AI活用事例2026年10月更新

スクエニがGeminiでゲームQAを自動化|AIが画面を見てコントローラー操作・2027年までにQA7割AI化・東大松尾研との共同研究を解説【2026年10月最新】

公開日: 2026/10/06
スクエニがGeminiでゲームQAを自動化|AIが画面を見てコントローラー操作・2027年までにQA7割AI化・東大松尾研との共同研究を解説【2026年10月最新】

この記事のポイント

スクウェア・エニックスは、Googleの生成AI「Gemini」がゲーム画面を見てコントローラーを操作し、QAテストを進める仕組みを開発しています。2027年末までにQA・デバッグの70%を自動化する目標、東大 松尾・岩澤研究室との共同研究、従来の自動テストとの違い、公表されていない点、自社で導入するときの注意点をまとめました。

スクウェア・エニックス(以下スクエニ)は、Google Cloud の生成AI「Gemini」がゲーム画面を見て状況を判断し、コントローラーを操作しながらQA(品質保証)テストを進める仕組みを開発しています。2026年7月30日の「Google Cloud Next Tokyo '26」でデモが公開されました。背景には、同社が2025年11月に掲げた「2027年末までにQA・デバッグ作業の70%を生成AIで自動化する」という目標と、東京大学 松尾・岩澤研究室との共同研究があります。

この記事でわかること

  • スクエニのQA自動化について、いつ・何が発表されたか(IR資料・CEDEC・Google Cloud Nextの時系列)
  • AIが「画面を見てコントローラーを操作する」仕組みと、従来のスクリプト型自動テストとの違い
  • 「QAの7割をAI化」という目標の中身と、現時点で公表されていないこと
  • カプコンなど他社の取り組みとの違い
  • 人間のQA担当者への影響と、業界から出ている批判
  • 自社のゲーム・アプリのQAに生成AIを入れる場合の判断基準とセキュリティ上の注意点

こんな方に向けた記事です

  • ニュースを見て「実際どこまで進んでいるのか」を正確に知りたい方
  • ゲーム開発・QAに関わっていて、生成AIによるテスト自動化を検討している方
  • Geminiのマルチモーダル機能や画面操作AIの業務活用事例を探している方

2026年10月時点でわかっていること

  1. 公開されたのはデモ段階の取り組みです。「船を見たい」という指示でGeminiが地図を開き、コントローラーを操作してQAを進める様子が紹介されました
  2. 「2027年末までにQA・デバッグの70%を自動化」は目標値で、2026年10月6日時点で進捗率や達成の公式発表は確認できません。70%が工数ベースなのか項目ベースなのかも定義されていません
  3. AIが担うのは「人間が決めた検証項目を、画面を見ながら実行する部分」が中心です。何をテストするかの設計や、面白さ・バランスの評価までAIに任せる段階ではありません

スクエニのGeminiによるゲームQA自動化とは

スクウェア・エニックスのロゴ

出典:株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス

Geminiのマルチモーダル能力(画像・音声などを理解する能力)を使い、AIが人間のテスターのようにゲームを遊んで確認作業をする仕組みです。

Google Cloud 公式ブログの基調講演まとめでは、スクエニの取り組みが「見て、考えて、動く AI」という見出しで紹介されています。公式ブログに書かれている要点は次のとおりです。

  • 音や画面を理解するマルチモーダルAIの活用を目指し、Gemini Enterprise Agent Platformを採用した
  • ゲームQA自動化のデモ動画で、「船を見たい」という指示に応じてGeminiが地図を開き、コントローラーを操作してQAを進める様子を紹介した
  • 『ドラゴンクエストX オンライン』で期間限定のクローズドβとして提供していた対話型AIバディ「おしゃべりスラミィ」もあわせて紹介した

登壇したのは、ITmedia AI+の報道によればスクエニ AI&エンジン開発ディビジョン ジェネラル・マネージャーの荒牧岳志氏です。同報道では、自動化の対象として「テスト設計、QAの自動プレイ、グラフィックス不具合検出、テキストチェック」が挙げられ、「QAテストは工数の増大が課題」と説明されています。

確認できている事実と、まだ公表されていないこと

ニュースの見出しだけを見ると「AIがQAを丸ごと置き換えた」ように読めますが、公表されている範囲は限られています。

項目

内容

確認状況

使っているAI基盤

Gemini Enterprise Agent Platform

Google Cloud 公式ブログで確認

デモの内容

「船を見たい」の指示で地図を開き、コントローラーを操作

Google Cloud 公式ブログで確認

自動化の対象範囲

テスト設計/自動プレイ/グラフィックス不具合検出/テキストチェック

ITmedia AI+の報道

70%自動化の目標

2027年末までにQA・デバッグ作業の70%

スクエニHD IR資料(2025年11月)で確認

使用したGeminiのモデル名・バージョン

不明

公表されていない

デモの対象タイトル

不明

公表されていない

バグ検出率・削減工数などの成果

不明

公表されていない

本番のQA工程への適用範囲

不明

公表されていない

70%目標の進捗

不明

2026年5月の決算説明会資料にも記載なし

なお、Google Cloud 公式ブログの記事公開日は2026年8月25日ですが、基調講演そのものは2026年7月30日に行われています。

Geminiそのものの概要はGeminiとは?、採用基盤についてはGemini Enterprise Agent Platformとはで詳しく解説しています。


発表の時系列:IR資料からNext Tokyo '26まで

CEDEC 2026のロゴ

出典:CEDEC 2026 公式サイト

今回のデモは突然出てきたものではありません。2025年11月の経営目標の公表 → 学会での技術発表 → Google Cloudイベントでのデモという順で段階的に公開されてきました。

日付

出来事

出典

2025年11月6日

中期経営計画の進捗資料で「2027年末までにQA・デバッグの70%自動化」「東大 松尾・岩澤研究室と10名超の共同研究チーム」を公表

スクエニHD IR資料(公式)

2025年11月

米英のパブリッシング組織で人員削減が報じられ、QA自動化目標とあわせて業界から批判も出る

VGC、GameBusiness.jp などの報道

2025年11月29日

CEDEC+KYUSHU 2025で、松尾研との共同研究の成果が講演されたと報じられる

講演の報道(二次情報)

2026年4月22日

Google CloudがVertex AIを「Gemini Enterprise Agent Platform」に刷新

Google Cloud

2026年5月14日

2026年3月期の決算説明会。AI活用として出版部門の写植作業効率化ツールに言及。QA 70%の進捗数値はなし

スクエニHD IR資料(公式)

2026年7月22日

CEDEC 2026で「スクリプト不要、仕込みも最小限。動画と生成AIで挑むゲームQAの現在地」を講演

CEDEC 2026 公式

2026年7月30日

Google Cloud Next Tokyo '26 基調講演で、GeminiによるQA自動化デモとおしゃべりスラミィを紹介

Google Cloud 公式ブログ

2026年10月6日時点

70%目標の進捗・達成に関する新しい公式発表は確認できず

—

公式資料の原文は次のページで確認できます。


AIが画面を見てコントローラーを操作する仕組み

Googleの生成AIモデルGemini 3.5のイメージ画像

出典:Google公式ブログ

仕組みの核は、ゲームの内部データに頼らず、人間と同じく「画面を見て、コントローラーを入力する」ところにあります。QA担当者が自然言語や動画で「何を確認したいか」を伝え、AIが画面を観察しながら次の操作を決めて実行します。

CEDEC 2026の公式セッション概要(講演者:スクエニ AI&エンジン開発ディビジョンの岩崎浩氏、ボエダ ゴティエ氏)では、次の点が説明されています。

  • テストスクリプトの保守コストや、専用のデバッグ機能への依存をなくすことが目的
  • QA担当者が自然言語や動画で指示し、AIがゲーム画面を観察してコントローラー入力を自律的に実行する
  • 講演のテーマとして「生成AI(LLM/VLM)を用いたゲームQAシステムのアーキテクチャ」「動画からのテストコードの動的生成」「画像認識を活用した模倣学習」が挙げられている

ここでいうVLM(Vision Language Model)は、画像と言葉をあわせて理解できるAIモデルのことです。なお、CEDEC 2026の公式概要にはGoogle Geminiを使っているという記載はありません。Geminiとの関係がはっきり示されているのは、Google Cloud Next Tokyo '26の発表です。

共同研究で報じられた「二層構造」

2025年11月のCEDEC+KYUSHU 2025では、松尾・岩澤研究室との共同研究の成果が講演されたと報じられています。公式資料の原典は確認できていませんが、講演の報道によれば次のような設計だったとされています。

  • 行動を決めるAIとその行動が正しいかを確かめるAIを分けた二層構造。実行役のエージェントが画面と仕様書から次の行動を推論し、別の評価役エージェントが妥当性を確認する
  • 入力はゲーム画面の画像に加え、キャラクターの位置や当たり判定(コリジョン)などを記録したJSON形式のログ
  • 経路探索には、ゲームでよく使われるA*(エースター)アルゴリズムを利用
  • LLMは空間の把握が苦手なため、ログを補助情報として渡す仕組みで建物への移動精度を上げた

「画面を見るだけで何でも判断できる」わけではなく、AIの弱点をログや別のエージェントで補う構成になっている点が実務上のポイントです。

Gemini APIの「Computer Use」との関係

「画面を見て操作するAI」というと、Gemini APIのComputer Use機能を思い浮かべる方も多いはずです。2026年10月6日時点の公式ドキュメントでは、Computer Useの対応モデルはGemini 3.8 Flash(推奨)、Gemini 3.7 Flash、Gemini 3.5 Flash、Gemini 3.5 Flash-Liteなどです。Googleの公式発表では、Gemini 3.5 Flash以降はComputer Useがメインモデルに組み込まれ、追加の割増料金なしで使えるとされています。

ただし、スクエニがComputer Use機能そのものを使っているかは公表されていません。確認できるのは「Geminiのマルチモーダル能力を、Gemini Enterprise Agent Platform上で使っている」というところまでです。Computer Useの仕組みと使い方はGemini Computer Useとは、推奨モデルについてはGemini 3.8 Flashとはで解説しています。


従来のゲーム自動テストと何が違うのか

最大の違いは、手順をコードで書くのではなく、目的を言葉や動画で伝えるだけでAIが操作を組み立てる点です。そのため、仕様変更のたびにテストスクリプトを書き直す負担を減らせると期待されています。

比較ポイント

従来のスクリプト型自動テスト

生成AI(Gemini)による自律型QA

指示の仕方

操作手順をコードで記述する

自然言語や動画で「何を確かめたいか」を伝える

仕様変更への対応

スクリプトの修正が必要で、保守の手間が大きい

画面を見て判断し直すため、影響が小さいとされる

ゲーム側の準備

専用のデバッグ機能やAPI連携が必要なことが多い

準備は最小限。画面とコントローラー入力で動く

得意なこと

決まった手順の高速な繰り返し、回帰テスト

状況判断が必要な操作、テキストやグラフィックの目視確認に近い作業

弱点

想定外の画面遷移に弱い

空間の把握の弱さ、同じ結果を再現できるか、推論の速度とコスト

※右列の長所・弱点は、CEDEC公式概要と報道をもとにした整理です。スクエニが従来手法との定量比較を公表したわけではありません。

実務的には「スクリプト型をやめて生成AIに置き換える」より、決まった手順の回帰テストはスクリプト型、画面判断が必要な確認は生成AIと使い分ける形が現実的です。


「2027年までにQA7割をAI化」目標と東大松尾研との共同研究

東京大学 松尾・岩澤研究室のロゴ

出典:東京大学 松尾・岩澤研究室

70%という数字は、スクエニの中期経営計画の施策の1つとして示された目標です。IR資料には、目的と体制まで書かれています。

IR資料に書かれている内容

2025年11月6日の中期経営計画進捗資料(p.5)では、「国内でのAI活用推進」の施策として次の内容が示されています。

  • プロジェクト名は「生成AIを用いたゲームQA自動化技術の共同開発」(東京大学 松尾・岩澤研究室との共同開発)
  • 目標:2027年末までに、ゲーム開発におけるQA・デバッグ作業の70%を自動化する
  • 狙い:QA業務の効率化と、ゲーム開発における競争優位の確立
  • 体制:松尾・岩澤研究室の研究者とスクエニグループのエンジニアによる10名超の共同研究チーム
  • あわせて、AIをテーマにした全社のビジネスアイデアコンテストを実施し、複数の案を事業化・社内推進中

同じ資料では、AIやデータマーケティングなどへの戦略投資として、総額800〜1,000億円の枠も示されています。

70%目標を読むときの注意点

数字だけが一人歩きしやすいので、次の3点は押さえておきたいところです。

  1. 母数が定義されていない:IR資料では、70%が作業時間ベースなのか、テスト項目数ベースなのかが示されていません
  2. 進捗は公表されていない:2026年5月14日の決算説明会資料でもAI活用には触れていますが、QA自動化の進捗数値は出ていません
  3. 「松尾研究所」とは別組織:共同研究の相手は東京大学の松尾・岩澤研究室です。企業の株式会社松尾研究所と混同した報道もあるため注意が必要です。なお、松尾研側からの公式プレスリリースは確認できていません

カプコンなど他社のゲームQA×AIとの違い

Google Cloud公式ブログのAI・機械学習カテゴリ画像

出典:Google Cloud 公式ブログ

ゲームQAの生成AI活用はスクエニだけの動きではありません。「ゲームの内部データに頼らず、画面とコントローラー入力で動かす」という方向性は、カプコンも同じです。違いは、LLMをどこに使うかにあります。

比較ポイント

スクウェア・エニックス

カプコン

公表された場

Google Cloud Next Tokyo '26、CEDEC 2026

CEDEC 2026、Google Cloud 公式ブログ

対象タイトル

公表されていない

『モンスターハンター ストーリーズ 3』

操作の方法

画面を見てコントローラー入力

画面と仮想コントローラー入力(内部データにアクセスしない)

AIの構成

生成AI(LLM/VLM)中心。指示は自然言語・動画

状況認識(OCR・テンプレートマッチングなど)と行動決定(ルールベース+LLM呼び出し)を分けたハイブリッド構成

共同研究

東京大学 松尾・岩澤研究室

公表情報では確認できず

数値目標

2027年末までにQA・デバッグの70%を自動化

公表情報では確認できず

スクエニは「生成AIに目的を伝えて任せる範囲」を広げようとしているのに対し、カプコンは画像認識やルールベースの処理を軸にし、必要な場面でLLMを呼び出す設計です。どちらが優れているというより、判断の柔軟さを取るか、動きの予測しやすさを取るかの違いといえます。

カプコンの取り組みはGoogle Cloud 公式ブログのカプコン事例で紹介されています。ゲーム業界全体のAI活用はゲーム業界のAI活用事例、エンタメ領域まで広げた事例はエンタメ業界のAI活用事例にまとめています。


人間のQA担当者は不要になるのか

現時点の公表内容から見る限り、人間のQA担当者がいらなくなる段階ではありません。AIは「人間が決めた検証項目を実行する」役割が中心で、テスト方針の設計や、遊んだときの面白さ・難易度バランスの評価は人間の仕事として残ります。

スクエニ側も、繰り返しの作業をAIに任せ、開発者がクリエイティブな業務に集中して開発期間を短くすることを狙いとして説明しています(ITmedia AI+の報道)。

人員削減と業界からの批判

一方で、70%目標が発表された2025年11月には、スクエニが米国・英国のパブリッシング組織で人員削減を進めていると報じられました。報道では英国で約137名に影響があるとされ、対象部門にはQAも含まれていたとされています。

このタイミングが重なったため、業界からは批判も出ました。『バルダーズ・ゲート3』で知られるLarian Studiosのパブリッシングディレクター、Michael Douse氏は「AIと自動化はQAに不可欠だが、大規模に置き換えられると考えるのは愚か」「QAは業界への入り口だ」という趣旨の発言をしています(GameBusiness.jp)。

ただし、スクエニは人員削減とQA自動化の関係について公式には何も述べていません。両者を因果関係として結びつけるのは早計です。

生成AIが仕事のどの部分を担えるのかを基礎から整理したい方は、生成AIとは?もあわせてご覧ください。


自社のゲーム・アプリQAに生成AIを入れるなら

Google AI StudioのGemini API紹介画像

出典:Google AI for Developers

スクエニの事例は大手の研究開発段階のものですが、同じ考え方を小さく試すこと自体は、クラウドの生成AIサービスで現実的になってきています。ただし、プレビュー段階の機能があることや、未発表作品のデータを外部に送ることには注意が必要です。

生成AIに任せやすい工程・任せにくい工程

工程

生成AIとの相性

理由

探索的なプレイ(指定した場所へ移動、メニューを開くなど)

任せやすい

画面を見て判断する作業で、スクリプトでは書きにくい

テキストチェック(誤字、表示崩れ、翻訳の抜け)

任せやすい

画面上の文字を読み取って比較する作業と相性がよい

グラフィックの不具合検出

補助として有効

明らかな崩れは見つけやすいが、判定基準の調整が必要

回帰テスト(毎回同じ手順の確認)

補助的

再現性が重要なため、スクリプト型との併用が無難

面白さ・難易度バランスの評価

任せにくい

判断基準が主観的で、人間の評価が欠かせない

厳密に同じ結果を求める検証

任せにくい

AIの判断は毎回同じになるとは限らない

基盤となるGoogle Cloudのサービス

スクエニが採用したGemini Enterprise Agent Platformは、2026年4月にVertex AIから名称を変えた企業向けのAIエージェント基盤です。料金は使った分だけ払う従量課金で、モデルの呼び出し、ツール、ストレージ、計算資源などに応じて費用がかかります。具体的な単価は変更されやすいため、導入前に公式の料金ページで最新の金額を確認してください。

画面操作を伴う自動化を自社で試すなら、Gemini APIのComputer Useも選択肢になります。同じ「画面を見て操作するAI」としては、AnthropicのClaude Computer UseやOpenAIのCodex Computer Useもあります。

セキュリティとデータ取り扱いの注意点

ゲームQAでは、未発表タイトルの画面や仕様書をクラウドのAIに送ることになります。導入前に確認しておきたいのは次の点です。

  • データの扱いの契約:入力したデータがAIの学習に使われない企業向けの契約・設定になっているか
  • 処理する地域:国内でデータを処理できるか。Next Tokyo '26では、Gemini 3.5 Flashを国内で完結して処理できる版の一般提供開始が発表されています(詳しくはGemini 3.5 Flashとは)
  • プレビュー機能の扱い:Gemini APIのComputer Useはプレビュー機能で、公式ドキュメントには「エラーやセキュリティ上の脆弱性を含む可能性がある」と明記されています。本番の開発環境や機密データに直接触れさせる前に、隔離した環境で試すのが安全です
  • AIの判定を確かめる仕組み:AIが「問題なし」と判断しても見落としはありえます。評価役のAIを別に用意する、最終的に人間が確認するなど、二重のチェックが必要です
  • 操作権限の範囲:AIに操作させるのは、テスト用の端末・アカウントに限定し、社内の他システムには触れさせない構成にしておきます

AIに自律的に作業させる考え方の全体像は、AIエージェントとは?で整理しています。


こんな開発チームにおすすめ/おすすめしない開発チーム

生成AIによるQA自動化を試す価値があるチーム

  • オープンワールドやRPGなど、画面遷移や操作パターンが多く、テスト項目が膨らみやすいタイトルを開発している
  • 仕様変更が多く、スクリプト型の自動テストの保守に手間がかかっている
  • テキスト量が多く、誤字・表示崩れ・多言語版のチェックに人手を取られている
  • 企業向けのクラウド契約があり、未発表データを外部サービスで扱う社内ルールを整えられる
  • まず一部の工程で小さく試し、効果を測ってから広げる体制を取れる

現時点ではおすすめしないチーム

  • テスト対象が少なく、手作業や既存のスクリプトで十分に回っている
  • 未発表データをクラウドに出すことが契約上・社内規程上できない
  • 「AIに任せればQA担当者を減らせる」と短期的なコスト削減だけを目的にしている
  • 厳密な再現性が求められる検証(認証・課金処理など)を中心に自動化したい
  • AIの判定結果を人間が確認する工数を確保できない

よくある質問

Q. スクエニのどのゲームでAIによるQAが使われていますか?

公表されていません。Google Cloud Next Tokyo '26のデモで使われたタイトル名も明らかにされていません。同じ基調講演で紹介された「おしゃべりスラミィ」は『ドラゴンクエストX オンライン』の取り組みですが、これはプレイヤーと会話するAIバディで、QA自動化とは別の取り組みです。

Q. AIでQAをするようになれば、スクエニのゲームからバグはなくなりますか?

なくなるとは言えません。AIが自動で確認できる範囲が広がれば、人間が見るべき部分に時間を回せるようになりますが、AIにも見落としはあります。また、バグの数は開発規模やスケジュールにも左右されるため、QAの自動化だけで品質が決まるわけではありません。

Q. 個人や小規模チームでも同じようなことはできますか?

規模を小さくすれば試すことはできます。Gemini APIのComputer Useなど、画面を見て操作するAIの機能は一般の開発者にも公開されています。ただし、ゲーム機のコントローラー入力をAIにつなぐ仕組みや、テスト結果の評価方法は自分で作る必要があり、スクエニのように研究チームを組んで作り込んだシステムと同じものがすぐに手に入るわけではありません。

Q. 東大 松尾・岩澤研究室とはどんな研究室ですか?

東京大学大学院工学系研究科に属し、深層学習や大規模言語モデルの研究で知られる研究室です。生成AIの研究開発や人材育成の分野で、企業との共同研究を多く手がけています。企業として活動する株式会社松尾研究所とは別の組織です。

Q. 70%の目標が達成されたかどうかは、どこで確認できますか?

スクエニHDのIR資料(決算説明会資料や中期経営計画の進捗資料)が一次情報です。2026年10月6日時点で、達成や進捗率の発表は確認できていません。今後の決算発表やCEDECなどの技術講演で続報が出る可能性があります。


まとめ

スクエニのGeminiによるゲームQA自動化は、AIがゲーム画面を見てコントローラーを操作し、人間が決めた検証項目を進める取り組みです。2025年11月に「2027年末までにQA・デバッグの70%を自動化」という目標と東大 松尾・岩澤研究室との共同研究を公表し、2026年7月のCEDEC 2026とGoogle Cloud Next Tokyo '26で仕組みとデモを公開しました。

一方で、使用モデル、対象タイトル、削減できた工数などの成果、70%目標の進捗はまだ公表されていません。現時点では「AIがQAを置き換えた」ではなく、「スクリプト型では難しかった画面判断の作業を、生成AIに任せる段階に入った」と捉えるのが妥当です。

自社でも生成AIによるQA自動化を検討するなら、任せる工程を絞り、データの取り扱いと人間による最終確認の体制を先に決めてから小さく試すのがおすすめです。画面操作AIの仕組みはGemini Computer Useとは、業界全体の動向はゲーム業界のAI活用事例もあわせてご覧ください。

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この記事の著者

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編集部

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