AI活用事例2026年7月更新

造船業のAI活用事例2026年版|設計自動化・溶接検査・予知保全とスマート造船所の最前線

公開日: 2026/07/06
造船業のAI活用事例2026年版|設計自動化・溶接検査・予知保全とスマート造船所の最前線

この記事のポイント

造船業のAI活用を、設計自動化・溶接検査・工程最適化・資材調達・予知保全・デジタルツインの6領域で整理。三菱重工・今治造船・JMU・日本郵船の事例、韓国HD現代・サムスン重工との国際比較、造船業再生ロードマップやAI造船ロボット14件採択などの政策支援まで、2026年7月時点の情報でまとめました。

造船業のAI活用は、設計自動化・溶接(生産)・溶接検査・工程最適化・資材調達・予知保全(運航)・デジタルツインの各工程で本格化しています。深刻な人手不足と技能者の高齢化、そして韓国・中国との国際競争という構造課題に対し、画像認識・機械学習・強化学習ロボット・デジタルツインを組み合わせた「スマート造船所」への転換が、国策レベルで進んでいるのが現状です。

建造中の大型船が並ぶ造船所(ドック)の全景

出典: Wikimedia Commons

この記事でわかること:

  • 造船業でAI活用が加速している背景と3つの構造的課題
  • 6つの工程領域別のAI活用事例(2025〜2026年の最新情報を反映)
  • 三菱重工業・今治造船・ジャパンマリンユナイテッド(JMU)・日本郵船の具体的な取り組み
  • 韓国のHD現代・サムスン重工業との国際比較(生産量・溶接自動化・商用化時期)
  • 「造船業再生ロードマップ」やAI造船ロボット14件採択など、国の政策・補助制度
  • 中小造船・舶用工業が現実的に始められる導入ステップと注意点

想定読者: 造船会社・舶用工業メーカーの生産技術部/設計部/DX推進部/経営企画部の担当者、および造船業界向けにAIソリューションを提案するSIer・ベンダー。

造船業でAI活用が加速している背景

造船業のAI導入は、人手不足・技能者の高齢化・国際競争という3つの構造課題に突き当たる中で、2020年代前半から急速に本格化しました。日本の造船業はかつて世界一の建造量を誇りましたが、現在は韓国・中国に建造量シェアで先行を許し、国内では熟練工の大量退職と若手採用難が同時に進んでいます。

業界が抱える主な課題は以下のとおりです。

  • 深刻な人手不足と技能者の高齢化 ― 溶接・曲げ加工・艤装など、多くの工程が熟練者の経験知に依存
  • 韓国・中国メーカーとの国際競争 ― 価格・生産スピードの両面で厳しい競争環境
  • 一品受注生産(個別受注・少量多品種) ― 同じ船を大量に作らないため、量産型の自動化を転用しにくい
  • 技術継承の停滞 ― 溶接品質や設計ノウハウの暗黙知をどう引き継ぐかが課題
  • 脱炭素(グリーン造船)への対応 ― 省エネ船・代替燃料船の設計負荷が増大

これらを同時に解決する手段として、設計自動化AI・AI溶接ロボット・工程最適化AI・デジタルツインの導入が進んでいます。特に日本では、国土交通省・内閣府が2025年12月に「造船業再生ロードマップ」を策定し、年間建造量を現在の約900万総トンから2035年に1,800万総トン(約2倍)へ引き上げる目標を掲げました。この目標は人員増だけでは達成困難であり、AI・ロボット・DXによる生産性向上が前提になっています。

造船業のAI活用は、工場内の生産だけでなく、就航後の船舶をセンサーとAIで監視する「スマートシップ」まで含む点が特徴です。この運航フェーズは海運会社の関心領域とも重なるため、海運業のAI活用事例とあわせて理解すると全体像がつかみやすくなります。

造船業におけるAI活用領域の全体像

造船業のAI活用は、船が生まれてから海に出るまでの工程に沿って、大きく6領域に整理できます。下表は各工程の役割・代表事例・報じられている効果・主な課題をまとめたものです。

工程領域

AIの主な役割

代表事例

報じられている効果

主な課題

設計自動化

船体形状最適化、自動配管、図面検索

三菱重工 MATES/阪大 OCEANS/管ナビ

燃費5〜12%改善、設計工数削減

3D CADデータの整備

溶接・生産

自動溶接、曲げ加工、作業経路計画

今治造船 溶接ロボット連携/AI曲げ加工ロボット

生産量増、省人化

一品生産への対応

溶接検査・品質

画像認識による寸法・溶接品質検査

今治造船 i-Factory

検査時間 約50%短縮

最終判定は人間

工程最適化

進捗・在庫のリアルタイム把握、工程予測

i-Factory/Smart Yard構想

生産性30%向上(目標)

データ蓄積の重さ

資材調達

発注量の需要予測、過剰発注の抑制

今治造船 パイプ部品AI予測

2部品で約1,000万円削減

市況・長納期変動

予知保全・運航

センサーデータ解析、異常検知、燃費最適化

日本郵船 SIMS/JMU Sea-Navi®

異常検知精度98%、燃料費約10%削減

OT/ITセキュリティ

※上表の数値効果は各社発表・報道に基づく参考値であり、一次情報(各社公式リリース)での最終確認を推奨します。

設計自動化AIの最新事例

設計自動化は造船AIの上流工程で、船体形状の最適化・配管ルーティング・過去図面の検索を自動化し、設計工数の削減と品質向上を同時に狙うアプローチが主流です。一品受注生産の造船では設計工数が大きな比率を占めるため、ここを効率化するインパクトは大きくなります。

三菱重工業「MATES」「ΣSynX」

三菱重工業は船体形状最適化技術「MATES」を展開しています。報道によれば、AIによる形状最適化で燃費5〜12%の向上・CO2排出削減につながるとされます(各社発表による参考値)。さらに、自動化・自律化を支えるプラットフォーム「ΣSynX(シグマシンクス)」を通じて、船舶の設計・運航の高度化を進めています。

大阪大学「OCEANS」共同研究講座

2025年4月、大阪大学に「先進海事システムデザイン共同研究講座(OCEANS)」が開設されました。今治造船・ジャパンマリンユナイテッド(JMU)・日本海事協会(NK)・MTI(日本郵船グループ)・日本シップヤード(NSY)が連携し、AIを活用した船舶設計の自動化を研究しています。目的は設計工数の大幅削減と品質向上で、産学連携でAI設計の標準づくりを進める国内最前線の取り組みです。

3次元艤装設計システム「管ナビ」

配管設計を支援する3次元艤装設計システム「管ナビ」は、AI化によって自動配管ルーティングや自動管割を目指しています。過去図面の意味検索や配管干渉チェックの自動化により、図面を探す時間や手戻りを減らす実務レベルの効果が期待されています。こうした「過去のドキュメントを理解して提案する」用途は、生成AIのビジネス活用事例全般と共通する方向性です。

溶接・生産AIとAI溶接ロボットの事例

溶接・曲げ加工は造船の中でも特に熟練を要する工程で、3D設計情報から作業手順を判断し、ロボットが自律的に溶接・加工する取り組みが進んでいます。人手不足が最も深刻な領域であり、省人化の効果が直接的に表れます。

複数の6軸溶接ロボットが並ぶ生産ライン

出典: Wikimedia Commons

今治造船 溶接ロボット4台連携システム

今治造船は、AI機能で溶接ロボット4台を連携させるシステムを開発してきました(舶用工業関連の支援事業で採択実績あり)。3D設計情報から作業手順や作業の配分を判断し、自動溶接を目指すものです。複数ロボットが協調して動くことで、大型ブロックの溶接を効率化する狙いがあります。

国交省事業のAI曲げ加工・AI溶接ロボット

国土交通省の新たな研究開発事業では、AI曲げ加工ロボット・AI溶接ロボットを強化学習で開発する取り組みが進んでいます。ロボットの作業経路・干渉・センサーの視界を分析し、最適な行動計画をバーチャル空間で立案する「生産工程AIシミュレーション基盤」の開発が中核です。実際に動かす前に仮想空間で段取りを検証することで、一品生産でも段取り替えのロスを抑えることを狙っています。こうした自律的に計画・実行する仕組みは、AIエージェントとは何かの解説で扱う自律型AIの考え方とも重なります。

溶接検査・品質AIの事例

溶接検査AIは、画像認識で部品の寸法精度や溶接品質を自動判定し、検査員を一次スクリーニングから解放することを目的とします。造船は溶接箇所が膨大で、検査工数と品質のばらつきが課題になるため、投資対効果が見えやすい領域です。

今治造船・西条工場「i-Factory」

今治造船の西条工場「i-Factory」では、AI画像認識システムで部品の寸法精度・溶接品質を自動検査する取り組みが報じられています。報道によれば、これにより検査時間を約50%短縮したとされます(各社発表・報道による参考値)。

重要なのは役割分担です。AIは欠陥候補や寸法のズレを一次検出し、最終的な品質判定は検査員が担うという形が現実解になっています。AIがスクリーニングを引き受けることで、検査員は判断が難しい箇所に集中でき、検査全体の質と速度を両立できます。

工程最適化・生産管理AIの事例

工程最適化AIは、各工程の進捗・資材在庫をリアルタイムに把握し、生産スケジュールの最適化と完工時期の予測を行うものです。造船は工程が長く、後工程の遅れが全体に波及しやすいため、ボトルネックの早期検知が効きます。

今治造船「i-Factory」構想

今治造船の「i-Factory」構想では、AIで各工程の進捗や資材在庫をリアルタイムに把握し、生産スケジュールを最適化することを目指しています。過去の工程実績を学習して完工時期を予測し、リスクのある工程を早期に検知する使い方が想定されています。

「Smart Yard」プロジェクト

AIとIoTを組み合わせて次世代造船所を構築する「Smart Yard」プロジェクトでは、生産性30%向上という目標が報じられています(メディア情報による目標値)。工場全体をデータでつなぎ、人・機械・材料の動きを可視化して最適化する方向性で、鉄鋼業の「インテリジェント製鉄所」構想(鉄鋼・金属業のAI活用事例参照)と発想が近いものです。

資材調達最適化AIの事例

資材調達AIは、需要予測で発注量を最適化し、過剰発注や欠品を抑えることを目的とします。造船は部品点数が膨大で、鋼材や長納期部品の在庫が資金繰りに直結するため、調達の巧拙が利益を左右します。

今治造船の「パイプ部品AI予測システム」は、発注業務を最適化し、報道によれば2部品だけで約1,000万円のコスト削減(過剰発注の解消)につながったとされます(各社発表・報道による参考値)。全部品に横展開できれば効果はさらに大きくなりますが、鋼材市況の変動や長納期部品のリードタイムをどうモデルに織り込むかが実運用上の課題です。

予知保全・スマートシップAIの事例

予知保全・運航AIは、就航後の船舶に搭載した膨大なセンサーデータをAI解析し、故障の予兆検知と燃費最適化を行う領域です。造船会社のビジネスが「船を建造して終わり」から「運航サービス・予防保全の提供」へ広がる潮流の中核にあります。

造船所で建造中の大型LNG運搬船

出典: Wikimedia Commons

日本郵船グループの異常検知・SIMS

日本郵船グループは、航海系からエンジン系まで膨大なセンサーデータをAI解析し、機器の異常を検知する取り組みを進めています。報道によれば異常検知の精度98%を達成したとされます(各社発表による参考値)。また、船舶情報管理システム「SIMS」により、約10%の燃料費削減につながると報じられています。

JMU「Sea-Navi®」

ジャパンマリンユナイテッド(JMU)の「Sea-Navi®」は、航行データの収集と性能監視で運航を最適化するサービスです。造船会社が建造した船の運航データを活用し、予防保全や性能改善につなげる、建造とアフターサービスをつなぐ取り組みといえます。運航データの活用は海運会社側の関心とも重なるため、海運業のAI活用事例とあわせて見ると理解が深まります。

デジタルツインとスマート造船所

デジタルツインは、現実の船や造船所を仮想空間にリアルタイム再現し、着工前のシミュレーションと運用中の状態把握を可能にする技術です。設計ミスの削減、工程の事前検証、就航後の状態監視まで、造船AIの各領域を束ねる基盤となります。

三菱重工業「MHI Digital Twin」/JMU「Data Platform」

三菱重工業は各システムを統合してデジタルツイン化する「MHI Digital Twin」構想を掲げています。ジャパンマリンユナイテッドの「JMU Data Platform」は、設計・製造・運航のデータを一元管理する基盤です。着工前に船体の強度や水抵抗をシミュレーションすることで、設計ミスや手戻りを減らす効果が期待されています。

なお、市場調査ではデジタル造船所市場は2023年の15億米ドルから2032年に76億米ドル(CAGR 19.8%)へ成長すると予測されています(Japan Insights)。主要プレイヤーはAVEVA・ダッソー・システムズ・SAP・シーメンスなどのグローバル勢で、国内は三菱重工業・今治造船が牽引役です。デジタルツインの構築はデータ整備が前提となるため、製造業のAI活用事例で語られるスマートファクトリー化の延長として捉えると導入イメージがつかみやすくなります。

日本 vs 韓国:造船AIの国際比較

造船AIの最前線を語るうえで、韓国勢(HD現代・サムスン重工業)の動きは無視できません。特に溶接自動化とヒューマノイドロボットで先行しており、日本は「日米連携」で次世代AI造船所研究を進めて対抗する構図です。下表に主要な違いを整理します。

比較項目

日本(三菱重工/今治/JMU/日本郵船)

韓国(HD現代/サムスン重工業)

強みの領域

設計自動化、溶接検査、予知保全、産学連携

溶接自動化、生産量スケール、ヒューマノイド

溶接自動化の状況

ロボット連携・強化学習を開発中

AI溶接システムを実装、生産量を公表

報じられる生産量

検査時間50%短縮など工程効率で成果

手作業約500トン/日→昼夜稼働で最大1,000トン/日

次世代ロボット

AI曲げ・AI溶接ロボットを政府事業で開発

ヒューマノイド溶接ロボットを2027年商用化目標

推進体制

国交省主導+日米連携+産学連携(OCEANS)

大手主導+Siemens・Anduril等とのパートナー

HD現代(HD Hyundai)

HD現代は2025年のAPEC Future Tech Forumで、AI・自律システムによる造船変革戦略を発表しました(パートナーはHuntington Ingalls、Anduril、Siemens)。報道によれば、AI溶接システムの導入で生産量が手作業時の約500トン/日から、昼間稼働で約750トン/日、昼夜稼働で最大1,000トン/日へ増加したとされます。設計図面の情報を読み取って作業位置を計算し、ロボットが自律移動して溶接する仕組みです。

さらにHD現代は、Persona AI・Vazilと共同でヒューマノイド溶接ロボットを開発中で、試作完成を2026年末、実地試験・商用化を2027年に目標設定しています。人間の溶接工のモーションキャプチャと強化学習で訓練する点が特徴です。

サムスン重工業(Samsung Heavy Industries)

サムスン重工業は、レーザーを用いた高速溶接ロボットを導入し、溶接時間を大幅に短縮したと報じられています。韓国勢は総じて「溶接の自動化・高速化」で先行しており、日本は設計自動化・検査・予知保全といった周辺工程と、政府主導の基盤研究で強みを発揮する構図になっています。

※海外事例の数値・時期は海外メディアソースに基づく参考値であり、変動しうる点にご留意ください。

国の政策・補助制度(導入判断の材料)

日本の造船AIは、単独企業の努力だけでなく国の政策と補助制度が強く後押ししている点が特徴です。導入を検討する企業にとっては、補助制度が投資判断の重要な材料になります。2026年7月時点で確認できる主な動きは以下のとおりです。

  • 造船業再生ロードマップ(2025年12月策定) ― 年間建造量を約900万総トンから2035年に1,800万総トン(約2倍)へ引き上げる目標。人員増だけでは達成困難で、AI・ロボット・DXが前提。
  • AI造船ロボット等に係る研究開発事業 ― 国交省が2026年2月13日〜3月6日に公募し、外部有識者審査を経て14件を採択。日米連携で次世代AI造船所の研究を推進。
  • 船舶産業の省人化・効率化を図るDXオートメーション技術の開発・実証事業 ― 7件を支援決定。
  • 造船業のDXに繋がる技術開発・実証事業 ― 過去に6件を支援した実績あり。

こうした補助制度は「小さく試す(PoC)」段階の資金負担を軽減してくれます。ただし、採択された個別企業名や補助金額の詳細は国交省の別紙PDF等に記載されており、応募や引用の際は一次情報での確認が必須です。制度は年度ごとに公募内容が変わるため、最新の公募要領を国交省・海上技術安全研究所(NMRI)のサイトで確認してください。

導入コストとハードル:中小造船の現実的なステップ

造船AIは大手だけのものではありませんが、いきなり全工程を自動化しようとすると失敗します。小さく試して効果を確かめ、段階的に広げるのが定石です。現実的な導入ステップは以下のとおりです。

  1. 課題の特定 ― 検査・調達・工程など、人手不足やムダが顕著な工程を1つに絞る
  2. データ整備 ― 紙図面の電子化、3D CADデータの準備、過去の工程・実績データの蓄積(ここが最も重い)
  3. PoC(小さく試す) ― 1工程・1ラインでAIを試験導入し、定量効果を測定
  4. 補助制度の活用 ― 国交省のAI造船ロボット関連事業などで初期投資を軽減
  5. 現場定着と横展開 ― 現場が使い続けられる運用に磨き込んでから他工程へ展開

最大のハードルは技術そのものよりデータの前提整備です。紙図面が多く残り、過去の実績データが体系化されていない造船所では、AI導入以前にデータ基盤の構築に時間とコストがかかります。また、検査員の心理的抵抗や「導入したが使われないAI」化のリスクも現実的な課題であり、現場を巻き込んだ運用設計が欠かせません。

規制・セキュリティとAIにできないこと

造船AIを導入するうえで、正直に押さえておくべき制約とリスクがあります。過度な期待は禁物であり、以下の点を理解したうえで計画を立てることが重要です。

  • 最終判定は人間が担う ― AIは溶接欠陥の候補検出や一次スクリーニングまで。構造・品質の最終判定は現時点でも検査員・技術者の責任領域です。
  • データの整備が重い ― 紙図面の電子化、3D CADデータの学習準備、過去実績の品質確保が前提。ここを飛ばすとAIは機能しません。
  • 一品受注生産の壁 ― 同じ船を大量に作らない造船では、量産型AIをそのまま転用しにくく、個別最適化の工夫が要ります。
  • OT/ITセキュリティ ― 運航・設計データは競争力の源泉です。データ一元管理基盤ではアクセス権限管理が前提で、船舶の制御系(OT)とIT系の境界セキュリティ、通信途絶時のフェイルセーフが論点になります。
  • 自律航行は法規制が前提 ― 自律航行・遠隔操縦はIMO(国際海事機関)などの国際ルール整備が前提で、実用化は段階的です。
  • 多くはまだ実証段階 ― ヒューマノイド溶接ロボット等は商用化前(2027年目標)で、現時点では実証・開発段階のものが多く含まれます。

これらの制約を踏まえると、造船AIは「人を置き換える」より「熟練者の判断を支援し、単純作業を肩代わりする」段階にあると理解するのが正確です。

造船業のAI活用が向いている企業/向いていない企業

自社に造船AIが合うかどうかは、規模だけでなくデータ整備状況と経営の本気度で決まります。以下を目安にしてください。

向いている企業:

  • 人手不足・技能者の高齢化が経営課題として顕在化している造船・舶用メーカー
  • 3D CADや工程データの電子化がある程度進んでいる、または投資の覚悟がある企業
  • 検査・調達・工程管理など、効果が測りやすい工程から着手できる企業
  • 国交省の補助制度を活用しながら段階的に投資を進められる中堅・中小造船所
  • 建造だけでなく運航サービス・予防保全まで事業を広げたい企業

向いていない企業:

  • 紙図面中心でデータ基盤への投資意欲がなく、短期での完全自動化を期待する企業
  • 現場を巻き込む運用設計を後回しにして「AIを入れれば解決する」と考える組織
  • PoCでの効果検証を飛ばして、いきなり全工程へ大規模導入しようとする企業
  • セキュリティ・データ管理体制の整備を軽視する企業

導入の第一歩として、まずは自社の課題に近い工程から生成AIツールを試すのも有効です。目的別のツール選定は生成AIツールおすすめ比較も参考になります。

まとめ

造船業のAI活用は、設計自動化・溶接・溶接検査・工程最適化・資材調達・予知保全・デジタルツインという各工程で着実に前進しています。三菱重工業のMATES、今治造船のi-Factory、JMUのData Platform、日本郵船のSIMSなど、国内大手は具体的な成果を積み上げつつあり、国も「造船業再生ロードマップ」やAI造船ロボット14件採択といった政策で強力に後押ししています。

一方で、溶接自動化やヒューマノイドロボットでは韓国のHD現代・サムスン重工業が先行しており、日本は設計・検査・予知保全と産学官連携で対抗する構図です。導入にあたっては、データ整備の重さ・最終判定は人間・一品受注生産の壁・OT/ITセキュリティといった制約を正しく理解し、PoCから段階的に広げることが成功の鍵になります。

数値効果や採択事業は変動するため、投資判断の際は各社公式リリースと国交省・NMRIの最新公募要領で一次情報を確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 造船業でAIは実際にどこまで使われていますか?

現時点では、溶接品質の画像検査、資材調達の需要予測、就航後の船舶の予知保全、船体形状の設計最適化などで実用が進んでいます。一方、AI溶接ロボットの完全自律化やヒューマノイドロボットは実証・開発段階(韓国勢で2027年商用化目標)で、まだ普及前の技術も多く含まれます。

Q. 中小造船所でもAIを導入できますか?

可能です。ただし全工程を一気に自動化するのではなく、検査・調達・工程管理など効果が測りやすい1工程からPoC(小さく試す)で始めるのが現実的です。国土交通省のAI造船ロボット関連事業などの補助制度を使えば、初期投資の負担を軽減できます。

Q. 造船AI導入で最大のハードルは何ですか?

技術そのものよりも「データの前提整備」です。紙図面の電子化、3D CADデータの準備、過去の工程・実績データの蓄積が整っていないと、AIは十分に機能しません。あわせて、現場の検査員・技術者が使い続けられる運用設計も欠かせません。

Q. AIが溶接検査をすれば検査員は不要になりますか?

いいえ。AIは欠陥候補や寸法のズレを一次検出するまでで、最終的な品質・構造の判定は検査員が担うのが現時点の現実解です。AIがスクリーニングを引き受けることで、検査員は判断が難しい箇所に集中でき、検査の質と速度を両立できます。

Q. 日本と韓国では造船AIにどんな違いがありますか?

韓国のHD現代・サムスン重工業は溶接の自動化・高速化とヒューマノイドロボットで先行しています。日本は設計自動化・溶接検査・予知保全といった周辺工程と、国交省主導・日米連携・産学連携(大阪大学OCEANS等)による基盤研究で強みを発揮する構図です。

この記事の著者

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編集部

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