ビジネス活用2026年10月更新

システム保守の委託契約で決めること|範囲・対応時間・軽微な改修の上限・更新と解約時の引継ぎ

公開日: 2026/10/18
システム保守の委託契約で決めること|範囲・対応時間・軽微な改修の上限・更新と解約時の引継ぎ

この記事のポイント

システム保守の委託契約で決める項目を、IPAのモデル契約をもとに確認表で整理。保守の範囲、対応時間、軽微な改修の上限の書き方、再委託、更新を断る期限、解約時に受け取るソースコードや管理者権限まで、今の契約の点検に使えます。

業務システムの保守を開発会社に頼んでいる、またはこれから頼む会社の情シス兼任者・総務・経営者の方に向けた記事です。保守の委託契約では、公的なモデル契約が挙げる基本項目(契約の形・業務内容・対象範囲・期間・役割分担・提供資料・委託料)に加えて、「軽微な改修」の上限、再委託の承認、更新を断る期限、解約したときに受け取るものの4つを、数字と物の名前で書いておくことが要点です。

契約の更新が近い場合は、更新を断る期限より前に、この記事の確認表で今の契約を点検してください。足りない項目は、次の更新か覚書で足します。「保守費の中で何をしてもらえるのか分からない」「軽微な修正のつもりが別見積になった」「会社を替えたいが、ソースコードを受け取れるか分からない」という困りごとは、この4つが契約に書かれていないと起きやすくなります。

なお、この記事は契約の項目と書き方を整理するもので、条項が有効かどうか、損害賠償を請求できるかといった法的な判断は扱いません。そうした判断は弁護士に確認してください。

この記事が役に立つ場合と、別の記事や専門家に当たった方がよい場合

先に、この記事で答える範囲を示します。

今の状況

合う情報

保守契約の更新が近く、今の契約で何が決まっているかを点検したい

この記事(確認表・更新を断る期限の逆算)

保守費の中でどこまで頼めるのか、「軽微な修正」に入るかどうかで相手と食い違う

この記事(軽微な改修の上限の書き方)

保守費が高いか安いか、相場を知りたい

システム保守費用の相場と内訳。この記事では相場は扱いません

保守の枠を超える改修を1件、別の契約で頼みたい

システム改修を業務委託で出すときの契約(請負か準委任か・仕様書・検収)

開発会社を替えると決めていて、引継ぎの調査を始めたい

他社が作ったシステムを別の開発会社へ引き継ぐ前に

使っているのがSaaSやパッケージで、契約はベンダーの標準約款

個別に交渉できる余地が小さい分野です。IPAのモデル取引・契約書にある、SaaS・パッケージ・保守運用向けの追補版と重要事項説明書が参考になります

相手と支払いや損害をめぐって争いになっている

弁護士への相談が先です

今の保守会社に大きな不満はなく、頼める範囲があいまいなだけなら、会社を替える必要はありません。この記事の確認表で足りない項目を洗い出し、今の会社と覚書を交わすことで済む場合があります。

保守の委託契約の確認表|今の契約に何が書いてあるかを点検する

情報処理推進機構(IPA)のロゴ。保守運用のモデル契約書を公開している

出典: IPA(情報処理推進機構) 公式サイト

IPA(情報処理推進機構)と経済産業省の「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」には、保守と運用を続けて頼むための「情報システム保守運用委託基本モデル契約書」が入っています。このモデルは、共通のルールを基本契約に置き、頼む業務の中身は個別契約と仕様書で決める形です。第3条は、個別契約で次の8項目を決めるとしています。

  1. 契約形態(請負・準委任)
  2. 業務内容
  3. 対象とする情報システムの範囲とその詳細
  4. 業務の開始日と実施期間
  5. 発注側と受注側の役割分担
  6. 発注側が提供する情報・資料
  7. 委託料とその支払方法
  8. その他、業務に必要な事項

出典:IPA「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」本体 第4章(4)保守運用委託基本モデル契約書 第3条(2026-10-18 確認。ページの最終更新表示は2026-09-11、第二版本体は2025-04-08 更新)

8項目目の「その他」に何を書くかで、困りごとの多くが防げるかどうかが決まります。下の確認表は、この8項目に、困りごとが起きやすい項目を足したものです。右から2列目は、架空の会社(社員30名、受注管理システムの保守を開発会社に月額で委託)で記入した例です。

保守の委託契約の確認表(説明用・架空データ)

項目

今の契約の条番号

書いてあるか

架空の会社での記入例

書いていないと起きること

契約形態(請負・準委任)

個別契約 第2条

書いてある

準委任

「直ったはずの不具合が再発した」ときに、無償でやり直してもらえるかで食い違う

対象のシステムと範囲

個別契約 第1条

一部

「受注管理システム」とだけ書いてあり、会計ソフトへのCSV連携が入るか不明

連携部分の不具合を「対象外」と言われる

保守の作業の種類

仕様書

一部

障害の調査と修正、問い合わせのみ。OSの更新とデータ修正の記載なし

OSの更新やデータ修正を頼むと別見積になる

軽微な改修の上限

なし

書いていない

「軽微な改修を含む」とだけある

どこまでが月額か毎回もめる

対応時間・連絡手段

仕様書

書いてある

平日9〜18時、メールで受付

夜間に止まったとき、誰に連絡すればよいか分からない

一次応答の目標

なし

書いていない

—

連絡しても、いつ動いてもらえるか分からない

報告の頻度と中身

基本契約 第9条

一部

月1回の作業報告。作業時間の記載なし

月額の中でどれだけ作業したか分からない

費用の決め方

個別契約

書いてある

月額固定。超過分の扱いの記載なし

上限を超えた作業の請求で驚く

発注側の役割

なし

書いていない

—

社内で答えるべき質問まで保守会社に回り、作業時間を使う

再委託

基本契約 第6条

書いてある

「乙は第三者に再委託できる」(承認は不要)

誰が本番のデータに触れているか分からない

秘密保持

基本契約 第18条

書いてある

契約終了後も続くかの記載なし

解約後の情報の扱いがあいまいになる

期間と自動更新

基本契約 第20条

書いてある

1年、満了の3か月前までに申し出がなければ同じ条件で更新

期限を過ぎると、見直したくても1年延びる

中途解約

なし

書いていない

—

途中でやめたいとき、予告期間と精算でもめる

解約時に受け取るもの

なし

書いていない

—

ソースコードの最新版や管理者権限が手元に来ない

データの返還・消去

なし

書いていない

—

保守会社の手元に顧客データが残る

終了後の協力

なし

書いていない

—

次の会社への説明を頼めない、または高額になる

自社の契約で点検するときは、2列目に条番号、3列目に「書いてある/一部/書いていない」を書き込んでください。基本契約、個別契約(注文書や見積書を含む)、仕様書が別の書類になっている場合は、3つをそろえてから見ると漏れが減ります。

ここからは、確認表の中で特にもめやすい4項目(保守の作業の範囲と軽微な改修、対応時間と報告、再委託、更新・解約と受け取るもの)を順に見ます。

保守の範囲は「作業の名前」で書く|請負か準委任かも作業ごとに決める

番号札の付いた配線が並ぶサーバーラック

「保守一式」「不具合対応」のような書き方では、どの作業が月額に入るのか分かりません。IPAのモデル契約にある業務仕様書のサンプル(アプリケーション保守)は、作業を次のように分けています。自社の契約の書き方と並べると、抜けている作業が見つかります。

頼みたい作業

IPAの仕様書サンプルでの呼び名

契約に書いておくこと

障害の調査と修正

インシデント管理・問題管理・トラブル対応

調査だけか、修正まで含むか。原因が入力ミスや業務ルールの変更だったときの扱い

使い方の問い合わせ

質問対応

誰からの質問を受けるか(担当者だけか、全社員か)

OS・ライブラリ・証明書の更新

業務アプリケーションの改良(動作環境の変化への対応)

更新作業は月額か別見積か。期限の何か月前に影響を知らせるか

データの修正

業務臨時処理

1回あたりの件数の目安、誰が依頼して誰が確認するか

軽微な改修

業務アプリケーションの改良(性能・保守性の改善を含む)

上限(次の節)

本番への反映と確認

リリース管理・本番処理検証

反映の前に誰が確認するか

プログラムと資料の変更履歴

構成管理

設計書や手順書を、直した内容に合わせて更新するか

定例の報告

定例報告

頻度と中身(次の節)

出典:IPA モデル契約(第二版)本体「保守業務又は運用業務の委託に関する個別契約書(サンプル)」業務仕様書(アプリケーション保守)(2026-10-18 確認)

このサンプルは、作業を「受託条件明細に書いた業務量を基準に」行う形です。つまり、どれだけの作業量を月額に含めるかは、モデル契約でも数字が決まっておらず、当事者が書き込む前提になっています。

請負か準委任かも、作業ごとに考えます。民法では、請負は「仕事の完成」に対して報酬を払う契約(632条)、準委任は事務を任せる契約(656条で委任の規定を準用)です。IPAのモデル契約第14条は、準委任型なら受注側は注意を尽くして作業する責任を負い、そのかぎり結果には責任を負わない、請負型なら結果の誤りや仕様書との違いを直し、損害を賠償する、と分けています。

準委任

請負

合う作業

問い合わせ対応、障害の調査、監視など、続けて行う作業

内容と完成の条件を決められる改修

報酬の対象

作業そのもの(月額・時間)

完成した結果

「直したのに再発した」とき

注意を尽くしていれば、やり直しは契約で決めた範囲

仕様書と違えば修正を求められる

保守全体を準委任で結び、軽微な改修を超える改修だけを請負の個別契約にする形もあります。改修1件を別の契約で出すときの決め方は、システム改修を業務委託で出すときの契約で詳しく扱っています。

「軽微な改修」の上限の書き方|3通りを架空の依頼一覧で比べる

机の上に並べた依頼内容の記入用紙とペン

「軽微な改修」を数字で決めた公的な基準は、調べた範囲(2026-10-18)では見つかりませんでした。先ほどのとおり、IPAのモデル契約も作業量は当事者が決める形です。そのため、上限を何で数えるか(時間・件数・画面や帳票の数)を契約に書いておく必要があります。

数え方によって、同じ依頼でも月額に入るものが変わります。架空の受注管理システムに、ある月に次の7件の依頼が来たとして、3通りの書き方を当てはめてみます。

ある月の依頼一覧(説明用・架空データ)

依頼

内容

見込み時間

変える場所

a

受注一覧の並び順を「納品予定日順」に変える

1時間

画面1か所

b

請求書に印字する自社名の表記を変える

0.5時間

帳票1か所

c

CSV出力に「粗利」の列を足す(計算が必要)

5時間

出力1か所

d

受注入力画面の項目名を3つ変える

0.5時間

画面1つの中の3か所

e

受注入力に「納品先の担当者」の欄を足す(保存先の追加が必要)

6時間

画面1か所+データの保存項目

f

営業担当が自部署の受注だけを見られるようにする

8時間

利用者の権限

g

会計ソフト側の取込形式の変更に合わせ、連携用CSVを変える

10時間

外部との連携

合計

31時間

上限の書き方ごとの結果(説明用・仮定に基づく試算)

上限の書き方

月額に入る依頼

月額に入る時間

月額に入らない依頼

もめやすい点

①月8時間まで(超えた分は時間精算)

a〜d と e の1時間分(依頼順)

8時間

e の残り5時間、f、g(計23時間を時間精算)

依頼の順番で枠が埋まる。f や g のような大きな作業も、見積なしで精算に回る

②1件の見込み4時間以内・月3件まで

a、b、d

2時間

c、e、f、g(見積)

c が見込み4時間か5時間かで扱いが変わる。d を1件と数えるか3件と数えるか

③既存の画面・帳票の表示と項目の変更、月3か所まで(保存項目・権限・外部連携の変更は対象外)

a、b、c

6.5時間

d(翌月か見積)、e、f、g(見積)

「1か所」の数え方。c のように時間のかかる変更も1か所で済む

①〜③を組み合わせた例:1件の見込み6時間以内、保存項目・権限・外部連携を変えないもの、月8時間まで

a、b、c、d

7時間

e、f、g(見積)

見込み時間を誰が出すかを決めておく必要がある

この試算から分かるのは、次の3点です。

  • 時間だけで上限を決めると(①)、大きな作業も保守の時間精算で進んでしまいます。 見積と承認を経ずに作業が進むので、請求を見て初めて金額を知ることになります
  • 件数だけで決めると(②)、1件の大きさの判断でもめます。 「1件の見込み時間を、着手前に誰が出すか」が書かれていないと、境目の依頼のたびに話し合いになります
  • 保存項目・権限・外部連携の変更を最初から対象外にしておくと(③と組み合わせ)、影響の大きい変更が自然に見積へ回ります。 権限の変更(f)は他人の情報が見えるかどうかに関わり、連携の変更(g)は相手のシステムにも影響するため、保守の枠でなく、改修として範囲とテストを決めて頼む方が安全です

IPAのモデル契約の解説も、保守などの段階での「軽微とも思われるシステム改訂」が、セキュリティの設定に重大な影響を与える例があると注意しています。枠内の改修でも、テストと本番への反映の手順は省かないことを契約に書いておくとよいでしょう。

契約や覚書に足す文言は、たとえば次のような形になります(説明用の文言の例です。自社の契約にそのまま使えるかは、弁護士に確認してください)。

乙は、次の各号をすべて満たす変更を「軽微な改修」とし、月8時間を上限として月額の委託料の範囲で行う。(1)着手前に乙が示し、甲が了承した見込み作業時間が1件6時間以内であること(2)データの保存項目、利用者の権限、外部のシステムとの連携を変更しないこと。上限を超える変更、または各号を満たさない変更は、乙が見積を示し、甲が承認した後に着手する。上限のうち使わなかった時間は翌月に繰り越さない。

最後の「繰り越すかどうか」も、書いておかないと食い違いやすい点です。繰り越す場合は、何か月まで有効かも決めます。

保守の枠を超えた改修を別に頼むときの費用の目安は、システム改修の費用|作業別の目安と内訳で整理しています。

対応時間・連絡手段・報告|「いつ連絡したら、いつ動くか」を書く

IPAのモデル契約第10条は、障害が起きたときの緊急連絡の体制を、業務仕様書か別の書面で決めるとしています。仕様書サンプルでも、実施する曜日と時間帯を明記する形です。契約には、少なくとも次の内容を書いておきます。

決めること

書き方の例(説明用)

受付の時間帯

平日9時〜18時(年末年始・会社の休日を除く)

受付の手段

専用のメールアドレスと課題管理の画面。時間外の緊急連絡先は電話1本

一次応答の目標

受付から2時間以内に、受けたことと対応の見込みを返す

時間外の扱い

時間外の作業は事前の承認を得て行い、別料金とする

報告の頻度

月1回

報告の中身

依頼ごとの作業内容と作業時間、月の上限に対する残り時間、未対応の依頼、次の月にOSや証明書の期限があるもの

IPAの仕様書サンプルは、障害の一次応答や質問への一次回答の時間を守れた割合を、サービスの水準として示す形です。ただし、守れなかったときは「可能な範囲での改善努力」とされていて、料金の減額などの罰則ではありません。罰則まで求めるなら、その分の費用が上乗せされることも含めて相手と話す必要があります。

報告の中身に「作業時間」と「残り時間」が入っていないと、先ほどの「軽微な改修の上限」が守られているかを確かめられません。月額固定の契約でも、作業時間の報告は求めておくと、次の更新で月額や上限を見直す材料になります。

再委託と秘密保持|誰が本番のデータに触れるかを知っておく

保守では、本番のデータや管理者の権限に触れる作業が多くあります。保守会社がさらに別の会社やフリーランスに作業を出す「再委託」をどう扱うかは、契約で決めておきたい項目です。

民法は、準委任の受け手は、頼んだ側の許諾を得たときか、やむを得ない事情があるときでなければ、ほかの人に任せられないとしています(644条の2。656条で準委任にも適用)。ただし、契約で別の取り決めをしている場合の扱いは、弁護士に確認してください。また、請負で頼む改修の部分にはこの条文は当たらないため、再委託の扱いを契約に書いておく必要があります。

IPAのモデル契約は、再委託について2つの案を用意しています(保守運用委託基本モデル契約書 第6条が、開発モデル契約 第7条と同じ趣旨としているもの)。

A案:事前の承諾が必要

B案:原則として受注側に任せる

再委託の条件

発注側の書面による事前の承諾

受注側の判断で再委託できる

発注側ができること

合理的な理由があれば承諾を拒める。決めた日数のうちに拒否しなければ承諾したとみなす

求めれば再委託先の名前・住所の報告を受けられる。合理的な理由があれば中止を求められる

共通

業務の全部を再委託すること(丸投げ)は認めない。再委託先にも同じ義務を負わせる。再委託先の作業も、受注側が自分で行ったのと同じ責任を負う

出典:IPA モデル契約(第二版)本体 ソフトウェア開発委託基本モデル契約書 第7条(2026-10-18 確認)

自治体の仕様書では、再委託は書面での承諾を条件にし、事前に内容・相手・理由を示して申請させる形が見られます(例:京都市「電子計算機による事務処理等(システム開発・保守)の委託契約に係る共通仕様書」令和5年4月1日改正 第9条。2026-10-18 確認)。民間の中小企業の契約では、そこまで細かい手続きが要らない場合もありますが、個人情報や取引先の情報が入ったシステムなら、A案のように事前の承諾を条件にしておく方が、誰がデータに触れるかを把握できます。

個人データを含むシステムの保守を頼む場合、個人情報保護法25条は、委託先に対して「必要かつ適切な監督」をするよう求めています。再委託先まで含めて、どこが作業しているかを把握しておくことは、この点でも意味があります。

秘密保持は、契約が終わった後も続く書き方にしておきます(京都市の共通仕様書 第3条も、契約終了後・解除後も同様としています)。

更新と解約|更新を断る期限から逆算して動く

1月のページを開いた卓上カレンダー

保守の委託契約には、期間を1年などで区切り、申し出がなければ同じ条件で更新する形があります。IPAのモデル契約第20条も、「期間満了の○ヵ月前までに」どちらからも申し出がなければ同じ条件で更新する、という書き方です。

この形では、期限を過ぎると、見直したい点があっても同じ条件でもう1期間続きます。 更新の時期が近づいてから中身を確かめ始めると、間に合わないことがあります。満了日から逆算した動き方の例が、次の表です。

更新を断る期限が「満了の3か月前まで」の場合の動き方(説明用)

時期

やること

満了の6か月前

基本契約・個別契約・仕様書をそろえ、確認表で点検する。直近1年の依頼と、別見積になった件を書き出す

満了の5か月前

解約したときに受け取るもの(次の節)が今どこにあり、誰の名義かを確かめる。替えることも考えるなら、他社に引継ぎの調査を相談する

満了の4か月前

足したい項目(軽微な改修の上限、報告の中身など)を今の会社に伝え、条件をすり合わせる

満了の3か月前(期限)

「同じ条件で更新」「条件を変えて更新」「更新しない」のどれかを書面で伝える

途中で解約したい場合について、民法651条は、委任(準委任を含む)はどちらからでもいつでも解除できるとしつつ、相手に不利な時期の解除などでは損害を賠償しなければならない(やむを得ない事情があるときを除く)としています。月額で報酬を決めている場合に、途中で終わったときの報酬の扱いは648条に定めがあります。ただし、契約に解約の予告期間や解約料の定めがあれば、それも合わせて見る必要があります。まず自社の契約の該当条項を確認し、判断は弁護士に確認してください。IPAの仕様書サンプル(オンサイト型の運用)にも、基本の期間中に解約したときの解約料金を決めておく例があります。

解約したときに受け取るもの|今の契約で確かめておくこと

ソースコードを表示したノートパソコン

会社を替えるときに困るのは、「ソースコードの最新版がない」「サーバーの管理者が保守会社の名義だった」と、契約が終わってから分かる場面です。受け取るものは、保守契約だけでなく、最初に作ったときの開発契約で決まっていることもあるので、両方を見ます。

受け取るもの

今の契約で見るところ

確かめ方

ソースコードの最新版

開発契約の納入物、保守契約の終了時の定め

納入物に「ソースコード」と書かれているか。保守で直した後の最新版を、どこに置いているか(自社の管理する場所か、保守会社の中か)

設計書・運用手順書

開発契約の納入物、保守の仕様書(構成管理)

直した内容に合わせて更新されているか。最後に更新された日

環境の構成(サーバー・クラウドの設定)

保守の仕様書

構成を書いた資料があるか。作り直せる程度の情報か

アカウントと管理者権限(クラウド・ドメイン・証明書・外部サービス)

契約に書かれていない場合は、名義を直接確かめる

契約の名義と、管理者権限を持つ人が誰か。請求書の宛先だけでは分からない

データ

秘密保持・資料の返還の条項

解約のときに返す・消すの定めがあるか。消したときに証明を出すか

障害・問い合わせの履歴

報告の条項

月次報告や課題管理の画面を、解約後も見られるか

終了後の協力

終了時の定め

次の会社への説明に協力してもらえる期間と、費用の扱い

IPAのモデル契約の総論は、ソースコードの著作権を持たない発注側でも、保守・運用をほかの会社に頼むことはできるとしています。一方で、開発会社が倒産したときに備えてソースコードや資料の開示・交付を受けるには、納入物にソースコードを明記するか、第三者に預ける仕組み(エスクロウ)を使うことで対応できる、としています。解約に備える場合も、出発点は同じで、ソースコードが受け取れるものとして契約に書かれているかどうかです。

データの返還と消去について、IPAのモデル契約第15条は、提供した資料が不要になったら返すか、発注側の指示に従って処理する(消去・廃棄の証明を出すことが想定されている)としています。京都市の共通仕様書第11条も、委託の完了・変更・解除のときに、資料・プログラム・データを指示に従って返還・消去し、消去したときは証明書で報告させる形です。

自社の契約に「受け取るもの」が書かれていなくても、すぐに受け取れないとは限りません。ただ、解約を伝えた後に交渉すると立場が弱くなりやすいので、更新を断る期限の前に、どこに何があり誰の名義かを確かめ、足りなければ次の更新で書き足すのが安全です。会社を替えると決めた後の具体的な調査の進め方と、契約書で見る条項は、他社が作ったシステムを別の開発会社へ引き継ぐ前にで扱っています。

社内でAIを使って確かめられること、相手に聞かないと分からないこと

契約書の点検の多くは、社内でChatGPTやClaudeなどのAIを使って進められます。

  • 基本契約・個別契約・仕様書から、確認表の項目に当たる条項を抜き出し、条番号を埋める
  • 「軽微な改修」「対象範囲」など、言葉の定義があいまいな箇所を洗い出す
  • 過去1年の依頼メールから、依頼ごとの内容と別見積になったかどうかを一覧にする

ただし、契約書を社外のAIサービスに入れる前に、社内の規程と契約の秘密保持の条項、AIサービスの利用条件を確認してください。

一方で、次のことは契約書をいくら読んでも分かりません。

  • 保守で直した後のソースコードの最新版が、実際にどこにあるか
  • クラウドやドメインの契約名義と、管理者権限を持っている人
  • 毎月、実際に何時間の作業が行われているか
  • 設計書が今のシステムの中身と合っているか

これらは、今の保守会社に聞くか、実物(ソースコードや管理画面)を見て確かめる必要があります。条項の有効性や、解約したときに損害賠償を求められるかの判断は、弁護士の領域です。

契約の見直しで済む場合と、引継ぎの調査を頼む場合

確認表と受け取るものの確認が終わると、次のどれに当たるかが見えてきます。

状況

次の一手

今の会社に大きな不満はなく、範囲や上限があいまいなだけ

今の会社と覚書を交わし、確認表の足りない項目を書き足す。外部への依頼は要らない

保守の枠を超える改修が続いていて、毎回の見積に時間がかかる

保守の契約は続けたまま、まとまった改修を別の契約で頼む

ソースコードの所在や名義が分からない、設計書が古い

今のシステムの中身を調べる。会社を替えるかどうかは、その結果で決めればよい

会社を替えたい

更新を断る期限から逆算して、引継ぎの調査を始める

AI革命では、他社が作ったシステムの調査・引継ぎ・改修に対応しています。言語やフレームワークを理由にお断りはしません。調査だけ、または調査と改修を合わせて、のどちらでも受けられます。最初に、ソースコード・設計書・環境の情報が手元にあるか、それを使ってよい権利があるかを一緒に確認します。当社が確かめるのは、ソースコードや環境の中身、作業量の見込みといった技術の面で、契約条項の法的な判断はしません。

費用は、既存システムの改修が100万円〜、本開発は個別見積です(いずれも税別。クラウド・外部API・ライセンスなどの実費は別)。調査の報告書づくりや要件定義は有償で、取りかかる前に範囲と金額を示し、合意してから進めます。なお、保守契約の見直しや引継ぎについて、公開できる事例はまだありません。この記事の表と依頼一覧はすべて説明用です。改修の価格と、相談から開発までの進め方は既存システムの改修・PoCの価格と進め方で確認できます。

初回相談は無料・30分(オンライン)です。今の契約と困っている点を伺い、自社で進められる部分と任せた方がよい部分を一緒に切り分けます。

今の保守契約で頼める範囲と、引継ぎの進め方を相談する

相談の前にそろえておくと話が早いもの

次のものが分かる範囲であれば、30分の中で具体的な話ができます。全部そろっていなくても構いません。

  • 保守の契約の書類がどこまであるか(基本契約・個別契約・仕様書の有無)と、満了日・更新を断る期限
  • 直近1年で、保守の範囲か別見積かで食い違った依頼(内容と時期だけで構いません)
  • ソースコード・設計書・運用手順書が自社の手元にあるか
  • クラウドやドメインなどの契約名義(分かる範囲で)
  • システムの名前、使っている部署と人数、困っている操作

契約書そのものや、パスワードなどの本番の認証情報、顧客の実データは、相談の段階では送らないでください。

よくある質問

契約書がなく、注文書と毎月の請求書だけで保守費を払っています。どうすればよいですか

まず、保守の範囲や条件がどこに書かれているかを集めます。見積書、注文書、当初の提案書、範囲について合意したメールなどです。それでも決まっていない項目は、この記事の確認表を使って今の会社と話し、覚書として書面に残すのが現実的です。今までのやり取りで何が合意されたと言えるかの判断は、弁護士に確認してください。

準委任の保守で、直してもらった不具合が再発しました。無償でやり直してもらえますか

契約の内容によります。IPAのモデル契約では、準委任型の受注側は、注意を尽くして作業している限り結果に責任を負わない形です。一方、その修正を請負で頼んでいれば、仕様書との違いを直す責任の対象になります。今後のために、再発したときに無償で再調査する期間や条件を、契約か仕様書に書いておくとよいでしょう。今回の件で請求できるかどうかは、弁護士に確認してください。

月額に含まれる作業時間のうち、使わなかった分は翌月に繰り越せますか

契約に書いてあるかどうかで決まります。書いていなければ、今の会社に確認し、次の更新で明記します。繰り越せる形にする場合は、何か月まで有効かも決めておきましょう。毎月かなりの時間が余っているなら、月額の時間枠を小さくする、または使った分だけ払う形に変えることも検討できます。費用の決め方の比べ方はシステム保守費用の相場と内訳で扱っています。

保守と運用を別々の会社に頼むことはできますか

できます。IPAのモデル契約も、どの作業を自社で行い、どの作業を外部に出すかを個別契約で決める形です。分ける場合は、障害が起きたときに最初に受けるのはどちらか、原因が分かるまでの連絡の順番、片方の作業が原因だったときの費用の扱いを、両方の契約にそろえて書いておく必要があります。ここがあいまいだと、障害のたびに「あちらの担当です」となり、復旧が遅れます。

保守の枠を超える改修を、今の保守会社とは別の会社に頼んでもよいですか

契約上は、今の保守契約に独占の定めがないか、ソースコードをほかの会社に触らせてよい権利があるかを先に確認します。そのうえで、別の会社が変更した部分で不具合が起きたときに、今の保守会社がどこまで対応するかを決めておきます。何も決めずに進めると、変更後の障害が「保守の対象外」とされかねません。変更の内容と履歴を今の保守会社に渡す手順も、あわせて決めておきます。

個人情報が入ったシステムの保守を頼むとき、契約に足しておくことはありますか

個人情報保護法25条は、個人データの扱いを委託するとき、委託先を必要かつ適切に監督するよう求めています。契約では、再委託に事前の承諾を求めること、データを扱う作業者や作業場所の範囲、事故が起きたときの連絡、契約終了時のデータの返還・消去と証明の4点を確認しておくとよいでしょう。どこまでの監督が必要かは、個人情報保護委員会のガイドラインか専門家で確認してください。


保守の委託契約は、更新を断る期限を過ぎると、見直したい点があっても同じ条件で続きます。確認表で足りない項目が見つかったら、期限の前に動いてください。今の契約のままで頼める範囲の整理から、会社を替える場合の引継ぎの調査まで相談を受け付けています。初回相談は無料・30分(オンライン)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。相談後に、業務の棚卸し表・効果の見立て・簡易モックと、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモを無料でお送りします(簡易モックは画面のイメージで、動くシステムではありません)。

今の保守契約で頼める範囲と、引継ぎの進め方を相談する

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