ビジネス活用2026年10月更新

AI開発の契約形態|請負・準委任の選び方と、完成条件・変更・検収の確認項目

公開日: 2026/09/10
更新日: 2026/10/10
AI開発の契約形態|請負・準委任の選び方と、完成条件・変更・検収の確認項目

この記事のポイント

AI開発の契約形態(請負・準委任・ラボ型・段階分割)の違いと選び方。検証と本開発を分ける理由、成果物・完成責任・変更・検収・権利を契約前に確かめる質問表、印紙税と2026年1月施行の取適法まで、発注前に整理する点をまとめました。

AI開発の契約形態は、結果が読めない検証は準委任で区切り、完成の条件を言葉で決められた開発は請負にするという分け方が基本です。どちらを選ぶかより先に、成果物・完成の条件・変更の扱い・検収・権利を、契約前にどこまで決められるかを確認してください。

経済産業省が2025年2月18日に公表した「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」も、開発の委託で問題になりやすい論点として「契約の性質(準委任、請負など)」を挙げています。あわせて、開発の対象があいまいになりやすいこと、完成させる義務・完成時期・検収条件を確認することを示しています。この記事では、発注する側が契約前に確かめる点を質問表にまとめ、検証と本開発をどう分けるかを整理します。個別の条項の法的な判断は弁護士に確認してください。

AI開発の契約形態は3つ+段階分割

請負・準委任・ラボ型という3つのAI開発契約形態を並べて比較するイメージ

見積書と一緒に出てくる契約書は、名前が違っても中身はほぼ次の3種類に分類できます。まず全体像を押さえてください。

契約形態

法的な根拠

完成させる義務

報酬の決まり方

納品後の無償修補(契約不適合責任)

収入印紙

向く場面

請負

民法632条〜

あり

成果物単位の固定額

あり

課税(第2号文書)

仕様が確定した本開発、既存システムの改修

準委任・履行割合型

民法656条・648条

なし

人月単価 × 稼働量

なし(善良な管理者の注意を尽くす義務は負う)

原則不要

事前調査、PoC、要件定義、運用保守

準委任・成果完成型

民法648条の2

なし(成果を引き渡して初めて報酬が発生する)

成果の引き渡し時に支払い

なし

原則不要

AI開発の折衷案。検証から本開発への橋渡し

ラボ型(専属チーム契約)

法的には準委任の一種

なし

月額固定 ×(人数 × 契約期間)

なし

準委任の内容なら原則不要(請負を含む継続取引の基本契約は第7号文書で4,000円)

長期の継続改善、運用しながら育てるAI

段階分割(フェーズごとに締結)

段階ごとに上記を使い分ける

段階による

段階ごとに見積・締結

段階による

段階ごと

経済産業省のガイドラインが推奨する型

ここで発注する側が最も誤解しやすいのが、表の「納品後の無償修補(契約不適合責任)」の列です。

成果完成型の準委任は、「成果が出なければ払わない」形にはできますが、納品後に不具合が見つかったときに無償で直させる権利(契約不適合責任)は付いてきません。 請負にしかない権利です。「成果完成型なら請負と同じ」と説明されたら、そこは正しくありません。

なお、契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも、中身が完成義務を定めていれば請負として扱われます。判断するのは表紙ではなく条文です。

なぜAI開発は「完成を約束する契約」になりにくいのか

システム開発なら一括請負が普通なのに、AI開発になると、開発会社から請負を避けて準委任を提案されることがあります。理由は営業上の駆け引きではなく、技術の性質です。

経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(2018年6月公表、2019年12月にver1.1)は、この点をはっきり書いています。AIは学習用データから帰納的に作られるため、精度はデータの量と質に左右され、まだ見ていないデータに対する精度を事前に保証することが技術的に困難です。そのため、一定の精度を持つAIの完成について法的責任を負う請負型の契約には、開発会社が難色を示すのが一般的である、という整理になっています。

発注する側からすると、これは不利な話に聞こえます。ただ、逆から見てください。

「正解率95%を保証します」と契約書に書く会社は、次のどちらかです。

  1. 保証できないリスクを見込んで、その分を価格に上乗せしている
  2. 実現できず、後で揉める

同ガイドラインでも、性能を保証するとしても「あらかじめ合意した評価用データに対する精度」に限定するか、成果完成型の準委任を活用する、という考え方が示されています。条件のない数値保証は、発注側にとって安心材料ではなく危険信号だと考えてください。

一方で、「準委任だから開発会社は何の責任も負わない」わけでもありません。準委任でも善良な管理者の注意を尽くす義務を負います。同じ分野の専門業者として通常期待される水準で仕事をする義務のことで、平たく言えば「完成は約束しないが、手を抜くことは許されない」という意味です。それが果たされているかは、契約書ではなく運用で確認します。具体的には、週次の進捗報告、中間成果物の提出、評価指標(正解率だけでなく、どれだけのケースをカバーできたか等)の推移の3点を契約書に書き込んでおけば、準委任でもブラックボックスにはなりません。

国が勧めているのは「段階を分けて契約する」進め方

情報処理推進機構(IPA)のロゴ。アジャイル開発版モデル契約書の公開元

出典: 情報処理推進機構(IPA) 公式サイト

経済産業省のガイドラインが推奨しているのは、ウォーターフォール型の一括契約ではなく、開発を4段階に分けて都度契約する進め方です。

段階

何をするか

主な成果物

想定される契約

① アセスメント(事前調査)

少量のサンプルデータで、そもそもAIで解ける課題かを見極める。学習に使えるデータを用意できるかも確認

調査レポート

秘密保持契約(NDA)

② PoC(実証実験)

自社のデータで実際に学習を回し、目標とする精度に届きそうか、コストと期間が見合うかを検証。この段階のモデルは未完成

検証レポート、試作モデル

導入検証契約

③ 開発

本番用のデータセットで本格的に学習させ、使えるモデルを作る

学習済みモデル、各種ドキュメント

ソフトウェア開発契約

④ 追加学習

納品後のデータを追加で学習させ、精度を保つ・上げる

再学習後のモデル

保守運用契約

段階を分ける狙いは、やめどころを作っておくことです。①や②で「このデータでは無理」と分かれば、そこで止められます。1本の請負契約で3,000万円を投じてから気づくのとは、損失の桁が違います。

検証と本開発を分けるもう1つの理由は、検証の成果物を、本開発の完成条件に変えられることです。検証で使った評価用データ、目標の指標、届かなかったケースの一覧が残っていれば、本開発の契約では「このデータで、この水準」を検収条件として書けます。検証の契約書には、この3つを成果物として明記しておきます。

段階分割にはコストもあります。契約ごとに見積・社内の稟議・法務の確認が発生するため、段階を増やすほど着手までの期間が伸びます。年度予算に合わせる場合は、この期間も逆算に入れてください。

契約書のひな形は無料で手に入る

自社で契約書をゼロから起こす必要はありません。公的機関がひな形を無償公開しています。

  • 特許庁・経済産業省「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書」AI編(ver2.0で整備、2022年3月)。秘密保持契約 → 技術検証(PoC)契約 → 共同研究開発契約 → 利用契約の流れが、逐条解説つきで公開されています。オープンイノベーションポータル
  • IPA「情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)」(2020年3月31日公開)。請負ではなく準委任を前提としたモデル契約書。契約前チェックリストが付属します。IPAのページ
  • 経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(2025年2月18日公表)。自社がAIに渡す側(プロンプト・学習用データなど)と、AIが出す側(生成物・成果物)の2軸で、契約書の条項ごとに確認すべき点を整理した最新版です。法務担当者向けだけでなく、事業部門が発注前に初期検討する用途も想定されています。経済産業省の公表ページ

このモデル契約書には、「本開発をちらつかされて無償で検証をやらされる」「検証で得た知見の譲渡を強要される」といった紛争を未然に防ぐ狙いも書かれています。開発会社から出てきた契約書と、これらのひな形を並べて読むだけで、どこが自社に不利かがかなり分かります。

契約前に確定していることを整理する|請負と準委任の分かれ目

「AI開発は準委任」と一般化されがちですが、請負のほうが発注側に合う場面もあります。分かれ目は、発注時点で「完成」を言葉と検収条件で定義できるかどうかです。まず、今の時点で確定していることと、まだ決まっていないことを分けて書き出してください。

請負で組みやすいケース

準委任・段階分割で組むべきケース

画面・帳票・処理内容が仕様書レベルで確定している

「何を作れば業務が回るか」がまだ言葉になっていない

既存システムの改修で、変更範囲が特定できる

学習や評価に使えるデータが揃っているか未確認

AIを新たに学習させず、既製のAIサービスを組み込むだけ

目標の精度が決まっていない、または決められない

検収の合格条件を数値や画面で示せる

業務の運用ルール自体を作りながら決める

社内で毎週、仕様の判断を返す時間を取れない

社内で毎週、仕様の判断と確認を返す担当者を置ける

右側に1つでも当てはまるのにいきなり請負にすると、「仕様変更=追加見積」の応酬になりやすくなります。逆に、左側にすべて当てはまる案件を準委任にすると、完成の責任があいまいなまま、社内の確認工数だけが増えます。

判断がつかないときは、事前調査や検証だけを先に別の契約にする方法があります。調査の結果を本開発の機能一覧・完成条件・検収条件のもとにし、そのうえで本開発の契約形態を決めます。調査の費用と期間は、データの量や既存システムの状態で変わるため、着手前に範囲と金額を書面で確認してください。当社も「調査のみ」のご依頼を受けており、有償の作業に入る前に範囲と金額をお示しし、合意をいただいてから進めます(受託開発サービスの内容はこちら)。

契約形態ごとの費用と、発注側にかかる時間

AI開発の契約形態ごとにかかる費用と社内工数を試算するイメージ

契約形態を選ぶことは、金額と、自社が使う時間を同時に選ぶことです。見積書の金額だけで比べると、準委任やラボ型で発注側が負う確認の時間が抜け落ちます。

準委任・ラボ型の見積の組み立て

準委任・ラボ型の見積は、「単価 × 人数 × 期間」で組むのが基本です。単価は会社や役割で大きく違うため、相見積もりでは単価だけでなく、その期間に何を報告し、どの中間成果物を出すかを揃えて比べてください。

ラボ型は一定期間の稼働を予約する契約のため、発注する仕事がない月も費用が発生します。たとえば予約した稼働のうち7割しか使えなければ、実際に使った分あたりの単価は約1.43倍(1 ÷ 0.7)になります。

発注する側が使う時間

発注する側が使う時間は、見積書に載らないコストです。次の局面ごとに、社内の誰が何時間を出せるかを先に見積もってください。

局面

発注側の作業

契約形態による違い

依頼内容をまとめる

要件メモ、今の業務の説明、データの所在の確認

どの形態でも必要

相見積もり

各社への同じ説明と、質問への回答

どの形態でも必要

契約書の確認

法務担当・顧問弁護士のレビュー

段階を分けるほど回数が増える

検証の期間中

データの抽出、結果の確認、続けるかの判断

準委任で特に多い

開発・運用の期間中

優先順位づけ、受け入れの確認、仕様の判断

準委任・ラボ型は毎週発生しやすい。請負は検収の時期に集中する

「準委任のほうが安い」が逆転する場合の計算

請負では、開発会社が不確実性のリスクを価格に載せるため、同じ内容でも準委任より高く提示されることがあります。ただ、社内の確認時間を足すと差は縮みます。以下は仮定に基づく試算で、金額はすべて説明用です。

仮定:請負なら1,200万円、準委任なら2割安い960万円と提示された12か月の案件。準委任では発注側に週4時間の確認作業が発生し、判断できる担当者の人件費を時給5,000円とする。
式:週4時間 × 52週 ÷ 12か月 ≒ 月17時間。17時間 × 5,000円 = 月8.5万円。8.5万円 × 12か月 = 102万円。
合計:960万円 + 102万円 = 1,062万円。請負の1,200万円との差は138万円まで縮みます。

担当者が本業に使えなくなる時間の機会損失は含めていません。また、準委任では仕様の判断が遅れるほど稼働が延び、請負では仕様変更が追加見積になります。どちらも試算の外です。

社内に判断できる人がいて、仕様を回しながら決めたい会社なら、準委任のほうが手戻りは少なくなります。毎週の時間を確実に空けられないなら、完成条件を先に固めて請負に寄せるほうが、総額は読みやすくなります。

当社の価格と、契約前に示すこと

当社(AI革命)の受託開発の公開価格は次のとおりです。いずれも税別で、クラウド・外部API・ライセンスなどの実費は別です。

依頼の形

価格(税別)

主な成果物(受託開発ページの記載)

既存システムの改修

100万円〜

改修した画面・処理、連携プログラム、変更内容の記録

PoC(検証)

300万円〜(検証を始めるための価格で、本番システムの完成価格ではありません)

検証計画、PoC/MVP、評価結果と本開発の提案

本開発

個別見積(機能、利用者数、外部連携、データ移行、安全要件を確認して算出)

業務システム(画面・データベース・AI処理)と操作手順書

成果物・保守・権利の扱い・追加変更の扱いは、見積と契約で明確にします。どの契約形態で結ぶかは案件ごとに決めるため、ここでは固定の形を示していません。

初回相談は無料・30分(オンライン、Google Meet)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。何を成果物として受け取り、どこまでを今回の範囲にするかの切り分けから一緒に整理します。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

▶ 成果物と契約範囲を相談する(初回30分・無料)

費用そのものの内訳をもう少し細かく知りたい場合は、AI受託開発の費用相場とAIのPoC費用の相場も併せてご覧ください。AI以外の業務システムの相場は業務システム開発の費用相場、運用フェーズの費用はAIエージェント導入費用で扱っています。

契約前に確認する質問表|成果物・完成責任・変更・検収・権利

契約形態を決めたら、次は条文です。下の質問を開発会社に尋ね、答えを契約書や別紙のどこに書くかまで確認してください。「答えを残す場所」が空欄の項目は、口頭の合意のまま進んでいる状態です。

確認すること

開発会社に聞く質問

答えを残す場所

1. 成果物

納品されるのはどれか(ソースコード、学習済みモデル、学習用データセット、前処理のプログラム、設計書、評価レポート、操作手順書)

成果物の条項、別紙の一覧

2. 完成の責任

完成させる義務を負うか。負わない場合、何を報告し、どの中間成果物を出すか

契約の種類、業務内容の条項

3. 完成の条件

何をもって完成とするか。精度を書く場合、どの評価用データで測るか

仕様書、検収条件の別紙

4. 検収

誰が、いつまでに、何を見て受け入れるか。準委任なら報告の受領をどう確認するか

検収の条項、報告の条項

5. 変更

仕様の変更は誰が申し出て、どう見積もり、誰が承認するか。小さな変更も記録に残すか

変更管理の条項、変更依頼の書式

6. 中止

どの時点で、どの結果なら止めるか。止めたときの精算と、受け取る成果物は何か

中途解約・精算の条項

7. 権利と利用条件

成果物の権利は誰に帰属するか。帰属しない場合、自社はどの用途で使えるか。開発会社は他社の案件に転用するか

知的財産権・利用条件の条項

8. 提供するデータ

渡したデータを本件以外に使うか。終了時に削除し、その証明を出すか

秘密保持・データ利用の条項

9. 外部のAIサービス

利用料は誰が負担するか。入力データを学習に使わせない設定にするか。規約や仕様が変わったときはどう扱うか

前提条件・費用負担の条項

10. 引継ぎと再委託

別の会社に移すとき、ソースコード・設計書・環境構築の手順を出すか。再委託先はどこで、データは国外に出るか

引継ぎ・再委託の条項

学習用データや学習済みモデルの中身は、そのままでは著作権や特許権が認められにくい領域です。「権利は全部こちらのもの」と争うより、「自社はこの用途で自由に使える」「開発会社は他社の案件に転用しない」を条文にするほうが実利のある場合があります。

変更と検収を記録に残す

契約後の揉めごとは、条文そのものより、変更が記録に残っていないことから起きる場合があります。次の3つを、契約時に決めておきます。

  • 変更の記録:依頼日、依頼者、変更内容、費用と期間への影響、承認者を1件ずつ残す。チャットで決めた変更も、決まった頻度でこの一覧に書き写す
  • 検収の記録:合意した評価用データでの結果、確認した画面や帳票、残った不具合とその扱い(今回直す/次の段階で扱う/対象外)を書面で残す
  • 準委任の報告:作業内容、中間成果物、評価指標の推移を定期的に受け取り、受け取った日を残す

この記録は、次の段階の見積や、別の会社への引継ぎにもそのまま使えます。

提案を受けた時点で警戒すべき4つの兆候

  • 精度を条件なしの数値で言い切っている
  • 学習済みモデルの権利が開発会社の単独帰属で、交渉に応じない
  • 検証段階を挟まず、いきなり一括請負を提示してくる
  • 提供データの利用範囲が無制限になっている

契約後に起こりうるのは、検証で使ったデータと本番のデータの違いで精度が下がる、外部AIの利用料が想定を超える、検証後の引継ぎが不完全で本開発を別の会社に出せない、といった問題です。どれも、上の質問表の3・9・10を契約前に確認しておけば、少なくとも起きたときの扱いを先に決められます。より詳しい失敗パターンはAI開発の失敗はどこで起きるかで整理しています。

収入印紙の実額(契約形態で変わります)

見落とされがちですが、契約形態は税額にも直結します。請負契約書は第2号文書として課税、準委任契約書は原則として不課税です。

契約金額

印紙税額

1万円未満

非課税

1万円以上100万円以下

200円

100万円超200万円以下

400円

200万円超300万円以下

1,000円

300万円超500万円以下

2,000円

500万円超1,000万円以下

10,000円

1,000万円超5,000万円以下

20,000円

5,000万円超1億円以下

60,000円

1億円超5億円以下

100,000円

契約金額の記載がないもの

200円

(出典:国税庁 タックスアンサー No.7140)

この表は第2号文書の本則の税額です。よく紹介される「軽減税率」は建設工事の請負契約書に限られるもので、システム開発やAI開発の請負契約書には適用されません。相見積もりの資料で軽減後の低い金額が書かれていたら、それはこれらの契約書には当てはまらない金額です。

1,200万円の開発を1本の請負契約書にすると20,000円。これを300万円の検証契約と900万円の開発契約に分ければ1,000円+10,000円で11,000円になります。継続的な取引の基本契約書は第7号文書として4,000円です。

印紙税を減らす方法の中で、最も効果が大きいのは電子契約です。PDFで締結して紙を交付しない電子契約なら、印紙税はかかりません。 金額の大きい案件ほど、電子契約にするだけで数万円の印紙税がかからなくなります。

2026年から変わった、発注する側のルール

中小企業庁のロゴ。2026年1月施行の中小受託取引適正化法(取適法)の所管官庁

出典: 中小企業庁 公式サイト

契約形態の話をするうえで、2026年に押さえておくべき変更が2つあります。どちらも発注する側が守る立場の話です。

下請法が「取適法」になった(2026年1月1日施行)

2025年5月に成立した改正により、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」は「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わり、2026年1月1日から施行されています。呼称も「親事業者/下請事業者」から「委託事業者/中小受託事業者」に改められました。

AI開発の外注は「情報成果物作成委託」に当たるため、この改正の影響を直接受けます。発注側にとっての主な変更点は次のとおりです。

  • 適用対象の拡大:従来の資本金基準に加えて従業員基準(300人/100人)が新設されました。資本金が小さくても、従業員数によって規制の対象になります。これまで対象外だった会社が新たに規制対象になるケースがあります
  • 協議に応じない一方的な代金決定の禁止:「うちの予算はこれだから」で押し切れなくなりました
  • 手形払いの禁止:電子記録債権などの支払手段も規制が強化されています
  • 支払期日:成果物を受け取った日から60日以内(従来どおり)
  • 書面の交付:受託側の承諾がなくてもメール等の電磁的方法で交付できるようになりました

準委任やラボ型の月額精算は、検収の考え方が曖昧なぶん支払期日の管理が甘くなりがちです。契約時に支払サイトを条文で確定させておいてください。自社が委託事業者に当たるかどうかの判定は、委託側・受託側の組み合わせで変わるため、公正取引委員会の資料で確認するのが確実です。

準委任・ラボ型は「偽装請負」に注意

準委任やラボ型で、発注側が開発メンバーに直接作業指示を出すと、契約書の名称にかかわらず偽装請負(労働者派遣法違反)と判断されうる点は、発注する側こそ知っておくべきです。是正指導や勧告のリスクは発注側にも及びます。

判断基準は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)で、適法な業務委託の条件として受託側が自ら自社の労働者を指揮命令することが求められています。厚生労働省の疑義応答集では、発注者が個人を特定できるスキルシートを求めたり、特定の担当者を指名・拒否したりする行為も、実質的に発注者が労働者を支配・管理しているとみなされうる、とされています。

ラボ型は「専属チームに自社が指示を出す」形になりやすいため、特に注意が必要です。実務上の対処はシンプルで、指示は必ず開発会社の責任者を経由させ、要望はチケットや仕様書という「成果物への要求」の形で出す。この2つを徹底すれば、日々の運用は変わりません。

なお、AI関連では2025年9月1日に「AI推進法」が全面施行されていますが、これは規制法ではなく推進法で、事業者に課されるのは努力義務にとどまります。契約実務に直接の義務を課すものではありません。一方、2026年3月31日に公表された「AI事業者ガイドライン 第1.2版」ではAIエージェントの定義や人が確認を入れる運用の整理が追記されており、これらの用語が業界標準として定着すると、既存の契約書ひな形の定義では表現しきれなくなる可能性があります。定義条項は最新版に合わせて見直しておくと安全です。

検証と本開発の分け方の例(説明用)

以下は、契約形態の組み方を説明するための架空の構成例です。当社の実案件の内容・金額・結果ではありません。

例1 仕様書がない既存システムの改修|ルールの文書化を先に分ける

  • 状況:既存の管理システムに照合作業の自動化を足したい。ただ、突き合わせのルールは担当者の頭の中にあり、仕様書がない
  • 分け方:1段目は準委任で現場の作業を確認し、照合ルールを文書にする。成果物はルール表と例外の一覧。2段目は、そのルール表を仕様にして改修を発注する。範囲が確定していれば請負も選べる
  • 契約前に決めること:ルール表を承認する人、例外のどこまでを今回の改修に含めるか

例2 AIで解けるか分からない業務|検証の契約に中止条件を書く

  • 状況:社内で「やってみないと分からない」のまま止まっている
  • 分け方:秘密保持契約 → 検証の契約 → 本開発の3段階に分ける。検証の契約書に、評価用データ、目標の指標、届かなかった場合はそこで終了することを書く
  • 契約前に決めること:中止したときに受け取る成果物(評価結果、使ったデータの範囲、届かなかったケースの一覧)

例3 年度内に予算を固定したい|検証の結果から本開発を請負にする

  • 状況:検証で見込みは立ったが、本番の予算は固定額で社内を通す必要がある
  • 分け方:検証の評価結果を要件のもとにし、機能一覧と検収条件を確定させてから、本開発を請負で発注する。検証の契約で定めたデータの利用条件と秘密保持の条項は、開発の契約に書き写す
  • 契約前に決めること:検証の成果物を、本開発の見積に使ってよいか(別の会社に見積を依頼する場合も含む)

3つに共通するのは、契約形態を先に決めていないことです。何を確定させたいかを先に決め、それに合う契約形態を後から選んでいます。

当社の公開事例には、通信事業での数万件の請求情報の取り込み・集計と確認画面、薬局での複数店舗・数千人分の記録管理(権限の設計と確認工程を含む)があります。成果物の例は受託開発サービスのページに掲載しています。

契約形態の選び方と、相談から契約までの流れ

4つの質問で決まります

  1. 作るものを機能単位で言葉にできますか?できる → 請負を軸に。できない → 準委任で調査から
  2. 学習に使えるデータは、すでに手元にありますか?ある → 検証から本開発へ進める。ない・不明 → 事前調査を独立して発注
  3. 毎週、仕様の判断を返せる担当者を置けますか?置ける → 準委任・段階分割が合う。置けない → 完成条件を固めて請負に寄せる
  4. 予算は年度内に固定額で確定させる必要がありますか?ある → 仕様確定後に請負。ない → 段階ごとに見積

すべて請負側の答えなら、請負で相見積もりを取れます。準委任側の答えが1つでもあれば、その部分だけを調査や検証として先に切り出すのが目安です。

そもそも開発の契約が要らない場合もあります。既製のSaaSやAIサービスの設定と標準の連携機能で業務が回るなら、外部に開発を発注せず、利用規約と入力データの扱いを確認して申し込むだけで足ります。社内でChatGPTやClaudeを使って小さなツールを作り、運用と修正まで自社で見られる場合も、開発会社との契約は不要です。この記事の質問表が役に立つのは、外部に開発を頼み、成果物と責任の分け方を決める必要がある場合です。

相談から契約までの流れ(当社の場合)

ステップ

内容

費用

初回相談(30分・オンライン)

解決したいこと、使う人、今のシステムを伺い、自社でAIを使って進める部分と任せる部分を切り分けます。要件が決まっていなくても構いません

無料

相談メモの送付

依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をメールでお送りします

無料

資料を受け取った後の提案・見積

どの段階を、どの範囲で、いくらで進めるかをお示しします

無料

調査・要件定義・PoC・開発

着手前に範囲と金額をお示しし、合意してから進めます

有償

相談の前に、今の業務の流れ、使っているシステム名、手元にある試作・仕様書・Excelの有無をまとめておくと話が早く進みます。秘密情報・本番の認証情報・実際の顧客データは送らないでください。

契約の締結や社内の稟議には時間がかかります。年度予算に合わせるなら、段階ごとの見積・稟議・法務確認の期間を逆算して動き始めてください。

弁護士の確認が必要な箇所

この記事は、発注する側が契約前に何を確認するかを整理したもので、法律相談ではありません。次の点は、個別の契約書に照らして必ず弁護士に確認してください。

  • 契約書の名称と中身が食い違うとき、請負・準委任のどちらとして扱われるか
  • 損害賠償の上限、責任の制限、契約不適合責任を負う期間
  • 知的財産権の帰属と、利用の許諾の書き方
  • 個人情報や、他社から預かったデータを開発会社に渡してよいか
  • 自社が取適法の対象になるか、運用が偽装請負に当たらないか

役割は3つに分けると整理しやすくなります。ChatGPTやClaudeなどのAIは、ひな形と受け取った契約書案の違いを洗い出す、この記事の質問表を自社用に書き直す、条文の意味を平易に言い換える、といった下準備に十分使えます。開発会社に確かめるのは、自社のデータと既存システムで何を完成とし、どう検収し、変更をどう見積もるかです。条項が法的に有効か、自社に不利すぎないかの最終判断は弁護士が担います。

よくある質問

Q1. 準委任だと、成果が出なくてもお金を払い続けることになりませんか?

契約書に何も書かなければ、そのとおりになります。防ぐ方法は2つです。1つは契約期間を3か月程度に区切り、更新を自動にしないこと。もう1つは、契約書に「この時点でこの水準に届かなければ終了する」という中止条件を書いておくことです。準委任は開発会社にとって都合のよい契約と思われがちですが、区切りと中止条件さえ入れれば、発注側にとっても撤退しやすい契約になります。

Q2. 成果完成型の準委任なら、納品後に不具合が出ても無償で直してもらえますか?

いいえ。ただし、契約形態を請負に変えなくても補えます。実務的な解決策は、準委任契約のまま「引き渡し後◯か月間、あらかじめ合意した評価用データで再現する不具合は無償で修正する」という条項を1本足すことです。この条項で押さえる点は、期間を区切ること(何か月にするかは合意で決めます)と、対象を「合意した評価用データで再現するもの」に限定することの2つです。AIは入力するデータが変われば出力も変わるため、範囲を限らずに「不具合はすべて無償対応」と書くと開発会社が受けられず、結局そのリスク分が見積に上乗せされます。なお、自前で学習させず既製のAIサービスを組み込んだだけのシステムなら、請負で受けてもらえる場合があり、その場合は無償修補を求める権利がそのまま付いてきます。

Q3. すでに準委任で払い続けているのに、いつまでも完成しません。どう畳めばいいですか?

まず、契約書の中途解約条項と、成果物の引き渡し義務がどう書かれているかを確認してください。準委任には完成義務がないため「完成させろ」とは言えませんが、善良な管理者の注意を尽くす義務は負っています。報告が出ていない、合意した作業が実施されていないといった事実があれば交渉の材料になります。実務的には、(1)現時点の中間成果物とソースコードを全て引き渡させる、(2)解約時の精算額を合意する、(3)残っているデータの削除を確認する、の3点を書面で詰めて終わらせるのが最短です。引き継ぎ条項がない場合はここで揉めるため、次回の契約では必ず入れてください。

Q4. 検証は準委任で、本開発から請負に切り替えることはできますか?

できますし、それが標準的な進め方です。切り替えの際に注意すべきは、前の契約で定めた条項のうち、引き継ぐ必要があるものを開発契約に書き写すことです。具体的には、提供データの利用条件、検証で作った中間成果物の権利と利用範囲、秘密保持義務の残存期間の3つが該当します。前の契約が終了すると効力が切れる書き方になっていることがあるため、締結前に確認してください。

Q5. 学習に使わせた自社のデータを、開発会社が他社の案件に使うことはありますか?

契約書で禁止していなければ、あり得ます。学習用データや、そこから作られたモデルの中身は、そのままでは著作権や特許権で守られにくい領域です。だからこそ「誰のものか」を争うより、「開発会社は本件以外の目的で利用・転用しない」「契約終了時にデータを削除し、その証明を提出する」という利用条件を条文にするほうが確実です。逆に、開発会社側から「学習用データセットはノウハウなので開示しない」と言われるケースもあり、この場合は目的外利用の禁止をセットで求めるのが公平な落としどころになります。

Q6. ラボ型で、発注する開発内容がない月はどうなりますか?

費用は発生します。リソースを予約する契約だからです。そのうえで、締結前に詰めておくと役に立つ交渉点が3つあります。1つ目は最低契約期間です。長めに設定されることがありますが、短い期間や少人数から始められる会社もあります。まず短い期間で始めて延長する形にできないか聞いてください。2つ目は解約の予告期間です。ここが3か月になっていると、「やめる」と決めてから3か月分を払うことになります。3つ目はメンバー交代時の扱いで、引き継ぎで立ち上がらない月の減額に応じてもらえるかを確認します。判断の目安として、1年分の開発テーマを先に並べられないなら、ラボ型ではなく案件ごとの準委任か請負のほうが総額を抑えやすくなります。

Q7. 1本の契約を2本に分けて印紙税を下げるのは問題ありませんか?

実態として段階が分かれ、それぞれが別個の合意として成立しているなら問題ありません。事前調査と本開発を別契約にすること自体は、経済産業省のガイドラインが推奨する進め方でもあります。避けるべきなのは、実態は1つの請負なのに、税額を下げる目的だけで形式的に分割することです。あわせて、実務で見落とされやすい点を2つ挙げておきます。1つは、電子契約で締結したものを後から紙に印刷して相手方に交付し直すと、その紙が課税文書として扱われる可能性があることです。自社の控えとして印刷・保管するだけなら問題になりません。もう1つは、金額を書かない請負の基本契約書を先に結び、個別の発注書で都度金額を決める形にすると、その基本契約書は継続的取引の基本となる契約書として一律4,000円になることです。段階を分ける目的は、税額ではなく「やめどころを作る」ことに置いてください。

Q8. 相見積もりを取ったら各社で契約形態がバラバラで、比較できません。

原因の一つは、こちらが渡した要件メモに「どこまでを今回の発注範囲とするか」が書かれていないことです。対処は、発注側から契約形態と段階を指定して見積を依頼することです。たとえば「まず事前調査のみを準委任で、期間1か月、成果物は調査レポートと概算見積」と指定すれば、各社の金額は同じ土俵に乗ります。契約形態を各社の提案に委ねている限り、金額は比較できません。

成果物と契約範囲を、契約形態を決める前にご相談ください

AI開発の契約は、請負か準委任かを先に決める問題ではありません。何を確定させたいのかを先に決め、それに合う契約形態を選ぶ。順序が逆になると、予算も期間も読めなくなります。

当社(AI革命)の受託開発は、既存システムの改修が100万円〜、PoCが300万円〜(検証を始めるための価格)、本開発は個別見積です(いずれも税別、実費は別)。初回相談は無料・30分(オンライン、Google Meet)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

  • 検証から始めるか、本開発の範囲まで決められるかを判断したい
  • 何を成果物として受け取り、何を完成の条件にするかを整理したい
  • 何をどこまで発注すればいいかが、そもそも決まっていない

こうした段階でのご相談も歓迎します。自社でAIを使って進める部分と、任せる部分を一緒に切り分けます。

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AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。

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