ビジネス活用2026年10月更新

医療機関・クリニックの業務システムを開発会社に頼むには|電子カルテの外側に作れる範囲・医療情報ガイドライン第7.0版・費用【2026年10月】

公開日: 2026/10/18
医療機関・クリニックの業務システムを開発会社に頼むには|電子カルテの外側に作れる範囲・医療情報ガイドライン第7.0版・費用【2026年10月】

この記事のポイント

医療機関・クリニックの業務システムを開発会社に頼む前に。電子カルテに触れずに作れる範囲と既製サービスで足りる場合、ガイドライン第7.0版で確かめる項目、患者情報の権限、費用(改修100万円〜・税別)を説明します。

クリニックや医療法人が開発会社に頼む範囲の中心は、「電子カルテ・レセコンの外側」です。予約の取りまとめ、問診の集計、検査結果の連絡の管理、院内の申し送り、複数院の数字の集計は、電子カルテ本体に手を入れずに作れます。一方、カルテ画面の項目追加のような本体の改修は、原則としてその電子カルテのベンダーにしか頼めません。

もう1つ、先に知っておいてほしいのは、電子カルテに触れないシステムでも、患者を特定できる情報を扱う限り、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の対象になることです。自院で開発したシステムも対象に含まれます。開発会社を選ぶときは、作れるかどうかに加えて、責任の分け方・認証・データの保存場所を確かめる必要があります。

この記事は、電子カルテとレセコンは入れているのに、予約・問診・検査結果の連絡・申し送りを別々のツールと紙で回している、医療法人の事務長やクリニックの院長に向けて書いています。AI革命株式会社(当社)に頼む場合の費用は、既存システムの改修が100万円〜、PoC(小さく作って効果を確かめる段階)が300万円〜、本開発は個別見積です(いずれも税別。クラウドや外部サービスの利用料は別)。

ガイドラインの記述は、2026年10月18日に厚生労働省の公開資料(第7.0版・令和8年6月、ガイドラインQ&A・令和8年9月)で確かめた内容です。Q&Aは編ごとに番号が振られているため、この記事では「Q&A(概説編)Q10」のように編の名前を添えています。

開発会社に頼まなくてよい場合・頼む意味がある場合

最初に、そもそも作る必要があるかを見分けます。既製の予約システムやWeb問診、電子カルテのオプションで足りるなら、そのほうが安く早く、院内の管理も軽く済みます。

今の状況

既製サービス・電子カルテのオプションで足りる可能性が高い

開発を検討する

院の数

1院、または全院が同じ電子カルテの同じ契約

複数院で、電子カルテや予約システムが院ごとに違う

予約

予約システム1つで受け、電話分も同じ画面に入れている

Web・電話・LINEで受けた予約を、受付が別の台帳に書き写している

問診

Web問診の結果が、ベンダーの連携機能で電子カルテに入る

Web問診の結果を印刷して読み、手で電子カルテに打ち直している

検査結果の連絡

件数が少なく、カルテの記載と電話で済んでいる

「誰に連絡したか・つながらなかったか」を紙の台帳で追っていて、漏れが怖い

申し送り

1院の中で、チャットツールか紙1枚で回っている

院ごとに様式が違い、紙とチャットに二重に書いている

集計

電子カルテ・レセコンの標準帳票で経営会議の資料が作れる

事務長が毎月、各院の帳票やExcelを集めて手で合算している

左の列に多く当てはまるなら、まず今の電子カルテのベンダーと、予約・Web問診のサービス会社に、設定・オプション・上位プランで解決できるかを聞いてください。とくに問診の打ち直しは、Web問診の製品が電子カルテとの連携に対応していれば、開発しなくても減らせます。

次の場合も、今は作り込まないほうがよいと考えます。

  • 数年内に電子カルテを入れ替える予定がある:連携部分は入れ替えで作り直しになります。作るとしても電子カルテに触れない部分に留め、連携は新しいベンダーの対応を聞いてからにします
  • カルテの画面そのものを変えたい:これはベンダーの改修です。開発会社に頼んでも、本体には手を入れられません
  • 困っている作業が月に数時間しかない:後で示す試算のとおり、改修100万円〜の費用を回収しにくくなります

右の列が多く、しかも院をまたいで同じ作業が毎日発生しているときに、開発を検討する意味が出てきます。

電子カルテとの接点で、作る範囲を4つに分ける

医師がタブレットで検査画像を確認している診察室の机

作る範囲は、電子カルテ・レセコンとどう関わるかで4段階に分けると決めやすくなります。下の表は特定の製品の仕様ではなく、説明用に一般化した整理です。

段階

電子カルテとの関わり方

業務の例

頼む先

① 触れない

電子カルテのデータを使わない

予約の取りまとめ、Web問診の受付と集計、院内の申し送り・タスク、検査結果を「連絡したか」の管理、シフトや備品

既製サービス、または開発会社

② 出力を読む

電子カルテ・レセコンが出すCSV(表計算ソフトで開ける、項目をカンマで区切ったファイル)や帳票を取り込む

院ごとの来院数・新患数の集計、再来院の案内リスト

開発会社(出せる項目と形式はベンダーの資料で確かめる)

③ 連携の窓口を使う

ベンダーが用意するAPI(システム同士がデータを自動でやり取りする窓口)や連携オプションを使う

問診結果をカルテへ取り込む、予約と受付の連動

ベンダーの提供範囲の中で開発会社が作る。ベンダー側の契約・費用が別にかかるかは製品ごとに確かめる

④ 本体を改修する

電子カルテそのものを変える

カルテ画面の項目追加、独自の帳票を本体に組み込む

原則としてベンダーのみ

開発会社に頼む範囲は、①と②が中心で、③はベンダーが窓口を用意している場合だけです。電子カルテのデータベースに、ベンダーの了解なく直接つないで読み出す方法は避けてください。保守契約の条件に触れたり、ベンダーの更新で急に動かなくなったりするおそれがあります。

自院に当てはめるときは、下の表を埋めてみてください。

困っている業務

1日の件数

1件の時間

電子カルテとの関わり(①〜④)

既製サービスで足りるか

(例)電話予約を予約台帳に書き写す

①

(例)紙の問診票をカルテへ打ち直す

③(ベンダーの連携があれば)/なければ①

③に当たる業務が多いときは、開発会社より先に電子カルテのベンダーへ次の4つを聞くと、話が早く進みます。

  1. どのデータを、どの形式(CSV・帳票・APIなど)で出せるか
  2. 外部のシステムとつなぐ窓口(API・連携オプション)はあるか。ある場合、誰が使えるか
  3. 連携に費用がかかるか(初期・月額)
  4. 製品の更新で出力の形式が変わるとき、事前に知らせてもらえるか

説明用の試算:2院のクリニックで、電子カルテの外側にかかっている時間

聴診器を添えたクリップボードと白紙の記録用紙

下は、説明用に作った架空の医療法人(2院、各院1日の来院60人)の試算です。実在のクリニックや当社の案件の数字ではありません。件数と時間は仮定なので、自院の数字に置き換えてください。

作業(1院・1日あたり)

仮定した件数と時間

今の時間

システムに移したあとも残る時間(仮定)

紙の問診票を読み、電子カルテへ打ち直す

40件×3分

120分

取り込まれた内容の確認 40件×1分=40分

電話・LINEで受けた予約を予約台帳に書き写す

20件×2分

40分

電話は受付が入力するため40分のまま

検査結果の電話連絡と、紙の台帳への記入

5件×5分

25分

連絡そのものは残る 5件×2分=10分

申し送りを紙とチャットに二重に書く

1日15分

15分

1か所に書くだけになり5分

合計

200分

95分

この仮定では、1院1日で105分減ります。2院・月22日の診療なら、105分×2院×22日=4,620分で、月77時間です。人件費を時給2,000円と仮定すると月15万4,000円、年184万8,000円になります。

この数字と費用が釣り合うまでの期間を、同じ仮定で計算すると次のとおりです。

  • すでに院内で使っている独自の画面やツールがあり、それを100万円で改修する場合:100万円÷15万4,000円で約6.5か月
  • 新しく作る前にPoC(300万円〜)で確かめる場合:300万円÷15万4,000円で約19.5か月。PoCは本番システムの完成ではないため、本開発の費用が加わると回収はさらに長くなります

ただし、この試算で減る時間の多く(120分→40分の問診)は、電子カルテと連携できるWeb問診の製品を選べば、開発しなくても減らせる部分です。問診を既製サービスに任せ、検査結果の連絡と申し送りだけを作る場合、減る時間は1院1日25分、2院で月約18時間(約3万7,000円)まで小さくなり、100万円の改修でも回収に2年以上かかります。

開発の意味が大きくなるのは、院をまたぐ作業(予約の一元化、複数院の集計、院ごとに違う様式の統一)が加わるときです。どの作業を既製サービスに任せ、どれを作るかで、回収の見込みは大きく変わります。

医療情報ガイドライン第7.0版で、発注する側が確かめること

厚生労働省のロゴ

出典: 厚生労働省 公式サイト

電子カルテの外側でも、ガイドラインの対象になる

ガイドラインの概説編は、対象の「医療情報システム」を、医療情報を保存するシステムに限らず医療情報を扱う情報システム全般とし、医療機関等が自ら開発・構築したシステムも含むとしています(概説編2.3)。医療情報は「医療に関する患者情報(個人識別情報)を含む情報」です(概説編2.2)。対象外として挙がっているのは、医療情報を含まず患者への費用請求の情報しか扱わない会計・経理のシステムなどです。

つまり、氏名と受診科が入った予約データ、症状を書いたWeb問診、検査結果の連絡記録、患者名の入った申し送りは、電子カルテの外にあってもガイドラインに沿って管理する前提で作ります。開発会社に頼む場合でも、経営管理編は、委託先の過失によるインシデントでも医療機関等は責任を免れないとしています(経営管理編1.3)。

小規模なクリニックは「保守委託機関編」から読む

第7.0版(令和8年6月)では「保守委託機関編」が新たに加わりました。サーバ(電子カルテを入れた、サーバの役割をするPCを含む)のセキュリティ更新をすべて事業者に任せている医療機関等は、概説編と保守委託機関編を守れば、ほかの編も守っているとみなされます。専任のシステム担当がいない小規模な医療機関を想定したもので、クラウドで提供されるサービスを使うことで特別な契約なしに保守を任せる形も想定されています(概説編3.1.5、策定通知)。

新しく作る業務システムも、院内にサーバを置かず、更新を事業者が担う形にしておくと、院内の負担をこの前提に合わせやすくなります。どの構成にするかは、開発会社に聞く項目の1つです。

開発会社・サービス会社に確かめる項目

ガイドラインとQ&Aから、発注する側が確かめる項目を抜き出しました。開発会社にも、既製サービスの会社にも、同じように聞けます。当社に頼む場合も、同じ項目を確かめてください。

確かめること

聞き方の例

根拠(2026-10-18 確認)

責任の分け方を書面にしているか

「障害や情報漏えいが起きたとき、どこまでが御社の責任で、どこからが当院の責任ですか。契約書か別紙に書いてもらえますか」

経営管理編 5章 遵守事項⑥・1.3

再委託の扱い

「作業の一部を別の会社に出すことはありますか。出す場合は事前に知らせて、当院の承認を取ってもらえますか」

経営管理編 5章 遵守事項⑤

個人情報・情報セキュリティの認証

「プライバシーマーク(JIS Q 15001)やISMS(JIS Q 27001)、またはそれと同等の認証はありますか。対象の範囲はどこですか」。認証を持つ事業者にも根拠資料を求めることができ、認証は組織と適用範囲の評価で、使うサービスの安全性を直接保証するものではないとされています

経営管理編 5章 遵守事項②・5.1.2、Q&A(企画管理編)Q19

安全対策を開示する資料

「SDS(サービス事業者による医療情報セキュリティ開示書)か、同じ内容の説明資料を出せますか」。開発会社に作ってもらう場合は、保存場所・アクセスできる人・記録(ログ)・バックアップを書面で説明してもらう

Q&A(概説編)Q10、概説編4.5

データの保存場所

「データはどの事業者のクラウドの、どこに置きますか。保存先の機器は日本の法律の適用を受けますか。そのクラウド事業者との責任の関係はどうなりますか」

企画管理編 7章 遵守事項⑤(Q&A 企画管理編Q18で引用)、経営管理編 5.3

ログイン方法

「二要素認証(パスワードに加えてスマホ等で本人を確かめる方式)に対応できますか」。新しく選ぶシステムは、原則として令和9年度時点で二要素認証に対応したものを選ぶとされています。第7.0版では、対象がクライアント端末とサーバであることが明確にされ、令和9年4月1日時点で対応が難しい場合は次のシステム改修での対応を認める緩和措置が設けられました

経営管理編 5.1.2、策定通知

パスワードの扱い

「パスワードの使い回しを防ぐ仕組みと、何回か間違えたらロックする仕組みはありますか」。第7.0版で、定期的な変更の要件は削除されました

策定通知

生成AIを使う場合

「問診の要約などにAIを使う場合、入力した情報が学習などのために保存されないことを、契約で担保できますか」

Q&A(企画管理編)Q18

当社は、法令やガイドラインへの適合を保証するものではありません。ガイドラインへの対応は医療機関として判断していただく前提で、そのために必要な画面・権限・記録の機能を一緒に決めます。たとえば、医療機関が契約するクラウドの環境にシステムを作り、開発会社は構築と改修を担う、という構成も選べます。ただし、構成を変えれば上の確認が要らなくなるわけではないので、どの構成でも同じ項目を書面で確かめてください。

LINEやチャットツールを使う場合

検査結果の連絡をLINEで、申し送りをチャットツールで、という既製ツールの使い方も選択肢です。LINE公式アカウントは、月200通まで無料のプランから、月5,000円(5,000通)・月1万5,000円(3万通)のプランがあります(いずれも税別。LINE公式アカウント 料金プラン、2026-10-18 確認)。

ただしQ&A(概説編Q10)は、SNSなどのWebサービスで医療情報をやり取りすること自体は可能としつつ、医療情報システムとして安全性を評価する必要があるとしています。確かめる項目は、本人確認の方法、誰が見られるかの制限、通信と保存時の暗号化、記録(ログ)、保存と削除、事故のときの対応、責任の分け方の7つです。一般向けのSNSを安易に使わないことも求められています。

検査結果の本文は送らず「結果が出ました。次の来院時にご説明します」とだけ知らせる、といった送る内容の決め方も、この確認と合わせて検討してください。

患者情報の権限と保存をどう決めるか

複数院の業務システムで最初に決めるのは、誰が何を見られるかです。下は説明用の架空の例です。

見る人

予約(氏名・受診科)

問診の内容

検査結果の連絡記録

申し送り

全院の集計

理事長・事務長

必要なときだけ(理由を記録)

見ない

見ない

見る

見る

各院の院長・医師

自院の分

自院の分

自院の分

自院の分

自院の分

看護師

自院の分

自院の分

自院の分

自院の分

見ない

受付・医療事務

自院の分

受付に必要な項目だけ

連絡した・つながらなかった、の記録だけ

自院の分

見ない

他院の職員

見ない

見ない

見ない

見ない

見ない

この表ができていれば、開発会社は権限の仕組みと、その確かめ方(例:A院の受付のIDで、B院の患者の問診が開けないこと)を見積に入れられます。表が無いまま発注すると、権限はあとから足す扱いになり、作り直しが出やすくなります。

開発の範囲に入れておくものは、次のとおりです。

  • 職員ごとのID(共用IDを作らない)と、退職・異動のときに止める手順
  • 誰がいつ、どの患者の情報を見たか・直したかの記録
  • 一覧の印刷やCSVでのダウンロードを、どの役割に許すか
  • データを残す期間と、期間が過ぎたときの消し方

診療録の保存期間は医師法24条で5年と決まっていますが、予約や問診、申し送りのデータは項目ごとに法定の扱いが違い、この記事では項目別の期間までは確かめていません。ガイドラインは法定の保存義務の有無を問わず、医療情報を含む文書全般を対象にしています。院内で「何を・何年残し・どう消すか」を決め、それをシステムに反映してください。

開発の途中でどのデータを使うかも、契約の前に決めておきます。画面の確認は架空の患者データで進め、実データを入れるのは院内で権限と取り扱いを決めてから、という順番にすると安全です。

担当の分け方と、完成の確かめ方

開発チームが複数のモニターに向かって作業しているオフィス

医療機関と開発会社、電子カルテのベンダーで、誰が何をするかを先に分けておくと、見積の前提がぶれません。

作業

医療機関

開発会社

電子カルテのベンダー

予約・問診・連絡の流れと例外(当日キャンセル、代理の受診など)を決める

決める(事務長・院長)

抜けや矛盾を指摘し、画面に反映する

—

出せるデータと連携の窓口を確かめる

問い合わせる

聞く項目を用意する

回答する

権限の表と保存期間を決める

決める

仕組みを作り、確かめる

—

架空データでの確認

画面を触って意見を出す

架空データを用意し、直す

—

実データでの確認

前月分などで数字を照合する

差が出た原因を調べる

出力の不明点に答える

職員への説明・院内のルール

決めて周知する

操作の説明資料を用意する

—

完成の条件は、数字で確かめられる形にしておきます。下は検証の手順と合格の条件の例で、当社が実際に検証した結果ではありません。

確かめること

手順

合格の条件

予約が漏れなく1つにまとまるか

架空の1日分(Web・電話・LINEの予約)を入れ、受付の手書き台帳と比べる

件数が一致し、同じ患者の二重予約は警告が出る

検査結果の連絡漏れに気づけるか

「連絡済み」にしない結果を3件残したまま翌日を迎える

3件すべてが翌朝の一覧に出る

権限どおりに見える範囲が制限されているか

職種・院ごとのテスト用IDで、見えてはいけない患者・画面を開く

すべて開けない

集計が正しいか

電子カルテから出した前月分のCSVを取り込み、レセコンの帳票と比べる

院ごとの来院数・新患数が一致する。一致しない行は理由が説明できる

取り込みの失敗に気づけるか

列が欠けたCSVを取り込む

エラーが表示され、集計に混ざらない

費用の目安と依頼の形

当社に頼む場合の価格は、次のとおりです(税別)。

依頼の形

価格

合う状況(医療機関の例)

既存システムの改修

100万円〜

院内で使っている独自の予約台帳・集計ツール・画面があり、院の追加・項目の追加・権限の見直し・ほかのサービスとの連携をしたい

PoC

300万円〜

新しく作る前に、1つの業務(例:2院の予約の一元化、検査結果の連絡管理)で、仕組みが院内の流れに合うかを確かめたい

本開発

個別見積

PoCで確かめた範囲を、全院・複数の業務に広げて本番で使う

PoCの300万円は、本番で使うシステムの完成価格ではありません。PoCで確かめた結果をもとに、本開発の範囲と金額をあらためて決めます。

費用に含まないものは、次のとおりです。

  • 電子カルテ・レセコンのライセンス料と、連携・出力オプションの費用(ベンダーに支払うもの。製品ごとに違います)
  • 予約システム・Web問診などの既製サービスの利用料
  • クラウドの利用料、SMS・LINEなどのメッセージ送信の従量課金
  • 二要素認証に使う端末や、職員用のPC・タブレット

作らずに済ませる場合の目安として、汎用の業務アプリの作成ツールでは、たとえばkintoneがスタンダードコース1ユーザー月1,800円(税抜、最低10ユーザー。外部連携やAPIを使えないライトコースは1,000円)です(kintone 料金、2026-10-18 確認)。申し送りや備品の管理だけなら、こうしたツールで足りることもあります。どのツールを使う場合も、患者情報を入れるなら前の節の確認項目は同じです。クリニック向けの予約システムやWeb問診の料金は、この記事では公式サイトで公開されている価格を確かめられなかったため載せていません。各社に問い合わせてください。

価格の前提と、相談からPoC・本開発までの進め方は、既存システムの改修・PoCの価格と進め方で確かめられます。見積の内訳の読み方は「業務システム開発の費用相場と見積内訳」、業種を問わない作る範囲の決め方は「業務システム開発の進め方」で説明しています。

近い構成の公開事例(医療機関ではなく薬局の案件)

当社には、クリニックや病院のシステムを開発した公開実績はありません。近い構成の例として、薬局の案件を紹介します。

当社は、薬局の複数店舗・数千人分の記録管理、権限、確認工程を開発しました。複数の店舗で扱う記録を1つの仕組みで管理し、誰がどの記録を見られるかの権限と、記録を確かめる工程を最初から範囲に入れた案件です。この記事で説明した「院ごとに見える範囲を分ける」「漏れを確かめる工程を画面に入れる」と構成は近いものの、電子カルテとの連携や、医療機関の予約・問診を扱った案件ではありません。

対応できる範囲としては、予約・問診・連絡・申し送りの画面、電子カルテやレセコンから出したCSVの取り込みと複数院の集計、既製の予約システムやWeb問診・チャットツールとの連携(公開されているAPIや、決まった出来事を自動で知らせる仕組み、CSVなど)、院や職種ごとの権限、Excelや独自ツールからのデータ移行、他社が作ったシステムの調査・改修、院内でAIを使って作った試作の本番化をご相談いただけます。特定の電子カルテとの連携実績があるわけではないため、つなぎ方は、使っている製品の仕様をベンダーに確かめてから一緒に決めます。

薬局の記録管理の考え方は「薬局チェーンの記録管理と情報共有の仕組み」、請求の前のチェックの自動化は「レセプトチェック自動化の費用」で紹介しています。

相談の前にそろえておくと早いもの

相談の時点で要件が決まっている必要はありません。次のものがあると、作る範囲の候補を早く出せます。

  • 院の数と、院ごとに使っている電子カルテ・レセコン・予約システム・Web問診・チャットツールの製品名
  • 電子カルテのベンダーに聞いた結果(出せるデータ・連携の窓口・費用)があれば、その内容
  • 紙や別のツールで回している業務と、1日の件数・1件の時間のおおよそ(上の記入表の書きかけでかまいません)
  • 使っている紙の台帳や申し送りの様式(患者名を消したもの、または項目名だけ)
  • 誰に何を見せたいかのイメージ(権限の表の書きかけでもかまいません)
  • 数年内に電子カルテを入れ替える予定があるか

患者の氏名や問診の内容、検査結果など実際の患者情報と、システムのIDやパスワードは、相談の段階では送らないでください。

初回相談は無料・30分(オンライン)です。要件が決まっていなくても大丈夫です。今の予約・問診・連絡の流れと使っているツールを伺い、既製サービスで足りる部分と作る部分を一緒に切り分けます。相談後に、業務の棚卸し表・効果の見立て・簡易モックと、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモを無料でお送りします。簡易モックは画面のイメージで、動くシステムではありません。

今の予約・問診・連絡の流れと使っているツールを伺い、電子カルテの外側に作る範囲を相談する

よくある質問

電子カルテのデータを、毎日自動で業務システムに取り込めますか

製品によります。ベンダーが連携の窓口(APIや連携オプション)を用意していれば、その範囲で自動にできます。窓口が無い場合は、ベンダーが用意している出力機能でCSVを出し、それを取り込む形が現実的です。毎日の出力作業が受付の手間として残るので、その時間も含めて効果を見積もってください。ベンダーの了解なくデータベースへ直接つなぐ方法は、保守契約や更新のときの不具合の面から勧めません。

問診の内容を生成AIで要約させてもよいですか

ガイドラインQ&A(企画管理編Q18)は、入力した情報が学習などのために保存されないことが契約などで担保されていれば、サーバが日本の法律の適用を受ける場所にあることは必須ではない、としています。まずは使うAIサービスの契約条件で、入力したデータの保存と学習への利用の扱いを確かめてください。要約の結果は医師や看護師が確認してからカルテに残す、という手順も業務の流れに入れておきます。

院内の職員がAIを使って作ったExcelや簡単な画面を、そのまま使い続けてもよいですか

患者の情報を入れているなら、自院で作ったものもガイドラインの対象です(概説編2.3)。使い続けるなら、誰が見られるか、どこに保存されているか、作った職員が辞めたあと誰が直せるか、を確かめてください。作り直す必要はなく、権限・記録・バックアップを足して本番で使える形にする、という頼み方もできます。院内でAIを使って改善を続けたい場合は、その進め方も含めてご相談ください。

標準型電子カルテが出るまで待ったほうがよいですか

国は医療DXの工程表で、「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」としており、診療所向けの標準型電子カルテの準備も進んでいます(厚生労働省「電子カルテの普及について」令和8年3月12日、2026-10-18 確認)。ただ、本格的に使える時期や外部とつなぐ仕様は、この記事の時点では確かめられていません。電子カルテに触れない業務(予約の取りまとめ、連絡の管理、申し送り)は入れ替えの影響を受けにくいので、困っているなら先に進めてもよい部分です。カルテとの連携部分は、入れ替えの予定が決まってから作るほうが無駄が出ません。

歯科医院でも同じ考え方で進められますか

電子カルテ・レセコンの外側を4段階に分ける考え方と、ガイドラインの確認項目は、歯科診療所でも同じです(ガイドラインの対象に歯科診療所が含まれます)。歯科で予約の変更や無断キャンセルの対応に時間を取られているなら、予約まわりから件数と時間を数えると、効果を見積もりやすくなります。歯科でのAIの使いどころは「歯科医院のAI活用事例」で紹介しています。

作ったシステムの保守は、誰が担うのですか

開発会社に任せるか、院内で担うか、電子カルテのベンダーに含めてもらうかを、契約の前に決めます。ガイドラインでも、委託するなら責任の分け方を書面で残すことが求められています。決めておく項目は、障害のときの連絡先と対応時間、クラウドや部品の更新を誰がするか、職員の追加・削除を誰がするか、仕様を変えたいときの頼み方と費用の扱いです。保守の範囲と費用は、開発の見積とは別に示してもらってください。


初回相談は無料・30分(オンライン)です。電子カルテに手を入れずに作れる範囲と、既製サービスで足りる範囲の切り分けから一緒に考えます。

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