生成AIのセキュリティリスクとは?情報漏洩・プロンプトインジェクション・企業と個人の対策を解説

この記事のポイント
生成AI利用時の主なセキュリティリスクを個人・企業別に整理。Claude・ChatGPT・GeminiのデータポリシーとAIエージェント時代の新リスク、今日から使えるチェックリストも掲載。
生成AIは業務効率化に有効なツールですが、使い方を誤ると情報漏洩・誤情報の採用・著作権侵害・サイバー攻撃への加担といった深刻なリスクが伴います。個人利用でも企業利用でも、セキュリティの基本知識は今や必須です。
この記事では、生成AIのセキュリティリスクの全体像を個人・企業別に整理し、Claude・ChatGPT・Geminiそれぞれのデータポリシー比較、2025〜2026年に拡大するAIエージェントの新リスク、今日から実践できるチェックリストまでまとめています。
こんな方に向けた記事です:
- 生成AIを業務に導入したいが、リスクが心配な企業担当者
- 普段から生成AIを使っているが、セキュリティが気になる個人ユーザー
- 社内のAI利用ルール策定を担当しているセキュリティ・情報システム部門の方
生成AIの主なセキュリティリスク一覧
生成AIのリスクは「情報漏洩だけ」ではありません。現時点では、大きく6つのカテゴリに分類できます。
リスク分類 | 概要 | 影響範囲 |
|---|---|---|
① 情報漏洩 | 入力内容がモデル学習や第三者に流出 | 個人・企業 |
② ハルシネーション | 事実と異なる情報をもっともらしく出力 | 個人・企業 |
③ プロンプトインジェクション | 悪意ある入力でAIを不正操作 | 企業・開発者 |
④ 著作権・知財リスク | AI生成コンテンツの商用利用時の法的問題 | 個人・企業 |
⑤ 詐欺・攻撃への悪用 | フィッシング高度化・マルウェア生成・ディープフェイク | 社会全体 |
⑥ AIエージェントリスク | 自律行動AIが引き起こす制御不能・過剰権限 | 企業・開発者 |
IPAの2024年調査では、生成AI利用時のセキュリティルールを整備している企業は20%未満にとどまる一方、約60%の企業が脅威を認識しています。「知っているが対策していない」状態が大多数です。
個人利用で注意すべきリスクと対策
個人が生成AIを使う際の最大のリスクは、プライバシー情報を無自覚に入力してしまうことです。
プライバシー情報の無意識な入力
氏名・住所・クレジットカード番号・医療情報などを「相談」や「文書作成」の過程で入力するケースがあります。無料プランでは、入力内容がモデル改善に利用される可能性がある点を理解して使う必要があります(各サービスの設定でオプトアウトできる場合があります)。
入力を避けるべき情報の例:
- 本名・住所・電話番号・生年月日
- クレジットカード番号・銀行口座情報
- 医療・健康に関する個人情報
- 友人や家族の個人情報(第三者の情報)
- 企業の機密情報(業務利用の場合は特に注意)
ハルシネーション(誤情報の受け入れ)
生成AIは事実と異なる情報を自信満々に出力することがあります(これを「ハルシネーション」と呼びます)。米国では弁護士がChatGPTが生成した架空の判例を確認せず法廷に提出し、制裁金を受けた事例もあります。
ファクトチェックが特に必要な場面:
- 法律・医療・税務の判断を仰ぐ場合
- 数値・統計・固有名詞が含まれる情報
- 「〜によると」という形で引用元が示されている場合(実在しない場合あり)
AIを悪用した詐欺被害
AI生成フィッシングメールは従来より説得力が増しています。2025年第1四半期だけでディープフェイク詐欺の被害額は2億ドルを超えたという報告(ESETサイバーセキュリティ情報局)もあります。AIが生成したと思われる自然な文体のメール・音声・動画には注意が必要です。
個人ユーザーが今すぐできる対策 5選:
- 各サービスの設定で「チャット履歴によるモデル学習」をオプトアウトする
- 個人情報・金融情報は絶対に入力しない
- 重要な判断(医療・法律・金融)は必ず公式情報と突き合わせる
- 不審なメール・音声・動画への返信や送金は立ち止まる
- 利用サービスの無料プランと有料プランのデータポリシーの違いを確認する
企業利用で注意すべきリスクと対策
企業が生成AIを導入する場合、個人利用よりも影響範囲が広く、より高いレベルのガバナンス体制が求められます。
情報漏洩(シャドーAI問題)
企業が把握していない従業員の個人的なAIツール利用(シャドーAI)は、今や最大のリスクの一つです。IBMの調査によると、シャドーAIの利用率が高い組織ではデータ侵害1件あたりの平均被害コストが67万ドル高くなるとされています。また20%の企業がシャドーAI起因のインシデントを経験しています(IBM「2025年データ侵害のコストに関する調査」)。
実際に起きたインシデント事例:
- 報道によると、大手メーカーのエンジニアが業務効率化のために機密ソースコードをChatGPTに入力 → 企業内での使用禁止措置が取られた
- リートン(日本向け生成AIサービス)でデータベース設定不備によりプロンプトとその結果が外部から閲覧可能な状態が継続(2024年3月)
ハルシネーションに基づく意思決定ミス
企業の場合、ハルシネーションに基づいた経営判断・法的判断・顧客対応が発生すると、企業責任につながります。実際に、AIチャットボットが「プロンプト操作により新車を1ドルで販売」という情報を提示してSNS炎上した事例や、AIが誤った返金保証情報を出力して顧客訴訟になった事例が確認されています。
プロンプトインジェクション
生成AIを使ったサービスやチャットボットを企業が提供する場合、ユーザーが悪意ある入力(プロンプトインジェクション)によってAIを不正に操作するリスクがあります。OWASPの「LLM Top 10」でもっともリスクが高い項目として挙げられています。
企業が整備すべき対策体制(SOMPOリスクマネジメント参照):
- リスクマネジメント体制の整備 — 情報システム・リスク管理・法務が横断的に連携する体制
- 利用ガイドラインの策定 — 入力禁止情報の明確な定義、ハルシネーションの確認義務化
- リスクアセスメント実施 — ユースケース別の発生確率・影響度の評価
- 技術的コントロール — DLPツール・入出力ログ保存・不適切利用の検知
- 定期的なモニタリング — ガイドライン遵守の継続確認と改訂
主要サービスのデータポリシー比較(Claude・ChatGPT・Gemini)
現時点(2026年3月)での各サービスのデータポリシーを整理します。各社のポリシーは更新されることがあるため、最終確認は公式ページで行ってください。
プラン別データポリシー比較表
項目 | Claude(無料/有料個人) | Claude(API/Enterprise) | ChatGPT(無料/有料個人) | ChatGPT(Enterprise/Business) | Gemini(個人) | Google Workspace(法人) |
|---|---|---|---|---|---|---|
学習への利用 | オプトイン/アウト対応(2025年8月アップデートより) | モデル訓練に使用しないと明記 | 設定でオプトアウト可 | デフォルトで学習に使用しない | 使用される可能性あり(人間レビューも) | 学習に使用しない |
人間レビュー | Trust & Safetyチームのみ必要時 | 原則なし(契約次第) | サービス改善目的あり | なし | あり(一部) | なし |
暗号化 | 転送時・保存時 | 転送時・保存時 | AES-256(保存)TLS 1.2以上(転送) | AES-256 + EKM(顧客独自キー) | 転送時 | 転送時・保存時 |
セキュリティ認証 | SOC 2 Type II(Enterprise) | SOC 2 Type II | SOC 2 Type 2、ISO 27001等 | SOC 2 Type 2、ISO 27001等 | FedRAMP High | FedRAMP High |
管理コンソール | なし | あり | なし | あり | なし | あり(DLP継承) |
企業での業務利用は、API・Enterpriseプランが原則です。個人向け無料プランで機密情報を扱うことは、データポリシー上のリスクがあります。
公式データポリシーの確認先
- Anthropic(Claude): https://www.anthropic.com/privacy
- OpenAI(ChatGPT): https://openai.com/enterprise-privacy/
- Google(Gemini): https://workspace.google.com/security/ai-privacy/
AIエージェント時代に拡大する新しいリスク
2025〜2026年に特に注目すべきなのが、AIエージェント(自律型AI)特有のリスクです。従来の「質問→回答」型のAIと異なり、AIエージェントはウェブ検索・ファイル操作・コード実行・外部サービスとの連携を自律的に行います。
OWASPが警告するExcessive Agency(過度な自律性)
OWASPの「LLM Top 10」では、AIに過剰な自律行動を付与することで生じるリスク(LLM08: Excessive Agency)を主要リスクの一つとして挙げています。AIエージェントが「必要以上の権限」を持った状態で運用されると、意図しない操作(ファイル削除・外部データ送信等)が発生しうるという警告です。
2026年の最新予測
HYPRの2026年セキュリティレポートでは以下の状況が報告されています:
- 企業セキュリティ担当者の約53%が生成AIを最大リスクと認識、45%がAIエージェントを脅威と認識
- 「自動化されたエージェントが人間より多くのパスワードを漏らし、認証リスクが個人規模から産業規模へ移行する」との予測
- 87%の組織がディープフェイク詐欺に遭遇(2025年時点)
世界経済フォーラム「Global Cybersecurity Outlook 2025」でも、66%が「今後1年でAIがサイバーセキュリティに最大の影響を与える」と回答しています。
AIエージェントを安全に使うためのポイント
- AIエージェントに付与する権限は「必要最小限」に設定する
- 実行ログを必ず記録し、定期的にモニタリングする
- 重要な操作(ファイル削除・外部送信等)には人間の承認ステップを設ける
- 外部プラグイン・ツール連携を使う場合は、そのプラグインのセキュリティも確認する
今日から始める対策チェックリスト
個人向けチェックリスト(5項目)
- 使っているサービスのデータポリシーを一度確認した
- 「チャット履歴」や「モデル学習」のオプトアウト設定を確認・変更した
- 個人情報(氏名・住所・クレジットカード番号等)を入力していない
- 重要な情報(医療・法律・金融)はAIの回答を鵜呑みにせず公式情報で確認している
- 不自然に自然なメール・音声・動画に対して一度立ち止まるクセをつけた
企業向けチェックリスト(10項目)
- 社内のAI利用ガイドラインを策定・周知している
- 入力禁止情報(個人情報・機密情報等)を明確に定義している
- 従業員に対してAIセキュリティに関する研修を実施している
- 業務利用のAIはAPIプランまたはEnterpriseプランを使用している
- シャドーAI(非承認ツールの個人利用)の実態を把握している
- DLPツールや利用ログの記録・監視体制を整備している
- AIが生成した情報を最終判断に使う際のファクトチェックプロセスがある
- プロンプトインジェクション対策(入力検証・出力サニタイジング)を実装している(AI提供側の場合)
- AI関連のインシデント対応手順(報告フロー・対処方法)を定めている
- 定期的にリスクアセスメントとガイドラインの見直しを実施している
こんな使い方は特に注意が必要です
安全に使えるケース(一般的に)
- テキスト作成・要約・アイデア出しなど、機密情報を含まない作業
- 一般的な情報収集(ただしファクトチェック必須)
- API/Enterpriseプランを導入した企業環境での業務利用
- 学習・勉強目的の情報収集
慎重な判断が必要なケース
- 法律・医療・金融に関する具体的な判断(専門家への確認が前提)
- 個人情報・機密情報を含む文書の作成・処理
- AI生成コンテンツの商用利用(著作権の確認が必要)
- 顧客向けのチャットボットや自動応答システムへの導入
特に向いていないケース
- 無料プランのまま、業務機密を日常的に入力する運用
- AIの回答をファクトチェックなしに公開・報告する運用
- セキュリティ評価なしに新しいAIエージェントを業務システムに統合する
- 法的責任が伴う判断(法律文書・医療診断等)をAIに委任する
公式ガイドライン・参考情報一覧
コンプライアンス担当者や情報システム部門の方が参照すべき公式ガイドラインをまとめます。
発行元 | 資料名 | 主な対象 | 公表時期 |
|---|---|---|---|
IPA(情報処理推進機構) | AI利用時の脅威・リスク調査報告書 | 全般 | 2024年7月 |
IPA | テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン | 企業導入担当者 | 2024年7月 |
IPA | 情報セキュリティ10大脅威 2025 | 全般 | 2025年1月 |
経済産業省・総務省 | AI事業者ガイドライン(第1.1版) | AI開発者・提供者・利用者 | 2025年3月28日 |
NIST(米国国立標準技術研究所) | AI Risk Management Framework(AI RMF 1.0)※日本語版あり | 企業・開発者 | 2023年(日本語版2024年6月) |
OWASP | LLM Top 10 for Large Language Model Applications(v1.1) | 開発者 | 2024年 |
EU | EU AI Act(AI規制法) | EU域内・EU向けサービス提供企業 | 2024年8月発効 |
各ガイドラインへのリンク:
よくある質問(FAQ)
Q1. 生成AIに入力した情報は必ず学習に使われますか?
現時点では、プランによって異なります。無料・個人向け有料プランでは学習に使用される可能性がありますが、多くのサービスでオプトアウト設定が用意されています。APIプランやEnterpriseプランでは、一般的に学習に使用しないと明記されています。詳細は各サービスの公式プライバシーポリシーで確認してください。
Q2. ChatGPTの無料プランは危険ですか?
「危険」と断定するのは正確ではありません。ただし、無料プランでは入力内容がサービス改善に使われる可能性があります。個人情報・機密情報を入力しない、オプトアウト設定を行うという対策で多くのリスクは回避できます。企業の業務利用にはBusinessプランまたはEnterpriseプランを利用してください。
Q3. 生成AIは著作権侵害になりますか?
一概には言えません。現時点では、生成AIの出力物が既存の著作物に類似する場合は問題が生じる可能性があります。商用利用の際は、生成物が特定のコンテンツに依存していないか確認する習慣が必要です。日本でも著作権法の適用に関して議論が続いており、定期的な情報確認をおすすめします。
Q4. 社員が勝手に生成AIを使っているのをどう防げますか?
完全な禁止より、利用ルールの整備が効果的です。シャドーAI対策として、承認済みのツール一覧と利用ガイドラインの策定、研修の実施、DLPツールによる機密情報の送信検知が基本的な対応です。禁止だけでは抜け道が生まれるため、「安全に使える環境を整備する」方向性が一般的に推奨されています。
Q5. AIエージェントはどんなリスクがありますか?
AIエージェントは従来型AIよりリスクの範囲が広くなります。自律的にウェブアクセス・ファイル操作・API呼び出しを行うため、過剰な権限を付与すると意図しない操作が発生する可能性があります。権限の最小化・ログの記録・人間の承認ステップの設置が基本的な対策です。2026年には認証・アクセス管理リスクが個人規模から産業規模に移行するという予測もあります。
まとめ:生成AIのセキュリティリスクを正しく理解して安全に使う
生成AIのセキュリティリスクは、使わないことで回避するのではなく、リスクを理解した上で適切な対策を取ることが現実的な対応です。
この記事のポイント:
- 主なリスクは「情報漏洩・ハルシネーション・プロンプトインジェクション・著作権侵害・詐欺悪用・AIエージェントリスク」の6種類
- 個人利用では「個人情報を入力しない」「オプトアウト設定を確認する」「ファクトチェックを怠らない」が基本
- 企業利用ではAPI/Enterpriseプランの導入とガイドライン策定が最優先
- 主要サービスはEnterpriseプランでSOC2/ISO認証等のセキュリティ体制を持つ
- 2025〜2026年にはAIエージェントによる新リスクの拡大に注目が必要
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この記事の著者

AI革命
編集部
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