ビジネス活用2026年10月更新

システム開発の追加費用はいくら?AIシステム開発の費用内訳・開発期間と防ぎ方【2026年10月】

公開日: 2026/09/14
更新日: 2026/10/10
システム開発の追加費用はいくら?AIシステム開発の費用内訳・開発期間と防ぎ方【2026年10月】

この記事のポイント

システム開発の追加費用は変更1件で約6万〜200万円(試算)。AIシステム開発の費用内訳と開発期間の目安(JUASの標準工期の式)、追加見積を受け取ったときの確認手順、変更依頼票と予算内で入れ替える記入例まで発注者向けに解説します。

システム開発の追加費用は、変更1件あたり約6万円(一覧画面に項目を1つ足す程度)から約200万円(外部システムとの連携を1つ足す程度)が、仮定に基づく試算での目安です。AIシステム開発では、この追加・変更の費用に加えて、外部AIの利用料などの実費と、AIの提供終了に伴う乗り換えの費用が、開発費とは別にかかります。

開発期間は、公的な調査の式に当てはめると、10人月(1人で10ヶ月分)の案件で約7ヶ月、50人月で約12ヶ月が標準です。追加費用を防ぐには、変更を頼む手順と記録の残し方を契約前に決め、全体の10〜20%を予備費として別枠で確保したうえで、小さく区切って発注します。追加見積を受け取ったら、1つの要望を画面・データ・外部連携・権限・再テストに分けて影響を確かめ、予算内で何を後回しにするかを記録に残してから承認してください。

※変更1件あたりの金額は、1人日(1人が1日働く作業量)を3〜5万円と置いた仮定に基づく試算です。前提は後ほど表で示します。開発期間はJUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」の式による目安です。

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2026」には国内企業957社が回答しています。それによると、予定より予算を超過したプロジェクトの割合は、10人月未満の案件で6.0%、500人月以上の案件で42.2%でした。規模が大きいほど、予算は超えやすいということです。発注の単位を小さくする対策は、発注する側が自分で決められます。

この記事は、見積をもらった段階、契約の直前、あるいは着手後に追加見積を出された段階の発注者向けです。次の順に整理します。

  • AIシステム開発の費用の内訳と開発期間の目安
  • 追加費用が出る典型パターンと金額の目安
  • AI開発ならではの追加費用
  • 「誰が払うべきか」の判定
  • 追加開発の見積を受け取ったときの確認手順と記録の残し方
  • 契約前に決めておくこと

なお、当社の受託開発の価格は、既存システムの改修が100万円〜、PoC(本格的に作る前の試作検証)が300万円〜、本開発が個別見積です(すべて税別。クラウドや外部AIの利用料などの実費は別)。

AIシステム開発の費用と開発期間:追加費用はどこに入るか

AIシステム開発の費用を予算にするときは、見積書の「開発費」だけでなく、次の4つに分けて考えると、追加費用がどこから出てくるかが見えます。開発費の相場そのものはAI受託開発の費用相場、公開後の費用はシステム保守運用費の相場で扱っています。ここでは「後から増える費用」に絞ります。

費用の内訳:見積書の開発費の外で増えるもの

費用の区分

中身

決まる時期

後から増える理由

見積の段階で確認すること

開発費(当初の範囲)

要件整理、設計、実装、テスト、導入

契約時

範囲の外の作業が出る、未確定だった事項が決まる

対象外とする作業の一覧、未確定事項の一覧

追加・変更の費用

機能の追加、合意済みの仕様の変更

着手後、依頼のつど

1件ずつは小さくても積み重なる

変更を頼む手順、1人日の単価、予備費の扱い

実費(毎月)

クラウド利用料、外部AIの利用料、ソフトウェアライセンス

公開後、使った量で

利用者・処理件数の増加、提供元の価格改定

想定する利用者数・処理件数、開発費と分けた金額

保守・乗り換え

不具合への対応、外部AIの提供終了に伴う切り替えと再テスト

公開後

外部AIの提供元が古いモデルを終了する

保守に含む範囲か、都度見積か

開発期間の目安:標準工期は「工数の立方根×3.23ヶ月」

開発期間は、作業量(工数)から大まかに見積もれます。JUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」は、プロジェクト232件の実績から、標準的な工期(月)を「3.23×工数(人月)の立方根」で表しています(図表2-1-1)。実績の工期の差の9割はこの式で説明できる、とされています。式に当てはめると次のとおりです。

工数

標準工期(式による計算)

参考:費用の規模(仮定に基づく試算)

5人月

約5.5ヶ月

約300万〜500万円

10人月

約7.0ヶ月

約600万〜1,000万円

20人月

約8.8ヶ月

約1,200万〜2,000万円

50人月

約11.9ヶ月

約3,000万〜5,000万円

100人月

約15.0ヶ月

約6,000万〜1億円

※標準工期は、式に工数を当てはめて当社が計算した値です。費用の列は1人月60〜100万円と置いた仮定に基づく試算で、JUASの記載ではありません。式は実績から作った目安で、個々の案件の期間を約束するものではありません。小規模な改修や短期のPoCは、作業の区切り方によって式の値とずれることがあります。

同じ調査では、50人月未満のプロジェクトの56%で、実績の工期が標準工期を超えていました(図表2-1-2)。報告書は、標準工期に対して余裕を持って計画することが望ましいとしています。工程ごとの期間の配分は、要件定義:設計〜結合テスト:総合テスト=20:50:30です(図表2-2-1)。6ヶ月の開発なら、要件定義に約1.2ヶ月かける計算です。JUAS「企業IT動向調査報告書2026」でも、費用や納期の悪化に影響した工程として要件定義が多く挙がっています(後述)。ここを短く削ると、後で高くつきやすくなります。

追加・変更が入ると、費用と期間は同時に動く

追加・変更の費用は「作業量(人日)×1人日の単価」で決まります。作業量が増えれば、同じ人数で進める限り期間も延びます。さらに、大きな仕様変更があったプロジェクトは不具合の割合が高く(後述)、再テストの期間も延びます。1件の変更で、費用と期間の両方が動くと考えてください。

期間を優先して守るやり方もあります。同じ調査では、納期を最優先にしたプロジェクトは予定の工期までに完了した割合が74.5%で、他を優先したプロジェクトの61.6%を上回りました(図表2-4-2)。最初に「費用・期間・機能のどれを最優先するか」を決めておくと、追加要望が出たときに「この変更は次の段階に回す」と判断しやすくなります。期間全体の考え方はAI開発の期間で整理しています。

追加費用はどれくらいの確率で発生するのか

JUAS「企業IT動向調査報告書2026」の表紙

出典: JUAS(日本情報システム・ユーザー協会) 公式サイト

予算オーバーは、特別な失敗プロジェクトだけに起きることではありません。JUAS「企業IT動向調査報告書2026」(2025年度調査・経済産業省 商務情報政策局 監修)は、東証上場企業など4,500社を対象に調査し、957社から回答を得ています。今回からは100人月未満の案件を3つに分けて集計しました。「人月」は、1人が1ヶ月働く作業量を表す単位です。

規模が大きいほど、予算も工期もずれる

プロジェクトの規模

予定より予算を超過

予定より工期が遅延

10人月未満

6.0%

9.6%

10〜50人月未満

10.4%

16.2%

50〜100人月未満

19.6%

25.4%

100〜500人月未満

36.2%

38.8%

500人月以上

42.2%

47.8%

出典:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」第7章(図表7-1-4ほか)

10人月未満の案件では、「予定どおり完了」が45.7%、「ある程度は予定どおり」が43.4%で、予算超過は6.0%にとどまります。一方、500人月以上になると4割を超えます。報告書も「品質・費用・納期のすべてで、規模が小さいほど不良の割合が低く、大きいほど高い」とまとめています。

1人月60〜100万円と仮定して換算すると、10人月未満は、おおむね600万〜1,000万円を下回る規模の案件にあたります(換算は当社による仮定で、JUASの記載ではありません)。数百万円単位の案件に区切れるなら、そのほうが予算超過のリスクを抑えやすいと公的な調査から読み取れます。

予算がずれた理由の上位は「複雑さ」「考慮不足」「仕様変更」

予算が予定どおりにならなかった要因(複数回答)

割合

想定以上の現行業務・システムの複雑さ

51.4%

計画時の考慮不足

51.0%

仕様変更の多発

48.6%

社員のスキル不足

31.8%

ベンダー(開発会社)のスキル不足

27.8%

想定外の外的要因

22.9%

開発体制のリソース不足

21.2%

出典:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」図表7-1-7(2025年度・n=245)

上位3つはいずれも前年度より1.4〜9.7ポイント増えています。報告書は「品質・費用・納期に共通する悪化要因として依然根強い」と指摘しています。注目すべきなのは、「開発会社のスキル不足」(27.8%)より、「現行業務の複雑さ」「計画時の考慮不足」「仕様変更の多発」のほうが倍近く多いことです。3つとも、発注する側が契約前や着手後に深く関わる部分です。品質・費用・納期の悪化に影響した工程としては、「要件定義」(57.4〜69.0%)と「設計・実装・テスト」(51.7〜74.1%)が高く挙がっています。

追加費用の中身については、少し古い調査もあります。日経コンピュータが2018年に公表した1,745プロジェクトの調査では、コストが超過したのは365件(20.9%)でした。その原因(複数回答)は次のとおりです。

  • 「追加の開発作業が発生した」:64.4%
  • 「追加の設計作業が発生した」:53.7%
  • 「見積もりが甘かった」:37.3%

つまり、追加費用の多くは、「頼んだ作業の範囲が後から広がったこと」から生じています。

システム開発で追加費用が発生する典型パターン7つ

「追加費用」と一口に言っても、中身は大きく3種類に分かれます。まずこの区別を押さえておくと、請求を受けたときの判断が早くなります。

種類

中身

追加開発

新しい機能や対象を足す

仕様変更

合意済みの動き・条件・前提・成果物を変える

不具合修正

合意済みの仕様どおりに動いていないものを直す

そのうえで、実際に追加費用が出やすい場面は次の7つです。

1. 着手後に「やっぱりこう動いてほしい」が出る

画面の試作を見て初めて、具体的なイメージが湧くことはよくあります。「承認を2段階から3段階にしたい」「入力の順番を変えたい」といった変更は、見た目が小さくても、裏側の処理やテストのやり直しにつながります。JUASの調査で「仕様変更の多発」が48.6%を占めるのは、この積み重ねです。

2. 「ついでにこれも」が積み重なる

テストの段階で現場の担当者が触り始めると、要望が一気に増えます。1件ずつは小さくても、承認のたびに作業範囲が広がり、合計すると大きな金額になります(金額の試算は後述)。

3. 決めきれていなかった事項が、後から決まる

帳票のレイアウト、権限の分け方、連携先の仕様などを「後で決めます」としたまま始めると、決まった内容によって作業量が変わります。決まった時点で見積が変わるのは、ある意味で当然の結果です。

4. 現行の業務やシステムが、想定より複雑だった

JUASの調査で最も多い要因(51.4%)です。部署ごとに運用が違う、例外処理が担当者の頭の中にしかない、古いシステムのデータの持ち方が独特だった、といった事情は、着手後の調査で初めて見つかることが多くあります。

5. 見積の前提に入っていなかった作業

開発環境の準備、各種ドキュメントの作成、導入時の操作研修、データの移行などが見積の範囲外になっていると、後日追加で請求される可能性があります。見積書で何が「含まれていない」かの読み方は、AI開発の見積もりの比較方法とAI受託開発の費用相場で詳しく整理しています。

6. 口頭やチャットで頼んだ「ちょっとした変更」

IT分野の弁護士は、納期を優先するあまり開発会社の担当者が細かく確認しないまま変更に応じ、後から追加報酬を請求するというパターンを、紛争の典型として挙げています。発注者側には仕様変更をした認識すらないため、紛争になります。発注者が不信感を抱く理由として多いのは、「自分が頼んだ変更のうち、どれが追加費用の対象なのかを事前に知らされていなかった」ことです。

7. 大きな変更のあとに、不具合と再テストが増える

JUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」では、要求仕様の変更の大きさによって不具合の出る割合(規模あたりの欠陥率)が大きく変わりました。

要求仕様の変更

件数

平均の欠陥率

変更なし

50

0.192

軽微な変更

97

0.213

大きな変更

33

0.481

大きな変更があったプロジェクトは、変更なしに比べて不具合の出る割合が平均で約2.5倍です(0.481÷0.192で当社が算出)。直す作業に加えて確認し直す期間も延びるため、公開が遅れたり、発注側の社内の手間が増えたりという形でも費用がかかります。

1件ごとの金額は小さくても、積み重なると数百万円になる

変更1件がいくらになるかは、「作業量(人日)×1人日の単価」で決まります。単価は開発会社や担当者の経験で大きく変わり、公的な統計もありません。ここでは説明のため、1人月60〜100万円を月20営業日で割った1人日約3〜5万円と仮定して、典型的な変更の金額を試算しました。実際の単価は、見積書の内訳で開発会社に確認してください。

追加・変更の例

主な作業

想定する作業量

追加費用の試算

一覧画面に項目を1つ追加(データはすでにある)

画面の修正+テスト

2〜3人日

約6〜15万円

帳票・CSVの出力項目を変更

出力処理の修正+関連テスト

3〜5人日

約9〜25万円

入力・保存がある画面を1つ追加

設計・データの持ち方の変更・実装・テスト

10〜20人日

約30〜100万円

外部システムとの連携先を1つ追加

相手先の仕様調査・実装・つないだ状態でのテスト

15〜40人日

約45〜200万円

※1人日3〜5万円 × 想定作業量で当社が置いた、仮定に基づく試算です。作業量は一般的な作業の分け方から置いた仮定で、こうした変更の費用を集めた公的な統計はありません。

たとえば1,000万円で発注した案件で、着手後に次の変更が出たとします。

  • 一覧画面の項目追加 5件:約30〜75万円
  • 出力項目の変更 2件:約18〜50万円
  • 入力画面の追加 1件:約30〜100万円
  • 連携先の追加 1件:約45〜200万円

合計は約123〜425万円で、当初の金額の12〜43%にあたります。 予備費として10〜20%(100〜200万円)を確保していても、上振れすれば足りません。「1件10万円程度なら」と承認を続けると、こうなります。

AI開発で特に多い追加費用5つ

AnthropicのClaude公式ドキュメント「Model deprecations(モデルの提供終了)」ページ

出典: Anthropic 公式(Claude Platform Docs)

AIを組み込んだシステムには、一般的なシステム開発にはない追加費用の発生源があります。費用相場の解説ではあまり扱われませんが、AIを使う開発を検討しているなら、契約前に必ず確認してください。

1. 使っている外部AIが提供終了になり、乗り換えが必要になる

AIを組み込んだシステムの多くは、Anthropic(Claude)やOpenAIなどが提供するAIを外部から呼び出して動いています。これらの提供元は、古いモデル(AIの版)を一定の予告期間のあとに提供終了にします。

提供元

提供終了の通知時期(公式)

2026年の実例・予定

Anthropic(Claude)

少なくとも60日前

Claude Sonnet 4・Claude Opus 4:4月14日に終了を予告 → 6月15日に提供終了/Claude Opus 4.1:6月5日に終了を予告 → 8月5日に提供終了/Claude Sonnet 4.5:9月30日に終了を予告 → 11月30日に提供終了予定

OpenAI

一般提供モデルは少なくとも6ヶ月前、特化版は少なくとも3ヶ月前、プレビュー版は2週間などより短い場合あり

個別の終了予定は公式ページで随時更新

Anthropicは、提供終了日を過ぎたモデルへのリクエストは失敗すると明記しています。つまり、何もしなければシステムのAI部分が止まります。上の例では、モデル名に含まれる日付(2025年5月14日、2025年8月5日、2025年9月29日)から数えて、およそ1年〜1年2ヶ月で使えなくなります(Claude Sonnet 4.5は予定)。Claude Haiku 4.5にも、「この日より前には終了しない」という日付(2026年10月15日)が公式に示されています(いずれも2026年10月10日に公式ページで確認)。

しかも、新しいモデルに差し替えるだけで済むとは限りません。たとえばClaude Opus 4.7以降では、回答のばらつきを調整する設定値(temperatureなど)に既定以外の値を渡すとエラーになります。モデルを新しくするだけでも、プログラムの修正が必要になる例です。

動作確認、AIへの指示文の調整、再テストで5〜15人日かかるとすると、乗り換え1回あたり約15〜75万円になります(1人日3〜5万円での試算)。数年使うシステムなら、使っている間に何度か乗り換えが起こりうる前提で考えてください。

経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(2025年2月)も、既存の生成AIを組み込むタイプの開発では、開発会社自身が外部AIサービスの利用者として、その利用規約に縛られると指摘しています。開発会社の努力だけでは避けられない費用なので、保守契約に含めるのか、都度の追加費用なのかを契約時に決めておくことが最も確実な防ぎ方です。

2. AIの利用料・クラウド費用が、見積の想定より膨らむ

生成AIの利用料は、使った分だけ課金される形が基本です。利用者や処理件数が増えれば、そのまま月額が増えます。JUAS「企業IT動向調査報告書2026」では、IT予算が増える理由として新たに設けられた「AI関連投資・利用料増加」の回答が、2025年度計画の36.3%から2026年度予測で43.7%へ、7.4ポイント増えました(予算超過の調査ではなく、予算が増える理由の調査です)。

提供元の価格改定で運用費が変わることもあります(DeepSeek APIの値上げ/企業のAIコスト問題)。見積の段階で、開発費とは別に「実費(クラウド利用料・外部AIの利用料・ソフトウェアのライセンス)」を分けて示してもらいましょう。あわせて、その月額が何人の利用者、何件の処理を前提にした数字なのかも確認してください。

3. 「どこまでの精度なら合格か」を後から決める

同じチェックリストは、AIモデルは学習データから帰納的に作られるため、完成の約束や性能の保証が必ずしも容易ではないと整理しています。合格の基準がないまま始めると、「もう少し精度を上げたい」「この書類でも試したい」という調整が終わらず、そのたびに費用が積み上がります。

求める水準が高いほど、試す件数や調整の回数が増え、費用と期間が伸びます。開始前に「どの質問や書類に対して、どの水準で答えられたら合格か」を文書で決めることが、最も有効な対策です。たとえば「よくある問い合わせ50件のうち、根拠の箇所を正しく示せたものが何件以上なら次に進む」のように、対象・件数・判定する人まで書いておきます。

4. データの整備が想定より重い

AIに読ませるデータの形式がバラバラだったり、抜けや表記ゆれが多かったりすると、整える作業に大きな手間がかかります。データの整備にかかる費用の割合は案件ごとに大きく違い、データを見ないまま見積もると外れやすい部分です。着手してから「思ったより使える状態のデータがない」と分かるのが典型です。契約前に実際のデータの一部を開発会社に見せ、整備はどちらの作業範囲なのかを決めておいてください。

5. 試作から本番に移すときに、見えていなかった要件が出る

試作(PoC)の簡易な仕組みは、本番での利用者の増加、処理量、障害時の対応までは考えていないのが普通です。そのため、本番に移す段階で大きな追加費用が必要になることがあります。医療情報を扱う場合のように、セキュリティの要件が後から判明するケースも同じです。試作の結果報告に「本番にするとき追加で必要になるもの」まで含めてもらうと、本開発の見積が後からずれにくくなります(試作の費用感はAI PoCの費用)。

AI開発の追加費用

発覚しやすい時期

契約前に決めておくこと

外部AIの提供終了による乗り換え

公開後(通知期間は提供元により2ヶ月〜6ヶ月以上。プレビュー版はより短い)

保守に含むか都度見積か/通知を受けてから影響調査を出す期限

AIの利用料・クラウド費用

公開後、利用が広がったとき

実費を開発費と分けて明示/想定する利用者数・処理件数

合格基準の後出し

試作〜テスト

合格とする水準を文書で決める

データの整備

着手直後

整備はどちらの作業か/実データを事前に見せる

試作から本番への移行

本開発の見積時

本番化で追加になる要件を試作の報告に含める

その追加費用は誰が払うべきか

追加見積を受け取ったら、最初に判断すべきは「そもそも払うべき費用かどうか」です。法律事務所の解説と、IPA(情報処理推進機構)のモデル契約書の考え方をもとに、原因別に整理しました。

追加費用の原因

原則として払うのは

判断の分かれ目

発注者が依頼した仕様変更・機能追加

発注者

金額を変えるのは契約の変更なので、本来は合意が前提。ただし合意書がなくても認められることがある(下記)

決めきれていなかった事項が後から決まった

事前の書面次第

「確定したときに費用や納期が変わるなら受け入れる」と書面にしていれば発注者(IPAモデル契約 第36条の考え方)

見積の前提条件の外にある作業

見積書の書き方次第

前提条件や対象外として明記されていれば発注者。書かれていなければ協議

開発会社の見積誤り(想定より手間がかかった)

開発会社

見積誤りを理由にした追加請求の余地はないとされる

合意した仕様どおりに動かない(不具合)

開発会社

「不具合」か「仕様変更」かの切り分けが争点になりやすい

外部AIの提供終了による乗り換え

契約次第

保守に含めるか都度見積かを決めていないと揉めやすい

1行目の「合意書がなくても」について補足します。法律事務所の解説によると、金額の変更は契約の変更にあたるため、合意がなければ原則として追加報酬は請求できません。ただし例外があります。商法512条は「商人が営業の範囲内で他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求できる」と定めており、契約書を作り直していなくても追加報酬が認められることがあります。

よく引かれるのが東京地方裁判所の平成17年4月22日の判決です。プログラムの本数が当初の182本から414本に増えた事案で、「当初の受注範囲と金額が明確」「依頼範囲を超えて作業したことが明確」という条件のもと、追加報酬が認められたと解説されています。認められやすい条件としては、開発会社が「追加作業には別途費用がかかる」ことをメールを含む文書で事前に伝えていることなどが挙げられています。

発注者にとっての意味ははっきりしています。「契約書を作り直していないから払わなくていい」とは言い切れません。 チャットで頼んだ変更に対して、開発会社から「別途費用がかかります」とメールが来ていれば、請求が認められる可能性は高まります。

請負(完成した成果物に対して払う契約)と準委任(作業に対して払う契約)のどちらで契約しているかによっても、扱いが変わります(違いはAI開発の契約形態で整理しています)。個別の契約の判断は、弁護士にご確認ください。

追加開発の見積を受け取ったときの確認手順と記録の残し方

追加見積が届いたら、金額を見て承認・却下を即決せず、次の5つを順に確認してください。

  1. 契約書・見積書の範囲と照らし合わせる
    「追加開発」「仕様変更」「不具合修正」のどれにあたるかを先に決めます。本来は開発会社が負担する不具合修正が、追加費用に混ざっていないかを確認します。
  2. 依頼の記録をたどる
    誰が、いつ、どの手段(会議・メール・チャット)で頼んだのかを確認します。着手前に開発会社から「費用がかかる」と連絡があったかどうかも見ます。
  3. 金額の根拠を作業量で出してもらう
    「どの作業に何人日、1人日いくら」の形で内訳を求めます。1人日3〜5万円を目安に割り戻すと、規模感が妥当かどうか分かります。たとえば一覧画面の項目1つの追加で50万円なら、約10〜17人日です。前述の試算(2〜3人日)と大きく違う場合は、データの持ち方の変更など見えていない作業が含まれていないかを聞いてください。高いから不当とは限らず、理由が説明できるかどうかが判断材料です。
  4. 代わりの選択肢を検討する
    その変更は、①やめる、②範囲を削る、③公開後の改修に回す、④他の機能と入れ替える、のどれかにできないかを考えます。「公開前に本当に必要か」を1件ずつ問い直すだけでも、後回しにできる変更は見つかります。
  5. 納期と他の条件への影響まで確認してから社内承認する
    金額だけでなく、スケジュール、テストのやり直しの範囲、保守費への影響を確認します。後述するIPAの「変更管理書」の項目がそろっているかが確認の目安になります。

確認が終わるまで着手を待ってもらうのは問題ありません。ただし、協議そのものを拒むのは避けてください。理由は後述する取適法にあります。

不具合か追加要望かを先に分ける

手順1で迷いやすいのが、現場の「直してほしい」が不具合なのか追加要望なのかです。基準は、合意済みの仕様書・画面案・議事録に書かれた動きと比べて違うかどうかです。

現場からの声

合意済みの資料

分類

費用の扱いの原則

「CSVの日付が仕様書の形式と違う」

形式が書かれている

不具合

開発会社が直す

「CSVに担当者名の列も出してほしい」

書かれていない

追加要望

追加見積

「承認を2段階から3段階にしたい」

2段階と書かれている

仕様変更

追加見積(影響が広がりやすい)

「画面の表示が遅い」

速さの基準が書かれていない

協議

基準を決めてから扱いを決める

※表は説明用の例です。資料に書かれていない事項をどう扱うかは、契約と経緯で変わります。個別の判断は弁護士にご確認ください。他社が作ったシステムで揉めている場合も、どちらの責任かを先に決めつけず、資料と依頼の記録を並べて事実を確かめるところから始めてください。

1つの追加要望を、画面・データ・外部連携・権限・再テストに分ける

追加見積の金額が妥当かは、要望1件を作業に分けると判断しやすくなります。次は、当社が説明のために作った架空の例です(実案件の見積ではありません)。

例:営業部から「顧客一覧に『担当者』欄を足して、担当者ごとに絞り込めるようにしたい。担当者は自分の顧客だけ見られるようにしてほしい」という要望が出た。

影響を確かめる箇所

中身

想定作業量(仮定)

画面

一覧に列と絞り込み条件を追加、編集画面に担当者の選択欄を追加

2〜3人日

データ

顧客データに担当者の項目を追加、既存の顧客への担当者の割り当て(誰が決め、誰が移行するか)

2〜4人日

外部連携(API)

営業支援ツールや会計ソフトと顧客データを連携しているなら、相手側にも担当者を持たせるか

0〜5人日

権限

「自分の顧客だけ見られる」は表示の絞り込みではなく権限の変更。管理者・上長の見え方、異動・退職時の付け替え

3〜6人日

再テスト

既存の検索・CSV出力・連携がおかしくなっていないか、他の担当者の顧客が見えないかの確認

2〜4人日

合計

9〜22人日(1人日3〜5万円の仮定で約27万〜110万円)

「欄を1つ足すだけ」に見える要望でも、権限の変更が入ると作業は数倍になります。逆に、「担当者で絞り込めればよく、他の人の顧客が見えても構わない」と決められれば権限の行は不要になり、同じ仮定で約18万〜80万円に下がります。追加見積を受け取ったら、この5つのどこに何人日が入っているかを開発会社に聞いてください。

この分け方のたたき台は、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに要望文と画面の説明を渡せば作れます。一方で、今のデータの持ち方、連携先の仕様、権限の例外(兼務・代理・退職者)、どこまで再テストすれば安心かは、既存のコードと運用を見ないと決まりません。ここが開発会社に確認してもらう部分です。

影響確認表と、予算内で入れ替える記入例

変更するかどうかは、費用だけでなく期間と品質への影響まで1枚に並べて決めます。次は、後述するIPAの「変更管理書」の項目を社内で使いやすくした、説明用の変更依頼票です(記入内容は上の架空の例)。

項目

記入例

変更の名称

顧客一覧に担当者欄と、担当者別の閲覧権限を追加

依頼者・日付

営業部 ◯◯(窓口:情報システム担当 ◯◯)・◯月◯日

理由

担当替えのたびに表計算ソフトで別管理しており、引継ぎで漏れが出ている

分類

追加要望(合意済みの仕様書に記載なし)

費用への影響

約27万〜110万円(画面・データ・外部連携・権限・再テストの作業内訳つき)

期間への影響

公開前に入れると公開日が約2〜5週間延びる見込み(1人で作業し、9〜22人日を週5日で割った場合)

品質への影響

権限の変更を含むため、既存の検索・CSV出力・連携の再テストが必要

選択肢と結論

下の表の③を採用

承認者・承認日

部門長 ◯◯・◯月◯日(金額に応じて社内で決めた承認者)

選択肢は、追加費用を払うか断るかの2つだけではありません。予算を増やさずに済む方法も並べて比べます。

選択肢

費用

期間

変えないこと・後回しにすること

① 要望どおり公開前に追加

約27万〜110万円の追加

公開が約2〜5週間延びる

すべて実施する

② 範囲を削る(担当者欄と絞り込みだけ)

約18万〜80万円の追加

①より短い

権限の変更は後回し。当面は運用ルールで対応する

③ 他の機能と入れ替える

追加なし(作業量が釣り合う場合)

変わらない

当初予定の「月次レポートのPDF出力」を公開後に回し、その作業分を担当者欄に充てる。公開日と予算は変えない

④ 公開後の改修に回す

公開後に別見積

公開日は変わらない

公開時は表計算ソフトでの管理を続ける

③のように入れ替えるときは、外す機能と足す機能の作業量が釣り合うかを、開発会社に作業量で確かめてもらいます。外した機能は「なくなった」のではなく「後回しにした」と記録しておくと、公開後に同じ要望が出たときの説明がしやすくなります。

承認の記録を残す:何を変えず、何を後回しにしたか

社内説明で困るのは、半年後に「なぜこの機能がないのか」「なぜ費用が増えたのか」と聞かれたときです。変更依頼票とは別に、変更の一覧を1つ作り、1件ごとに次の5点を残します。

  • 結論(実施・範囲を削って実施・入れ替え・後回し・見送り)
  • 変えなかったこと(公開日・予算・既存機能のどれを守ったか)
  • 後回しにしたことと、再検討する時期
  • 承認者と承認日、開発会社側の確認者
  • 根拠になったメール・議事録の保存場所

前述の裁判例の解説では、開発会社が「追加作業には別途費用がかかる」とメールなどで事前に伝えていたかが、追加報酬が認められる条件の1つに挙げられています。発注側も、変更の依頼と承認をメールや一覧に残しておけば、追加費用を巡る食い違いを減らせます。見積を取り直すときは、この一覧と「今回の対象外とするもの」を添えると、各社の見積の前提をそろえやすくなります(AI開発の見積もりの比較方法)。

開発費用の目安を出す

5つの質問に答えると、改修・PoC・本開発のどれに当たるかの目安と、次に決めることを表示します。

質問 1 / 5何をしたいですか

契約前に決めておく5つの取り決め

モデル取引・契約書を公開しているIPA(情報処理推進機構)のロゴ

出典: IPA(情報処理推進機構) 公式サイト

1. 変更を頼むときの手順と書式を1枚にしておく

IPAが無料で公開している「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(2020年12月公開)では、手順が決まっています。仕様の変更は、変更の内容と理由を書いた「変更提案書」で提案します(第34条)。提案を受けた側は「変更管理書」を作り、双方の協議の場で可否を決めます(第37条)。変更管理書に書く項目は次の8つです。

#

変更管理書に書く項目

発注者が見るポイント

1

変更の名称

一覧で管理できる名前になっているか

2

提案の責任者

発注側・開発側のどちらの提案か

3

年月日

いつ依頼・提案されたものか

4

変更の理由

本当にいま必要か

5

変更に係る仕様を含む変更の詳細

何がどう変わるのか

6

変更のために費用を要する場合はその額

作業量×単価の内訳が出ているか

7

検討期間を含めた変更作業のスケジュール

公開日が動くか

8

その他、契約条件(作業期間または納期、委託料、契約条項等)への影響

他の機能や保守費に波及しないか

この8項目をそのまま社内の書式にし、「この書式を通っていない変更には着手しない」と開発会社と合意しておきます。金額に応じて社内の承認者も決めておくと、現場の判断で追加費用が積み上がることを防げます。

2. 決めきれていないことを、書面に残してから始める

同じモデル契約書の第36条は、発注者の事情でまだ決められない事項について、次の3点を書面にしておくよう定めています。

  • その内容
  • 確定する予定の時期
  • 確定したときに委託料や納期の変更が必要なら、発注者が受け入れること

発注者には不利に見えますが、「どこが追加費用になりうるか」が最初から一覧で見えるという利点があります。要件が固まっていない状態でどう発注を始めるかは、要件が固まっていない段階での開発相談で扱っています。

3. 途中で届く設計書や画面案の確認期限を守る

第35条では、開発途中で届く設計書などの資料について、発注者が決められた期間内に、具体的な理由を書いた異議を書面で出さなければ、承認したものとみなされます。承認後に直したくなった場合は、変更の手続き、つまり追加費用の対象になります。「あとで見ます」と後回しにしないよう、社内で確認の担当者と期限を決めておいてください。

4. 予備費を全体の10〜20%、別枠で確保する

システム開発の予算管理の解説記事には、全体の10〜20%程度を予備として見込む例が見られます(公的な基準値はなく、この記事でも目安として使います)。1,000万円の案件なら100〜200万円です。予備費を使うときの社内の承認ルールも決めておきます。ただし前述の試算のとおり、変更が積み重なると予備費だけでは足りなくなります。予備費は、1〜3の取り決めと組み合わせて初めて機能します。

期間についても同じ考え方です。JUAS「ソフトウェア・メトリクス調査2025」は、工期を守るための工夫として「要求仕様の明確化と仕様変更の最小化」「標準より余裕をもった計画工期の設定」を挙げています。

5. 小さく区切って発注する

冒頭の調査のとおり、10人月未満の案件では予算超過が6.0%にとどまります。IPAのモデル契約書(第二版)も、特徴として「多段階契約と再見積りの考え方」を採り入れています。これは、段階ごとに契約し、次の段階に進むときに改めて見積もる進め方です。AI開発については、経済産業省のチェックリストも、さらに具体的な考え方を示しています。契約の時点でリスクを十分に分析できない場合は、1つの契約ですべて調整しようとせず、後の契約で段階的に調整するほうが実態に合う場合がある、としています。

具体的には、次のような分け方です。

  • AIを使う新しい仕組みは、まず試作で確かめ、その結果を見て本開発の範囲と見積を決める
  • 既存システムの改修は、変更したい箇所を1つずつ切り出して発注する

改修の作業別の目安と、費用が高くなる条件はシステム改修の費用にまとめています。見積依頼の時点で前提条件をそろえる方法はシステム開発の相見積もりとRFPを参照してください。

追加費用を「払わない」で抑えようとすると起きること

「下請法」から「取適法」への改正事項をまとめた公正取引委員会・中小企業庁のリーフレット

出典: 公正取引委員会 公式サイト

追加費用を抑える方法として、「追加分は払わない」「当初の金額の中でやってもらう」と交渉するのは、発注者にとってリスクがあります。

無償の追加作業は、取適法違反になりうる

2026年1月1日に、下請法が改正されて「取適法(中小受託取引適正化法)」として施行されました。プログラムの作成を外部に委託する取引も対象です。プログラム作成の場合、次のいずれかに当てはまれば適用されます。

発注する側

受ける側

資本金3億円超

資本金3億円以下

資本金1千万円超3億円以下

資本金1千万円以下

従業員300人超

従業員300人以下(今回の改正で新設)

禁止されている行為のうち、追加費用に直結するのは次の4つです。

  • 受ける側に責任がないのに発注内容を変更したり、無償でやり直しや追加作業をさせたりすること
  • 価格の協議を求められても応じない、必要な説明をしないなど、一方的に代金を決めること(今回新設)
  • 発注時に決めた代金を、相手に責任がないのに後から減らすこと
  • 通常の対価に比べて著しく低い代金を不当に定めること

たとえば従業員300人を超える会社が、従業員300人以下の開発会社に「ついでにこれもお願いします。費用は当初の範囲で」と押し切れば、違反になりえます。発注内容(給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法)を書面やメールなどで明示する義務もあります。変更で内容や代金が変わるなら、その都度記録を残しておくのが安全です。

追加要望を出し続けた発注者が、約14億円を負担した裁判例

発注者の責任が正面から問われた例として、旭川医科大学とNTT東日本の間の電子カルテ開発をめぐる裁判(札幌高等裁判所 平成29年8月31日判決)があります。

  • 2009年7月、両者は「以後、画面や帳票に関わるものも含め、一切の追加開発要望を出さない」という合意(これ以上仕様を変えない「仕様凍結」の合意)をしていた。その時点で開発会社は625項目の追加開発を受け入れていた
  • 合意後も、大学側からは追加要望が出され続けた(解説記事によれば171項目で、うち92項目は開発対象外のカスタマイズ)
  • 高裁は、発注者には合意後に大量の追加要望を出して開発を妨げない義務(協力する義務)があるとして、開発が頓挫した責任は発注者のみにあると判断した
  • 開発会社については、「追加要望に応じれば納期を守れないことを明らかにし、拒否を含めた対応をした」として責任を否定した
  • 大学側に約14億円(遅延損害金は別)の支払いが命じられ、最高裁が大学側の上告を受理しなかったことで確定した

IPAの講演資料(2025年4月)でも、発注者に求められる「協力」には、開発会社の作業を邪魔しないことも含まれると説明されています。

追加費用は、「払わない交渉」で抑えるものではありません。「発生させない段取り」で抑えるものです。

追加費用を抑える発注の単位と、当社の費用

ここまでが、どの開発会社に頼む場合にも共通する話です。ここからは当社の場合を紹介します。当社の受託開発は、小さく区切って発注できるメニュー構成にしています(すべて税別)。

メニュー

価格

含まれるもの

追加費用を抑える使い方

既存システムの改修

100万円〜

今あるシステムへの機能や画面・帳票の追加、CSV出力や外部連携など

関連する変更をまとめて切り出し、範囲を決めて発注する

PoC(試作検証)

300万円〜

検証内容の整理、PoCの設計・開発、評価結果のまとめまで(本番システムの完成価格ではありません)

合格基準を決めて試し、その結果から本開発の範囲と見積を出す

本開発

個別見積

機能、利用者数、外部連携、データ移行、安全要件を確認して見積もる

試作で確かめた範囲だけを本番にする

実費

別途

クラウド利用料、外部AIなどの利用料、ソフトウェアライセンス

開発費とは別枠で示す

当社では、追加・変更の扱いを見積と契約で明確にします。クラウドや外部AIの利用料などの実費も、開発費とは別に示します。成果物と権利の扱いは契約で定めます。この記事で挙げた「見積の前提外の作業」や「AIの利用料が膨らむ」といった点を、見積書の段階で確認できる形です。他社が作ったシステムの調査・改修や、AIで作った試作の本番化にも対応できます。

冒頭の換算で言えば、既存システムの改修やPoCは、予算超過が最も少なかった「10人月未満」(1人月60〜100万円の仮定で、おおむね600万〜1,000万円を下回る規模)の帯から始められる発注単位です。費用の内訳と対応範囲は受託開発サービスのページに掲載しています。

初回相談は無料・30分(オンライン、Google Meet)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。他社で進んでいる案件の追加見積が妥当か確かめたい段階でも、お話を伺います。追加したい機能と今のシステムの構成を伺い、相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。初回の30分で確定した見積はお出ししません。事前に資料を共有いただく場合も、秘密情報・本番の認証情報・実在の顧客データは含めないでください。

▶ 追加見積と変更範囲の進め方を相談する

当社への相談が合わない場合もあります。追加したい機能が、お使いのSaaSの設定変更や標準機能で済むなら、そのSaaSの提供元に相談するほうが早く安く済みます。追加費用を巡って契約上の争いになっている場合は、先に弁護士にご相談ください。

当社の公開実績(受託開発ページ掲載分)

当社の受託開発ページで公開している実績のうち、この記事の話題に関係する2件です。守秘のため、社名・金額・期間は公開していません。

  • 通信事業:数万件の請求情報を取り込んで集計する仕組みと確認画面
  • 薬局:複数店舗・数千人分の記録を管理するシステム。権限と確認工程の設計を含む

誰がどの記録を見られるかという権限の要件は、前述の架空の例(担当者が自分の顧客だけを見る)のように、後から足すと画面・データ・再テストまで影響が広がる部分です。権限を最初の要件に入れておくかどうかで、追加費用の出方が変わります。

相談から開発開始までの流れと期間の考え方

当社の進め方は次の5段階です。各段階で発注側に決めていただくことが、そのまま追加費用の予防策になります。

段階

当社が行うこと

追加費用を防ぐために発注側で決めること

1. ご相談(無料・30分・オンライン)

困っている業務、使っているシステム、手元の資料を伺い、自社で進める部分と任せる部分を切り分ける。相談後に相談メモをお送りする

決まっていないことを、そのまま「未確定」として伝える

2. 課題・要件整理

業務、データ、権限、外部連携を確認する

部署ごとの運用の違いや例外処理を出し切る(JUASで最多の要因「現行業務の複雑さ」への対策)

3. 提案・見積もり

対応範囲、成果物、費用、スケジュールを提示する

対象外の作業、変更を頼むときの手順、未確定事項、予備費

4. PoCまたは本開発

試作・開発・テスト

合格基準、設計書や画面案の確認期限、変更は書面で依頼する

5. 導入・改善

公開後の改善

外部AIの提供終了と利用料の扱い

PoCの後は、継続する、範囲を変えて継続する、中止する、のいずれかを一緒に判断します。中止も選べる区切りを置いておくと、終わりの条件がないまま試作に費用が流れ続けることを防げます。期間の目安は、前述の標準工期の式とAI開発の期間で整理しています。どの段階から相談すべきか迷う場合は、受託開発の相談窓口から、現在の状況だけお知らせください。

よくある質問

Q1. チャットで気軽に頼んだ小さな変更も、後から請求されますか?

請求される可能性はあります。防ぐには、運用で次の3つを徹底するのが確実です。

  1. チャットで依頼するときも、最後に「費用や納期に影響がある場合は、着手前に金額を教えてください」と1文添える
  2. 開発会社への依頼は発注側の窓口1人に集約し、現場の担当者から直接頼まない
  3. 依頼した変更を1つの一覧にまとめ、週1回、費用がかかるものとかからないものを双方で確認する

現場の担当者が直接頼む運用のままだと、発注側の誰も把握していない追加費用が積み上がっていきます。

Q2. 準委任(作業時間に対して払う契約)なら、追加費用の心配はありませんか?

「追加費用」という名目の請求は出にくくなりますが、安心はできません。作業時間が増えれば、その分の支払いがそのまま増える契約だからです。請求書の名目が変わらないぶん、総額が膨らんでいることに気づきにくいという弱点があります。月ごとの上限時間と、超えそうなときは事前に相談する取り決めを契約に入れてください。月次の報告では、どの依頼に何時間かかったかの内訳まで出してもらいましょう。

Q3. 固定価格(請負)で契約すれば、追加費用は一切かかりませんか?

かかります。固定されているのは「合意した範囲」の金額で、範囲の外にある変更や追加、未確定だった事項の確定分は別に見積もられます。請負では、この範囲の境界が曖昧だと「仕様書に書かれていないものはすべて範囲外」と扱われかねません。契約前に、仕様書とは別に「今回の対象外とするもの」を一覧で書いてもらうと、境界がはっきりします。

Q4. 見積書に「予備費」や「バッファ」が入っているのは、水増しではありませんか?

項目として明示されているなら、むしろ誠実な見積です。予備費の割合に公的な基準値はありません(目安の考え方は前述の「予備費を全体の10〜20%、別枠で確保する」を参照)。注意すべきなのは、予備がどこにも見当たらない見積のほうです。その場合、変更はすべて追加見積になる可能性があります。予備費が入っている場合は、次の3点を確認してください。

  1. 何のリスクに備えた予備費か
  2. 使わなかった場合にどう扱うか(減額するのか、変更に充てるのか)
  3. 予備費の中で吸収する変更と、別見積にする変更の線引き

Q5. 使っている外部AIが提供終了になったら、改修費用は誰が負担しますか?

契約で決めた側が負担します。決めていなければ協議になり、揉めやすくなります。契約書には次の3点を書いておくことをおすすめします。

  1. 対象:どの外部AIサービスの、どんな変更を対象にするか(提供終了、価格改定、仕様変更)
  2. 保守料金に含む範囲:たとえば「同じ提供元の後継モデルへの切り替えと動作確認まで」
  3. 含まない場合の扱い:見積の出し方と、通知を受けてから影響調査を報告するまでの期限

もう1点見落としやすいのが、Amazon BedrockやGoogle Cloudを経由してAIを使っている場合で、提供終了日はそれぞれのクラウドが別に決めています。AI提供元の告知だけを見ていると気づけないため、どの経路で使っているかを設計書に書き残しておいてください。

Q6. 開発会社が影響を説明しないまま変更に応じ、結果として遅れました。これも発注者の責任ですか?

発注者だけの責任とは限りません。IPAの講演資料(2025年4月)は、仕様変更は後のスケジュールや費用に影響する可能性が高いと説明しています。そのうえで、開発会社には変更の影響を分析して発注者に説明し、本当に変更すべきかを慎重に協議する必要があるとしています。分析や説明をせずに安易に応じて遅延や不具合が起きた場合は、開発会社が責任を負う可能性がある、という整理です(東京高等裁判所 平成25年9月26日判決・平成26年1月15日判決を参照)。一方で、旭川医科大学の例のように、合意後も発注者が要望を出し続けていれば、発注者の責任が問われます。誰が何を頼み、開発会社がどう説明したかの記録が判断材料になるので、残しておいてください。個別の判断は弁護士にご相談ください。

Q7. 追加見積が高すぎて納得できません。途中でやめたり、別の会社に続きを頼んだりできますか?

IPAのモデル契約書(第二版)第38条は、変更の協議がまとまらず、発注者が納期や費用への影響を理由に続けないと判断した場合について定めています。この場合、まだ終わっていない部分を解約できますが、それまでの委託料と、解約によって開発会社に生じた損害は支払う形です。実際にどうなるかは、お手元の契約書の中途解約の条項で決まります。別の会社に引き継ぐなら、ソースコードと設計書を受け取れるか、外部サービスのアカウントが自社の名義かを先に確認してください。止まったプロジェクトの畳み方はAI開発の失敗はどこで起きるかで詳しく扱っています。

Q8. 追加見積が妥当かどうか、生成AIに確認させてもよいですか?

たたき台づくりには使えます。見積書の内訳と要望文を渡せば、抜けていそうな作業や、開発会社に聞くべき質問を挙げてくれます。ただし、見積書や契約書を外部のAIサービスに入れてよいかは、社内の規程と契約の秘密保持の条項を先に確認してください。また、作業量が妥当かどうかは、既存のコードやデータの持ち方を見ないと判断できません。最終的には、開発会社に作業内訳で説明してもらうことになります。

追加費用に悩む前に、変更範囲と進め方からご相談ください

この記事の要点は4つです。

  1. 追加費用は変更1件で約6万〜200万円(仮定に基づく試算)。 積み重なると当初の金額の1割強〜4割強になりえます。予備費10〜20%だけでは防げません
  2. 小さく区切った案件ほど予算超過は起きにくい。 JUASの調査では、10人月未満で6.0%、500人月以上で42.2%でした。期間は標準工期の式で、10人月なら約7ヶ月が目安です
  3. 追加見積は、不具合か追加要望かを分け、画面・データ・外部連携・権限・再テストに分けて確かめる。 予算内での入れ替えも比べ、何を変えず何を後回しにしたかを記録に残します
  4. AI開発では、外部AIの提供終了・利用料・合格基準の3点を契約前に決める。 どれも一般的な見積書には書かれにくい費用です

次のような状況なら、ご相談ください。

  • 着手後に追加見積が出てきたが、妥当かどうか判断がつかない
  • これから発注するが、変更の手順や予備費をどう決めればよいか分からない
  • AIを組み込むシステムの見積に、外部AIの提供終了や利用料の扱いが書かれていない

当社の受託開発は、既存システムの改修 100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積(すべて税別)です。クラウドや外部AIの利用料などの実費は、開発費と分けて提示します。初回相談は無料・30分(オンライン)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。追加したい機能と今のシステムの構成を伺い、相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

▶ 追加見積と変更範囲の進め方を相談する

関連記事:AI受託開発の費用相場/AI開発の契約形態/AI開発の見積もりの比較方法/業務システム開発の費用相場/AI開発会社の選び方

参考資料

依頼範囲と費用の目安を30分で整理します

この記事の著者

AI革命

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編集部

AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。

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