ビジネス活用2026年10月更新

AIを悪用したサイバー攻撃で情報漏えいが急増?2026年夏以降の国内事例・専門家の見解・企業が今すぐ取るべき対策

公開日: 2026/10/09
AIを悪用したサイバー攻撃で情報漏えいが急増?2026年夏以降の国内事例・専門家の見解・企業が今すぐ取るべき対策

この記事のポイント

2026年7月以降、国内企業のWebシステムやAPIを狙った不正アクセスで個人情報の漏えい公表が急増しています。マクニカ・JPCERT/CC・国家サイバー統括室の公表内容をもとに、主な国内事例、AI関与をめぐる専門家の見解、企業が今日から取るべき対策と漏えい時の報告義務を整理します。

2026年7月以降、国内企業のWebシステムやAPIへの不正アクセスで個人情報が漏えいしたという公表が相次いでいます。AIが悪用された可能性は複数の専門家が指摘していますが、2026年10月9日時点では、個別の事案で「AIが使われた」と公式に確認された例はありません。狙われているのは、APIや管理画面、パッチを当てていないソフトウェアといった基本的な穴です。

この記事でわかること

  • 2026年夏以降に何が起きているのか(件数の推移と主な国内事例)
  • 「AIが原因なのか」について、確認されている事実と専門家の見解の違い
  • JPCERT/CCや国家サイバー統括室が示した攻撃の手口と対策
  • 企業が今日・今週・今月にやるべきことの優先順位
  • 漏えいが判明したときの個人情報保護委員会への報告と本人通知

この記事の対象: 自社でWebサービス・会員サイト・アプリ・業務システムを運用している企業の情報システム担当者、セキュリティ担当者、経営層の方。個人として何をすればよいかも短くまとめています。

要点(2026年10月9日時点)

  1. マクニカの集計では、国内法人のWebシステム経由の個人情報漏えい事案は2026年が119件(10月6日時点)。うち約68%にあたる81件が7月以降の公表です。
  2. AIが攻撃に使われた可能性は専門家の多くが否定していません。ただし、AI利用を示す直接の痕跡は確認されておらず、公的機関も個別事案をAI攻撃とは認定していません。
  3. 原因が何であれ、狙われているのは基本的な不備です。直近1か月のアクセスログ点検、APIと管理機能の見直し、パッチ適用と多要素認証(MFA)から始めてください。

何が起きているのか:Webシステム経由の漏えい公表が7月以降に急増

破れた書類が赤い糸でつながり個人情報が流出する様子を表したイメージ

出典: マクニカ セキュリティ研究センター 公式

国内法人が運営するWebシステムから個人情報が盗まれる事案は、2026年に入って明らかに増えています。とくに7月以降の公表が急増し、9月下旬から10月にかけて大手企業の公表が続きました。

マクニカ セキュリティ研究センターは2026年10月7日、伊藤忠サイバー&インテリジェンス、セキュアスカイ・テクノロジーの情報提供を受けた分析を公開しました。公開情報だけを数えた件数は次のとおりです。

年

件数

補足

2024年

62件

—

2025年

84件

—

2026年(10月6日時点)

119件

うち81件(約68%)が7月以降の公表

この集計には、ホテル業界を狙ったフィッシング、リスト型攻撃、ランサムウェアなど、別系統とみられる事案は入っていません。同じ委託先で起きた複数の事案は1件として数えています。

被害を受けるシステムの種類も変わってきました。以前はECサイトが中心でしたが、会員向けサービス、業務用システム、顧客対応システムへと広がっています。漏えい以外にも、Webサイトの改ざんや不正利用が少なくとも25件確認されています。

海外でも同じ時期に似た事例が増えており、マクニカは13の国・地域で計99件(2026年7〜9月が中心)を確認しています。韓国が30件で最も多く、フランス11件、ポーランド8件と続きます。韓国では銀行がAIエージェントを悪用した攻撃を受けた疑いも報じられています(新韓銀行ハッキングにAIエージェント悪用の疑い)。

マクニカ、伊藤忠サイバー&インテリジェンス、セキュアスカイ・テクノロジーの専門家は、この状況を「これまでとは違う異常な事態が生じている」と表現しています(ITmedia AI+)。

数え方が違う統計もあります。東京商工リサーチによると、上場企業とその子会社で100万件以上の漏えいが起きた事故は10月5日時点で10件となり、2025年通年の6件をすでに上回りました(東京商工リサーチ)。報道で目にする「○千万件」「○億人」といった数字は、集計の範囲や定義がそれぞれ違うため、単純に比べられない点に注意してください。


国内の主な公表事例(2026年10月9日時点)

2026年9月以降、会員数の多いサービスで大規模な漏えいの公表が続いています。件数は各社の発表や報道に基づくもので、「最大」「可能性」を含みます。多くの事案は原因を調査中です。

公表日

組織(サービス)

件数

漏えいした(おそれのある)主な情報

公表された原因

9月11日

デジタル庁(GSS)

約24.6万件

公務員等の氏名・メールアドレス・電話番号(マイナンバー等は含まない)

VPN機器の脆弱性。保守運用担当者のアカウントで5月下旬から侵入

9月28日〜

タイムズモビリティ(タイムズカー)

約660万アカウント(うち本人確認書類の画像 約160万件)

運転免許証の画像など。退会者も含む

9月25日に不正アクセスを検知

10月5日

物語コーポレーション(焼肉きんぐアプリ)

1,078万8,963件

登録名・メールアドレス・電話番号(パスワードと決済情報は含まない)

10月2日に不正アクセスを確認、調査中

10月5〜6日

GMOリサーチ&AI(infoQ)

最大94万8,498件

氏名・住所・電話番号・メールアドレス・生年月日・暗号化パスワード・保有ポイントなど

使用しているソフトウェアの脆弱性の悪用

10月8日

ローソン(ローソンID)

215万5,345件ほか

氏名・メールアドレス・性別・電話番号・住所など

9月12〜17日の不正アクセス

10月8日

第一興商(ビッグエコーなど)

約872万件

氏名・生年月日・電話番号・メールアドレス

委託先の従業員PCのマルウェア感染

10月8日

ユーザベース(NewsPicks)

調査中

氏名・勤務先・メールアドレス・住所・電話番号・カードの有効期限と下3〜4桁

業務用の管理ツールへの不正アクセス

10月9日

アドベンチャー(skyticket)

最大約1,464万件ほか

氏名(パスポート表記)・生年月日・メールアドレス・電話番号・住所

業務管理システムの脆弱性、ログイン不要で表示されるページの機械的な閲覧など

10月9日

ブックオフグループHD

最大約643万件

氏名・住所・メールアドレス・電話番号・会員番号・パスワードのハッシュ値など

子会社の会員管理システムへの不正アクセス

実際の金銭被害が出た例もあります。GMOリサーチ&AIのinfoQでは、ポイントの不正交換が611件、計286万9,500円分発生し、同社が全額を補填すると発表しました(@IT)。タイムズカーでは免許証の画像が流出したことを受け、少なくとも14県で運転免許証の特例再交付が行われています。

ほかにも報道では、宿泊予約管理サービス、証券会社、保険グループ、食品メーカー、新聞社などの漏えいが伝えられています。状況は日々変わっているため、自社の取引先が含まれていないかは各社の公式発表で確認してください。


同じ「情報漏えい」でも経路は3種類ある

ニュースでは一括りにされがちですが、2026年秋の漏えい事案は経路で大きく3つに分かれます。経路によって対策も変わるので、まず区別しておきましょう。

経路

主な例

何が起きたか

主な対策

Webシステム・APIへの不正アクセス

多くの会員サービスの事案

公開されたWeb画面やAPI、管理機能の不備を突かれ、データベースから情報を抜き取られる

API認可・レート制限、管理機能の非公開化、パッチ適用、ログ監視

委託先の端末からのマルウェア感染

第一興商(委託先の従業員PC)

委託先の端末がマルウェアに感染し、そこから情報が漏えい

委託先の管理、提供データの最小化、委託終了後のデータ削除

ランサムウェア・クラウド基盤への攻撃

IDCフロンティア(IDCFクラウド)※報道ベース

基盤側が攻撃を受け、利用する多数の企業・自治体のサービスが止まる

バックアップの保護、事業継続計画(BCP)、基盤事業者との連絡体制

マクニカの集計やJPCERT/CCの注意喚起が主に扱っているのは、1つ目のWebシステム・API型です。「AIが使われているのでは」と言われているのも主にこのタイプです。


本当にAIが使われたのか:確認されている事実と推測を分ける

2026年10月9日時点で、国内の個別事案にAIが使われたと公式に確認した被害組織や公的機関はありません。一方で、攻撃の速さや規模からAIの関与を疑う専門家の分析は複数出ています。

確度

内容

出典

確認済みの事実

7月以降、Webシステム経由の漏えい公表が急増している

マクニカ

確認済みの事実

7月以降の81事案のうち、80.2%(65件)は公表された情報だけでは原因を分類できない

マクニカ

確認済みの事実

AIを使ったゼロデイ脆弱性(未修正の脆弱性)の悪用は確認されていない

マクニカ

確認済みの事実

JPCERT/CCの注意喚起にはAIへの言及がない。手口は「すべての事案で同じとは限らない」とされている

JPCERT/CC

専門家の推測

サイトごとの機能や不備を繰り返し調べる作業は人手では現実的でなく、AIの活用を否定するのは難しい

マクニカほか3社の合同見解

専門家の推測

応答に合わせて戦術を変える一方、機械的なツールのパターンが見られず、AIエージェント等の可能性がある

サイバーセキュリティクラウド

公的機関の一般論

「AIの悪用を含むサイバー攻撃の手法が高度化・巧妙化する中」として、経営層に対策強化を要請

国家サイバー統括室

とくに重要なのが「原因の80%が分類できない」という点です。被害企業の多くが侵入経路の詳細を公表していないため、外部からはAIの関与を確かめようがありません。

サイバーセキュリティクラウドは、同じ攻撃者とみられる相手が約40分間に326のIPアドレスを使い分け、1,200件を超えるリクエストを送っていたと分析しています。SQLインジェクションでログインの回避を試し、失敗すると事前に作ったアカウントでログインして探索を続け、ポイント機能のあるサイトでは他人のポイントを盗もうとした後、同じサイトには戻らなかったといいます。同社も、これは観測された動きからの推測で、AIを使った直接の痕跡は確認していないと明記しています。

海外ではAIが攻撃に使われた例が報告されている

国内事案との関係は確認されていませんが、海外ではAIが攻撃に使われた事例がAI開発企業自身から報告されています。Anthropicは2026年9月の脅威レポートで、金銭目的の攻撃グループが同社のAIを使い、大量のAndroidアプリから秘密情報をスキャンしていた事例などを公表しました。レポートでは、使われた手法の多くは既知のもので、AIによって変わったのは作業の手間とコストだと指摘しています。

AIエージェントが関わった攻撃は、PaperCutへのAIエージェント攻撃(48カ国395組織)や、Claudeが実在企業3社に不正アクセスしたAnthropicのサイバー評価事故でも報じられています。業界としての危機感は、AIサイバー攻撃をめぐる100社超の共同声明にも表れています。


専門家の見解:AI関与の評価は分かれるが「対策が先」では一致

AIがどれだけ関与しているかについて、専門家の見方は「使われていない方が不自然」から「大きな役割は果たしていない」まで分かれています。ただし、どの専門家も基本的な対策の遅れを問題にしている点は共通しています。

専門家(所属)

AI関与の見方

主な指摘

出典

瀬治山豊氏(マクニカ)、佐藤元彦氏(伊藤忠サイバー&インテリジェンス)、長谷川陽介氏(セキュアスカイ・テクノロジー)

否定する方が難しい

断定できる痕跡はないが、サイトごとに不備を繰り返し探す作業は人手では非現実的。基礎的な不備が高速・広範囲に探されている

ITmedia AI+、マクニカ

中西一博氏(アカマイ・テクノロジーズ)

使われていない方が不自然

単体では軽微な弱点をつないで侵入経路を組み立てている。WAFで守られたサイトは避け、守りの薄い対象を選んでいる可能性。狙われやすいのはAPIとCMS

ITmedia NEWS

高倉弘喜氏(国立情報学研究所)

自動化に使われたが大きな役割ではない

「対策が不十分だった」と見ている。AIで脆弱性の公開件数は増えたが、すべてが重大なわけではない

ASCII

上野宣氏(トライコーダ)

AIを使った動きに見える

攻撃手法が劇的に変わったわけではない。修正プログラムの適用など基本対策を急ぐべき

産経新聞

三上洋氏(ITジャーナリスト)

—

シルバーウィーク以降「前代未聞のペース」。子会社や委託先など、サプライチェーンの小規模企業が弱点

FNN

中西氏は「AIが関与しているかを議論しても意味は薄い」とも述べています。AIが使われていてもいなくても、攻撃者が見つけているのは企業側に以前からある穴なので、対処しなければ被害は止まりません。

AIで変わったと考えられているのは、手口の中身ではなく、穴を探す速さと範囲です。人手では数日〜数週間かかっていた調査が短時間で済むなら、これまで「小さな会社だから狙われない」「この程度の不備なら見つからない」と考えていた前提が成り立たなくなります。


攻撃者が狙っている穴:JPCERT/CCが示した4つのケース

JPCERT/CCのロゴと夜の都市の風景

出典: JPCERT/CC 公式

JPCERT/CCは2026年10月8日、国内組織への不正アクセスが相次いでいるとして注意喚起(JPCERT-AT-2026-0030)を公開し、10月9日に更新しました。把握できている情報は「限定的で断片的」としたうえで、次の4つのケースを示しています。

ケース

手口

狙われる場所

A

標的ごとにさまざまなソフトウェアの既知の脆弱性を探し、攻撃を試す。設定ファイルやバックアップファイルの窃取など管理の不備も突く

公開Webサーバー、CMS、ミドルウェア

B

公開されているスマホアプリを解析してAPIの接続先やキーを特定する。画面からは使えない内部APIで権限変更や不正なアカウント作成を試す。他のシステムから盗んだAPIキーを使う

API、スマホアプリ

C

BIツール「Metabase」のSQLインジェクションの脆弱性を悪用する。認証なしで管理者権限を取り、接続先データベースの情報を抜き取るおそれがある

BIツール

D

公開Webサーバーから到達できるアプリケーションサーバーにファイルを設置し、外部から操作できる仕組み(Webシェル)として動かす

アプリケーションサーバー

注目したいのは、一般向けのアプリだけでなく、BIツールや従業員向けの管理システムも被害を受けている点です。社内向けだから外からは見えないと思っていたシステムが、実際には外部からアクセスできる状態になっていたケースが疑われます。

マクニカも侵入の入口を3つに分けています。

  1. 共通ソフトウェアの脆弱性(フレームワーク、CMS、ミドルウェアなど)
  2. アカウント・認証の不備(弱いパスワード、フィッシング、情報窃取型マルウェアで盗まれた認証情報)
  3. 個別のサイトの作りの欠陥(API、アクセス権、設定、秘密情報の扱い)

マクニカが対応した事案では、攻撃者がサイト全体を広く調べ、通常の画面やAPIを操作しながら情報を取り出せる不備を探していました。必要以上の情報を返すAPI、過剰な権限、ログインしなくても使える会員機能、セッション管理の不具合などが狙われています。


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企業が今すぐ取るべき対策:今日・今週・今月の優先順位

国家サイバー統括室のロゴ

出典: 国家サイバー統括室 公式

企業がまずやるべきことは、「すでに侵入されていないか」の確認と、狙われやすい穴をふさぐことです。国家サイバー統括室の事業者向け文書、JPCERT/CCの注意喚起、マクニカの推奨事項を、取り組む順番に並べ直しました。

今日:直近1か月のアクセスログを点検する

マクニカは、直近1か月を目安にアクセスログを見直すよう勧めています。次のような動きがあれば、ログを保全したうえで、さらにさかのぼって調べてください。

  • 同じIPアドレスからの大量のAPIアクセス
  • 403・404・503など、エラー応答の急な増加
  • 存在しないファイルやAPIを探るようなアクセス
  • 正常に応答していても、件数が極端に多いアクセス
  • 一般の利用者に許していない管理機能の利用
  • 普段と違うIPアドレスからの管理機能へのアクセス
  • データベースの負荷やエラー、セッション数の急な増加
  • パスワード認証へのログイン試行の増加

JPCERT/CCは不審な送信元IPアドレスも公開しています。ただし、該当するIPがログになくても安全とは限らず、あったからといって被害が確定するわけでもありません。最新の一覧は注意喚起のページで確認してください。

今週:API・管理機能・認証の穴をふさぐ

ログ点検と並行して、狙われやすい場所を見直しましょう。

確認すること

具体的な中身

パッチ適用

OS、ミドルウェア、CMS、BIツールの修正を適用する。サポートが終わった製品は使わない

管理機能の公開範囲

管理画面やBIツールが外部から見えていないか確認し、IPアドレスなどで接続元を絞る

APIのアクセス制御

非公開のAPIも含め、すべての接続先でサーバー側の認可を確認する。必要以上のデータを返していないか見る

レート制限

単位時間あたりのリクエスト数を制限する。ログイン、パスワードリセット、SMS送信、検索には個別の制限をかける

APIキー・トークン

スマホアプリやブラウザ側のコードに認証情報を埋め込んでいないか確認する(難読化しても解析される)。有効期限を設け、不要なものは無効化する

認証

管理者アカウントの弱いパスワードをなくし、多要素認証を導入する。退職者や使っていないアカウントは止める

ポイントなど価値のある機能

他人のポイントを使えないよう、サーバー側で認可とレート制限を確認する

脆弱性診断の範囲

診断の対象に管理機能や隠れた管理画面が含まれているか確認する

今月:持っているデータを減らし、委託先を見直す

盗まれるデータそのものを減らすことも有効な対策です。国家サイバー統括室の文書は、保有する情報を最小限にし、利用目的を終えた情報は速やかに削除するよう求めています。

  • 情報資産の所在と管理者を洗い出し、保存期間を決めて定期的に棚卸しする
  • 退会者のデータや、不要な備考欄の記録など、残しておく理由のない個人情報を削除する
  • パスワードや認証情報を平文で保存しない。保存データと通信を暗号化する
  • クラウドの保存領域やデータベースの公開設定、アクセス権限を確認する
  • 使っていないシステムや機能、サービス終了後のAPIキーを停止・破棄する

委託先の管理についても、国家サイバー統括室は「委託先企業と共に管理する」ことを求めています。契約時だけでなく継続的に体制を確認すること、契約に漏えい時の報告義務を入れること、委託が終わったら委託先のデータを削除させることが挙げられています。第一興商の事案のように、委託先の端末が入口になる場合もあります。

対策の全体像

時期

やること

主な担当

今日

直近1か月のアクセスログ点検、不審な兆候があればログ保全

情報システム部門・運用委託先

今週

パッチ適用、管理機能の非公開化、API認可とレート制限、APIキーの棚卸し、MFA

開発・運用チーム

今月

不要データの削除、暗号化と公開設定の確認、委託先の確認と契約見直し

情報システム部門・法務・購買

平時から

漏えい時の顧客向け案内(MFAの利用呼びかけなど)と報告手順を準備、監視で兆候を拾えるか確認

経営層・広報・法務

防御側でAIを使い、攻撃者より先に穴を見つける動きも出ています。防御用途のAIについてはサイバーセキュリティ業界のAI活用事例や、脆弱性を探すAIツールのClaude Security、Codex Securityの解説記事も参考になります。


漏えいが判明したときの初動と法的義務

キーボードの上に置かれた南京錠

不正アクセスによる個人情報の漏えいは、件数にかかわらず個人情報保護委員会への報告対象です。漏えいの「おそれ」の段階でも対象になるため、調査が終わるのを待たずに動く必要があります。

個人情報保護委員会が示している報告の対象と期限は次のとおりです。

項目

内容

報告の対象

①要配慮個人情報 ②財産的被害のおそれがあるもの ③不正アクセスなど故意によるもの ④1,000人を超えるもの(いずれも「おそれ」を含む)

速報

事態を知ってから速やかに(概ね3〜5日以内)。その時点で分かっている範囲でよい

確報

30日以内。不正アクセスなど不正の目的によるおそれがある場合は60日以内

本人への通知

速やかに行う。難しい場合はホームページでの公表や問い合わせ窓口の設置などで代える

初動の流れは、おおむね次の順番です。

  1. ログと対象システムを保全する(再起動や削除で証拠を消さない)
  2. 被害の範囲を確認し、侵入経路をふさぐ
  3. 個人情報保護委員会へ速報する
  4. 本人への通知・公表を行い、フィッシングや不正利用への注意を呼びかける
  5. 調査結果をもとに確報を出し、再発防止策を決める

JPCERT/CCは、被害組織に技術情報の共有を求めており、インシデント対応の依頼窓口も設けています。国家サイバー統括室も同様に、技術情報の速やかな共有を要請しています。今回の事案では原因の公表が少ないことが他社の対策を遅らせているため、可能な範囲での情報共有が業界全体の防御につながります。


とくに急いで点検すべき企業・優先度を見極めてよい企業

今回の攻撃は大企業だけを狙ったものではありません。自社の状況に当てはめて、急ぐべきかどうかを判断してください。

とくに急いで点検すべき企業

  • 会員サイト、ECサイト、ポイント制度、予約サービスなど、大量の個人情報を持つWebサービスを運用している
  • スマホアプリからAPIを呼び出す仕組みを持っている
  • 管理画面やBIツール、業務管理システムがインターネットから到達できる
  • CMSを非IT部門やマーケティング部門が運用しており、パッチ適用の担当がはっきりしない
  • Webサイトやアプリの開発・運用を外部に委託しているが、委託先のセキュリティ体制を確認していない
  • 退会者や過去の顧客データを、期限を決めずに保存している
  • 本人確認書類の画像など、機微な情報を保存している

優先度を見極めてよい企業

  • 外部に公開しているのが会社案内などの静的なWebサイトだけで、個人情報を扱う機能がない
  • 顧客データを扱う仕組みをすべて信頼できるSaaSに任せ、自社でAPIやサーバーを運用していない

ただし後者でも、取引先やSaaS事業者から漏えいの連絡を受ける可能性はあります。アカマイの中西氏は、国産SaaSなら安全とは言い切れないとも述べています。利用中のサービスの公表内容は確認しておきましょう。


個人ができる対策

個人の側でできることは多くありませんが、漏えいした情報を使った二次被害は防げます。デジタル大臣は2026年10月6日の会見で、次の3点を呼びかけました(ITmedia NEWS)。

  1. パスワードの使い回しをやめる
  2. 多要素認証を設定する
  3. 不審なメールやSNSのリンクを開かず、公式サイトやアプリから直接アクセスする

漏えいした氏名・電話番号・メールアドレスは、フィッシングメールや特殊詐欺に使われるおそれがあります。漏えいを知らせるメールを装った詐欺もあるため、企業からの案内は公式サイトでも確認してください。運転免許証の画像が流出した場合は、なりすましでの契約などに注意し、都道府県の案内に従って再交付も検討しましょう。


自社でAIを使う・作る側として押さえておきたいこと

攻撃にAIが使われる可能性があるからといって、自社の業務でAIを使うのを止める必要はありません。ただし、AIを社内システムや顧客向けサービスに組み込むときは、今回狙われたAPIやアクセス権、認証情報の扱いがそのまま弱点になり得ます。

会社で生成AIを使う場合は、どのデータをAIに渡すか、ログをどこに残すか、APIキーをどう管理するかを最初に決めておく必要があります。セキュリティ要件を満たす構成の選び方は、生成AIのセキュリティ要件を満たす社内導入の構成で詳しく整理しています。

社員が個人の判断で外部の生成AIに顧客情報を入力してしまうリスクは、外部からの攻撃とは別の問題です。こちらはシャドーAIとは(情報漏洩リスクと対策)を、生成AI全般のリスクは生成AIのセキュリティリスク、AIエージェントを動かす場合はAIエージェントのセキュリティ対策をご覧ください。


よくある質問

Q. 今回の漏えいはAIによる攻撃だと確定しているのですか?

確定していません。2026年10月9日時点で、個別の事案にAIが使われたと公式に認めた被害組織や公的機関は確認できません。専門家の多くはAIの関与を否定しにくいとしていますが、根拠は攻撃の速さや規模といった状況証拠です。JPCERT/CCの注意喚起にもAIへの言及はありません。

Q. 狙われたのは大企業ばかりですか?

公表されて話題になっているのは会員数の多い大手サービスですが、マクニカの集計には規模を問わない多数の事案が含まれています。専門家は、子会社や委託先など、サプライチェーンの中の小規模な企業が弱点になっていると指摘しています。

Q. WAFを入れていれば安全ですか?

WAFだけでは十分とはいえません。中西氏は、WAFで守られたサイトは避けられ、守りの薄い対象が選ばれている可能性を指摘しています。また、APIの認可の不備やアプリに埋め込まれたAPIキーの悪用は、正規の通信に見えるためWAFでは止めにくい攻撃です。サーバー側の認可やレート制限と組み合わせてください。

Q. 社内向けの管理システムやBIツールも対象ですか?

対象です。JPCERT/CCは、BIツールや従業員向けの管理システムも被害を受けていると明記し、BIツール「Metabase」の脆弱性の悪用をケースの1つに挙げています。社内向けのシステムが外部から到達できる状態になっていないか確認してください。

Q. 自社のサービスから漏えいしたか分からない場合、報告は必要ですか?

不正アクセスによる漏えいの「おそれ」がある段階で、個人情報保護委員会への報告対象になります。まず速報を出し、調査結果は確報で報告する流れです。判断に迷う場合は、個人情報保護委員会の案内を確認したうえで、弁護士などの専門家に相談してください。

Q. 状況の最新情報はどこで確認できますか?

JPCERT/CCの注意喚起は随時更新されており、2026年10月9日にも追記がありました。手口と不審なIPアドレスはJPCERT/CC、全体の傾向はマクニカのブログ、事業者向けの対策は国家サイバー統括室の文書で確認できます。各社の被害状況は、それぞれの公式発表を見るのが確実です。


まとめ

2026年7月以降、国内企業のWebシステムやAPIを狙った不正アクセスで、個人情報の漏えい公表が急増しています。AIが悪用された可能性は専門家が指摘していますが、2026年10月9日時点で個別事案のAI利用は確認されておらず、公表された情報の8割は原因すら分類できない状態です。

確実に言えるのは、攻撃者が見つけている穴が、未適用のパッチ、外部から見える管理機能、認可の甘いAPI、アプリに埋め込まれたキーといった、以前からある基本的なものだということです。AIの関与がどうであれ、穴を探す速さは上がっていると考えて対策を急ぐ必要があります。

  • 今日: 直近1か月のアクセスログを点検し、不審な兆候があれば保全する
  • 今週: パッチ適用、管理機能の非公開化、APIの認可・レート制限、APIキーの棚卸し、MFAを進める
  • 今月: 不要な個人情報を削除し、委託先の体制と契約を見直す
  • 平時から: 漏えい時の報告・本人通知・顧客への注意喚起の手順を準備する

状況は日々更新されています。JPCERT/CCの注意喚起と国家サイバー統括室の発表を定期的に確認してください。

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この記事の著者

AI革命

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編集部

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