ビジネス活用2026年10月更新

補助金で保守費は対象外か|最大2年分は対象・3年目から全額自己負担になるランニングコストの実額【2026年10月最新】

公開日: 2026/09/07
更新日: 2026/10/11
補助金で保守費は対象外か|最大2年分は対象・3年目から全額自己負担になるランニングコストの実額【2026年10月最新】

この記事のポイント

「補助金で保守費は対象外」は不正確。デジタル化・AI導入補助金2026では保守費が最大2年分補助対象、3年目から全額自己負担。対象外費用の条文根拠、5年総額371万円の試算、開発費に補助金を使う場合の考え方、次回締切と入金時期を解説します。

「補助金で保守費は対象外」は、半分だけ正しい説明です。デジタル化・AI導入補助金2026では保守サポート費が「カテゴリー7」として最大2年分まで補助対象になり、3年目からは全額が自社負担になります。しかもその2年が終わるまでは途中でやめられず、解約すれば交付決定の取消しと補助金の返還、さらに年利10.95%の加算金が課されます。

つまり本当の論点は「保守費が対象になるかどうか」ではなく、補助が切れたあとに毎年いくら払い続けることになるのかです。この記事では、公募要領・ITツール登録要領・交付規程・後年手続きマニュアルの一次情報をもとに、対象外になる費用を条文レベルで整理したうえで、5年間の総額を金額表で示します。制度全体の要件やスケジュールはデジタル化・AI導入補助金2026の活用ガイドにまとめています。


「補助金で保守費は対象外」は半分だけ正しい

デジタル化・AI導入補助金2026を実施する中小機構の公式ロゴ

出典: 中小機構 公式サイト

保守費の扱いは制度によってまったく違います。「補助金」とひとくくりにすると必ず判断を誤るので、まず制度ごとに分けて整理します。

制度

保守費の扱い

根拠

デジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金)

カテゴリー7として補助対象。ただし最大2年分。3年目以降は全額自己負担

ITツール登録要領 P.19-20/通常枠 公募要領 P.17

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

「保守」という費目自体が存在しない。クラウド利用費も補助事業実施期間中の分のみ(按分)

22次締切 公募要領 P.25-27

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(令和8年度の新制度)

同上。加えて既存事業と共用する経費は対象外と明記

第1回 公募要領 P.30・P.32

共通

各種保険料・通信費・自社の人件費・申請代行費はすべて対象外

各制度の公募要領

デジタル化・AI導入補助金2026では最大2年分が補助対象(カテゴリー7)

デジタル化・AI導入補助金2026の補助対象ITツールは、大分類Ⅰ(ソフトウェア)・Ⅱ(オプション)・Ⅲ(役務)の3つに分かれ、保守サポートは大分類Ⅲの「カテゴリー7」に位置づけられています。

大分類

カテゴリー

補助対象の範囲

Ⅰ ソフトウェア

1(ソフトウェア)

買取・サブスクとも最大2年分

Ⅱ オプション

2(機能拡張)/3(データ連携ツール)/4(セキュリティ)

最大1年分

Ⅲ 役務

5(導入・活用コンサルティング)/6(導入設定・マニュアル作成・導入研修)/7(保守サポート)

大分類Ⅲの合計で200万円が上限。カテゴリー7はソフトウェアの利用範囲内で最大2年分

公募要領には次のように書かれています。

カテゴリー7(保守サポート)については、ソフトウェアの利用範囲内で、最大2年分の費用を補助対象とする。

大分類Ⅲ役務の補助対象経費は、200万円を上限とする。(例)カテゴリー5:70万円 カテゴリー6:70万円 カテゴリー7:70万円の場合、大分類Ⅲの合計額は210万円であるが、補助対象経費は、200万円が上限となる。

— デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 通常枠 P.17(中小機構)

見落とされやすいのは、200万円の上限が役務3つの合計にかかる点です。 保守を手厚く申請すれば、そのぶん導入設定や研修の枠が削られます。しかも「1交付申請当たり、カテゴリー7は1つのみ申請可能」と定められているため、複数の保守契約をまとめて申請することもできません。

ものづくり補助金には「保守」という費目自体がない

一方、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の公募要領には、「保守」という語が1度も登場しません。費目として存在しないため、保守費は最初から検討の対象外です。

クラウドサービス利用費についても、次のように期間で切られています。

サーバーの領域を借りる費用は、見積書、契約書等で確認できるもので、補助事業実施期間中に要する経費のみとなります。したがって、契約期間が補助事業実施期間を超える場合の補助対象経費は、按分等の方式により算出された当該補助事業実施期間分のみとなります。

— ものづくり補助金 22次締切 公募要領 P.25(中小機構)

「5年契約のクラウドを結んだので5年分を計上する」ということはできません。 補助事業実施期間にかかる分だけを按分して計上することになります。両制度の使い分けはAI導入補助金とものづくり補助金の比較で整理しています。

今すでに使っているシステムの保守費は1円も出ない

「今払っている保守費を補助金で軽くできないか」という疑問への答えは、制度上まったく不可能です。ITツール登録要領には、登録の対象外となるものが次のように明記されています。

(ウ) 補助事業の対象となっていない製品に対する保守費用が含まれるもの。
(エ) 過去に購入した製品に対する保守費用が含まれるもの。

— ITツール登録要領 P.19(中小機構)

補助対象になる保守費は、「登録済みのカテゴリー1(ソフトウェア)を1つ指定し、そのソフトの導入完了(納品日)から補助対象期間満了までに発生する費用」に限られます。つまり補助金は「これから新しく入れるもの」にしか付かず、既存システムのランニングコストを引き下げる手段にはなりません。


補助金の対象外になる費用の一覧(2026年9月時点)

補助対象外の経費を定める公募要領を所管する中小企業庁の公式ロゴ

出典: 中小企業庁 公式サイト

保守費以外にも、発注段階で見落とされやすい対象外費用があります。予算表を作る前に確認しておくべき項目を、条文ベースで整理します。

保守費が対象外になる4つのケース

ITツール登録要領 2-3(7)2. に列挙されている4つです。

#

対象外になるケース

実務での意味

ア

交付決定前に発生した費用が含まれる

交付決定を待たずに保守契約を始めると、その保守費は全額自己負担

イ

定められた対象期間外に発生する費用が含まれる

3年目以降の保守費を先に前払いしても対象外

ウ

補助事業の対象となっていない製品に対する保守費用

補助対象外のツールに付随する保守はNG

エ

過去に購入した製品に対する保守費用

既存システムの保守はNG

さらに、申請の順序にも制約があります。ITツールの登録申請時に申請できるのは最大1年分で、2年分を補助対象にしたい場合は登録申請時ではなく交付申請時に利用年数を申請する必要があります。この順序を間違えると、あとから2年分に変更できません。

制度をまたいで共通して対象外になるもの

通常枠 公募要領 3-2(4)「補助対象外となる経費」と、ものづくり補助金の対象外経費リストを照らし合わせて整理したものです。制度によって明記されている項目が違うため、申請する制度の公募要領で必ず確認してください。

  • 申請代行費(補助金申請・報告に係る手数料)
  • リース・レンタル契約のITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)
  • 中古品
  • 交付決定前に購入したITツール
  • 公租公課(消費税)。補助対象経費は税抜で計算します
  • 交通費・宿泊費
  • 各種保険料/事務所家賃・保証金・敷金・水道光熱費
  • 電話代・インターネット利用料金等の通信費
  • 自社の人件費
  • 対外的に無償で提供されているもの
  • 汎用性があり目的外使用になり得るもの(事務用PC・タブレット・スマートフォン等)

加えて、通常枠版のよくあるご質問(2026年6月3日更新)では次の3点が名指しで否定されています。

  • 「ホームページ制作(ECサイト制作含む。)は補助対象外です。」
  • 「リースは補助対象外です。」
  • 「通常枠においてハードウェアは補助対象外です。」

「サーバー機器の保守を補助金で」という発想は、通常枠ではハードウェア自体が対象外なので成立しません。

令和8年度の新制度では「既存事業との共用」も対象外

令和8年度に始まった新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)の公募要領では、対象外経費の筆頭にこう書かれています。

既存事業に活用する経費、既存事業と補助事業が共用される経費等、専ら補助事業のために使用されると認められない経費

— 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回 公募要領(1.2版)P.32(中小機構)

クラウドサービス利用費についても「専ら補助事業のために利用するクラウドサービスやWEBプラットフォーム等の利用費のみが対象。自社の他事業と共有する場合は補助対象となりません」と明記されています。全社共通の基盤として入れるツールは、この制度では通りにくいということです。

なお、この制度は名前の似た「中小企業新事業進出補助金」「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」とは別の公募要領で募集されています。申請する制度の公募要領を取り違えないよう注意してください。


本当の論点は「補助が切れた3年目に何が起きるか」

デジタル化・AI導入補助金2026公式サイトが掲示する不正受給への注意喚起バナー

出典: デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト

ここからが、発注判断で最も重要な部分です。「対象/対象外」の一覧だけでは判断がつきません。実際に経営を圧迫するのは補助対象期間が終わったあとに起きることです。

3年目から全額自己負担になる

保守費が補助されるのは最大2年分で、ソフトウェアも最大2年分です。つまり3年目の予算編成の時点で、ソフト月額と保守月額の全額が突然そのまま損益計算書に計上されます。

導入初年度は「補助金が出た年」なので、社内には「安く入った」という記憶しか残りません。その2年後に金額が跳ね上がって見えるため、「このツールは高い」という議論が始まります。金額は変わっていません。補助がなくなっただけです。

2年経つ前にやめると、返還に年10.95%の加算金が付く

「使わないならやめればいい」とはいきません。2026年9月4日更新の後年手続きマニュアルには、次のように書かれています。

ITツールの導入日から1年未満、または実績報告で提出された利用期間未満でITツールを解約・利用中止する場合、(その対象が複数導入したITツールの一部であっても)交付決定の取消しとなる場合があります。

本事業における補助金交付後に、ITツールの解約・利用中止をする場合……交付規程第27条、第28条、第31条に基づき、交付された補助金の全額あるいは一部の返還が発生することがあります。

— 後年手続きマニュアル P.5-6(中小機構)

そして、カテゴリー5〜7と10が制度上「サブスク」とみなされる点が重要です。保守サポート(カテゴリー7)はここに含まれます。サブスク扱いのITツールは「利用期間満了前の解約・利用中止」が返還の対象になります。

2年分の保守費で補助金を受け取ったなら、その2年間は途中でやめられません。

返還には金利もかかります。交付規程では次のように定められています。

条文

内容

利率

第29条(加算金)

補助金受領の日から納付の日までの日数に応じ、返還すべき額に対して課される

年10.95%

第30条(延滞金)

納付期限の翌日から納付の日までの日数に応じ、未納付額に対して課される

年10.95%

さらに第31条により、取得価格の単価が50万円以上の取得財産は「処分制限財産」となり、事務局の事前承認なしに目的外使用・貸付・譲渡・交換・廃棄・担保供与ができません。制限期間は減価償却資産の耐用年数等に関する省令に基づく期間です。ソフトウエア(複写して販売するための原本・開発研究用を除く)の法定耐用年数は5年とされているため(国税庁 タックスアンサー No.5461)、買取ソフトを50万円以上で導入すると、5年間は自由に処分できないことになります。

効果報告は2031年1月まで続く

補助対象は最大2年分ですが、報告義務はもっと長く続きます。 通常枠 公募要領 3-5「事業実施効果の報告」によると、報告スケジュールは次のとおりです。

年度

効果報告の期間

事業計画期間前

2027年3月〜(受付スケジュールは順次公表)

1年度目

2028年4月〜2029年1月

2年度目

2029年4月〜2030年1月

3年度目

2030年4月〜2031年1月

報告内容は、営業利益・人件費・減価償却費・事業者当たりの総労働時間・1人当たり給与支給総額・事業場内最低賃金に加えて、「ITツールを継続的に活用していることを証する書類等」です。

賃上げ目標が必須要件となる申請区分(補助金申請額150万円〜450万円など)で目標が未達だった場合、返還額は「補助金の額を労働生産性の計画目標年数である3年で除した金額」をベースに算出されます。たとえば補助金450万円で事業場内最低賃金の増加目標が未達だった場合、1年度目未達なら全額450万円、2年度目未達なら返還率2/3で300万円、3年度目未達なら返還率1/3で150万円という計算になります。加えて、未達が報告されてから18ヶ月間は、中小企業庁が所管する補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、小規模事業者持続化補助金等)に申請する際、正当な理由が認められない限り大幅に減点されます。

補助対象は2年ですが、「使い続けている証明」は最長で2031年1月まで求められます。 この期間のずれが、補助金でシステムを入れるときに見落とされやすい論点です。


5年で実際にいくら払うのか:ランニングコスト込みの総額

補助期間の終了後も積み上がる保守費などのランニングコストを表すイメージ

「補助金でいくら出るか」ではなく、「5年で自社がいくら払うか」で見ると、判断は大きく変わります。モデルケースで計算します。

モデルケース:業務ソフト月5万円+導入設定70万円+保守サポート月2万円

通常枠・補助率1/2で申請し、ソフトと保守をそれぞれ2年分(24ヶ月分)計上した場合です。

期間

内訳

補助対象経費

補助金

自社負担

1〜2年目

ソフトウェア 月5万円×24ヶ月

120万円

—

—

1〜2年目

導入設定(カテゴリー6)

70万円

—

—

1〜2年目

保守サポート 月2万円×24ヶ月

48万円

—

—

1〜2年目 合計

238万円

119万円(1/2)

119万円

3年目

ソフト+保守 月7万円×12ヶ月

—

0円

84万円

4年目

同上

—

0円

84万円

5年目

同上

—

0円

84万円

5年間の合計

238万円

119万円

371万円

「補助金が119万円出た」という印象に対して、5年間で実際に支払うのは371万円です。 年平均にすると約74万円です。しかもこの間、2年目までは解約できず、2031年1月まで効果報告が続きます。

補助率が2/3となる特例(令和6年10月〜令和7年9月の間で、「当該期間における地域別最低賃金以上〜令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3ヶ月以上ある場合)に該当すれば補助金は約159万円になりますが、それでも5年の自社負担は331万円です。構造は変わりません。

いつ申請すれば、いつ入金されるのか(次回締切と入金時期)

2026年10月11日に公式の事業スケジュールで確認した、次回の締切は次のとおりです。

枠

回次

交付申請締切

交付決定(予定)

事業実施期間

実績報告期限

通常枠/インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)/セキュリティ対策推進枠

6次締切分

2026年10月30日(金)17:00

2026年12月10日(木)

交付決定〜2027年5月31日(月)17:00

2027年5月31日(月)17:00

複数者連携デジタル化・AI導入枠

3次締切分

2026年10月30日(金)17:00

2026年12月10日(木)

交付決定〜2027年5月31日(月)17:00

2027年5月31日(月)17:00

出典: デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール(中小機構、2026年10月11日確認)

7次以降の日程は、公式サイトに「確定している募集回のスケジュールのみ公表しております」と注記されており、2026年10月11日時点では未公表です。締切はすべて17:00で、「締切時間を過ぎた場合は、いかなる理由であっても受付対応は一切いたしかねます」と明記されています。最新の回次はデジタル化・AI導入補助金の締切まとめで確認してください。

入金までの期間で公式に定められているのは、最後の1工程だけです。

※ 補助金の交付は、補助金額確定から約1か月程度で行われます。
※ 必要に応じて、補助金の交付を留保する場合があります。

— 事業実施・実績報告マニュアル P.8(中小機構)

2026年10月30日締切で申請した場合、公式の日程から逆算した目安は次のとおりです。確定検査にかかる期間は公表されていないため、幅を持たせています。

  • 早い場合:交付決定(2026年12月10日)の直後に契約・支払い → 2027年の早い時期に実績報告 → 確定検査・承認 → 2027年3〜4月頃に入金(申請から約5ヶ月)
  • 遅い場合:実績報告を期限(2027年5月31日)に提出 → 2027年8〜9月頃に入金(申請から約10〜11ヶ月)

その間、238万円は全額を自社で立て替えます。 補助金は後払いです。立替期間の資金繰りは補助金の入金はいつかの実務解説にまとめています。

また、交付決定前に契約・発注・納品・請求・支払いのいずれかを行うと補助金を受けられません(公募要領 P.34 留意事項)。10月30日締切なら交付決定まで約1.4ヶ月(41日)、対象の契約・発注を止めて待つ必要があります。

補助金を前提にしない場合、費用はどう決まるか

登録ITツールを補助金で入れるのとは別に、自社の業務に合わせた仕組みを開発する選択肢もあります。既存システム同士の連携や改修で、転記・照合・集計といった繰り返し作業をなくすやり方です。この場合の費用は、パッケージの月額ではなく開発費(初期)+稼働後の運用・保守費の組み合わせで決まります。

当社(AI革命)の受託開発の公開価格は、既存システムの改修100万円〜、PoC(本番前の検証)300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別。クラウド・外部API・ライセンス等の実費は別)。PoCの300万円は検証の開始価格で、本番システムの完成価格ではありません。稼働後の保守の範囲と費用は、開発の見積と同時に確認してください(確認の仕方は後述します)。対応範囲は受託開発のサービスページに記載しています。

補助金ルートとの違いは、交付決定を待たずに着手でき、補助金による解約制限や効果報告がない代わりに、開発費の全額と保守費を最初から自社で負担することです。どちらが合うかは、後段の試算で数字に置き換えて比べます。


保守費を毎年払い続ける以外に、選択肢は3つある

保守費の相場根拠として引用されるIPA(情報処理推進機構)の公式ロゴ

出典: IPA 情報処理推進機構 公式サイト

「保守費が3年目から全額自己負担になる」と分かったとき、取れる手は大きく3つです。どれが優れているという話ではなく、業務の性質によって答えが変わります。偏りなく比較します。

① 手作業のまま効率化

② RPA・ノーコード・既製SaaS

③ 業務に合わせた開発(AIを組み込む場合を含む)

初期費用の決まり方

社内の工数のみ。外部に払う費用はほぼない

ツールのライセンスと設定費。製品ごとの公開価格で確認する

開発範囲で決まる見積。当社の場合は既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積(税別)

月額・保守

なし

ライセンス月額。設定変更や修正を外部に頼む場合は別契約になることがある

クラウド等の実費+保守契約。保守の範囲は契約で決める

得意なこと

帳票の統一、二重入力の廃止

画面操作の再現、決まった転記、製品の標準機能で足りる処理

複数システムをまたぐ連携・照合、表記ゆれの吸収、自社固有の例外処理

苦手なこと

属人化が残る。人が辞めると戻る

画面や仕様が変わると止まる。製品にない処理は作れない

小さな業務には開発費が見合わない。仕様を決める社内の時間が要る

補助金との相性

対象になる経費がほぼない

登録ITツールなら対象になりうる

デジタル化・AI導入補助金では、御社専用の作り込みは対象外(後述)

まず①を検討してください。 帳票のフォーマットを揃える、同じ情報を2箇所に入力するのをやめる、といった整理だけで、外部に費用を払わずに時間が浮くことがあります。費用がかからないため、投資回収を考える必要がありません。

②のRPA・ノーコードは、画面操作が毎回まったく同じ業務に向いています。ただし、対象システムのアップデートで画面が変われば止まるため、止まったときに直す人が必要です。ここで発生するのが保守費です。導入前に保守の担い手を決めておかないと、「ツール代は補助金で出たが、動かなくなったときに直せる人がいない」という状態になりかねません。

③の開発は、既存システム同士をつなぐ連携や、表記ゆれがある照合、判断ルールを言葉で書ける処理に向いています。生成AIを処理の一部に組み込めば、「株式会社」と「(株)」の混在、日付形式の違い、担当者名の表記ゆれといった、RPAが苦手とする揺らぎも扱えます。一方、揺らぎがまったくない単純転記なら②のほうが安く済み、製品の標準機能で足りるなら開発は要りません。

このほか、月額で仕組みの運用まで任せる運用型のサービスや、AIエージェントを使う方法もあります。どの方法でも、月額や保守契約に含まれる作業と含まれない作業を書面で確かめる点は同じです。

保守費の相場を「IPA基準」と説明する記事には注意

保守費の目安として「年間保守費は初期開発費の15〜20%」という数字がよく引用されます。ただ、「IPAが公表している公的な相場である」という説明は誤りです。

IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は開発プロジェクトの規模・工数・信頼性を中心に分析した資料で、保守費を開発費比率で示す相場統計は含まれていません。15〜20%(幅を取れば10〜30%)という数字は、業界で長く使われてきた経験則として扱うのが正確です。見積書を検証する際に「IPA基準で20%です」と言われたら、根拠となる作業内容の内訳を求めてください。

なお同データ集では、調査対象5,546プロジェクトのうち新規開発は約3割、改修・保守が約5割を占めています。IT投資の重心が保守側にあること自体は、公的資料から言えることです。


自動化できる業務・できない業務の境界線

保守費を払い続けるかどうかを判断する前に、そもそもその業務が自動化に向いているのかを切り分ける必要があります。ここを曖昧にしたまま導入すると、補助金が出ても出なくても失敗します。

自動化を任せられる業務

任せられない業務

毎日・毎週・毎月、繰り返し発生する

年に数回しか発生しない/毎回内容が違う

入力も出力もデジタルで完結する

紙・対面・電話が前提になっている

判断ルールを言葉で定義できる

その場の状況で例外判断が必要

複数システム間の転記・照合・集計

最終決裁そのものをAIに委ねたい

処理件数が多く、時間がまとまって取られている

1件あたり数分で、月合計でも数時間

具体的に任せられるもの

  • 商品カタログ・商品マスタの更新(複数店舗・複数チャネルへの反映)
  • 商談記録のCRM入力と、その内容に応じたフォローメールの送信
  • 月次の集計とレポート作成、関係部署への配信
  • 複数システムにまたがるデータの照合(売上と入金、発注と納品など)
  • 定型フォーマットの帳票作成と送付

任せられないもの、正直に書いておくこと

  • 紙で届いて紙で返す業務:スキャンから始める場合、その手間が削減時間を上回ることがあります
  • 毎回例外判断が入る業務:ルールが「担当者の経験による」としか言えない業務は、まずルールを言語化するところからです
  • 最終決裁:金額の承認、人事評価、与信判断などは人が決めるべきです。AIは資料を揃えるところまでです
  • 人が代わりに作業する業務代行:仕組みを作る開発とは別の依頼です。作業そのものを外に出したい場合は、業務代行サービスのほうが合います
  • 月合計で数時間しかない業務:後述の試算のとおり、開発費と保守費に見合いにくくなります

この線引きに当てはまらない業務は、無理に自動化せず手作業のまま残したほうが安く済みます。 開発を検討する前にこの切り分けを済ませておくと、作らなくてよいものに費用をかけずに済みます。


削減できる時間を金額に換算するといくらか

投資判断は「月何時間 × 人件費 = いくら」まで換算しないと決まりません。ここでは仮定に基づく試算で、開発費がいくらまでなら回収できるかを逆算します。数字はすべて説明用の仮定で、実案件の実測ではありません。

仮定:繰り返し作業が月80時間あるケース

業務

現状の月間工数(仮定)

月次の集計とレポート作成・配信

20時間

商談記録のCRM入力とフォローメール送信

30時間

商品マスタ・カタログの更新

30時間

合計

月80時間

前提は次の3つです。

  • 時給3,000円(会社負担の社会保険料などを含めた人件費の仮定)
  • 仕組みを入れても確認の作業は残るため、減るのは80時間のうち60時間と仮定
  • 稼働後の運用・保守費(クラウド等の実費と保守契約)を月3万円と仮定

月の削減額は 60時間 × 3,000円 = 月18万円(年216万円)。運用・保守費を引いた月15万円で開発費を回収していくことになります。式は「回収までの月数 = 開発費 ÷(月18万円 − 月3万円)」です。

開発費(仮定)

回収までの月数

5年間の差引(削減額1,080万円 − 開発費 − 運用・保守費180万円)

200万円

約14ヶ月(200 ÷ 15 ≒ 13.3)

+700万円

500万円

約34ヶ月(500 ÷ 15 ≒ 33.3)

+400万円

800万円

約54ヶ月(800 ÷ 15 ≒ 53.3)

+100万円

表の開発費は説明用の仮定で、当社の見積額ではありません。実際の金額は、対象の業務・つなぐシステムの数・例外の多さによって変わります。

見合わないラインも先に書いておきます

月の削減額が運用・保守費を下回ると、開発費はいつまでも回収できません。上と同じ仮定(時給3,000円、運用・保守費月3万円)で、5年(60ヶ月)で開発費を回収するのに必要な月の削減時間は「(開発費 ÷ 60 + 3万円)÷ 3,000円」で計算できます。

  • 開発費200万円 → 月約21時間の削減が必要
  • 開発費500万円 → 月約38時間の削減が必要
  • 開発費800万円 → 月約54時間の削減が必要

削減見込みが月20時間を切る業務は、前段の「①手作業のまま効率化」か「②既製ツール」で止めるのが無難です。初回相談のあとにお送りする相談メモでも、自社で進める部分・会社に頼む部分・やらない部分を分けてお返しします。

補助金ルートと並べて比較する

前段のモデルケースと並べると、判断材料が揃います。右の列は上の仮定(開発費500万円の場合)です。

補助金でパッケージ導入

補助金を使わず開発

5年間の自社負担

371万円(補助119万円を差し引いた後)

680万円(開発費500万円+運用・保守費3万円×60ヶ月)

手元から出る現金のピーク

238万円を最長11ヶ月立替

開発費の支払い条件(一括・分割など)による

着手できる時期

交付決定(申請から約1.4ヶ月)を待つ

契約後すぐ。期間は開発範囲による

途中でやめられるか

2年間は解約で返還リスク(加算金 年10.95%)

補助金による制限はない。保守契約の解約条件は契約で決める

報告義務

最長2031年1月まで効果報告

なし

対象になる業務

登録済みの汎用パッケージで足りる範囲

自社固有の業務フロー・既存システムとの連携

想定削減時間

パッケージの機能範囲による

上記の仮定で月60時間(5年で1,080万円相当)

支出だけを見れば補助金ルートが安く見えます。 ただしデジタル化・AI導入補助金は「登録された汎用パッケージ」にしか使えないため、自社固有の業務フローに合わせた開発はそもそも選択肢に入りません。自社の業務のどこに時間が溜まっているかによって、答えは変わります。


補助金で入れるもの、補助金の外で判断するもの

ここは正直に書きます。自社の業務フローに合わせて作り込むタイプの自動化は、そもそもデジタル化・AI導入補助金の登録ITツールになりません。

ITツール登録要領 2-3(1)2.「ITツール登録の対象外となるもの」には、次のように列挙されています。

(カ) 業務プロセスに影響を与えるような大幅なカスタマイズが必要となるもの。
(ク) 製品が完成されておらず、スクラッチ開発を伴うソフトウェア。過去に特定顧客向けに開発したコード(開発実績)を他の顧客に再利用し、その顧客の要件に合わせ追加スクラッチ開発を伴うもの。
(コ) すでに導入済みのソフトウェア等の機能を追加・拡張することを目的としたもの(追加モジュール、アドオン、プラグイン等)。
(サ) 特定の顧客向けに限定され、一般市場に販売されていないもの。

— ITツール登録要領 P.9-10(中小機構)

当社の受託開発のように御社専用に作る仕組みは、(ク)(サ)に当たるため、デジタル化・AI導入補助金の登録ITツールにはなりません。「この補助金で開発費を賄えます」とは申し上げられません。既存システムへの機能追加(アドオン開発)も(コ)に該当します。どの導入形態が登録対象になるかは生成AIは補助金の対象になるかの整理にまとめています。

だからこそ、切り分けはシンプルです。

業務の性質

取るべきルート

会計・給与・受発注など、汎用パッケージで足りる

補助金を使って登録ITツールを導入する。ただし保守は2年で切れる前提で予算化

自社固有の業務フローで、毎月まとまった時間が取られている

補助金を前提にせず、5年の総額と削減時間で判断する

どちらか判断がつかない

まず業務の棚卸しをして、月何時間かかっているかを数える

補助金が使えるかどうかを起点に業務を選ぶと、いちばん時間を食っている業務が最後まで残ります。 順序を逆にして、時間が溜まっている業務から並べ、そのうち汎用パッケージで解決できるものだけを補助金に載せるのが、実務的にいちばん無駄が出ない進め方です。

なお、登録ITツールを導入する場合、保守サポート(カテゴリー7)を登録・提供するのはIT導入支援事業者側です。支援事業者が2年後も保守を続けてくれるか、料金がどうなるかを、申請前に書面で確認しておいてください。支援事業者の役割はIT導入支援事業者とは何かで解説しています。

補助金で開発費をまかなう場合の考え方

御社専用の開発に補助金を使う道が、まったくないわけではありません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回。公募締切は2026年10月30日(金)18:00)の公募要領では、「機械装置・システム構築費」に次の経費が含まれています。

② 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入、構築、借用に要する経費

— 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回) 1.2版 P.27(中小機構、2026年10月11日確認)

ただし、開発費をこの費目に載せるには条件があります。

  • 新製品・新事業のための投資であること:既存事業に活用する経費や、既存事業と共用する経費は対象外です(同 P.32)。今の業務の効率化だけを目的にした開発は、この制度の趣旨に合いません
  • 既存システムの単なる置き換えは対象外です(同 P.28)
  • 100万円(税抜き)以上のシステム構築費を計上すると、実績報告時に要件定義書(費用見積書を含む)か、作業単価・工数などの開発費用算出資料の提出が必要です(同 P.28)。開発会社がこれらを出せるかを、契約前に確認してください
  • 交付決定日より前に契約(発注を含む)した経費は対象外です(同 P.55)。補助事業実施期間(革新的新製品・サービス枠は交付決定から10か月以内、新事業進出枠・グローバル枠は14か月以内)に、契約から支払いまでを終える必要があります
  • 補助金は後払いで、開発費はいったん全額を立て替えます。稼働後の保守費やクラウド利用料も、補助事業実施期間を過ぎた分は自社負担です

予算の組み方も逆にします。補助上限から開発範囲を決めるのではなく、必要な開発範囲の見積を先に取り、そのうち補助対象になる部分と自社負担になる部分(保守・既存事業と共用する部分・期間外の利用料)を分けて予算を組みます。不採択だった場合に、自社負担だけで進めるか、範囲を縮めるか、見送るかも申請前に決めておくと、判断が止まりません。

補助金で入れるものと、自社に合わせて開発するものの線引きに迷ったら、今の業務と使っているシステムを伺って一緒に切り分けます。初回相談は無料・30分(オンライン)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。補助金の申請要件そのものは、各制度の公募要領と事務局でご確認ください。

▶ 補助金で入れるものと、開発で作るものの切り分けを相談する


当社が公開できる開発実績

守秘のため社名は出せませんが、公開できる範囲で2件を紹介します。補助金の利用の有無を示すものではなく、件数の多いデータと確認の手間を仕組みで扱った開発の例です。

通信事業のケース:数万件の請求情報の取込・集計・確認画面

数万件規模の請求情報を取り込んで集計し、担当者が内容を確かめるための確認画面を作りました。

薬局のケース:複数店舗・数千人分の記録管理と権限、確認工程

複数店舗にまたがる数千人分の記録を管理する仕組みで、誰がどの記録を見られるかの権限と、記録の確認工程を作りました。

どちらも、削減時間などの効果の数値は公開していません。2件に共通するのは、件数の多いデータを扱い、誰が何を確認するかの工程まで仕組みに入れた点です。前段の境界線の表でいえば、件数の多いデジタルのデータを取り込み、集計・確認する業務の例です。


開発を頼むときの流れと、保守の決め方

当社に開発を相談いただく場合の流れです。期間は対象業務と接続するシステムによって変わるため、範囲を決めたうえで個別にお伝えします。

段階

やること

費用

1. 初回相談(30分・オンライン)

何を解決したいか、使っているシステム、自社で進められる部分と頼む部分の切り分け

無料

2. 相談メモ

確認した現状と課題、自社で進める・頼む・やらないの切り分け、進め方の候補と費用の目安、次に必要な資料をメールでお送りします

無料

3. 提案・見積

資料をいただいたうえで、開発範囲と金額を示します

無料

4. 調査・PoC・開発

既存コードや仕様の調査、本番前の検証(PoC)、改修・本開発。有償になる前に範囲と金額を示して合意を取ります

既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積(税別)

5. 稼働後の保守

障害の受付時間、復旧の目標、軽微な変更の扱い、含まれない作業の単価を契約で決める

契約内容による

保守費で3年目に慌てないためには、開発の見積と同時に保守の見積も出してもらうのが確実です。比率(「開発費の◯%」)ではなく、上の5段目にある項目を書面で確認してください。

自社でAIを使って進められること、会社に頼むこと

いまはChatGPTやClaudeなどのAIで、業務の棚卸し表を作る、Excelの集計マクロや小さなスクリプトを書く、公募要領の該当箇所を探して要点をまとめる、といった作業を社内で進められます。月に数時間の作業なら、開発を頼まずにAIで足りる場合もあります。

会社に頼む意味が出てくるのは、次のような部分です。

  • 固有のデータ:実データに表記ゆれや欠損がどれだけあり、どう直すか
  • 既存環境:今のシステムをAPI・CSV・画面操作のどれでつなぐか。仕様書がない部分の調査
  • 権限:誰がどのデータを見て、どこまで変更できるか
  • 例外:ルールに当てはまらない取引や記録をどう扱うか
  • 検収:何ができていれば完成とするか、正しさをどう確かめるか
  • 変更の責任:取引先や制度の変更、システムの更新のときに誰が直すか(ここが保守の範囲になります)

補助金ルートの場合は、これに申請準備と交付決定待ち(10月30日締切なら約1.4ヶ月)が前に付きます。初回相談で整理する「どの業務に月何時間かかっているか」は、補助金を申請する場合の事業計画の材料にも使えます。


よくある質問

Q1. 複数のITツールを導入したうち、1つだけを解約した場合も返還の対象になりますか。

なる可能性があります。後年手続きマニュアルには「(その対象が複数導入したITツールの一部であっても)交付決定の取消しとなる場合があります」と明記されています。一部解約でも全体の交付決定が取り消されうるという点は、複数ツールをまとめて申請するときに見落としやすいところです。なお、サブスク扱いのITツールで利用期間を満了したあと継続しない場合は、辞退届の提出は不要です(ただし効果報告は必要)。また公式サイトには「補助金の自主的な返還を受け付けています」という案内も出ています。

Q2. 保守費を厚めに、導入設定費を薄めに配分することはできますか。

配分自体は可能ですが、制約が2つあります。1つは大分類Ⅲ(カテゴリー5・6・7)の合計200万円という上限で、これを超えた分は切り捨てになります。もう1つは「1交付申請当たり、カテゴリー7は1つのみ申請可能」という制限です。加えて、ITツールの登録申請時に申請できるのは最大1年分で、2年分を補助対象にするには交付申請時に利用年数を申請する必要があります。登録申請の段階で決めるものと交付申請の段階で決めるものが分かれているため、支援事業者と事前に配分を詰めておいてください。

Q3. 補助金の申請を代行会社に依頼した場合、その手数料は補助対象になりますか。

なりません。通常枠 公募要領 P.18 の補助対象外経費に「補助金申請、報告に係る申請代行費」が明記されています。成功報酬型で「補助金額の15%」といった手数料を設定している代行会社もありますが、その全額が自己負担です。5年の総額を計算するときは、この手数料も自社負担に加えて見積もってください。

Q4. リース契約で入れたシステムの保守費は補助対象になりますか。

なりません。公募要領 P.18 に「リース・レンタル契約のITツール」が補助対象外と明記されており(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)、通常枠版のよくあるご質問でも「リースは補助対象外です」と回答されています。リースしているシステムに紐づく保守も、補助事業の対象となっていない製品に対する保守費用(登録要領(ウ))に該当します。リースで入れるか買取・サブスクで入れるかは、申請前に決めておく必要があります。

Q5. ものづくり補助金で、5年分のクラウド利用料をまとめて計上できますか。

できません。公募要領に「補助事業実施期間中に要する経費のみ」「契約期間が補助事業実施期間を超える場合の補助対象経費は、按分等の方式により算出された当該補助事業実施期間分のみ」と定められています。契約が5年でも、補助対象になるのは補助事業実施期間に対応する部分だけです。残りの期間分は自社負担として予算に入れてください。なお、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、これに加えて「専ら補助事業のために利用する」ものに限られ、自社の他事業と共有する場合は対象外とされています。

Q6. 保守を打ち切って自社運用に切り替えたい場合、報告義務はどうなりますか。

保守契約を終了しても、効果報告の義務は残ります。通常枠 公募要領 3-5 では、効果報告の際に「ITツールを継続的に活用していることを証する書類等」の提出が求められます。つまり、保守をやめても「使い続けている」ことの証明は必要です。報告期間は事業計画期間前(2027年3月〜)から3年度目(2030年4月〜2031年1月)まで続きます。さらに賃上げ目標が必須要件の申請区分では、目標未達の場合に返還が発生し、未達の報告から18ヶ月間は中小企業庁所管の補助金に申請する際に大幅な減点を受けます。

Q7. 見積書の保守費が「初期費用の20%、IPA基準」と書かれていました。妥当ですか。

「IPA基準」という説明は正確ではありません。 IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は開発プロジェクトの規模・工数・信頼性を分析した資料で、保守費を開発費比率で示す相場統計は含まれていません。15〜20%という水準は業界の経験則であり、公的な適正価格ではありません。比率ではなく作業内容で確認してください。 具体的には「障害対応の受付時間と復旧目標」「年に何回のバージョンアップ対応が含まれるか」「軽微な設定変更は何時間分まで含むか」「含まれない作業の時間単価はいくらか」の4点を書面で出してもらうと、比率の妥当性が判断できます。

Q8. 補助金を使わずに開発で自動化する場合、最初にいくら必要ですか。

当社の場合、公開価格は既存システムの改修が100万円〜、PoC(本番前の検証)が300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別。クラウド・外部API・ライセンス等の実費は別)。PoCの300万円は検証の開始価格で、本番システムの完成価格ではありません。補助金ルートのように入金を待つ期間はありませんが、補助で減る分もありません。稼働後の保守費は開発費とは別にかかるため、見積の段階で保守の範囲と月額を出してもらい、5年の総額で比べてください。


まとめ:判断するのは「対象か否か」ではなく「5年でいくらか」

  • デジタル化・AI導入補助金2026では、保守サポート費(カテゴリー7)は最大2年分が補助対象。「対象外」は正確ではありません
  • ただし役務3つ(コンサル・導入設定・保守)の合計200万円が上限で、保守を厚くすれば導入設定が削られます
  • 今使っているシステムの保守費は1円も出ません(登録要領(ウ)(エ))
  • 3年目からは全額が自社負担。モデルケースでは補助金119万円に対し、5年で払うのは371万円
  • 2年経つ前にやめると交付決定の取消しと返還、年10.95%の加算金。効果報告は最長2031年1月まで
  • 自社専用の作り込みは、そもそも登録ITツールになりません(登録要領(カ)(ク)(サ))

汎用パッケージで足りる業務は、補助金を使って導入する価値があります。ただし「保守は2年で切れる」「2年間はやめられない」を織り込んだ5年の予算表を、申請前に作ってください。

一方、自社固有の業務で毎月まとまった時間が取られているなら、デジタル化・AI導入補助金の枠組みでは解決できません。そこは5年の総額と削減時間で判断することになります。

自社の業務に合わせて作る場合は、開発費だけでなく稼働後の保守の範囲と費用を、見積の段階で書面にしてもらうことが、3年目の予算で慌てないための条件です。補助金で開発費の一部をまかなう場合も、補助上限から逆算せず、必要な範囲の見積を先に取ってください。

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※補助金の制度内容・スケジュール・要件・締切は変更される場合があります。申請前に必ずデジタル化・AI導入補助金2026の公式サイトおよび各制度の公募要領で最新情報をご確認ください。会計・税務上の取り扱いは顧問税理士にご確認ください。

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この記事の著者

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編集部

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