AIツール2026年10月更新

Noetra(ノエトラ)とは?国産フィジカルAI基盤モデルの全貌・44社連合・経産省3873億円支援をわかりやすく解説

公開日: 2026/07/07
更新日: 2026/10/11
Noetra(ノエトラ)とは?国産フィジカルAI基盤モデルの全貌・44社連合・経産省3873億円支援をわかりやすく解説

この記事のポイント

Noetra(ノエトラ)は、ソフトバンク・ソニー・NEC・ホンダら44社が出資し、経産省・NEDOの支援で国産フィジカルAI基盤モデルを開発する会社です。2026年10月時点の提供状況、3873億円と1兆円の正確な意味、出資企業一覧、NVIDIA Rubin 2万7500基の計算基盤、ロードマップを公式情報で整理します。

Noetra(ノエトラ)とは、ソフトバンク・ソニーグループ・NEC・ホンダを中核に44社が出資し、経済産業省・NEDOの支援を受けて「国産のフィジカルAI基盤モデル」を開発する会社です。 2026年10月時点ではまだ研究開発の段階で、一般ユーザーや企業が使えるモデル・API・アプリは公開されていません。

ロボットや機械の「頭脳」となる実世界向けAIを日本でつくる国家プロジェクト(プロジェクト名「FRONTia」)の中核企業と理解するのが正確です。

この記事でわかることは次のとおりです。

  • Noetraが何をする会社で、誰が経営しているのか
  • 「フィジカルAI」とは何か、生成AIと何が違うのか
  • 経産省の「3873億円」「1兆円」の正確な意味(NEDOの契約条件まで)
  • 公式に名前が出ている出資企業42社の顔ぶれと、産総研との役割分担
  • NVIDIA Rubin GPU 約2万7500基の計算基盤と、2030年度までのロードマップ
  • 海外のフィジカルAI勢や国産LLMとの違い
  • 一般の人・企業にとって「いつ・誰が使えるのか」

想定読者は、ニュースで「Noetra」「フィジカルAI」「1兆円」を見て概要を正確に押さえたい方、製造業・ロボティクス・国内AI開発の関係者、投資や取引の観点で背景を知りたい方です。報道ベースの数字が多く出回っているため、この記事では「公式で確定していること」と「報道・見通しにすぎないこと」を分けて書いています。

実世界で動くフィジカルAIのイメージ。ヒューマノイド型ロボット

Noetra(ノエトラ)とは何か:国産フィジカルAIの開発会社

Noetra株式会社は、テキストだけでなく画像・動画・音声・物理特性までを統合して扱う「マルチモーダル基盤モデル」を国産で開発するための会社です。 開発したモデルの学習済みの重みを国内のモデル開発者や事業者に提供し、日本の生成AIと産業の競争力を高めることを目的にしています。

公式サイトと公式プレスリリース(2026年6月30日・7月16日)で確認できる会社概要は次のとおりです。

項目

内容

正式社名

Noetra株式会社(英文: Noetra Corp.)

旧社名

株式会社日本AI基盤モデル開発(2026年6月1日に現社名へ変更)

設立

2026年1月7日

事業開始

2026年7月1日

所在地

東京都渋谷区渋谷2-24-12

代表取締役社長 兼 CEO

丹波 廣寅氏(ソフトバンク常務執行役員を兼務)

取締役・監査役

取締役に福岡俊一氏(NEC)、小川厚氏(本田技研工業)。監査役に小坂洋文氏(ホンダ)

事業内容

国産マルチモーダル基盤モデルの研究開発/モデル開発に用いるインフラの検討

中核出資企業

ソニーグループ、ソフトバンク、NEC、本田技研工業の4社

出資企業数

合計44社(2026年7月16日時点)

社名は、古代ギリシャ語で知性・思考を意味する「Noesis」と、サンスクリット語で「器」を表す「-tra」を組み合わせたもので、公式は「知そのものを扱う器」と説明しています。

役員の顔ぶれを見ると、ソフトバンク・NEC・ホンダの出身者が経営の中心にいます。CEOの丹波氏はソフトバンクの常務執行役員で、同社のLLM「Sarashina」を開発するSB Intuitionsの顧問も務めています。単独のスタートアップというより、大手企業と国が共同でつくった基盤モデル開発の受け皿と見るほうが実態に近いでしょう。

なお、旧社名「日本AI基盤モデル開発」の時代に報じられた内容は日本AI基盤モデル開発とは?の解説記事にまとめています。現在は同じ会社がNoetraとして事業を進めています。

設立から本格始動までの時系列

日付

出来事

2025年12月

政府が国産AI基盤モデルに5年間で約1兆円規模を支援する方針と報じられる

2026年1月7日

株式会社日本AI基盤モデル開発として設立

2026年3〜4月

NEDOが開発事業を公募(応募は15件)

2026年6月1日

Noetra株式会社に社名変更

2026年6月30日

NEDO事業にNoetraと産総研の共同提案が採択。2026年度の委託費は約3873億円と報道

2026年7月1日

研究開発事業を開始

2026年7月16日

本格始動を発表。44社の出資、ロードマップ、NVIDIA Rubin GPU約2万7500基の計算基盤、プロジェクト名「FRONTia」を公表

2026年7月17日

シャープが出資を発表

2026年9〜10月

日経クロステック、ITmediaなどが開発構想や国産AIの位置づけを報道

2026年10月11日時点で、Noetra公式サイトのニュース欄の最新は7月16日の発表です。8月以降に公式からモデル公開や新しい発表は確認できていません。

生成AIそのものの基礎は生成AIとは何かを解説した記事、自律的に動くAIの考え方はAIエージェントとは何かの解説で押さえられます。

フィジカルAIとは何か:生成AIとの違い

フィジカルAIとは、現実の物理空間でロボットや機械が状況を認識し、自律的に判断・行動するためのAIです。 ChatGPTのような対話型の生成AIが画面の中で文章や画像を生み出すのに対し、フィジカルAIは「実世界で体を動かす」ことを前提にしています。Noetraが目指すのは、この身体を持つAIのもとになる基盤モデルです。

比較ポイント

生成AI(対話型)

フィジカルAI

活動する場所

デジタル空間(画面の中)

現実の物理空間(工場・倉庫・建設現場・家庭)

主な入力

テキスト中心(一部画像・音声)

画像・動画・音声・センサー値・物理特性など

主な出力

文章・画像・コード

機械やロボットの動作・制御

求められる能力

言語の理解と生成

空間認識・物理法則の理解・リアルタイムの判断

代表例

ChatGPT、Gemini、Claude

ロボットアーム、自律移動ロボット、ヒューマノイド

フィジカルAIには、物の位置・重さ・動き・摩擦を理解し、次に何が起きるかを予測する能力が求められます。「コップを傾けると水がこぼれる」「箱を押すと滑る」といった常識を、テキストではなく実世界のデータから学ぶ必要があります。

Noetraの計画では、まず日本語の理解や推論に強いモデルをつくり、そこに画像・動画・音声を統合し、最終的に物理特性まで理解するAIへ段階的に広げていきます。いきなりロボットを動かすモデルを出すのではなく、言語→マルチモーダル→実世界という順番で積み上げる設計です。

Noetraの事業内容:何をしようとしているのか

Noetraの事業は、経産省・NEDOの「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」の中核として、国産の基盤モデルを開発し、国内に提供することです。 2026年6月30日、Noetraと産業技術総合研究所(産総研)の共同提案「実世界ネイティブに資するフィジカルAI基盤技術の研究開発」が採択されました。実施期間は2026年6月〜2031年3月です。

公式に示されている研究開発の柱は次の3つです。

  1. 基礎能力の高いAI基盤モデル … 高度な日本語理解・論理推論・指示に従う能力
  2. マルチモーダル技術 … 画像・動画・音声・物理特性を統合して扱う
  3. 実世界ネイティブなフィジカルAIに向けた拡張性と評価手法 … モデルを大きくしたときの伸び方や、実世界での性能の測り方

2026年7月16日には、経産省・NEDOがこのプロジェクトを「FRONTia(フロンティア)」と名付けました。ソフトバンクニュースによると、正式名称は「Foundation for Real-world Omni-Native Trustworthy Intelligence & Alignment」です。

公式ロードマップ

時期

目標

中身

2026年度から順次

推論基盤モデル

高度な日本語理解・論理推論・指示遂行。AIエージェントや言語処理の中核

2028年度

オムニモーダル基盤モデル

言語・画像・動画・音声を統合して扱う

2030年度

実世界ネイティブAI

空間認識など物理特性を理解し、実世界での利用を前提にしたAI

丹波CEOは、各年度に安全に使えるモデルを公開することを目指すと述べています(ソフトバンクニュース 2026年7月21日)。また、Noetraのモデルを他のAIをつくるための中核となる「教師」モデルと位置づけ、現場の知見がAIに戻り、AIが現場に戻る循環をつくりたいとしています。

モデルの規模について、日経クロステック(2026年9月18日)などは「1兆パラメータ級」と報じています。ただしNoetraの公式リリースにパラメータ数の記載はありません。同記事は、言語・画像・音声・動画・触覚といった現場データで「実世界モデル」をつくり、それを蒸留してロボット向けの基盤モデルにする構想も伝えています。

製造現場で稼働する産業用ロボットアーム。フィジカルAIの主戦場となる工場

計算基盤:NVIDIA Rubin GPU 約2万7500基

Noetraは、NVIDIAの協力でNVIDIA Rubin GPU約2万7500基を使うAI計算基盤を構築します。公式発表では、構築開始は2027年4月、稼働は2028年6月の予定です。それまでは国内の事業者が持つ計算基盤を借りて開発を進めます。

海外メディア(Tom's Hardware、The Next Webなど)の報道では、NVIDIAはこの基盤を電力140MW規模の「AIファクトリー」と説明し、Vera Rubin NVL72のラック構成、Vera CPU 1万3750基、Spectrum-Xのネットワークを使うとしています。これらの数字はNVIDIA発表を伝えた報道ベースで、費用は公表されていません。

旧社名の時代には、ソフトバンクの堺のデータセンターを学習に使うとの報道もありましたが、7月16日の公式発表で示されたのはRubin GPU約2万7500基による新しい計算基盤です。

開発体制

公式発表では、産総研やPreferred Networks(PFN)などから参画する技術者を中心に研究開発体制をつくるとしています。ソフトバンクニュースによると、PFN共同創業者の岡野原大輔氏が開発戦略に加わり、推論基盤モデルと生成基盤モデルを並行して開発すると説明しました。経産省・NEDOは進み具合を確認し、必要に応じて方向を見直す体制で支援します。

経産省の「3873億円」「1兆円」の正確な意味

「3873億円」は2026年度の委託費、「1兆円」は2030年度までの5年間の見通しです。1兆円は確定した支援額ではありません。 NEDOの公募結果ページには、契約は2026・2027年度分のみで、それ以降の継続は毎年度のステージゲート審査で判断すると書かれています。「政府が1兆円を出した」と断定するのは誤りです。

数字・条件

正確な意味

約3873億円

2026年度の委託費(経産省発表をロイターなどが報道)

約1兆円規模

2026〜2030年度の5年間の見通し(報道ベース)。確定額ではない

契約の範囲

2026・2027年度分のみ(NEDO公式)

2027年度以降

毎年度のステージゲート審査で継続可否を判断(NEDO公式)

公募の状況

応募15件の中から、Noetraと産総研の共同提案を採択(NEDO公式)

事業期間

2026年6月〜2031年3月

つまり、5年で1兆円が保証されているわけではなく、成果が出なければ途中で減額や方針変更がありうる設計です。金額の大きさだけが話題になりがちですが、条件付きの見通しである点を押さえておきましょう。

経産省はこれまでも「GENIAC」で国内の生成AI基盤モデル開発を支援してきましたが、Noetra向けの事業は単年度の金額だけでも桁が違います。中小企業向けを含む国のAI関連支援制度はAI補助金・支援制度の解説記事で確認できます。

44社連合の全容:誰が参加しているのか

中核出資企業NECがNoetraへの出資を発表したプレスリリースの公式画像

出典: NEC プレスリリース(2026年7月16日)

Noetraには、中核4社を含む合計44社が出資しています(2026年7月16日時点の公式発表)。 そのうち公式リリースに「主な参画企業」として社名が出ているのは42社で、残り2社の名前は公表されていません。各社の出資額や出資比率も非公表です。

公式に掲載されている42社(五十音順)は次のとおりです。

業種の傾向

企業名

中核4社

ソニーグループ、ソフトバンク、NEC、本田技研工業

ロボット・工作機械

オークマ、川崎重工業、DMG森精機、ファナック、安川電機、ヤマザキマザック

電機・電子部品・半導体製造装置

沖電気工業、オムロン、シャープ、東京エレクトロン、東芝、日立製作所、富士通、三菱電機、村田製作所

素材・鉄鋼・化学

旭化成、神戸製鋼所、JFEスチール、日本製鉄

精密機器・空調・印刷

島津製作所、ダイキン工業、TOPPANホールディングス

建設・物流・住宅

鹿島建設、SGホールディングス、大和ハウス工業

エネルギー・製薬

JERA、第一三共

通信・IT

KDDI総合研究所、楽天グループ

金融・保険

住友生命保険、日本生命保険、みずほ銀行、三井住友海上火災保険、三井住友銀行、三菱UFJ銀行

AI開発・研究

Sakana AI、Preferred Networks、松尾研究所

※業種の区分は編集部によるもの。公式リストは五十音順で、区分はしていません。

顔ぶれを見ると、ファナック・安川電機・川崎重工業といったロボットメーカー、工作機械、素材、建設・物流など「現場」を持つ企業が多く入っています。Noetraはロボット本体をつくる会社ではないため、モデルを実際の機械に載せて使うのはこれらの出資企業側になると考えられます。

もう一つの特徴は、3メガバンクと生損保が並ぶ金融勢と、Sakana AI・PFN・松尾研究所といった国内のAI開発勢が同時に入っている点です。特定の1社の技術に頼るのではなく、日本の産業界全体でモデルを育てる体制をとっています。

7月16日の発表では、各社のトップがコメントを出しています。ソフトバンクの宮川社長は「日本の産業や企業が持つデータは競争力の源泉」と述べ、国内でデータを安全に使える環境づくりを強調しました。NECの森田社長は、基盤モデルのフルスクラッチ開発から実装・運用までを一貫して進める意義を経済安全保障の観点から語っています。

産総研との役割分担:短期の実用 vs 長期の先端研究

NoetraとNEDO事業を共同で担う産業技術総合研究所(産総研)は、役割を分けています。Noetraは国内の開発者や事業者が使える実用的な基盤モデルの開発と提供を、産総研はより先端的で長期の技術研究を受け持ちます。

担い手

役割

Noetra

国内のAI開発者・商用ユーザーの需要をくみ、国際競争力のある実用的なマルチモーダル基盤モデルを開発・提供する

産総研

国内外の研究機関と連携し、次世代の基盤モデルに必要な先端技術を研究する。英・仏・独・加・米などの研究者との共同研究も始めている(ソフトバンクニュース)

経産省・NEDO

進み具合を確認し、毎年度のステージゲート審査で方向の見直しや継続を判断する

企業だけで進めると短期の成果に寄りやすく、研究機関だけでは実装が遅れやすくなります。この分担は、「数年以内に産業で使うモデル」と「その先を見すえた基礎技術」を同時に進めるための設計です。

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海外のフィジカルAIとの違い:NVIDIA・Google・Physical Intelligenceと比較

フィジカルAIの基盤モデル開発はすでに世界的な競争になっており、Noetraは「国産」と「国内データの活用」を軸に後から追う立場です。 海外勢の多くはモデルやツールを公開・提供し始めていますが、Noetraは2026年10月時点でまだ何も公開していません。

主体

国・地域

主な取り組み

2026年10月時点の提供状況

Noetra

日本

44社出資の国産マルチモーダル基盤モデル。2030年度に実世界ネイティブAIを目標

未公開(研究開発中)

NVIDIA(Cosmos / Isaac GR00T)

米国

世界基盤モデルとヒューマノイド向け基盤モデル、シミュレーション環境

開発者向けにモデルやツールを公開

Google DeepMind(Gemini Robotics)

米国・英国

Geminiをベースにしたロボット向けモデル

一部モデルを開発者向けに提供

Physical Intelligence

米国

汎用ロボット制御モデル(π0系)

一部モデルを研究用に公開

Tesla(Optimus)

米国

自社ヒューマノイドと自動運転のデータを活用

外部向けのモデル提供はなし

※海外勢の提供範囲や条件は変わりやすいため、利用を検討する場合は各社の公式情報で確認してください。

NVIDIAの世界基盤モデルはNVIDIA Cosmos 3とは?の解説記事、Googleのロボット向けモデルはGemini Robotics 2とは?の解説記事で詳しく扱っています。

Noetraが海外勢と違いを出せるとすれば、技術の先進性よりも日本の工場・物流・建設現場のデータを国内で集めて学習に使える点です。経産省のイベントでは、赤澤経産相が「現場データが鍵」と述べています。一方で、計算資源・人材・モデル公開の早さでは米国勢が先行しており、Noetraが追う立場にあることは変わりません。汎用AIの現在地はGeminiの解説記事やClaudeの解説記事でもつかめます。

国産LLMとの違い

国内にはすでに、使える国産LLMがいくつもあります。Noetraとの違いは、「今使える言語モデル」か「フィジカルAIに向けた国家プロジェクト」かです。

名称

開発元

中心となる領域

2026年10月時点の状況

Noetraの基盤モデル

Noetra(44社出資)+産総研

言語→マルチモーダル→実世界へ段階的に拡張

未公開

Sarashina

SB Intuitions(ソフトバンク系)

日本語LLM

提供中

PLaMo

Preferred Networks

日本語LLM

提供中

tsuzumi

NTT

軽量な日本語LLM

提供中

cotomi

NEC

企業向け日本語LLM

提供中

Sarashinaを持つソフトバンク、PLaMoを持つPFN、cotomiを持つNECはいずれもNoetraに参画しています。各社が自前のLLMを続けながら、より大きな国産基盤を共同でつくる関係です。国産LLMの比較は国産LLM 7選の徹底比較、個別にはSarashina3とは?やPLaMo 3.0 Primeとは?の記事を参考にしてください。

また、2026年7月16日には富士通・ファナック・安川電機・川崎重工業とNVIDIAによるフィジカルAIの協業も発表されましたが、これはNoetraとは別の取り組みです。参加企業が重なるため、ニュースを読むときは混同しないよう注意が必要です。

データ主権:この事業の本当の狙い

Noetra事業の大きな狙いは、日本の現場データを国内で安全に活用できるAI基盤を持ち、海外モデルへの依存を減らすことです。 工場の設備稼働データ、作業の流れ、人やモノの動き、画像・音声・センサーの記録は、日本の製造業の競争力の源泉です。

国内データセンターのサーバーラック。国産AI基盤でデータ主権を確保するイメージ

ソフトバンクニュースが伝えた経産省のイベントでは、工場・物流・建設などの現場にフィジカルAIを入れ、使いながら現場データを集めてAIを改善するという循環が示されました。ITmedia(2026年10月5日)は、海外AI企業によるアクセス制限の報道や中国のオープンモデルの台頭を背景に、国産AI開発が「ラストチャンス」の局面にあると位置づけています。海外モデルが使えなくなったり条件が変わったりするリスクを、国内の基盤で小さくする狙いです。

国内でデータを持つという考え方は、ソフトバンクの国産クラウドなどでも進んでいます。SoftBank Cloud PF Type Aの解説もあわせて読むと、ソブリンAIの全体像をつかみやすくなります。

ただし、「国産だから安全」とは限りません。 Noetraのモデルについては、ライセンス、商用利用の条件、学習データの扱い、公開の範囲がまだ公表されていません。実際に使う段階では、運用体制やセキュリティ設計を海外モデルと同じ基準で確かめる必要があります。生成AIのセキュリティの考え方は生成AIのセキュリティ解説記事、製造業でのAI活用の現状は製造業のAI活用解説記事で確認できます。

今後のスケジュールと課題

GPUサーバー・電力・冷却を組み合わせたAIファクトリーのイメージ図

出典: NVIDIA 公式ブログ

公式に示されているのは、2026年度から推論基盤モデルを順次つくり、2028年度にオムニモーダル基盤モデル、2030年度に実世界ネイティブAIを目指すというロードマップです。 個々のモデルの公開日や性能は、2026年10月時点でまだ発表されていません。

時期

内容

情報の確度

2026年7月

研究開発事業を開始

公式

2026年度から順次

推論基盤モデルの構築

公式

2027年4月

自前の計算基盤(Rubin GPU約2万7500基)の構築開始

公式

2027年度

ステージゲート審査で2028年度以降の継続可否を判断

NEDO公式

2028年6月

計算基盤の稼働

公式(予定)

2028年度

オムニモーダル基盤モデル

公式(目標)

2030年度

実世界ネイティブAI

公式(目標)

時期未定

1兆パラメータ級モデル

報道ベース

主な課題は次のとおりです。

  • 計算資源が揃うまでの時間:自前の計算基盤が動くのは2028年6月の予定で、それまでは国内の既存基盤で開発する
  • 人材:フィジカルAIや世界モデルを扱える研究者は世界的に少ない
  • 支援継続の不確実さ:毎年度のステージゲート審査で、減額や方針変更がありうる
  • 現場データの集め方:44社の現場データを、権利や機密を守りながらどう集めて学習に使うか
  • 公開条件の未定:重みを国内に提供する方針は示されたが、対象・ライセンス・商用条件はまだ決まっていない

Noetraは今使えるのか:料金・提供状況

Noetra株式会社の公式ロゴ

出典: Noetra 公式サイト

2026年10月時点で、Noetraが一般ユーザーや企業向けに提供しているモデル・API・アプリはありません。 料金・プラン・利用規約もまだ存在しません。

項目

2026年10月時点の状況

一般向けアプリ・サービス

なし

API

未発表

モデル名・パラメータ数

公式には未発表

料金・プラン

未発表

提供の方針

研究開発や社会実装の状況をふまえて外部提供・公開を順次進める(公式)

重みの提供

学習済みモデルの重みを国内のモデル開発者や事業者に広く提供する方針(公式)

ライセンス・商用条件

未発表

最初のモデルの時期

2026年度から推論基盤モデルを順次構築(公開日は未発表)

「ChatGPTのように今日から使えるサービス」ではなく、数年かけて段階的に公開される産業向けの基盤と捉えるのが正確です。最初に公開されるのは推論基盤モデル(言語中心)とみられ、ロボットを直接動かすAIは2030年度の目標です。

「Noetraの株は買えるか」と投資勧誘への注意

Noetraは非上場の会社です。出資元のソフトバンク、ソニーグループ、NEC、ホンダなどは上場していますが、これらの株価は各社の事業全体で決まり、Noetra単独の価値を表すものではありません。

話題の国家プロジェクトは、名前を使った投資話の材料にされやすいものです。一般論として、「Noetraの未公開株を買える」「Noetraのモデルを先行利用できる」といった勧誘には注意してください。2026年10月時点で、Noetraに一般向けの株式販売や有料サービスはありません。

Noetraに関心を持つべき人・そうでない人

関心を持つべき人・企業

  • 製造業・ロボティクス・物流・建設の企業:将来、自社の機械やロボットに組み込める国産の基盤が生まれる可能性がある。出資企業以外への提供条件も今後の発表で注目したい
  • 国内のAI開発企業:学習済みの重みが国内の開発者に提供されれば、分野特化モデルをつくるときの基礎になりうる
  • データ主権を重視する企業:海外のAIに自社データを預けにくい企業にとって、将来の選択肢になりうる
  • 政策・経済の動きを追う人:日本のAI戦略と経済安全保障を理解するうえで中心になる事例

現時点では急いで追わなくてよい人

  • 今すぐ使えるAIツールを探している個人・中小企業:Noetraにはまだ製品がない。当面はおすすめの生成AIツールから選ぶほうが現実的
  • 短期の投資リターンを求める人:非上場で研究開発の段階にあり、毎年度の審査で計画が変わる可能性もある
  • 確定情報だけを扱いたい人:モデル名・性能・公開条件など、まだ断定できない情報が多い

立場別に今やっておくこと

立場

今やっておくこと

製造業・現場を持つ企業

設備の稼働データ、作業記録、画像・センサーデータを整理し、社外に出せる範囲や権利関係を決めておく

AI開発者・研究者

推論基盤モデルの公開時期、重みの提供対象、ライセンス条件の発表を追う

一般の読者・投資家

公式サイトと経産省・NEDOの発表で情報を確かめ、名前を使った勧誘に注意する

Noetraのモデルが公開されるまでの数年間も、現場の業務にはすでにある生成AIを使えます。新しいモデルを自社の業務システムに組み込むときの進め方と費用の目安は、既存システムにAIを組み込む方法にまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. Noetraのモデルはいつから使えますか?

公開日は発表されていません。公式のロードマップでは、2026年度から推論基盤モデルを順次つくり、外部への提供・公開も順次進めるとしています。ただし提供の対象が国内の開発者や事業者に限られるのか、誰でも使えるオープンな形になるのかは未定です。

Q. 「1兆円の支援」は本当ですか?

確定しているわけではありません。報じられている2026年度の委託費は約3873億円で、NEDOとの契約は2026・2027年度分のみです。2028年度以降は毎年度のステージゲート審査で継続が判断されるため、5年で約1兆円というのはあくまで見通しです。

Q. 「FRONTia」とNoetraは同じものですか?

FRONTiaは、経産省・NEDOが2026年7月に名付けたプロジェクトの名前です。Noetraはそのプロジェクトを産総研と共同で担う会社で、プロジェクト名と会社名という関係になります。

Q. 44社の全社名は公開されていますか?

公式リリースで「主な参画企業」として名前が出ているのは42社です。出資社数は44社と発表されているため、残り2社の名前と、各社の出資額・比率は公表されていません。

Q. Noetraのモデルは何パラメータですか?

公式の発表にパラメータ数はありません。日経クロステックなどは「1兆パラメータ級」と報じていますが、公式で確認できる数字ではないため、引用するときは報道ベースであることを示すのが安全です。

Q. 旧社名の「日本AI基盤モデル開発」と同じ会社ですか?

同じ会社です。2026年1月に株式会社日本AI基盤モデル開発として設立され、6月1日にNoetra株式会社へ社名を変えました。

まとめ

Noetra(ノエトラ)は、ソフトバンク・ソニーグループ・NEC・ホンダら44社が出資し、経産省・NEDOの支援を受けて国産のフィジカルAI基盤モデルを開発する会社です。 日本の現場データを国内で生かし、海外モデルへの依存を減らしながら産業の競争力を高めることを狙っています。

  • 実体は「使えるAIツール」ではなく、国家プロジェクトFRONTiaの開発会社
  • 2026年度の委託費は約3873億円。1兆円は5年間の見通しで、契約は2026・2027年度分のみ
  • 出資は44社。公式に名前が出ているのは42社で、出資額は非公表
  • 計算基盤はNVIDIA Rubin GPU約2万7500基で、2028年6月に稼働予定
  • 2026年度から推論基盤モデル、2028年度にオムニモーダル、2030年度に実世界ネイティブAIを目指す
  • 2026年10月時点でモデル・API・料金は未公開

数字や企業名が独り歩きしやすいテーマなので、「確定した事実」と「報道・見通し」を分けて見ることが大切です。新しい発表はNoetra公式サイト、経済産業省、NEDOで確認してください。

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