Google Lyria 3.5とは?Flow Musicの最新音楽生成AI|最大3分・日本語ボーカル・Lyria 3 Proとの違い・料金と使い方【2026年7月最新】

この記事のポイント
Google Lyria 3.5は、2026年7月29日にGoogle Flow Musicへ搭載された最新の音楽生成AIモデルです。Lyria 3 Proとの違い、最大3分の可変長生成、日本語ボーカルの実力、料金プランとGoogle AI Pro/Ultraとの関係、商用利用と著作権の注意点まで、導入判断に必要な情報を整理します。
Google Lyria 3.5は、Google DeepMindが開発し、2026年7月29日(現地時間)から音楽生成サービス「Google Flow Music」で提供が始まった最新の音楽生成AIモデルです。テキストや画像から最長3分のボーカル入り楽曲を生成でき、日本語ボーカルにも対応しています。
前世代のLyria 3 Proが「3分のフル楽曲を作れるようにした世代」だとすれば、Lyria 3.5は「作った曲を実務で使えるようにした世代」です。ボーカルの表現力・発音精度、歌詞の構成把握、テンポと長さのコントロールが強化され、Flow Music側でもBPM指定・特定セクションだけの再生成・パート別(ステム)書き出しといった編集機能が使えるようになりました。
導入を検討するうえで押さえておきたい事実は次の5点です。
- Lyria 3.5が使えるのは現時点でGoogle Flow Musicのみ。動画生成の「Google Flow」とは別サービスで、APIも未提供
- 生成できるのは30秒〜最長3分の可変長。日本語を含む多言語ボーカルに対応
- Google AI Proを契約していれば追加費用なしでFlow MusicのPlusプラン相当が使える
- 全トラックに電子透かしSynthIDが入り、圧縮後も残存すると報告されている
- 日本語ボーカルはBGM・SNS用途なら実用水準。ただし発音の粗が残り、聴かせる楽曲では追い込みが必要
動画やSNS用のBGMを内製したい制作者・マーケター、AI作曲を試したい音楽クリエイター、そして業務利用の法務判断が必要な企業担当者に向けて、料金・機能・制約・競合との違いを具体的に見ていきます。
※本記事の料金・仕様は2026年7月31日時点で確認できた情報に基づきます。Flow Musicは更新頻度が高いため、契約前に公式ページで最新条件を確認してください。
Google Lyria 3.5とは|Google DeepMindの最新音楽生成モデル

Lyria 3.5は、テキストプロンプトや画像から、ボーカル入りの楽曲を丸ごと生成できるGoogle DeepMindの音楽生成AIモデルです。現時点では単体のアプリではなく、Google Labs傘下の音楽生成サービス「Google Flow Music」に搭載されるモデルとして提供されています。
Googleの公式ブログでは、Lyria 3.5の位置づけを次のように説明しています。
"We're launching Lyria 3.5 in Google Flow Music, with advances across musicality, lyrics, vocals, and creative control."
(音楽性・歌詞・ボーカル・制作コントロールの各面を強化したLyria 3.5を、Google Flow Musicで提供開始します)
— blog.google
DeepMindのモデルページでも、Lyria 3.5は「Our latest model with improved vocals, musicality, and variable song lengths(ボーカル・音楽性・可変長生成を改善した最新モデル)」と紹介されています。
基本情報まとめ
項目 | 内容 |
|---|---|
正式名称 | Lyria 3.5 |
開発元 | Google DeepMind(提供はGoogle Labs / Google Flow Music) |
提供開始 | 2026年7月29日(現地時間) |
種別 | テキスト・画像から楽曲(ボーカル入り)を生成する音楽生成AIモデル |
主なアクセス先 | Google Flow Music(Web / iOSアプリ) |
最大生成長 | 最長3分(30秒〜3分の可変長) |
出力形式 | MP3 / M4A / WAV ほか(48kHzステレオ) |
電子透かし | SynthID(全トラックに付与) |
API提供 | 現時点では未提供(API側はLyria 3 / Lyria 3 Pro) |
利用条件 | 18歳以上・Googleアカウント・対応地域(日本は対応) |
Google Flow Musicとは(動画の「Google Flow」とは別物)
Google Flow Musicは、Googleが2026年2月に買収した音楽生成サービス「ProducerAI」を、Google Labs傘下でリブランドしたWebサービスです。2026年4月18日に「Google Flow Music」として一般公開され、以降Lyria 3系モデルを搭載しています。
ここで混同しやすいのが、動画生成の「Google Flow」との違いです。名前が似ていますが、扱うものがまったく違います。
サービス名 | 扱うもの | 中核モデル |
|---|---|---|
Google Flow | 動画生成・映像制作 | Veo系 |
Google Flow Music | 音楽生成(ボーカル入り楽曲) | Lyria 3.5 |
検索や記事で「Flow」とだけ書かれている場合、動画側を指していることが多いため、音楽生成を探しているなら「Flow Music」まで含めて確認してください。
なお、Lyriaシリーズ自体はFlow Music専用ではなく、GeminiやYouTube Shorts(Dream Track)、Google Vids、Google AI Studio経由でも一部が利用できます。ただし最新のLyria 3.5が使えるのは、現時点ではFlow Musicのみです。Google全体のAIサービス体系についてはGeminiとはも参考になります。
Lyria 3.5で何が変わったのか|公式が挙げる4つの強化点
Googleが公式に挙げているLyria 3.5の改善点は、音楽性・歌詞・ボーカル・制作コントロールの4領域です。それぞれ、実務上どう効くのかまで整理します。
強化点 | 公式の説明(要約) | 実務上の意味 |
|---|---|---|
音楽性(Musicality) | より豊かで複雑なメロディ構造を、より自然な響きで生成 | サビの盛り上がりや展開が単調になりにくく、「AIっぽさ」が減る |
歌詞(Lyrics) | プロンプト忠実度と曲構成の把握が向上 | 指示したテーマ・キーワードが歌詞に反映されやすく、Aメロ/サビの役割分担が破綻しにくい |
ボーカル(Vocals) | より現実的で感情のニュアンスがある歌声、発音精度も改善 | 日本語を含む多言語ボーカルの実用度が上がる |
制作コントロール(Creative Control) | テンポと長さをより簡単に制御できる | 動画尺に合わせた長さ調整、既存トラックとのBPM合わせがしやすい |
特に大きいのは「テンポと長さの制御」です。従来のAI作曲は「良い曲は出るが、長さもテンポも運任せ」という側面がありました。BPMと尺を指定できると、既存の映像や楽曲プロジェクトに後から差し込む用途で一気に扱いやすくなります。
一方で、公式ブログが明記しているのはこの4項目までです。セクション単位の再生成やステム書き出しといった編集系機能は、Google公式の発表文ではなく実際に触ったメディアの検証記事で確認されている内容が中心であり、公式仕様と検証ベースの情報は区別して読む必要があります。
Lyria 3 / Lyria 3 Pro / Lyria 3.5 の違いを比較

出典: Google DeepMind 公式 Lyria モデルページ
Lyria 3は「短尺クリップ用」、Lyria 3 Proは「3分のフル楽曲を構造付きで作る」世代、Lyria 3.5は「作った曲を編集して実務に流し込む」世代です。多くの速報記事は公式の4項目を並べるだけで世代差に触れていないため、ここを押さえておくと選択を誤りません。
比較ポイント | Lyria 3(Clip) | Lyria 3 Pro | Lyria 3.5 |
|---|---|---|---|
登場時期 | 2026年3〜4月 | 2026年3月25日 | 2026年7月29日 |
最大長 | 最大30秒 | 最大3分 | 30秒〜3分(可変長制御が容易に) |
主用途 | SNS素材・プロトタイプ | フル楽曲・構成指定 | フル楽曲+編集・DAW連携 |
曲構成の理解 | 限定的 | イントロ/バース/コーラス/ブリッジ | 歌詞面の構成把握がさらに向上 |
ボーカル | 対応 | 対応 | 感情表現・発音精度が向上 |
テンポ制御 | — | — | BPM指定に対応(Flow Music上) |
部分編集 | 不可 | 不可 | 特定セクションのみ再生成が可能 |
ステム書き出し | 未確認 | 未確認 | フル尺のパート別書き出しに対応 |
提供先 | Flow Music / Vertex AI / Gemini / Vids | Flow Music / Vertex AI / Gemini / Vids | Flow Music のみ(APIは未提供) |
使い分けの目安
- 開発者が自社サービスに音楽生成を組み込みたい → 現時点ではVertex AI経由のLyria 3 / Lyria 3 Pro一択(Lyria 3.5はAPI未提供)
- 人が触って曲を仕上げたい → Flow MusicでLyria 3.5
- 15〜30秒のSNS用BGMを大量に量産したい → 短尺特化のLyria 3クリップ、またはFlow Musicの短尺生成
つまり「3.5だから常に最善」ではなく、組み込み用途では依然としてLyria 3 Proが現行の選択肢である点は注意が必要です。
実務で効く新機能3つ|セクション再生成・BPM指定・ステム書き出し
Lyria 3.5世代のFlow Musicで実務的に大きいのは、「一発生成」から「編集できる制作環境」へ変わった点です。次の3つは、AI作曲を仕事で使うかどうかの分岐点になります。
1. セクション単位の再生成(Selective Section Painting)
トラック全体をやり直さず、気に入らない一部分だけを選んで再生成できる機能です。「サビは完璧だがBメロだけ違う」というときに、ゼロからガチャを引き直す必要がなくなります。短いメロディをフル楽曲に拡張する使い方も報告されています。
従来のAI作曲最大のストレスは「99%良いのに1箇所が惜しい曲を捨てる」ことでした。部分修正ができるだけで、採用率は実感として大きく変わります。
※この機能名・仕様は海外メディアの検証報道が中心で、Googleの発表文中での明記は確認できていません。UI上の名称は変わる可能性があります。
2. BPM指定
具体的なテンポ(BPM)を数値で指定できます。映像編集でカット割りとビートを合わせたい場合や、既存プロジェクトのテンポに合わせて差し込みたい場合に必須の機能です。検証記事ではミリ秒単位で安定していたと報告されています。
3. フル尺のステム書き出し
ボーカル/ドラム/その他楽器などをパート別に分離して書き出せるとされています。これができると、DAW(Logic、Ableton Live、Cubaseなど)に持ち込んで、
- ボーカルだけ残して伴奏を差し替える
- ドラムを自作パターンに置換する
- 特定パートだけボリューム・エフェクトを調整する
といった加工が現実的になります。「AIが出した完成品をそのまま使う」から「AIをアレンジ素材の供給源として使う」へ用途が広がるのが、この機能の本質です。
想定ワークフロー(動画BGM制作の例)
- 動画の尺とテンポ感を決め、Flow Musicで「90秒/120BPM/ローファイヒップホップ/ボーカルなし」と指定して生成
- 2バリエーションが出るので、方向性が近い方を採用
- 気に入らない中盤だけセクション再生成で差し替え
- ステム書き出しでドラム/メロディを分離
- DAWまたは動画編集ソフトに読み込み、ナレーション部分だけ伴奏を薄くする
動画側のツール選定はAI動画ツールおすすめも併せて確認すると全体像がつかみやすくなります。
Google Flow Musicの料金プラン|Google AI Pro/Ultra契約者は追加費用なし

Google AI Pro(Gemini等の有料プラン)をすでに契約している人は、Flow Musicに追加課金せずPlusプラン相当の特典が使えます。ここが他の音楽生成AIに対する最大のコスト優位です。
Flow Music単体のサブスクリプション
Flow Musicは無料枠+3段階の有料プランという構成です。金額については、月払いと年払い(約25%割引)で異なる数字が各種メディアで報じられています。
プラン | 月額(月払い・目安) | 月額(年払い換算・目安) | 月間クレジットの目安 | 生成曲数の目安 |
|---|---|---|---|---|
無料 | $0 | $0 | 毎日自動補充(1日あたり数十クレジット) | 1日約10曲 |
Starter | 約$8 | 約$6 | 約3,000クレジット+日次補充 | 月約600曲 |
Plus | 約$24 | 約$18 | 約10,000クレジット+日次補充 | 月約2,000曲 |
Member | 約$64 | 約$48 | 約30,000クレジット+日次補充 | 月約6,000曲 |
⚠️ 公式料金ページ(flowmusic.app/pricing)は外部からの自動取得ができず、上記の金額・クレジット数は複数メディアの記載を突き合わせた参考値です。$8/$24/$64は月払い、$6/$18/$48は年払い時の月額換算である可能性が高いと考えられますが、契約前に必ず公式ページで実際の請求額を確認してください。日本円換算は為替により変動します(1ドル≒163円換算でStarterが月1,000円前後)。
同時に生成できるトラック数もプランで異なり、無料は2トラック、最上位のMemberでは16トラックまで並列生成できるとされています。大量に案を出して選びたい制作現場ほど上位プランの価値が出ます。
Google AIメンバーシップとの対応(公式ヘルプで確認できる内容)
Google Flowの公式ヘルプでは、Google AIの各プラン契約者に対してFlow Musicの特典が付くことが明記されています。
Google AIプラン | 付与されるFlow Musicの特典 |
|---|---|
Google AI Plus | Starterプラン相当 |
Google AI Pro | Plusプラン相当 |
Google AI Ultra | Memberプラン相当 |
出典: AI クレジットと Google Flow Music のサブスクリプション プランを管理する — Google Flow ヘルプ
つまり、Gemini目的でGoogle AI Proを契約している人は、実質的に月$24相当のFlow Music Plusプランを追加費用なしで使える計算になります。すでにGoogle AI Pro/Ultraを契約しているなら、Flow Musicに単独課金する必要はありません。まず自分のGoogleアカウントの契約状況を確認してください。Google AI各プランの中身はGeminiとはで整理しています。
無料プランでLyria 3.5は使えるのか
ここは現時点で情報が割れています。「既存ユーザーは追加費用なしでLyria 3.5を使える」と報じるメディアがある一方、Google公式ヘルプには「より多くのクレジット、生成、最新モデルを利用するにはアップグレードが必要」という趣旨の記述があります。
実務的な結論としては、無料枠で試して、UI上でLyria 3.5が選択できるか自分の環境で確認するのが確実です。仕事で使う前提なら、はじめから有料プラン(またはGoogle AI Pro)での検証をおすすめします。
Google Lyria 3.5の使い方|Flow Musicでの生成手順
Flow Musicは登録から生成まで数分で完結します。専門知識は不要で、楽器経験も必要ありません。
基本の流れ
- flowmusic.app にアクセスし、Googleアカウントでログイン(18歳以上・対応地域であること)
- プロンプトを入力する — ジャンル、テンポ、楽器編成、ボーカルの性別・人数、言語、曲の雰囲気を書く
- 必要に応じて詳細を指定 — BPM、曲の長さ(30秒〜3分)、インストのみ(ボーカルなし)などを設定
- 生成する — 1リクエストにつき2バリエーションが出力される
- 編集する — 気に入らないセクションだけ再生成、歌詞の直接書き換え、リミックス
- 書き出す — MP3 / M4A / WAV でダウンロード。パート別(ステム)書き出しも可能
プロンプトのコツ
漠然と「かっこいい曲」と書くより、構成要素を分けて具体的に書くほうが精度が上がります。
- 悪い例:「明るい曲」
- 良い例:「120BPMのシティポップ。女性ボーカル1人、日本語。イントロはエレピ、サビでブラスが入る。夏の夕方の情景。90秒」
Lyria 3.5では歌詞のプロンプト忠実度が向上しているため、歌詞に入れたいキーワードやテーマを明示的に書くと反映されやすくなっています。歌詞を自分で用意して直接書き換えることもできます。
画像から音楽を生成する
Flow Musicは画像をアップロードして、そのイメージから楽曲を生成する(Image-to-Music)機能にも対応しています。写真の雰囲気に合ったBGMが必要なときや、プロンプトの言語化に詰まったときに有効です。実際の検証では、料理写真から詩的な日本語歌詞のバイオリン主体の楽曲が生成された例が報告されています。
そのほか、プレイリスト作成、ミュージックビデオ生成、共同編集用のSpaces、投票でクレジットを獲得できるTurntableなど、Flow Music側の機能も用意されています。
日本語ボーカルの実力は?|実用レベル、ただし発音に粗は残る
日本語ボーカルは「SNSや動画BGMには十分実用的だが、商業音源として無加工で通すには発音の粗が残る」レベルです。
日本語ボーカル対応は、DeepMindが「多言語で自然なニュアンスの歌声を生成できる」と説明している通り公式仕様です。実際に検証したGIGAZINEの報告では、「女性アイドルグループが歌う元気な夏の曲・日本語ボーカル・複数ボーカル」というプロンプトから、多重ハーモニーとソロパートを含むアイドル楽曲らしい構成が生成されたとされています。
一方で、同検証では「よく聴くと発音の不自然さが一部残る」とも評価されています。この点は正直に押さえておくべきで、
- BGM・SNS用途・社内利用 → 問題になりにくい
- リード楽曲・歌詞を聴かせる楽曲・商用リリース → ボーカルだけ差し替える、または歌詞を発音しやすい言葉に調整する対処が必要
という切り分けが現実的です。ステム書き出しに対応したことで、「伴奏はAI、ボーカルは人間」というハイブリッド制作が取りやすくなったのは、日本語楽曲を作る上での大きな前進です。
歌声そのものの品質を追い込みたい場合は、音声合成に特化したElevenLabs Voice Design v3のようなツールとの組み合わせも検討の余地があります。
Lyria 3.5でできないこと・制約

出典: Google Cloud 公式 Vertex AI 音楽生成ドキュメント
導入判断のために、現時点で「できないこと」を明確にしておきます。
制約 | 内容 |
|---|---|
最大3分まで | フルアルバム尺や10分超の長尺BGMは生成できない。Stable Audio 3.0(最大6分)より短い |
API未提供 | 2026年7月31日時点でLyria 3.5のAPIは提供されていない。自社サービス組み込みはLyria 3 / Lyria 3 Proを使う |
日本語発音の粗 | 実用水準だが、聴かせる楽曲では追い込みが必要 |
クレジット制 | 無制限生成ではない。プランに応じた上限がある |
同時生成数の制限 | 無料は2トラック、上位プランで増加 |
利用条件 | 18歳以上・Googleアカウント必須・対応地域限定(日本は対象) |
モバイルアプリ | iOS先行で段階的に提供。Android版の提供状況は要確認 |
学習データ非公表 | Lyria 3については「YouTubeおよびGoogleが権利を持つ素材で学習」と説明されたが、3.5の学習ソースについてGoogleは明言していない |
特に企業導入では、「API未提供」と「学習データ未公表」の2点が判断材料になります。前者はワークフロー自動化の可否、後者は法務レビューの通しやすさに直結します。
商用利用・著作権・SynthID電子透かしの現在地
Flow Musicで生成した楽曲には商用利用権が付与されると各種メディアで報じられていますが、Google公式ヘルプでの明文表現までは確認できていません。業務利用する場合は、必ず契約時点の利用規約を自分で確認してください。
SynthID電子透かし
DeepMindは、生成された全トラックに知覚できない電子透かし「SynthID」を埋め込んでいると明記しています。
"All of our tracks are imperceptibly watermarked with SynthID technology, allowing you to detect whether music has been created or edited using AI."
検証報告では、97kbpsのMP3に圧縮してもSynthIDが残存したとされ、圧縮・速度変更・再録音を経ても検出可能とする報道もあります。つまり「AI生成であることを隠して使う」ことは想定されていません。プラットフォーム側のAI生成コンテンツ表示ポリシーが強化される流れの中では、むしろ透かしがあることが安心材料になる場面もあります。
C2PA(コンテンツクレデンシャル)にも対応しているとされますが、第三者検証ではメタデータは存在するものの検証(validate)は通らなかったという報告もあり、実装は発展途上と見るのが妥当です。同じ検証で、生成物のメタデータに旧名称「Producer.ai Generated Audio」が残っていた例も報告されています。納品物のメタデータを厳密に管理する必要がある業務では、書き出し後に確認してください。
学習データと訴訟リスクの比較
音楽生成AIの法務リスクは、学習データの適法性に集約されます。この点でGoogleは相対的に有利な立場にあります。
サービス | 学習データについての説明 | 主要な訴訟状況(2026年7月時点) |
|---|---|---|
Google Flow Music(Lyria) | Lyria 3は「YouTubeおよびGoogleが使用権を持つ素材で学習」と説明。3.5は未公表 | 主要レーベルとの係争は報じられていない |
Suno | — | Warnerと2025年11月に和解。Sonyとは係争継続。ドイツGEMAとの訴訟はミュンヘン地裁で2026年7月31日に判決が予定されており、結果は要確認 |
Udio | — | Universalと2025年10月に和解、Merlin/Kobalt/NMPAとライセンス。Sonyとは係争継続 |
業界全体としては「訴訟フェーズからライセンス契約フェーズ」への移行が進んでいますが、Sonyのみが両社との係争を続けている点が2026年時点の特徴です。企業がブランド広告や商用リリースで使う場合、この差は無視できません。
なお、AI生成物の著作権帰属は国・地域で解釈が分かれるグレーゾーンであり、サービス側が商用利用を認めていても、第三者権利を侵害しないことまで保証されるわけではありません。音楽業界全体のAI活用と権利処理の動向は音楽・レコード業界のAI活用事例で整理しています。
Suno・Udio・ElevenLabs Music・Stable Audioとの比較

出典: Suno 公式サイト
音質の絶対値ではSunoが依然として評価が高い一方、Lyria 3.5は「法務リスクの低さ × Google AIプランに含まれるコスパ × 実務向けの編集機能」で選ばれるモデルです。
サービス | 最大長 | 強み | 弱み・注意点 |
|---|---|---|---|
Google Flow Music(Lyria 3.5) | 3分 | SynthID+C2PA対応、Google AI Pro/Ultraに同梱、無料枠あり、BPM指定・セクション再生成・ステム書き出し | API未提供、日本語発音に粗、3.5の学習データ未公表 |
— | ユーザー数・コミュニティ評価が最大級。曲としての完成度が高い | Sonyとの係争継続、欧州でも訴訟。法務レビューが通りにくい場合がある | |
Udio | — | エレクトロ系に強く、ベース表現とステム分離に定評 | Sonyとの係争継続 |
— | ジャンル切り替えが柔軟。2026年5月に料金を大幅引き下げ | 音楽特化サービスとしては後発 | |
6分 | 最大6分の長尺、オープンウェイト、ライセンス条件が明確 | ボーカル品質は用途による |
選び分けの基準
- すでにGoogle AI Pro/Ultraを契約している → 追加費用ゼロで使えるFlow Music(Lyria 3.5)から試す
- 企業案件・広告で使う、法務レビューが厳しい → Lyria 3.5、またはライセンス条件が明示されたStable Audio
- とにかく曲の完成度を優先したい個人制作 → Suno系も候補に入れて聴き比べる
- 10分級の長尺BGMが必要 → 3分上限のLyria 3.5では足りない。Stable Audio 3.0など長尺対応を検討
- 自社プロダクトへの組み込み(API) → Vertex AIのLyria 3 / Lyria 3 Pro
用途別おすすめ早見表
用途 | Lyria 3.5の適性 | 補足 |
|---|---|---|
YouTube・SNS動画のBGM | ◎ | 3分以内で足り、BPM指定で映像に合わせやすい |
店舗・イベント用の環境BGM | ○ | 3分制限があるためループ・連結の工夫が必要 |
広告・企業ブランド案件 | ◎ | 学習データの立て付けとSynthIDで説明責任を果たしやすい |
日本語ボーカル入りのリード楽曲 | △ | 発音の粗が残る。ボーカル差し替え前提なら○ |
ゲーム・アプリへの動的な音楽組み込み | △ | Lyria 3.5はAPI未提供。Lyria 3 Proを検討 |
デモ・楽曲アイデア出し | ◎ | 1リクエストで2案、セクション再生成で追い込める |
10分超の長尺コンテンツ | × | 最大3分の制約 |
こんな人におすすめ
- すでにGoogle AI Pro / Ultraを契約している人 — 追加費用なしでPlus/Member相当の枠が使える。試さない理由がほぼない
- 動画・SNSコンテンツを日常的に作っていて、BGMを内製したい人 — BPM指定と尺コントロールで映像に合わせやすい
- 企業の広報・マーケ担当で、法務的な説明責任が求められる人 — 学習データの立て付けとSynthID・C2PA対応が説明材料になる
- DAWを使うクリエイターで、AIをアレンジ素材として使いたい人 — ステム書き出しとセクション再生成が効く
- 日本語詞の楽曲アイデアを大量に出したい人 — 日本語ボーカル対応+1リクエスト2案で試行回数を稼げる
おすすめしない人
- 自社サービスに音楽生成を組み込みたい開発者 — Lyria 3.5は現時点でAPI未提供。Vertex AIのLyria 3 / Lyria 3 Proを使うことになる
- 10分を超える長尺BGMが必要な人 — 最大3分の制約は当面変わらない見込み
- 日本語ボーカルを無加工で商業リリースしたい人 — 発音の粗が残るため、追い込み工程が必要
- 完全にオフライン・オンプレミスで動かしたい人 — クラウド専用サービス。オープンウェイト系が必要ならStable Audio系を検討
- AI生成であることを隠して使いたい人 — 全トラックにSynthIDが入るため、そもそも用途に合わない
よくある質問(FAQ)
Q. Lyria 3.5は無料で使えますか?
A. Google Flow Musicには無料枠があり、毎日クレジットが自動補充されます。ただし公式ヘルプには「より多くのクレジット・生成・最新モデルを使うにはアップグレードが必要」という趣旨の記述があり、無料枠でLyria 3.5が選べるかは環境により異なる可能性があります。実際にログインしてモデル選択を確認するのが確実です。
Q. Google AI Proを契約していれば、Flow Musicに別途課金は必要ですか?
A. 公式ヘルプによれば、Google AI Pro契約者にはFlow MusicのPlusプラン相当の特典が付与されます。追加のサブスクリプション契約は不要です(Google AI PlusはStarter相当、UltraはMember相当)。
Q. Lyria 3.5をAPIから呼び出せますか?
A. 2026年7月31日時点では提供されていません。Vertex AIで公開プレビュー中なのはLyria 3およびLyria 3 Proで、開発者向け価格ページにもこの2モデルが掲載されています。3.5のAPI提供時期についてのアナウンスは出ていません。
Q. 生成した曲は商用利用できますか?
A. 商用利用権が付与されると複数のメディアが報じていますが、Google公式ヘルプでの明文表現までは確認できていません。業務利用する場合は、契約時点のFlow Musicの利用規約を必ず自分で確認してください。また、サービス側が商用利用を認めていても、第三者の権利を侵害しないことまで保証されるわけではありません。
Q. SynthIDの電子透かしは消せますか?
A. 消すことは想定されていません。検証では97kbpsのMP3への圧縮後も残存したと報告されており、圧縮・速度変更・再録音を経ても検出可能とされています。AI生成物であることの開示が求められる場面では、むしろ証跡として機能します。
Q. 日本語の歌詞をこちらで用意できますか?
A. Flow MusicのUI上で歌詞を直接書き換えられます。Lyria 3.5は歌詞のプロンプト忠実度が向上しているため、指定した語句や曲構成が反映されやすくなっています。ただし発音の自然さは日本語の語彙によって差が出ます。
Q. 「Google Flow」と「Google Flow Music」は同じサービスですか?
A. 別サービスです。Google Flowは動画生成(Veo系)、Google Flow Musicは音楽生成(Lyria系)を扱います。Lyria 3.5が使えるのは後者です。
Q. 生成した曲の長さは指定できますか?
A. 30秒から最長3分の範囲で指定できます。Lyria 3.5では長さとテンポのコントロールが強化点として公式に挙げられており、BPMの数値指定にも対応しているとされています。
まとめ
Google Lyria 3.5は、「AIが曲を作れる」段階から「AIで作った曲を仕事で使える」段階へ進めたモデルです。ボーカルと歌詞の品質向上に加え、BPM指定・セクション単位の再生成・ステム書き出しといった編集機能が揃ったことで、動画BGMやデモ制作のワークフローに現実的に組み込めるようになりました。
導入判断の要点を整理すると、次の通りです。
- 最大の強みはコスパと法務面 — Google AI Pro/Ultra契約者は追加費用なしで使え、学習データの立て付けとSynthIDが説明材料になる
- 最大の弱点はAPI未提供と3分上限 — 組み込み用途はLyria 3 / Lyria 3 Pro、長尺は別サービスを検討
- 日本語ボーカルは実用水準だが完璧ではない — BGM用途なら十分、聴かせる楽曲なら追い込みが必要
まずは無料枠でプロンプトを2〜3本試し、自分の用途で「そのまま使える品質か、加工前提か」を確かめるのが最短の判断方法です。競合の音質と比べたい場合はSunoとは、料金重視ならElevenLabs Music v2、長尺・ライセンス重視ならStable Audio 3.0も併せて比較してください。
この記事の著者

AI革命
編集部
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