Gemini Enterprise Agent Platform とは?Vertex AI後継の機能・料金・Agent Studio/A2A/Registry/Gateway徹底解説

この記事のポイント
Google CloudがVertex AIを統合した後継プラットフォーム「Gemini Enterprise Agent Platform」を、4つの柱(Build/Scale/Govern/Optimize)と料金・GA/Previewステータス・移行ポイントまで実務目線で整理します。
Gemini Enterprise Agent Platform は、Google Cloud が 2026年4月22日に発表した、企業向け AI エージェントの「構築・拡張・ガバナンス・最適化」を1つに統合した開発プラットフォームです。 公式表記でも Gemini Enterprise Agent Platform (formerly Vertex AI) と記され、Vertex AI のすべての機能とロードマップを引き継ぐ実質的な後継基盤に位置づけられています。
この記事では、以下の点を整理します。
- Vertex AI からどう変わったのか(後継としての位置づけ)
- 4つの柱(Build / Scale / Govern / Optimize)と主要コンポーネント
- Agent Studio / ADK / Agent Registry / Agent Gateway / A2A の関係
- 料金体系と GA / Preview の現状
- 他社プラットフォーム(OpenAI Agents SDK / AWS Bedrock Agents / Microsoft Copilot Studio)との比較
- 向いている企業 / 向いていない企業
対象読者は、Vertex AI を既に使っている開発者・SRE・PdM、社内で AI エージェントの本格導入を検討する情報システム部門・DX 推進担当、Google Cloud で生成 AI のガバナンス基盤を選定中の方です。
出典は公式ドキュメント(
docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform)と Google Cloud 公式ブログの 2026年4月22日発表分を中心に整理しています。Preview 機能は今後変更の可能性があるため、本番採用時は最新の料金・GA ステータスを公式ページで確認してください。
Gemini Enterprise Agent Platform とは何か(一文で)

Gemini Enterprise Agent Platform は、Google Cloud が提供する企業向け AI エージェントの統合開発プラットフォームで、Vertex AI を統合・進化させた後継基盤です。 モデル選択・モデル構築・エージェント構築・ランタイム実行・ID 管理・ガバナンス・観測・最適化までを 1 つのコンソールで一貫して扱える点が、従来の Vertex AI との最大の違いです。
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
提供元 | Google Cloud |
発表 | 2026年4月22日(Google Cloud Next '26) |
旧称 | Vertex AI(公式表記: |
提供形態 | Google Cloud の SaaS(コンソール / API / SDK) |
主要言語 SDK | Python / Java / JavaScript / Go(Google Gen AI SDK) |
アクセス先 |
|
主要モデル | Gemini 3.1 Pro / Flash / Flash-Lite、Gemma 4、Lyria 3、Claude(Opus/Sonnet/Haiku)、Mistral、Llama、DeepSeek 他 |
推奨リージョン |
|
「Gemini Enterprise」の3層を最初に整理する
検索ノイズで最も混乱しやすいのが、似た名前の3つの違いです。冒頭で必ず押さえてください。
- Gemini Enterprise(ブランド全体) — Google Cloud の企業向け AI スイート全体の名称
- Gemini Enterprise アプリ — エンドユーザー向けアプリ(旧 Agentspace)。Standard / Plus / Frontline といったユーザーライセンス課金
- Gemini Enterprise Agent Platform — 開発者・基盤レイヤ。本記事の対象。Vertex AI の後継
ユーザーが日常的にチャットで使うのが「Gemini Enterprise アプリ」、それを動かすエンジン側が「Agent Platform」と理解すると整理しやすいです。
Vertex AI からどう変わったか(後継としての位置づけ)
結論: Vertex AI のサービス・ロードマップは Gemini Enterprise Agent Platform にそのまま引き継がれます。 新規に「Vertex AI」コンソールから入る代わりに、Agent Platform コンソールがエントリーポイントとなり、エージェント統合・DevOps・オーケストレーション・セキュリティ機能が新規追加されました。
旧 Vertex AI 機能と新プラットフォームでの提供場所
旧 Vertex AI の機能 | Gemini Enterprise Agent Platform での提供場所 |
|---|---|
モデル選択(Model Garden) | Build > Model Garden(200+モデル、Claude/Gemma 4 含む) |
モデル構築・チューニング | Build(Vertex AI からの機能を継承) |
Agent Builder / Agent Engine | Scale > Agent Runtime に進化(コールドスタート1秒未満、Long-running Agents Preview) |
評価・モニタリング | Optimize > Agent Evaluation / Observability(OpenTelemetry 準拠) |
Vertex AI SDK の生成 AI モジュール | 2026/6/24 廃止予定 → Google Gen AI SDK( |
Vertex AI ユーザーが今やるべき2つのこと
- SDK 移行の計画を立てる — Python なら
vertexai.generative_modelsからgoogle-genaiへの置き換え。2026/6/24 を期限として影響箇所を棚卸しします - コンソールの導線を確認する — Agent Platform コンソール(
/agent-platform/overview)からのアクセスに切り替え、既存 Vertex AI プロジェクトの可視性を確認します
公式は「Vertex AI のすべてのサービスとロードマップは、今後 Gemini Enterprise Agent Platform を通じて提供される」と明示しており、Vertex AI 名義のページは順次 Agent Platform 配下に再構成されています。
4つの柱(Build / Scale / Govern / Optimize)— 1分でわかる早見表

Agent Platform の機能群は、公式が定義する 4つの柱 に整理されています。まずこの全体像を頭に入れてから個別機能を読むのが最短です。
柱 | 目的 | 主要コンポーネント |
|---|---|---|
Build(構築) | エージェントとモデルを作る | Agent Studio / ADK / Agent Garden / Model Garden |
Scale(拡張) | 本番運用・スケール・状態管理 | Agent Runtime / Agent Memory Bank / Agent Sessions / Agent Sandbox |
Govern(ガバナンス) | ID・認証・カタログ・脅威検知 | Agent Identity / Agent Registry / Agent Gateway / Model Armor / Audit Logs |
Optimize(最適化) | 評価・観測・自動改善 | Agent Simulation / Agent Evaluation / Agent Observability / Agent Optimizer |
「Vertex AI に 結合組織(connective tissue) が追加された」と評する記事もあり、個別機能が点在していた状態から、ID・ゲートウェイ・観測で横串が通った形になっています。
Build:エージェントとモデルを作る
Build はエージェント構築の入口です。ローコード(Agent Studio)とコードファースト(ADK)の二段構えで、初期検証から本番グレードまで段階的にスケールできるのが設計思想です。
Agent Studio(ローコード)
- 直感的な GUI のビジュアルキャンバスで、プロンプト作成からマルチエージェント構成まで対応
- 検証が固まったら ADK へエクスポートしてコードファースト開発に移行できる
- 非エンジニア(業務部門)が PoC を組むのに向いている
Agent Development Kit(ADK)— コードファースト
- グラフベースフレームワークでサブエージェントネットワークを定義し、複雑な問題を分解して解く設計
- セキュリティ・バイ・デザインで、bash 実行・ファイル管理を強化サンドボックスで隔離
- Python / Java / JavaScript / Go の Google Gen AI SDK で扱える
- 公式ブログによれば、月間処理トークン数は 6 兆超
Agent Garden(テンプレート集)
- 厳選された業務テンプレートが揃う
- 例: コードのモダナイゼーション、財務分析、経済調査、請求書処理、マルチエージェントシステム
- ゼロから書くより、テンプレートをフォークして調整するほうが立ち上がりが速い
Model Garden(200+モデル)
- ファーストパーティ: Gemini 3.1 Pro / 3.1 Flash / 3.1 Flash Image / Lyria 3(音声)/ Gemma 4(オープン)
- サードパーティ: Anthropic Claude(Opus / Sonnet / Haiku)/ Mistral / Llama / DeepSeek 等
- 用途・コスト・規制でモデルを切り替えやすいのが Agent Platform 採用の大きな理由になります
「コーディングや高難度推論は Claude Opus、社内ドキュメント大量処理は Gemini 3.1 Pro、軽量タスクは Flash-Lite」のように、用途別にモデルをルーティングする設計がやりやすくなりました。
Scale:本番運用・スケール・状態管理
Scale は、検証済みエージェントを本番に乗せて落ちないようにするためのレイヤです。
Agent Runtime(旧 Agent Engine の進化)
- コールドスタート 1 秒未満、新規エージェントのプロビジョニングは数秒
- Long-running Agents(Preview): 数日〜週単位の自律実行に対応。長時間バッチ・調査系エージェントが現実的になる
- 双方向 WebSocket でリアルタイム音声・映像処理も可能
Agent Memory Bank(長期記憶)
- 会話から長期記憶を動的に生成・管理
- Memory Profiles で低レイテンシ・高精度の想起
- ぐるなびのレストラン推薦エージェント「UMAME!」では、利用者満足度 30% 以上の向上が報告されています
Agent Sessions(会話履歴)
- 履歴の保存・管理を担当
- Custom Session IDs で社内 DB / CRM レコードに直接マッピングでき、業務システム側のキーで会話を引ける
Agent Sandbox(GA)
- モデルが生成したコードをホストから隔離して実行する安全環境
- ブラウザベース自動化(コンピュータユース)にも対応
- AI による未知のコード実行を業務に取り込むハードルを下げる
Memory Bank(記憶)と Sessions(履歴)は混同されやすいですが、Sessions が「会話のログ」、Memory Bank が「ユーザー像・関係性などの抽象化された記憶」と整理すると分かりやすいです。
Govern:ID・認証・カタログ・脅威検知

Govern は、エージェントを企業基盤として運用する上で最も差がつく層です。Agent Platform はここに新コンポーネントを多く投入しています。
Agent Identity(GA)
- すべてのエージェントに SPIFFE 標準ベースの暗号化 ID を自動付与
- MCP サーバー、クラウドリソース、エンドポイント、他エージェントとの認証に使う
- IAM ベースのアクセス管理と監査可能なトレースが標準で揃う
Agent Registry(統合カタログ)
- 社内のエージェント / ツール / スキル / MCP サーバー / エンドポイントを一元カタログ化
- キーワード・接頭辞検索でリソースを発見でき、A2A エージェントや MCP サーバーの登録もここから
- 承認済みリソースのみを利用可能にするガバナンス窓口として機能
Agent Gateway(Preview)— エージェントの管制塔
- エージェント通信の「Air Traffic Control(管制塔)」として、対応プロトコルは MCP / A2A / REST / gRPC
- 動作モードは2つ
- Client-to-Agent(Ingress): 外部クライアント → エージェント
- Agent-to-Anywhere(Egress): エージェント → 外部 API / ツール / MCP サーバー
- mTLS の自動ハンドシェイク・終端を引き受け、開発者は通信暗号化の実装から解放される
- DPoP(Demonstration of Proof-of-Possession) + Context-Aware Access に対応
- 認可は IAM / IAP / Semantic Governance Policies / Service Extensions で多段に構成
Model Armor(GA)
- プロンプトインジェクション、ツールポイズニング、機密データ漏洩からの保護レイヤ
- Agent Gateway と統合して、エージェント↔ツール間トラフィックも検査できる
Agent Anomaly Detection / Threat Detection / Audit Logs
- Anomaly Detection: 統計モデル + LLM-as-a-judge で異常推論を検知
- Threat Detection: リバースシェル・悪意ある IP 接続を可視化
- Audit Logs(GA): すべての呼び出し・クエリ・応答を記録し、コンプライアンス対応に使える
A2A × Agent Registry × Agent Gateway の関係
3つのコンポーネントは、「誰が・どのエージェント・どこに通信するか」を分担しています。
役割 | 担当コンポーネント |
|---|---|
誰がアクセスするか(ID) | Agent Identity(SPIFFE) |
どのエージェントがあるか(カタログ) | Agent Registry |
通信そのものをどう守るか(経路) | Agent Gateway(mTLS / DPoP / Model Armor 統合) |
異ベンダー間の連携プロトコル | A2A(Linux Foundation 寄贈) |
A2A は Google が開発し、Linux Foundation に寄贈したオープンプロトコルです。OpenAI / Anthropic / 他クラウドのエージェントとも、A2A に準拠していれば Agent Platform から呼び出せます。
Optimize:評価・観測・自動改善

Optimize は、運用後に精度・コスト・安全性を継続改善するためのレイヤです。
Agent Simulation
- 合成ユーザー × 仮想ツール環境で多段階会話のストレステスト
- 成功率・安全性で自動スコアリング
- 本番投入前のリグレッションを抑える用途に使える
Agent Evaluation
- 単一応答ではなく会話全体(マルチターン)を自動評価
- ライブトラフィックに対する継続的スコアリング
- 推論プロセスをトレースで可視化
Agent Observability
- OpenTelemetry 準拠のテレメトリ
- 完全な実行トレース、リアルタイム可視化、トポロジー可視化に対応
- 既存の SRE / オブザーバビリティスタックに乗せやすい
Agent Optimizer
- ログを自動分析し、失敗を自動クラスタリング
- システム指示(System Prompt)の自動改善提案まで踏み込む
料金体系(モデル料金とプラットフォーム料金は別系統)
結論: Gemini Enterprise Agent Platform の料金は「モデル料金 + Grounding 料金 + プラットフォーム機能の従量料金」の3階層で構成されます。 モデル料金は公式に整理されていますが、プラットフォーム機能(Agent Engine / Memory Bank / Sandbox 等)の単価は本記事執筆時点で一部未公開です。本番試算時は必ず公式料金ページを参照してください。
モデル料金(Standard、2026年4月時点)
モデル | 入力(≤200K) | 入力(>200K) | テキスト出力(≤200K) | テキスト出力(>200K) |
|---|---|---|---|---|
Gemini 3.1 Pro Preview | $2 / 1M tokens | $4 / 1M tokens | $12 / 1M tokens | $18 / 1M tokens |
Gemini 3 Flash Preview | $0.5 / 1M tokens(テキスト/動画), $1(音声) | — | $3 / 1M tokens | — |
Gemini 3.1 Flash-Lite Preview | $0.25 / 1M(テキスト/動画), $0.50(音声) | — | $1.50 / 1M tokens | — |
Gemini 2.5 Pro | $1.25 / 1M tokens | — | $10 / 1M tokens | — |
Gemini 2.5 Flash | $0.30 / 1M tokens | — | $2.50 / 1M tokens | — |
Gemini 2.5 Flash Lite | $0.10 / 1M tokens | — | $0.40 / 1M tokens | — |
- Priority Pricing(優先処理)と Flex / Batch Pricing(バッチ・割安、Batch API は 50% 割引)の3階層
- HTTP 200 レスポンスのみ課金。4xx / 5xx エラーは課金されません
- 入力が 200K tokens を超えると、全トークンが long context レートで課金される点に注意
Grounding(グラウンディング)料金
サービス | 料金(Gemini 3 系) | 無料枠 |
|---|---|---|
Google Web Search | $14 / 1,000 クエリ | 5,000 クエリ/月 |
Google Maps | $14 / 1,000 クエリ | 5,000 クエリ/月 |
Grounding with your data | $2.50 / 1,000 プロンプト | — |
サードパーティモデル
- Anthropic Claude(Opus / Sonnet / Haiku)等は Model Garden 経由で利用可能
- 料金は各モデルベンダーの価格に準拠するため、運用試算時は公式ページで都度確認します
無料枠・トライアル
- Google Cloud 新規ユーザー向け $300 分の無料クレジット
- まずはここでマルチモデル切り替えと Agent Studio の感触をつかむのが現実的です
料金の落とし穴(実務で詰まりやすい3点)
- 200K tokens 超え — 全トークンが long context レートになる。長文 RAG では入力長を分割設計する
- Priority と Flex の使い分け — 対話 UI は Priority、夜間バッチや評価ジョブは Flex / Batch で 50% 割引を取りに行く
- Grounding の無料枠超過 — 5,000 クエリ/月の無料枠を超えると即課金。検索系エージェントはクエリ数の上限監視を入れる
GA / Preview ステータス一覧(2026年4月時点)
エージェント基盤は更新が速いため、本番投入前にステータスを必ず確認してください。
機能 | ステータス(2026/4 時点) | 備考 |
|---|---|---|
Agent Identity | GA | SPIFFE ベース ID 自動付与 |
Model Armor | GA | プロンプトインジェクション/データ漏洩防御 |
Audit Logs | GA | 全呼び出しログ記録 |
Agent Sandbox | GA | 隔離コード実行環境 |
Agent Gateway | Preview | 管制塔。mTLS/DPoP 対応 |
Long-running Agents | Preview | 数日〜週単位の長時間実行 |
Gemini 3.1 Pro / Flash / Flash-Lite | Preview | モデル料金ページ表記時点 |
東京リージョン(asia-northeast1) | Allowlist GA | Google 承認制。デフォルトは |
Preview 機能の取り扱い: SLA・後方互換性・料金が変更される可能性があります。本番ワークロードはまず GA 機能で組み、Preview は PoC・試験運用で押さえるのが安全です。
他社プラットフォームとの比較
結論: Agent Platform の独自性は「ID・カタログ・ゲートウェイ・モデル選択肢の広さ」を1つの GCP 内で完結させた点です。 一方で、ベンダーロックインや Google Cloud 前提のコストはトレードオフになります。
主要プラットフォーム比較(実務目線)
項目 | Gemini Enterprise Agent Platform | OpenAI Agents SDK | AWS Bedrock Agents | Microsoft Copilot Studio + Foundry |
|---|---|---|---|---|
主要モデル | Gemini / Gemma / Claude / Mistral / Llama / DeepSeek 他 | OpenAI 系中心 | Claude / Llama / Titan 他 | OpenAI / 他 |
ID 基盤 | Agent Identity(SPIFFE) | API キー中心 | IAM 連携 | Entra ID 連携 |
エージェントカタログ | Agent Registry(統合) | なし(自前管理) | Bedrock Agents | Copilot Studio |
ゲートウェイ層 | Agent Gateway(mTLS/DPoP/MCP/A2A/REST/gRPC) | 個別実装 | API Gateway 等の組合せ | Azure API Management |
ローコード | Agent Studio | 提供なし | Agent Builder | Copilot Studio |
コードファースト | ADK | Agents SDK | Bedrock SDK | Foundry |
A2A プロトコル | ネイティブ対応 | 個別 | 個別 | 個別 |
観測 | Agent Observability(OpenTelemetry) | 自前 | CloudWatch 連携 | Application Insights |
選び分けの目安
- 既に Google Cloud 中心 / マルチモデルを活かしたい → Agent Platform
- OpenAI モデルが必須かつ軽量に始めたい → OpenAI Agents SDK
- AWS 中心の基盤資産が大きい → Bedrock Agents
- Microsoft 365 / Entra ID 連携が要件 → Copilot Studio + Foundry
使い方の流れ(はじめての3ステップ)
PoC から本番までの最短コースを示します。
- Agent Studio で叩き台を作る — Google Cloud コンソール(
/agent-platform/overview)→ Agent Studio で、ビジュアルキャンバスから1つのエージェントを構築。Model Garden で Gemini 3.1 Flash / Claude Sonnet など複数モデルを差し替えて応答品質を比較します - ADK にエクスポートしてコード化 — Agent Studio の構成を ADK にエクスポートし、Python / Java / JS / Go から拡張。Agent Memory Bank と Agent Sessions を有効化して状態管理を整理します
- Govern と Optimize を入れて本番化 — Agent Identity を発行し、Agent Registry にツール / MCP を登録。Agent Gateway 越しに通信させ、Model Armor / Audit Logs を有効化。Agent Evaluation と Observability で継続改善ループに入ります
PoC 段階の注意: いきなり Long-running Agents や Agent Gateway(Preview)を本番要件に入れると、SLA や料金変更の影響を受けやすくなります。最初は GA 機能で組み、Preview は限定範囲で評価するのが安全です。
Gemini Enterprise アプリと Agent Platform の違い
混同されやすいので、最後に1表で整理します。
観点 | Gemini Enterprise アプリ | Gemini Enterprise Agent Platform |
|---|---|---|
対象 | エンドユーザー | 開発者・基盤チーム |
提供形態 | チャット/業務アシスタントのアプリ | プラットフォーム(コンソール / API / SDK) |
課金 | ユーザー単位ライセンス(Standard / Plus / Frontline 等) | モデル従量+プラットフォーム従量 |
役割 | 業務に AI を「使わせる」 | 業務に合わせた AI エージェントを「作って動かす」 |
旧称 | Agentspace | Vertex AI |
業務部門の生産性を上げたいだけなら Enterprise アプリ、自社の業務プロセスに合わせたエージェントを作って組み込みたいなら Agent Platform、というのが基本の選び分けです。
向いている企業 / 向いていない企業
こんな企業におすすめ
- すでに Google Cloud をメインに使っている企業 — IAM / VPC / BigQuery / Cloud Logging との統合が自然で、ガバナンス基盤を流用しやすい
- マルチモデルでエージェントを組みたい企業 — Gemini と Claude を業務別に使い分けたい、特に「コーディング系は Claude、ドキュメント大量処理は Gemini Pro」といった分担が前提のケース
- エージェントを社内基盤として横展開したい企業 — Agent Registry × Identity × Gateway で「誰が・どのエージェントを・どこに使えるか」をガバナンスしたいケース
- 規制業界・監査対応が必須の企業 — Audit Logs / Model Armor / SPIFFE ID で証跡とセキュリティを最初から組み込みたい場合
こんな企業にはおすすめしない
- 個人開発者・小規模スタートアップで素早く試したい場合 — Google Cloud アカウント前提で、軽量に試すなら OpenAI Agents SDK や Dify、ローカル ADK 単体運用の方がコストが軽い
- Microsoft 365 / Entra ID が業務基盤の企業 — Copilot Studio + Foundry の方が ID/SSO/Office 連携で素直
- AWS で完結している企業 — 既存の IAM / VPC / セキュリティ基盤と二重管理になりやすい
- モデルを 1 つに固定したい企業 — マルチモデル前提の設計が活かしにくく、過剰機能になりがち
注意点・落とし穴
実務で詰まりやすいポイントをまとめます。
- Vertex AI SDK の生成 AI モジュールは 2026/6/24 廃止。Python は
vertexai.generative_modelsからgoogle-genaiへ移行が必要 - Preview 機能は SLA・料金・後方互換に注意。Agent Gateway / Long-running Agents / Gemini 3.1 系は Preview 段階
- 東京リージョン(asia-northeast1)は allowlist GA。原則は
globalリージョンが推奨 - Agent Engine / Memory Bank / Sandbox の単価は本記事執筆時点で公式ページに完全整理されていない部分がある。本番試算は最新ページを参照
- マルチモデル運用時のキー管理 — Model Garden 経由の Anthropic Claude などは別ベンダー料金に従うため、コスト計算とログの粒度を最初から分けておく
よくある質問(FAQ)
Q1. 既存の Vertex AI プロジェクトはそのまま動きますか?
公式は「Vertex AI のサービスとロードマップは Agent Platform を通じて提供される」としており、コンソール導線とブランドが切り替わる形です。ただし Vertex AI SDK の生成 AI モジュールは 2026/6/24 廃止のため、SDK 移行計画は別途必要です。
Q2. Anthropic Claude を使えますか?
使えます。Model Garden 経由で Claude Opus / Sonnet / Haiku が提供されています。料金は Anthropic ベンダー料金準拠のため、最新は公式ページで確認します。
Q3. A2A プロトコルとは何ですか?
A2A(Agent2Agent)は Google が開発し Linux Foundation に寄贈したオープンプロトコルで、異なるベンダー・プラットフォーム間でエージェントが相互に呼び出すための共通仕様です。Agent Platform はネイティブ対応しています。
Q4. MCP(Model Context Protocol)にも対応していますか?
対応しています。Agent Registry で MCP サーバーを登録でき、Agent Gateway は MCP / A2A / REST / gRPC をプロトコルとしてサポートします。
Q5. オンプレミス環境でも動きますか?
基本的には Google Cloud SaaS 提供で、オンプレ単独運用は対象外です。データレジデンシ要件は対応リージョン(global / 各リージョン)と、東京リージョン allowlist GA で個別調整します。
Q6. 個人での試用はできますか?
Google Cloud の新規ユーザー向け $300 無料クレジットで Agent Studio・Model Garden の挙動は試せます。ただし「個人ベースで素早く試す」用途には機能過多なので、軽い検証なら OpenAI Agents SDK や Dify、ローカルの ADK 単体起動の方が向きます。
Q7. ぐるなび「UMAME!」のような事例はありますか?
はい。ぐるなびのレストラン推薦エージェントで Agent Memory Bank を活用し、利用者満足度 30% 以上の向上が報告されています。Payhawk / Comcast / L'Oréal / Color Health なども企業ユースケースとして公開されています。
まとめ:Gemini Enterprise Agent Platform を一言で
Gemini Enterprise Agent Platform は、Vertex AI を統合・進化させた「企業向け AI エージェント基盤の標準セット」です。 Build(Agent Studio / ADK)、Scale(Agent Runtime / Memory Bank)、Govern(Identity / Registry / Gateway / Model Armor)、Optimize(Simulation / Evaluation / Observability)の4つの柱で、点在していた Vertex AI 機能に ID・カタログ・ゲートウェイの結合組織が通ったのがポイントです。
意思決定の目安:
- すでに Google Cloud + マルチモデル運用 → 最有力候補
- AWS / Microsoft 中心の基盤 → 二重管理コストを慎重に評価
- 個人 / 小規模スタートアップ → まずは軽量 SDK or Dify で十分
Preview 機能の本番採用は慎重に。SDK は 2026/6/24 までに google-genai へ移行する点だけは早めに着手することを推奨します。
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- セキュリティ要件を整理したい方 → 「AIエージェント セキュリティ 対策」
- 関連モデルを比較したい方 → 「Gemini 3.1 Proとは」「Geminiとは」
本記事は Google Cloud 公式ドキュメント・公式ブログ(2026年4月22日発表分)と、Publickey / クラスメソッド DevelopersIO / G-gen Tech Blog 等の信頼ソースを基に整理しています。Preview 機能の GA 化や料金改定が頻繁に起きるため、本番採用時は必ず公式の最新情報(
cloud.google.com/products/gemini-enterprise-agent-platform)をご確認ください。
この記事の著者

AI革命
編集部
AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。
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