AI活用事例2026年10月更新

音楽・レコード業界のAI活用事例 2026|AI作曲・楽曲推薦・権利管理AIを徹底解説

公開日: 2026/05/08
更新日: 2026/10/31
音楽・レコード業界のAI活用事例 2026|AI作曲・楽曲推薦・権利管理AIを徹底解説

この記事のポイント

音楽・レコード業界のAI活用を「制作・推薦・権利管理」の3領域で整理。Suno v6、UMG×ElevenLabs、GEMA対Suno判決、Spotify・YouTube Music・DeezerのAI楽曲対応、JASRACの管理方針まで2026年10月時点の動きをまとめ、立場別のツール選びと注意点を解説します。

音楽・レコード業界のAI活用は「制作(作曲・歌声・マスタリング)」「推薦(配信プラットフォーム)」「権利管理(著作権・A&R)」の3領域で同時に進んでいます。2026年は、ライセンス済みデータで学習した「公認のAI音楽」が広がる一方で、配信各社がAI楽曲の表示・推薦除外を強めた年です。

2026年9月には Suno が Warner Music Group などのライセンスデータで学習した v6 を公開し、Universal Music Group(UMG)は ElevenLabs やゲーム向けの TYGER と提携しました。一方で、Sony Music と UMG は Suno を再び提訴し、ドイツでは GEMA が Suno に一審で勝訴しています。配信側では Spotify が AI生成のスパム曲5,000万曲超を推薦から外し、YouTube Music も AI生成楽曲のラベル表示を始めました。

この記事でわかること

  • 音楽業界AIの3領域(制作・推薦・権利管理)の全体像
  • 2025〜2026年の構造変化(訴訟→和解→ライセンス契約)と、メジャー3社×AI企業の現在の関係
  • AI作曲ツール8種(Suno・Udio・SOUNDRAW・AIVA・Stable Audio・Eleven Music・Boomy・Google Lyria 3.5)の比較
  • Suno v6 の変更点と、2026年10月時点の料金・ダウンロード上限
  • Spotify・YouTube Music・Deezer・Apple Music の AI楽曲への対応
  • Sony の学習元特定技術、Spotify AI Credits、ライセンス契約の5つの型
  • JASRAC の管理方針、GEMA 判決など各国の違い
  • 立場別のツールの選び方と導入コスト

誰向けの記事か

  • レコード会社・音楽出版社のA&R・デジタル戦略・法務担当者
  • インディーアーティスト・トラックメイカー・作曲家
  • 映像・ゲーム・広告制作で楽曲を発注/自作する制作者
  • 音楽教育機関・教育系AIサービスの企画者
  • 音楽×AI領域でBtoBのソリューション提供を考えているベンダー

音楽業界のAI活用を3領域で理解する

現時点で音楽・レコード業界のAI活用は、おおむね次の3領域に分けられます。デロイト トーマツの業界整理でも、クリエイター・レコード会社・配信の3者で影響を見ており、ほぼ同じ枠組みです。

領域

主な活用内容

代表的なサービス・事例

① AI×クリエイション(制作)

AI作曲・歌声合成・ステム分離・AIマスタリング

Suno、Udio、SOUNDRAW、AIVA、Stable Audio、ElevenLabs Eleven Music、Google Lyria 3.5、LANDR、iZotope Ozone

② AI×レコメンデーション(配信/発見)

パーソナライズ推薦、AI DJ、プロンプト型プレイリスト、AI楽曲の表示・推薦除外

Spotify AI DJ/Prompted Playlists、YouTube Music、Deezer、Apple Music AutoMix

③ AI×ビジネス(権利・A&R・マーケ)

学習元特定、Content ID、AIクレジット開示、ライセンス契約、ヒット予測

YouTube Content ID、Spotify AI Credits、Sony の学習元特定技術、TYGER、Chartmetric

AI作曲ツールの紹介に偏った解説は多いものの、実際には推薦エンジンと権利管理AIのほうが、業界の収益構造に大きく影響しています。世界の音楽市場の約67%をストリーミングが占める(デロイト トーマツ)ため、配信側でAI楽曲がどう扱われるかが、作り手の収益を直接左右するからです。

音楽業界のAI活用3領域:制作AI・推薦AI・権利管理AI

生成AIそのものの仕組みから押さえたい方は、生成AIとは|仕組み・できること・代表ツールを徹底解説をご覧ください。

2025〜2026年の構造変化:訴訟から「ライセンス済みAI音楽」へ

2025年後半から、音楽業界×AIの関係は「無断学習で訴訟」から「メジャーレーベル公認のライセンス済みサービス」へ移りつつあります。ただし和解はレーベルごとにばらばらで、2026年10月時点でも Sony Music は Suno・Udio のどちらとも和解していません。

時期

出来事

影響

2025年8〜9月

ElevenLabs が Eleven Music を公開(Merlin・Kobalt と提携)/Spotify が AI保護ポリシーを発表

商用利用を前面に出したAI音楽モデルが登場。配信側のルール整備が始まる

2025年10〜11月

UMG・WMG が Udio と和解、WMG が Suno と和解・提携

「訴訟から契約へ」の流れが本格化。Udio はダウンロードを停止

2026年2月

ソニーグループが AI楽曲の学習元特定技術を公表

権利者側が「どの曲の影響か」を示す手段を持ち始める

2026年4月

Spotify AI Credits 開始(DDEX規格)

AIの関与をクレジット欄に表示

2026年5月

Spotify×UMG、AIカバー・リミックス機能で提携

ファン参加型のAI機能にライセンスが付く

2026年6月11日

JASRAC が生成AIの特設ページで管理方針を公表

AIだけで作った作品は管理しないと明示

2026年7月

Sony が Udio を再提訴(3万超の録音)/Deezer で AI楽曲がアップロードの50%超に

和解していないレーベルとの対立が続く

2026年7月31日

ミュンヘン地裁で GEMA が Suno に勝訴(一審)

欧州で初めて音楽生成AIの著作権侵害が認められる

2026年8月

Stability AI の資金調達に3大メジャーが出資/Sony Music Publishing・Warner Chappell が Anthropic を提訴

出資という形の関わり方が加わる。訴訟は生成AI全般に広がる

2026年9月

Suno v6 公開(WMG・BMG・Believe のライセンスデータ)/UMG×ElevenLabs 提携/UMG・Sony が Suno を再提訴

ライセンス済みモデルへの切り替えと訴訟が並行する

2026年10月

YouTube Music が AI生成ラベルを開始/Spotify が推薦から5,000万曲超を除外と公表/UMG が TYGER にライセンス

配信側の「表示・除外」と、生成しない音楽AIへの契約が進む

Anthropic への提訴の詳細はソニー・ワーナーがAnthropicを提訴で、書籍をめぐる大型和解はAnthropicの15億ドル和解で解説しています。

メジャー3社×AI企業の関係(2026年10月時点)

報道と各社発表をもとに、メジャー3社とAI企業の関係をまとめました。「—」は今回確認できた発表がないことを示します。

AI企業・サービス

UMG

Sony Music

Warner Music Group

補足

Suno

係争中(2026年9月に再提訴)

係争中(同上)

和解・提携(v6 の学習データを提供)

BMG・Believe も v6 にライセンス

Udio

和解(2025年10月)

係争中(2026年7月に再提訴)

和解(2025年11月)

新サービスは外部に書き出せない「walled garden」型と報道。正式公開は未確認

Stability AI

出資

出資

出資

カタログのライセンスまで含むかは報道で食い違い

ElevenLabs

複数年の提携(2026年9月)

—

—

Eleven Music は Merlin・Kobalt とライセンス

Spotify AIカバー・リミックス

ライセンス(2026年5月)

報道時点で未参加

報道時点で未参加

Merlin・Kobalt・Believe も参加

TYGER(ゲーム向け)

ライセンス(2026年10月)

—

—

新曲は作らず、既存曲をゲームに合わせて変化させる

UMG・Sony による Suno への再提訴では、v6 も旧モデルと同じ問題の延長にあると主張しています(Music Business Worldwide)。Suno 自身も2026年9月、旧モデルの学習に YouTube の音源を使ったことを認めたと TechCrunch が報じています。「v6 はライセンス済みだから訴訟と無関係」とは言い切れない状況です。

① AI×クリエイション:AI作曲・歌声合成・マスタリング

制作領域で起きている変化は、「無断学習モデルからライセンス済みモデルへの乗り換え」と「ダウンロードや商用利用の制限強化」の2つです。テキストから数十秒で曲ができる手軽さは変わりませんが、何に使えるかはツールとプランでかなり差が出るようになりました。

AI作曲ツール比較表(2026年10月時点)

料金・仕様は頻繁に変わります。Suno 以外の料金は今回公式で確認できていないため「公式参照」としています。導入前に各公式サイトで最新情報を確認してください。

ツール

提供元

主な強み

学習データ

商用利用

月額目安

日本語ボーカル

Suno

Suno Inc.(米)

フル尺の歌もの・v6 で部分編集

v6 は WMG・BMG・Believe のライセンスデータと説明

有料プランのみ可

年払いで月$8〜(Pro)/月$24(Premier)

対応

Udio

Uncharted Labs(米)

音楽的な細かい制御・編集UI

ライセンス済み新サービスを準備中

プラットフォーム内での利用が前提

公式参照

対応

SOUNDRAW

SOUNDRAW(日本)

自社制作楽曲のみで学習

自社プロデューサー制作の楽曲

全プランOK

公式参照

インスト中心

AIVA

AIVA Technologies(ルクセンブルク)

クラシック・映像音楽、所有権付与プラン

公式参照

プラン次第

公式参照

インスト中心

Stable Audio

Stability AI(英)

Audio-to-Audio(2.0 で最長3分に対応)

ライセンス音源で学習と公表

有料プランで可

公式参照

機能は限定的

Eleven Music

ElevenLabs(米)

多言語ボーカル・感情表現

Merlin・Kobalt などとのライセンス

商用利用可と明示

ElevenLabs のプランに統合

対応

Boomy

Boomy Corporation(米)

ワンクリック量産・配信代行

公式参照

プラン次第

公式参照

機能は限定的

Google Lyria 3.5

Google DeepMind(米)

最長3分・画像から作曲

公式参照

規約で確認

公式参照

対応

大まかな使い分けは、歌もののデモや配信なら Suno、企業のBGMなど学習元の説明が要る用途なら SOUNDRAW、ボーカルの表現や多言語を重視するなら Eleven Music です。Udio は書き出しができないため、外に出す曲づくりには向きません。

Suno(AI作曲プラットフォーム)公式ロゴ

出典: Suno 公式サイト

Suno(米/Suno Inc.)

Suno は、テキストからボーカル付きのフル尺楽曲を作れる代表的なAI音楽サービスです。2026年9月9日に v6 ファミリー(v6/v6-wild/v6-mini)を公開し、旧モデルは順次廃止されます。 v6 は Warner Music Group・BMG・Believe からライセンスを受けたデータで学習しており、Suno は「以前のバージョンの学習データは使っていない」と説明しています(TechCrunch・Music Business Worldwide)。

v6 で変わった主な点は次の通りです。

  • 曲の一部だけを、プロンプトや歌詞の単語を指定して作り直せる
  • テキストに加えて、画像・動画を参考素材として指定できる
  • サンプル音源から楽器を分離してビートを組める
  • v6-wild はアイデア出し向けの実験的モデル、v6-mini は無料でも使える高速モデル
  • 生成曲に電子透かしを入れる方針を2026年8月に表明(TechCrunch)

料金(公式料金ページ、2026年10月31日確認)

Free

Pro

Premier

月額

$0

年払いで月$8

年払いで月$24

クレジット

1日50

月2,500

月10,000

使えるモデル

v6-mini のみ

v6・v6-wild

v6・v6-wild

楽曲ダウンロード

なし

月20曲

月60曲

商用利用

不可

可

可

ステム分離

なし

2種

3種(Advanced Split を含む)

Suno Studio

なし

なし

あり

料金ページは年払い時の月額で表示されています。月払いの金額は公式ページで確認してください。v6 でクレジットの消費量が変わった可能性があるため、「月◯曲作れる」という換算はしていません。サブスクのクレジットは翌月に繰り越せず、追加のクレジットやダウンロード枠は有料プランで購入できます。Free で作った曲は、後から有料プランに切り替えても商用利用できるようにはなりません。

注意点として、Suno は UMG・Sony との訴訟が続いているほか、2026年7月にはデータ侵害が報じられ、利用者による集団訴訟も起きています(TechCrunch)。詳しい機能と使い方はSunoとはで解説しています。

Udio(米/Uncharted Labs)

Udio は Suno と並ぶAI音楽生成サービスで、音楽的な細かい制御に強みがあります。2025年10月の UMG との和解を受けてダウンロード機能を停止し、サービス内で生成・共有する walled garden 型に移りました。2025年11月には Warner とも和解しています。

一方で Sony Music とは和解しておらず、2026年7月には3万を超える録音をめぐって2件目の訴訟を起こされました(Music Business Worldwide)。UMG と準備しているライセンス済みの新サービスは、2026年10月末時点で正式公開を確認できていません。Udio は Sony の訴訟への回答書で、YouTube 音声のスクレイピングによる学習を認めたとも報じられており、学習データの由来は今も論点です。

SOUNDRAW(日本/SOUNDRAW株式会社)

SOUNDRAW は自社プロデューサーが制作した楽曲だけで学習している点が最大の違いです。学習元をめぐる著作権の心配が小さく、企業の動画・ゲーム・広告BGMに採用しやすいサービスです。

  • Creator Plan:動画・ゲームBGMなどの二次利用向け
  • Artist Plan:自分の楽曲としてストリーミング配信できる
  • API/Enterprise/Academic:法人・研究・教育機関向け
  • 全プランでロイヤリティフリー、商用利用OK
SOUNDRAW(日本発のAI作曲サービス)公式画面

出典: SOUNDRAW 公式サイト

AIVA(ルクセンブルク/AIVA Technologies)

AIVA はクラシック・映画音楽寄りのAI作曲サービスです。インストが中心で、SNSでの収益化や楽曲の所有権に応じてプランが分かれています。

  • Free:月3トラックまで生成、商用利用に制限あり
  • Standard:YouTube・TikTok・Twitch・Instagram などでの収益化に対応
  • Pro:楽曲の所有権がユーザーに帰属し、収益化の制限なし
  • 学生・教育機関向けの割引あり

Stable Audio(英/Stability AI)

画像生成AI「Stable Diffusion」で知られる Stability AI の音楽生成サービスです。Stable Audio 2.0 で最長3分・44.1kHzステレオの楽曲生成と Audio-to-Audio 変換に対応し、その後 3.0 が公開されています。3.0 の内容はStable Audio 3.0とはをご覧ください。

2026年8月25日には、Stability AI が7,600万ドルを調達し、Sony Music Group・UMG・WMG の3大メジャーとエレクトロニック・アーツ(EA)が出資者に加わりました(Music Business Worldwide)。TechCrunch は、同社が音楽制作者向けのツールに軸足を移していると報じています。

ElevenLabs Eleven Music(米/ElevenLabs)

Eleven Music は2025年8月に公開された音楽生成モデルで、商用利用できることを前面に出したのが特徴です。日本語を含む多言語ボーカルや感情を込めた歌唱に対応し、Merlin(独立系レーベルの団体)・Kobalt とのライセンスで学習データを確保しています。新しいバージョンはElevenLabs Music v2で紹介しています。

さらに2026年9月、ElevenLabs は UMG と複数年のライセンス・戦略提携を発表しました(ElevenLabs 公式ブログ)。参加アーティストの曲を使って、ファンがリミックスやマッシュアップ、自分好みの歌声のバージョンを作れる新しいサービスを開発中です。アーティストは参加するかどうかを自分で選べます。Eleven Music とは別の製品で、名称と公開日はまだ発表されていません。音声合成の側はElevenLabs v3とはで扱っています。

Boomy(米/Boomy Corporation)

ワンクリックで曲を量産できる初心者向けサービスです。Spotify・Apple Music・YouTube Music などへの配信代行が組み込まれていますが、2023年に Spotify が Boomy 経由でアップロードされた曲の一部を、不正再生(ストリームファーミング)の疑いで削除した経緯があります。量産して配信する使い方は、配信各社のスパム対策が厳しくなった今、特に注意が必要です。

Google Lyria 3.5(米/Google DeepMind)

Google DeepMind は2026年7月29日、音楽生成モデル Lyria 3.5 を Flow Music で公開しました。最長3分の曲を作れ、日本語ボーカルや、画像をもとにした作曲にも対応しています。大手IT企業が音楽生成を自社サービスに組み込む例として押さえておきたいモデルです。詳細はGoogle Lyria 3.5とはで解説しています。

AIマスタリング・ミックス:LANDR と iZotope Ozone

マスタリングは、AIによる自動化がもっとも早く実用化された工程の1つです。

  • LANDR(カナダ):Webにアップロードするだけで仕上げるAIマスタリングの草分け。DAWプラグインも提供
  • iZotope Ozone(米):マスタリングの定番プラグイン。トラックを解析して推奨設定を当てるアシスタント機能を長く搭載している

ステム分離:Spleeter/Demucs ベースの各種サービス

曲を「ボーカル/ベース/ドラム/その他」に分けるステム分離は、リミックス・カラオケ・採譜の現場で日常的に使われています。Deezer の Spleeter と Meta の Demucs がオープンソースの基盤として広く使われ、LALAL.AI や LANDR Stems などのサービスに展開されています。Suno の有料プランにもステム分離が入るなど、作曲ツール側の標準機能にもなりつつあります。

制作ワークフロー全体にAIを組み込みたい場合は、Ableton Live などと連携できるClaude for Creative Workとはも参考になります。

② AI×レコメンデーション:Spotify・YouTube Music・Deezer の推薦とAI楽曲対策

配信プラットフォームのAIは、「おすすめを選ぶ」から「対話する・生成する」へ広がると同時に、AI楽曲を見分けて推薦から外す方向にも強まっています。2026年に入ってから、Spotify・YouTube Music・Deezer の3社がそろってAI楽曲の表示や推薦除外の仕組みを打ち出しました。

Spotify Newsroom(Spotify公式ニュースサイト)のトップ画面

出典: Spotify Newsroom 公式サイト

Spotify AI DJ:音声で対話するパーソナルDJ

Spotify AI DJ は2023年2月に始まった音声DJ機能で、Spotify の推薦技術と生成AI、買収したAI音声企業 Sonantic 由来の声を組み合わせています。2025年5月からは声でのリクエストにも対応しました。

日本では2026年3月に Premium 向けの提供が始まったと報じられています(Musicman)。ただし日本向けは英語版のみとの報道もあり、日本語での案内に対応しているかは確認できていません。

Spotify Prompted Playlists:テキストでプレイリスト生成

Prompted Playlists は、「雨の日の集中作業用、ローファイ寄り」のような文章からその場でプレイリストを作る機能です。2025年12月に発表されました。公式ヘルプでは現時点で Beta・英語のみと案内されており、日本で使えるかは公式に記載がありません。

Spotify の AI楽曲対策(2026年10月の振り返り)

Spotify は2026年10月20日、AI方針を打ち出してからの1年を振り返る投稿を公開しました(Digital Music News などの報道で確認)。主な数字と仕組みは次の通りです。

  • AI生成のスパム曲などを5,000万曲超、推薦の対象から除外。重大な違反や繰り返しの違反で削除した曲は7,500万曲超
  • AI Credits(2026年4月〜、DDEX規格)への申告は1日数万件
  • 「AI Persona」のバッジが付いたAIアーティストは、リスナーがフォローしない限り、編集部やアルゴリズムの推薦に既定では出さない
  • AIカバー・リミックス機能に UMG・Merlin・Kobalt・Believe がライセンス。アーティストは参加するかどうかを選べる

AIカバー・リミックス機能の開始時期と料金は、公式にはまだ発表されていません(有料アドオンになるとの報道はあります)。Spotify の制作向け機能はSpotify Studio AIも参考にしてください。

Apple Music の推薦AI

Apple Music は「あなたへのおすすめ」やステーションなど、AIによるパーソナライズ推薦を広く取り入れています。iOS 26 では、曲と曲のテンポや拍を合わせて DJ のようにつなぐ AutoMix が加わりました。AIでプレイリストを作る機能のベータ版も報じられていますが、正式提供は確認できていません。

主要配信サービスの AI楽曲への対応

サービス

AIの表示

推薦での扱い

収益化・削除

公表されている数字

Spotify

AI Credits(DDEX)、AI Persona バッジ

AI Persona は既定で推薦から外す。スパム曲を推薦から除外

重大・繰り返し違反は削除。1,000再生未満の曲は印税対象外(2024年〜)

推薦から5,000万曲超を除外、7,500万曲超を削除

YouTube Music

主に生成AIで作られた曲にラベル(2026年10月14日〜)

公式ブログでは言及なし

Content ID で権利処理

日本での表示開始時期は公式に記載なし

Deezer

AI生成曲にタグ

推薦・編集プレイリストから除外

AI楽曲の再生の85%を不正として収益化停止

1日のアップロードの50%超が完全AI生成(2026年6月)

Apple Music

AI使用曲へのタグ付けを求める方針と報道(公式未確認)

AutoMix で曲をAIでつなぐ

公式発表なし

—

YouTube Music のラベルは、音楽パートナーからの申告と YouTube 自身の検出を組み合わせて付けられ、プレーヤー画面に表示されます(YouTube 公式ブログ)。詳しくはYouTube MusicのAI生成ラベルで解説しています。Deezer では完全AI生成の曲が1日約9万曲アップロードされている一方、再生全体に占める割合は1〜3%にとどまります(TechCrunch)。量産したAI楽曲が聴かれずに埋もれる状況がはっきりしてきました。

推薦AIの動画・ゲーム領域での使われ方は、エンタメ・ゲーム業界のAI活用事例にまとめています。

③ AI×ビジネス:権利管理・著作権・A&R

もっとも変化が速いのが権利管理側のAIです。「AIが曲を作る」技術と並行して、「AIの関与を開示する」「学習元を推定する」「契約に基づいて使わせる」仕組みが整い、ライセンス契約の根拠として使われ始めています。

Chartmetric:音楽業界向けAIデータ分析プラットフォーム(A&R・ヒット予測)

出典: Chartmetric 公式サイト

権利管理AIの代表事例

技術/サービス

提供元

役割

YouTube Content ID

YouTube

権利者が登録した音源とアップロード動画を自動照合し、ブロック/収益化/追跡を選べる。2026年10月からは YouTube Music で AI生成ラベルも表示

Spotify AI Credits

Spotify

DDEX規格のAI開示情報をクレジット欄に表示。ボーカル・演奏・ポストプロダクションのどこにAIを使ったかを示す

ソニーグループの学習元特定技術

ソニーグループ

AI生成曲がどの既存曲からどれだけ影響を受けたかを割合で推定

Suno の電子透かし

Suno

生成曲に透かしを入れる方針(2026年8月表明)

Pex/Audible Magic

各社

音響指紋でネット上の楽曲利用を検出し、ロイヤリティを追跡

Chartmetric など

各社

TikTok・Spotify・YouTube の再生やエンゲージメントを解析し、新人発掘・ヒット予測に使う

ソニーグループの学習元特定技術(2026年)

ソニーグループが2026年2月に公表した技術は、AIが作った曲を解析して「どの既存曲に、どれだけ影響を受けたか」を割合で示すものです(共同通信)。AIモデルの内部からデータを取る方法と、生成曲と既存曲を比べて推定する方法の2通りがあり、AI事業者への対価請求や収益配分の根拠に使うことを想定しています。

これまで権利者が「自分の曲が学習に使われた」と示すのは難しく、立証の負担を下げる技術として注目されています。ただし精度や実用化の時期は公表されていません。

Spotify AI Credits とDDEX規格

Spotify AI Credits は、音楽のメタデータ規格 DDEX の AI開示項目を使い、「ボーカルにAIを使用」「ポストプロダクションにAIを使用」といった内容をクレジット欄に表示する仕組みです。2026年4月に始まり、10月時点で1日数万件の申告があるとされています。アーティストやディストリビューターにとっては、AIの使い方を正直に申告することが配信の前提になりつつあります。

ライセンス契約の5つの型

2026年に入り、レーベルとAI企業の契約は「学習の許諾」だけでなく、囲い込み型のサービス、ファン参加型のリミックス、生成しない適応型、出資へと形が分かれてきました。

契約の型

内容

主な例

① 学習ライセンス

AI生成サービスの学習データとして楽曲の利用を許諾

Suno×WMG・BMG・Believe(v6)

② 囲い込み型の共同サービス

生成した曲をサービス内でのみ楽しめる形で提供

Udio×UMG・WMG

③ ファン参加型リミックス

参加アーティストの曲をファンがAIでカバー・リミックス

Spotify×UMG・Merlin・Kobalt・Believe、ElevenLabs×UMG

④ 生成しない「適応型」

新曲は作らず、既存曲をゲームなどの状況に合わせて変化させる

TYGER×UMG

⑤ 出資

AI企業に資本で関わり、方向性に影響力を持つ

Stability AI に3大メジャーが出資

TYGER は Fortnite や Roblox などのゲームで、プレイの展開に合わせて既存曲をリアルタイムに変える技術です。CEO は「AI生成音楽は作らない」と説明しており、生成AIに慎重なアーティストでも参加しやすい形といえます。ゲーム側の動きはゲーム業界のAI活用で扱っています。

A&R・マーケティング:データ活用が進む

新人発掘とヒット予測でもAIが使われています。Chartmetric のような分析サービスは、TikTok・Spotify・YouTube の再生データをAIで解析し、A&R担当者の判断を支えます。リリース後の再生数予測、地域別のヒット予測、ジャンル・ムード・BPMのタグ付けの自動化も進んでいます。

日本のレコード会社の実装事例:エイベックス・ソニーの取り組み

日本の音楽業界は、海外ほど生成AIの導入事例が公表されていません。目立つのは、自社のカタログやファンのデータをAIで分析する使い方と、権利を守るための技術・方針づくりです。

エイベックス(avex)公式ロゴ

出典: エイベックス 公式サイト

  • エイベックス:AIで旧譜の再生数の伸びを予測し、プロモーションのタイミングを決める取り組みが報じられてきました。過去のカタログを掘り起こしてもう一度売る、レコード会社ならではの使い方です。なお2026年に入ってからの新しい公式発表は、今回の調査では確認できていません
  • ソニーグループ/ソニーミュージック:2026年2月に学習元特定技術を公表。ソニーミュージックは2025年に、所属楽曲のAI学習への利用を拒否する宣言を出しています
  • JASRAC:2026年6月に生成AIの特設ページを公開し、AIだけで作った作品は管理しない方針を明示しました

海外のAI作曲ツールを入れるより先に、自社が持つカタログとファンデータをAIで読み直すほうが、日本のレコード会社にとっては投資の回収が見えやすい領域です。

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音楽×AIで起きた失敗・ネガティブ事例

導入を判断するときは、成功例と同じくらい、うまくいかなかった例を知っておくと役立ちます。

  • AI楽曲の量産配信が収益にならない:Deezer では完全AI生成の曲がアップロードの半分を超える一方、再生は全体の1〜3%で、その85%が不正として収益化を止められています。Spotify も推薦から5,000万曲超を外しました。量産して配信で稼ぐ方法は、ほぼ通用しなくなっています
  • 学習データが後から問題になる:Udio は YouTube 音声のスクレイピングによる学習を認めたと報じられ、Suno も旧モデルで YouTube 音源を使ったことを認めました。ライセンス済みモデルに切り替えても、旧モデルをめぐる訴訟は続いています
  • 欧州での敗訴:2026年7月、ミュンヘン地裁は Suno の出力が既存曲とメロディ・ハーモニー・リズムで大部分一致すると認め、GEMA の訴えを認めました(一審)
  • なりすまし・無許諾のボイスクローン:AIで特定歌手の声をまねた曲や、なりすまし配信が品質問題になり、Spotify は無許諾のボイスクローンを見つけ次第削除する方針です

どの例も、「技術的にできること」と「規約・法律・配信ルールで許されること」のずれから起きています。導入するときは、運用ルールを文書にして共有することがもっとも確実な予防策です。

著作権・コンプライアンス:JASRAC・Spotify・各国規制の現状

商用で使うなら、ここがもっとも重要です。AIで作った曲をどう使えるかは、法律・ツールの規約・配信プラットフォームのルールの3つで決まります。

JASRAC(日本音楽著作権協会)公式ロゴ

出典: JASRAC 公式サイト

JASRAC の公式立場(2026年更新)

JASRAC は2026年6月11日、生成AIに関する特設ページで管理方針を公表しました。ITmedia NEWS などの報道で確認できた要点は次の通りです。

  • 歌詞も曲もAIが作り、人間の創作的な関与がない作品は、著作物に当たらないため管理しない
  • 片方だけAIの場合は、人間が作った部分だけを管理する(例:作詞はAI・作曲は人間なら、曲だけを使う場合の管理率は100%、詞だけなら0%)。作品データベース J-WID では人間の部分を「JASRAC」、AIの部分を「AI」と表示する
  • 作品を預ける人は、人間の創作的な関与による著作物であることを保証する義務を負う。AIだけで作った曲を偽って届け出ると、保証義務違反として法的責任を問われる
  • 学習への利用をクリエイターが判断できる機会を確保するため、著作権法30条の4の改正を求めている

AIで作った曲を JASRAC に預けたい場合は、作詞・作曲・編曲のどこに人間が関わったかを説明できるようにしておく必要があります。

Spotify AI ポリシー3本柱(2025年9月発表)

Spotify は2025年9月、AIに関する次の3本柱を打ち出しました。2026年10月の振り返りでは、この方針のもとでの成果が数字で示されています。

  1. 無許諾のAIボイスクローンを禁止:本人の同意なく特定アーティストの声をまねた曲を削除
  2. スパムフィルタの強化:大量アップロードや重複コンテンツなど、不正再生目的の配信を検知
  3. DDEX規格でAIの関与を開示:2026年4月に AI Credits として実装

Spotify は「AIを使ったこと自体」で扱いを変えるのではなく、透明性と権利処理で判断するとしています。ただし AI Persona のように、AIアーティストを推薦に出さない仕組みも加わりました。

各国規制の違い

同じAI音楽でも、国によって前提がかなり違います。

地域

現状

日本

著作権法30条の4で、AIの学習には比較的寛容。JASRAC などが見直しを求めている

米国

UMG・Sony と Suno の訴訟が続く。2026年8月、裁判所はレーベル側がストリームリッピング(DMCA1201条)の主張を追加することを認めた。和解した企業とはライセンス契約が進む

ドイツ・欧州

2026年7月31日、ミュンヘン地裁が GEMA の訴えを認め、Suno の学習と出力が著作権を侵害したと判断(一審・控訴可能)。GEMA は2025年11月に歌詞をめぐって OpenAI にも勝訴している

GEMA の判決は Suno という事業者に向けたもので、利用者を対象にしたものではないと解説されています。ただし、生成した曲が既存曲によく似ていた場合に利用者がどんな責任を負うかは別の問題です。

デロイト トーマツの調査では、「生成AIで作られた音楽だと、聴きたい気持ちが減る」と答えた人は日本で27%、英国で50%、スウェーデンで43%、ドイツで41%でした。日本のリスナーは比較的抵抗が小さく、海外向けに配信するなら国ごとの受け止め方の違いも考えておく必要があります。

商用利用の前提条件(共通)

AI作曲ツールで作った曲を商用で使うときは、次の点を確認してください。

  • 有料プランの契約と規約への同意が前提。Free プランで作った曲を後から有料化しても、さかのぼって商用利用はできない(Suno など)
  • ダウンロード数の上限。Suno は Pro で月20曲、Premier で月60曲
  • 特定アーティストの声やスタイルの再現は禁止(多くの規約で明記)
  • Udio はダウンロード不可(2025年10月以降)
  • 規約上の商用利用権と、既存曲との類似は別問題。商用利用OKのプランでも、生成した曲が既存曲に似ていれば権利侵害を問われうる
  • 配信先のAI表示ルールとスパム規約に従う(Spotify の AI Credits、YouTube Music のラベルなど)

生成AI全般の著作権・セキュリティの論点は、生成AIのセキュリティリスク|著作権・情報漏洩・誤情報を整理で解説しています。

用途別の選び方:4タイプ別の推奨ツール

どのツールを選ぶべきかは、用途によって大きく変わります。現場で多い4つのタイプごとに、推奨ツールと重視すべき点をまとめました。

用途タイプ

主な推奨ツール

重視すべきポイント

① 動画・ゲームBGM/企業利用

SOUNDRAW、AIVA Pro、Stable Audio

ロイヤリティフリー、学習データを説明できるか、所有権の帰属

② インディー配信アーティスト

Suno Pro/Premier、Eleven Music

商用利用の可否、ダウンロード上限、ボーカル品質、AI開示への対応

③ プロ音楽家の補助(ミックス・マスタリング・スケッチ)

iZotope Ozone、LANDR、Stable Audio、Suno のステム分離

DAWとの連携、自分の曲を壊さない処理の精度

④ 教育機関・研究用途

AIVA(学割)、SOUNDRAW Academic、Google Lyria 3.5

学割の有無、API、配信の制約に左右されない使い方

例:BtoBで動画制作会社が選ぶ場合

クライアントに納品するなら、ロイヤリティフリーで学習データを説明できるツールが第一候補です。具体的には、自社楽曲だけで学習した SOUNDRAW と、所有権がユーザーに帰属する AIVA Pro です。Suno は v6 でライセンス済みデータに移ったものの、UMG・Sony との訴訟が続いているため、クライアントの方針によっては使えないと判断されることもあります。広告業界での使い方は広告業界のAI活用も参考になります。

例:インディーアーティストが配信したい場合

ボーカル付きの曲を作って Spotify や Apple Music で配信したいなら、Suno Pro/Premier か Eleven Music が軸になります。Suno はダウンロードに月の上限があるため、配信する曲数を見込んでプランを選んでください。配信時は AI Credits に対応したディストリビューターを使い、AIの関与を正直に申告するのが安全です。

いろいろな生成AIツールを横並びで比べたい方は、生成AIツールおすすめ比較もご覧ください。

音楽×AIのメリットと留意すべきリスク

メリット

  • 制作のスピードと量:数日〜数週間かかっていたデモ制作が数分で終わる
  • コスト構造の変化:BGMの外注費が下がり、個人でも完成度の高い曲を作れる
  • 始めやすさ:音楽理論や楽器の経験がなくても曲づくりを始められる
  • データにもとづくA&R:勘と経験に頼っていた新人発掘をデータで補える
  • 権利管理の精度向上:学習元特定技術、Content ID、AI Credits で「誰の何の権利か」を見える形にできる
  • ライセンス済みの選択肢が増えた:Suno v6、Eleven Music、SOUNDRAW など、学習データを説明できるツールが選べる

留意すべきリスク・制約

  • 著作権が完全にクリアになる保証はない:ライセンス済みモデルでも、生成した曲が既存曲に似るリスクは利用者側で完全には消せない
  • 無料プランは商用利用できない:Suno Free は商用利用・ダウンロードともに不可。Udio はダウンロード不可
  • 有料でもダウンロードに上限がある:Suno は Pro で月20曲、Premier で月60曲
  • 特定アーティストの声・スタイルの再現は禁止:多くのサービスで規約違反
  • JASRAC に預けられない場合がある:AIだけで作った作品は管理対象外。虚偽の届け出は保証義務違反になる
  • 配信で埋もれる・収益化されない:Spotify・YouTube Music・Deezer がAI楽曲の表示・推薦除外・収益化停止を強めている
  • 訴訟が続いている:Sony は Suno・Udio の両方と、UMG は Suno と係争中。ドイツでは Suno が一審で敗訴
  • サービス側のセキュリティ:Suno ではデータ侵害が報じられている。アカウント情報や未発表曲の扱いに注意が必要

導入コスト感とハードル

個人クリエイター(インディーアーティスト・動画制作者)

項目

目安

AI作曲ツール月額

Suno は年払いで月$8〜$24。ほかのツールは公式で確認

マスタリング

LANDR の都度課金、または iZotope Ozone の買い切り

配信代行

DistroKid、TuneCore Japan などの年額制

必要スキル

プロンプトの書き方、簡単なミックスの感覚、規約の理解

レコード会社・音楽出版社

項目

目安

AI作曲ツールの法人プラン/API

要見積もり(SOUNDRAW Enterprise など)

A&R分析サービス(Chartmetric など)

月額数百〜数千ドル規模

権利管理AI(Pex/Audible Magic)

個別見積もり

AI契約・社内ガイドライン整備

法務・A&R・デジタル戦略の横断プロジェクトが必要

映像・ゲーム・広告制作会社

項目

目安

ロイヤリティフリーのAI BGM(SOUNDRAW Creator など)

月額数千円〜

法人プラン/API

案件の規模によって数万〜数十万円

クライアント向けの説明資料

学習元を説明できるツールを選ぶことが前提

導入の一番のハードルは、技術ではなく規約の理解と社内ルールづくりです。「Free プランで作った曲を商用に回さない」「特定アーティストの作風をまねない」「配信時にAIの関与を申告する」といったルールを文書にしておかないと、後から権利の問題が出てきます。

レコード会社や制作会社が、カタログデータや権利情報と連携する社内ツールを外部に開発委託する場合は、ISRC・DDEX といった音楽業界のデータや権利処理の流れを理解している会社かどうかで、要件定義の手戻りが大きく変わります。業界知識をどこまで重視すべきかは、業界に詳しいAI開発会社に委託すべきかで整理しています。

こんな企業・人におすすめ

  • 動画・ゲーム・広告制作会社で、ロイヤリティフリーかつ学習元を説明できるBGMを数多く用意したい
  • インディーアーティストで、ボーカル付きのデモを素早く作り、配信で反応を確かめたい
  • レコード会社・音楽出版社で、A&Rのデータ活用や権利管理AIによる収益の保全、旧譜の掘り起こしを進めたい
  • ゲーム会社で、TYGER のような適応型の仕組みで既存曲をゲーム体験に組み込みたい
  • 音楽教育機関で、作曲の入門や音楽理論の補助にAIを取り入れたい

おすすめしない/慎重に検討すべき人

  • 特定アーティストの声や作風を再現したい人:規約違反で、訴訟リスクも大きい
  • 無料プランで作った曲をそのまま商用で使いたい人:Suno などでは明確に不可
  • AIの関与を隠して配信したい人:AI Credits やラベル表示が広がり、推薦除外の対象にもなりうる
  • AI楽曲を量産して再生数で稼ぎたい人:配信各社がスパム対策と収益化停止を強めている
  • 所属レーベルの方針が決まっていない領域に手を広げたいメジャー所属アーティスト:Sony・UMG が訴訟を続けており、レーベルによって立場が違う

よくある質問(FAQ)

Q1. AIで作った曲を Spotify や Apple Music に配信していいですか?

現時点では、AI作曲ツールの有料プランの規約に従っていれば配信できます。ただし、Spotify では AI Credits でAIの関与を申告する仕組みが動いており、AIアーティストは既定で推薦に出にくくなりました。YouTube Music も主に生成AIで作られた曲にラベルを付け始めています。配信はできても「聴かれやすさ」は変わりうると考えておくのが現実的です。

Q2. Suno と Udio はどちらを選ぶべきですか?

曲をダウンロードして外部で使うなら、現時点では Suno です。Udio はダウンロードを止めており、ライセンス済みの新サービスも正式公開を確認できていません。Suno を選ぶ場合も、無料プランは商用利用・ダウンロードともに不可で、有料プランでもダウンロード数に月の上限がある点を確認してください。

Q3. Suno v6 で作った曲なら、著作権の心配はなくなりますか?

なくなるわけではありません。v6 は WMG・BMG・Believe のライセンスデータで学習していますが、UMG と Sony は v6 も問題の延長にあるとして再提訴しています。また、規約上の商用利用権があっても、生成した曲が既存曲に似ていれば別に問題になりえます。商用で使う前に、似た曲がないかを確かめる手順を入れておくと安心です。

Q4. AI生成楽曲を JASRAC に預けられますか?

AIだけで作った曲は預けられません。JASRAC は人間の創作的な関与がない作品を管理しない方針です。作詞だけ・作曲だけを人間が行った場合は、人間の部分だけが管理対象になります。AIだけで作った曲を人間の作品として届け出ると、保証義務違反として法的責任を問われる可能性があります。

Q5. Spotify AI DJ や Prompted Playlists は日本でも使えますか?

AI DJ は2026年3月に日本の Premium 向けに提供が始まったと報じられていますが、英語版のみとの報道もあります。Prompted Playlists は公式ヘルプで Beta・英語のみと案内されており、日本で使えるかは記載がありません。最新の状況は Spotify アプリや公式ヘルプで確認してください。

Q6. AIでボーカル分離(カラオケ作成)はどこまで合法ですか?

Spleeter や Demucs をもとにした技術で精度の高い分離ができますが、自分が権利を持たない曲を分離して公開すると著作権侵害のおそれがあります。私的に楽しむ、自作曲のリミックスに使う、許諾を得たカバー制作に使う、といった範囲にとどめるのが安全です。

Q7. レコード会社が今すぐ導入すべきAI領域はどこですか?

投資の回収が見えやすい順に、(1) A&R分析サービスによる新人発掘とカタログ分析、(2) Content ID・Pex・Audible Magic などの権利管理AIによる収益の保全、(3) AI Credits など配信各社のAI開示ルールへの対応、(4) 社内での制作補助としてのAI作曲ツールです。AIアーティストのデビューなど生成AIを使った曲の外部公開は、訴訟と配信ルールが動いているため慎重に判断したい領域です。

Q8. GEMA の判決は日本の利用者にも関係しますか?

直接の影響は限定的です。判決はドイツの裁判所が Suno という事業者に対して出したもので、一審のため控訴の可能性もあります。ただし、AIの出力が既存曲と大部分一致しうることを裁判所が認めた点は重要です。欧州で配信する場合や、生成した曲を広告・映像に使う場合は、既存曲との類似チェックをより丁寧に行う理由になります。

まとめ:3領域を並べて見ると判断しやすい

音楽・レコード業界のAI活用は、AI作曲ツールの紹介だけでは判断できない段階に入りました。制作(Suno・SOUNDRAW・Eleven Music など)、推薦(Spotify・YouTube Music・Deezer)、権利管理(Content ID・AI Credits・学習元特定技術)の3領域が同時に動き、業界の収益構造を組み替えています。

2026年は、Suno v6 のようなライセンス済みモデル、UMG×ElevenLabs や TYGER のような新しい契約の形が広がる一方で、Sony・UMG の再提訴や GEMA 判決のように対立も続いた年でした。配信側では、AI楽曲を表示し、推薦から外し、不正な再生を収益化しない仕組みがそろってきています。

判断するときの軸は3つあります。

  1. 用途をはっきりさせる:商用配信/動画BGM/プロの制作補助/教育で、選ぶツールが変わる
  2. 規約と権利を押さえる:無料プランの商用不可、ダウンロード上限、JASRAC の管理方針、配信先のAI表示ルール
  3. 3領域をまとめて見る:制作ツールだけでなく、推薦と権利管理の動きも合わせて判断する

ほかの業界でのAI活用は、エンタメ・ゲーム業界のAI活用事例や放送・メディア業のAI活用事例、ツールの横断比較は生成AIツールおすすめ比較をご覧ください。

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この記事の著者

AI革命

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編集部

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