AIツール2026年9月更新

米国防総省がChatGPT MilとGrok for Governmentを導入|GenAI.milの3モデル比較・IL5・170万人利用を解説【2026年8月最新】

公開日: 2026/09/01
米国防総省がChatGPT MilとGrok for Governmentを導入|GenAI.milの3モデル比較・IL5・170万人利用を解説【2026年8月最新】

この記事のポイント

米国防総省(現・戦争省)が2026年8月31日、生成AI基盤GenAI.milにChatGPT MilとGrok for Governmentを追加。Geminiと合わせた3モデルの違い、IL5・CUIで扱える情報の範囲、170万人という利用規模、Anthropic Claude不在の理由を公式発表ベースで整理します。

米国防総省(2025年に Department of War/戦争省へ改称。以下DoW)は2026年8月31日、省内向け生成AI基盤「GenAI.mil」にOpenAIの「ChatGPT Mil」とStarshield AIの「Grok for Government」を同時投入し、既存のGemini for Governmentと合わせた3モデル体制に移行しました。ただしGenAI.milが扱えるのは非機密(CUI)までであり、「米軍が戦闘や標的選定にChatGPTを使い始めた」という話ではありません。

論点は、3モデルの機能差、IL5・CUIという線引きの意味、利用規模の正確な読み方、Anthropic不在の経緯、そして300万人規模の展開で実際に起きている課題の5つに絞られます。

  • ChatGPT Mil / Grok for Government / Gemini for Government の3モデル比較(提供元・現行モデル名・主な機能・想定用途・認定レベル)
  • IL5・CUI」が何を意味し、何が扱えて何が扱えないのか
  • 8万人→170万人へ伸びた利用規模の正確な時系列
  • Anthropic Claudeだけが不在の理由と、2026年8月の連邦地裁判決
  • 300万人規模の全社展開で実際に起きている課題と、日本の企業・行政への示唆

海外の政府AI調達動向を追っている方、自社で全社規模の生成AI基盤を検討している情報システム・DX部門の方、AIの軍事利用をめぐる論点を正確に把握したい方に向けた内容です。

米国防総省の生成AI基盤GenAI.milをイメージした画像

3行でわかる今回の発表

項目

内容

何が起きたか

2026年8月31日、GenAI.milにChatGPT MilとGrok for Governmentが同時ローンチ。Geminiと合わせ3モデル体制へ

どこまで使えるか

IL5=非機密のCUI(管理された非機密情報)まで。機密(Classified)情報の入力は不可

規模

累計ユニークユーザー170万人超(対象母数はDoW職員300万人超、2026年8月31日発表時点)

GenAI.milはDoW職員限定の閉じた環境です。一般ユーザーや日本の企業・個人が契約して使えるサービスではなく、公開料金プランも存在しません。あくまで「政府が自前でエンタープライズAI基盤を組んだ事例」として読むのが正確です。

GenAI.milとは何か

GenAI.milは、DoWの全職員が民間フロンティアAIモデルを安全な省内環境で使えるようにするエンタープライズ生成AIプラットフォームです。運営はCDAO(最高デジタル・AI責任者室)とOUSD(R&E)(研究・工学担当次官室)が担っています。

設計思想の中心は「データを一般消費者向けチャネルに流さない」という点にあります。職員が個人アカウントのChatGPTやGeminiに業務内容を貼り付ける、いわゆるシャドーAIを潰すために、公式の受け皿を用意したという構図です。

項目

内容

運営主体

CDAO + OUSD(R&E)

対象者

軍人・文民合わせて300万人超のDoW職員

取扱区分

非機密(Unclassified)/CUI まで

搭載モデル

ChatGPT Mil、Grok for Government、Gemini for Government(2026年9月時点)

公開時期

2025年12月9日にGemini for Governmentを第1弾として発表

DoW側は複数のフロンティアモデルを並列で提供する理由として「ベンダーロックインを避けるため」と説明しています。1社の障害・値上げ・方針変更が省全体の業務を止めない構成を狙ったものです。生成AIそのものの基礎については生成AIとは?仕組み・できること・主要ツール・活用事例・リスクも参考になります。

3モデルの違いを1枚で比較

現時点(2026年9月2日)のGenAI.mil搭載3モデルは、提供元も設計思想も異なります。

比較項目

ChatGPT Mil

Grok for Government

Gemini for Government

提供元

OpenAI

Starshield AI(SpaceXAI=旧xAI/SpaceX傘下の政府・防衛向け事業体)

Google Cloud(Google Public Sector)

搭載開始

2026年8月31日

2026年8月31日

2025年12月9日(第1弾)

現行モデル

GPT-5.4 Terra(GPT-5.6 Terraを近日提供と公表)

具体的バージョン番号は未公表

Gemini 3.1 Pro を含む(2026年4月追加)

主な機能

チャット、ファイル、プロジェクト、カスタムGPT、引用付きOffline Search

ディープシンキング推論、Auto / Fast / Expert の推論モード切替、永続プロジェクト、再利用可能な「プレイブック」

Agent Designer(自然言語でAIエージェント構築)、エージェント型ワークフロー

想定用途

計画立案・政策・兵站・行政事務、調達文書の作成とレビュー、政策文書の要約、コンプライアンスチェックリスト生成

調達担当者の市場調査分析、兵站担当者のサプライチェーン管理、組織知の標準化

人事オンボーディング、行政事務の自動化、契約業務ワークフロー

セキュリティ認定

IL5/CUI対応

IL5/CUI対応

IL5/CUI対応

データの学習利用

政府環境内に留まり、OpenAIの公開・商用モデルの学習には使われないと明記

同等水準と説明されるが、個別の公式明記は未確認

DoWのデータはGoogleの公開モデル学習に使われないと明記

3モデルとも認定レベルは同じIL5で、差が出るのは機能の思想です。ChatGPT Milは文書量の多い事務作業、Grokは推論の深さと組織知の再利用、Geminiはエージェント構築という住み分けになっています。

ChatGPT Milの位置づけ

OpenAIの公式ブランドビジュアル

出典: OpenAI Developer Community

ChatGPT Milは、一般向けChatGPTの機能構成(チャット、ファイル添付、プロジェクト、カスタムGPT)をほぼそのまま政府環境に移した設計です。加えて、詳細な引用を返す「Offline Search」が政府版固有の機能として挙げられています。現行はGPT-5.4 Terraで、GPT-5.6 Terraへの更新が予告されています。

一般向けの機能・料金体系との違いを押さえたい場合はChatGPTとは?料金プラン・できること・モデル・使い方を読むと差分が理解しやすくなります。なお、OpenAIと米政府の関係についてはOpenAIが米政府に5%株式付与を提案でも別角度から整理しています。

Grok for Governmentの位置づけ

SpaceXの公式ビジュアル。Grok for Governmentの提供元Starshield AIはSpaceX傘下

出典: SpaceX 公式サイト

Grok for Governmentは、xAIが2026年2月にSpaceXへ株式交換で買収され、7月に「SpaceXAI」へ改称した後の体制で提供されています。DoWの発表では、政府・防衛向け事業体名として「Starshield AI」が使われています。

特徴は推論モードの切替(Auto / Fast / Expert)と、業務手順を「プレイブック」として再利用できる機能です。DoWは調達担当者の市場調査、兵站担当者のサプライチェーン管理といった具体的な業務を例に挙げています。一般向けGrokの機能はGrokとは?Agent Mode・Grok Imagineの使い方と料金にまとめています。

Gemini for Governmentの位置づけ

Google Geminiの公式サイトビジュアル

出典: Google Gemini 公式サイト

3モデルのなかで最も歴史が長く、GenAI.mil立ち上げの第1弾として2025年12月9日に発表されました。2026年3月には自然言語でAIエージェントを作れる「Agent Designer」が追加され、4月にはGemini 3.1 Proが搭載されています。

注目すべきは、職員自身が作ったAIエージェントが2026年4月時点で10万件を超えていることです。IL5環境で一般職員がノーコードでエージェントを量産している状態であり、エージェント運用の実地スケール事例として希少です。エージェントの基本概念はAIエージェントとは?仕組み・種類・活用事例・代表ツール、ChatGPTとGeminiの違いはChatGPT vs Gemini 比較で扱っています。

「IL5・CUI」が意味すること — 誤解を潰しておく

CUI(管理された非機密情報)制度を所管する米国国立公文書館(NARA)の公式ロゴ

出典: 米国国立公文書館(NARA)CUI Registry 公式サイト

日本語の報道で最も抜けているのがこの部分です。GenAI.milで扱えるのは非機密情報までであり、機密(Secret以上)は対象外です。

IL5(Impact Level 5) とは、米国防総省のクラウドコンピューティングSRG(セキュリティ要件ガイド)における区分のひとつで、非公開かつ機微な非機密情報(CUI)およびミッションクリティカルな非機密情報を扱える水準を指します。逆に言えば、Secret・Top Secretといった機密情報の入力は想定されていません。

よくある誤解

現時点の事実

米軍が戦闘でChatGPTを使い始めた

戦闘運用(combat)での使用は想定外。常時接続と大量の計算資源を要するため戦場配備に向かないと、OpenAI・DoW双方の担当者が説明

機密情報をAIに入れている

GenAI.milはIL5=CUIまで。機密ネットワークではない

職員の入力データがモデル学習に使われる

OpenAI・Googleは公開/商用モデルの学習に使わないと明記(Starshield AI側の個別明記は未確認)

誰でも使える軍用ChatGPTが公開された

DoW職員限定。一般契約も公開料金プランも存在しない

一方で、線引きが曖昧な領域も残っています。ChatGPT Milが作戦計画・情報分析・標的選定・兵器関連業務を支援できるかは公式に明示されていない、と米メディアNOTUSは指摘しています。また2026年3月のMIT Technology Reviewでは、匿名の国防当局者が生成AIを標的リストの優先順位付けに使う可能性に言及していますが、これは「可能性」の証言であり、GenAI.mil自体が標的選定システムとして稼働しているという事実確認はありません。

OpenAI側は契約・技術の両面で、国内大規模監視、自律兵器、人間の関与のない高リスク判断への利用を制限し、モデルを兵器へ直接インストールせずクラウド経由で提供、安全性システムの管理権はOpenAIが保持すると説明しています。

利用者数はどう伸びたか — 数字の時点を整理する

日本語記事では「150万人」「170万人」が混在していますが、時点が違うだけです。DoWリリースおよびDefenseScoop・TechCrunchの表現は「onboarded / unique users(累計ユニーク登録者)」であり、デイリーアクティブユーザーではありません

時期

出来事

2025年7月14日

CDAOがOpenAI・Google・Anthropic・xAIの4社に各最大2億ドルのPOTA(試作型その他取引契約)を発注

2025年12月9日

GenAI.mil公開。第1弾としてGemini for Governmentを搭載

2025年12月(公開直後)

利用者 約8万人

2026年1月頃

1か月強でユニークユーザー100万人突破。6軍種のうち5軍種が自軍のAI基盤に指定

2026年3月11日

Gemini for GovernmentにAgent Designerを追加

2026年4月

Gemini 3.1 Proを追加。ユーザー作成AIエージェントが10万件超に

2026年6月中旬

Emil Michael CTOがハドソン研究所で「約150万人が利用」と公表

2026年8月31日

ChatGPT MilとGrok for Governmentを同時ローンチ。累計170万人超と発表

効果として公表されている代表例が、Emil Michael CTOが挙げた「議会向け報告書作成で200時間の作業が5時間に短縮」という数字です。ほかに、補給・整備データの突合、輸送要求の起案、FEMA災害対応の調整支援などが用途として示されています。

なぜAnthropic Claudeだけがいないのか

Anthropicの公式ロゴ

出典: Anthropic 公式サイト

2025年7月にCDAOと契約した4社のうち、Anthropicだけが GenAI.mil に載っていません。理由は「Anthropicが軍事利用を全面拒否したから」ではありません。AnthropicはDoDと2億ドル規模の契約を結んでいます。争点になったのは利用範囲の文言でした。

経緯を時系列で整理すると次のようになります。

  1. DoWが求めた「あらゆる合法目的(any lawful purpose)での無制限利用」という文言をAnthropicが拒否。理由は米国民に対する大規模監視と、完全自律型致死兵器への転用懸念
  2. 2026年3月、DoWがAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定
  3. 2026年8月27〜28日、連邦地裁のRita Lin判事が同指定を違法な報復であり修正第1条違反、かつ修正第5条の事前手続を欠くと判断し、指定の取り消しを命令。別訴訟は継続中

この結果、TechCrunchやGizmodoは「主要モデルのうちClaudeだけが欠けている」「ロックイン回避を掲げながら、実質的にOpenAIとSpaceX系の2社集中を招いている」と指摘しています。判決が出た2026年9月2日時点でも、ClaudeのGenAI.mil搭載予定は発表されていません。

除外の全経緯はPentagon AIブラックリストとは?国防総省がAnthropicを除外した理由、判決の詳細と自律兵器の線引きはAnthropicが国防総省に勝訴|「サプライチェーンリスク」指定は違法・違憲との判決で詳しく扱っています。

残っている論点:Grokの安全性とベンダー集中

AIのリスク管理枠組みを策定する米国立標準技術研究所(NIST)のAI関連ページのビジュアル

出典: 米国立標準技術研究所(NIST)Artificial Intelligence 公式ページ

3モデル体制には、公式発表では触れられていない論点が残っています。導入判断の材料として押さえておくべき点です。

1. Grokの安全性をめぐる追及

2026年3月16日、Elizabeth Warren上院議員がHegseth国防長官に書簡を送り、Grokが殺人やテロ攻撃の方法を助言した例、反ユダヤ的コンテンツを生成した例、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)を生成した例を挙げ、NSAやGSAの懸念を無視して機密ネットワークへのアクセスを与えたと追及しました。The Informationは、元xAI社員がCSAM生成に「信頼できる修正手段がない」と内部調査で述べたと報じています。DoWがIL5暫定認定を与える前にどのような安全性リスク評価を行ったかは、公式に説明されていません。xAI内部の安全性をめぐる係争はxAI Grok安全エンジニア解雇訴訟まとめでも整理しています。

2. 「ロックイン回避」と実態のずれ

DoWは複数モデル並列の理由をベンダーロックイン回避と説明していますが、Anthropicが不在のまま3モデルが揃った結果、実質的にはOpenAIとSpaceX系、そしてGoogleの3社構成です。マルチベンダーを掲げる調達が、政治的な理由で選択肢を狭めた場合に何が起きるかを示す事例になっています。

3. 世論の反発というリスク

2026年2月28日にOpenAIとDoWの提携(機密ネットワーク含む)が発表された直後、ChatGPTのデイリーアンインストール率が295%増加し、Claudeアプリが App Store 1位になりました。「QuitGPT」というボイコットサイトも立ち上がっています。OpenAIは3月2日に契約を修正し、国内大規模監視の明確な禁止を追加。情報機関が利用するには別途の契約修正が必要と規定しました。防衛調達がコンシューマー事業のブランドリスクに直結した、珍しい実例です。

300万人規模の展開で実際に起きたこと

GenAI.milは「大規模組織に生成AIを一気に配った場合に何が起きるか」の観察対象になっています。DefenseScoopの継続取材などから、以下の課題が確認されています。

起きた課題

具体的な内容

日本の組織への読み替え

研修がほぼない

「このツールについて一切の訓練が提供されていない」との国防当局者の証言

ツール配布と同時に、部署別のユースケース研修を用意しないと利用率が伸びない/誤用が出る

ログの可視範囲が不透明

「自分の問い合わせがどこへ行き、誰が見られるのか分からない」という不安

監査ログの保持期間と閲覧権限を先に周知しないと、機微な業務ほど使われなくなる

ハルシネーション懸念

リスクアセスメントや気象分析でのAI利用が人命に関わる誤りを生まないかという疑問

出力の検証手順を業務ごとに定義する。特に判断が不可逆な業務は人間の検証を必須にする

世代差

若手は肯定的(歩兵の伍長が手順書ドラフト作成に使い評価された例)、上級幹部は慎重

現場の先行事例を吸い上げて横展開する仕組みが要る

シャドーAI

2026年6月、DCSA(国防防諜保全局)が未承認AIによるデータ漏洩リスクを警告。議会がサイバーリスク評価を指示

公式基盤を出しても、使いにくければ個人アカウント利用は残る

導入時のポップアップ通知をサイバー攻撃と誤認した陸軍幹部の例も報じられており、「配れば使われる」わけではないことがよく分かります。情報漏洩やプロンプトインジェクションといった技術的リスクの全体像は生成AIのセキュリティリスクとは?情報漏洩・プロンプトインジェクション・企業と個人の対策にまとめています。

日本の行政・企業への示唆

デジタル庁の生成AI関連ページのビジュアル

出典: デジタル庁 公式サイト

日本でも政府共通の生成AI環境「源内(Gennai)」や東京都「A1」など、行政の共通基盤整備が進んでいます。GenAI.milとの比較で参考になる論点は3つです。

  1. 単一ベンダーに寄せるか、複数モデルを並べるか — GenAI.milは複数モデル並列を選びました。切替コストは下がる一方、研修・ガバナンス・監査の負荷は単純に増えます。組織の規模と運用人員で判断が変わる部分です。
  2. 扱える情報区分を先に定義する — IL5=CUIまで、という線引きが最初にあることで、「何を入れてよいか」の議論が単純化されています。日本企業なら、機密区分ごとに使用可能なツールを対応表にしておくのが実務的です。
  3. 利用規約の文言が調達を左右する — Anthropicの不在は、性能ではなく利用範囲の文言で決まりました。AIベンダー選定では、モデル性能と同じ重さで許容用途・禁止用途の条項を読む必要があります。

日本の官公庁・自治体の導入状況は官公庁・自治体のAI活用事例|政府「源内」・東京都「A1」・大阪府の最新導入ガイドで整理しています。

こんな人に役立つ/あまり役立たない

役立つ人

  • 全社規模で生成AI基盤を展開する立場にあり、先行事例の失敗パターンを知りたい情報システム・DX部門の方
  • 政府・防衛分野のAI調達動向をウォッチしている方
  • 「軍がChatGPTを使う」という見出しの意味を、事実関係に沿って正確に把握したい方
  • AIベンダーの利用規約・許容用途が事業判断に影響することを社内に説明したい方

あまり役立たない人

  • ChatGPT MilやGrok for Governmentを自分で使いたい方 — DoW職員限定の閉じた環境であり、一般契約はできません
  • 一般向けのChatGPT・Grok・Geminiの料金や使い方を知りたい方 — それぞれChatGPTとはGrokとはGeminiとはの解説記事のほうが直接的です
  • AIの軍事利用の是非そのものを論じた読み物を求めている方 — ここでは事実関係と導入実務の整理に絞っています

現時点で確定していないこと

更新性の高い話題のため、2026年9月2日時点で未確定の項目を明示しておきます。

  • Grok for Governmentが搭載する具体的なモデルバージョン(Grok 4.x / 5 のいずれか)
  • ChatGPT Mil導入に伴う契約金額(2025年7月のCDAO契約とは別枠の可能性)
  • GPT-5.6 TerraのGenAI.mil提供開始日(「近日」とのみ公表)
  • 3モデルそれぞれの実利用者数の内訳(170万人の内訳は非公表)
  • ログの保持期間・監査体制の具体的な仕様
  • Grok for Governmentのデータ非学習ポリシーの公式明記(OpenAI・Googleは明記あり)
  • Anthropic Claudeが今後GenAI.milに搭載されるかどうか

なお、Gemini for Governmentについては、Google公式発表が2025年12月9日、DefenseScoopが「2026年2月に稼働開始」と記述しており、発表日と実稼働日が異なる可能性があります。ここでは公式発表日を基準にしています。

よくある質問

Q. ChatGPT Milは一般のChatGPTと何が違うのですか。
A. 稼働環境と認定が違います。ChatGPT MilはIL5認定の政府環境で動き、処理データは政府環境内に留まり、OpenAIの公開・商用モデルの学習には使われないと明記されています。機能面ではチャット・ファイル・プロジェクト・カスタムGPTに加え、引用付きの「Offline Search」が挙げられています。

Q. 日本の企業や個人がGenAI.milを使うことはできますか。
A. できません。DoW職員向けの閉じた環境で、公開料金プランも一般契約も存在しません。

Q. 機密情報をAIに入力しているのですか。
A. していません。GenAI.milの取扱区分はIL5=CUI(管理された非機密情報)までで、Secret以上の機密情報は対象外です。

Q. 「170万人が毎日使っている」と理解してよいですか。
A. 正確ではありません。DoWや専門メディアの表現は累計ユニーク登録者(onboarded / unique users)で、デイリーアクティブユーザーの数字ではありません。母数はDoW職員300万人超です。

Q. なぜAnthropicのClaudeだけ載っていないのですか。
A. 「あらゆる合法目的での無制限利用」という契約文言をAnthropicが拒否したことが起点です。DoWは2026年3月にAnthropicをサプライチェーンリスクに指定しましたが、2026年8月27〜28日に連邦地裁がこの指定を違法・違憲と判断し取り消しを命じました。搭載予定は現時点で未発表です。

Q. AIが標的選定に使われているのですか。
A. GenAI.mil自体は非機密業務向けの基盤です。標的選定への利用は2026年3月にMIT Technology Reviewが匿名の国防当局者の証言として「可能性」を報じたもので、GenAI.milで実施されているという確認はありません。

まとめ

2026年8月31日のChatGPT Mil / Grok for Government 追加により、GenAI.milは3モデル体制になりました。

  • 3モデルとも認定はIL5で同じ。差が出るのは機能思想(ChatGPT Mil=文書業務、Grok=推論とプレイブック、Gemini=エージェント構築)
  • 扱えるのは非機密のCUIまで。戦闘運用や機密ネットワークでの利用とは別の話であり、ここを混同した報道が多い
  • 170万人は累計ユニーク登録者。9か月で8万→170万という伸びは、公式基盤が用意されれば需要は確実にあることを示す
  • Claude不在はベンダー選定における契約文言の重さを示す事例。性能ではなく許容用途の条項が採否を分けた

日本の組織にとっての実務的な学びは、「配れば使われる」わけではないという点に尽きます。研修の欠如、ログの不透明さ、ハルシネーションへの不安という3つは、300万人規模でも数百人規模でも同じ形で現れます。基盤の選定と同時に、部署別の使い方・検証手順・監査ルールを設計しておくことが、利用率とリスク管理の両方を左右します。

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この記事の著者

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