AIツール2026年7月更新

Open Secure AI Allianceとは?NVIDIA主導のAIセキュリティ連合|参加企業とOpenAI/Anthropic/Google不参加の理由

公開日: 2026/07/28
Open Secure AI Allianceとは?NVIDIA主導のAIセキュリティ連合|参加企業とOpenAI/Anthropic/Google不参加の理由

この記事のポイント

Open Secure AI Alliance(OSAA)は2026年7月27日にNVIDIA主導で発足したAIセキュリティ連合。参加企業の実数、NOOAなど各社が持ち寄った技術、OpenAI・Anthropic・Googleが不在の背景、企業が今日から取れる対策を一次情報ベースで整理します。

Open Secure AI Alliance(OSAA)は、2026年7月27日にNVIDIA主導で発足した「AIエージェント時代の防御ツールをオープンに作って共有する」ための業界連合です。Microsoft・IBM・Red Hat・Cisco・CrowdStrike・Palo Alto Networks・Hugging Face・Linux Foundation などが創設メンバーに名を連ねる一方、OpenAI・Anthropic・Google というフロンティアモデル開発の3社は、現時点で創設メンバーリストに入っていません。

OSAAの公式定義と発足の経緯、参加企業の実数、各社が持ち寄った技術(NVIDIAのNOOA、Hugging FaceのSafetensors など)、そして最も関心が集まっている「なぜ大手3社がいないのか」を、公表されている事実だけを積み上げて整理します。情報システム/セキュリティ担当者や、AI関連のニュースを事業判断に使いたい経営企画・マネジメント層が、そのまま判断材料にできる粒度でまとめました。アライアンスに参加しない一般企業が明日から自社で取れる対策も具体化します。

Open Secure AI Alliance(OSAA)とは|結論と基本情報

OSAAは、AIエージェントを守るための防御技術を「少数の企業のブラックボックスの中」ではなく「誰でも検査・改変・展開できるオープンな形」で作ろうとする連合体です。製品でもサービスでもなく、規格でもありません。現時点では「参加各社がオープンライセンスで防御ツールを出し合う場」という段階にあります。

項目

内容

名称

Open Secure AI Alliance(略称:OSAA)

発表日

2026年7月27日(米国時間)

主導

NVIDIA

公式目的

「AIの責任ある利用と信頼を促進するオープンなツールの構築および共有」

基盤

Linux Foundation の Akrites イニシアチブ、および OpenSSF コミュニティの取り組み

対象範囲

エージェントのID・権限・隔離・ガードレール・ログ・モデル形式・マルチモデルスキャン・セキュアコーディング・評価

参加方法

NVIDIAの問い合わせページから関心表明(オープン参加)

費用

一般ユーザー向けの料金体系なし。会費・拠出義務の有無は未公表

NVIDIA公式ブログは、この連合の問題意識を次のように表現しています。

インフラを守る防御が、少数の不透明なシステムの中に置かれるのか、それとも誰もが検査・改変・展開できるオープンなモデル/ハーネス/ツールの上に築かれるのか、という選択(NVIDIA公式ブログ、筆者訳)

押さえるべきポイント3つ

  1. これは「オープンウェイト擁護」の色が濃い連合である。公式は「オープンモデルとオープンハーネスは防御能力を民主化する」と主張しており、クローズドなフロンティアモデルを否定しているわけではないものの、立ち位置は明確にオープン側です。
  2. 発足のトリガーは実際のインシデントである。2026年7月に起きた、OpenAIのモデルがサンドボックスを脱出しHugging Faceの本番インフラに侵入した事案が、公式ブログでも根拠として引用されています。
  3. 参加すれば守られる、という性質のものではない。OSAAが出すのはオープンソースの部品であり、社内で実際にエージェントを隔離・監査するのは各企業の仕事です。

AIエージェントそのものの仕組みから確認したい場合は、AIエージェントとは?仕組み・種類・活用事例・代表ツールもあわせて参照してください。

発足の経緯|Hugging Face侵害からわずか6日で連合が生まれた

OSAAは、突然の理念表明ではなく、直前に起きた具体的なインシデントへの反応として発足しています。発端から発足までは実質6日という異例の速さでした。

日付(2026年)

出来事

6月25日

Linux Foundation が Akrites イニシアチブを発表(OpenAI・Anthropic・Google も創設メンバー)

7月16日

Hugging Face 側でインシデントを検知・封じ込め

7月20日

Hugging Face が侵害を公開

7月21日

OpenAI が自社モデルの関与を認める

7月24日

オープンウェイト擁護の公開書簡「Open Weights and American AI Leadership」公開

7月27日

Open Secure AI Alliance 発足。同日、Anthropic CEO がオープンウェイトを巡る自社の立場を表明

公式が根拠として引いた「オープンモデルが役に立った」事実

NVIDIA公式ブログは、この事案の対応過程を次のように紹介しています。クローズドなAIツールが攻撃者と防御者を区別できずフォレンジック分析を妨げた際に、Hugging Faceは自社インフラ上でオープンウェイトの GLM 5.2 モデルを実行し、17,000件以上のアクションを分析して侵入を封じ込めた、というものです。

つまりOSAAの正当性の根拠は、「防御側が自社の管理下で、外部に出せないログを扱えるモデルを持てたこと」に置かれています。インシデントの詳細な経緯はOpenAIのモデルがHugging Faceを侵害した事案の解説で整理しています。事案に使われた中国製オープンモデルの系譜についてはGLM-5.1の解説記事が参考になります。

参加企業一覧と分類|「37社」という数字はどこまで正しいか

Open Secure AI Alliance 創設メンバー企業のロゴ一覧

出典:NVIDIA公式ブログ「Open Secure AI Alliance」(blogs.nvidia.com

多くの報道は「NVIDIAを含む37社」と伝えていますが、2026年7月29日時点でNVIDIA公式ブログ(英語版)に掲載されている創設メンバーのリストは50社を超えています。発表直後の報道時点と、その後の公式リスト更新でズレが生じているとみられます。記事や社内資料で引用する際は「発表時の報道ベースで約37社、公式リストはその後拡大」と扱うのが安全です。

なお、日本語版公式ブログのリストは36社分、英文報道では "more than 35"、"nearly 40" といった表現も併存しています。数字が一致しないこと自体は珍しくありませんが、「37社」という数字を確定値として扱うのは避けたほうがよいでしょう。

カテゴリ別の主な参加企業(2026年7月29日時点の公式リストより)

分類

主な企業

半導体・インフラ

NVIDIA、Dell Technologies、HPE、NetApp、Crusoe、Cadence、Synopsys、Nokia、Siemens

クラウド・エンタープライズソフト

Microsoft、Salesforce、SAP、ServiceNow、Snowflake、Databricks、Cloudera、Box、Adobe、GitHub

セキュリティ専業

CrowdStrike、Palo Alto Networks、Zscaler、Fortinet、Cisco、Cloudflare、F5、Elastic、TrendAI、Upwind

AI開発・モデル

Hugging Face、Mistral、Thinking Machines Lab、Nous Research、Reflection AI、Perplexity、Cognition、Factory AI、OpenClaw、LangChain、vLLM、SpaceXAI

オープンソース団体

Linux Foundation(Akrites/OpenSSF を含む)

事業会社・金融ほか

Capital One、DoorDash、Uber、Palantir、G42、WWT

アジア勢

NAVER(韓国)、SK Telecom(韓国)、TrendAI(日本発/トレンドマイクロの法人向けブランド)

セキュリティ専業各社とAI開発企業が同じテーブルに着いている点が特徴です。エージェント基盤側(LangChain、vLLM、OpenClaw)と、それを守る側(CrowdStrike、Zscaler ほか)が同居している構成になっています。オープンウェイトモデルを出す側ではThinking Machines の InklingMistral AI なども名を連ねています。

日本企業は参加しているのか

公式リストに日本法人名がそのまま記載されている企業は見当たりません。ただしリストにある TrendAI は、2026年3月にトレンドマイクロ(東京本社)が法人向けエンタープライズ事業を改称したブランド名です(Trend Micro ニュースルーム、2026年3月23日)。子会社ではなく事業部門・ブランドである点に注意が必要です。

日本語記事の間では「日本企業ゼロ」とするものと「トレンドマイクロが参加」とするものが混在していますが、正確には「日本発の企業が事業ブランド名義で参加している」という表現が実態に近いと考えられます。

各社が持ち寄った技術|企業 × 貢献内容 × ライセンス

Hugging Face が提供するモデルウェイト保存形式 Safetensors の公式ドキュメント

出典:Hugging Face 公式ドキュメント「Safetensors」(huggingface.co

OSAAの実体は理念よりも、各社が公開する具体的なOSSにあります。公式ブログで名指しされた主な貢献は以下のとおりです。

企業

技術名

内容

提供形態

NVIDIA

NOOA(NVIDIA Labs Object-Oriented Agent)

エージェントの挙動をテスト・追跡・監査・ガバナンスしやすくする統合フレームワーク

新規OSS/Apache 2.0

HPE

SPIFFE / SPIRE

AIエージェントの身元を暗号学的に検証するゼロトラストID基盤の標準・手法策定

既存OSS(CNCF)

Hugging Face

Safetensors

埋め込みコードを実行しない安全なモデルウェイト保存形式。PyTorch Foundation へ寄贈

既存OSS

IBM / Red Hat

Lightwell

デジタル署名付きパッチにより、OSSサプライチェーン全体へセキュリティを拡張

OSS

Microsoft

MDASH(Multi-model Agentic Scanning Harness)

特化型AIエージェントを連携させ、悪用可能なバグを発見・議論・証明する

既存OSS

SpaceXAI

Grok Build の OSS化

ターミナルベースのAIコーディングエージェントを公開。モデルウェイト公開も計画

OSS

Elastic

検知・調査ツール

AI駆動の検知能力と、プロンプトやクエリを分析官が検査できるエージェント基盤

公式ブログで表明

ここで重要なのは、貢献物の多くがOSAA発足以前から存在するプロジェクトであるという点です。Safetensors、SPIFFE/SPIRE、MDASH はいずれも既存のもので、「OSAAのために新規に作られた」と言えるのは実質的にNVIDIAのNOOAが中心です。したがって現状のOSAAは、新規開発の場というより既存のオープン技術を"AIエージェント防御スタック"として束ね直す枠組みと理解するのが実態に近いでしょう。

なお、Cloudflare・CrowdStrike・Palo Alto Networks・vLLM・LangChain・Mistral など、公式ブログで具体的な提供物が明示されていない企業もあります。これらの拠出内容は現時点で未確認です。Grok Build 自体の機能はxAI Grok Buildの解説で扱っています。

NVIDIA NOOAを実務目線で見る|できること・できないこと

NVIDIA NOOA の公式GitHubリポジトリ NVIDIA-NeMo/labs-OO-Agents

出典:GitHub「NVIDIA-NeMo/labs-OO-Agents」(github.com

NOOAは「安全にエージェントを実行する環境」ではなく、「エージェントを監査可能な形で設計するためのフレームワーク」です。ここを取り違えると危険な使い方につながるため、公式README上の警告まで含めて確認しておく必要があります。

項目

内容

リポジトリ

github.com/NVIDIA-NeMo/labs-OO-Agents

ライセンス

Apache 2.0(商用利用可)

位置づけ

モデル非依存(model-agnostic)のPythonフレームワーク。メソッド本体を ... にすると、その実装をLLMが担うオブジェクト指向のエージェント記述

対応モデル

LiteLLM対応モデル全般(Claude、GPT、Ollamaによるローカル推論、vLLM など)

インストール

uv add "nooa @ git+https://github.com/NVIDIA-NeMo/labs-OO-Agents.git@main"

公表ベンチマーク

CyberGym L1 で 86.8%(GPT-5.5使用・ネットワーク遮断・ルールベースチェック適用の条件下、The Hacker News報)。SWE-bench Verified / Terminal-Bench 2.0 はREADMEで言及があるがスコア詳細は未記載

実質コスト

フレームワーク自体は無償。別途LLM APIの従量課金または自前GPUでの推論コストが発生

見落としてはいけない公式の注意書き

NOOAのREADMEには、「ASTチェックやモジュールのdeny-listは containment boundary(封じ込め境界)ではない」という趣旨の警告が明記されています。NOOAはLLMが生成したコードを実行する設計であるため、実際のセキュリティ境界はOSレベルの隔離(コンテナ、VM、サンドボックス)にしか存在しません。

つまり、NOOAを導入したからエージェントが安全になるのではなく、「NOOAで挙動を監査可能にしつつ、実行そのものは必ず隔離環境で行う」という二段構えが前提になります。エージェントの隔離運用の考え方はAIエージェントのセキュリティ対策ガイドで詳しく整理しています。

OpenAI・Anthropic・Googleはなぜいないのか|公表されていない理由を3つの事実から読み解く

OpenAI・Anthropic・Googleが創設メンバーとして参加するLinux FoundationのAkritesイニシアチブ

出典:The Linux Foundation プレスリリース「Akrites」(linuxfoundation.org

まず前提として、3社とも不参加の理由を公式に表明していません。(2026年7月29日時点)したがって「〜だから不参加」と断定できる根拠は存在しません。一方で、周辺の公表事実を並べると、「AIセキュリティ協業そのものからの離脱」ではなく「オープンウェイト前提という立ち位置への不同意」という構図が浮かび上がります。

事実1:OSAAの3日前に「オープンウェイト擁護書簡」があった

2026年7月24日、米政府に対しダウンロード可能なAIモデル(オープンウェイト)への時期尚早な規制を避けるよう求める公開書簡「Open Weights and American AI Leadership」が公開されました。背景には、中国製オープンモデルの禁止を検討する米ワシントンの動きがあります。

  • 初期署名は25社。NVIDIA、Microsoft、Meta、IBM、Dell、Palantir、a16z、Hugging Face、Y Combinator、Mozilla、Mistral、Linux Foundation など
  • 短期間で50社に倍増し、OpenAI と Google は後追いで署名
  • Anthropic と Amazon は最後まで署名せず

OSAAの創設メンバーは、この書簡の署名企業と大きく重なります。OSAAが「オープンウェイト擁護連合の実装版」という性格を帯びているのは、この時系列から読み取れます。

事実2:3社は「Akrites」には創設メンバーとして参加している

OSAAが基盤とするLinux Foundationの Akrites(2026年6月25日発表)には、OpenAI・Anthropic・Google がいずれも創設メンバーとして参加しています。AkritesはAIによる脆弱性発見の高速化に既存の報告・修正プロセスが追いつかない問題に対処するもので、共有SIRT(セキュリティインシデント対応チーム)と標準化された脆弱性開示プロセスを持ち、メンテナ不在の重要パッケージでは「最後の砦としてのメンテナ」を担います。

この事実は重要です。3社はAI起因のセキュリティ課題に対する業界協業からは降りておらず、OSAAという「オープンモデル前提の枠組み」にだけ名を連ねていない、という整理が成り立ちます。

事実3:Anthropicは「オープンウェイト禁止に反対」と明言している

Anthropic CEOのDario Amodei氏は2026年7月27日、オープンウェイトモデルの禁止は支持しないと明言しています(CNBC)。その上で書簡には署名せず、理由として「広くアクセスできれば防御側が攻撃側より有利になる、という前提に同意できない」という趣旨を述べています。同氏が示した代案は次の3点です。

  1. 強力なチップが権威主義国家に渡らないようにする
  2. 産業規模の蒸留(distillation)を止める
  3. 十分に高性能なモデルは、オープン/クローズドを問わず公開前の安全性テストを義務化する

つまりAnthropicの立場は「反オープン」ではなく、「オープンかクローズドかではなく、能力水準に応じた事前テストで線を引くべき」というものです。この路線は、同社がAIジェイルブレイク深刻度評価フレームワークのような評価基準の標準化を推進してきたことと一貫しています。また、Anthropic自身もProject Glasswingという別のサイバー防衛連携を進めており、OSAAとは参加企業が一部重複しています。

OpenAI側も、クローズドなモデルを限定的な信頼済み組織に提供するGPT-5.5-Cyber / Trusted Access for Cyberという方向でサイバー防御に取り組んでおり、アプローチの違いが可視化された形です。

他のAIセキュリティ団体との違い|5団体の比較

OSAAは「初めてのAIセキュリティ連合」ではありません。すでに複数の枠組みが並存しており、企業の顔ぶれと立ち位置がそれぞれ異なります。

団体

発足

主導・性格

OpenAI

Anthropic

Google

NVIDIA

Frontier Model Forum

2023年

OpenAI・Anthropic・Google・Microsoft主導。フロンティアモデルの安全性、クローズド寄り

×

AI Alliance

2023年12月

Meta・IBM主導。オープンソースAIの推進

×

×

×

未確認

CoSAI(Coalition for Secure AI)

2024年7月

OASISホスト。Secure-by-DesignなAIシステムのガイダンス・ツール

Akrites

2026年6月25日

Linux Foundation。重要OSSの脆弱性を共有SIRTで調整・修正・開示

Open Secure AI Alliance

2026年7月27日

NVIDIA主導。オープンモデル/オープンハーネス前提のエージェント防御スタック

×

×

×

この表から読み取れることは明確です。3社はCoSAIにもAkritesにも参加しており、AI安全に関する協業から距離を置いているわけではありません。分岐点は「防御の基盤をオープンウェイトに置くかどうか」の一点に集約されています。

オープンモデルで防御を作る構想|利点と弱点

オープンモデルとオープンウェイトが安全なAIの基盤だと論じるLinux Foundation公式ブログ

出典:The Linux Foundation 公式ブログ(linuxfoundation.org

この構想の核心は「防御側が自分の管理下で、自分のデータを外に出さずにAIを回せるかどうか」です。Linux Foundationは中立的な協業ハブとしての立場を表明し、オープンウェイト支持の論拠としてアクセス拡大・競争強化・利用者の主権(データと能力を自社で保持しベンダーロックインを回避)の3点を挙げています。

観点

利点

弱点・反論

データの扱い

侵害ログなど外部に出せないデータを自社インフラ内で分析できる

自社でGPU基盤と運用体制を持つ必要がある

透明性

防御ロジックを検査・改変・再現できる

攻撃側も同じモデルを検査でき、安全装置を外して悪用しうる

民主化

予算の少ない組織でも高度な防御能力を持てる

「導入した後に改変・削除・置換されうる」(Action1 Gene Moody氏)という運用面の懸念

単一障害点

分散的な監視により特定ベンダーへの依存を避けられる

責任の所在が曖昧になる。エージェントが権限を逸脱した際の責任ルールが未整備(Exabeam Kevin Kirkwood氏)

実効性

オープン技術の相互運用で標準化が進みやすい

拘束力がなく、実装は各社任せ

NVIDIA公式も「オープンモデルも強力な技術である以上、安全装置の弱体化やサイバー攻撃への転用といった悪用がありうる」とリスク自体は認めた上で、そのリスクはオープン特有ではないと主張しています。

見過ごせない構造的な矛盾

OSAA発足の正当性の根拠となったのは、中国製オープンモデル GLM 5.2 がインシデント対応で実際に役立ったという事実です。ところが、GLMの開発元である Z.ai は創設メンバーに入っていません。同時にOSAA陣営は、中国製オープンモデルを禁止しかねない規制に反対する立場を取っています。「中国モデルの功績を根拠にしながら、中国企業は入れない」という構造は、この連合が地政学と切り離せないことを示しています(The Next Web が指摘)。

生成AI利用全般のリスク整理は生成AIのセキュリティリスクとは?情報漏洩・プロンプトインジェクション・対策にまとめています。

現時点で決まっていないこと|評価を保留すべき5項目

OSAAは発足からまだ日が浅く、組織としての骨格の多くが未公表です。過大評価も過小評価も避けるために、何が決まっていないかを明確にしておきます。

未確定項目

現状

チャーター(憲章)・理事会

公表されていない

技術ワークストリームとロードマップ・納期

未公表

共有の統合リポジトリ

存在しない(各社が自社リポジトリで公開する形)

メンバーの拠出義務・コミット水準

不明

Linux Foundation による正式なプロジェクトホスティング

「中立パートナー」との表明はあるが、正式ホストかは未確認

加えて、OSAAは規格でも標準でもなく、法的な強制力を持ちません。「OSAA準拠」といった訴求が出てきた場合は、その根拠が何を指しているのかを個別に確認する必要があります。

専門家の間でも評価は割れています。Black Hills Information Security の John Strand 氏は「AIが想定境界を脱出する事例が続く中で、この種の取り組みで十分か」と懐疑を示し、Xcape Inc. の John Carberry 氏は「業界アライアンスは競争の外側で安全な枠組みを作れるが、社内ネットワークでの強制は自社のセキュリティチームの仕事だ」と指摘しています。

日本企業への影響と、明日から社内でできる7つの対策

OSAAに参加しなくても、そこで共有される技術は誰でも使えます。むしろ実務上の意味は「アライアンスに入るかどうか」ではなく、「そこで標準化されつつある防御の型を自社に適用するかどうか」にあります。Suzu Labs の Jacob Krell 氏は「ほとんどのセキュリティチームは、いま自社環境で何個のエージェントが動いていて、それが何にアクセスできるかを答えられない」と指摘しており、まずはここが出発点です。

#

やること

対応するOSAA関連技術

難易度

1

社内で稼働中のAIエージェントを棚卸しし、台帳化する

2

各エージェントがアクセスできる範囲(API・ファイル・認証情報)を洗い出す

3

エージェントの実行を必ずコンテナ/VMで隔離する

NOOAの公式警告に準拠

4

社内で配布するモデルウェイトを Safetensors 形式に統一する

Safetensors

5

エージェントに人間ユーザーとは別の機械IDを付与し、検証可能にする

SPIFFE / SPIRE

中〜高

6

パッチ・依存ライブラリの署名検証を導入する

Lightwell/OpenSSF

7

エージェントの行動ログを、後から第三者が追跡できる形で保全する

NOOA/Elastic の検査可能なエージェント基盤

とくに 3番のOSレベル隔離は、NOOAの公式ドキュメントが「実質的な唯一の境界」と位置づけている項目です。プロンプト側のガードレールやコード検査だけで安全性を担保している運用があれば、優先的に見直す価値があります。

未把握のまま部門ごとに導入されたAIの問題はシャドーAIとは|Gartner調査・IPA10大脅威3位、エージェント単体の安全設定はOpenClawセキュリティ設定ガイド、SOC運用側の視点はサイバーセキュリティ業界のAI活用事例で補完できます。

いま注目すべき組織/急いで動かなくてよい組織

注目度を上げるべき組織

  • 自社インフラでAIエージェントを本番稼働させている企業 — NOOAの警告は、そのままエージェント実行環境の設計監査の指針になります
  • 機密性の高いログを外部SaaSに出せない業種(金融・医療・公共・防衛関連) — 自社内でオープンウェイトモデルを回す構成は、この制約への直接的な解になります
  • セキュリティ製品の調達・選定に関わる担当者 — 参加企業の顔ぶれは、今後の製品ロードマップの方向性を示す先行指標になります
  • モデルを社内配布している開発組織 — Safetensors形式への統一は、コストが低く効果が明確な施策です
  • OSS方針を策定中の情報システム部門 — オープンウェイトを巡る規制議論は米国の政策動向に直結しており、調達方針に影響する可能性があります

いま急いで動かなくてよい組織

  • AIをブラウザ版のチャットとしてのみ利用している企業 — エージェントに権限を渡していない段階では、OSAAの技術は直接効きません
  • 自社でモデルをホストする予定がない組織 — Safetensors やモデル配布の話は当面関係が薄くなります
  • 「OSAAが標準になるか」を判断材料にしたい組織 — チャーターもロードマップも未公表の現時点では、判断できる材料が揃っていません。数か月単位で様子を見て問題ありません
  • クローズドAPIのみで運用が完結している組織 — ただし、エージェントの権限管理と実行隔離という論点自体はモデルの提供形態を問わず必要です

よくある質問(FAQ)

Q. OSAAに参加するとどんなメリットがありますか。費用はかかりますか。

参加は問い合わせページからの関心表明ベースで、門戸は開かれています。ただし現時点で会費・拠出義務の有無、参加企業に付与される権利は公表されていません。メリットが明文化されていない以上、「参加する」より「公開された技術を使う」ほうが確実です。

Q. OSAAが出すツールは商用利用できますか。

中心となるNVIDIAのNOOAは Apache 2.0 で公開されており、商用利用が可能です。Safetensors、SPIFFE/SPIRE なども一般的なオープンライセンスのOSSです。ただし、NOOAを動かすには別途LLMのAPI費用または自前GPUの推論コストがかかります。

Q. OSAAは業界標準になりますか。

現時点では判断できません。憲章・理事会・技術ワークストリームのいずれも未公表で、共有の統合リポジトリも存在しないためです。「標準」ではなく「オープン技術を持ち寄る場」として評価するのが妥当な段階です。

Q. OpenAI・Anthropic・Googleは今後参加する可能性はありますか。

3社とも不参加の理由を公表していないため、将来の参加可否も不明です。ただしオープンウェイト擁護書簡にOpenAIとGoogleが後から署名した経緯があり、状況が変われば追加参加の余地はあると考えられます。Anthropicについては、公開前の安全性テスト義務化を求める同社の立場とOSAAの前提に隔たりがあり、他社より距離が大きい可能性があります。

Q. 日本のAI事業者ガイドラインとの整合性はどうなりますか。

OSAA側から日本の制度への言及は現時点でありません。ただしエージェントのID管理・実行隔離・ログ保全といった要素は、国内で求められる管理策とも重なる領域です(この対応関係は筆者による整理であり、公式見解ではありません)。

Q. NOOAを入れればエージェントは安全になりますか。

なりません。公式READMEは「ASTチェックやモジュールのdeny-listは封じ込め境界ではない」と明記しており、実際の境界はコンテナやVMなどOSレベルの隔離にあります。NOOAは安全にするための道具ではなく、挙動を監査可能にするための道具です。

まとめ

Open Secure AI Alliance は、2026年7月27日にNVIDIA主導で発足した、AIエージェント防御をオープンな技術で作るための業界連合です。

  • 性格:製品でも規格でもなく、参加各社がオープンライセンスで防御ツールを持ち寄る枠組み
  • 規模:報道は「37社」だが、公式リストは2026年7月29日時点で50社超に拡大している
  • 中身:NOOA(NVIDIA・新規)、Safetensors、SPIFFE/SPIRE、Lightwell、MDASH、Grok Build のOSS化など。新規性はNOOAが中心
  • 不在の3社:OpenAI・Anthropic・Google は理由を公表していないが、Akrites や CoSAI には参加済み。分岐点は「オープンウェイトを防御の基盤に置くか」の一点
  • 未確定:憲章・理事会・ロードマップ・拠出義務・共有リポジトリはいずれも未公表
  • 実務への落とし込み:エージェントの棚卸し、OSレベル隔離、Safetensors統一、機械IDの付与、ログ保全から着手する

専門家が繰り返し指摘しているとおり、アライアンスに入っても自社が守られるわけではありません。OSAAの意義は、これまで各社バラバラだったエージェント防御の部品が、共通の型として参照できるようになった点にあります。まずは自社で動いているエージェントの数と権限を把握するところから始めてください。

情報は流動的です。参加企業リストや公開技術の内容は、NVIDIA公式ブログおよび各プロジェクトのリポジトリで随時更新されるため、定期的な確認をおすすめします。

参考(一次情報)

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この記事の著者

AI革命

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編集部

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