AI活用事例2026年10月更新

食品業界のAI活用事例【2026年】HACCP自動化・需要予測・品質検査を製造から外食まで整理

公開日: 2026/04/21
更新日: 2026/10/05
食品業界のAI活用事例【2026年】HACCP自動化・需要予測・品質検査を製造から外食まで整理

この記事のポイント

食品業界のAI活用は、HACCP記録の電子化・自動化と需要予測から始めるのが現実的です。製造・卸・小売・外食のどこで何が効くかを、キユーピー×Devin、ニチレイフーズ、キッコーマン、ベイシアなど2026年の国内事例と、費用・補助金・規制の注意点とあわせて整理します。

食品業界で最初に効果が出やすいのは、HACCP記録の電子化(温度記録の自動化を含む)と需要予測の2つです。品質検査AIや生成AIエージェントも成果が出始めていますが、専用設備やデータ整備が前提になるため、中小企業が最初に手を付ける領域ではありません。

食品業界のAI活用は、製造・卸・小売・外食で効く業務が異なります。2026年に入ってからは、厚生労働省の無償HACCP記録アプリの公開(6月)、ニチレイフーズの分光カメラAIによる異物検査(8月)、キユーピーのAIエージェント活用(9月報道)など、制度と事例の両方が新しくなりました。

食品加工工場の生産ライン。食品業界では製造から小売・外食までAI活用が広がっている

この記事でわかること

  • 食品業界(製造・卸・物流・小売・外食)のどこで、どのAIが効くのか
  • HACCP記録の電子化・自動化でAIやIoTが担える範囲と担えない範囲
  • 2026年の国内事例(キユーピー×DeNA AI Link、ニチレイフーズ、キッコーマン、ベイシア、イオンフードスタイルなど)
  • 無料アプリから画像検査装置までの段階別の導入コストと、費用を回収できるかの考え方
  • デジタル化・AI導入補助金2026(6次締切は2026年10月30日)と農林水産省の支援策
  • 食品衛生法・食品表示法・景品表示法など、食品業界ならではの規制上の注意点

誰向けの記事か

  • 食品メーカー・食品加工業の経営層、DX推進担当
  • 食品卸・スーパー・コンビニ・外食チェーンで、発注や衛生管理の効率化を検討している担当者
  • HACCPの記録業務や廃棄ロスに悩んでいる中小の食品事業者

工場の工程(品質検査、賞味期限予測、サプライチェーン、予知保全)を詳しく知りたい場合は、工場向けにまとめた食品製造・加工業のAI活用事例が向いています。この記事では、食品業界全体の見取り図とHACCPの実務を中心に扱います。

食品業界でAI導入が進む3つの背景

環境省のロゴ。食品ロス削減は環境省と農林水産省が推進する政策課題で、AI導入の背景のひとつになっている

出典: 環境省 公式サイト

食品業界でAI導入が進んでいる背景には、人手不足、HACCP記録の負担、食品ロス削減目標の引き上げの3つがあります。どれも製造だけでなく、卸・小売・外食に共通する課題です。

1. 人手不足で「判断を伴う作業」も機械に任せる必要が出てきた

惣菜・弁当・パンなどの製造現場や、スーパー・外食の店舗では、検品・盛り付け・発注・温度点検といった人手のかかる作業が多く残っています。人を確保しにくくなったことで、単純作業だけでなく、発注量の判断や不良品の見分けといった判断を伴う作業まで、AIで支える必要が出てきました。

2. HACCPの記録・保存が毎日の負担になっている

改正食品衛生法により、2021年6月1日から原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されました。一定規模以上の事業者は「HACCPに基づく衛生管理」、小規模な営業者などは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行います。

どちらの区分でも、事業者は衛生管理計画を作り、実施状況を記録・保存しなければなりません。保健所は監視指導や営業許可の更新時に、計画と記録を確認します。紙で毎日記録している現場では、この作業が大きな負担になっています。

出典: 厚生労働省 HACCP(ハサップ) / 大阪府 食品衛生法改正

3. 事業系の食品ロスは前年度より増え、目標は60%削減に引き上げられた

農林水産省が2026年6月30日に公表した推計では、2024年度の食品ロスは461万トン(前年度比3万トン減)でした。ただし事業系は237万トンで、前年度より6万トン増えています。

区分

食品ロス量(2024年度)

全体

461万トン

事業系 合計

237万トン(前年度比6万トン増)

食品製造業

110万トン(事業系の約46%)

外食産業

70万トン

食品小売業

48万トン

食品卸売業

9万トン

事業系の食品ロスは2000年度比で57%減っていますが、政府は2030年度までに2000年度比60%削減へ目標を引き上げました(従来は50%)。製造から外食まで、すべての段階で需要予測の精度を上げることが、目標達成と利益改善の両方につながります。

出典: 農林水産省(2026年6月30日公表) / 環境省

製造・卸・小売・外食別|食品業界のAI活用マップ

キッコーマンのロゴ。食品メーカーでは出荷予測と生産計画の自動化にAIが使われている

出典: キッコーマン 公式サイト

食品業界のAI活用は、どの段階の事業者かによって、最初に効く領域が変わります。製造は検査と生産計画、小売は発注と温度管理、外食はHACCP記録と仕込み量の予測が中心です。

業務

食品製造

卸・物流

小売(スーパー・コンビニ)

外食

HACCP記録・温度管理

記録の電子化、CCPの連続監視

冷蔵・冷凍倉庫の温度監視

冷蔵・冷凍ケースの温度をIoTで自動記録(ベイシア)

無償の厚労省アプリやクラウド記録ツール

需要予測・発注

出荷予測と生産計画の自動化(キッコーマン)

受発注と在庫の最適化

AIによる発注・値引きの推奨(ローソン)

仕込み量・来店数の予測

品質・異物検査

画像AI・分光カメラによる検査(ニチレイフーズ、キユーピー)

入荷検品

―

―

生成AI・AIエージェント

社内業務、商品開発、工場シミュレーション(キユーピー×Devin)

問い合わせ対応、書類作成

店長業務を支えるAIエージェント(イオンフードスタイル)

メニュー説明、多言語対応

段階ごとの詳しい活用法は、次の記事でまとめています。

業務別のAI活用一覧

業務別に見ると、導入しやすいのはHACCP記録と需要予測、費用がかかるのは画像検査と工程の自動化です。

業務

AI・ITの役割

期待できる効果

主なツール・事例

導入のハードル

HACCP記録

記録の電子化、IoTセンサーによる温度の自動記録

紙の記録の削減、点検漏れの防止、保健所への提示が楽になる

厚労省アプリ、ハサログAI、カミナシ、富士通の温度IoT

低

需要予測・発注

出荷・POS・気象データから販売量を予測

廃棄ロスと欠品の削減、発注作業の短縮

キッコーマン「Naries」、ローソン「AI.CO」

中(1年分以上のデータが必要)

外観・異物検査

画像認識や分光カメラで不良品・異物を検出

検査品質のばらつき解消、省人化

ニチレイフーズ、キユーピー、四国化工機

高(専用設備が必要)

生成AI・AIエージェント

文書作成、商品開発の支援、シミュレーションモデルの作成

社内業務・開発工数の削減

キユーピー×Devin、味の素冷凍食品、日清食品

中(セキュリティ対策が必要)

工程の自動化

ロボットとAIで秤量・盛り付けなどを自動化

人手のかかる工程の省人化

未来型食品工場コンソーシアム

高

HACCP記録の自動化|AIより先に「記録の電子化」から始める

衛生ウェアを着た食品工場の作業員。HACCPでは温度・清掃・健康状態の記録が毎日必要になる

HACCPそのものはAIで代わりに行うことはできません。 AIやIoTが役立つのは、重要管理点(CCP)の温度などを連続して監視する部分と、紙の記録を置き換える部分です。危害要因の分析、CCPの設定、基準を外れたときの対応(是正措置)を決めて責任を持つのは事業者です。

HACCPの作業

AI・IoTで自動化できるか

補足

温度・時間の記録(CCPのモニタリング)

○

IoT温度センサーで常時記録し、基準を外れたら通知

清掃・健康状態などのチェック表

○(電子化)

スマホ・タブレットで入力。AIではなく記録ツール

記録の保存・保健所への提示

○

入力者・修正履歴のログが残るツールを選ぶ

衛生管理計画の作成

△

雛形の提供や作成代行はある。最終判断は事業者

危害要因の分析、CCPの設定

×

事業者が決める

是正措置の判断

×

異常の通知まではできるが、対応は人が判断する

厚生労働省の無償アプリ(2026年6月公開)

厚生労働省は2026年6月5日に「HACCP衛生管理記録アプリ」を無償で公開しました。2026年10月時点でも提供が続いています。

項目

内容

対象

一般飲食店事業者(小規模な飲食店向けの手引書に沿って設計)

費用

無償

主な機能

衛生管理計画の作成、日々の記録、毎月の振り返り

端末

スマートフォン・タブレット専用(iOS / Android)

問い合わせ先

日本食品衛生協会のヘルプデスク(土日祝休み)

このアプリは記録を入力するためのツールで、AIは搭載されていません。また公式の対象は一般飲食店で、食品工場向けとは書かれていません。小規模な飲食店や、製造直売の店舗が紙の記録をやめる入口として使うのが現実的です。2026年10月時点で、対象業種の拡大などの告知は見当たりません。

出典: 厚生労働省 HACCP衛生管理記録アプリ / アプリの公開について(2026年6月5日)

小売の事例|ベイシアは冷蔵・冷凍の温度記録をIoTで自動化

スーパーのベイシアは富士通と組み、冷蔵・冷凍設備の温度をIoTセンサーで自動記録し、リアルタイムで見える化する仕組みを導入しています。2026年2月の発表では、2026年5月までに全138店舗へ導入する予定とされ、店舗スタッフによる温度の点検・記録が不要になるとしています(全店への導入が完了したかは、2026年10月時点で公表を確認できていません)。

HACCPの温度記録を「人が入力する」から「センサーが記録する」へ切り替えた例で、多店舗・多拠点の事業者には参考になります。

出典: 富士通 プレスリリース(2026年2月25日) / IT Leaders

HACCP記録ツールの料金(2026年10月時点)

無償アプリでは足りない場合(複数拠点の一元管理、PCでの管理、工場向けの帳票など)は、クラウドの記録ツールを検討します。

サービス

料金(公式の公表値)

向いている事業者

厚労省 HACCP衛生管理記録アプリ

無償

小規模な一般飲食店

ハサログAI(考え方を取り入れた衛生管理向け)

初期費用0円。1店舗あたり月額は24か月契約で税込1,056円、12か月契約で税込1,375円、6か月契約で税込1,628円。ユーザー数は無制限

小規模な飲食店・惣菜店・菓子製造

ハサログ 基準A(HACCPに基づく衛生管理向け)

月額税込16,500円〜(HACCP計画プラン。記録プランは税込22,000円、マスタープランは税込33,000円)。初期登録・設定は税込55,000円

一定規模以上の製造事業者

カミナシ

公式サイトでは非公表(要問い合わせ)

多店舗・多工場の中堅以上

ハサログAIには、計画作成の代行(税込11,000円〜/店舗)や初期登録の代行(税込11,000円〜/店舗)などの有料オプションもあります。月額は契約期間で変わるため、稟議では契約期間を決めてから金額を書くのが安全です。

出典: ハサログAI 料金 / ハサログ 基準A 料金

需要予測・発注AI|メーカー・小売・外食をまたいだ事例

食品加工工場で働く作業員。需要予測は生産計画や発注の属人化を減らし、食品ロスを抑える

需要予測は、廃棄ロスと欠品を同時に減らせるため、食品業界のどの段階でも効果が出やすい領域です。ただし、効果の数値は業態と時期によって大きく違うため、公表時期とあわせて確認する必要があります。

企業

段階

仕組み

公表されている内容

時期

キッコーマン食品

製造

需給調整システム「Naries」。時系列モデルで出荷量を予測し、生産計画を自動で作成。計画と実績の差を毎日監視し、欠品や過剰在庫を事前に知らせる

2025年1月にテスト運用、4月から本運用

2025年〜

ローソン

小売

次世代発注システム「AI.CO」。発注数と値引きを推奨

全国の店舗へ導入。日販の増加に寄与したと会社が説明

2024年7月〜

船井総研サプライチェーンコンサルティング

支援サービス

食品業界向けのAI需要予測コンサル。天候・特売・季節性を分析し、発注と在庫を適正化

―

2026年8月開始

相模屋食料

製造

気象データを使った豆腐の需要予測(経済産業省のプロジェクト)

廃棄ロス約30%減

2014〜2016年度(約10年前の事例)

出典: キッコーマン ニュースリリース(PDF) / MONOist / ローソン / LNEWS / 経済産業省

需要予測で成果を出す条件

需要予測AIは、ツールを入れるだけでは成果が出ません。一般的には次の条件がそろっているほど精度が上がります。

  • 日次の販売・出荷実績が1年分以上、電子データで残っている(季節の変動を学習させるため)
  • 需要が天気・曜日・特売と連動しやすい商品が多い(豆腐、麺類、チルド食品、惣菜など)
  • 予測を誰がどう使うかが決まっている(キッコーマンのように、計画と実績の差を毎日確認する運用まで含めて設計する)

なお、需要予測(何個売れるか)と、賞味期限・鮮度の予測(いつ品質が落ちるか)は別のテーマです。必要なデータも担当部門も違うため、別々のプロジェクトとして進めます。賞味期限予測は工場向けの食品製造・加工業のAI活用事例で扱っています。生産計画の仕組みは工場の生産管理をAIで改善する方法も参考になります。

品質・異物検査AI|2026年はニチレイフーズの分光カメラAIが登場

四国化工機の豆腐パック。AIが割れや欠けを判定し、ロボットが不良品を取り除く

出典: IBM 四国化工機 導入事例

品質検査AIは製造の領域で、専用の設備とライン全体の設計が必要になるため、効果は大きい一方で費用も大きくなります。

企業

内容

公表されている内容

時期

ニチレイフーズ

原材料を受け入れる工程に、短波長赤外(SWIR)の分光カメラとAIを使う異物検査装置を導入(船橋工場)。4つの波長の情報から、カラーカメラでは見つけにくい透明なプラスチック片を検出する。装置はシブヤ精機が製造

効果の数値は非公表。目的は自動化・省人化、検査品質の均一化、作業負担の軽減。他工場への展開も検討

2026年8月発表

キユーピー

原料検査AI。良品だけを学習し、良品と違うものをはじく

―

2018年〜

四国化工機

豆腐パックのAI検査とロボットによる除去

1パック約0.1秒で判定。製造ラインを4名から管理者1名へ

IBM事例

ニチレイフーズの例のように、最近の検査AIは分光カメラなど専用ハードウェアとセットで開発されるケースが多く、「AIカメラを1台置けば検査が自動化する」というものではありません。AIが担うのは判定で、不良品の除去はロボットや機械が担います。搬送・照明・除去の仕組みを含めて評価する必要があります。

出典: ニチレイフーズ プレスリリース(PR TIMES) / EnterpriseZine / IBM 四国化工機 事例

キユーピーの良品学習の仕組み、アヲハタなどの異物検査、賞味期限予測、予知保全といった工場の工程ごとの詳しい解説は、食品製造・加工業のAI活用事例にまとめています。製造業全体の動向は製造業のAI活用事例が参考になります。

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生成AI・AIエージェント|キユーピーは工場シミュレーションの開発工数を78.8%削減

食品パッケージの試作品。生成AIは商品開発や社内業務の時間短縮に使われている

食品業界の生成AI活用は、社内業務の効率化から、AIエージェントによる専門業務の自動化へ広がり始めています。成果を公表している企業は、いずれも法人向けや自社で構築した安全な環境で使っています。

キユーピー × DeNA AI Link|AIエージェント「Devin」で工場シミュレーションを自動化

キユーピーは、DeNA AI Linkの支援を受け、自律型AIエージェント「Devin」(Cognition AI)を使って、工場シミュレーションソフト「Plant Simulation」(Siemens)のモデル開発を自動化しました。2026年8月にDeNAが発表し、9月に@ITが詳しく報じています。

  • 成果: 1モデルあたりの開発工数が8.5人日から1.8人日へ(78.8%削減)
  • 前提: 小規模なシミュレーションモデル1件での結果。工場全体の業務が8割減ったという意味ではない
  • 壁: 専用言語(SimTalk)を使うこと、GUI操作が前提であること、ローカル環境でしか動かないことから、AIが直接操作できない部分があり、人が検証する工程が必要だった
  • 対処: AIが参照するルール文書、専門用語の辞書、手順書を整えながら精度を上げた

この事例から読み取れるのは、AIエージェントを業務に使うには、AIが読める手順書や用語集を先に整える必要があるということです。これは中小の食品会社にも当てはまります。作業手順やレシピの管理ルールが担当者の頭の中にしかない状態では、AIエージェントは力を発揮できません。

出典: @IT(2026年9月22日) / innovatopia

小売の事例|イオンフードスタイル × 富士通は店長を支えるAIエージェントを実証

2026年7月、イオンフードスタイルと富士通は、店長と協働するAIエージェントを実店舗で実証しました。販売戦略の立案、棚割り、商圏分析を支援する内容です。発注だけでなく、店舗運営の判断そのものをAIが支える方向に進んでいます。

出典: IT Leaders

社内業務の生成AI|味の素冷凍食品・日清食品

味の素冷凍食品は法人向けの生成AIサービスを全社で使い、月6,800時間以上の業務削減を公表しています。日清食品ホールディングスは自社で構築した対話AIを使い、1人あたり年79時間超の削減を公表しています。どちらも一般向けの無料版ではなく、入力データが外に出にくい法人向けや自社構築の環境を選んでいる点が共通しています。

AIエージェントの基本はAIエージェントとは、他業界の事例は生成AIの企業活用事例で確認できます。

導入コストと費用回収の考え方

自動化された製造ライン。画像検査やロボットは専用設備が必要で導入費用が大きくなる

導入コストは、無料の記録アプリから、個別見積もりになる検査装置まで大きな差があります。金額を公表しているのは主にHACCP記録ツールで、検査装置や需要予測システムは要件によって変わるため、公表されていないのが一般的です。

段階

主な導入対象

費用の目安

費用回収の考え方

1

厚労省 HACCP衛生管理記録アプリ

無償

費用がかからないため、紙の記録をやめられるかを試す

2

クラウドのHACCP記録ツール(小規模向け)

1店舗あたり税込1,056〜1,628円/月(ハサログAI、契約期間による)

記録作業の時間削減で回収しやすい

3

HACCP記録ツール(工場・基準A向け)

税込16,500〜33,000円/月+初期費用 税込55,000円(ハサログ 基準A)/カミナシは要問い合わせ

拠点数・帳票数が多いほど効果が大きい

4

IoT温度センサーによる自動記録

個別見積もり(センサーの台数・通信方式で変動)

点検・記録の人件費と、温度異常による廃棄の防止で評価

5

需要予測システム・コンサル

個別見積もり

廃棄ロス・欠品の削減額で評価。1年分以上のデータが前提

6

画像・異物検査装置

個別見積もり(専用ハードの開発が必要な場合が多い)

検査人員の削減と、異物混入による回収リスクの低減で評価

試算例(記録ツールの場合): 1日30分の記録作業を時給1,200円のスタッフが行っている場合、1か月(30日)で約18,000円分の作業時間になります。記録ツールで作業が半分になれば月約9,000円分の削減となり、月額1,000〜1,600円程度のツール費用は十分に回収できる計算です。実際の効果は、自社の記録時間を測ってから判断してください。

費用の詳しい試算方法や投資回収の考え方は、製造業AI導入ガイドで解説しています。

使える補助金・支援策(2026年10月時点)

中小企業基盤整備機構(中小機構)のロゴ。デジタル化・AI導入補助金の事務局を担っている

出典: 中小機構 公式サイト

食品事業者が使いやすいのは、中小企業庁の「デジタル化・AI導入補助金2026」と、農林水産省の食品製造業向けの支援策です。名称に「AI」が入っていますが、AI専用の申請枠があるわけではありません。

デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)

項目

内容

申請枠

通常枠/インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)/セキュリティ対策推進枠/複数者連携デジタル化・AI導入枠

通常枠の補助率

1/2以内(賃金の要件を満たせば2/3以内)

通常枠の補助額

1〜3プロセス: 5万円以上150万円未満/4プロセス以上: 150万円以上450万円以下

対象経費

ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)など

次の締切

6次締切: 2026年10月30日(金)17:00(交付決定は12月10日の予定)

5次締切(9月29日)はすでに終了しています。7次以降の日程は、公式サイトで「随時更新」とされており、2026年10月5日時点では確定した日程を確認できませんでした。クラウド利用料が最大2年分対象になるため、月額制のHACCP記録ツールや需要予測サービスと相性のよい制度です。

出典: デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト / 公式スケジュール / 中小企業庁 公募要領

申請の流れはデジタル化・AI導入補助金2026 活用ガイド、締切の最新情報はデジタル化・AI導入補助金の締切で確認できます。検査装置など設備投資が中心の場合は、AI導入補助金とものづくり補助金の比較も参考になります。

農林水産省の食品製造業向け支援

農林水産省は、食品製造業の生産性向上に向けて次のような支援を行っています。

  • 食品企業生産性向上フォーラム(2025年6月開始): 相談窓口、人材育成の講習会、補助金情報の提供
  • 省力化投資促進プラン(食品製造業): 2029年度までの5年間の計画
  • 業種横断型技術開発実証事業(令和8年度当初予算): 食品企業と機械メーカーが組んでAI・ロボットなどの新技術を開発するのを支援。食品企業・機械メーカー・関係団体など異業種3者以上で構成することが条件
  • 省力化技術導入支援事業(令和7年度補正予算): 省力化のモデルとなるAI・ロボットなどの導入を支援

補助上限や公募時期は事業ごとに異なるため、申請前に農林水産省のページで最新の公募情報を確認してください。

出典: 農林水産省 食品製造業の生産性向上

食品業界のAI導入で注意すべき規制・責任

厚生労働省のロゴ。HACCPに沿った衛生管理は食品衛生法にもとづき厚生労働省が所管している

出典: 厚生労働省 公式サイト

食品業界では、AIを使っても食品の安全と表示の責任は事業者にあります。食品衛生法、食品表示法、景品表示法などに関わる場面では、人による確認の工程を残す必要があります。

領域

主な法令

注意点

HACCPの電子記録

食品衛生法

保健所の確認対象になる。誰がいつ入力・修正したかのログと、改ざんを防ぐ仕組みを選定条件に入れる

AIによる検査の見逃し

食品衛生法、製造物責任法

AIが不良品や異物を見逃して流通しても、責任は事業者にある。AIベンダーに責任を移せるわけではない

期限表示

食品表示法

消費者庁は2025年3月に期限表示ガイドラインを改正し、安全係数を1に近づけることが望ましいとしたと報じられている。AIで期限を延ばす場合も、科学的な根拠と記録が必要

生成AIで作った販促文・表示

景品表示法、食品表示法、健康増進法、薬機法

元データにない効能や数値が入ることがある。そのまま使うと優良誤認などにあたるおそれがある。「生成→人の確認→承認」の3段階で運用する

レシピ・配合・製造条件

不正競争防止法(営業秘密)

一般向けの生成AIに入力すると漏えいのリスクがある。法人向けの契約や社内環境で使う

従業員・顧客のデータ

個人情報保護法

カメラ映像や顔認証、行動データを使う場合は利用目的を明示する

期限表示ガイドラインの改正は報道で確認した内容のため、実務で使う際は消費者庁の食品表示のページで原文を確認してください。生成AIの情報漏えい対策は生成AIのセキュリティリスクで詳しく扱っています。

出典: 日本食糧新聞(期限表示ガイドライン改正)

失敗しない導入の進め方(5ステップ)

中小の食品事業者は、「記録の電子化 → データの蓄積 → 1つの業務で試験導入」の順に進めると失敗しにくくなります。

  1. 一番困っている業務を1つ決める: 記録作業、廃棄ロス、検査人員の不足など、効果を金額や時間で測れるものを選びます。
  2. HACCP記録を紙から電子に切り替える: 小規模な飲食店なら厚労省の無償アプリ、拠点が多い場合や工場ではクラウドの記録ツールを使います。現場の入力負担が実際に減ったかを確認します。
  3. 販売・出荷・温度のデータを1年分ためる: POSや生産管理システム、温度ロガーのデータを毎月CSVで書き出す運用を固めます。需要予測には季節をまたいだデータが必要です。
  4. 手順書・用語集を文書にする: AIエージェントや生成AIを使う準備です。キユーピーの事例のように、AIが読める形のルールや辞書があるかどうかで精度が変わります。
  5. 1つの業務で3〜6か月試し、効果を測ってから広げる: 補助金の対象になるかもこの段階でベンダーと確認します。全社展開は効果を数字で確認してから判断します。

AI導入をおすすめできる食品事業者

次の条件に当てはまる事業者は、AI導入の効果が出やすい状態です。

  • HACCPの記録や温度点検に、毎日まとまった時間を使っている(多店舗のスーパー、外食チェーン、複数ラインのある工場)
  • 天気や曜日で売れ行きが変わる商品(豆腐、麺類、チルド食品、惣菜、弁当など)を多く扱い、廃棄ロスが利益を圧迫している
  • 日次の販売・出荷データが1年分以上、電子データで残っている
  • 目視検査の人員確保に苦労しており、異物混入のリスクを下げたい中堅以上のメーカー
  • 社内の手順書やルールが文書化されており、生成AIやAIエージェントに読ませる素材がある

慎重に判断したほうがよい食品事業者

次に当てはまる場合は、AIより先に体制やデータを整えるほうが効果的です。

  • 記録が紙のままで、電子化する担当者や時間を確保できない
  • 販売・出荷の実績データが1年分も残っていない(需要予測が機能しにくい)
  • 少量多品種でロットが小さく、画像検査の学習データがたまりにくい
  • 食品表示や広告表現の確認体制がないまま、生成AIで販促文を大量に作ろうとしている
  • 「AIを入れればすぐに人を減らせる」と考えている(現場の協力が得られず定着しにくい)
  • データの蓄積がないまま、予知保全や画像検査の大型投資から始めようとしている

よくある質問

Q1. 厚生労働省の無料アプリは、食品工場でも使えますか?

公式の対象は「一般飲食店事業者」で、食品工場向けとは書かれていません。スマートフォン・タブレット専用のため、複数拠点の記録を本社のPCでまとめて管理する使い方にも向きません。製造直売の小さな店舗などで試す分には便利ですが、工場の記録には工場向けのクラウドツールを検討するのが現実的です。

Q2. スーパーや外食チェーンでも、メーカーと同じAIを使えますか?

使う技術は似ていますが、入力するデータと目的が違います。メーカーは出荷データから生産計画を立て、小売はPOSデータから発注数や値引きを決め、外食は来店数から仕込み量を決めます。導入するときは、自社の段階に合った事例やツールを選ぶ必要があります。

Q3. AIエージェントは中小の食品会社でも使えますか?

使えますが、準備が必要です。キユーピーの事例でも、AIが参照するルール文書や専門用語の辞書を整えることで精度を上げており、人が結果を確認する工程も残しています。まずは社内の手順書を文書にし、問い合わせ対応や書類作成など、間違えても影響が小さい業務から試すのが無難です。

Q4. 補助金を使えば、画像検査装置も導入できますか?

デジタル化・AI導入補助金はソフトウェアやクラウド利用料が中心のため、専用のハードウェアが主体の検査装置には合わない場合があります。設備投資が中心なら、ものづくり補助金や農林水産省の省力化支援も比べて検討してください。対象になるかは、公募要領と事務局・ベンダーへの確認が必要です。

Q5. 2024年度の食品ロス統計で、AI導入の必要性はどう変わりましたか?

事業系の食品ロスは前年度より6万トン増え、237万トンになりました。2030年度の目標(2000年度比60%削減)に対して、2024年度時点の削減率は57%です。目標との差は小さく見えますが、前年度より増えている以上、需要予測などによる追加の対策が求められる状況です。

Q6. 生成AIで作った商品説明やPOPは、そのまま使ってよいですか?

そのまま使うのは避けてください。生成AIは元の情報にない効能や数値を書き加えることがあり、景品表示法の優良誤認や、健康増進法・薬機法に触れるおそれがあります。原材料やアレルゲンの表示は食品表示法の対象でもあるため、人が確認して承認する工程を必ず入れてください。

まとめ|食品業界のAI活用は「記録の電子化」と「需要予測」から

食品業界のAI活用は、製造・卸・小売・外食のどの段階かによって最初に取り組む領域が変わりますが、多くの事業者に共通して始めやすいのは、HACCP記録の電子化と需要予測です。

  • HACCPはAIで代わりに行うことはできませんが、温度記録やチェック表は電子化・自動化できます。小規模な飲食店なら無償の厚労省アプリ、多拠点ならクラウドツールやIoT温度センサーが選択肢です。
  • 需要予測は、キッコーマン(製造)やローソン(小売)のように段階を問わず成果が出ています。ただし1年分以上のデータが前提です。
  • 品質検査AIは、ニチレイフーズの分光カメラAIのように専用設備とセットになるのが一般的で、工場の工程ごとの検討が必要です。
  • AIエージェントは、キユーピーの事例のように、手順書や用語集を整えた企業で成果が出ています。
  • AIを使っても、食品の安全と表示の責任は事業者にあります。人の確認工程は残してください。

工場の工程ごとの詳しい事例は食品製造・加工業のAI活用事例、店舗側の活用はスーパーマーケットのAI活用や飲食・外食業のAI活用事例、AIの基本は生成AIとはで確認できます。

同じ業種で、どの業務から開発に手を付けるかを整理します

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