AIコーディング2026年8月更新

Ox Alphaとは?OpenRouter1位の謎のステルスAIモデル|正体GLM説・100万トークン無料の使い方と注意点

公開日: 2026/08/26
Ox Alphaとは?OpenRouter1位の謎のステルスAIモデル|正体GLM説・100万トークン無料の使い方と注意点

この記事のポイント

Ox Alphaは開発元非公開のままOpenRouterでトークン処理量1位となったステルスAIモデル。100万トークン文脈と無料の実態、正体GLM説の根拠と反証、経路別のデータ保持ポリシー、企業利用の判断基準を事実と推測に分けて解説します。

Ox Alpha(オックス・アルファ)は、開発元を明かさないまま2026年8月20日にOpenRouterとOpenCodeへ同時登場した「ステルスモデル」で、約100万トークンの文脈長を持つコーディング・エージェント向けの推論モデルです。2026年8月26日時点ではAPI利用料が入力・出力ともに無料で、8月25日にはOpenRouter全体のトークン処理量で1位(約5.8兆トークン/日、上位12モデル中の占有率およそ53%)を記録しました。

一方で、開発元・学習データ・ライセンス・無料期間の終了日・データの保存場所は、いずれも公式には一切公表されていません。この記事は、「何が確定していて、何が有力な推測で、何がまだ未確認なのか」を明確に切り分けたうえで、実務で使ってよい範囲を判断できるようにまとめています。

この記事でわかること:

  • Ox Alphaの確定スペック(文脈長・最大出力・モダリティ・実測速度)と料金の現状
  • 「正体はZ.aiのGLM系」という説の技術的根拠と、その反証・限界
  • 「1日100兆トークン無料」という表現の正しい読み方
  • OpenRouter経由とOpenCode経由でデータ保持ポリシーが違うという実務上の落とし穴
  • 無料期間が終わったあとの退避先と、企業利用の判断チェックリスト

想定読者: OpenRouterやOpenCodeでOx Alphaを見かけて試すか迷っている開発者、社内でAIコーディングツールの利用可否を判断する立場の方、無料の高性能モデルを業務に取り込むリスクを見極めたい方。

Ox Alphaとは — 開発元非公開のまま1位になった推論モデル

OpenRouterのOx Alphaモデルページ。コンテキスト1.05M・料金Free・2026年8月20日リリースと表示されている

出典: OpenRouter「Ox Alpha」モデルページ(2026年8月26日時点)

Ox Alphaは、匿名の第三者プロバイダが提供する、コーディングと長時間のエージェント作業に特化した推論モデルです。OpenRouter上のモデルIDは stealth/ox-alpha。モデル説明では「コーディング、持続的なエージェント作業、本番ワークロード向けに設計された推論モデル」と自称しています。

項目

内容(2026年8月26日時点)

名称

Ox Alpha(オックス・アルファ)

モデルID(OpenRouter)

stealth/ox-alpha

モデルID(OpenCode Zen)

opencode/x-preview-f-free(表示名: Ox Alpha Free)

提供元

匿名の第三者プロバイダ(未公表)

公開日

2026年8月20日

コンテキストウィンドウ

1,048,576トークン(約100万)

最大出力

131,072トークン

入力モダリティ

テキスト / 画像 / 動画

出力モダリティ

テキストのみ

料金

入力 $0 / 出力 $0(プレビュー期間中)

提供経路

OpenRouter API / OpenCode / Webのチャット画面

ここで最初に押さえておくべきなのが、OpenRouterはこのモデルの提供者ではないという点です。OpenRouterはモデルページで次のように明記しています。

Ox Alphaは、このプレビュー期間中に匿名でいることを選んだ第三者プロバイダによって開発・運用されているステルスモデルです。OpenRouterはリクエストをルーティングしているだけであり、開発元でもオーナーでもプロバイダでもありません。

つまりOpenRouterは取り次ぎ役に徹しており、モデルの品質・素性・データの取り扱いをOpenRouterが保証しているわけではありません。誰が運用しているか分からないモデルに自分のプロンプトを渡している、という構図がこのモデルの本質です。OpenRouterというプラットフォーム自体の仕組みについては「OpenRouterとは|400以上のモデルを1つのAPIで使える統合基盤」で解説しています。

「確定」「有力」「未確認」の3段階で仕分ける

Ox Alphaに関する情報は、確定した事実と憶測が混在した状態で拡散しています。判断を誤らないために、まず3段階に仕分けておきます。

ラベル

内容

確定(公式ページで確認可能)

モデルID、公開日が2026年8月20日、文脈長1,048,576トークン、最大出力131,072トークン、入力にテキスト・画像・動画対応、現時点で無料、OpenRouterは提供元ではないこと

有力(第三者検証で強く示唆)

系統がZ.ai(Zhipu AI)のGLM系である可能性、無料期間が8月27日前後に終了する見込み、DeepSWEでの実測がフルランで約63%

未確認(誰も確認できていない)

開発元の実名、学習データ・パラメータ数・ライセンス、無料終了の正確な日時、終了後の料金、データの物理的保存場所と準拠法、レート制限の具体値

以降で扱う情報も、この3つのどれにあたるかを明示しながら整理していきます。

ステルスモデルとは — 過去14件の登場と「その後」

ステルスモデル(cloaked model)とは、正式発表前のモデルを仮名かつ開発元非公開の状態で公開し、実利用データとフィードバックを集める慣行です。ブランドへの期待や先入観を排して素の性能評価を得られること、負荷試験を兼ねられることが提供側のメリットとされています。OpenRouterでは2025年4月以降、この形式が定着しました。

重要なのは、正体が確定に至ったケースは、いずれも開発元自身の発表(一次情報)がきっかけになっているという点です。第三者の技術検証がどれだけ強い示唆を出しても、それだけで確定した例はありません。

モデル

登場時期

正体

Quasar Alpha

2025/04

GPT-4.1 プレリリース版

Optimus Alpha

2025/04

GPT-4.1 後期スナップショット

Cypher Alpha

2025/07

未判明

Horizon Alpha

2025/07

GPT-5 初期チェックポイント

Horizon Beta

2025/08

GPT-5 後期チェックポイント

Sonoma Dusk Alpha

2025/09

Grok 4 Fast

Sonoma Sky Alpha

2025/09

Grok 4 Fast 大型版(推定)

Polaris Alpha

2025/11

GPT-5.1 スナップショット(推定)

Sherlock Think Alpha

2025/11

Grok 4.1 推論版(推定)

Aurora Alpha

2026/02

未判明

Hunter Alpha

2026/03

Xiaomi MiMo-V2-Pro

Healer Alpha

2026/03

Xiaomi MiMo-V2-Omni

Owl Alpha

2026/04

Meituan LongCat-2.0-Preview

Ox Alpha

2026/08

未確定(GLM系との一致が有力)

2025年4月以降にOpenRouterへ登場したステルスモデルは14件。そのうちCypher Alpha(2025年7月)、Aurora Alpha(2026年2月)、そしてOx Alphaの3件は、現時点でも正体が判明していません。登場から半年〜1年以上経っても素性が明かされないまま消えたケースがあることは、期待値を調整するうえで知っておく価値があります。

無料プレビュー期間は概ね1週間から数週間で終わり、その後に本名で正式リリースされるか、静かに消えるかのどちらかというのが過去のパターンです。Ox Alphaを本番システムに組み込む判断は、この歴史を踏まえて行う必要があります。

Ox Alphaの正体はGLM-5.3なのか — 根拠と反証

Z.ai(zai-org)が公開するGLMシリーズの公式GitHubリポジトリ。Ox AlphaのGLM説で名前が挙がる開発元

出典: zai-org/GLM-4.5 公式GitHubリポジトリ

現時点で最も有力なのは「Z.ai(Zhipu AI)のGLM系モデルである」という説ですが、Z.aiは肯定も否定もしておらず、確定していません。しかも技術的な差分を見ると、8月14日にリリースされたGLM-5.3そのものではない可能性が高いというのが実態です。

GLM系を示唆する3つの技術的根拠

第三者の研究者による検証で、次の3方向から一致が報告されています。いずれも独立した観測であり、単独よりも重なりに意味があります。

  1. トークナイザ指紋の一致 — 多言語文字列・コード・Unicodeのエッジケースを使った95種のプローブを14の候補語彙と突き合わせる検証(APIコール126回)で、8月22日時点では旧GLM語彙が84一致(次点の非GLM候補は46一致)。8月23日の追試ではGLM-5系の語彙と95/95が完全一致し、平均絶対誤差0.00という結果が報告されました。
  2. 動画トークン会計の一致 — 4本の検証動画で、既存のGLM-5V-Turboとトークン数が単位レベルで完全一致。フレームサンプリングがFPSに依存しない設計、尺に対して約147トークン/秒でスケールする挙動、フレーム単位の解像度スケーリングという3つの独立した設計選択がすべて一致しています。
  3. サービング層の痕跡 — Javaのスタックトレースに Zhipu AI 内部APIのクラス名が現れた、エラーコードの方言がOpenRouter上のZ.aiホスト版GLMと一致した、といった運用インフラ側の証拠も報告されています。

それでも「GLM-5.3そのもの」とは言えない理由

ここが多くの記事で曖昧になっている点です。GLM-5.3は2026年8月14日にリリースされたテキスト専用モデルであるのに対し、Ox Alphaはその6日後に動画入力対応で登場しています

項目

GLM-5.3(2026/08/14)

Ox Alpha(2026/08/20)

入力モダリティ

テキストのみ

テキスト / 画像 / 動画

提供形態

Z.ai公式API・GLM Coding Plan

OpenRouter / OpenCode(匿名提供)

開発元表示

Z.ai(明示)

非公表

位置づけ

コーディング+サイバーセキュリティ特化

コーディング+長時間エージェント作業

この差分から、「GLM-5.3そのもの」ではなく、同系統の未発表マルチモーダル版(アナリストは "GLM-5.3 Flash" などと呼称)である可能性が高い、というのが現時点で最も筋の通る読み方です。なお、GLM-5.3のオープンウェイトは「約2週間後」に公開すると告知されていましたが、8月24日時点でzai-orgのHugging Face・GitHubに該当リポジトリは確認できていません。GLM-5.3自体の性能や料金は「GLM-5.3とは|Z.ai最新モデルの性能・料金・使い方」で整理しています。

反証と留保 — 語彙の一致は所有の証明にならない

技術検証の説得力は高いものの、決定的な証拠ではありません。留意点は次の3つです。

  • 公開されている語彙は第三者もホストできる。語彙の一致は系統(lineage)を示唆しても、運用者(operator)の特定にはならない
  • サービング層の痕跡は、推論をZ.ai系インフラで回していることまでしか示さない。モデルの所有者が誰かは別問題
  • アナリストのAndrew Curran氏は、週末時点で「すべての説の確度が下がった」と指摘している

対抗説としてMicrosoft MAI/Phi系、IBM Granite系も挙がっていますが、根拠の強さはGLM説に及びません。正確に言えば、「GLM系(Z.ai)を強く示唆する複数の独立した証拠があるが、開発元が公式に認めるまで確定はしない」という位置づけになります。過去14件のパターンを踏まえれば、確定するとしたら一次情報の発表によってです。中国系モデルがOpenRouter利用の大半を占める構造については「中国製AIモデルがOpenRouter利用の60%超え|セキュリティリスク解説」も参考になります。

スペックと実性能 — 100万トークン文脈、ただし速くはない

Ox Alphaの実力は「文脈長と推論品質は最上位クラス、ただし出力速度は遅い」という非対称な形をしています。無料であることと引き換えに、時間コストを払うモデルだと理解しておくと判断を誤りません。

確定しているスペック

項目

実務上の意味

コンテキストウィンドウ

1,048,576トークン

中〜大規模リポジトリを丸ごと読ませた横断リファクタが可能

最大出力

131,072トークン

長大な差分やドキュメント生成に耐える

入力

テキスト / 画像 / 動画

画面録画やUIキャプチャを添えた指示ができる

出力

テキストのみ

画像・音声生成には使えない

Function Calling

対応(tools / tool_choice

エージェントのツール実行ループに組み込める

JSON出力

response_format 対応、JSON Schemaのstrict強制は非対応

構造化出力の厳密なバリデーションは自前で必要

推論

推論トークンを消費するタイプ。思考過程の可視化あり

応答までの待ち時間が長くなる要因

実測パフォーマンス(OpenRouterモデルページ掲載値・8月下旬時点)

  • レイテンシ P50: 約5.82秒
  • スループット: 約24トークン/秒
  • 直近3日間のアップタイム: 100%、可用性: 98.77%

24トークン/秒は、対話用途としては明確に遅い水準です。フロンティア級の商用モデルが100トークン/秒を超えることを考えると、チャットUIでの体感差は大きくなります。逆に言えば、人が待たない非同期のエージェント実行(テストを回しながら数十分かけて修正する、といった作業)であれば、この遅さは許容しやすい性質のものです。

ベンチマークは「公式スコアなし」が前提

Ox Alphaには公式のベンチマークスコアが一切公表されていません。出回っている数字はすべて第三者による非公式検証です。

検証

スコア

注記

DeepSWE(開発者Ben Davis氏、10タスク)

約80%

サンプル数10。分散が大きく参考値

DeepSWE(フルラン)

約63%

初期サブセットより保守的な結果

参照値

DeepSeek V4 Pro 63% / Grok 4.6 65% / Gemini 3.7 Flash 65%

同一ベンチの比較値

SNSで拡散した「DeepSWE 80%」という数字は10タスクの初期サブセットのもので、フルランでは約63%に落ち着いています。これは既存のフロンティアモデルと同等圏であって、突出しているわけではありません。「無料で同等クラスが使える」ことが価値であり、「無料で最強」ではない、という理解が実態に近いと言えます。なお、Stripe CEOのPatrick Collison氏が「very impressive」とコメントしたことも注目度を押し上げましたが、これは定量評価ではありません。

OpenRouterで1位になった実際の数字

OpenRouterのLLMランキングページ。API経由の実処理トークン量でモデルを順位付けしている

出典: OpenRouter「LLM Rankings」

Ox Alphaが話題になった最大の理由は、登場からわずか5日でOpenRouterのトークン処理量1位に立ったことです。数字を押さえておくと、この現象の規模感がつかめます。

指標(2026年8月25日時点)

当日のトークン処理量

約5.8兆トークン

順位

OpenRouter全体で1位

2位との差

2位 DeepSeek V4 Flash(約1.8兆)の3倍以上

上位12モデル合計に対する占有率

約53%

さらに重要なのがトラフィックの内訳です。初期の利用はチャットUIではなく、Claude CodeやHermes Agentのようなエージェントハーネス経由が中心でした。つまり「無料だから試しにチャットしてみた」層ではなく、実際のコーディングエージェント運用にそのまま投入されているということです。100万トークンの文脈長と無料という条件が、トークン消費量の大きいエージェント用途と噛み合った結果と考えられます。

ただし、この順位は無料であることに強く依存しています。課金が始まれば処理量は急減する可能性が高く、「1位=最も優れたモデル」という読み替えは成立しません。OpenRouterというプラットフォームの重要性が増している背景については「StripeがOpenRouterを70億ドル超で買収」も合わせてご覧ください。

料金と無料期間 — 「1日100兆トークン無料」の正しい読み方

2026年8月26日時点で、OpenRouter経由のOx Alphaは入力・出力ともに$0です。ただし、無料がいつまで続くかは公式に公表されていません。

経路別の料金

経路

料金(2026年8月26日時点)

備考

OpenRouter stealth/ox-alpha

入力$0 / 出力$0

プレビュー期間中の措置

OpenCode Zen

無料(今週分)

アカウントと支払い情報の登録は必要

OpenCode Go

サブスク(初月$5/以降 月$10)に含まれる

Webのチャット画面

無料・登録不要とされる

提供元公式のドメインか確認できていない

無料終了日は「8月27日前後と見られるが、公表されていない」

ここは正確に分けて理解する必要があります。

  • OpenCode側のアナウンスは「8月20日から約1週間」。逆算すると8月27日前後に終了する見込み
  • ただし、OpenRouter・OpenCodeとも正確な終了日時を公表していない
  • 終了後の価格、提供継続の有無、SLA、エンタープライズ向けプランは一切未公表

つまり、「8月27日で終了」と断定することも、「まだ当分使える」と期待することも、どちらも根拠がありません。予告なく無料が終わる前提で使うのが唯一安全な運用です。

「1日100兆トークン無料」は誤読

拡散している「1日100兆トークン(100 trillion tokens/day)」という数字は、プロバイダ側が主張したサービス全体の処理キャパシティであり、1ユーザーあたりの割当ではありません

  • 入力・出力・キャッシュのどれを指すのかも定義されていない
  • 第三者による検証手段がない自己申告値
  • 専門家の試算では、出力のみで1日100兆トークンを処理するにはGPU約58万基相当が必要とされ、額面通りには受け取りにくい

したがって「1人で100兆トークン使い放題」という読み方は成立しません。実際のレート制限についても、OpenRouterに具体的な数値の記載はなく、上限が突然変わっても文句を言えない状態だと考えてください。

Ox Alphaの使い方 — 3つの経路と落とし穴

OpenCode公式ドキュメントのZenページ。OpenCodeが提供するモデル一覧を掲載している

出典: OpenCode 公式ドキュメント「Zen」

導入自体は簡単です。OpenAI互換のAPIなので、既存コードのモデルIDを差し替えるだけで動きます。ただし経路によってデータの扱いが変わるため、選択には意味があります。

経路1: OpenRouter API(最も一般的)

  1. OpenRouterでアカウントを作成し、APIキーを発行する
  2. エンドポイントを https://openrouter.ai/api/v1/chat/completions に向ける
  3. モデルIDに stealth/ox-alpha を指定する

OpenAI SDKのコードがほぼそのまま動くため、移行コストはほとんどかかりません。Cline・Roo Code・Kilo CodeなどOpenRouter対応のコーディングエージェントからも、モデル一覧で選択できます。

実務上の落とし穴として、max_tokens は4,000以上を推奨します。 Ox Alphaは推論トークンを消費するタイプのモデルで、max_tokens を小さく設定すると推論部分が出力枠を食い潰し、本文が空のまま返ってくるという報告があります。「応答が空になる」現象に遭遇したら、まずここを疑ってください。

経路2: OpenCode(CLIコーディングエージェント)

  1. OpenCode Zen にサインインする
  2. TUIで /connect を実行し、OpenCode Zen を選択してAPIキーを入力する
  3. /models でモデル一覧を開き、Ox Alpha を選択する

設定ファイルで直接指定する場合のモデルIDは opencode/x-preview-f-free です。OpenCode Go のサブスク(初月$5/以降月$10)経由でも利用できます。この経路はゼロ保持ポリシーが明記されているため、データ面ではOpenRouter経由より安全です。OpenCode自体の使い方は「OpenCodeとは|ターミナルで動くオープンソースAIコーディングエージェント」で解説しています。

経路3: Webのチャット画面

ブラウザから登録なしで試せるとされる経路もありますが、そのドメインが提供元公式のものかどうかは確認できていません。非公式のミラーである可能性を排除できないため、動作確認以上の用途では使わず、いかなる機密情報も入力しないことを強く推奨します。

データの扱い — 同じモデルでも入口で安全性が違う

OpenRouter公式ドキュメントのProvider Loggingページ。プロバイダごとのデータ保持ポリシーを説明している

出典: OpenRouter Docs「Provider Logging」

ここがOx Alphaで最も見落とされやすい論点です。同じモデルでありながら、OpenRouter経由とOpenCode経由でデータ保持ポリシーが異なります。

経路

記載されているポリシー

実質的な意味

OpenRouter stealth/ox-alpha

プロンプトと出力はプロバイダによって保持される。学習には使用されない

ログは残る。しかも保持している主体が誰か特定できない

OpenCode Zen

プロバイダはゼロ保持(zero-retention)ポリシーに従い、学習にも使用しない

保持なしと明記されている

つまり、とりあえずOpenRouterで試す、という最も一般的な入り方が、データ保持の観点では最もリスクが高いという逆転が起きています。試すなら、この差を理解したうえで経路を選んでください。

そこから導かれる3つのリスク

  1. 保持している主体が匿名 — 「誰がログを持っているか名指しできない」状態です。GDPRをはじめとする多くの法制度では、個人データの処理者を契約で特定する必要があり、この条件では要件を満たせません
  2. データの所在地が不明 — 物理的にどの国のサーバーに保存されるか分からないため、越境移転の評価そのものができません
  3. EU AI Actの透明性義務との関係 — 2026年8月2日に施行され、制裁上限は1,500万ユーロまたは全世界売上の3%です。提供元が特定できないモデルを業務プロセスに組み込む判断は、慎重に行う必要があります

利用は「Stealth Model Terms」に従うとされていますが、通常のベンダー契約・DPA(データ処理契約)・SLAは存在しません。障害が起きても、情報が漏れても、交渉相手がいないということです。AIコーディングツール全般のセキュリティ論点は「AIコーディングのセキュリティリスクと対策」で詳しく整理しています。

企業で使う場合の判断チェックリスト

Ox Alphaは「実験・評価用途に限定するなら十分魅力的、本番組み込みは避けるべき」というのが現時点での妥当な線引きです。社内で判断する際は、次のチェックリストが使えます。

投入してよいデータ / ダメなデータ

判定

対象

⭕ 投入してよい

OSSのコード、公開済みドキュメント、ダミーデータ、技術検証用のサンプル、個人の学習用コード

❌ 投入してはいけない

顧客の個人データ、非公開ソースコード、APIキーや認証情報、社外秘の仕様書・契約書、医療・金融など規制対象データ

用途の線引き

用途

判断

理由

性能評価・PoC

⭕ 推奨

無料でフロンティア級の実力を自社ワークロードで測れる

有料モデルの前段スクリーニング

⭕ 条件付きで可

公開データに限定するなら合理的

OSS・個人プロジェクトの開発支援

⭕ 条件付きで可

継続性がなくても損失が小さい

社内ツールへの組み込み

❌ 非推奨

無料終了で即座に停止する

顧客向けプロダクトへの組み込み

❌ 非推奨

SLAなし、予告なき仕様変更あり

規制業種(金融・医療・公共)での利用

❌ 非推奨

処理者の特定ができず要件を満たせない

シャドーIT化に注意

無料であることは、現場が承認を経ずに導入しやすいことを意味します。「無料だから稟議不要」で開発者が個人的にAPIキーを取り、業務コードを投げてしまうという形のシャドーITが最も起きやすい構図です。社内でAIツールの利用ルールを持っている場合は、ステルスモデルの扱いを明示しておくことをおすすめします。

無料が終わったらどうするか — 退避先の候補

Ox Alphaを使い始めるなら、同時に「終わったときの移行先」を決めておくのが実務的です。無料終了は数日以内に起きうる前提で考えます。

退避先

位置づけ

想定コスト

GLM-5.3 API(Z.ai公式)

正体説が正しければ最も近い挙動が期待できる

従量課金

GLM Coding Plan

コーディング用途の定額プラン

$18 / $80 / $168 の階層

DeepSeek V4 Flash など低価格モデル

コスト最優先の代替

従量課金(低単価)

Claude Code / Cursor など商用ツール

継続性・サポート・SLAを取る選択

月額サブスク

移行時に発生するのは金銭コストだけではありません。プロンプトの再調整、エージェント設定の見直し、出力フォーマットの検証といった手戻りが必ず生じます。Ox Alphaに依存したワークフローを組み込むほど、この移行コストは膨らみます。各ツールの比較は「AIコーディングツールおすすめ比較」にまとめています。

Ox Alphaはこんな人におすすめ

以下に当てはまる場合、現時点で試す価値は十分にあります。

  • 大規模リポジトリを横断して読ませたい開発者 — 約100万トークンの文脈長は、複数ファイルにまたがるリファクタや設計把握で効いてきます
  • 長時間のエージェント作業をコストゼロで回したい人 — トークン消費量の大きい多ステップのコーディングタスクで、無料の恩恵が最も大きくなります
  • 動画・画像入力を含むマルチモーダルな検証をしたい人 — 画面録画から不具合を特定させる、といった使い方が試せます
  • 有料モデルの導入前に比較検証したいチーム — 公開データやダミーデータの範囲で、自社ワークロードでの実力を測れます
  • OSS・個人プロジェクトでコストを圧縮したい人 — 継続性が失われても損失が限定的です

Ox Alphaをおすすめしない人

次のケースでは、無料であることを理由に選ぶべきではありません。

  • 機密情報・顧客データ・非公開ソースコードを扱う業務 — OpenRouter経由ではログが保持され、保持主体を特定できません
  • 低レイテンシが必要なリアルタイム対話・カスタマーサポート — 約24トークン/秒では体感速度が明確に不足します
  • SLAや監査証跡が必要なエンタープライズ本番環境 — 契約相手が存在せず、稼働保証もありません
  • 継続提供が前提のプロダクト組み込み — 無料終了と同時にサービスが止まります
  • 金融・医療・公共など規制業種 — 処理者の特定・データ所在地の説明ができず、コンプライアンス要件を満たせません
  • モデルの素性が説明できないと稟議が通らない組織 — 学習データもライセンスも開示されていません

よくある質問

Q. Ox Alphaの開発元は結局どこですか。
2026年8月26日時点で公式には未公表です。トークナイザ・動画トークン会計・サービング層の痕跡という3方向の第三者検証がZ.ai(Zhipu AI)のGLM系を強く示唆していますが、Z.aiは肯定も否定もしていません。過去のステルスモデルはいずれも開発元自身の発表で正体が確定しているため、はっきりするとすればZ.aiの公式アナウンスによってです。

Q. レート制限はどのくらいですか。
OpenRouterのモデルページに具体的な数値の記載はありません。実運用では、無料モデル共通のアカウント単位の制限や、混雑時のキュー待ちが発生する報告があります。上限値が公表されていない以上、負荷試験や大量バッチ処理の前提には置かないのが安全です。

Q. ClineやClaude Codeなど既存のツールから使えますか。
OpenRouterをプロバイダとして選べるツールであれば、モデル一覧に stealth/ox-alpha が出てくるので選択するだけです。Cline・Roo Code・Kilo Codeなどが該当します。ただしツール側が推論トークンの扱いを想定していない場合、出力が途中で切れることがあります。その際は出力トークン上限の設定を確認してください。

Q. APIを叩くと応答が空で返ってきます。
max_tokens が小さすぎる可能性があります。Ox Alphaは推論トークンを消費するため、出力枠が推論に食われて本文が残らないことがあります。4,000以上を設定して再試行してください。

Q. 商用利用してもよいですか。
規約上は「Stealth Model Terms」に従うとされていますが、通常のベンダー契約やSLAは存在しません。生成されたコードの扱いよりも、投入したデータが匿名の主体に保持される点が実務上の懸念になります。商用の本番環境への組み込みは現時点では推奨できません。

Q. 無料はいつまでですか。
OpenCode側のアナウンス「約1週間」から逆算して8月27日前後と見られていますが、両プラットフォームとも正確な終了日時を公表していません。予告なく終了する前提で使ってください。

Q. 「1日100兆トークン無料」と聞きましたが本当ですか。
サービス全体の処理キャパシティに関するプロバイダ側の主張であり、ユーザーごとの割当ではありません。検証手段のない自己申告値でもあります。

Q. GLM-5.3とどちらを使うべきですか。
継続性・契約・サポートを重視するならZ.ai公式のGLM-5.3を選ぶべきです。無料での性能評価やマルチモーダル入力の検証が目的なら、期間限定と割り切ってOx Alphaを使う価値があります。

Q. OpenRouterとOpenCode、どちらから使うべきですか。
データを保持されたくないならOpenCode経由です。ゼロ保持ポリシーが明記されています。OpenRouter経由はプロバイダ側でプロンプトと出力が保持されるため、投入する内容を選ぶ必要があります。

まとめ — 「無料で強い」より「素性が不明」を先に見る

Ox Alphaは、2026年8月20日に開発元非公開で登場し、5日後にOpenRouterのトークン処理量1位(約5.8兆トークン/日、占有率約53%)に立ったステルスモデルです。約100万トークンの文脈長、動画を含むマルチモーダル入力、無料という条件が揃い、エージェント用途で急速に使われています。

一方、押さえるべき事実は次の通りです。

  • 性能は「同等圏」であって突出ではない — DeepSWEのフルランは約63%。80%は10タスクの初期サブセット値
  • 速度は遅い — 約24トークン/秒、P50レイテンシ約5.82秒。対話用途には向かない
  • 正体は未確定 — GLM系を示唆する証拠は強いが、語彙の一致は所有の証明にならない
  • OpenRouter経由はログが保持される — しかも保持主体が匿名。OpenCode経由はゼロ保持
  • 無料終了日は未公表 — 8月27日前後との見立てはあるが、予告なく終わる前提で使う

公開データ・OSS・ダミーデータの範囲で評価用途に使うなら魅力的、機密情報を含む業務や本番組み込みには使わない、という線引きが現時点では妥当です。使い始めるなら、同時に移行先も決めておいてください。

なお、この分野は状況が数日単位で変わります。Z.aiからの公式発表、無料終了のアナウンス、OpenRouterランキングからの消滅や別名での再登場が起きた時点で、判断の前提は変わります。AIエージェント全般の設計思想については「AIエージェントとは?仕組み・種類・活用例」、生成AIツール全体の選び方は「生成AIツールおすすめ比較」を参照してください。

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