AI活用事例2026年5月更新

官公庁・自治体のAI活用事例|政府「源内(Gennai)」・東京都「A1」・大阪府の最新導入ガイド【2026年版】

公開日: 2026/04/20
更新日: 2026/05/30
官公庁・自治体のAI活用事例|政府「源内(Gennai)」・東京都「A1」・大阪府の最新導入ガイド【2026年版】

この記事のポイント

政府ガバメントAI「源内(Gennai)」の大規模実証・OSSとして公開、東京都「A1(えいいち)」本格運用、大阪府コンソーシアムの最新情報を完全網羅。自治体のAI活用事例・導入率・法制度・LGWAN対応まで、DX担当者が知るべき情報を1本で整理。

官公庁・自治体の生成AI活用は、政府共通基盤「源内(Gennai)」の大規模実証開始(2026年5月)・OSSとして公開(2026年4月24日)、東京都「A1(えいいち)」の本格運用開始(2026年4月9日)、大阪府の行政AIエージェントコンソーシアム(29団体参画)の三本柱で、一気に「実証段階」から「本格運用フェーズ」へ移行しました。都道府県の約87%・指定都市の約90%が生成AIを導入済みである一方、市区町村は約30%にとどまっており、規模による格差が鮮明になっています(総務省調査・2025年時点)。

この記事でわかること

  • 官公庁・自治体で生成AI活用が加速している政策的背景とAI基本法の意味
  • 「源内(Gennai)」「A1(えいいち)」「大阪府コンソーシアム」3大基盤の機能・スケジュール・使い分け
  • 源内がOSSとして公開された意義と自治体が活用できる範囲
  • 源内で試用される7つの国産LLM(tsuzumi 2、PLaMo 2.0 Prime ほか)の特徴
  • LGWAN環境での生成AI導入パターンと選択肢
  • 横須賀市・横浜市・戸田市など先行自治体の定量的な成果
  • 自治体が導入を成功させるための5ステップ・押さえるべき法規制

誰向けの記事か

  • 中央省庁・都道府県・市区町村でAI活用を検討する職員(特にDX担当・情報政策担当)
  • 自治体向けにAIソリューションを提案したい民間ベンダー・SIer
  • 研究者・ジャーナリストなど、日本の行政DX政策を最新情報で把握したい方

官公庁・自治体で生成AI活用が加速している背景

官公庁・自治体で生成AIが一気に普及した背景には、法制度・政策・人材制約の3つの圧力が同時に高まっていることがあります。

官公庁・自治体の庁舎イメージ

1. AI基本法と人工知能基本計画による「国家戦略化」

  • 2025年5月: 「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI基本法)」施行。日本初のAI関連法
  • 2025年12月23日: 「人工知能基本計画」閣議決定。「信頼できるAI」による「日本再起」を基本理念に設定
  • 内閣AI戦略本部(本部長: 内閣総理大臣)による全政府的な統括体制が整備
  • 各府省庁へのCAIO(Chief AI Officer・AI統括責任者)設置が義務化方針として進行

この法制度整備により、「AIを使う・使わない」は自治体の選択ではなく、国家戦略の実施として位置づけられました。

2. 「隗より始めよ」——政府自身が先にAIを使う

政府は民間への普及を待つのではなく、まず政府自身が生成AIを業務で使い倒す方針を明確に掲げています。その象徴がデジタル庁が内製開発した「源内(Gennai)」であり、2026年5月から全府省庁・外局等39機関・約18万人の職員を対象とした大規模実証が開始されています。

3. 公務員不足・業務量増大という構造問題

  • 人口減少に伴う自治体職員の慢性的不足
  • 住民ニーズの多様化による業務量・問い合わせの増大
  • 税収が限られるなかでの政策高度化要求

この構造問題に対し、文書作成・要約・議事録作成といった「職員の時間を最も奪っている業務」を生成AIで置き換える動きが全国で加速しています。総務省調査では、あいさつ文案作成(875件)・議事録要約(755件)・企画書案作成(638件) が自治体の主要用途の上位を占めています。


政府・自治体の生成AI基盤3つの全体像

デジタル庁 源内(Gennai)生成AI利用環境の概要

出典: デジタル庁 源内(GENAI)公式ページ

日本の官公庁・自治体領域では、2026年5月時点で国レベル1基盤(源内)・広域自治体レベル2基盤(東京都A1/大阪府コンソーシアム) が「三大公共AI基盤」として機能しています。

三大公共AI基盤の比較

基盤

運営主体

対象ユーザー

本格展開時期

主な特徴

源内(Gennai)

デジタル庁

全府省庁・外局等39機関 約18万人

2026年5月〜大規模実証(開始済)/2027年4月〜有償調達検討

政府共通SaaSのガバメントAI基盤。20種以上の業務アプリ、7つの国産LLMを試用。OSSとして公開済み

A1(えいいち)

東京都デジタルサービス局 × GovTech東京

都職員 約6万人(都内区市町村も利用可)

2026年4月9日 本格運用開始(済)

ノーコードでAIアプリを内製・共有できる共通基盤。デジタル公共財として他自治体へ横展開

大阪府 行政AIエージェントコンソーシアム

大阪府

府内自治体・29参画団体

2025年12月19日設立/実証事業進行中

AIエージェントの実証に特化。民間29団体と産官連携。2026年度末に活用指針公表予定

出典: デジタル庁、東京都デジタルサービス局、大阪府公式発表(2026年5月時点)

3基盤の役割分担

  • 源内 = 国レベルの共通基盤。省庁の行政実務(国会答弁・法制度調査・公用文)に特化
  • A1 = 自治体向けの「アプリ開発プラットフォーム」型。職員が自分でAIアプリを作れる
  • 大阪府コンソーシアム = 民間ベンダーと組んだ「AIエージェント実証」。成果は2026年度末以降に公表予定

政府ガバメントAI「源内(Gennai)」とは【2026年5月 大規模実証開始】

源内(Gennai)はデジタル庁が内製開発した政府共通の生成AI利用環境です。名称は「Generative AI」の略語「Gen AI」と、江戸時代の発明家・平賀源内の精神を組み合わせて命名されました。

政府職員が生成AIを業務で活用するイメージ

源内の基本スペック

項目

内容

運営

デジタル庁

提供形態

政府共通SaaS(政府ソリューションサービス/GSS経由のSSO)

対象

全府省庁・外局等39機関 約18万人

動作基盤

ガバメントクラウド(AWS / Google Cloud / Azure / OCI / さくらのクラウド)

セキュリティ水準

政府統一セキュリティ基準準拠/機密性2情報対応

現在のステータス

Release 2.0。2026年5月〜 全省庁での大規模実証開始(進行中)

OSSライセンス

MITライセンス + CC BY 4.0(商用利用可)

源内で提供されているアプリ(20種類以上)

汎用型アプリ

  • チャット対話
  • 文書作成(公用文ドラフト)
  • 要約・校正・翻訳

行政実務特化アプリ

  • 法制度調査支援AI(愛称: Lawsy)— 条文横断検索・要点抽出
  • 国会答弁検索・作成支援
  • 公用文チェッカー
  • 雇用証明審査
  • パブリックコメント自動分類
  • 内部管理業務支援

セキュリティ設計の要点

  • 全AI利用履歴の記録・監視
  • 保存・転送時の完全暗号化
  • 多要素認証による本人確認
  • ISMAP(政府情報システムのセキュリティ評価制度)準拠を原則
  • 2025年5月27日「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」により、適切な管理体制下での機密性2情報の取り扱いが可能に

【2026年4月24日】源内がOSSとして公開された意義

デジタル庁は2026年4月24日、源内のコアコンポーネントをGitHubでOSSとして無償公開しました。公開されたコンポーネントは以下の通りです。

コンポーネント

内容

genai-web

Webインターフェース(TypeScript/React構成)

genai-ai-api

RAG開発テンプレート(AWS向け・Google Cloud向け)

法制度AIアプリ実装

Google Cloud向け実装サンプル

  • ライセンス: MITライセンス + CC BY 4.0(商用利用可)
  • 技術窓口: digital-ai@digital.go.jp

このOSS化は「政府が内製した基盤を自治体・民間企業がカスタマイズして使える」ことを意味します。ただし、源内自体は政府職員向け利用環境であり、OSS化はGitHub公開による参照・カスタマイズ方式である点に注意が必要です。市区町村が「源内をそのまま使える」わけではなく、コードを参照して独自に実装する形になります。

源内のスケジュール(公式計画値)

時期

内容

2025年5月

デジタル庁職員向けに運用開始

2026年1月〜

一部省庁での試行利用開始

2026年4月24日

GitHubにてOSSとして無償公開

2026年5月〜

全府省庁・外局等39機関18万人への大規模実証(Release 2.0)開始。7つの国産LLM試用開始

2026年8月頃

国産LLMを源内に本格組み込み(計画)

2027年1月頃

評価・検証結果の一部公表(計画)

2027年4月〜

優れた成果を示したLLMを対象に有償調達検討開始

2027年度〜

本格運用開始

※ 2026〜2027年の数値・時期はすべて現時点の計画値。正式な調達条件・評価結果は公表後にご確認ください。

公式情報: デジタル庁 GENAI公式ページ(英語)


東京都「A1(えいいち)」とは

A1(えいいち)は東京都デジタルサービス局と一般財団法人GovTech東京が連携して内製整備した生成AI共通基盤です。「AIアプリが業務改革の基盤となる」という意図を、渋沢栄一が近代産業の基盤を築いたことになぞらえて命名されました(「A1」の読みは「えいいち」)。2026年4月9日に都職員 約6万人への本格運用を開始しています。

東京都庁舎と都市イメージ

A1の基本スペック

項目

内容

運営

東京都デジタルサービス局 × GovTech東京

提供形態

国内サーバー環境で運用する内製プラットフォーム。OSSベース

対象

都職員 約6万人(都内区市町村職員も利用可能)

本格運用開始

2026年4月9日

主要機能

ノーコードAIアプリ開発/他自治体との共有/API連携/RAG構築

セキュリティ

国内サーバー環境で運用。入力データが外部LLMサービスに学習されない設計

A1でできること

  • ノーコードで職員自身がAIアプリを開発できる(プログラミング知識不要)
  • 作ったアプリを組織内・他自治体へ「デジタル公共財」として共有
  • API連携で既存ツールと統合
  • 独自データを活用したRAG型Q&Aの構築

実際に共通利用されている主要アプリ例

  1. 契約仕様書案の作成支援
  2. AI導入・実装時の対応ポイントをサポートするアプリ
  3. 都議会議事録をもとにした答弁検討支援

A1の運用で直面している現実

東京都では導入初期、対象職員の約1割しか利用申請しなかったと報告されており(出典: 日本総研)、浸透そのものが課題となっています。他自治体の先行例(滋賀県)でも、利用者の76.2%が最初の1回だけの利用にとどまったとのデータがあります。「ツールを入れれば使われる」という前提は通用しません。

一方、A1の特徴である「デジタル公共財」設計は、中小規模の自治体にとって大きな意味を持ちます。東京都が開発したAIアプリを区市町村がそのまま流用できる仕組みは、独自開発予算のない自治体の現実的な解決策になり得ます。

公式情報: 東京都AI戦略(デジタルサービス局) / A1本格運用開始プレスリリース


大阪府・大阪市の生成AI取組

大阪府・大阪市の都市景観

大阪は府と市で別々の取組が進行しています。両者は組織も目的も異なるため、混同しないことが重要です。

大阪府:行政AIエージェントコンソーシアム(2025年12月19日設立)

  • 目的: AIエージェントの実証事業を通じた行政業務への展開可能性の検討
  • 参画団体: 29団体
    • 大手クラウド: 日本マイクロソフト、Google Cloud、AWS、NVIDIA
    • 通信: NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク
    • 金融: 三井住友銀行、りそな銀行
    • コンサル: PwC、アクセンチュア
    • アカデミア: 公立大学法人大阪 ほか
  • 特徴: 民間リソースとの産官連携で「AIエージェント」という新しい利用形態に特化
  • 大阪市×日立製作所: AIエージェントを用いた通勤届の申請・審査業務で、最大約40%の業務時間短縮の可能性を確認
  • 2026年度末: AIエージェント活用指針の公表を予定

公式情報: 大阪府行政AIエージェントコンソーシアム

大阪府 × Google 生成AI実装プロジェクト

大阪府は全国初の連携自治体としてGoogle合同会社と松尾研究所共同開発の生成AIプロダクトを活用する取り組みに参画。就業希望者への適性職種提案(雇用ミスマッチ解消) 等、具体的な行政課題解決に生成AIを応用しています。

大阪市:生成AI「Oasis」と全庁運用ガイドライン

  • AIアシスタント「Oasis」およびOasis RAG を自前構築し全庁運用
  • 令和6年(2024年)4月1日に「生成AI利用ガイドライン」策定、現行第2.4版(2025年12月22日改定)
  • 2024年度から文章生成AI全職員本格利用開始。2025年10月31日から画像・動画生成AIの職員利用も解禁
  • 業務受託事業者向けガイドラインも整備
  • 活用領域: 文書作成・要約・編集・企画立案ブレインストーミング・翻訳

公式情報: 大阪市生成AI利用ガイドライン


業務別のAI活用領域と主要ツール

東京都A1生成AIプラットフォームのアーキテクチャ図

出典: 東京都 A1本格運用開始プレスリリース(2026年4月9日)

官公庁・自治体での生成AI活用を業務別に整理すると、以下のパターンがほぼ全国共通です。

業務別活用一覧表

業務領域

AIの役割

典型的な効果

主要ツール・基盤例

文書作成(あいさつ文・メール・企画書)

下書き自動生成・校正

作成時間 50〜70%削減

源内、A1、Oasis、Azure OpenAI

議事録作成

音声→文字起こし・要約

数時間→30分など大幅短縮

A1カスタムアプリ、各社文字起こしAI

議会答弁・想定問答

過去答弁検索・草案作成

作成時間を従来の1/3へ

源内「国会答弁検索」、A1答弁検討支援

法制度調査

条文横断検索・要点抽出

数日作業が数時間に

源内「Lawsy」

住民問い合わせ対応

チャットボット・FAQ自動応答

24時間365日対応

千葉県「福祉相談サポット」、金沢市粗大ごみAI

政策立案・企画

アイデア発想・事例検索

検討時間短縮

内閣府「政策事例検索システム」、各自治体RAG

広報・SNS運用

記事案・ペルソナ分析

投稿準備時間の短縮

神戸市広報、湖西市SNS投稿文

申請審査・書類確認

自動分類・チェック

数週間→数日

源内「雇用証明審査」、別府市アンケート分類

インフラ点検

画像解析・異常検知

巡回効率化

室蘭市 路面ひび割れ検出

行政手続き代行

AIエージェントによる申請・審査

業務時間最大40%短縮

大阪市×日立(通勤届)

主要ツール・ソリューション(官公庁・自治体での採用実績)

  • 政府共通基盤: 源内(Gennai)
  • 広域自治体基盤: 東京都A1、大阪市Oasis
  • 民間クラウド: Azure OpenAI Service、ChatGPT Enterprise、Google Cloud / Gemini for Government、AWS Bedrock
  • 国産LLM: tsuzumi 2、Sarashina2 mini、PLaMo 2.0 Prime、Llama-3.1-ELYZA-JP-70B、cotomi v3、Takane 32B、CC Gov-LLM(いずれも源内で試用中・予定)

代表的な自治体の導入事例と成果

デジタルスマートシティの概念図:自治体のAI活用によるデジタル変革

自治体ごとの活用内容と定量成果を公式発表・信頼ソースベースで整理しました。

自治体・機関

主な活用内容

公表されている成果

農林水産省

米生産意向調査(約8,000件)の分析

処理期間 2か月 → 約3日

国税庁

LLMエンジン統合チャットボットによる納税者サービス

2024年度 約7万件処理

埼玉県戸田市

文書作成・要約

月500時間相当の労働時間削減

神奈川県横須賀市

文章作成・企画立案・コード生成(全国初のChatGPT全庁導入 2023年4月)

年間22,700時間削減見込み。職員8割以上が効率向上を実感

神奈川県横浜市

NTT東日本と連携したRAG実証(2024年11月〜2025年3月)。選挙管理・権利擁護業務

選挙関連問い合わせ対応精度約9割達成。年間約50万時間の効率化を試算

宮崎県都城市

文書作成・校正、政策提案

年間約1,800時間削減

静岡県湖西市

SNS投稿文、議会答弁書

答弁書作成時間が従来の 1/3。年間66時間削減

北海道当別町

議事録作成

会議後の整理作業が 2〜3時間 → 30分

大分県別府市

市民アンケート自動分類

2週間 → 2日

北見市

窓口AI活用

住民待ち時間450時間+職員作業1,420時間削減

久慈市

AI-OCR活用

処理時間78%削減

千葉県

福祉相談チャットボット「いつでも福祉相談サポット」

Web/LINEで24時間365日対応(2025年2月27日〜)

神戸市

広報紙作成、ペルソナ分析

Microsoft Copilot 全庁本格導入(2024年2月〜)

北海道室蘭市

路面画像からのひび割れ自動検出

道路管理の効率化

金沢市

粗大ごみ予約AI

利用者の 98%が便利と評価

出典: 総務省「先行団体における生成AI導入事例集」(令和6年7月)、各自治体公式発表、自治体通信Online 横浜市RAG記事

事例から見えるポイント

  • 即効性が高いのは「文書・議事録・答弁」の3領域。ほぼ確実に数千〜数万時間規模の削減につながる
  • 住民向けサービス(チャットボット等)はハルシネーション対策が鍵。RAGとFAQベースの組み合わせが定石
  • 横浜市のRAG実証は「選挙問い合わせ対応精度約9割・年間50万時間効率化試算」として大規模自治体での成果モデルになっている
  • 画像・音声解析(ひび割れ検出等) はインフラ老朽化対策として補助金事業になりやすい

源内で試用される7つの国産LLM

デジタル庁は2026年3月6日、源内で試用する7つの国産LLMを公表しました。2026年5月から試用を開始し、2026年8月頃からの本格組み込みを経て、2027年4月以降は優れた成果を示したモデルを有償調達する計画です。

選定基準は「開発経緯の透明性・セキュリティ要件・行政向けベンチマーク・ハルシネーション対策・日本語精度」で、試験は「当日初開示の50問」形式で実施されました。

7モデルの一覧

LLM名

開発元

主な特徴

tsuzumi 2

NTTデータ(NTT)

300億パラメータ。GPU1基で動作する軽量設計。金融・医療・公共知識強化

Sarashina2 mini

SB Intuitions(ソフトバンク傘下)

4,600億パラメータからの知識蒸留型。大型モデルの知識を軽量化

PLaMo 2.0 Prime

Preferred Networks

フルスクラッチ国産。日本語性能で世界トップクラス

Llama-3.1-ELYZA-JP-70B

KDDI・ELYZA共同応募

Meta Llama 3.1ベース、700億パラメータ日本語最適化

cotomi v3

NEC

敬語・専門用語の再現性に特化

Takane 32B

富士通

高い推論能力とオンプレ運用対応

CC Gov-LLM

カスタマークラウド

政府向けに独自開発

なぜ国産LLMを並行評価するのか

  • 経済安全保障: 海外クラウド・海外モデル依存のリスク低減
  • 日本語性能: 公用文・法令・敬語の扱いで国産モデルが優位になり得る
  • オンプレ運用: GPU1基〜オンプレ対応モデルは機密性の高い用途に向く
  • 国内産業育成: 行政が先進ユーザーとなることで国産AI産業を押し上げる

現時点の源内は海外製LLMで稼働しており、「国産への完全置き換え」ではなく「適材適所で国産を取り込む」方針である点は誤解しやすい部分です。

参考: Ledge.ai 源内国産LLM選定記事


LGWAN環境での生成AI導入パターン

自治体が生成AIを導入する際に最も見落とされがちな課題がLGWAN(総合行政ネットワーク)との整合性です。多くの自治体業務はLGWAN環境で運用され、インターネットとは分離されているため、クラウドAIとの接続には工夫が必要です。

LGWANとは(自治体AI導入における前提知識)

LGWANは全国の都道府県・市区町村をつなぐ行政専用のクローズドネットワークです。インターネットとは物理的に分離されており、庁内の機密性の高い情報はLGWAN系で処理されます。一方、インターネット系(住民向けWebサイト等)は別系統です。

生成AI導入の3パターン

導入パターン

概要

向いている用途

主な選択肢

パターンA: LGWAN-ASP型

LGWANからアクセス可能なクラウドサービス(LGWAN-ASP)上でAIを動かす

機密性の高い庁内業務

専用ASPサービス、庁内オンプレLLM

パターンB: インターネット分離環境でクラウドAI

インターネット系端末でAzure OpenAI等を利用。機密情報は入力しない

文書作成・要約等の汎用業務

Azure OpenAI Service、ChatGPT Enterprise、Gemini for Government

パターンC: オンプレミスLLM

庁内サーバーにLLMを設置し、ネットワーク非依存で運用

機密性3以上の情報を扱う部署

Takane 32B、tsuzumi 2などGPU1基動作モデル

自治体が「どこにAIを置くか」を決める判断軸

  1. 処理する情報の機密性レベル: 機密性2以下 → インターネット分離環境でクラウドAI / 機密性3以上 → オンプレまたはLGWAN-ASP
  2. 想定ユーザー: 全職員 → クラウドAI(展開が容易) / 特定部署 → オンプレも検討
  3. 予算規模: 初期投資を抑えたい → クラウドAI / セキュリティを最優先 → オンプレ

現実解: 多くの自治体は「インターネット系でAzure OpenAI等のクラウドAI利用+個人情報・機密情報は絶対に入力しないルールを徹底」という方式を採用しています。これが現時点での標準モデルです。


法制度・ガイドライン体系

官公庁・自治体がAIを活用する際に参照すべきガイドライン体系を整理します。

国の法制度・ガイドライン一覧

文書名

公表日

主管

概要

AI基本法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)

2025年5月施行

内閣府

日本初のAI関連法。AI利活用推進の基本法

人工知能基本計画

2025年12月23日閣議決定

内閣府(CSTI)

「信頼できるAI」による「日本再起」を基本理念

行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン

2025年5月27日

デジタル庁

ISMAP準拠、CAIO体制、高リスク対応、機密性2情報取り扱いなどを規定

自治体AI活用・導入ガイドブック第4版

2025年12月16日

総務省

生成AI活用事例・留意事項・ガイドライン雛型追加。CAIO設置推奨。自治体の第一参照先

AI事業者ガイドライン(第1.1版)

2025年3月28日

総務省・経済産業省

企業・自治体のAI活用における行動原則

公式情報: 総務省 自治体AI活用・導入ガイドブック第4版 / デジタル庁 生成AI調達・利活用ガイドライン / 内閣府 人工知能基本計画

自治体のガイドライン策定状況と格差

  • 全体: 約74%の自治体がAI・RPAを導入済み(総務省)
  • ガイドライン策定済み: 都道府県・指定都市の大半。市区町村は1,000団体以上が未策定(2025年時点)
  • 参考事例: 大阪市(第2.4版)・東京都(2026年3月策定)は他自治体の参考モデルとして公開されている

導入課題・規制上の注意点

官公庁・自治体での生成AI導入は、民間企業以上に法令・制度・説明責任の壁があります。

1. 機密情報の取り扱いルール

  • 2025年5月27日ガイドラインにより、適切な管理体制下での機密性2情報まで扱えるようになった
  • ただし特定秘密、より高い機密性区分の情報は引き続き制限
  • 各自治体で「何を入力してよいか・悪いか」を定めた利用ガイドラインの整備が必須

2. ハルシネーション(誤情報生成)

  • 日本総研の整理でも「職員が最も挙げた課題」として報告
  • 住民向けサービスへの活用では致命傷になりうる
  • 対策: RAG(庁内規則・過去答弁・条例等をベクトル化)+ 職員による二重チェックが標準解

3. 著作権リスク

  • 生成物が既存著作物に類似するリスクへの対応が必要
  • Microsoft Copyright Shield等、著作権保護サービス付きプランの選定が推奨
  • 広報・公式SNS等の外部公開物には必ず人間の最終確認を

4. 自治体固有ルールへの対応

  • 汎用LLM単体では庁内規則・各自治体固有の業務フローに対応できない
  • RAG併用が必須。A1や大阪市Oasisは最初からRAGを前提に設計されている

5. 職員の浸透率・ITリテラシー

  • 東京都の初期で対象職員の約1割しか利用申請せず(日本総研)
  • 滋賀県先行例では76.2%が最初の1回だけの利用で終わった
  • 6割以上の自治体が職員スキル不足を指摘(総務省調査)
  • 導入と同じくらい「研修・活用アプリの提供・成功事例の横展開」が重要

6. 自治体規模による格差

区分

生成AI導入率(参考値)

主な課題

都道府県

約87%

組織横断での浸透・RAG整備

指定都市

約90%

部局間連携・データ整備

市区町村

約30%

予算・人員・IT人材の不足

町・村

約11%(2026年推計)

IT人材ゼロ・外部委託リスク

市区町村では、総務省ガイドブックや東京都A1の「デジタル公共財」モデルを活用し、先行自治体の成果物を再利用するアプローチが現実解になります。

生成AIの全般的なセキュリティリスクについては、生成AI セキュリティのリスクと対策で詳しく解説しています。


自治体がAI導入を成功させるための5ステップ

自治体・省庁がゼロから生成AI活用を始める場合、「ツール選定の前に体制と用途を決める」のが鉄則です。

ステップ1: 利用ガイドラインを整備する

  • 機密性区分ごとの入力可否を明示
  • 個人情報・特定秘密の入力禁止ルール
  • 生成物の二重チェック義務
  • 参考: 大阪市「生成AI利用ガイドライン 第2.4版」、東京都「AI導入・活用ガイドライン(2026年3月)」、総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック(第4版)」

ステップ2: 「効果が大きく・リスクが低い」用途から始める

  • 第1候補: あいさつ文、メール、企画書の下書き(失敗してもやり直しが効く)
  • 第2候補: 議事録要約、議会想定問答(効果が定量化しやすい)
  • 第3候補: 庁内ドキュメントのRAG型Q&A(セキュリティ担保後に実装)
  • 住民向けチャットボット等は、先に庁内用途で精度と運用を成熟させてから

ステップ3: 情報流出しない環境を選ぶ

  • Azure OpenAI Service、ChatGPT Enterprise、Gemini for Government等、入力データが学習に使われない環境を採用
  • 国産オンプレLLM(tsuzumi 2、Takane 32B等)を検討するなら機密性の高い用途に
  • LGWAN環境での運用が必要な場合は LGWAN-ASP型または庁内オンプレを選択

ステップ4: 職員浸透策をセットで実装する

  • 使えば便利だと「最初の体験」で実感できる研修
  • 成功事例の横展開(例: 他自治体の議事録要約アプリをそのまま使う)
  • チャンピオン職員(部署内の活用リーダー)の育成

ステップ5: 効果測定と段階拡大

  • 削減時間・利用頻度・満足度を定期計測
  • 戸田市の「月500時間削減」、横須賀市の「年間22,700時間削減見込み」等を参考に目標設定
  • 年1〜2回のガイドライン改定で最新環境に追従

AIエージェントを行政手続き代行に使う取り組みについては、AIエージェントとは?仕組み・活用例・代表ツールを整理が参考になります。


こんな自治体におすすめ・慎重に検討すべき自治体

AI活用の本格導入が向いている自治体

  • 都道府県・指定都市: 予算・人員・データ量が揃い、RAG構築も自前で回せる
  • 人口30万人以上の市: 議会・答弁・広報など「ドキュメント量が多い」業務でROIが出やすい
  • DX担当部署が独立組織として存在する自治体
  • 条例・ガイドラインの整備権限が首長直下で動く自治体
  • 既に業務システムのクラウド化を進めている自治体(LGWAN対応済み)

慎重に検討すべき自治体

  • 人員5人以下の小規模DX担当: 運用・研修・ガイドライン更新の継続コストが重い
  • 機密性3情報を大量に扱う部署主体の導入: 現行ガイドラインでは制約が大きい
  • IT人材ゼロ・外部ベンダー丸投げ予定: ハルシネーションや流出事故時の責任所在が曖昧になる
  • 「とりあえず導入」が目的化している自治体: 浸透率1割で終わるケースが多い

小規模自治体は、総務省ガイドブックや東京都A1の「デジタル公共財」を再利用する方式で、まずは月10時間削減レベルから始めるのが現実的です。ゼロから基盤を構築する必要はありません。


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よくある質問(FAQ)

Q1. 「源内」「Gennai」「GENAI」は同じものですか?

はい、すべて同一の政府共通AI基盤を指します。正式名称は漢字の「源内(げんない)」で、英語表記が「GENAI」、略称で「Gennai」と書かれることもあります。デジタル庁が内製開発した政府全体のガバメントAI基盤で、2026年4月24日にOSSとしてGitHubでも公開されています。

Q2. 東京都「A1」の読み方は何ですか?都民も使えますか?

正しい読みは「えいいち」です(「エーワン」ではありません)。A1は都職員 約6万人と都内区市町村職員を対象とした業務用基盤で、一般都民が直接使うサービスではありません。ただしA1で作られたアプリの一部は「デジタル公共財」として他自治体へ共有され、住民向け施策の品質向上に寄与する設計です。

Q3. 「大阪府」と「大阪市」の取組は同じですか?

いいえ、別組織・別取組です。大阪府は2025年12月19日設立の「行政AIエージェントコンソーシアム(29団体)」を推進。大阪市はAIアシスタント「Oasis」および「Oasis RAG」を自前構築し、現行第2.4版ガイドライン(2025年12月22日改定)に基づき全庁運用しています。

Q4. 自治体の生成AI導入率はどのくらいですか?

総務省調査(2025年時点)の参考値として、都道府県 約87%、指定都市 約90%、市区町村 約30%、町・村は約11%とされています。ただし「どの段階を導入と定義するか」で数値は変動するため、時点・出典の明記されたデータを確認してください。

Q5. 源内は国産LLMのみで動いていますか?

いいえ、現時点の源内は海外製LLMで稼働しています。2026年5月〜国産7モデルの試用を開始し、2026年8月頃から本格組み込み、2027年4月以降に有償調達検討を開始する計画です。「国産への完全置き換え」ではなく「適材適所で国産を取り込む」方針です。

Q6. 源内のOSSはどこから入手できますか?自治体でも使えますか?

デジタル庁のGitHub(2026年4月24日公開)からMITライセンス・CC BY 4.0で入手可能です。商用利用も可能で、自治体が独自にカスタマイズして独自AI基盤を構築する際の参考・テンプレートとして活用できます。ただし源内自体は政府職員向け環境であり、OSSを使って自治体が独自環境を構築する場合はガバメントクラウド接続等の前提条件が必要です。技術的な問い合わせはdigital-ai@digital.go.jpが窓口です。

Q7. LGWANがある自治体では生成AIは使えませんか?

使えます。ただし工夫が必要です。現実的な解決策は「LGWAN-ASP型サービス」「インターネット系端末でクラウドAI利用(機密情報は入力しないルールを徹底)」「庁内オンプレLLM設置」の3パターンです。多くの自治体が「インターネット系端末でクラウドAI+機密情報入力禁止ルール」の方式を採用しています。

Q8. 自治体で生成AIに機密情報を入力してもよいですか?

2025年5月27日の「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」により、適切な管理体制下での機密性2情報まで扱えるようになりました。ただし特定秘密や機密性3以上の情報は引き続き制限されます。各自治体で独自の利用ガイドラインを整備し、それに従って運用する必要があります。

Q9. 小規模自治体でも生成AIは活用できますか?

はい、活用可能です。ゼロから基盤を構築するのではなく、総務省ガイドブック(第4版)や東京都A1の「デジタル公共財」モデルを再利用する方式が現実的です。先行自治体の議事録要約アプリやあいさつ文テンプレートをそのまま使うことで、人員5人以下のDX担当でも月数十時間の削減から始められます。

Q10. 生成AI導入で一番多い課題は何ですか?

公表されている調査結果では、職員が挙げる最大の課題はハルシネーション(誤情報生成)です。次いで職員のITリテラシー不足(6割以上の自治体が指摘)自治体固有ルールへの対応が続きます。対策としてRAG併用・職員研修・ガイドライン整備の3点セットが標準解となっています。


まとめ

官公庁・自治体の生成AI活用は、2026年5月時点で「実証」から「本格運用」フェーズへ移行しました。

  • 政府共通基盤「源内(Gennai)」は2026年5月から18万人規模の大規模実証が進行中。7つの国産LLMを並行評価し、2027年4月以降の有償調達へ。さらに2026年4月24日にOSSとして公開され、自治体や民間企業が参照・カスタマイズできる
  • 東京都「A1(えいいち)」は2026年4月9日に約6万人への本格運用を開始。ノーコード・デジタル公共財モデルで全国自治体へ波及中
  • 大阪府の行政AIエージェントコンソーシアムは29団体が参画し、AIエージェント実証の最前線に。大阪市×日立の通勤届業務で最大40%短縮の可能性も確認
  • 横浜市のRAG実証(年間50万時間効率化試算)・横須賀市(年間22,700時間削減見込み)など先行自治体の成果が具体化してきた
  • LGWAN環境での対応はインターネット分離方式・LGWAN-ASP・オンプレの3パターンが選択肢
  • AI基本法→人工知能基本計画→デジタル庁調達ガイドライン→総務省ガイドブック第4版の体系でガバナンス整備が進む

自治体DX担当者は、総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック(第4版)」を基点に、ガイドライン整備→低リスク業務からの段階導入→効果測定というサイクルで進めるのが現時点の定石です。小規模自治体は、東京都A1の「デジタル公共財」モデルを再利用することで、先行自治体の開発コストをかけずに活用を開始できます。

この記事の著者

AI革命

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