AIツール2026年9月更新

Ineffable Intelligenceとは?David Silver創業・$1.1Bシード・$5.1B評価額から共同創業者6名・NVIDIA/Google提携まで解説【2026年9月最新】

公開日: 2026/04/27
更新日: 2026/09/14
Ineffable Intelligenceとは?David Silver創業・$1.1Bシード・$5.1B評価額から共同創業者6名・NVIDIA/Google提携まで解説【2026年9月最新】

この記事のポイント

Ineffable Intelligenceは、AlphaGoを率いた元DeepMindのDavid Silverがロンドンで設立した強化学習の研究ラボです。$1.1Bシード・$5.1B評価額の中身、NVIDIA/Google Cloudとの計算基盤提携、2026年9月に加わった共同創業者6名、SSI・Thinking Machines Labとの違いまで、公式情報と報道を分けて整理します。

Ineffable Intelligence(イネファブル・インテリジェンス)は、AlphaGoやAlphaZeroを率いた元Google DeepMindのDavid Silver氏がロンドンで設立した、強化学習(RL)で「人間のデータに頼らず自ら新しい知識を発見するAI」をつくる研究ラボです。 2026年4月27日に11億ドル($1.1B)のシードラウンドを評価額51億ドル($5.1B)で発表し、同社の説明では欧州史上最大のシードとされています。ただし2026年9月時点で、一般の人が使える製品・モデル・APIは公開されていません。

2026年4月の発表以降も動きが続いています。5月にはNVIDIAと強化学習向けインフラの共同設計、6月にはGoogle Cloudを優先クラウドに選定、9月には元DeepMind研究者らが共同創業者として加わったと報じられました。

この記事でわかること

  • Ineffable Intelligenceの基本情報と、2025年11月の法人設立から2026年9月までの時系列
  • $1.1Bシード・$5.1B評価額の投資家構成(公式発表と報道ベースを区別)
  • 「superlearner」と「Era of Experience(経験の時代)」という技術方針の中身と、ChatGPT・ClaudeなどのLLMとの違い
  • NVIDIA・Google Cloudとの計算基盤提携、新たに加わった共同創業者6名の顔ぶれ
  • Safe Superintelligence(SSI)・Thinking Machines Labとの比較、強み・弱み・リスク

こんな人向けの記事です

  • AI業界の大型調達や新興AIラボの動向を正確に把握したい経営企画・投資担当者
  • 強化学習やDeepMind出身者の動向に関心がある研究者・エンジニア
  • 「Ineffable Intelligenceは使えるのか」「ChatGPTと何が違うのか」を手早く知りたい人

Ineffable Intelligenceとは:David Silverが率いる強化学習ラボ

Ineffable Intelligence公式サイトのビジュアル(Making first contact with superintelligence)

出典:Ineffable Intelligence公式サイト

Ineffable Intelligenceは、英国ロンドンを拠点とするAI研究ラボで、強化学習によって「superlearner(スーパーラーナー)」をつくることを目指しています。 superlearnerとは、人間が書いたテキストなどのデータではなく、環境とのやり取りを通じた自らの経験から知識を獲得し、人間がまだ知らない発見まで到達するAIを指す同社の言葉です。

公式サイト(ineffable.ai)では、ミッションとして「make first contact with superintelligence(超知能との最初の接触を果たす)」を掲げています。社名の「Ineffable」は「言葉では言い表せない」という意味の英単語です。

基本情報(2026年9月時点)

項目

内容

正式名称

INEFFABLE INTELLIGENCE LTD(英国法人、Company No. 16865241)

創業者・CEO

David Silver(UCL教授、元Google DeepMind 強化学習研究リード)

本拠地

英国ロンドン

法人設立

2025年11月(英国Companies House登記)

ステルス解除

2026年4月27日

調達

シードで$1.1B(11億ドル)

評価額

$5.1B(51億ドル、ポストマネー)

研究テーマ

人間データや事前学習に依存しない強化学習によるsuperlearner

計算基盤

NVIDIA(インフラ共同設計)、Google Cloud(優先クラウドパートナー)

製品・API

なし(研究段階。同社名義の論文・モデルの公開も確認できていない)

採用

公式求人ページ(Ashby)でロンドン勤務の技術職などを募集

公式サイト

https://www.ineffable.ai/

英国の法人登記(Companies House)では、2026年9月時点の取締役としてDavid Silver氏(2026年1月16日就任)、Sequoia CapitalのAlfred Lin氏、Lightspeed Venture PartnersのRavi Mhatre氏(いずれも2026年4月17日就任)が確認できます。設立時の取締役だったGeorge Samuel Rose氏は、登記上2026年6月30日に退任しています。

設立から現在までの時系列

日付

出来事

2025年4月

David Silver氏とRichard Sutton氏が論文「Welcome to the Era of Experience」を公開

2025年11月

英国で法人設立

2026年1月16日

David Silver氏が取締役に就任(登記上)

2026年2月頃

「約40億ドル評価で約10億ドルを調達交渉中」と海外メディアが報道

2026年4月17日

Sequoia・Lightspeedのパートナーが取締役に就任

2026年4月27日

ステルス解除。$1.1Bシード・$5.1B評価額を発表。英国政府系ファンドも出資

2026年5月13日

NVIDIAと大規模強化学習向けインフラの共同設計を発表

2026年6月16日

Google Cloudを優先クラウドパートナーに選定

2026年6月30日

設立時取締役のGeorge Samuel Rose氏が退任(登記上)

2026年9月7日

元DeepMind研究者ら6名が共同創業者に加わったとFortuneが報道

※Google Cloudとの提携はFortuneが「7月」と報じていますが、ここではプレスリリースの日付(6月16日)を採用しています。Rose氏の退任も、報道の「7月」ではなく登記上の日付を記載しています。

Ineffable Intelligenceが目指すもの:superlearnerと「経験の時代」

Sequoia CapitalによるIneffable Intelligence出資発表記事のビジュアル

出典:Sequoia Capital「Partnering with Ineffable Intelligence」

同社の出発点にあるのは、「人間のデータで学ぶLLMは既存の知識の組み合わせは得意だが、本当に新しい知識を発見するには、AIが自分の経験から学ぶ強化学習が必要」という考え方です。 Ineffable Intelligenceは、この考えに研究のすべてを賭けています。

土台になった論文「Welcome to the Era of Experience」

技術的な出発点は、David Silver氏と、強化学習の第一人者でSilver氏の博士課程の指導教員でもあるRichard Sutton氏(2024年度チューリング賞受賞)が2025年4月に公開した論文「Welcome to the Era of Experience」です。

論文の主張は、AIの発展を「人間データの時代」から「経験の時代」へ移すべきだというものです。現在のLLMはインターネット上の文章など、人間が生み出したデータで学習しています。この方法は人間の知識を再現・合成するには強力ですが、人間がまだ持っていない知識の発見には限界がある、と論文は指摘します。そのうえで、経験の時代のAIに求められる特徴として次の方向性を示しています。

論文が示す方向性

内容

経験のストリーム

短い対話単位ではなく、長期間にわたる連続した経験から学び続ける

行動と観察

人間との対話に限らず、デジタル・物理環境の中で行動し、その結果を観察する

環境に根ざした報酬

人間の事前評価ではなく、環境から得られる結果のシグナルで学ぶ

計画と推論

人間の言葉や思考のやり方に縛られない推論の仕方を身につける

投資家・政府はどう説明しているか

出資者や英国政府の公式発表からも、同社の方針が読み取れます。

  • Sequoia Capital(公式ブログ): 事前学習も人間データも使わない純粋な強化学習でsuperlearnerをつくる構想だと説明しています。将来的には第一原理から物理法則を導いたり、新しい数学を生み出したりすることまで見据えているとしています
  • Index Ventures(公式ブログ): 言語・科学・数学・技術といった人類の大発明を「再発見し、超える」ことを目指す会社と紹介しています
  • 英国政府(GOV.UK): 既存データのパターンをなぞるのではなく、環境とやり取りしながら仮説を試し改善していく自己学習アルゴリズムとし、科学・医療・工学での応用を想定しています

TechCrunchの報道では、同社は成功すればダーウィンに匹敵する科学的ブレークスルーになりうると語っています。

「Move 37」が象徴する強化学習の可能性

この方針の説得力を支える具体例として、よく挙げられるのがAlphaGoの「Move 37」です。2016年、AlphaGoはイ・セドル九段との第2局で、人間のプロなら打たないと考えられていた37手目を打ち、その後の勝利につなげました。人間の棋譜の常識から外れた手を強化学習のAIが見つけたこの一局は、「AIが人間の知識を超える発見をしうる」ことを示す例として語られています。

さらにAlphaZeroは、人間の棋譜を使わず自己対戦だけで囲碁・チェス・将棋を超人的なレベルまで習得しました。Ineffable Intelligenceは、こうしたゲームで実証された手法を、科学や数学のような正解が決まっていない領域の知識発見へ広げようとしています。

ChatGPT・ClaudeなどのLLMとの違い

比較ポイント

ChatGPT・Claude・GeminiなどのLLM

Ineffable Intelligenceの方針

主な学習材料

人間が作ったテキスト・画像などの大規模データ(事前学習)+人間のフィードバック

環境とのやり取りから得られる経験(人間データ・事前学習に依存しない)

得意なこと

既存知識の要約・合成・対話・文章やコードの生成

人間がまだ知らない戦略・知識の発見(目標)

代表的な成功例

汎用チャットAI、コーディング支援

AlphaGo、AlphaZero、AlphaStarなど(Silver氏の過去の研究)

現在の提供状況

一般向けサービス・APIとして提供中

研究段階。製品・APIなし

主な課題

人間の知識の範囲を超えにくい

現実世界で使える報酬の設計、シミュレーションから現実への転移

LLMベースのAIサービスの全体像や、ツールを使って自律的に作業する仕組みについては、AIエージェントとはや、Google DeepMindが開発するLLMのGeminiとはで詳しく解説しています。LLM以外の路線に賭けるラボという点では、世界モデルに取り組むWorld Labsの解説記事も比べて読むと理解が深まります。

創業者David Silverとは:AlphaGoを率いた強化学習の第一人者

David Silver氏は、AlphaGo・AlphaGo Zero・AlphaZero・AlphaStar・AlphaProofなど、Google DeepMindを代表する強化学習プロジェクトを率いてきた研究者です。 Sequoia Capitalも出資理由の中でこれらの実績を挙げており、$5.1Bという評価額の大きな根拠はSilver氏個人の実績にあると見られています。

経歴

時期

経歴

1997年

ケンブリッジ大学(Christ's College)卒業

1990年代後半〜

Demis Hassabis氏らとゲーム会社Elixir Studiosを共同創業(CTO・リードプログラマー)

2004〜2009年

アルバータ大学で博士課程。Richard Sutton氏のもとで強化学習を研究

2010〜2013年

DeepMindにコンサルタントとして参画

2011年

英国王立協会(Royal Society)の研究フェローシップを取得。その後UCLで教員となり、現在はUCL教授

2013〜2026年

DeepMindで強化学習研究をリード

2026年

Ineffable Intelligenceの取締役に就任し、同社を率いる

主な研究実績

プロジェクト

概要

DQN

Atariゲームを画面入力から学習する深層強化学習。Silver氏も貢献

AlphaGo(2016年)

囲碁でトップ棋士のイ・セドル九段に勝利。自己対戦による強化が突破口に

AlphaGo Zero / AlphaZero(2017年〜)

人間の棋譜を使わず、自己対戦のみで囲碁・チェス・将棋を習得

MuZero

ルールを教えられなくても環境のモデルを学習してプレイ

AlphaStar(2019年)

リアルタイム戦略ゲーム「StarCraft II」でグランドマスター級に到達

AlphaProof(2024年)

国際数学オリンピックの問題で銀メダル相当の成績(AlphaGeometry 2と組み合わせた結果)

主な受賞・称号には、2019年のACM Prize in Computing、2021年の英国王立協会フェロー(FRS)、2022年のAAAIフェロー、Marvin Minsky Awardがあります。Index Venturesによると、論文の被引用数は約30万件にのぼります。

なお、タンパク質構造予測のAlphaFoldはDeepMindの代表的な成果ですが、Silver氏が率いたプロジェクトではありません。

利益の100%を寄付する公約

Silver氏は、寄付を約束する起業家の団体Founders Pledgeを通じて、Ineffable Intelligenceの株式から得る個人的な利益の100%を寄付すると公約しています。Founders Pledge史上最大の誓約とされています。最終的な金額は将来の株式価値しだいで、現時点では決まっていません。TechCrunchの取材に対してSilver氏は、寄付先は高いインパクトを持つ慈善団体になると話しています。

DeepMindからは近年、Silver氏以外にも研究者の独立や移籍が続いています。その流れはDeepMindの人材流出を整理した記事や、Google DeepMindの体制変更の記事で詳しく解説しています。

$1.1Bシード・$5.1B評価額のラウンド詳細

英国政府Sovereign AIによるIneffable Intelligenceへの出資発表ビジュアル

出典:GOV.UK「UK backs company building breakthrough AI that can discover new knowledge」

2026年4月27日、Ineffable Intelligenceはステルス状態を解除し、$1.1B(11億ドル)のシードラウンドを評価額$5.1B(51億ドル)で調達したと発表しました。 製品も売上もない段階でのシードとしては極めて大きな規模です。

ラウンドの数値(公式発表と報道ベースを区別)

項目

内容

情報の確度

ラウンド

シード

公式発表

調達額

$1.1B(11億ドル)

公式発表(GOV.UK・Sequoia・Index Venturesなど)

評価額

$5.1B(51億ドル、ポストマネー)

主要報道で一致

「欧州史上最大のシード」

同社の説明に基づく表現

同社主張(第三者機関による集計ではない)

リード投資家

Sequoia Capital(Alfred Lin氏、Sonya Huang氏)、Lightspeed Venture Partners(Ravi Mhatre氏ら)

公式発表・登記

NVIDIAの出資額

少なくとも$250Mと報道

報道ベース(NVIDIA公式ブログには金額の記載なし)

英国政府系(British Business Bank)の出資額

$20Mと一部報道

報道ベース(GOV.UKは商業上の理由で非開示)

2026年2月頃の事前報道

約$4B評価で約$1Bを調達交渉中

報道ベース(最終的な評価額は$5.1B)

主な投資家

区分

投資家

注目点

リード

Sequoia Capital、Lightspeed Venture Partners

両社のパートナーが取締役に就任

戦略投資家

NVIDIA(NVentures)、Google

後に計算基盤の提携へ発展

VC・グロース投資家

DST Global、Index Ventures(Danny Rimer氏)、EQT、BOND

大型AI案件に強い投資家が参加

初期投資家

Flying Fish

Fortuneによると最初に出資を決めた投資家。同社パートナーは後に共同創業者に

英国政府系

Sovereign AI Fund、British Business Bank

英国の「ソブリンAI」戦略の一環

英国政府が出資した理由

英国政府はGOV.UKで同日にプレスリリースを出し、Sovereign AI FundがBritish Business Bankと共同で出資したと発表しました。Sovereign AI Unitは5億ポンド規模の枠組みで、通常の出資額は100万〜1,000万ポンド程度、発表時点の支援先は8社とされています。発表にはLiz Kendall科学技術大臣やKanishka Narayan AI担当大臣のコメントが掲載され、国内に世界トップ級のAI研究拠点を育てる狙いが示されました。

製品がないのに$5.1Bの評価額が付いた背景

評価額の根拠は公表されていません。公式発表や報道から読み取れる要因は次のとおりで、いずれも同社や投資家が明言した理由ではなく、周辺情報からの見立てです。

  1. 創業者の実績: AlphaGoなど、強化学習で「人間を超える」成果を実際に出してきた研究者であること
  2. LLMとは別の路線への期待: 「LLMのスケールだけでは超えられない壁がある」と考える投資家にとって、有力なもう一つの選択肢になっていること
  3. 計算資源を必要とする事業の性質: 強化学習でフロンティア級の研究をするには大量のGPUが必要で、シードの段階から巨額の資金が必要なこと
  4. 戦略投資家の思惑: NVIDIAは計算資源の需要、Googleはクラウド事業、英国政府は国内AI産業の育成という、それぞれの狙いが重なったと考えられること

NVIDIA・Google Cloudとの計算基盤提携

Ineffable IntelligenceとNVIDIAのロゴが並んだ提携発表ビジュアル

出典:NVIDIA公式ブログ

資金調達の後、Ineffable IntelligenceはNVIDIAとGoogle Cloudの2社と、計算基盤に関する提携を相次いで発表しました。 製品を出す前の研究段階から、最先端のGPUとクラウド環境を確保した形です。

NVIDIA:強化学習向けインフラを共同設計(2026年5月13日)

NVIDIAは公式ブログで、Ineffable Intelligenceと大規模強化学習のためのインフラをエンジニアリングのレベルで共同設計すると発表しました。

  • Grace Blackwell世代から始め、次世代のVera Rubinも検討する
  • 強化学習は事前学習と違い、学習しながらその場でデータを生成するため、GPU間の接続、メモリ帯域、推論処理の最適化が課題になる
  • 新しいモデルの構造や学習アルゴリズムも共同で探る

発表の中で、NVIDIAのJensen Huang CEOは「AIの次のフロンティアはsuperlearner、つまり経験から継続的に学ぶシステムだ」とコメントしました。Silver氏は、研究者はAIの「簡単な問題」である人間が知っていることをすべて知るシステムの構築をほぼ解いたとし、次に必要なのは新しい知識を発見するシステムという「難しい問題」への取り組みだと述べています。

NVIDIAはSafe Superintelligence(SSI)とも提携しており、その内容はSSIとNVIDIAの提携を解説した記事で紹介しています。

Google Cloud:優先クラウドパートナーに選定(2026年6月16日)

PR Newswireで配信されたプレスリリースによると、Ineffable IntelligenceはGoogle Cloudを優先クラウドパートナーに選びました。

  • NVIDIA Vera Rubin NVL72を搭載したA5Xインスタンスの最大級クラスタを利用
  • Googleのデータセンターネットワーク「Jupiter」、最適化されたストレージ、AI Hypercomputerを組み合わせて提供

Silver氏は、フロンティアモデルの学習には単純な計算量だけでなく、ハードウェアとソフトウェアを高度に組み合わせて運用することが必要だとコメントしています。Google CloudのThomas Kurian CEOのコメントも掲載されました。

GPUの台数や、将来どこまで計算資源を増やすかといった具体的な計画は、公式には発表されていません。

共同創業者6名の追加とチーム体制(2026年9月)

2026年9月7日、Fortuneは、Ineffable Intelligenceに6名が共同創業者として加わったと独占で報じました。 うち4名がGoogle DeepMind出身で、AlphaStarなどでSilver氏と一緒に研究してきた人物です。

氏名

前職・主な実績

Ineffable Intelligenceでの担当(報道ベース)

Junhyuk Oh

Google DeepMind。AlphaStarの強化学習リード、AIが強化学習アルゴリズムを発見する研究(Nature論文共著)

強化学習部門の統括

Wojciech Czarnecki

Google DeepMind。マルチエージェント研究、AlphaStar、Quake III CTF

サイエンスチームの統括

Lasse Espeholt

Google DeepMind。気象予測モデルMetNet

計算資源・インフラ・エンジニアリング戦略

Chris Apps

Google DeepMind。技術プログラム・研究デリバリーのリード(AlphaStarなど)

ミッションの推進(mission acceleration)

Alexandre Laterre

InstaDeep(2023年にBioNTechが買収)の研究責任者

リサーチエンジニアリングの統括

Heather Gorham

VCのFlying Fishパートナー。2024年初めにSilver氏へ接触

計算資源・資金調達・オペレーション。Google Cloudとの契約を主導

報道では、設立から約10か月、製品もない段階で後から「共同創業者」の肩書きを付けた点が珍しいと指摘されています。また、The Next Webは、設立時の取締役として登記されていた人物をGeordie Rose氏とし、共同創業者ではなく設立時のアドバイザー的な立場だったと伝えています。

従業員数は公表されていません。

Ineffable Intelligenceの強み

強みは「実績のある研究チーム」「研究段階で確保した資金と計算資源」「はっきりした研究方針」「ロンドンという拠点」の4点です。

1. 強化学習で実績を出してきた人材が集まっている

Silver氏に加え、AlphaStarの中心メンバーだったJunhyuk Oh氏やWojciech Czarnecki氏らが共同創業者として加わりました。強化学習の研究を大規模に進めた経験を持つ人材は世界でも限られており、立ち上げ期からチームの厚みを確保できています。

2. 資金と計算資源を研究段階で確保できている

$1.1Bのシード資金に加え、NVIDIAとの共同設計、Google CloudのVera Rubin NVL72クラスタを確保しました。強化学習はデータを生成しながら学ぶため計算量が大きくなりやすく、最初から大規模なGPU環境を持てることは研究のスピードに直結します。

3. 研究方針がはっきりしている

「人間データに依存しない純粋な強化学習」という方針は論文として公開されており、研究コミュニティで議論されています。LLM中心の大手ラボとは違う方向性がはっきりしているため、この路線に共感する研究者を集めやすいと考えられます。

4. ロンドンに拠点を置いている

DeepMindが長年研究者を育ててきたロンドンは、強化学習の人材が集まる都市です。英国政府がソブリンAI戦略の一環として出資している点も、国内での事業環境にとってプラスに働きます。

このツールを自社のシステムや業務にどう組み込むか、ご提案します

初回相談は無料・30分(オンライン)。要件が決まっていなくても大丈夫です。改修100万円〜・PoC300万円〜(税別)

Ineffable Intelligenceの弱み・リスク

最大のリスクは、$5.1Bの評価額に対して、製品・売上・公開された研究成果がまだないことです。 技術面でも、ゲームで成功した強化学習を現実世界の問題に広げられるかは、まだわかっていません。

1. 製品・売上・ロードマップがない

2026年9月時点で、製品・モデル・APIは公開されていません。論文やモデルの公開も確認できず、初めての成果をいつ出すかも公式には発表されていません。成果が出ないまま時間がたてば、次の資金調達や人材の維持が難しくなるおそれがあります。

2. 現実世界では「報酬」を決めにくい

囲碁やチェス、StarCraftにはルールと勝ち負けがあり、AIが目指す報酬をはっきり計算できます。一方、科学的な発見や社会の問題では、何を「正解」とするかを一つのシグナルで表しにくくなります。シミュレーションで学んだ戦略が、ルールの決まっていない現実世界でも通用するかという問題も解決されていません。

3. LLM路線との競争

OpenAI・Anthropic・Googleなどは、LLMに強化学習を組み合わせる方向で性能を伸ばしています。LLMベースのAIが科学や数学でも成果を上げ続ければ、「人間データに頼らない」というIneffable Intelligenceの方針の優位性が問われる可能性があります。

4. 超知能開発をめぐる安全性の議論

同社は「超知能は有益かつ安全に構築できる」という立場ですが、独自の安全性ポリシーは確認できていません。超知能を目標に掲げるAI開発には、社会的な懸念や規制強化の議論がつきまといます。フロンティア級の強化学習をめぐる安全性の議論はOpenAIがフロンティアRLの一部を停止した件を解説した記事で、開発競争への批判はAnthropic研究者の辞任を扱った記事で取り上げています。企業がAIを使う際のリスク全般については生成AIのセキュリティリスクの解説も参考になります。

料金・使い方:一般ユーザーは利用できる?

2026年9月時点で、Ineffable Intelligenceの製品を個人や企業が利用する方法はありません。 無料プラン・有料プラン・APIのいずれも公開されておらず、料金も存在しません。

利用方法

2026年9月時点の状況

チャットサービス・アプリ

提供なし

API

提供なし

公開モデル・オープンウェイト

公開なし

研究論文

同社名義での公開は確認できず(創業者の過去の論文は公開済み)

法人向け提携・導入

公式な窓口や導入プログラムの発表なし

採用応募

公式求人ページ(Ashby)で募集中。ロンドン勤務前提の技術職など

実務で使えるAIを探しているなら、現時点ではChatGPT・Claude・GeminiなどのLLMサービスや、それらを使ったAIエージェントを検討するのが現実的です。Ineffable Intelligenceは「今すぐ使うツール」ではなく、「今後の技術の流れを見るために注目する会社」として捉えるのがよいでしょう。

動向を追うなら、公式サイトに加えて、Sequoia CapitalやNVIDIAの公式ブログ、英国Companies Houseの登記情報(取締役の変更など)を確認するのが確実です。

Safe Superintelligence・Thinking Machines Labとの違い

「大手AIラボ出身の研究者が独立し、巨額の資金を集めた」という点で、Ineffable IntelligenceはSafe Superintelligence(SSI)やThinking Machines Lab(TML)と並べて語られます。 そのなかで、LLMに頼らない純粋な強化学習の路線を公に掲げているのはIneffable Intelligenceの大きな特徴です。

比較ポイント

Ineffable Intelligence

Safe Superintelligence(SSI)

Thinking Machines Lab(TML)

創業者

David Silver(元Google DeepMind)

Ilya Sutskever(元OpenAI)

Mira Murati(元OpenAI CTO)

拠点

ロンドン

パロアルト/テルアビブ

サンフランシスコ

評価額

$5.1B(2026年4月)

$32Bと報道(2025年の資金調達時)。その後の追加出資の金額は報道によって異なる

2025年7月に$2Bシード(評価額約$12B)。2026年9月に「$40B以上で$1B以上の調達を交渉中」と報道

製品

なし

なし

あり(Tinkerなど)

技術の方向性

人間データに依存しない純粋な強化学習

「安全な超知能」(詳細は非公開)

LLMのカスタマイズと実用化

NVIDIAとの関係

出資+インフラ共同設計

提携

出資交渉が報じられている

※SSIとTMLの数値は報道ベースで、交渉中の案件も含みます。

選び分けのポイント(注目の仕方の違い)

  • LLMの次に来る技術の方向性を知りたい → Ineffable Intelligence(強化学習による知識発見)
  • 超知能の安全性を重視する研究の動きを追いたい → SSI
  • 今すぐ使えるモデルやファインチューニング基盤を探したい → Thinking Machines Lab(製品あり)

TMLの製品や資金調達の詳細はThinking Machines Labとはで、同じく超知能を掲げる新興企業はRecursive Superintelligenceの解説記事でまとめています。

日本の企業・エンジニアはどう向き合うべきか

製品がない現時点で、日本企業がIneffable Intelligenceと直接取引する場面はほとんどありません。 それでも、立場ごとに次のような向き合い方が考えられます。

立場

今できること

注意点

経営企画・DX推進

「LLMだけに頼らないAI」の動きとして情報を追い、自社のAI戦略がLLM一本に偏っていないか見直すきっかけにする

製品化の時期は未定。導入計画に組み込む段階ではない

研究者・エンジニア

「Era of Experience」論文や、AlphaZero・MuZeroなどの強化学習の研究を学び直す。求人情報を確認する

求人はロンドン勤務前提。条件はポジションごとに確認が必要

投資家・アナリスト

SequoiaやNVIDIAなど出資者の公式発表、登記情報で経営体制の変化を追う

評価額や出資額には報道ベースの数値が混ざっている

製造・物流・創薬などシミュレーションを使う企業

自社の業務で「報酬をはっきり定義できる最適化問題」がないかを整理し、特定分野に絞った強化学習の活用を検討する

Ineffable Intelligenceの技術そのものを使えるわけではない

こんな人におすすめ/おすすめしない人

注目する価値が大きい人

  • AI業界の大型調達や競争環境を追う必要がある経営企画・投資担当者:評価額・投資家構成・計算基盤の提携は、業界全体の資金の流れを知る材料になります
  • 強化学習・マルチエージェント・自律エージェントを研究する人:AlphaStarの中心メンバーが集まったラボの方向性は、研究テーマを選ぶ参考になります
  • DeepMind出身者の動きやロンドンのAI人材市場に関心がある採用担当者
  • 超知能やAIの安全性をめぐる議論を追っている人
  • 英国・欧州のAI産業政策(ソブリンAI)をウォッチしている人

現時点ではおすすめしない人(概要の把握で十分)

  • すぐに業務で使えるAIツールを探している人:製品・APIがなく、提供時期も公表されていません
  • ChatGPT・Claude・GeminiのAPIの代わりを探している開発者:LLMの代わりになるサービスではありません
  • 個人向けのチャットAIを比較している人:一般向けの提供は発表されていません
  • 短期で結果が出る投資先を探している人:研究成果が出るまでに時間がかかる可能性が高く、評価額もすでに大きくなっています

よくある質問(FAQ)

Q1. Ineffable Intelligenceの読み方と社名の意味は?

「イネファブル・インテリジェンス」と読みます。「Ineffable」は「言葉で表現できない」という意味の英語です。人間の言葉で書かれたデータにとどまらず、経験から知識を得るAIを目指す姿勢と結びつけて語られています。

Q2. ChatGPTのように日本語で使える日は来る?

公式な発表はありません。同社は汎用チャットサービスではなく、強化学習による知識発見を研究目標にしており、将来の成果が一般向けのチャットAIの形で提供されるかどうかもわかっていません。

Q3. Google DeepMindとの関係は?

Silver氏と共同創業者のうち4名はGoogle DeepMind出身ですが、Ineffable Intelligenceは独立した会社です。一方で、Googleはシードラウンドに出資しており、Google Cloudは優先クラウドパートナーでもあるため、資本と計算基盤の面ではGoogleグループと関係があります。

Q4. 株式は上場している?個人が投資する方法は?

Ineffable Intelligenceは非上場のスタートアップで、2026年9月時点で株式公開(IPO)の予定も発表されていません。個人が同社の株式を直接購入する一般的な方法はありません。出資しているNVIDIAやGoogle(Alphabet)は上場企業ですが、両社の事業規模に比べるとこの出資の影響はごく一部です。

Q5. 日本に住んでいても採用に応募できる?

公式求人ページ(Ashby)から応募自体は可能ですが、掲載されている職種はロンドンのオフィス勤務を前提としたものが中心です。リモート勤務の可否やビザのサポートはポジションごとに異なるため、応募前に各求人の条件を確認してください。

Q6. 「欧州史上最大のシード」は第三者が認めた記録?

同社の説明に基づく表現で、第三者機関が集計した公式記録ではありません。報道各社も「同社によると」という形で伝えています。

Q7. 研究成果(論文やモデル)はいつ出る?

2026年9月時点で、公開時期は発表されていません。初めての論文やモデルを出す時期は、今後この会社を評価するうえで最も注目されるポイントの一つです。

まとめ

Ineffable Intelligenceは、AlphaGoを率いたDavid Silver氏が「人間データに頼らない強化学習で新しい知識を発見するAI」をつくるためにロンドンで設立した研究ラボです。

  • 2026年4月に$1.1Bのシードを$5.1Bの評価額で調達。Sequoia・Lightspeedがリードし、NVIDIA・Google・英国政府系ファンドも出資
  • 5月にNVIDIAとインフラを共同設計、6月にGoogle Cloudを優先クラウドに選定し、Vera Rubin世代の大規模な計算基盤を確保
  • 9月にはAlphaStarの中心メンバーを含む6名が共同創業者に加わり、研究体制を強化
  • 一方で、製品・API・研究成果はまだ公開されておらず、一般ユーザーは利用できない
  • 現実世界での報酬の設計や、LLM路線との競争など、技術面・事業面の不確実性は大きい

今すぐ使うAIツールではありませんが、「LLMの次」を考えるうえで動向を押さえておきたい会社です。NVIDIAの出資額や英国政府系の出資額など、報道ベースの数値も混ざっているため、最新情報は公式サイトやNVIDIA公式ブログ、GOV.UKのプレスリリース、Sequoia Capitalの公式ブログなどの一次情報で確認してください。

このツールを自社のシステムや業務にどう組み込むか、ご提案します

この記事の著者

AI革命

AI革命

編集部

AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。

AI・システム開発は、開始価格を公開しています

既存システムの改修 100万円〜・PoC 300万円〜(税別)。相談内容を送っていただくと、2営業日以内に担当者からご返信します