補助金を使った業務自動化の実例|費用・自己負担額・入金時期【2026年9月最新】

この記事のポイント
補助金を使った業務自動化の実例を、公式が公表する効果データと制度の補助率から逆算。対象経費900万円で補助額450万円、補助後の自己負担額、2026年9月29日締切で申請した場合の入金時期(4〜8ヶ月後)まで数字で解説します。
補助金を使った業務自動化は実際に成立します。ただし補助されるのは初期費用の半分(デジタル化・AI導入補助金 通常枠は補助率1/2、対象経費900万円で補助額450万円が上限)で、その450万円が振り込まれるのは申請から4〜8ヶ月後。それまでは全額を自社が立て替えます。
そしてもうひとつ、実例を探す前に知っておくべきことがあります。自社の業務に合わせて作るオーダーメイドの自動化は、この補助金では原則対象外です。この記事では、公式が公表している実例と、そこから逆算した「費用→補助額→補助後の自己負担額」、入金までの実日程、そして補助金が使えないタイプの自動化をどう判断するかまでを、すべて数字で書きます。
「業務自動化の実例」を調べても自社の金額が出てこない理由

補助金の活用事例を探すと、「A社が販売管理システムを導入して業務時間が30%削減されました」という記事が並びます。読んでも自社の判断材料にならないのは、どの記事にも「いくらかかって、いくら補助されて、自己負担がいくらだったか」が書かれていないからです。
理由ははっきりしています。制度の実施主体である中小機構が公開している活用事例は、効果は数値で公表しているが、導入費用と補助額は非公表だからです。つまり「実例の費用」を書いている記事は、公式データではなく推計か、その会社の自社顧客の話です。
だからこの記事は逆の順番で書きます。公式が出している効果の実例を先に見て、そのあと制度の補助率から自己負担額を機械的に逆算する。この方が読者が自社の金額に置き換えられます。
公式が公表している業務自動化の実例
中小機構が公開しているITツール活用事例(全34事例)から、省人化・時間削減の効果が数値で公表されているものを抜き出しました。
企業 | 業種・規模 | 導入したもの | 公表されている効果 |
|---|---|---|---|
有限会社天女山 | 林業・11〜30名 | 3D GISツール | 森林調査にかける人員が約8割減 |
株式会社エヴァーズ | 物品賃貸業・31〜50名 | 貸衣装管理ツール | 残業時間が10分の1に |
株式会社かがし屋 | 小売業・101〜300名 | 携帯電話販売管理ツール | 棚卸時間が50%削減見込み |
有限会社山藤運輸 | 運輸業・31〜50名 | 販売管理ツール | 売上集計処理時間が30%以上短縮 |
株式会社河北 | 建築・土木業・51〜100名 | 工事原価作成ツール | 年間120万円のコスト削減、利益率0.17%増 |
株式会社ニッセイ | 建設業・11〜30名 | クラウド会計+AI | AIによる自動仕訳で経理処理を効率化 |
有限会社田中住建 | 建設業・1〜5名 | 住宅営業支援+AI | 見積書作成にかかる工数を削減 |
杏亭グループ | 飲食業・31〜50名 | POSレジ・オーダーシステム | 会計ミス9割減、食材ロス4割減 |
この34件を通して見ると、実例の性格がわかります。
- ほぼ全てが「パッケージのSaaSを導入した」話。RPAを使った事例は34件中1件、AIと明記された事例は3件程度
- 金額まで踏み込んでいるのは河北(年間120万円削減)の1社だけ。他は「時間が減った」「人員が減った」で止まっている
- 費用と補助額はどの事例も非公表
つまり、公式の実例は「この業務は減らせる」という証拠にはなりますが、「いくらで減らせる」の答えにはなりません。その部分は制度の数字から自分で計算する必要があります。
費用 → 補助額 → 補助後の自己負担額の逆算表

ここが本題です。デジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金)通常枠の公式補助率だけを使って、自己負担額を計算します。
補助率1/2の場合(一般的な中小企業はこちら)
補助対象経費(税抜) | 補助額 | 補助後の自己負担額 | 区分 |
|---|---|---|---|
100万円 | 50万円 | 50万円 | 1〜3プロセス |
200万円 | 100万円 | 100万円 | 1〜3プロセス |
300万円 | 150万円 | 150万円 | 4プロセス以上 |
600万円 | 300万円 | 300万円 | 4プロセス以上 |
900万円 | 450万円(上限到達) | 450万円 | 4プロセス以上 |
1,200万円 | 450万円(上限) | 750万円 | 超過分は全額自己負担 |
補助額の枠は、1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下です。
補助率2/3の場合(条件を満たしたときだけ)
補助対象経費(税抜) | 補助額 | 補助後の自己負担額 |
|---|---|---|
150万円 | 100万円 | 50万円 |
225万円 | 150万円 | 75万円 |
450万円 | 300万円 | 150万円 |
675万円 | 450万円(上限到達) | 225万円 |
多くの記事が「最大2/3補助」と書いていますが、条件があります。公式の記載は「令和6年10月から令和7年9月までの間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上であること」。該当する企業は限られるため、通常は1/2で試算してください。
自己負担額を必ず押し上げる3つの要素
上の表は「補助対象経費」に対する計算です。実際の支出はこれより増えます。
- 消費税は対象経費に含まれません。補助金の計算は税抜で行われるため、消費税分は自己負担です
- クラウド利用料の補助は最大2年分まで。3年目以降の月額は100%自社負担になります。自動化は買い切りではなく、ランニングが続きます
- 登録ITツール以外の付随費用は対象外になりやすい。既存システム側の改修、社内の運用設計、データの整備といった費用は補助されないことが多いです
だから「補助後の自己負担額」は、導入年の1年だけを見ても意味がありません。3年で見るのが実務的な判断です。
3年で見た場合の総額
たとえば毎月の定型業務を代行するAI社員型のサービス(当社のシゴハヤエージェントは初期100万円+月額10〜50万円・税別、10名規模で月10万円、30名規模で月20万円)を10名規模で3年使う場合は、100万円+10万円×36ヶ月=460万円(税別)です。
仮に初期の100万円が補助率1/2の対象になったとしても、自己負担は50万円+360万円=410万円。3年総額の11%しか減りません。 これが「補助金で半分になる」の実際の効き方です。
なお、当社のようなオーダーメイド型のサービスが補助金の対象になるかは、事務局に登録されたITツールに該当するかどうかで決まります。「補助金が使えます」と断定できる話ではないため、まず対象になるかの確認から始める必要があります。(対象範囲の詳細はAI導入補助金で生成AIは対象になるかで整理しています)
補助金が入金されるのはいつか(次の締切で申請した場合の実日程)
「実質負担50万円」という表現の最大の落とし穴は、その状態になるのが1年近く先だという点です。この補助金は後払い(精算払い)で、導入費用はいったん全額を自社が立て替えます。
2026年9月29日の締切で申請した場合
ステップ | 時期 |
|---|---|
事前準備(GビズID取得・SECURITY ACTION宣言・支援事業者の選定) | 〜2026年9月下旬 |
交付申請 締切 | 2026年9月29日(火)17:00 |
交付決定(予定) | 2026年11月9日(月) |
ここで初めて発注・契約・支払いが可能になる | 2026年11月9日以降 |
導入・稼働(補助事業の完了) | 2026年11月〜2027年4月 |
事業実績報告 期限 | 2027年4月30日(金)17:00 |
確定検査・補助金額の確定 | 実績報告後 |
補助金の入金 | 実績報告の確定後 約1〜2ヶ月 |
この日程から逆算すると、入金時期はこうなります。
- 最速ケース(交付決定後すぐ導入し、年内に実績報告):2026年9月申請 → 2027年1〜2月頃に入金。約4〜5ヶ月
- 期限いっぱいケース(実績報告を2027年4月30日に提出):2027年5〜7月頃に入金。約8ヶ月
締切日当日の17:00で申請マイページからの提出ができなくなります。公式のスケジュール表には6次・7次締切分の行が用意されていますが、通常枠の6次以降の締切日は本記事執筆時点で未発表です(2026年10月30日(金)17:00という日付は公表されていますが、これは別枠である「複数者連携デジタル化・AI導入枠」のものです)。公募スケジュールは確定した回のみを公表し随時更新する方式のため、「まだ次がある」とも「これが最後」とも断定できません。 予算上限に達した枠から早期終了する可能性も示されているため、申請前に必ず公式スケジュールを確認してください。
より詳しい資金繰りの考え方は補助金の入金はいつになるか、締切の最新状況はデジタル化・AI導入補助金の締切にまとめています。
交付決定前に契約すると全額対象外になる
もっとも多い失敗がこれです。交付決定前に発注・契約・支払いを行ったものは補助対象外。「先に導入して、あとから申請する」は制度上できません。導入を急いでいる会社ほど、この順序で判断が変わります。
自動化できる業務・できない業務の境界線

補助金の話の前に、そもそもその業務が自動化に向いているかを見極める必要があります。ここを飛ばして制度から入ると、通ったのに使われないシステムが残ります。
自動化できる業務 | 自動化できない業務 |
|---|---|
毎日・毎週・毎月、繰り返し発生する | 発生が不定期で、毎回内容が違う |
入力も出力もデジタルで完結する(CSV、メール、システム画面) | 紙の書類や対面のやり取りが前提になっている |
「こうなったらこうする」を言葉でルール化できる | 毎回その場の例外判断が入る |
判断を間違えたときに人が気づける仕組みが作れる | 最終決裁をそのまま任せたい |
処理の結果が正しいかを後から確認できる | 何が正解かが人によって違う |
具体的にどちらに入るかで言うと、次のようになります。
自動化できる側の例
- 各店舗・各部署から集まるExcelやCSVを突合して月次レポートにまとめ、決まった宛先に配信する
- 商談記録を顧客管理システムに入力し、決まったフォローメールを送る
- 商品マスタやカタログの更新を、元データの変更に合わせて反映する
- 受け取ったデータと基幹システムの数字を照合し、差分だけを一覧にする
自動化できない側の例
- 顧客ごとに条件が変わる値引きの判断
- 例外対応そのものが本体になっている業務(返品・クレーム・イレギュラーの調整)
- 採用や人事評価のように、最終判断を人が負うべきもの
- 紙で受け取って紙で返す業務(先に受け渡しをデジタルにするのが順序)
補助金の観点でもうひとつ境界があります。この補助金は事務局に登録された汎用のITツールを導入するための制度で、「1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェア」であることが要件です(汎用プロセスのみの申請は不可)。そのため、自社業務に合わせて作るオーダーメイドの開発は原則として対象外になります。公式の34事例が全てパッケージSaaSの導入事例なのは、制度の設計上そうなるからです。
業務ごとの線引きはAIエージェントに任せられる業務の範囲も参考にしてください。
削減時間の試算:月何時間の業務なら投資が合うか
ここは正直に書きます。業務自動化は、対象業務が小さいと絶対に合いません。 補助金があっても同じです。
前提の置き方
時間の金額換算は、担当者の時給3,000円(年収450万円前後の正社員に法定福利費・間接費を含めた社内単価の目安)で計算します。
月20時間の月次レポート作成 × 時給3,000円 = 月6万円 / 年72万円
これが「月次レポートを自動化して年72万円」の中身です。数字だけ見ると効果がありそうですが、初期100万円+月額10万円のサービスで受けるなら、月額10万円に対して削減が月6万円なので、そもそも回収できません。
業務の規模別・回収シミュレーション
初期100万円+月額10万円(10名規模の構成・税別)を前提に、対象業務の規模ごとに回収月数を出しました。累計コスト=100万円+10万円×n(ヶ月)、累計削減=時給3,000円換算の月額×n で計算しています。
対象業務の合計時間 | 時給3,000円換算 | 年間換算 | 投資回収の目安 |
|---|---|---|---|
月20時間 | 月6万円 | 72万円 | 回収できない(月額に届かない) |
月34時間 | 月10.2万円 | 122万円 | 月額分はまかなえるが、初期100万円が回収できない |
月50時間 | 月15万円 | 180万円 | 約20ヶ月(1年8ヶ月) |
月80時間 | 月24万円 | 288万円 | 約7ヶ月 |
月100時間 | 月30万円 | 360万円 | 約5ヶ月 |
読み取り方はシンプルです。
- 月50時間(=月15万円相当)が現実的な下限。これを下回る業務単体では投資が合いません
- 逆に月80時間を超える規模なら1年以内に回収します
- 30名規模になると月額は20万円になるため、必要な削減規模も倍になります
「1業務では足りないが、束ねると足りる」ケースが多い
現場でよくあるのは、月次レポート20時間・データ突合15時間・請求書の発行と送付20時間・マスタ更新10時間が別々の担当者に分散していて、合計すると月65時間というパターンです。1業務ずつ見ると合いませんが、束ねると成立します。自動化の対象を決めるときは、業務単位ではなく「同じ性質の作業の合計」で見てください。
補助金が乗った場合はどう変わるか
仮に初期100万円が通常枠1/2の対象になった場合、自己負担は50万円です。月50時間規模の業務なら回収は約20ヶ月から約10ヶ月に短縮します。ただし前述のとおり、その50万円が戻るのは申請から4〜8ヶ月後です。回収が早まるのは補助金が入金されたあとであって、キャッシュフロー上は先に全額が出ていきます。
効果の測り方そのものは自動化の効果測定で詳しく扱っています。
業務自動化を実現する方法は3つある
補助金の対象になりやすい順に並べると、選択肢は3つです。フラットに比較します。
1. パッケージのSaaSを導入する
会計、販売管理、勤怠、在庫といった既製のクラウドサービスを入れる方法です。
- 費用の目安:初期0〜50万円、月額は1人あたり数百円〜数千円。全社で月数万円〜十数万円
- 補助金:最も乗りやすい。公式の34事例はほぼ全てこれ
- できること:その業界・その業務の標準的なやり方に自社を合わせられるなら、これが最も安く速い
- できないこと:自社独自の帳票フォーマットや、複数システムをまたぐ処理は手作業として残る
2. RPA・ノーコードツールで自動化する
画面操作を記録して繰り返させる、あるいは業務の流れを画面上で組み立てるタイプです。
- 費用の目安:一般に言われる相場で年間ライセンス120万円クラス。補助率1/2が適用されれば実質60万円
- 補助金:登録ITツールであれば対象になりうる
- できること:既存システムを変えずに、決まった手順の繰り返しを自動化できる
- できないこと:画面の仕様が変わると止まります。作った本人が異動すると誰も直せなくなるのが典型的な失敗で、保守の人件費が別途かかります(RPAの保守コスト)
3. AIエージェント(自社専用の自動実行)を作る
自社の業務手順そのものをAIに実行させる方法です。データを取りに行き、突合し、決めたルールに沿って処理し、結果を配信するところまでを一連で任せます。
- 費用の目安:初期100万円+月額10〜50万円(税別)。導入期間は標準1〜2ヶ月
- 補助金:オーダーメイドは原則対象外。登録ITツールに該当するかは個別確認が必要
- できること:複数システムをまたぐ処理、表記ゆれのあるデータの突合、フォーマットが揃っていない資料の読み取りなど、RPAが苦手な部分
- できないこと:例外判断が業務の本体になっている仕事、最終決裁
選び方の目安
状況 | 適した方法 |
|---|---|
業務のやり方を標準的なものに合わせられる | パッケージSaaS |
既存システムを変えられず、手順が完全に固定されている | RPA・ノーコード |
複数システムにまたがり、データの表記が揃っていない | AIエージェント |
社内にツールを保守できる人がいない | AIエージェント(運用ごと外に出す) |
ノーコードとAIエージェントの違い、エンジニアがいない会社の業務自動化もあわせてご覧ください。
オーダーメイドの自動化に使える補助金の代替ルート

出典:ものづくり補助事業公式ホームページ(全国中小企業団体中央会)
自社業務に合わせた自動化はデジタル化・AI導入補助金では原則対象外ですが、他の制度に道があります。いずれも締切と要件が異なります。
制度 | 次の締切 | 補助上限・補助率 | オーダーメイド開発の扱い |
|---|---|---|---|
中小企業省力化投資補助金(一般型)第8回 | 2026年10月中旬(予定。公募開始2026年8月18日、申請受付は9月中旬予定) | 従業員規模別に最大1億円クラス/中小1/2・小規模2/3 | オーダーメイドの設備・専用システムが対象。「機械装置・システム構築費」が必須経費 |
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回 | 2026年10月30日(金)18:00(申請受付開始 2026年9月30日) | 最大9,000万円クラス | オーダーメイドのAIシステムも対象になりうるが、新市場開拓や高付加価値化が主眼。既存業務の効率化だけでは通りにくい |
業務改善助成金(令和8年度) | 2026年9月1日受付開始/期限は「都道府県最低賃金の発効日前日」または2026年11月30日の早い方 | 最大600万円/助成率は事業場内最低賃金1,050円未満で4/5、1,050円以上は3/4以下 | 賃上げとセット。生産性向上に資する設備投資が対象 |
省力化投資補助金 第8回は執筆時点で受付開始日・締切日ともに「予定」の段階です。業務改善助成金は令和8年度から30円・45円・60円コースが廃止され、50円・70円・90円の3コースに再編、受付開始も9月1日に変更されています。いずれも申請前に公式サイトで最新の公募要領を確認してください。
制度の使い分けはAI導入補助金とものづくり補助金の比較で詳しく整理しています。
実例の約6割は表に出ない:通常枠の採択率は42.2%
活用事例として世に出るのは、当然ながら採択された会社だけです。母数を見ておく必要があります。
3次締切分の交付決定結果(2026年9月2日公表・執筆時点の最新)
枠 | 申請 | 交付決定 | 採択率 |
|---|---|---|---|
通常枠 | 1,913者 | 807者 | 42.2% |
インボイス枠(対応類型) | 3,982者 | 1,781者 | 44.7% |
セキュリティ対策推進枠 | 18者 | 13者 | 72.2% |
合計 | 5,913者 | 2,601者 | 44.0% |
1次締切分も通常枠43.9%、インボイス枠46.9%とほぼ同水準です。通常枠は2社に1社も通りません。
ここから導かれる実務的な判断は次のとおりです。
- 採択される前提で導入計画を立てない。落ちたときにどうするかを先に決めておく
- 「補助金が通ったらやる」で止めると、不採択のたびに半年ずつ後ろにずれます
- 自己負担額のままでも投資判断として成立するなら、補助金は「通ったら得」の位置づけにしておくのが安全です
実際にやった事例:複数店舗の調剤薬局のケース

補助金の公式事例には載らないタイプの自動化として、当社が実際に手がけたケースを紹介します。守秘のため社名は伏せます。
課題
複数店舗を運営する調剤薬局で、本部の担当者が毎月、各店舗から届く処方・在庫・売上のデータをExcelに集約し、店舗別の集計表と本部向けレポートを作っていました。データの形式が店舗ごとに微妙に違い、商品名の表記ゆれもあるため、突合と手直しに時間がかかる。この作業だけで月35時間前後、月初の数日が担当者1名でほぼ埋まる状態でした。当然、月初は他の仕事が動きません。
作ったもの
各店舗から届くファイルを自動で取り込み、表記ゆれを吸収して突合し、店舗別・商品別に集計してレポート化し、決まった宛先に配信するところまでを実行するAI社員です。あわせて、差分が一定以上出た項目だけを「要確認」として人に上げる仕組みを入れました。全部を任せるのではなく、確認すべきものだけを人に回す設計です。
何がどう変わったか
月35時間かかっていた作業が、確認と例外対応の月4時間程度になりました。時給3,000円換算で月約9.3万円、年間約112万円の削減にあたります。それ以上に効いたのは、月初の3営業日が空いたことでした。担当者は在庫と発注の見直しに時間を使えるようになっています。
このケースで補助金は使っていません。 自社業務に合わせて作ったオーダーメイドのため、登録ITツールを導入する制度の枠に入らなかったからです。補助金なしでも判断が成立したのは、対象業務の規模が月35時間あり、かつ他の定型業務も同じ仕組みに乗せられる見通しがあったためです。
導入したのに使われなくなるパターンについては業務自動化が定着しない理由にまとめています。
導入までの流れと期間
補助金を使う場合と使わない場合で、動き方が変わります。
補助金を使う場合(デジタル化・AI導入補助金)
- GビズIDプライムの取得(発行まで数週間かかることがあるため最初に着手)
- SECURITY ACTIONの宣言
- IT導入支援事業者の選定と、導入するITツールの決定 — この制度は支援事業者との共同申請が必須で、自社単独では申請できません(IT導入支援事業者とは)
- 交付申請(2026年9月29日17:00。以降の回次の締切日は執筆時点で未発表)
- 交付決定を待つ(約41日)
- 交付決定後に発注・契約・支払い — この順序を逆にすると全額対象外
- 導入・稼働
- 事業実績報告(2026年9月29日締切の回は2027年4月30日17:00が期限)
- 確定検査 → 入金(実績報告の確定後 約1〜2ヶ月)
- 事業実施効果報告(事業終了後も定められた期間・回数で提出義務あり。未提出は返還対象)
補助金を使わない場合(AI社員型のサービスを導入する場合)
- 対象業務の洗い出しと時間の計測(1〜2週間)— 何にどれだけ時間がかかっているかを実測します
- 自動化する範囲と、人が判断を残す範囲の線引き
- 構築と現場でのテスト運用
- 本番稼働
当社のシゴハヤエージェントの場合、標準の導入期間は1〜2ヶ月です。補助金ルートは交付決定を待つだけで約1.4ヶ月、入金まで含めると4〜8ヶ月かかります。「半年待って自己負担を50万円減らす」か「来月から月15万円分の作業を減らす」かは、対象業務の規模で答えが変わります。月50時間規模の業務なら、半年待つ間の機会損失は15万円×6ヶ月=90万円。この場合は待たない方が金額的には有利です。
よくある質問
Q1. すでにツールを契約してしまいました。あとから補助金を申請できますか?
できません。交付決定前に発注・契約・支払いを行ったものは補助対象外です。既に契約済みのツールの継続費用も対象外になります。導入を検討している段階で申請も考えているなら、契約書に印を押す前に支援事業者へ相談してください。 順序を戻すことはできません。
Q2. 不採択だった場合、次はどうすればいいですか?
選択肢は3つです。①次の回次に再申請する(ただし交付決定はさらに数ヶ月先になる)、②補助金なしで自己負担額のまま実行できるか再計算する、③対象業務を広げて投資判断そのものを組み直す。通常枠の採択率は42.2%なので、不採択は例外ではなく想定内として計画を立ててください。落ちた時点で計画がゼロに戻る設計は避けるべきです。
Q3. 申請は自社だけでできますか?
できません。この制度はIT導入支援事業者との共同申請が必須です。加えて、GビズIDプライムの取得とSECURITY ACTIONの宣言が事前に必要になります。GビズIDは発行までに時間がかかるため、締切から逆算して最初に着手する項目です。
Q4. 補助金をもらったあとに義務は残りますか?
残ります。実績報告の時点で全てのITツールについて導入が完了し運用が始まっている必要があり、事業終了後も定められた期間・回数で事業実施効果報告を提出する義務があります。また補助額150万円以上の場合は賃上げに関する要件が設定されます(水準は枠・年度で変わるため申請時の公募要領で確認してください)。要件未達や効果報告の未提出があると、補助金の全部または一部を返還することになります。
Q5. 検討中のツールが補助金の対象になるか、どう確認すればいいですか?
事務局に登録されているITツールかどうかがすべてです。補助金の公式サイトでITツールを検索できるほか、IT導入支援事業者に直接確認するのが確実です。自社業務に合わせて作るオーダーメイドの開発は、この制度では原則対象外と考えてください。オーダーメイドが必要な場合は、省力化投資補助金など別制度の検討に切り替えます。
Q6. 消費税分は補助されますか?
されません。補助金の計算は税抜の対象経費で行われます。対象経費300万円・補助率1/2なら補助額は150万円ですが、実際の支払いは税込330万円なので、手元から出る自己負担は180万円です。試算するときは税込と税抜を混ぜないでください。
Q7. 補助金を待つべきか、今すぐ始めるべきかの判断基準はありますか?
「補助額」と「待っている間の機会損失」を比べてください。式は単純です。対象業務の月間削減額 × 待つ月数 と、見込める補助額の比較。 月50時間(時給3,000円換算で月15万円)の業務で、交付決定まで約1.4ヶ月・入金まで4〜8ヶ月かかる場合、半年待つ機会損失は90万円。対して補助額が50万円なら、待たない方が40万円得です。逆に対象経費が大きく補助額が数百万円規模になるなら、待つ判断に合理性があります。
業務自動化が自社に合うか、まず数字で確かめてください
補助金を使った業務自動化の実例を調べている段階でつまずくのは、たいてい「制度が使えるか」ではなく「そもそも自社のその業務は自動化して合うのか」の方です。月50時間を下回る業務なら、補助金があってもなくても投資は合いません。逆に複数の定型業務を束ねて月80時間を超えるなら、補助金を待たずに1年以内で回収できます。
シゴハヤエージェントは、御社専用のAI社員が毎月繰り返す定型業務を自動で実行するサービスです。初期100万円+月額10万円〜(税別。10名規模で月10万円、30名規模で月20万円。処理量に応じて月10〜50万円)、標準の導入期間は1〜2ヶ月。 薬局・医療機関・インフラ企業など、複数のシステムを使いながら定型業務が積み上がっている中堅企業での実績があります。
- 対象業務が月何時間あり、金額に直すといくらか
- その業務が自動化できる側か、例外判断が本体で難しい側か
- 補助金の対象になりうるか、対象外でも自己負担で合うか
このあたりを一度整理したい段階でご相談ください。要件が固まっていない状態でも構いません。 まずは「その業務は自動化して合うのか」を数字で判断できるところまでご一緒します。
※補助金の制度内容・締切・補助率は変更されることがあります。申請にあたっては必ず公式サイト(中小機構 デジタル化・AI導入補助金2026)で最新の公募要領をご確認ください。
補助金の枠内で導入できる範囲を試算します
補助金前提で相談するこの記事の著者

AI革命
編集部
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