認、資料の更新

既製のパッケージ型なら最短2営業日で使い始められる一方、自社専用に作る場合は、資料の整理が必要なケースを含めて相談から本番稼働まで数か月〜1年以上の幅があります。最も遅れやすいのは資料の整理で、理由は技術ではなく「どれが最新版か社内で決まらない」「提供の承認が下りない」ことです。導入期間の考え方はAI開発の期間でも解説しています。

相談の時点で要件が固まっている必要はありません。「社内の質問に答えるAIを作りたいが、何から決めればいいか分からない」という段階から整理を始める案件も少なくありません。その段階から相談できる窓口として、受託開発の無料相談をご用意しています。

よくある質問

Q1. 社内の資料をChatGPTやClaudeに読ませると、AIの学習に使われてしまいませんか。

法人向けプランでは、既定で学習に使われません。OpenAIはChatGPT Business/Enterprise、およびAIを部品として呼び出す契約(API)のデータを既定で学習に使わないと公表しており、AnthropicもClaude Team/Enterpriseについて既定で学習に使わないとしています。自社専用に作る場合も、多くはこのAPI経由で使うため同じ扱いです。むしろ注意すべきは、会社が契約していない個人のアカウントに、社員が業務資料を貼り付けてしまうケースです。会社としてAIを用意しないこと自体がこのリスクを生むため、シャドーAIのリスクもあわせてご確認ください。

Q2. Microsoft 365 Copilotの導入を検討中です。自社専用に作る話と、どちらを先に進めるべきですか。

どちらを選ぶにしても、先にやるべきは共有設定と閲覧権限の見直しです。これはCopilotにも自社専用のAIにも必要で、先に済ませておけば後戻りがありません。そのうえで、Copilotを先に入れ、足りない部分(Copilotのライセンスを持たない社員向けの窓口、社内システムの“今の状態”への照会)だけを作る順番にすると、作る範囲が最小になります。なお、Copilot Businessは300名以下のMicrosoft 365 Business系契約が対象で、2,698円のキャンペーン価格は2026年12月31日までの年契約・初年度のみです。期限だけで判断せず、閲覧権限の整理が間に合うかを先に確認してください。

Q3. 補助金は使えますか。

自社専用に作る受託開発は、原則として対象外です。 デジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金)は、事務局に登録されたITツールの導入を対象とする制度で、個別に開発するシステムは対象になりません。一方、登録されている既製の社内向けサービスであれば対象になり得ます。公式サイトで公表されている通常枠の1次締切は2026年9月29日(火)17:00、交付決定は2026年11月9日(月)予定、導入と実績報告の期限は2027年4月30日(金)17:00(予定)です(公式スケジュール)。2次締切以降の日程は本記事執筆時点で未発表のため、公式サイトで最新の情報を確認してください。なお補助金は実績報告のあとに交付される後払いなので、導入費用はいったん全額を自社で支払う前提で資金繰りを組んでください。対象になるツールの範囲はAI導入補助金の対象にまとめています。

Q4. 作ったあとの保守や資料の更新は、誰がやることになりますか。別の会社に引き継げますか。

保守は2つに分かれます。仕組みの保守(AIの提供元の仕様変更への対応、不具合の修正、精度の定期確認)は開発会社、資料の更新は社内が担うのが一般的です。規程やマニュアルが変わったときに誰が差し替えるのかを、部署単位で決めておいてください。ここが曖昧だと、半年後には古い規程で答えるAIになります。月額の運用費(公開相場で月10万〜50万円)に何が含まれるかは、契約前に書面で確認してください。別の会社への引き継ぎに備えるなら、作ったプログラムと設計資料の権利の帰属、納品の範囲を契約書に明記しておくことが条件です。AIのモデルは入れ替わりが早いため、特定のAIに依存しすぎない作りになっているかも確認のポイントです。

Q5. 社内の資料が整っていない状態でも相談できますか。

相談できます。むしろ整っていない状態が普通です。ただし、資料の整備は構築費の20〜30%を占める項目なので、見積もりの幅に直結します。相談の前に、①答えさせたい質問の例を10個程度、②その答えが書いてある資料の置き場所(SharePoint、ファイルサーバー、紙など)、③その資料が最新かどうか、の3点が分かると概算の精度が上がります。分からなければ、その確認から一緒に行います。要件が固まっていない段階での相談の進め方は要件が固まっていない段階での開発相談をご覧ください。

Q6. 患者情報など、外部のクラウドに出しにくい情報がある場合はどうなりますか。

医療機関や薬局で患者情報を扱うAIは、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」(令和8年6月)の対象になり、データの置き場所や委託先の管理方法を決める必要があります(同ガイドラインのQ&A集は令和8年9月中に改版予定)。現実的な進め方は、最初は患者情報を含まない院内規程・業務マニュアル・手順書から始め、患者情報を扱う段階でデータの置き場所を設計し直すことです。データの置き場所や委託先を自社で決めて管理したい場合は、自社専用に作る理由になります。当社は医療機関・薬局での実績があります。

Q7. 複数社から見積もりを取ったら、金額が数倍違いました。どこを比べればいいですか。

金額ではなく、次の5点が含まれているかを比べてください。①資料の整備は開発会社の作業か、自社の作業か。②答えの正しさを確かめるテスト用の質問づくりと、合格ラインの設定が入っているか。③社内IDでのログインと部署別の閲覧制限が含まれているか。④AIの利用料は実費精算か、月額に込みか(込みなら上限はいくらか)。⑤月額の運用費に、精度の定期確認と資料更新の支援が含まれるか。安い見積もりでは①②が「発注者側で実施」になっている場合があり、その分はあとで社内の工数として跳ね返ります。 見積もりの読み方はAI開発の見積もり比較で詳しく解説しています。

社内AIチャットボットの費用でお悩みの方へ

社内AIチャットボットの費用は、既製サービスで月2万〜5万円程度、全員に配ると1人月3,000円前後、社内の資料を読ませて自社専用に作ると初期260万〜1,000万円+月10万〜50万円です。社員100名前後を境に、配るより作るほうが5年総額で安くなるケースが出てきます。費用の大半はAIの利用料ではなく、資料の整備・精度の確認・閲覧権限の整理という人の作業です。

  • 全員にCopilotやChatGPTを配るか、1つ作るかで決めきれない
  • 見積もりが各社で数倍違い、どれが妥当なのか判断できない
  • 既製サービスを試したが、部署別の閲覧制限や社内システムとの連携で行き詰まった

このいずれかに当てはまるなら、初回相談は無料です。当社の価格はPoC 300万円〜、小規模改修 30万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)で、医療機関・調剤薬局・インフラ企業での実績があります。要件が固まっていない段階からご相談いただけます。

ご相談の際は、①答えさせたい質問の例、②対象の資料の置き場所、③利用する社員の人数、の3点をお聞かせください。既製サービスで足りるのか、足りない部分だけの改修で済むのか、自社専用に作るべきなのかを、概算の費用とあわせてお伝えします。作らないほうがいいと判断した場合は、そう申し上げます。

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