業務自動化はエンジニア不要でできるか|社内に技術者がいない会社に必要な体制と費用

この記事のポイント
業務自動化はエンジニア不要でできるか、経営者向けに結論から解説。「作る」と「動かし続ける」を分け、社内で育てる・外注する・仕組みごと開発を頼むの3択を年間費用で比較。月何時間×人件費の回収試算、AIで社内でできる範囲、適用できない業務も整理。
業務自動化を「作る」段階は、ノーコードツール・RPA・AIエージェントのどれを選んでも、社内にエンジニアがいなくてもできます。フローの設定手順やマクロのコードも、ChatGPTやClaudeに聞けば社内で用意できる範囲です。ただし、「止まったときに直す」「システムの画面や帳票が変わったときに追従する」技術担当をどう確保するかを先に決めておかないと、最初に止まった時点で手作業に戻ることになります。確保の仕方は、社内で育てる(ツール費が年数万円〜+兼任者の人件費)、外注する(年75万〜410万円)、仕組みごと開発を頼んで保守の範囲を契約で決める(開発費+実費+保守)の3つです。
この記事は、社内に情報システムの担当者がいない、あるいは兼任1名しかいない会社の経営者・事業責任者・業務部門長に向けて、「作る」と「動かし続ける」を分けたうえで、必要な体制と費用を数字で整理します。
「社内にエンジニアがいない」会社で、自動化のどこに時間がかかっているか

出典: UiPath 公式サイト
「エンジニア不要かどうか」を調べている会社の多くは、そもそも社内にエンジニアがいません。それは珍しいことではなく、多数派です。
- 中小企業の経営者200名への調査では、社内にIT人材が「いない」企業が74%(Zenken調査、2024年9月)
- 年商5〜50億円の中堅・中小企業では、情報システム担当が「専任」の会社は28.7%から16.7%に減り、「兼任」が48.0%から61.1%に増加(ノークリサーチ「ひとり情シス」調査、2025年5月、800社)
- 中小企業がDXを進めるうえでの課題の1位は「ITに関わる人材が足りない」28.3%(中小機構「中小企業のDX推進に関する調査」、2025年12月、1,000社)
- デジタル化を推進しているのは「経営者(経営層)」が48.0%で最多。「推進する部署(人)はない」も約4割(2023年版 小規模企業白書)
つまり、自動化を推進するのは経営者本人か、本来業務を抱えた兼任者です。この状態で進めると、時間がかかる工程はほぼ決まっています。
自動化の6つの工程と「誰がやるか」
工程 | 何をするか | エンジニアなしでできるか | 時間・費用の目安 |
|---|---|---|---|
① 業務の棚卸し・手順の言語化 | どの業務を、どの順で、何を見て判断しているかを書き出す | 業務担当者にしかできない。エンジニアがいても代われない | 最も時間がかかる。ここが甘いと後工程が全部やり直しになる |
② ツール選定 | ノーコード/RPA/AIエージェントのどれにするか決める | できる。ただし「ベンダーや製品を選ぶ情報が足りない」と答えた企業は79.8%(中小機構「AI等の利活用に係る実態調査」2026年3月) | — |
③ 構築 | 作業の流れ(フロー・シナリオ)を作る | ノーコード・RPAならできる。入門研修は2日間、eラーニングなら4〜20時間で始められる | RPA構築を外注すると1本15万〜50万円 |
④ テスト・並行運用 | 人の作業と並走させ、結果を突き合わせる | できる(業務担当者の確認作業) | 1〜2ヶ月 |
⑤ 監視・復旧 | 止まったことに気づき、原因を調べ、直す | ここで技術担当が要る | 保守を外注すると月5万〜30万円 |
⑥ 変更への追従 | 画面・帳票・クラウドサービスの仕様変更、担当者交代に対応する | 同上。作った人が辞めると止まる | 修正を外注すると1回5万〜15万円 |
ベンダーが言う「エンジニア不要」は、①〜④の話です。⑤と⑥を誰が担うかは、ツールをいくら選び直しても解決しません。
これは調査でも裏づけられています。業務部門の社員が自分でツールを使って作る「市民開発」に取り組む企業への調査では、課題の1位が「牽引役を担う人材の不足」、2位が「IT専門部門と業務部門の役割分担・責任範囲・承認プロセスの不明確さ」でした(サイボウズ「アプリケーション開発に関する調査」、2025年10月、従業員100名以上の404社)。ツールの問題ではなく、体制の問題です。
自動化すると何がどう変わるか
体制を決めたうえで自動化すると、担当者の仕事は「作業する」から「確認して承認する」に変わります。月次レポートを例に、作業の流れを比べます。
Before(手作業)
- 販売管理システムと会計システムから、それぞれ先月分のデータを取り出す
- Excelに貼り付け、部門別・商品別に集計する
- 前月比・予算比を計算し、グラフを整える
- 数字が合わない箇所を探し、原因を調べて直す
- 報告書の体裁に整え、関係者にメールで送る
After(自動化後)
- 毎月1日の朝、AIが両システムからデータを取得し、集計・照合・レポート化まで済ませておく
- 担当者は、照合で差異が出た箇所の説明(あれば)を読んで判断する
- 「配信する」を承認すると、関係者に送られる
担当者がやることは2と3だけになります。
ここで見落とされがちなのが、Afterの手順1が止まったとき(システムのログイン画面が変わった、ダウンロードできる形式が変わった等)に、誰が直すのかです。ノーコードやRPAを自作した場合は、作った担当者か兼任の情シスが直します。開発会社に作ってもらった場合は、保守の取り決めに従って開発会社が直すか、手順書をもとに社内で直すかのどちらかです。この差が、次の試算で「兼任者の時間」と「月額費用」として金額に現れます。
削減時間の試算|月何時間 × 人件費でいくら戻るか
投資回収の計算は単純です。「削減できる月間時間 × 時給換算の人件費」から「月額費用」を引き、その額で初期費用を割ります。
回収月数 = 初期費用 ÷(削減時間 × 時給 − 月額費用)
以下は仮定に基づく試算です。実在の案件の数字ではなく、当社の価格でもありません。自社の数字に置き換えて計算してください。
- 人件費:時給3,000円換算(会社負担の社会保険料等を含めた目安)
- 初期費用:100万円(自動化の仕組みを開発会社に作ってもらう場合の開発費として仮置き。税別)
- 月額費用:3万円(クラウドや外部APIの利用料と、軽い保守を合わせた仮置き)と、10万円(監視や修正まで保守契約に含めた仮置き)の2通り
- 損益分岐:月額3万円 ÷ 3,000円 = 月10時間、月額10万円 ÷ 3,000円 = 月33.3時間。削減時間がこれを下回ると、初期費用は回収できない
例1:定型業務を3つ束ねて月45時間の場合
月次レポート作成 20時間 + 商談記録のCRM(顧客管理システム)への転記 15時間 + 商品マスタ更新 10時間 = 月45時間
項目 | 計算 | 月額3万円の場合 | 月額10万円の場合 |
|---|---|---|---|
削減額 | 45時間 × 3,000円 | 月13.5万円 | 月13.5万円 |
純削減(月額費用を引く) | 13.5万円 − 月額 | 月10.5万円 | 月3.5万円 |
初期100万円の回収期間 | 100万円 ÷ 純削減 | 約10ヶ月 | 約29ヶ月 |
保守を厚く契約すると、この規模では回収に2年半かかります。月45時間程度で、かつ判断ルールが単純なら、後述するノーコードツール(月数千円〜2万円程度)を自作したほうが安く済みます。
例2:例1に加えて、兼任者がすでに自作ツールの面倒を見ている場合
すでにノーコードやRPAを自作していて、兼任の担当者が「止まったときの復旧」「仕様変更への対応」に月8時間(目安は月5〜10時間)を使っているなら、外部に保守を任せることでその時間も削減側に加えられます。
項目 | 計算 | 月額3万円の場合 | 月額10万円の場合 |
|---|---|---|---|
削減時間 | 45時間 + 8時間 | 月53時間 | 月53時間 |
削減額 | 53時間 × 3,000円 | 月15.9万円 | 月15.9万円 |
純削減 | 15.9万円 − 月額 | 月12.9万円 | 月5.9万円 |
回収期間 | 100万円 ÷ 純削減 | 約8ヶ月 | 約17ヶ月 |
例3:複数部門の定型業務を束ねて月80時間の場合
項目 | 計算 | 月額3万円の場合 | 月額10万円の場合 |
|---|---|---|---|
削減額 | 80時間 × 3,000円 | 月24万円 | 月24万円 |
純削減 | 24万円 − 月額 | 月21万円 | 月14万円 |
回収期間 | 100万円 ÷ 純削減 | 約5ヶ月 | 約7ヶ月 |
開発費が300万円なら、回収月数はそれぞれ約3倍になります(例3の月額10万円なら約21ヶ月)。逆に言えば、社内の定型業務を洗い出しても月10時間に届かないなら、外部に仕組みを作ってもらう投資は回収できない、というのがこの試算の結論です。まず自社の業務で「月何時間か」を数えることが、どの方法を選ぶかより先です。
自動化できる業務・できない業務の境界線
エンジニアの有無にかかわらず、自動化に適用できる業務とできない業務ははっきり分かれます。適用できない業務にツールやAIを入れると、例外対応と承認待ちで結局人が張り付き、削減時間がゼロに近づきます。
適用できる | 適用できない |
|---|---|
毎日・毎週・毎月繰り返す | 毎回例外判断が発生する |
入力も出力もデジタルで完結する(システム・ファイル・メール) | 紙・対面・電話が前提 |
判断ルールを紙に書き切れる | 最終決裁をAIに委ねたい |
公開・送信・価格変更・削除などの重要操作を人が承認できる体制がある | 承認者を置けない、または置きたくない |
業務オーナー(手順を説明できる人)が社内にいる | 業務を知っている人が誰もおらず、棚卸しができない |
適用できる側の具体例は、EC商品カタログの更新、商談記録のCRM入力とフォローメール送信、月次集計とレポート配信、商品マスタ管理、複数システム間のデータ照合などです。
もう一つ正直に書いておくと、適用できる業務であっても、判断ルールが「AならB」で済む単純なものならノーコードで足ります。AIエージェントの出番は、複数のシステムをまたぎ、判断ルールが文章でしか書けない業務です。そこにノーコードで足りる業務を持ち込むのは費用の無駄です。どこまでの業務を任せられるかはAIエージェントに任せられる業務・任せられない業務の記事で詳しく整理しています。
エンジニアがいなくても回る体制の作り方|3つの役割と技術担当の確保3択

出典: kintone 公式サイト
「エンジニア不要か」という問いへの正確な答えは、次のとおりです。
業務オーナーと承認者は社内に必要。技術担当は社内に置かなくてよい。ただし空席にしてはいけない。
自動化に必要な3つの役割
役割 | 何をするか | 誰が担えるか |
|---|---|---|
業務オーナー | 手順の言語化、判断ルールの明文化、出来上がりの検収 | 業務部門の担当者。必ず社内。外注できない |
承認者 | 公開・外部送信・価格変更・削除など取り返しのつかない操作の承認、例外時の判断 | 部門長・経営者。必ず社内 |
技術担当 | 構築、監視、エラー復旧、仕様変更への追従、権限・セキュリティ管理 | 社内で育てる/外注する/サービスに含める の3択 |
上2つの役割は、エンジニアがいても代われません。業務を知っているのは業務部門であり、責任を負うのは経営者だからです。逆に技術担当は、社内にいなくても成立します。問題は「誰もやらない」状態を作らないことです。
AIを使えば社内でできること、会社に頼む部分
ChatGPT・Claude・Microsoft Copilot などの生成AIを使えば、社内にエンジニアがいなくても、次のことはかなりの部分まで自分たちで進められます。
- 業務の手順を話し言葉で説明し、手順書や判断ルールの下書きにまとめる
- Power Automate のフロー、Excelのマクロ、Googleスプレッドシートのスクリプトなどの設定手順やコードを書かせる
- 止まったときのエラーメッセージを貼り付けて、意味と直し方の候補を聞く
- 並行運用で結果を突き合わせるためのチェック表を作る
「作る」と「簡単な復旧」の壁は、数年前よりずっと低くなっています。それでも外部に頼んだほうがよいのは、AIに聞いても答えが出ない、その会社に固有の部分です。
社内でAIを使って進めやすいこと | 会社に頼んだほうがよいこと |
|---|---|
手順の言語化、設定手順やコードの下書き | 自社データの例外(表記ゆれ・欠損・締め後の修正)をどこまで自動で扱い、どこから人に回すかの設計 |
エラーの意味を調べる、1つの画面・1つのファイルで完結する作業の自動化 | 既存システムのAPI・CSV出力・権限を確かめ、どの方法でつなぐかを決めること。複数のシステムにまたがる認証情報の管理 |
チェック表の作成、結果の目視確認 | 正しく動いたと判断する基準(検収の条件)と、並行運用の設計 |
作った本人がいる間の修正 | 作った人がいなくなっても直せるように、ソースコード・手順書・台帳を残し、仕様変更のたびに誰が責任を持って直すかを契約で決めること |
AIが書いたフローでも、社内に中身を説明できる人がいなければ、⑥の「変更への追従」で同じように止まります。AIで作れるかどうかより、作ったものを誰が引き受けるかで判断してください。
技術担当の確保3択を比較する
確保の仕方 | 具体的には | 年間の費用感 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|---|
① 社内で育てる(市民開発) | Excelが得意な社員や兼任情シスが研修を受け、ノーコード・RPAを自作して面倒も見る | ツール費 年数万〜30万円+研修3万円〜+兼任者の保守時間(月5〜10時間=年18万〜36万円)。デスクトップRPAだと保守の人件費込みで年220万〜270万円規模になる例もある | 業務を知っている人が作るので手戻りが少ない。小さく始められる | 作った人が辞める・異動すると誰も直せない。兼任者の本来業務が圧迫される |
② 外注する(RPA開発代行・情シス代行) | 構築を開発会社に、監視・修正を保守契約や情シス代行に出す | 構築15万〜50万円/本(複雑なら300万円)+保守 月5万〜30万円(年60万〜360万円)+修正 都度5万〜15万円 | 社内の手を使わない。技術的な品質が安定する | 情シス代行の多くは自動化の構築・保守が範囲外。修正のたびに見積と費用が発生する |
③ 仕組みごと開発を頼む(受託開発+保守の取り決め) | 業務システムやSaaSをAPI・CSVでつなぎ、止まったら担当者に通知する仕組みを開発会社に作ってもらう。監視・修正を誰がやるかは保守契約で決める | 開発費(当社の公開価格は既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、税別)+クラウド等の実費+保守(契約先ごとに個別見積) | 画面操作に頼らずつなげる部分が多いほど、画面変更で止まりにくい。ソースコードと手順書を受け取れば、後から社内や別の会社に引き継げる | 初期費用が大きく、業務量が少ないと回収できない。保守の範囲を決めずに契約すると、②と同じく修正のたびに費用が出る |
(参考)社内SEを採用する | 専任の技術担当を雇う | 年収450.8万円(doda 社内SE平均)+会社負担分+採用費 | 全て社内で完結する | 情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.46倍(全職種1.11倍。厚生労働省「一般職業紹介状況」2026年5月分、同年6月発表)で採用が難しい。1名体制だと退職で振り出しに戻る |
どれが正解かは、業務量(月何時間か)と、兼任者にどれだけ時間があるかで決まります。①で始めて、面倒を見る時間が月10時間を超え始めたら②か③に移す、という順番も現実的です。①の隠れコストはRPA保守コストの記事、作った人が辞めたときに何が起きるかはPower Automateの属人化の記事で扱っています。なお、構築から監視・復旧までを月額でまとめて引き受ける運用型のAIエージェントサービスもあります。料金と、月額に何が含まれるか(人手の作業代行を含むか、修正の回数に上限があるか)は提供各社で違うので、契約前に確認してください。
実現する方法は3つある(手作業の効率化/ノーコード・RPA/AIエージェント)

出典: Zapier 公式サイト
技術担当の確保と対になるのが、何で作るかです。方法は大きく3つで、それぞれ「作る難しさ」と「動かし続ける難しさ」が違います。価格はすべて2026年9月時点の各社公式ページの表記です。
方法1:手作業の効率化(Excel関数・マクロ・Power Automate for desktop)
- 費用:0円。Power Automate for desktop はWindows 10/11で追加費用なしに使え、Windows 11には標準搭載
- できること:自分のPC上のExcel操作・ブラウザ操作の繰り返しを記録して再生する
- 技術担当:作った本人。本人がいる間は動くが、異動・退職で止まりやすい
- 適する業務:1人で完結し、PCを開いている間に動かせばよい作業
方法2:ノーコードツール・RPA
ノーコードツールは、プログラムを書かずに画面上の設定だけで「AをしたらBをする」という作業の流れを組み立てられるサービスです。RPAは、人がパソコンで行っているクリックや入力の操作を記録し、そのとおりに自動で再生するソフトを指します。どちらも「作る」段階では専門知識をほぼ必要としません。
ツール | 現行価格(公式表記) | 特徴 |
|---|---|---|
Zapier | Free $0(月100タスク・2ステップのみ)/Pro $19.99〜/月(年払い、月払いは$29.99〜)/Team $69〜/月(年払い)。USD建て | クラウドサービス同士をつなぐ。無料版は条件分岐・多段処理が不可 |
Power Automate(Microsoft) | Premium 2,248円/ユーザー/月(年払い)/Process 22,488円/ボット/月 | Microsoft 365と相性がよい。有人・無人のデスクトップ操作にも対応 |
kintone(サイボウズ) | ライト 1,000円/スタンダード 1,800円/ワイド 3,000円(各ユーザー/月、税抜)。最低10ユーザー、初期費用0円 | 業務アプリを自作する代表格。自動化は外部連携・プラグイン(スタンダード以上) |
Coopel(クラウドRPA=ブラウザ上で動かすRPA) | エントリー 12,800円/月(初期0円)/スタンダード 50,000円/月(初期100,000円)/アドバンスト 100,000円/月(初期200,000円)、税抜 | 画面操作で自動化の手順を作る。処理量超過は従量課金 |
UiPath | Automation Cloud ベーシック $25〜/月 | 世界シェア上位。無人ロボット2体まで含む |
WinActor(NTT-AT) | フル機能版 1,098,680円/PC/年、実行版 300,080円/PC/年(税込。正規販売代理店の公開価格、2025年1月以降) | 国産のデスクトップRPA(自分のPCにインストールして動かすRPA)。シナリオ作成・保守・研修の有償サポートあり |
- 技術担当:社内の兼任者、または外注
- 適する業務:判断ルールが「AならB」で書ける、決まった画面・決まった形式の繰り返し作業
- 注意:他のまとめ記事に載っている価格には古いものが混じっています(例:Coopelの「月額5,940円」は旧価格、UiPathの「Pro 約420ドル」は旧体系)。契約前に必ず公式ページで確認してください
ノーコードの限界がどこにあるかはZapierとMakeの限界の記事、RPAが止まる典型的な原因はRPAが動かない原因の記事にまとめています。
方法3:AIエージェント
AIエージェントは、文章で書いた業務ルールを読み取り、複数のシステムを自分で操作して仕事を終わらせるAIです。決まった手順をそのまま再生するRPAと違い、判断に幅がある作業を扱えます。
- 費用:月額型の運用込みサービスとして提供されるものと、開発会社に自社専用に作ってもらうものがあり、料金の決め方や月額に含まれる範囲は提供元・開発会社ごとに違う。自社専用に作る場合の当社の公開価格は、後述の「費用の目安」に載せています
- できること:複数のシステムを横断し、文章で書かれた判断ルールに沿って処理する。「差異があれば理由を添えて担当者に確認する」「重要な操作は承認を待つ」といった動きができる
- 技術担当:運用込みの契約なら提供側。自社専用に作った場合は、保守の取り決めによって開発会社か社内
- 適する業務:システムが3つ以上またがる、判断ルールに幅がある、月の作業時間が多い定型業務
ノーコードとAIエージェントのどちらを選ぶべきかは、ノーコードとAIエージェントの違いの記事で判断の手順を示しています。
費用の目安|方法別・体制別に年間いくらかかるか

出典: Coopel 公式サイト
方法と技術担当の確保方法を掛け合わせて、1年目にいくらかかるかを並べます。10名規模を想定し、税別または各社の公式表記に従います。
方法 | 初期費用 | 月額 | 技術担当は誰か | 1年目の総額の目安 |
|---|---|---|---|---|
手作業の効率化(Excel・マクロ・Power Automate for desktop) | 0円 | 0円 | 作った本人 | 0円+本人の作業時間 |
ノーコード自作(Zapier Pro/Power Automate Premium/kintone スタンダード) | 0円 | $19.99/2,248円/人/18,000円(10人) | 社内の兼任者 | 約2.7万〜27万円(人数による)+兼任者の保守時間 年18万〜36万円 |
クラウドRPA自作(Coopel エントリー〜スタンダード) | 0〜10万円 | 12,800〜50,000円 | 社内の兼任者 | 約15万〜70万円+兼任者の保守時間 |
デスクトップRPA(WinActor フル機能版) | — | 年1,098,680円(税込)≒月9.2万円 | 社内担当+有償サポート | 約110万円+サポート費+社内担当の時間 |
RPA構築を外注 | 1本15万〜50万円 | 保守 月5万〜30万円 | 外注先(修正は都度5万〜15万円) | 約75万〜410万円 |
情シス代行に運用を委託 | — | 月5万〜30万円(開発込みは20万〜50万円) | 代行会社(自動化の構築は範囲外が多い) | 約60万〜600万円 |
社内SEを採用 | 採用費 | — | 社内 | 年収450.8万円+会社負担分+採用費 |
業務に合わせた仕組みを開発(受託開発) | 開発費。当社の公開価格は既存システムの改修100万円〜/PoC 300万円〜/本開発は個別見積(税別) | クラウド・外部APIなどの実費+保守(契約で決める) | 開発会社(保守契約の範囲)。業務オーナーと承認者は社内 | 開発費+実費+保守。既存システムの改修で済めば100万円〜+実費+保守 |
3年で見ると差は縮まる
1年目だけ見ると仕組みごと開発を頼む形が高く見えますが、技術担当の費用を含めて3年で比べると差は縮まります。中間的な条件で仮置きした、仮定に基づく試算です。
確保の仕方 | 仮置きの条件 | 3年総額 |
|---|---|---|
① 社内で育てる(ノーコード) | ツール費 年10万円+研修3万円+兼任者の保守 月7.5時間(年27万円) | 約114万円+退職・異動で止まるリスク |
① 社内で育てる(デスクトップRPA) | ライセンス+保守の人件費で年220万〜270万円 | 約660万〜810万円 |
② 外注する | 構築30万円+保守 月10万円+修正 年2回×10万円 | 約450万円 |
③ 仕組みごと開発を頼む | 開発費100万円(仮定)+実費と保守 月3万〜10万円(仮定) | 約208万〜460万円(100万円+月3万〜10万円×36ヶ月) |
ノーコードを社内で育てる形が最も安いのは事実です。ただしそれは「兼任者が月7.5時間で収まり、辞めない」前提であり、月数十時間の業務量を1人の兼任者が支え続けられるかは別の話です。③の開発費は、既存のシステムに機能を足す改修で済むか、新しく仕組みを作るかで大きく変わります。
AIエージェント全般の費用相場や補助金の扱いはAIエージェント導入費用の記事で別途まとめています。
当社(AI革命)も、この③の開発を受託しています。公開している価格は、既存システムの改修が100万円〜、PoC(本番の前に小さく作って確かめる段階)が300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別。クラウド・外部API・ライセンスなどの実費は別)。300万円〜はPoCの開始価格で、本番で使う仕組みの完成までの費用ではありません。今使っている業務システムやSaaS(kintone・freee・HubSpot など)とは、公開されているAPI・Webhook・CSV・画面操作のどれでつなぐかを一緒に決めます。社内の誰かがAIで作った試作やマクロがあれば、残す部分と直す部分を分けて本番で使える形にすることもできます。保守の範囲(監視・修正を開発会社が持つか、手順書を受け取って社内で直すか)も、開発の前に決めておく項目です。
初回相談は無料・30分(オンライン)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。自動化したい業務、使っているシステムの名前、その業務に月何時間かかっているかが分かると話が早く進みます(パスワードなどの認証情報や実際の顧客データは送らないでください)。自社でAIを使って進める部分と任せる部分を一緒に切り分け、相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。
当社の受託開発で公開している事例と、技術担当がいない会社向けの構成例
「社内に技術担当がいない会社の業務自動化」そのものの事例として公開できるものは、現時点ではありません。近いものとして、当社が受託開発で公開している事例を2つ挙げます(顧客名は非公開)。
- 通信事業:数万件の請求情報を取り込み、集計し、確認する画面を作りました
- 薬局:複数店舗・数千人分の記録の管理に、権限の管理と、確認の工程を組み込みました
どちらも、データを扱う仕組みに、人が確認する工程を組み込んだものです。技術担当がいない会社の自動化でも、「人が確認する工程をどこに置くか」と「止まったときに誰が気づくか」が設計の中心になります。
以下は、技術担当がいない会社で月次の集計を自動化する場合の構成例です。説明用の架空の会社で、実在の案件ではありません。
課題
販売管理と会計の2つのシステムを使う従業員30名ほどの会社で、月末月初に両方からデータを取り出し、Excelで集計・照合して報告書を配信する作業が事務担当者1名に集中しているとします。社内に情報システムの担当者はおらず、経営者が兼任です。以前、社員がマクロで自動化しましたが、その社員の異動後にシステムの出力形式が変わり、誰も直せずに手作業へ戻りました。
作るもの
両システムのデータをAPIかCSVで取り込み、集計と照合を済ませて報告書の下書きを作る仕組みです。数字が合わない箇所は「どこが・どれだけ合わないか」を添えて事務担当者に回し、外部への配信は担当者が承認してから送ります。取り込みに失敗した日は、その時点で担当者と開発会社に通知が届くようにします。集計のルールは事務担当者が読める文書にし、ソースコード・手順書と一緒に会社に渡す形です。
何がどう変わるか
事務担当者の役割は「作業する」から「確認して承認する」に変わります。止まったことには通知で気づけ、出力形式の変更への対応は、保守の取り決めに従って開発会社が直すか、手順書をもとに社内で直します。社内で必要なのは、手順を説明できる業務オーナー(事務担当者)と、承認者(経営者)の2役です。一方で、集計ルールの追加や、システムを入れ替えたときの改修は引き続き必要になります。それを自社でやるか開発会社に頼むかは、作る前に決めておきます。
導入までの流れ

出典: AI革命 公式サイト
自分で作る場合(社内で育てる)
- 研修:Power Automate for desktop の入門研修は2日間、eラーニングなら4〜20時間
- 1本目を作る:1人で完結する小さな作業から
- 台帳を作る:何を自動化していて、誰が作り、止め方はどうするかを一覧にする。これがないと「誰も中身が分からないのに動いている」状態(いわゆる野良ロボット)になる
- 引き継ぎ書を残す:担当者が異動・退職しても直せるように
3と4を省くと、作った人の異動・退職やシステムの仕様変更をきっかけに止まり、誰も直せなくなります。ここが自作の実質的なコストです。
開発会社に仕組みごと頼む場合(受託開発の例)
段階 | 内容 | 社内でやること・費用 |
|---|---|---|
① 業務の棚卸し | 自動化したい業務を1〜3個挙げ、手順・使っているシステム・月何時間かを書き出す | 業務オーナー。AIに手順書の下書きをさせてもよい |
② 初回相談 | 何を解決したいか、自社でAIを使って進める部分と頼む部分の切り分け、依頼の形の候補(既存改修/PoC/本開発/調査のみ)を話す。相談後に相談メモをメールで受け取る | 無料・30分・オンライン |
③ 提案・見積 | 資料を受け取ったうえで、自動化する範囲・つなぐ方法(API・CSV・画面操作)・保守の分担を決め、範囲と金額を示す | 無料。判断ルールの確認、承認者を決める |
④ 開発・テスト | 仕組みを作り、例外の扱いと通知を組み込む | 有償(範囲と金額に合意してから)。システム接続の許可、結果の確認 |
⑤ 並行運用 | 人の作業と並走させて結果を突き合わせる | 業務オーナーが結果を確認 |
⑥ 本番稼働・引き渡し | ソースコード・手順書・台帳を受け取り、保守の取り決めどおりに運用する | 承認と例外時の判断 |
かかる期間は、業務の範囲と、既存システムに機能を足す改修で済むか新しく作るかで変わるので、③の段階で確認してください。②や③の段階で、ノーコードやSaaSの標準機能で足りると分かれば、そこで終わりにしてかまいません。
よくある質問
Q1. Excelやマクロが得意な社員がいれば、外部に頼まなくても十分ですか?
「作る」だけなら十分です。Power Automate for desktop はWindows 11に標準搭載で無償ですし、Excelが得意な人なら数日で最初の1本が動きます。ただし、その社員が「唯一直せる人」になった時点で、会社はその人の在籍に依存します。始める前に、①自動化しているものの一覧(台帳)、②止め方、③引き継ぎの方法、の3つを決めておけるなら、社内で育てる選択は有力です。決められないなら、最初から外部の保守を組み込んだほうが安全です。
Q2. 自動化を作った担当者が退職・異動したらどうなりますか?
多くの場合、誰も中身を直せない「ブラックボックス」が残ります。動いている間はよいのですが、システムの画面や帳票が変わった時点で止まり、手作業に戻るか、外注先に「解析からお願いします」と頼むことになります。対策は、作った時点で台帳と手順書を残すこと、あるいは監視と修正が契約に含まれた外部サービスを使うことです。契約前にベンダーへ「作った人がいなくなっても動き続けますか。その場合、誰が直しますか」と一言聞いてください。答えに詰まるなら、その体制では技術担当が空席です。
Q3. 情シス代行(ITアウトソーシング)に頼めば、自動化の面倒も見てくれますか?
契約内容によります。情シス代行の多くは、ヘルプデスク、PCやアカウントの管理、ネットワーク保守が中心で、自動化フローの構築や修正は範囲外か、別料金です。相場はヘルプデスク中心で月5万〜10万円、情シス業務一括で月10万〜30万円、開発・構築込みで月20万〜50万円です。契約前に「自動化フローの監視と修正が含まれるか」「修正は都度課金か」の2点を確認してください。
Q4. APIのない古いシステム(ほかのシステムとつなぐ窓口がないもの)でも自動化できますか?
管理画面の操作で対応できる場合があります。ただし、画面のレイアウト変更、画像認証(CAPTCHA)、多要素認証の影響を受けるため、事前に検証したうえで対応できる範囲を決めるのが通常です。当社でも検証後に対応範囲を提示する形を取っています。RPAも同じ制約を受けますが、画面が変わって止まったときに誰が直すかが違います。古いシステムほど「変更への追従」の頻度が問われるので、技術担当の確保方法とセットで考えてください。
Q5. セキュリティは誰が担保するのですか?社内に分かる人がいません。
社内に分かる人がいなくても、契約前に次の4点を提供側に文書で出してもらえば判断できます。①どのAIモデルを使い、データがどこに保存され、外部のどこに送られるかの一覧、②入力した内容がAIの学習に使われない構成か、③権限が必要最小限で、重要操作が承認制か、④実行履歴が残るか。この4点に明確に答えられない提供者は避けてください。開発会社に作ってもらう場合は、この4点を要件に書き、検収のときに実際に確かめる項目に入れてください。
Q6. 補助金は使えますか?
AIエージェントや自動化ツールの導入は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)などの対象になる可能性があります。ただし公募回ごとに締切と要件が変わり、採択から入金までにも期間があるため、この記事では扱いません。締切と入金までの流れはAIエージェント導入費用の記事で扱っています。
Q7. 将来、社内にエンジニアを採用したら、外部サービスから乗り換えられますか?
乗り換えられるかどうかは、「業務の手順と判断ルールが、自社の資産として文書で残っているか」で決まります。導入時に整理した手順書・判断ルール・実行履歴が社内に残る形かを、契約前に確認してください。開発会社に作ってもらう場合は、ソースコードの権利がどちらに帰属するか、引き渡される資料に何が含まれるかも契約書で確認します。一方で、情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.46倍(厚生労働省、2026年5月分)で、採用できたとしても1名では退職で振り出しに戻ります。採用を前提に体制を組むより、採用できたときに「業務オーナーと承認者を強くする」役割に振るほうが現実的です。
Q8. ChatGPTやClaudeに聞けば、エンジニアがいなくても自動化の仕組みを最後まで作れますか?
1つの画面や1つのファイルで完結する作業なら、作れることが多いです。フローの設定手順やマクロのコードはAIが書けますし、エラーの意味も教えてくれます。難しくなるのは、複数のシステムの権限や接続方法を確かめる部分、自社データの例外をどう扱うか決める部分、そして作ったものを誰が引き受けて直し続けるかです。まずAIで小さく作ってみて、社内で引き受けられない部分が見えた時点で、その部分だけ外部に頼む進め方もあります。AIで作った試作をそのまま本番で使ってよいかは、認証・データの権限・テスト・止まったときの戻し方を見て判断してください。
毎月くり返す定型業務があり、社内に技術担当を置けない会社へ
「作るのはAIやノーコードでできそうだが、止まったときに誰が直すのか分からない」という状態なら、自動化したい業務と「月何時間か」、使っているシステムの名前を持ってご相談ください。初回相談は無料・30分(オンライン)で、要件が決まっていなくても大丈夫です。自社でAIを使って進める部分と任せる部分を一緒に切り分け、相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。月10時間に届かない業務なら、ノーコードやSaaSの標準機能をおすすめすることもあります。
依頼範囲と費用の目安を30分で整理します
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AI革命
編集部
AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。
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