ビジネス活用2026年10月更新

既存システムにAIを組み込む方法|読み取り・下書き・登録を分けて依頼する5つのパターンと費用

公開日: 2026/09/16
更新日: 2026/10/10
既存システムにAIを組み込む方法|読み取り・下書き・登録を分けて依頼する5つのパターンと費用

この記事のポイント

既存システムは作り直さずにAIを組み込めます。AIに任せる操作を読み取り・下書き・承認後の登録に分け、架空データで権限エラー・二重登録・取り消しを試した結果と、5つの足し方の費用(改修100万円〜・PoC300万円〜)、契約前の確認点を解説。

今使っている業務システムは、作り直さなくてもAIを後から組み込めます。進め方の要点は、AIに任せる操作を「読み取りだけ」→「下書きを人が確認」→「承認後に登録」の3段階に分け、1段ずつ広げることです。費用の目安は、今の画面にAIの機能を足すなら100万円〜、社内の資料やデータをAIに読ませる仕組みを試すなら300万円〜です(当社価格・税別)。AIそのものの利用料は月3,000件の処理で約800円〜約1.8万円(各社の公式単価からの試算)にとどまり、費用の大半は「つなぐ部分」を作って動かし続ける人の費用です。

販売管理、顧客管理、会計、電子薬歴、点検管理といったシステムはそのままに、AIをどう足すか。この記事では、足し方を今のシステムへの手の入れ方が小さい順に5つのパターンに分けて費用・期間・合う場面を比べ、自社がどれに当たるかを決める4つの質問を示します。そのうえで、AIに任せる操作を3段階に分けて架空のデータで試した結果(権限エラー・二重登録・取り消し)、AIの利用料の試算、組み込む前に確認すべきデータの扱いと提供終了のリスク、組み込まない方がよいケース、相談の前に揃えておく情報を順に解説します。今のシステムの提供元がすでにAI機能を出していれば、開発そのものが要らない場合もあります。

AIを試したのに業務が変わらない理由|システムとAIのあいだを人がつないでいる

双日テックイノベーションが公開した大企業における「AI PoC定着」に関する実態調査の表紙

出典: 双日テックイノベーション 公式プレスリリース

社員が生成AIを使い始めたのに、業務全体にかかる時間があまり変わっていない状況として、たとえば次のようなものがあります。

  • 顧客管理システムから問い合わせ文をコピーしてChatGPTに貼り、返信案を作り、手直しして元のシステムに貼り戻している
  • 点検管理システムのメモを書き出してAIで報告書の文章に整え、それを帳票に転記している
  • 社内規程や過去の対応記録を探すのに時間がかかるが、AIに聞いても社内のことは答えられない
  • 社員が個人の無料アカウントに業務データを貼り付けている

どれも、AIがシステムの外にあり、そのあいだを人がコピー&ペーストでつないでいる状態です。AIが作業の一部を速くしても、前後の転記と確認が残るため、業務の流れは変わりません。4つ目は情報漏えいの問題でもあります(シャドーAIのリスク)。

調査の数字も、この状況を裏付けています。帝国データバンクが2026年3月に実施し、1万312社が回答した調査では、生成AIを活用している企業は34.5%で、用途の1位は「文章の作成・要約・校正」(45.1%)でした。活用している企業でも、用途の中心はまだ個人が文章を整える使い方だと読み取れます。

さらに、双日テックイノベーションが2026年9月に公表した調査(従業員1,000名以上の企業で、AIの試験導入を経験した推進担当者111名が対象)では、試験導入のあと定着や本番導入を阻む要因の1位が「AIが社内の情報・データと接続されていないから」(52.7%)で、「期待した成果や精度が得られなかったから」(47.3%)を上回りました。大企業に限った調査ですが、AIが定着しない最大の原因はAIの性能ではなく、社内のシステムやデータとつながっていないことだと読み取れます。

では、つなぐためにシステムを作り直すべきでしょうか。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2026」(回答957社)では、IT予算が増えた理由の1位は「既存システム・基盤の刷新・更新・増強」(66.3%)でした。「AI関連の投資・利用料の増加」を理由に挙げる割合も、2025年度計画の36.3%から2026年度予測では43.7%に伸びています。既存システムの維持だけで予算がかさむなか、作り直しとAIの導入を同時に進めるのは、予算の面で簡単ではありません。今のシステムを残したままAIを足す方法を、まず検討する価値があります。

既存システムにAIを組み込む5つのパターン

サイボウズのkintoneにAI機能を組み合わせた「kintone AI」の公式画像

出典: サイボウズ 公式サイト

AIの足し方は、今のシステムへの手の入れ方で5つに分けられます。下の表は、手の入れ方が小さい順に並べたものです。

パターン

今のシステムへの手の入れ方

合う場面

費用の目安(税別)

期間の目安

1. 提供元のAI機能を使う

触らない(設定・プランの変更)

提供元が必要なAI機能をすでに出している

0円〜(プラン変更・オプションの料金)

数日〜数週間

2. 今の画面にAIのボタンを足す

改修する

1つの画面・1つの作業で完結する要約・分類・下書き

100万円〜

2週間〜1.5ヶ月

3. データを外に出してAIで処理し、戻す

触らない(CSVなどの出力・取込の機能を使う)

改修できない、外とつなぐ窓口がない

100万円〜(照合する相手が増えると本開発の規模)

数週間〜数ヶ月

4. 社内の資料・データを読ませて答えさせる

データの写しを別の置き場に取り込む

資料や記録が多く、探す時間が長い

試験導入(PoC)300万円〜

PoCで2〜3ヶ月

5. AIに既存システムを操作させる

AIに操作の権限を渡す

複数のシステムにまたがる照合・登録・送信

個別見積(受託開発の公開相場は300万〜1,500万円以上)

3〜6ヶ月

「100万円〜」「300万円〜」は当社の価格、それ以外は開発会社各社の公開情報をもとに整理した目安です。いずれも、AIの利用料(使った分だけかかる実費)は含みません。

パターン1:今のシステムの提供元が出しているAI機能を使う

最初に確認すべきなのは、今のシステムにすでにAI機能が付いていないかです。業務システムの提供元が自社の製品にAI機能を組み込む動きは広がっています。

  • kintone(サイボウズ):2026年6月14日に「kintone AI」の正式提供を始めました。蓄積したデータを探す「検索AI」や、業務アプリを作る「アプリ作成AI」などがあり、スタンダードコースとワイドコースでは追加料金なしで毎月一定のAIクレジット(使える量)が付与されます。付与量は環境によって異なり、追加購入できる有料オプションは2026年秋頃の提供予定です。ライトコースは対象外です。
  • 電子薬歴(ウィーメックス):服薬指導の会話を文字にして要約し、薬歴の記載形式(SOAP形式)で出力して薬歴システムへ反映できる「生成AI薬歴入力支援サービス」を案内しています。料金や提供開始時期は公開されていません。

提供元の機能で足りるなら、開発会社に頼む必要はありません。ただし、契約しているプランによっては、AI機能も、他のシステムとつなぐ窓口も使えないことがあります。たとえばkintoneのライトコース(1ユーザー月1,000円)では、システム同士がデータを自動でやりとりする窓口(API)が使えず、スタンダードコース(1ユーザー月1,800円)でも1日1万回までの上限があります。プランの変更で済むのか、足りない部分を作る必要があるのかの判断は、SaaSかカスタム開発かの判断フローで詳しく解説しています。

パターン2:今の画面にAIのボタンを足す

問い合わせ管理の画面に「返信の下書き」ボタンを付ける、日報の画面に「要約」ボタンを付ける、といった足し方です。ボタンを押すと画面上のデータがAIに送られ、結果が同じ画面に戻ってきます。社員がシステムとAIのあいだを行き来するコピー&ペーストがなくなります。

AIにさせる作業は、要約、分類(振り分け)、下書き、入力内容のチェックの4つが中心です。どれも最後に人が画面で確認してから確定する形にしやすく、AIの間違いが業務にそのまま流れ込みにくいのが利点です。

条件は、今のシステムを改修できることです。プログラム本体(ソースコード)が手元にあるか、改修を引き受けてくれる会社がいるかを先に確認してください。当社の既存システムの改修は100万円〜(税別)です。期間は一般的に2週間〜1.5ヶ月程度が目安ですが、対象の画面の数や設計書の有無で変わります。ただし、開発会社の公開例では、画面が20〜30ある業務システムで設計書がない場合、改修前の調査だけで1〜2か月・数十万円かかるとされています。作業別の目安と、費用が高くなる条件は、システム改修の費用で整理しています。

パターン3:データを外に出してAIで処理し、戻す

古いシステムで外とつなぐ窓口がない、改修を受けてもらえない、といった場合の足し方です。多くの業務システムに付いているCSV(Excelなどで開ける形式のデータファイル)の出力・取込の機能を使い、本体には手を入れません。出力したデータをAIで分類・整形・照合し、結果を取り込める形に変えて戻します。

出入口が1か所で単純なら、既存システムの改修と同じ100万円〜の帯に収まることがあります。一方、照合する相手のシステムが複数あり件数も多い場合は、本開発の規模になります。各社の公開情報を整理すると、連携する先が1つ増えるごとに50〜150万円が目安です。

データを出力する機能すらない場合は、人の画面操作を記録して自動で再現するツール(RPA)でデータを取り出す方法もあります。ただし、画面の配置が変わると止まりやすく、保守の手間が残ります(RPAの保守コスト)。紙の書類を読み取って基幹システムに登録する場合は、OCRで基幹システムへの登録を自動化する方法で解説しています。

パターン4:社内の資料・データを読ませて、根拠を示して答えさせる

社内規程、マニュアル、過去の対応記録、点検履歴などをAIに読ませ、質問すると根拠になった資料の箇所を示しながら答える仕組みです。専門的にはRAGと呼ばれます(仕組みはRAGとは)。既存システムや共有フォルダからデータの写しを取り込むので、元のシステムの動きは変わりません。

一般的なAIが答えられない「自社のこと」に答えられるようになる一方、どの資料を読ませ、どの質問にどの水準で答えられたら合格とするかで効果が大きく変わります。いきなり全社に広げず、1部門・1業務で効果を確かめる試験導入(PoC)から始めるのが一般的です。当社のPoCは300万円〜(税別)で、課題の整理、簡易な要件定義、設計・開発、検証環境、結果の整理、本開発の提案までを含みます。期間は2〜3ヶ月が目安です。300万円で何が手元に残るかは、AIのPoC費用の相場で解説しています。

パターン5:AIに既存システムを操作させる

AIが複数のシステムからデータを集めて照合し、登録や送信まで実行する足し方です(AIエージェントと呼ばれます)。人がシステムを行き来していた作業をまとめて任せられる一方、AIにどこまで操作の権限を渡し、どの時点で人の承認を入れるかの設計が欠かせません。登録・送信・削除のように取り消しにくい操作ほど、その前に人の確認を置きます。どの段階まで任せるかの分け方と、架空のデータで試した結果は、後の「AIに任せる操作を3段階に分ける」の節で紹介します。

AIとシステムのつなぎ方には、標準化の動きもあります。AIと社内外のシステムをつなぐ共通規格「MCP」は、2025年12月に開発元のAnthropicから、オープンソースの推進団体Linux Foundationの傘下に新設された団体(Agentic AI Foundation)へ寄贈され、OpenAIなども設立に加わりました。つまり、特定のAI会社の独自方式に縛られにくいつなぎ方を選べるようになってきています(MCPとは)。

費用は、連携するシステムの数と、人の承認をどう組み込むかで大きく変わるため、当社では本開発として個別に見積もります。受託開発で作る場合の公開相場は300万〜1,500万円以上、期間は3〜6ヶ月が目安です(AIエージェント導入の費用)。

参考:作り直しに合わせてAIを入れる

システムが古く、保守の終了も迫っていて、どのみち作り直すなら、その中でAIを組み込む選択肢もあります。ただし費用は1,000万円以上、期間は6ヶ月以上になりやすく、AIを使い始められるのは作り直しが終わってからです。作り直しを決める前に、パターン1〜5で今のシステムのまま足せないかを確かめてください。作り直す場合の費用感は、業務システム開発の費用相場にまとめています。

どのパターンを選ぶか|4つの質問で決める

自社がどのパターンに当たるかは、次の4つの質問に順に答えると絞り込めます。

質問1:今のシステムの提供元が、必要なAI機能を、今の契約プランで出していますか。
→ はい:パターン1。まず提供元の機能を試してください。
→ いいえ(出していても機能が足りない):質問2へ。

質問2:今のシステムを改修できますか。(ソースコードや設計書が手元にある、改修を引き受ける会社がいる)
→ はい:質問4へ。
→ いいえ:質問3へ。

質問3:CSVなどで、データを出力・取込できますか。
→ はい:パターン3。
→ いいえ:画面操作の自動再現(RPA)でデータを取り出すか、作り直しを検討します。

質問4:AIに何をさせたいですか。

させたいこと

例

パターン

書く・整える

返信の下書き、報告書の要約、問い合わせの分類

パターン2(1つの画面で1件ずつ)/パターン3(まとめて処理)

答える

社内規程や過去の記録を根拠に、質問へ答える

パターン4

操作する

複数のシステムの照合、登録、送信

パターン5

迷ったときは、1つの業務・1つの画面に絞って、小さいパターンから始めるのが安全です。パターン2で下書きを作らせて現場の反応を確かめてから、パターン4や5に広げる進め方もできます。

AIに任せる操作を3段階に分ける|読み取り・下書き・承認後の登録

パターンが決まったら、次に決めるのはAIに今のシステムのどこまでを操作させるかです。依頼するときも「AIを組み込みたい」ではなく、次の3段階のどこまでを作るかで伝えると、見積と検収の範囲がはっきりします。

段階

AIがすること

AIに渡す権限

業務データへの影響

人の役割

1. 読み取りだけ

記録を読んで要約・分類・検索する

読み取りのみ

変わらない

結果を見て、操作は自分で行う

2. 下書きを確認

返信文や登録内容の案を、下書きの置き場に作る

読み取り+下書きの置き場への書き込み

本体のデータは変わらない

下書きを直して承認するか、却下する

3. 承認後に登録

人が承認した下書きだけを本体に登録・更新する

登録・更新(承認済みのものに限る)

変わる。取り消し方を先に決めておく

承認する。誤りがあれば取り消す

外部へのメール送信や支払いの指示のように、実行したら取り消せない操作は、段階3の中でも最後に回し、送る前の承認を必ず残します。

架空のデータで3段階を試した結果

3段階に分けたとき、権限の誤り、二重登録、取り消しをどう扱えるかを確かめるため、当社で小さな検証を行いました。条件は次のとおりです。

  • 対象の業務(架空):問い合わせ管理システムで、問い合わせを読み、返信の下書きを作り、人が承認した下書きだけを返信記録として登録し、問い合わせを「対応済」にする
  • データ:架空の顧客・問い合わせ20件。実在の顧客や製品のデータは使っていません
  • 既存システム:検証のために作った模擬システム(SQLiteのデータベースと、権限を確かめる窓口)。実在の製品の動きを確かめたものではありません
  • 権限:AI用に「読み取りだけ」「読み取り+下書き」「読み取り+登録」の3種類の鍵を用意し、承認の権限は担当者(人)の鍵にだけ付けました
  • 下書きの文面:決まった規則で作る代役に置き換えました。見たのは文面の良し悪しではなく、権限・承認・二重登録・取り消しの制御です
  • 実施日・環境:2026年10月9日、Python 3.14.8。検証用のプログラムもAI(Claude)を使って書き、実行しました

段階

試したこと

結果

1

読み取り専用の鍵で20件を読み、続けて下書きの作成と登録を試す

20件を読み取れた。下書きの作成も登録も権限エラー(403)で止まり、データは実行前と同じだった

2

下書き用の鍵で20件の下書きを作り、同じ鍵で登録と承認を試す

下書き20件を作成。登録も、AI自身による承認も権限エラーで止まった。問い合わせのデータは変わらず、返信記録は0件。担当者が2件を却下、1件を文面を直して承認、17件を承認した

3

却下した下書きを登録しようとする

「承認されていない」として拒否された(409)

3

登録の直後に応答が途切れた想定で、同じ登録をもう一度送る(再送防止の目印なし)

同じ問い合わせに返信記録が2件でき、二重登録になった

3

同じ状況で、登録ごとに固有の目印(再送防止キー)を付けて再送する

返信記録は1件のまま。2回目は「登録済み」として扱われた

3

16件を順に登録する途中(9件目)で、登録の権限を外す

8件が登録され、残り8件は権限エラー。状態だけ「対応済」で返信記録が無い、という中途半端な件は0件だった(登録と状態の更新を1つの処理として確定させたため)

3

権限を戻し、同じ目印のまま16件をやり直す

新たに8件を登録し、登録済みの8件は重複として飛ばした。二重登録は起きなかった

3

登録済みの1件を取り消す

返信記録は削除せず「取消」の印を付け、問い合わせは登録前の「未対応」と更新者に戻った。登録と取り消しの両方が操作履歴に残った

最後の状態は、承認した18件のうち17件が「対応済」(1件は取り消し)、操作履歴は60件でした。二重登録が残ったのは、目印なしで再送した1件だけです。

この検証からは、AIにどこまで操作させるかは、渡す鍵の権限と、登録する側の仕組みの作りで制御できると言えます。一方、模擬システムでは権限の種類も再送防止の目印も自由に作れましたが、実在のシステムで同じことができるかは、製品と契約しだいです。この点は、会社ごとに確かめる必要があります。

つなぎ方ごとに、3段階を作れるか確かめる項目

自社のシステムで同じ分け方ができるかは、つなぎ方によって確かめる項目が変わります。下の表は一般的な確認項目の整理で、特定の製品で検証した結果ではありません。

つなぎ方

読み取りだけの権限を作れるか

二重登録の防ぎ方

取り消し方

API(システム同士がデータをやりとりする窓口)

読み取り専用の鍵(APIトークン)や、操作ごとの権限を設定できるかを、管理画面と公式の説明で確かめる

再送防止の目印を受け付けるか。受け付けない場合は、登録の前に同じ番号のデータが無いかを確かめる処理を作る

更新前の値を残せるか。削除ではなく取り消しの印を付けられるか

CSV(データファイルの出力・取込)

出力だけを行う担当者の権限を作れるか(取込の権限と分けられるか)

重複を判定できる列(伝票番号など)があるか

取込の前の状態を出力して残せるか。取込を取り消す機能があるか

画面操作(RPAなど)

閲覧だけのアカウントを作れるか

登録ボタンを押した後、登録済みかを画面で確かめる手順を入れられるか

画面から取り消せるか。誰が取り消したかの記録が残るか

自社でAIを使って進められる部分と、会社に頼む部分

上の検証のような権限の分け方、再送防止、取り消しの仕組みは、今ではAIに相談しながら自社で試作することもできます。ChatGPTやClaudeなどに、使っている製品の公式の説明を読ませて、読み取り専用の権限を作れるか、再送防止の仕組みがあるかを調べさせ、架空のデータでテストを書かせて動かすところまでは、社内で進められることがあります。

会社に頼んだ方がよいのは、次のように自社のシステムと業務に固有で、間違えたときの影響が大きい部分です。

  • 本番のシステムで実際にどの権限の鍵を発行できるか、保守会社や提供元との契約上どこまで触れてよいかの確認
  • 例外の多いデータ(同じ顧客の別名、途中で変わった項目、手で直された過去のデータ)での動作の確認
  • 登録の仕組みを作った後の検収(どの件数・どの条件で合格とするか)と、障害が起きたときの取り消しと復旧の手順
  • 今のシステムや、提供元のAIのモデルが変わったときの修正と再テスト

当社へは、段階1だけを先に作る、自社で作った試作を本番のシステムにつなぐ部分だけを任せる、といった分け方でもご相談いただけます。

費用の目安|組み込みの開発費とAIの利用料は分けて考える

AnthropicのClaude Platform Docsに掲載されているAPI利用料金ページの公式画像

出典: Anthropic Claude Platform Docs 公式

既存システムへのAIの組み込みでかかる費用は、①つなぐ部分を作る開発費、②AIの利用料(毎月・使った分だけ)、③動かし続けるための保守費の3つです。見積を比べるときは、この3つを分けて見てください。

開発費の目安(足し方別)

何を足すか

当社の価格(税別)

公開されている相場

期間

提供元のAI機能を使う

当社への依頼は不要

プラン変更・オプションの料金のみ

数日〜数週間

今の画面にAIの機能を1つ足す

既存システムの改修 100万円〜

部分的な改修 5〜50万円

2週間〜1.5ヶ月

データを出してAIで処理し、戻す

既存システムの改修 100万円〜(出入口が1か所の場合)

連携する先が1つ増えるごとに50〜150万円

数週間〜数ヶ月

社内の資料・データを読ませる

PoC 300万円〜

社内データ検索の初期費用 100〜500万円

2〜3ヶ月

AIにシステムを操作させる・複数のシステムにまたがる

本開発 個別見積

300万〜1,500万円以上

3〜6ヶ月

公開されている相場は、AI開発会社各社の公開情報をもとにした目安で、第三者が保証する価格ではありません。社内の資料を読ませる仕組みについては、稼働後の月額(利用料・保守などを含む)を月10〜50万円と公開している開発会社もあります。

AIの利用料は月いくらか(試算)

AIの利用料は、AIに読ませた文字量と、AIに書かせた文字量に応じて課金されます(文字量はトークンという単位で数えます)。既存の問い合わせ管理システムに「返信の下書き」ボタンを足した場合を、各社の公式単価で試算しました。

前提(すべて仮定):1件あたりAIに読ませる量4,000トークン(問い合わせ本文、過去のやりとり、社内の対応ルール)、書かせる量800トークン、月3,000件、1ドル=150円。単価は2026年9月17日時点の各社公式料金ページの金額(税別)です。

AIのモデル(提供元)

月の利用料

円換算

Claude Opus 5(Anthropic・上位)

120ドル

約18,000円

Claude Sonnet 5(Anthropic・中位)

48ドル

約7,200円

Claude Haiku 4.5(Anthropic・軽量)

24ドル

約3,600円

gpt-5.6-terra(OpenAI)

52.8ドル

約7,900円

gpt-5.6-luna(OpenAI・軽量)

5.28ドル

約800円

Gemini 3.8 Flash(Google)

18ドル

約2,700円

計算式は「(読ませる量×入力の単価+書かせる量×出力の単価)×件数」です。月3,000件を処理しても、AIそのものの利用料は数百円〜2万円程度で、開発費と比べれば小さな金額です。ただし、次の3つの理由で金額は動きます。

  • モデルを替えると、同じ処理でも請求額が変わる:Anthropicは、Claude 4.7以降のモデルでは同じ文章でもトークン数が約30%増えると公表しています。Sonnet 5で数える量が3割増えると、約9,400円になります
  • 期間限定の価格がある:Gemini 3.8 Flashの上の単価は2026年12月31日までで、2027年1月から2倍(月約5,400円)になります
  • 作り方しだいで増える:長い資料を毎回丸ごと読ませる作りにすると、1件あたりの読ませる量が増え、そのまま利用料が増えます

見積書で確認すること

  • 開発の人件費と、AIやクラウドの利用料(実費)が分かれているか:利用料は件数で変わるため、固定額に混ぜられていると、使う量が増えたときの負担が読めません
  • 保守の範囲に、AIのモデル提供終了への対応が入っているか:後述のとおり、AIのモデルは提供終了します。乗り換えのたびにプログラムの修正と答えの品質の再テストが要るため、保守契約に含まれるのか、その都度の別見積なのかで数年間の総額が変わります(システム保守運用費の相場)
  • データを国内で処理する指定をした場合の上乗せ:後述のとおり、契約の経路によっては約10%高くなります

当社に依頼する場合の費用

当社は、既存システムにAIを組み込む範囲とつなぎ方を設計したうえで、検索・要約・文章作成などの機能を追加します。会計、顧客管理、データベース、外部のサービスなどとの接続に対応しています。入口は3つです。

入口

費用(税別)

対象・含まれるもの

既存システムの改修

100万円〜

画面の追加・修正、帳票の追加、CSV出力、外部連携、既存処理の修正

PoC(試験導入)

300万円〜

課題の整理、簡易な要件定義、設計・開発、検証環境、結果の整理、本開発の提案

本開発

個別見積

利用者数・機能数・外部連携・データ移行・セキュリティなどを確認して算定

クラウドの利用料、AIなど外部サービスの利用料、ソフトウェアのライセンスは実費で別途かかります。PoCの300万円は、公開されている相場の範囲内です。ご相談の内容が既存システムの改修で足りる場合は、PoCではなく改修としてご提案します。価格と対応範囲はAI・システム受託開発のサービスページでご確認いただけます。

組み込む前に確認すること|データの扱い・処理場所・提供終了

Amazon Bedrockで日本国内に閉じたClaudeの推論が可能になったことを紹介するAWS公式ブログの画像

出典: AWS 公式ブログ

既存システムにAIを組み込むと、業務データが日常的にAIの提供元へ送られるようになります。帝国データバンクの調査でも、生成AIについての懸念(3つまでの複数回答)の最多は「情報の正確性」(50.4%)で、「情報漏洩のリスク」も33.5%が挙げています。契約前に、次の点を確認してください。

1. 送ったデータが学習に使われないか、何日保存されるか

業務システムに組み込むなら、個人向けの無料版ではなく、自社のシステムからAIを呼び出して使った分だけ払う有料契約(API契約)を使うのが前提です。主な提供元の公式の扱いは次のとおりです。表の「Amazon Bedrock」は、アマゾンのクラウド(AWS)を通じてClaudeなど各社のAIを契約・利用するサービスです。

提供元

AIの学習への利用

保存など

OpenAI(API)

既定で使わない(自社が明示的に許可した場合を除く)

不正利用の監視のため最大30日保存。保存しない契約は承認制

Anthropic(Claude API)

明示的な許可なく使わない

保存しない契約は申請制。ただし最上位のClaude Fable 5系などは30日間の保存が必須

Google(Gemini API)

有料版は使わない。無料版は使う

—

Amazon Bedrock経由のClaude

Amazon Bedrockの規約による

Anthropicの人員は処理基盤にアクセスできないと公表

性能が高い最上位モデルほど、保存しない契約を選べない例がある点に注意が必要です(Claude Fable 5の企業導入で注意すべき点)。

個人情報を含むデータを送る場合は、個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日)も確認してください。個人情報を含む指示をAIに入力するときは利用目的の範囲内かを十分に確認すること、本人の同意なく入力した個人データが回答の作成以外の目的で扱われると個人情報保護法に違反する可能性があるため、提供元が学習に使わないことを十分に確認することが求められています。

2. データをどこで処理するか(国内で完結できるか)

医療・薬局・インフラなど「データを国外に出せない」業務では、同じAIでも、どの経路で契約するかによって国内処理の可否と料金が変わります。

契約の経路

日本国内だけで処理できるか

料金への影響

Claude API(Anthropicと直接契約)

できない。処理場所の指定は「全世界」か「米国」のみ

米国に限定すると1.1倍

Amazon Bedrock経由のClaude

できる。東京・大阪で処理する指定がある(対応するモデルは限られる)

地域を指定すると約10%高い

OpenAI API

日本での保存は選べるが、処理は国外になる可能性がある

地域指定の窓口は10%上乗せ(2026年3月5日以降に公開されたモデル)

Amazon Bedrockで国内処理に対応するモデルはモデルごとに違い、新しいモデルがすぐ対応するとは限りません。使いたいモデルが対応しているかは、契約前に個別に確認してください(AWS経由でClaudeを使う方法)。

3. AIのモデルは提供終了する

見落とされやすいのがこの点です。AIを組み込んだシステムの多くは、提供元のAIを外から呼び出して動いています。提供元が古いモデルや呼び出し方の提供を終えると、そのままではシステムのAIの部分が止まります。実際に次のような例があります。

  • OpenAI:AIアシスタントを作るための仕組み「Assistants API」の廃止を2025年8月26日に告知し、提供終了日を2026年8月26日としていました。これで作った仕組みは、1年の猶予のうちに別の方式へ作り替える必要がありました
  • Anthropic:Claude Sonnet 4とOpus 4の提供終了を2026年4月14日に告知し、6月15日に終了しました。告知は少なくとも60日前に行い、終了後の呼び出しは失敗すると明記されています
  • 告知が短い例:OpenAIのgpt-5.4-cyberは、2026年9月11日の告知から10月1日の終了まで約3週間です

新しいモデル名に書き換えるだけで済むとは限りません。Claude 4.7以降のモデルでは、回答のばらつきを調整する設定に既定以外の値を渡すとエラーになるなど、プログラムの修正と、答えの品質の再テストが必要になることがあります。組み込みの予算には、使い続けるあいだに何度か起きる乗り換えの対応を入れておいてください。

AIに「見せるデータ」と「させる操作」を絞る

上の3点に加えて、組み込み方そのものでリスクを下げられます。IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織編の3位に初めて選ばれ、AIが生成した結果を十分に検証せず鵜呑みにすることで生じる問題などが挙げられました。また、AIに読ませるメールや資料に悪意ある指示を紛れ込ませ、AIに本来と違う動きをさせる攻撃(プロンプトインジェクション)もあります。Webのセキュリティに取り組む国際的な非営利団体OWASPが、AIを使ったアプリの主なリスクをまとめた「OWASP Top 10 for LLM Applications 2025」では、この攻撃が1位に挙げられ、AIに必要以上の機能や権限を与えることも主要なリスクとされています。

総務省・経済産業省が2026年3月31日に公表した「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」について、PwC Japanの解説は、自律的に動くAIを導入する際に外部システムとの連携を適切に制限し、権限を正確に設定することが強調されていると整理しています。

実務での対策にまとめると、次の3つです。

  • AIに渡すデータは、その作業に必要な範囲だけにする(氏名などを伏せられるなら伏せる)
  • AIにさせる操作は読み取りを中心にし、登録・送信・削除の前には人の確認を入れる
  • AIの答えをそのまま確定させず、人が確認する画面を通す

パターン5(AIに操作させる)ほど、この設計に時間と費用がかかります。詳しくはAIエージェントのセキュリティ対策で解説しています。

医療機関・薬局の場合

医療機関や薬局の業務データを扱う場合は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の確認も必要です。2026年6月29日付で第7.0版の策定が通知され、二要素認証の対象の明確化や、保守を委託する事業者向けの編の新設などが盛り込まれました。AIに送るデータの範囲、処理場所、委託先の管理までを、このガイドラインに照らして決めることになります。当社には、薬局の複数店舗・数千人分の記録を、権限と確認の工程を含めて管理するシステムの開発実績があります(AIを組み込んだ実績ではありません)。

AIを組み込まない方がよいケース

組み込みには、つなぐ部分の開発費がかかります。次のような場合は、組み込みをおすすめしません。

ケース

理由

代わりにできること

使う人が数人で、件数も少ない

開発費を回収できない

法人向けのAIサービスを単体で契約し、社内の利用ルールを決めて使う

毎回の判断が例外だらけで、判断のルールを言葉にできない

AIに渡す指示が作れず、結局人が全件を見直すことになる

まず判断のルールを文書にする。言葉にできない部分は人が持つ

最終的な決裁をAIに任せたい

AIの答えは間違うことがあり、誤りの責任を誰も持てない

AIは下書きや候補出しまでにして、決裁は人が行う

今のシステムを1年以内に入れ替える予定がある

組み込んだ部分が入れ替えで無駄になる

入れ替え先の製品に、標準のAI機能があるかを先に確認する

対象の業務が紙や口頭に頼っている

AIに渡すデータがない

先に電子化する

AIに任せる範囲と、人が持つ範囲の分け方はAIエージェントに任せられる業務で整理しています。

当社が公開している実績|取込・確認画面・権限の設計

当社が公開している受託開発の実績のうち、この記事の内容に関係するのは次の2つです。どちらもAIを組み込んだ案件として紹介するものではありません。既存のデータを取り込み、人が確認する画面や権限を作った部分が、前述の段階2・段階3と同じ考え方にあたります。守秘義務のため、社名や金額、効果の数値は出していません。

実績

作ったもの

この記事との関係

通信事業

数万件の請求情報の取込・集計と、確認の画面

大量のデータを取り込み、人が確認してから確定する流れ(段階2・3の土台)

薬局

複数店舗・数千人分の記録の管理、権限、確認の工程

誰がどのデータを見て、誰が確定できるかを分ける権限の設計(段階1〜3の権限の分け方)

この記事で紹介できる公開済みの実績は、上の2つです。そのため、3段階の分け方は、条件を明記した架空のデータで検証しました。

導入までの流れと期間

既存システムへのAIの組み込みでは、開発そのものよりも、つなぐ窓口の確認と、送ってよいデータの審査で時間がかかりがちです。

段階

やること

期間の目安

自社側の作業

1. つなぐ窓口の確認

APIやCSV出力の有無、設計書の有無、改修を引き受ける会社の有無、契約プランの制限を調べる

設計書があれば数日〜2週間。ない場合は調査だけで1〜2ヶ月

契約書・保守契約・管理画面の確認、今のシステムの提供元への問い合わせ

2. 送ってよいデータの線引き

個人情報・機密の範囲、伏せ方、処理場所、保存期間を決める

情報システム部門・法務の審査で2週間〜2ヶ月

社内規程の確認。審査資料の様式を先にもらう

3. データの提供

対象データを実際に出力して渡す

5日〜1ヶ月

1週間分だけ先に出力してみる

4. 合格ラインと人の確認の置き場所

精度・処理時間・件数の合格基準と、AIの答えを誰がどこで確認するかを決める

PoCの最初の2週間程度

判断のルールを言葉にする

5. 実装・テスト

画面にボタンを足す、データを流す、AIへの指示文を調整する

既存システムの改修で2週間〜1.5ヶ月、PoCで2〜3ヶ月、本開発で3〜6ヶ月

実データでの確認(件数と時間は範囲によって変わる)

6. 使い始めてから

利用料の上限の設定、利用記録の確認、モデル提供終了への対応と再テスト

継続

保守契約の範囲を確認

小さな組み込みでも、予定どおりに終わるとは限りません。JUASの「ソフトウェア・メトリクス調査2025」では、規模が50人月(1人が1か月働く量の50倍)未満のプロジェクトの56%が標準的な工期を超えていました。主に大企業のデータですが、「小さいからすぐ終わる」とは考えず、段階1〜3を契約前から進めておくと遅れを防げます。工程ごとの期間はAI開発の期間で詳しく解説しています。

当社に相談いただく場合の流れ

ご相談 → 課題・要件の整理 → 提案・見積 → PoC、改修または本開発 → 導入・改善、の順に進めます。初回相談は無料・30分(オンライン)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。今のシステムと、AIに任せたい操作を伺い、自社でAIを使って進める部分と任せる部分を一緒に切り分けます。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

次の4つが分かっていると、どのパターン・どの段階に当たるかを早く見立てられます。すべて揃っていなくても構いません。

  • 今使っているシステムの名前、提供元、契約プラン
  • AIに任せたい操作と、それが読み取り・下書き・登録のどこまでか(人がシステムとAIのあいだを行き来している箇所)
  • APIやCSVの出力・取込が使えるか、ソースコードや設計書が手元にあるか、今の保守会社が改修を受けるか
  • AIに送りたいデータに個人情報が含まれるか、国内での処理が必要か

申し込みの際に、パスワードやAPIの鍵などの認証情報や、実際の顧客データは送らないでください。ソースコードや成果物の引き渡しにも対応しています。

▶ 今のシステムに、AIに任せたい操作をつなげるか相談する

どのパターンか決めきれない段階での相談の仕方は、要件が固まっていない段階で開発会社に相談する方法にまとめています。

よくある質問

Q1. 今のシステムを作った会社以外に、AIの組み込みを頼めますか。

頼めますが、条件によって進め方が変わります。まず、①プログラム本体(ソースコード)と設計書を自社で持っているか、②今の保守契約や利用規約に、他社による改修やデータの取り出し方についての制限がないか、③管理画面からデータの出力や外部連携の設定ができるか、を確認してください。①が揃っていれば、別の会社でも画面にAIの機能を足す改修ができます。揃っていない場合でも、データの出力機能を使って本体の外でAIの処理を行う方法なら、本体に手を入れずに済むことがあります。②の制限は契約ごとに違うため、今の提供元に直接確認するのが確実です。これから開発を発注する場合に、何を受け取っておくべきかはシステム開発の納品物で解説しています。

Q2. AIの提供元(OpenAI、Anthropic、Googleなど)は、組み込んだ後に乗り換えられますか。

作り方しだいで乗り換えられます。AIを呼び出す部分をシステムの他の部分から切り離して作っておけば、提供元を替えるときに直す範囲がその部分に限られます。発注時に「提供元を替えるとき、どこを直すことになるか」を聞いておくと、作りの良し悪しを判断できます。ただし、提供元を替えると同じ指示でも答え方が変わるため、業務で使っている質問や書類で答えの品質を確かめ直す作業は毎回必要です。料金の差も大きく、この記事の試算でも最も安いモデルと高いモデルで20倍以上の開きがありました。乗り換えを視野に入れるなら、試作の段階で2つ以上のモデルを同じ業務データで比べておくと、切り替え先の見当がつきます。

Q3. 社員が無料版のAIで試している段階です。試作にも有料の契約が必要ですか。

業務データを使うなら、試作の段階から法人向けの有料契約を使ってください。たとえばGoogleのGemini APIは、無料版で送ったデータは製品の改善に使われると公式に明記しています。試作の利用料は大きな金額になりません。Anthropicの公式の試算では、Claude Haiku 4.5で問い合わせ1万件(1件あたり平均約3,700トークン)を処理して約37ドルです。どうしても無料版で試す場合は、実在の顧客名や金額を含まない、自分で作った見本のデータだけを使ってください。

Q4. AIの組み込みに補助金は使えますか。

既存システムに合わせて個別に作る組み込みの開発は、原則として「デジタル化・AI導入補助金」の対象になりません。この補助金は登録されたITツールの導入が対象で、ゼロから作る開発を伴うもの、大幅なカスタマイズが必要なもの、特定の顧客向けで一般に販売されていないものは、登録の対象外とされているためです。一方、AI機能の付いた既製の製品で、登録済みのものを導入する場合は対象になる可能性があります。締切は公募の回ごとに設定されるため、申請を考える場合は事務局の公式サイトで最新の回と締切日を確認してください。対象になるツールの見分け方はAI導入補助金の対象ツール、申請してから入金されるまでの資金繰りは補助金の入金時期で解説しています。

Q5. 社内にエンジニアがいなくても、組み込んだ後の運用は回りますか。

回せますが、運用で発生する作業を誰が持つかを、契約前に決めておく必要があります。組み込んだ後に発生するのは、主に①利用料の上限の設定と、毎月の請求額の確認、②「AIの答えがおかしい」と現場から報告があったときの原因の切り分け、③提供元のモデル提供終了の告知を見張り、乗り換えと再テストを行うこと、の3つです。①は提供元の管理画面での作業が中心なので社内でも対応しやすい一方、②と③は技術的な作業になるため、保守契約に含めるのが現実的です。保守契約の範囲と費用の考え方はシステム保守運用費の相場で解説しています。

Q6. AIの答えが間違っていて損害が出たら、誰の責任になりますか。

AIの提供元や開発会社が責任を負うとは限らないため、AIの答えを人が確認してから確定する業務の流れにしておくことが最も確実な備えです。そのうえで、開発会社との契約では、AIの答えの正確さを保証の対象にするのか、どの水準を合格とするのか、誤りが見つかったときの修正をどこまで契約の範囲で行うのかを事前に決めてください。PwC Japanの解説によると、国のAI事業者ガイドライン(第1.2版)も、AIを業務で使う側に、提供者が定めた利用ルールを守ることや、異常があったときの情報共有を求めています。契約の形による責任範囲の違いはAI開発の契約形態で解説しています。

Q7. AIの利用料が想定より膨らまないようにするには、どうすればいいですか。

主な方法は3つです。1つ目は、急がない処理をまとめて依頼する方式を使うことです。Anthropicでは、この方式の利用料が通常の半額になります。夜間にまとめて分類する作業などで使えます。2つ目は、毎回同じ内容を読ませる部分(社内の対応ルールなど)の再利用です。Anthropicでは、再利用した部分の読み込みは通常の1割の単価になります。3つ目は、作業ごとにモデルを使い分けることです。分類や短い要約は軽量のモデル、判断が難しい文章だけ上位のモデル、と分ければ、全件を上位のモデルで処理するより利用料を抑えられます。あわせて、利用料の上限を設定しておくと、想定外の請求を防げます。

Q8. 今のシステムのAPIに、読み取りだけの権限がありません。AIに登録まで任せるしかないですか。

そうとは限りません。方法は主に3つです。1つ目は、AIから今のシステムを直接呼ばず、あいだに自社の小さな仕組みを置いて、そこで読み取り以外の呼び出しを止めることです。鍵そのものは登録もできる権限でも、AIが使える操作を仕組みの側で絞れます。2つ目は、CSVなどで出力したデータの写しだけをAIに渡し、AIからは本体に触れないようにすることです(パターン3)。3つ目は、AIの結果を下書きとして別の置き場に出し、登録は人が今の画面から行うことです。どれを選ぶかは、件数、登録のたびにかかる人の手間、あいだに置く仕組みを誰が保守するかで決まります。なお、あいだに仕組みを置いても、鍵そのものが漏れれば登録ができてしまうため、鍵の保管場所と使える人の管理は別に必要です。

既存システムにAIを組み込むか迷っている方へ

既存システムは、作り直さなくてもAIを足せます。まず提供元のAI機能を確かめ、足りなければ、画面に1つ足す、データの出入口でつなぐ、社内の資料を読ませる、操作まで任せる、と小さい順に検討してください。AIに任せる操作は、読み取りだけ、下書きを人が確認、承認後に登録、の順に1段ずつ広げます。費用の大半はAIの利用料ではなく、つなぐ部分を作り、動かし続けるための人の費用です。

  • 社員はAIを使っているのに、システムとAIのあいだのコピー&ペーストがなくならない
  • AIを試験導入したが、社内のデータとつながらず、本番に進めていない
  • AIに登録まで任せたいが、誤った登録や二重登録をどう防ぐかを決められない
  • 今のシステムは変えたくないが、どこまでAIを足せるのか、いくらかかるのか見当がつかない

いずれかに当てはまるなら、ご相談ください。初回相談は無料・30分(オンライン)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。当社の価格は、既存システムの改修が100万円〜、PoCが300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別。クラウドやAIの利用料などの実費は別途)。公開している実績は、通信事業の請求情報の取込・集計・確認画面と、薬局の記録管理・権限・確認工程の開発です。

今のシステムの名前と、AIに任せたい操作をお聞かせください。5つのパターンと3つの段階のどこに当たりそうか、費用の目安、次に必要な資料を、相談後の相談メモでお返しします。提供元のAI機能で足りる場合は、開発をおすすめしません。

▶ 今のシステムに、AIに任せたい操作をつなげるか相談する

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