AI開発の契約形態|請負・準委任・ラボ型の違いと選び方【2026年9月最新】

この記事のポイント
AI開発の契約形態を請負・準委任・ラボ型・段階分割で比較。人月単価と印紙税の実額、発注側にかかる社内工数、2026年1月施行の取適法まで、発注する側が契約書のどこを見て何を交渉すべきかを数字で整理しました。
AI開発の契約は、検証段階を準委任、仕様が固まった本開発を請負という段階分けで組むのが実務の基本形で、この組み方だけで見積総額は2〜3割変わります。費用の相場は、検証(PoC)が100万〜500万円、本開発が500万〜3,000万円、運用が年間で初期費用の15〜25%程度です。
「請負と準委任、どちらで契約すべきか」という質問には、実は国の公式見解があります。経済産業省が2025年2月18日に公表した「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」は、準委任か請負かを抽象的に議論するより、求める成果の内容と水準を明確にして契約に書くほうが重要だと述べています。この記事は、その「成果の内容と水準」を発注する側がどう決め、どの契約形態に落とすかを、金額と期間の実数つきで整理したものです。
AI開発の契約形態は3つ+段階分割

見積書と一緒に出てくる契約書は、名前が違っても中身はほぼ次の3種類に分類できます。まず全体像を押さえてください。
契約形態 | 法的な根拠 | 完成させる義務 | 報酬の決まり方 | 納品後の無償修補(契約不適合責任) | 収入印紙 | 向く場面 |
|---|---|---|---|---|---|---|
請負 | 民法632条〜 | あり | 成果物単位の固定額 | あり | 課税(第2号文書) | 仕様が確定した本開発、既存システムの改修 |
準委任・履行割合型 | 民法656条・648条 | なし | 人月単価 × 稼働量 | なし(善良な管理者の注意を尽くす義務は負う) | 原則不要 | 事前調査、PoC、要件定義、運用保守 |
準委任・成果完成型 | 民法648条の2 | なし(成果を引き渡して初めて報酬が発生する) | 成果の引き渡し時に支払い | なし | 原則不要 | AI開発の折衷案。検証から本開発への橋渡し |
ラボ型(専属チーム契約) | 法的には準委任の一種 | なし | 月額固定 ×(人数 × 契約期間) | なし | 基本契約は第7号文書として4,000円になることが多い | 長期の継続改善、運用しながら育てるAI |
段階分割(フェーズごとに締結) | 段階ごとに上記を使い分ける | 段階による | 段階ごとに見積・締結 | 段階による | 段階ごと | 経済産業省のガイドラインが推奨する型 |
ここで発注する側が最も誤解しやすいのが、表のいちばん右から4列目です。
成果完成型の準委任は、「成果が出なければ払わない」形にはできますが、納品後に不具合が見つかったときに無償で直させる権利(契約不適合責任)は付いてきません。 請負にしかない権利です。「成果完成型なら請負と同じ」と説明されたら、そこは正しくありません。
なお、契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも、中身が完成義務を定めていれば請負として扱われます。判断するのは表紙ではなく条文です。
なぜAI開発は「完成を約束する契約」になりにくいのか
システム開発なら一括請負が普通なのに、AI開発になると多くの開発会社が請負を避けます。理由は営業上の駆け引きではなく、技術の性質です。
経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(2018年6月公表、2019年12月にver1.1)は、この点をはっきり書いています。AIは学習用データから帰納的に作られるため、精度はデータの量と質に左右され、まだ見ていないデータに対する精度を事前に保証することが技術的に困難です。そのため、一定の精度を持つAIの完成について法的責任を負う請負型の契約には、開発会社が難色を示すのが一般的である、という整理になっています。
発注する側からすると、これは不利な話に聞こえます。ただ、逆から見てください。
「正解率95%を保証します」と契約書に書く会社は、次のどちらかです。
- 保証できないリスクを見込んで、その分を価格に上乗せしている
- 実現できず、後で揉める
同ガイドラインでも、性能を保証するとしても「あらかじめ合意した評価用データに対する精度」に限定するか、成果完成型の準委任を活用する、という考え方が示されています。条件のない数値保証は、発注側にとって安心材料ではなく危険信号だと考えてください。
一方で、「準委任だから開発会社は何の責任も負わない」わけでもありません。準委任でも善良な管理者の注意を尽くす義務を負います。同じ分野の専門業者として通常期待される水準で仕事をする義務のことで、平たく言えば「完成は約束しないが、手を抜くことは許されない」という意味です。それが果たされているかは、契約書ではなく運用で確認します。具体的には、週次の進捗報告、中間成果物の提出、評価指標(正解率だけでなく、どれだけのケースをカバーできたか等)の推移の3点を契約書に書き込んでおけば、準委任でもブラックボックスにはなりません。
国が勧めているのは「段階を分けて契約する」進め方

経済産業省のガイドラインが推奨しているのは、ウォーターフォール型の一括契約ではなく、開発を4段階に分けて都度契約する進め方です。
段階 | 何をするか | 主な成果物 | 想定される契約 |
|---|---|---|---|
① アセスメント(事前調査) | 少量のサンプルデータで、そもそもAIで解ける課題かを見極める。学習に使えるデータを用意できるかも確認 | 調査レポート | 秘密保持契約(NDA) |
② PoC(実証実験) | 自社のデータで実際に学習を回し、目標とする精度に届きそうか、コストと期間が見合うかを検証。この段階のモデルは未完成 | 検証レポート、試作モデル | 導入検証契約 |
③ 開発 | 本番用のデータセットで本格的に学習させ、使えるモデルを作る | 学習済みモデル、各種ドキュメント | ソフトウェア開発契約 |
④ 追加学習 | 納品後のデータを追加で学習させ、精度を保つ・上げる | 再学習後のモデル | 保守運用契約 |
段階を分ける狙いは、やめどころを作っておくことです。①や②で「このデータでは無理」と分かれば、そこで止められます。1本の請負契約で3,000万円を投じてから気づくのとは、損失の桁が違います。
段階分割にはコストもあります。契約の締結は1本あたり2週間〜1か月かかるため、4段階に分ければそのぶんリードタイムが伸びます。これは分割の代償として織り込んでおいてください。
契約書のひな形は無料で手に入る
自社で契約書をゼロから起こす必要はありません。公的機関がひな形を無償公開しています。
- 特許庁・経済産業省「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書」AI編(ver2.0で整備、2022年3月)— 秘密保持契約 → 技術検証(PoC)契約 → 共同研究開発契約 → 利用契約の流れが、逐条解説つきで公開されています。オープンイノベーションポータル
- IPA「情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)」(2020年3月31日公開)— 請負ではなく準委任を前提としたモデル契約書。契約前チェックリストが付属します。IPAのページ
- 経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(2025年2月18日公表)— 自社がAIに渡す側(プロンプト・学習用データなど)と、AIが出す側(生成物・成果物)の2軸で、契約書の条項ごとに確認すべき点を整理した最新版です。法務担当者向けだけでなく、事業部門が発注前に初期検討する用途も想定されています。経済産業省の公表ページ
このモデル契約書には、「本開発をちらつかされて無償で検証をやらされる」「検証で得た知見の譲渡を強要される」といった紛争を未然に防ぐ狙いも書かれています。開発会社から出てきた契約書と、これらのひな形を並べて読むだけで、どこが自社に不利かは相当見えます。
請負で組むべきケース・準委任で組むべきケースの境界線
「AI開発は準委任」と一般化されがちですが、実際には請負のほうが発注側に有利な場面が確実にあります。境界線は、発注時点で「完成」を言葉で定義できるかどうかの一点です。
請負で組むべきケース | 準委任・段階分割で組むべきケース |
|---|---|
画面・帳票・処理内容が仕様書レベルで確定している | 「何を作れば業務が回るか」がまだ言語化できていない |
既存システムの改修で、変更範囲が特定できる | 学習に使えるデータが揃っているか未確認 |
AIを新たに学習させず、既製のAIサービスを組み込むだけ | 目標精度が決まっていない、または決められない |
検収の合格条件を数値や画面で示せる | 業務の運用ルール自体を作りながら決める |
社内に開発判断を返せる担当者を置けない | 週2〜5時間の判断・確認に社内の誰かを充てられる |
右側の条件に1つでも当てはまるなら、いきなり請負にすると「仕様変更=追加見積」の応酬になります。逆に、左側にすべて当てはまる案件をわざわざ準委任にすると、社内工数を余分に払うだけになります。
判断がつかないときの実務的な答えは、「事前調査だけを準委任で先に発注する」です。 20万〜50万円規模の調査を1か月かけて先に回し、その結果を仕様書にして本開発を請負で相見積もりに出す。これがいちばん総額が読める進め方です。当社でも、この事前調査だけを切り出した小規模な発注(30万円〜・税別)をお受けしています(受託開発サービスの内容はこちら)。
契約形態ごとの費用と、発注側にかかる時間

ここが上位の解説記事にほとんど書かれていない部分です。契約形態を選ぶという行為は、金額と、自社が使う時間を同時に選ぶ行為です。
人月単価の目安
準委任・ラボ型の見積は「人月単価 × 人数 × 月数」で組まれます。単価の相場は発注先の規模で明確に分かれます。
発注先 | 人月単価の目安 |
|---|---|
フリーランス | 50万〜80万円 |
中小の開発会社 | 70万〜120万円 |
大手システムインテグレーター | 120万〜200万円 |
役割別では、進行と品質に責任を持つプロジェクトマネージャーが100万〜150万円、システム全体の設計を決める技術責任者(アーキテクト)が100万〜140万円、経験の浅いエンジニアが40万〜70万円。全体の一般的な目安は1人月あたり60万〜100万円前後です。
ラボ型で海外の開発チームを使う場合はさらに下がります(1人月あたり、オフショア開発.com「オフショア開発白書2025年版」より)。
国 | プログラマ | シニアエンジニア | ブリッジSE | プロジェクトマネージャー |
|---|---|---|---|---|
6カ国平均 | 34.0万円 | 51.1万円 | 59.6万円 | 69.5万円 |
ベトナム | 40.1万円 | 50.0万円 | 59.0万円 | 71.4万円 |
インド | 37.5万円 | 45.0万円 | 60.0万円 | 67.5万円 |
フィリピン | 37.2万円 | 47.5万円 | 60.5万円 | 63.5万円 |
中国 | 58.3万円 | 71.7万円 | 75.8万円 | 84.6万円 |
表にある「ブリッジSE」は、日本側の要望を海外の開発チームに翻訳して伝える橋渡し役です。オフショアの品質を実質的に左右するのはこのポジションで、ここを削ると単価の安さが手戻りで消えます。
数字だけ見れば国内の半額です。ただしラボ型は契約期間が半年〜1年で組まれるのが一般的で、発注する仕事がない月も費用は発生します。リソースを予約する契約だからです。稼働率が7割に落ちれば、実質の単価は1.4倍になります。
発注する側が使う時間
見積書に載らないコストです。ここを数えていないと、契約形態の比較を間違えます。
局面 | 発注側の所要時間の目安 |
|---|---|
依頼内容をまとめる(要件メモ・RFPの作成) | 8〜20時間 |
相見積もりの説明・質疑対応(3社想定) | 1社あたり3〜6時間 |
契約書の社内法務レビュー | 3〜6営業日(レビュー体制の整備で6営業日→3営業日に短縮した事例あり) |
NDA → 検証契約 → 開発契約の締結 | 契約1本あたり2週間〜1か月 |
PoC期間中の立ち会い・データ抽出・結果確認 | 期間を通じて48〜72時間 |
準委任・ラボ型の運用中 | 週2〜5時間が恒常的に発生(優先順位づけ、受入確認、仕様判断) |
「準委任のほうが安い」が逆転する計算
請負は、開発会社が不確実性のリスクを価格に載せるため、同じ内容でも準委任より2〜3割高くなるのが一般的です。ここだけ見れば準委任が得に見えます。社内工数を足して比べてみます。
前提:請負なら1,200万円と提示された案件。準委任なら2割安い960万円で、期間は12か月。
社内工数:準委任では週4時間の管理工数が発生 → 月約17時間。判断できる立場の担当者の人件費を時給5,000円で換算すると、月8.5万円、12か月で102万円。
合計:960万円 + 102万円 = 1,062万円。請負の1,200万円との差は138万円まで縮みます。
ここに、担当者が本業に使えなくなる時間の機会損失は含まれていません。「週4時間を確実に空けられないなら、請負のほうが総額で安い」というのが実務上の目安です。
逆に、社内に判断できる人が常駐していて、仕様を回しながら決めたい会社にとっては、準委任のほうが手戻りが少なく総額も抑えられます。どちらが正しいかではなく、自社が時間を出せるかどうかで決まります。
フェーズ別の費用相場と当社の価格
公開されている相場では、PoCが100万〜500万円、本開発が500万〜3,000万円、運用が年間で初期費用の15〜25%程度とされています。
当社(AI革命)の受託開発は次の価格帯です。
メニュー | 価格(税別) | 主な契約形態 |
|---|---|---|
小規模改修 | 30万円〜 | 準委任、または内容が確定していれば請負 |
PoC(実証実験) | 300万円〜 | 導入検証契約(準委任) |
本開発 | 個別見積 | 仕様確定後に請負、または成果完成型の準委任 |
初回相談は無料で、要件が固まっていない段階からご相談いただけます。「請負と準委任のどちらで契約書を出すべきか」「他社から来た見積が高いのか安いのか」といった、発注する前の判断だけでも構いません。契約形態と概算費用の考え方は受託開発サービスのページにまとめています。
費用そのものの内訳をもう少し細かく知りたい場合は、AI受託開発の費用相場とAIのPoC費用の相場も併せてご覧ください。AI以外の業務システムの相場は業務システム開発の費用相場、運用フェーズの費用はAIエージェント導入費用で扱っています。
契約書で必ず見る10項目と、危ない兆候
契約形態を決めたら、次は条文です。発注する側が最低限つぶすべき10項目を挙げます。
- 成果物の定義 — 「学習済みモデル」だけでなく、ソースコード/学習用データセット/前処理のプログラム/設計書/評価レポートのうち、どれが納品されるのか。ここが曖昧だと、後で別会社に引き継げません
- 精度・性能の書き方 — 保証するなら「事前に合意した評価用データに対する数値」と条件を限定する。条件なしの数値保証は避ける
- 権利の帰属より「利用条件」 — 学習用データや学習済みモデルの中身は、そのままでは著作権や特許権が認められにくい領域です。「権利は全部こちらのもの」と争うより、「自社はこの用途で自由に使える」「開発会社は他社案件に転用しない」を条文にするほうが実利があります
- 追加学習・再学習の扱い — 誰が、どのデータで、いくらでやるのか
- 提供したデータの利用範囲 — 「無制限に利用できる」となっていたら要交渉
- 検収の条件 — 何をもって受け入れるか。準委任の場合は「検収」ではなく報告の受領になります
- 中途解約と精算 — 途中でやめたとき、いくら払うのか
- 引き継ぎ条項 — 別会社に移すとき、ソースコード・設計書・環境の構築手順が出てくるか
- 外部AIサービスの利用条件 — 規約や仕様が変わったときの責任、入力データを学習に使わせない設定の有無、利用料は誰の負担か
- 再委託の可否 — 海外に再委託される場合、データが国外に出る点をどう扱うか
提案を受けた時点で警戒すべき4つの兆候
- 精度を条件なしの数値で言い切っている
- 学習済みモデルの権利が開発会社の単独帰属で、交渉に応じない
- 検証段階を挟まず、いきなり一括請負を提示してくる
- 提供データの利用範囲が無制限になっている
実務でよく起きるのは、検証段階で95%前後だった精度が、本番データでは70%台まで落ちる、外部AIの利用料が想定を超えて膨らむ、検証後の引き継ぎが不完全で本開発を別会社に出せない、という3つです。より詳しい失敗パターンはAI開発の失敗はどこで起きるかで整理しています。
収入印紙の実額(契約形態で変わります)
見落とされがちですが、契約形態は税額にも直結します。請負契約書は第2号文書として課税、準委任契約書は原則として不課税です。
契約金額 | 印紙税額 |
|---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 1,000円 |
300万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 |
契約金額の記載がないもの | 200円 |
(出典:国税庁 タックスアンサー No.7140)
この表は第2号文書の本則の税額です。よく紹介される「軽減税率」は建設工事の請負契約書に限られるもので、システム開発やAI開発の請負契約書には適用されません。相見積もりの資料で軽減後の低い金額が書かれていたら、それは別物です。
1,200万円の開発を1本の請負契約書にすると20,000円。これを300万円の検証契約と900万円の開発契約に分ければ1,000円+10,000円で11,000円になります。継続的な取引の基本契約書は第7号文書として4,000円です。
そして最も効くのがこれです。PDFで締結して紙を交付しない電子契約なら、印紙税はかかりません。 金額の大きい案件ほど、電子契約にするだけで数万円が消えます。
2026年から変わった、発注する側のルール

出典: 中小企業庁 公式サイト
契約形態の話をするうえで、2026年に押さえておくべき変更が2つあります。どちらも発注する側が守る立場の話です。
下請法が「取適法」になった(2026年1月1日施行)
2025年5月に成立した改正により、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」は「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わり、2026年1月1日から施行されています。呼称も「親事業者/下請事業者」から「委託事業者/中小受託事業者」に改められました。
AI開発の外注は「情報成果物作成委託」に当たるため、この改正は直撃します。発注側にとっての主な変更点は次のとおりです。
- 適用対象の拡大 — 従来の資本金基準に加えて従業員基準(300人/100人)が新設されました。資本金が小さくても、従業員数によって規制の対象になります。これまで対象外だった会社が新たに規制対象になるケースがあります
- 協議に応じない一方的な代金決定の禁止 — 「うちの予算はこれだから」で押し切れなくなりました
- 手形払いの禁止 — 電子記録債権などの支払手段も規制が強化されています
- 支払期日 — 成果物を受け取った日から60日以内(従来どおり)
- 書面の交付 — 受託側の承諾がなくてもメール等の電磁的方法で交付できるようになりました
準委任やラボ型の月額精算は、検収の考え方が曖昧なぶん支払期日の管理が甘くなりがちです。契約時に支払サイトを条文で確定させておいてください。自社が委託事業者に当たるかどうかの判定は、委託側・受託側の組み合わせで変わるため、公正取引委員会の資料で確認するのが確実です。
準委任・ラボ型は「偽装請負」に注意
準委任やラボ型で、発注側が開発メンバーに直接作業指示を出すと、契約書の名称にかかわらず偽装請負(労働者派遣法違反)と判断されうる点は、発注する側こそ知っておくべきです。是正指導や勧告のリスクは発注側にも及びます。
判断基準は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)で、適法な業務委託の条件として受託側が自ら自社の労働者を指揮命令することが求められています。厚生労働省の疑義応答集では、発注者が個人を特定できるスキルシートを求めたり、特定の担当者を指名・拒否したりする行為も、実質的に発注者が労働者を支配・管理しているとみなされうる、とされています。
ラボ型は「専属チームに自社が指示を出す」形になりやすいため、特に注意が必要です。実務上の対処はシンプルで、指示は必ず開発会社の責任者を経由させ、要望はチケットや仕様書という「成果物への要求」の形で出す。この2つを徹底すれば、日々の運用は変わりません。
なお、AI関連では2025年9月1日に「AI推進法」が全面施行されていますが、これは規制法ではなく推進法で、事業者に課されるのは努力義務にとどまります。契約実務に直接の義務を課すものではありません。一方、2026年3月31日に公表された「AI事業者ガイドライン 第1.2版」ではAIエージェントの定義や人が確認を入れる運用の整理が追記されており、これらの用語が業界標準として定着すると、既存の契約書ひな形の定義では表現しきれなくなる可能性があります。定義条項は最新版に合わせて見直しておくと安全です。
実際にやった事例
当社が医療機関・薬局・インフラ企業で担当した案件から、契約形態の組み方が結果を分けた3件を紹介します(守秘のため社名は伏せています)。
調剤薬局のケース|30万円台の小規模改修を、あえて準委任で始めた
- 課題 — 既存の管理システムに、日次の照合作業を自動化する機能を追加したい。ただし「どの項目をどう突き合わせるか」は現場の担当者の頭の中にあり、仕様書がありませんでした
- やったこと — いきなり改修を請け負うのではなく、まず準委任で現場の作業を見せてもらい、照合ルールを文書化することから着手。ルールが固まった時点で改修範囲を確定させ、小規模改修(30万円〜の帯)として実装しました
- 何が変わったか — 仕様書を先に作ったことで、実装後の「思っていたのと違う」がゼロになりました。もし最初から請負で見積を取っていれば、仕様が不明確なぶんリスク分を上乗せした金額になり、さらに実装後の手戻りが追加見積として乗っていたはずです
医療機関のケース|PoCを独立した契約にして、やめどころを作った
- 課題 — AIで解けるかどうかが誰にも判断できない業務があり、社内では「やってみないと分からない」で止まっていました
- やったこと — 秘密保持契約 → 導入検証契約(準委任)→ 本開発、という3段階に分けて締結。検証(300万円〜の帯)の契約書に、目標とする評価指標と、その水準に届かなかった場合はここで終了する旨を最初から明記しました
- 何が変わったか — 「うまくいかなければ検証費用で止められる」ことが明確になり、稟議が通りました。段階を分けなければ、本開発まで含めた金額での承認が必要になり、そもそも着手できていません
インフラ企業のケース|検証は準委任、本開発から請負に切り替えた
- 課題 — 検証で有効性は確認できたものの、本番稼働の予算は年度内に確定させる必要があり、金額が動く契約形態では社内を通せませんでした
- やったこと — 検証段階で作成した評価レポートをそのまま要件定義の土台にし、機能一覧と検収条件を確定させたうえで、本開発を請負契約に切り替えました。検証契約で定めていたデータの利用条件と秘密保持の条項は、開発契約にも引き継ぐ形で残しています
- 何が変わったか — 発注側が負っていた仕様変更リスクが、契約時点で固定額に変わりました。同時に、社内で毎週発生していた判断・確認の工数も大きく減りました
3件に共通しているのは、契約形態を先に決めていないという点です。何を確定させたいかを先に決め、それに合う契約形態を後から選んでいます。
契約形態の選び方と、相談から契約までの流れ
4つの質問で決まります
- 作るものを機能単位で言葉にできますか — できる → 請負を軸に。できない → 準委任で調査から
- 学習に使えるデータは、すでに手元にありますか — ある → 検証から本開発へ進める。ない・不明 → 事前調査を独立して発注
- 週に2〜5時間、判断を返せる担当者を置けますか — 置ける → 準委任・段階分割が有利。置けない → 請負に寄せる
- 予算は年度内に固定額で確定させる必要がありますか — ある → 仕様確定後に請負。ない → 段階ごとに見積
1〜4のうち請負側が3つ以上なら請負、準委任側が2つ以上なら段階分割で始めるのが実務上の落としどころです。
相談から契約までの期間
ステップ | 期間の目安 | 内容 |
|---|---|---|
初回相談 | 1時間 | 課題のヒアリング。要件が固まっていない状態で構いません。無料 |
概算提示・進め方の提案 | 1〜2週間 | どの段階を、どの契約形態で、いくらで進めるかを提示 |
秘密保持契約の締結 | 1〜2週間 | 社内法務のレビューに3〜6営業日を見込んでください |
事前調査 | 2週間〜1か月 | データの状態と実現可能性を確認 |
検証(PoC)契約の締結 → 実施 | 締結2週間〜1か月+実施2〜3か月 | 発注側の稼働は期間を通じて48〜72時間 |
本開発契約の締結 | 2週間〜1か月 | 仕様確定後、請負または成果完成型の準委任に切り替え |
相談から本開発の着手まで、最短でも3〜4か月かかります。年度予算に合わせるなら、逆算して動き始めてください。各段階でどこまでを引き受け、いくらかかるのかは受託開発サービスのページに掲載しています。
なお、この記事は発注する側が契約書のどこを見て何を交渉すればよいかを整理したもので、法律相談ではありません。個別の契約条項の最終的な判断は、必ず弁護士にご確認ください。
よくある質問
Q1. 準委任だと、成果が出なくてもお金を払い続けることになりませんか?
契約書に何も書かなければ、そのとおりになります。防ぐ方法は2つです。1つは契約期間を3か月程度に区切り、更新を自動にしないこと。もう1つは、契約書に「この時点でこの水準に届かなければ終了する」という中止条件を書いておくことです。準委任は開発会社にとって都合のよい契約と思われがちですが、区切りと中止条件さえ入れれば、発注側にとっても撤退しやすい契約になります。
Q2. 成果完成型の準委任なら、納品後に不具合が出ても無償で直してもらえますか?
いいえ。ただし、契約形態を請負に変えなくても補えます。実務的な解は、準委任契約のまま「引き渡し後◯か月間、あらかじめ合意した評価用データで再現する不具合は無償で修正する」という条項を1本足すことです。ポイントは2つあります。期間は3〜6か月が目安であること、そして対象を「合意した評価用データで再現するもの」に限定することです。AIは入力するデータが変われば出力も変わるため、範囲を切らずに「不具合はすべて無償対応」と書くと開発会社が受けられず、結局そのリスク分が見積に上乗せされます。なお、自前で学習させず既製のAIサービスを組み込んだだけのシステムなら、請負で受けてもらえることが多く、その場合は無償修補を求める権利がそのまま付いてきます。
Q3. すでに準委任で払い続けているのに、いつまでも完成しません。どう畳めばいいですか?
まず、契約書の中途解約条項と、成果物の引き渡し義務がどう書かれているかを確認してください。準委任には完成義務がないため「完成させろ」とは言えませんが、善良な管理者の注意を尽くす義務は負っています。報告が出ていない、合意した作業が実施されていないといった事実があれば交渉の材料になります。実務的には、(1)現時点の中間成果物とソースコードを全て引き渡させる、(2)解約時の精算額を合意する、(3)残っているデータの削除を確認する、の3点を書面で詰めて終わらせるのが最短です。引き継ぎ条項がない場合はここで揉めるため、次回の契約では必ず入れてください。
Q4. 検証は準委任で、本開発から請負に切り替えることはできますか?
できますし、それが標準的な進め方です。切り替えの際に注意すべきは、前の契約で定めた条項のうち、引き継ぐ必要があるものを開発契約に書き写すことです。具体的には、提供データの利用条件、検証で作った中間成果物の権利と利用範囲、秘密保持義務の残存期間の3つ。前の契約が終了すると効力が切れる書き方になっていることがあるため、締結前に確認してください。
Q5. 学習に使わせた自社のデータを、開発会社が他社の案件に使うことはありますか?
契約書で禁止していなければ、あり得ます。学習用データや、そこから作られたモデルの中身は、そのままでは著作権や特許権で守られにくい領域です。だからこそ「誰のものか」を争うより、「開発会社は本件以外の目的で利用・転用しない」「契約終了時にデータを削除し、その証明を提出する」という利用条件を条文にするほうが確実です。逆に、開発会社側から「学習用データセットはノウハウなので開示しない」と言われるケースもあり、この場合は目的外利用の禁止をセットで求めるのが公平な落としどころになります。
Q6. ラボ型で、発注する開発内容がない月はどうなりますか?
費用は発生します。リソースを予約する契約だからです。そのうえで、締結前に詰めておくと効く交渉点が3つあります。1つ目は最低契約期間で、半年〜1年が一般的ですが、1か月単位・1名からに応じる会社も増えています。まず3か月で始めて延長する形にできないか聞いてください。2つ目は解約の予告期間です。1〜2か月前の通知が一般的で、ここが3か月になっていると「やめる」と決めてから3か月分を払うことになります。3つ目はメンバー交代時の扱いで、引き継ぎで立ち上がらない月の減額に応じてもらえるかを確認します。判断の目安として、1年分の開発テーマを先に並べられないなら、ラボ型ではなく案件ごとの準委任か請負のほうが総額は下がります。
Q7. 1本の契約を2本に分けて印紙税を下げるのは問題ありませんか?
実態として段階が分かれ、それぞれが別個の合意として成立しているなら問題ありません。事前調査と本開発を別契約にすること自体は、経済産業省のガイドラインが推奨する進め方でもあります。避けるべきなのは、実態は1つの請負なのに、税額を下げる目的だけで形式的に分割することです。あわせて、実務で見落とされやすい点を2つ挙げておきます。1つは、電子契約で締結したものを後から紙に印刷して相手方に交付し直すと、その紙が課税文書として扱われる可能性があること。自社の控えとして印刷・保管するだけなら問題になりません。もう1つは、金額を書かない基本契約書を先に結び、個別の発注書で都度金額を決める形にすると、その基本契約書は継続的取引の基本となる契約書として一律4,000円になることです。段階を分ける目的は、税額ではなく「やめどころを作る」ことに置いてください。
Q8. 相見積もりを取ったら各社で契約形態がバラバラで、比較できません。
よく起きます。原因は、こちらが渡した要件メモに「どこまでを今回の発注範囲とするか」が書かれていないことがほとんどです。対処は、発注側から契約形態と段階を指定して見積を依頼することです。たとえば「まず事前調査のみを準委任で、期間1か月、成果物は調査レポートと概算見積」と指定すれば、各社の金額は同じ土俵に乗ります。契約形態を各社の提案に委ねている限り、金額は比較できません。
契約形態で迷っている段階から、ご相談ください
AI開発の契約は、請負か準委任かを先に決める問題ではありません。何を確定させたいのかを先に決め、それに合う契約形態を選ぶ。順序が逆になると、予算も期間も読めなくなります。
当社(AI革命)は、医療機関・薬局・インフラ企業でAI開発・システム開発を手がけてきました。小規模改修は30万円(税別)から、実証実験は300万円(税別)から、本開発は仕様に応じた個別見積です。初回相談は無料で、要件が固まっていない段階でもご相談いただけます。
- 他社から出てきた契約書と見積が妥当かを見てほしい
- 請負と準委任のどちらで発注すべきか判断できない
- 何をどこまで発注すればいいかが、そもそも決まっていない
こうした段階でのご相談も歓迎します。まずは1時間、課題をお聞かせください。
要件が固まっていない段階からご相談いただけます(初回相談無料)
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AI革命
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AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。
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