AI活用事例2026年9月更新

FAX受発注の自動化はどこまでできるか|卸売業の費用と回収期間を1日100枚で試算【2026年9月最新】

公開日: 2026/09/07
FAX受発注の自動化はどこまでできるか|卸売業の費用と回収期間を1日100枚で試算【2026年9月最新】

この記事のポイント

FAX受発注の自動化にかかる費用を、クラウドFAX・AI-OCR・RPA・Web受発注・AIエージェントの5通りで比較。1日100枚の卸売業をモデルに、削減額と投資回収期間、自動化できない業務の見極め方まで数字で解説します。

FAX・メールで届く受発注の処理は自動化できます。費用は、注文書を読み取ってデータ化するだけなら月3万〜20万円、読み取りから商品マスタの突合・基幹システム登録・納期返信までまとめて任せるなら初期100万円+月額10万円〜(いずれも税別)が目安です。

ただし、この記事でいちばんお伝えしたいのは別のことです。FAX受注の作業時間の大半は「読み取り」ではなく「読み取った後」に消えています。 AI-OCR(注文書の画像から文字を読み取るソフト)を入れたのに現場の負荷が思ったほど減らなかった、という声が多いのはこのためです。以下では、どの工程がどのツールで消えるのかを工程単位で切り分け、1日100枚規模の卸売業をモデルに総額と回収期間まで出します。


FAX受発注のどこに時間がかかっているか

FAX注文書の山と業務用FAX機が並ぶ卸売業の受注デスク

まず、現場で実際に何が起きているかを工程に分解します。FAXで届いた注文1件が出荷指示になるまでには、8つの作業があります。

#

工程

内容

1

取りに行く

複合機まで紙を取りに行く。受注センターが複数フロア・複数拠点だと往復が発生する

2

仕分ける

得意先別・出荷日別・担当者別に分ける。この時点で紙が机上に山積みになる

3

判読する

手書き、かすれ、コピー劣化、上書き修正、欄外の注記を読む

4

商品マスタと突き合わせる

取引先の書き方を自社の商品コードに変換する。最も時間を食う工程

5

基幹システムに入力する

販売管理・受注システムに手で打ち込む

6

電話で問い合わせる

品名不明・数量不明・単位不明・締切後の注文について取引先に確認する

7

返信する

受注確定・納期回答のFAXやメールを送る

8

保管する

原本をファイリングする

「コーラ1ケース」を商品コードに変換しているのは誰か

工程4が重い理由は、取引先が自社の呼び方で書いてくるからです。「コーラ1ケース」「コカ・コーラ500ml×24」「CC500 24入」がすべて同じ商品を指します。旧品番、略称、取引先独自コード、手書きの略記。これを自社の商品コードに変換するルールが、多くの会社ではマニュアルにもシステムにも存在せず、ベテラン1〜2名の記憶の中にだけあります。

さらに「3ケース」を「72本」に直すには入数マスタを引く必要があります。単位の換算、欠品時の代替提案、締切を過ぎた分を翌日に回すかの判断。ここまで含めて初めて工程4は終わります。

商品名の表記ゆれを吸収する仕組みそのものについては商品マスタ更新の自動化で詳しく整理しています。

締切前30分に処理が殺到する

もうひとつ、卸売業特有の問題があります。FAX受注は「毎日◯時締切」の直前に集中します。1日の総量が同じでも、締切前30〜60分に処理が殺到するため、その時間帯に合わせて人員を張らざるを得ません。平準化できないので、「1日◯時間の作業」という平均値以上に人が拘束されます。増員するほどの量ではないのに、その時間だけ人が足りない。この構造が残業を固定化させます。

そもそも、FAXはまだ主流である

古い話に見えて、実はそうではありません。経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)によれば、2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%でした。裏を返せば、企業間取引の約57%は今もEC以外=FAX・電話・メール・紙で行われています。

製造業・卸売業に限ればさらに顕著で、アイルが2022年9月に実施した受注業務実態調査(製造業・卸売業 n=511)では、80.6%が電話・FAXなどのアナログ受注手段を利用しており、取引先のEC利用率は平均約40%にとどまっていました(2022年時点の調査値)。


自動化すると業務の流れはどう変わるか

工程1〜8のうち、どこがどう変わるのかを並べます。

工程

自動化後

1 取りに行く

複合機まで往復

FAXがそのままデータで届く。取りに行く工程が消える

2 仕分ける

手で分ける

送信元番号・帳票レイアウトで自動振り分け

3 判読する

目で読む

AIが読み取り、AI自身が読み切れなかった項目だけ人に回す

4 商品マスタ突合

ベテランが変換

過去の受注履歴と表記ルールから商品コードを特定

5 基幹入力

手入力

データファイルの取り込み、またはシステム同士の自動連携で登録

6 問い合わせ

電話

不明点だけリスト化して担当者に通知

7 返信

手で作成

受注確定・納期回答を自動送信(送信前に人が承認)

8 保管

ファイリング

電子保存(後述の電子帳簿保存法の要件に注意)

重要なのは、工程3までしか解かないツールと、工程7まで解く仕組みでは、削減できる時間がまったく違うという点です。ここを混同したまま製品を選ぶと、「導入したのに人が減らない」という結果になります。

参考までに、ベンダーが公表している導入事例では次のような数値が出ています(いずれも各社の公表値であり、当社の実績ではありません)。

  • FAX発注書1枚の入力が3分→30秒(守山乳業/インフォマート公表事例)
  • 受注作業が1枚5分→1分、月間6,000枚(花王プロフェッショナル・サービス/同上)
  • 1日10時間以上の作業を3時間以内に(オイシス/同上)
  • レイアウトの異なる発注書500パターン以上を100%デジタル化(カミ商事/同上)
  • 月間4,000件の発注書処理で年間128万円のコスト削減(スミダ飲料/同上)

削減できる時間と金額を試算する

ここが、他社の記事にほとんど書かれていない部分です。単価が分かっても、自社で年間いくら浮いて何ヶ月で元が取れるのかが分からなければ稟議は通りません。前提を明示したうえで計算します。

試算の前提

項目

設定値

FAX受注量

1日100枚 × 月20営業日 = 月2,000枚

1枚あたりの処理時間

入力+確認+突合で3分

月間作業時間

2,000枚 × 3分 = 月100時間

人件費単価

時給3,000円(給与だけでなく社会保険料等の会社負担を含めた総額ベース)

自動化率

8割(残り2割は例外処理として人が対応)

計算

  • 現状のコスト:月100時間 × 3,000円 = 月30万円/年360万円
  • 8割自動化した場合の削減額:月24万円/年288万円
  • シゴハヤエージェントを初期100万円+月額10万円で導入した場合
  • 1年目の費用:100万円+(10万円×12ヶ月)= 220万円
  • 1年目の収支:288万円 − 220万円 = +68万円
  • 2年目以降:288万円 − 120万円 = 年+168万円
  • 初期費用100万円の回収:月あたりの純削減額は24万円 − 10万円 = 14万円。100万円 ÷ 14万円 = 約7ヶ月

つまり1日100枚規模なら、初期投資は7ヶ月前後で回収でき、1年目から黒字になる計算です。

何枚から成立するのか(損益分岐点)

同じ計算式を逆算すると、自社が対象になるかどうかが判断できます。

受注量

月間作業時間

月の削減額(8割)

判定

1日40枚

約40時間

約9.6万円

月額とほぼ同額。初期投資は回収しづらい

1日60枚

約60時間

約14.4万円

初期100万円を2年で償却してほぼ均衡

1日100枚

100時間

24万円

約7ヶ月で回収

1日200枚

200時間

48万円

約3ヶ月で回収

1日40枚を下回る規模では、判断まで任せる構成は費用が見合いません。 その場合は後述のAI-OCR中心の構成(月3万円〜)のほうが現実的です。正直に書きますが、当社に相談いただいても同じことを申し上げます。

投資回収をどう測り、社内でどう説明するかは自動化の効果測定にまとめています。


自動化できる業務・できない業務の境界線

金額の前に、そもそも自社の受注業務が対象になるかを確認してください。以下に当てはまらない業務を無理に自動化すると、確認作業が増えてかえって遅くなります。

自動化できる

自動化できない

毎日・毎週決まった時間に繰り返し届く

年に数回しか来ない不定期な注文

FAXをPDFなどのデータで受け取れる

紙でしか受け取れず、複合機も変えられない

商品マスタ・入数マスタ・取引先マスタが整備されている

マスタが存在しない、担当者の頭の中にしかない

「この書き方ならこの商品コード」のルールを言語化できる

毎回ベテランの勘で判断している

基幹システムにデータをまとめて流し込む窓口がある(ファイル取込機能やシステム連携の口)

画面への手入力しか受け付けず、改修もできない

最終承認は人が行う運用にできる

出荷確定までAIに任せたい

特に注意していただきたい3つのケース

1. 手書きの走り書き・かすれたコピー・上書き修正だらけのFAX

読み取り精度が落ちます。これはどのベンダーの製品でも同じです。カタログの「認識率99%」は活字・良好な画質での数値であり、実データでは変わります。契約前に必ず自社の実物で試してください。

2. マスタが整備されていない会社

商品マスタが古い、入数が登録されていない、取引先ごとの呼び名が管理されていない。この状態では、AIに渡す判断材料そのものがありません。まずマスタ整備が先です。順序を逆にすると失敗します。

3. 与信判断・値引き交渉・出荷可否の最終決裁

これらはAIに委ねるべきではありません。自動化の対象は「ルールが決まっている作業」であり、判断の責任を移すことではありません。どこまで任せてよいかの線引きはAIエージェントに任せられる業務の境界線で詳しく扱っています。

「認識精度99%」を自社の数字に翻訳する

もうひとつ、検討時に必ず計算しておくべき数字があります。注文書1枚に20項目、1日100枚なら1日2,000項目です。認識精度99%なら、1日20箇所の誤りが出ます。これを全件目視で確認するなら、削減効果はほとんど残りません。

現実的な設計は「全件チェック」ではなく「確信度が低い項目だけを人に回す」ことです。確信度とは、AIが自分の読み取り結果にどれだけ自信があるかを示す数値のことです。AIが自信を持って読めた項目はそのまま流し、迷った項目だけ担当者の画面に上がる。この設計になっているかどうかが、実運用での成否を分けます。製品選定時には「精度は何%ですか」ではなく「確信度が低い項目をどう扱いますか」と聞いてください。


実現する方法は5つある

BtoBプラットフォームの公式イメージ(発注書AI-OCRを提供するインフォマート)

出典: インフォマート 公式サイト

ここからは中立的に整理します。FAX受発注の自動化には5つのアプローチがあり、それぞれ解ける工程が違います。前述の工程1〜8のどこまでを消せるかで比べてください。

① 受信をペーパーレスにするだけ

複合機で紙に出すのをやめ、PDFやメールでFAXを受け取ります。クラウドFAX・インターネットFAX・法人向けFAX受信サービスがこれにあたります。

  • 解ける工程:1(取りに行く)、一部2(仕分け)
  • 費用:小規模向けクラウドFAXで月1,000円台から。法人向けのFAX受信サービスは初期0〜6万円・月額3万円前後の帯(各社公式・比較サイト掲載値、2026年9月時点)
  • 残る作業:判読・マスタ突合・入力・問い合わせ・返信が全部残る

いちばん安く、いちばん早く始められます。テレワーク対応と紙の削減だけが目的ならこれで十分です。ただし作業時間はほとんど減りません。

② AI-OCRで読み取る

PDFになった注文書から、品番・数量・納期などの項目をデータとして取り出します。

  • 解ける工程:3(判読)
  • 費用:発注書特化型のインフォマート「発注書AI-OCR」は月30,000円〜(初期費用は非公開・公式サイトは問い合わせ扱い、2026年9月時点)。汎用AI-OCRのDX Suiteは Lite が初期0円・月40,000円〜、Standard が月100,000円〜(いずれも税抜・公式料金ページ、2026年9月時点)
  • 残る作業:確認・修正・マスタ突合・問い合わせ・返信

ここが最大の誤解ポイントです。AI-OCRは「文字を読む」ところまでしか担当しません。「CC500 24入」という文字列を正しく読み取ったとしても、それが自社のどの商品コードかは判断しません。工程4・6・7は丸ごと残ります。読み取った後を基幹システムへつなぐ部分についてはOCR取り込みから基幹システム登録までの自動化も参考にしてください。

③ RPAで基幹システムに入力する

②で取り出したデータを、RPAが人の代わりに画面操作して基幹システムに登録します。

  • 解ける工程:5(基幹入力)
  • 費用:WinActorは、1台のパソコンに固定して使うノードロック版で1本あたり年30〜50万円、社内の複数パソコンで使い回せるフローティング版で年50〜80万円の帯(オープン価格のため販売代理店により30〜40%の価格差があります)。別途年間保守が発生します
  • 残る作業シナリオの保守

RPAは決まった画面を決まった順番で操作するため、帳票フォーマットが変わる・システムがアップデートされると止まります。卸売業のFAX注文書はレイアウトが取引先ごとに異なるため、シナリオが増えやすく保守負荷が上がりがちです。この点はRPA保守コストが高い理由で詳細に分解しています。

④ 取引先をWeb受発注に巻き取る

そもそもFAXをやめてもらい、取引先に発注画面から入力してもらう方法です。

  • 解ける工程:1〜8のほぼすべて(使ってくれた取引先の分だけ)
  • 費用:Bカートは初期80,000円(初回のみ・税別)+月額9,800円(ライト)〜79,800円(プラン300)。アラジンECは小規模カスタマイズで初期400〜800万円・月額7〜10万円、中規模で初期800〜1,500万円・月額10〜15万円(いずれも公式料金ページ、2026年9月時点)
  • 残る作業移行してくれない取引先の分

精度もコストも、成功すればこれが最良です。問題は「取引先が使ってくれるか」の一点に尽きます。前掲のアイル調査(2022年9月・n=511)で取引先のEC利用率が平均約40%だったことが示すのは、巻き取りだけでは半分以上が残るという現実です。

⑤ AIエージェントに判断まで任せる

②③に加えて、工程4(マスタ突合)・6(不明点の切り分け)・7(返信作成)まで担わせる方法です。過去の受注履歴と自社の商品マスタを踏まえ、「この取引先がこの書き方をしたら、この商品コード」という変換を行い、基幹システムに登録し、納期回答の下書きまで用意します。最終承認は人が行います。

  • 解ける工程:1〜7(最終承認を除く)
  • 費用:当社のシゴハヤエージェントは初期100万円(税別)+月額10〜50万円(税別)。月額は処理量に連動し、10名規模で月10万円、30名規模で月20万円が目安です
  • 残る作業:例外判断と最終承認

判断を含む工程を任せられる代わりに、前述のとおり受注量が一定以上ないと費用が見合いません

最初の分岐は「取引先を変えさせるか、自社内で吸収するか」

製品ベンダーは自社カテゴリの外を勧めないため見えにくいのですが、実務上の正解は両方の併用です。

  • 大口取引先・DXが進んだ取引先 → ④で巻き取る(コストが安く精度も高い)
  • 個店・小規模取引先・基幹システムから自動送信してくる取引先 → 巻き取り不可能。①②③⑤で自社側が吸収する

どちらか一方に賭けると、必ず残りが手作業で残ります。最初から両輪で設計してください。


費用の目安と、規模ごとの選び方

汎用AI-OCRサービス「DX Suite」の公式ロゴ

出典: DX Suite 公式サイト

5つのアプローチを一覧にします(金額はすべて税別・2026年9月時点で各社が公開している情報に基づく目安です)。

アプローチ

解ける工程

初期費用

月額

残る手作業

① 受信のペーパーレス化

1・一部2

0〜6万円

1,000円〜3万円

判読・突合・入力が全部残る

② AI-OCRで読み取り

3

0〜20万円

3万〜20万円

確認・修正・突合・問い合わせ・返信

③ RPAで基幹入力

5

数十万円

年30〜80万円/本+保守

シナリオ保守。帳票変更で止まる

④ Web受発注に巻き取り

ほぼ全部(移行分のみ)

8万〜1,500万円

1万〜15万円

移行しない取引先の分

⑤ AIエージェント

1〜7

100万円

10万〜50万円

例外判断・最終承認

規模別の現実的な選び方

受注量の目安

推奨構成

年間の概算費用

1日30枚未満

①+②

40万〜120万円

1日30〜60枚

①+②、大口だけ④を並行

60万〜200万円

1日60〜150枚

⑤(①を含む)+大口に④

初年度220万円〜

1日150枚以上

⑤+④の本格併用

初年度340万円〜

②③を積み上げていくと、ライセンス費とシナリオ保守で結局⑤と変わらない年間コストになることがあります。単価ではなく、3年間の総額と社内工数で比べてください。 AIエージェント全般の費用構造はAIエージェント導入の費用相場、ノーコードツールとの違いはノーコードとAIエージェントの違いで整理しています。

当社が提供しているシゴハヤエージェントは、初期100万円(税別)+月額10〜50万円(税別)で、御社専用のAI社員が受注処理を毎日実行する構成です。月額は処理量に連動し、月1,000万〜1.2億トークン(AIが読み書きできる文字量の上限枠。日本語でおよそ700万〜8,400万文字に相当します)の利用枠が含まれます。標準的な導入期間は1〜2ヶ月です。


見落としやすい2つの論点

INSネットの提供終了を案内するNTT東日本の公式ロゴ

出典: NTT東日本 公式サイト

金額の話とは別に、検討段階で必ず確認しておくべきことが2つあります。どちらも後から発覚すると手戻りが大きい項目です。

クラウドFAXにすると、電子帳簿保存法の扱いが変わる

これは上位に出てくる解説記事でほとんど触れられていませんが、実際に起きます。

受け方

電子取引に該当するか

保存要件

複合機で受信と同時に紙出力し、紙で保存

該当しない(紙取引扱い)

紙のまま保存できる

ペーパーレスFAX(データで受信・保存)

該当する

可視性・真実性の要件を満たした電子保存が必要

インターネットFAX

該当する

紙保管は不可。電子保管が必須

つまり「効率化のつもりでクラウドFAXにしたら、注文書の保存義務の中身が変わっていた」という事態が起こり得ます。複合機のファイル名を工夫するだけでは要件を満たしません(出典:リコー「FAXで受領する注文書は電子帳簿保存法での電子取引保存の対象なのか?」、国税庁『電子取引一問一答』問4)。紙保存を認めていた宥恕措置は令和5年12月31日で終了しています。具体的な税務判断は必ず顧問税理士にご確認ください。

自動化の設計時に保存要件を織り込んでおけば追加費用はほぼ発生しませんが、後から対応すると別システムが必要になります。順序が重要です。

ISDN(INSネット)の終了という外部期限

NTT東西のINSネット「ディジタル通信モード」は2024年1月から段階的にサービスを終了し、現在は補完策(メタルIP電話上のデータ通信)へ移行しています。補完策では伝送遅延により処理時間が増大する影響が報告されており、補完策の提供も2027年頃までが目途、INSネット自体は2028年12月31日で提供終了と案内されています。

  • G3・スーパーG3のFAX(通話モードを使うもの)は引き続き利用できます
  • G4 FAX(ディジタル回線専用の高速FAX機)は、ディジタル通信モードが前提のため利用できません
  • 旧来のEDI(取引先と発注データを直接やり取りする仕組み。全銀TCP/IP手順などディジタル通信モードに依存するもの)を使っている場合は移行が必須です

(出典:NTT東日本「INSネットの新規申込受付・提供終了について」および同社コラム「ISDN(INSネット)とは?」、NTT西日本「INSネットのサービス終了について」)。日程は各社の案内が更新される可能性があるため、契約前にNTT東日本・西日本の最新告知でご確認ください。いずれにせよ、受発注のデジタル化には外部から決まっている期限があるという点は押さえておいてください。


実際にやった事例:調剤薬局の在庫管理

当社は医療機関・調剤薬局・インフラ企業の業務自動化を手がけてきました(守秘義務のため社名は非公開です)。卸売業のFAX受注とまったく同じ構造の課題を解いた例として、調剤薬局のケースをご紹介します。

課題

医薬品は、同じ薬でも表記が複数あります。先発品名・後発品名・略称・規格違い・包装単位違い。発注書、納品書、在庫システム、レセコン(調剤報酬の請求に使う専用システム)で表記がばらつき、その突合を薬剤師と事務スタッフが手作業で行っていました。「どの表記が同じ薬を指すのか」の判断が特定の担当者に依存しており、その方が不在の日は在庫確認が止まっていました。

作ったもの

  • 各システムから届くデータを毎日決まった時刻に取り込む仕組み
  • 表記ゆれを自社の医薬品マスタに名寄せし、同一品目として突き合わせる処理
  • 判断がつかなかった項目だけを一覧にして担当者へ通知する仕組み
  • 最終確認は必ず人が行う運用(自動確定はしない)

何がどう変わったか

  • 突合作業が「全件を目で見る」から「AIが迷った分だけ確認する」に変わった
  • 表記の変換ルールが仕組みの中に記録され、担当者個人に依存しなくなった
  • 担当者の不在で業務が止まる状態が解消された

FAX受注における「コーラ1ケース」→商品コードの変換は、これとまったく同じ処理です。違うのは扱う商品が医薬品か食品・資材かという点だけです。薬局側の詳細は調剤薬局の在庫管理の自動化にまとめています。


導入までの流れと期間

BtoB Web受発注システム「Bカート」の公式サイトイメージ

出典: Bカート 公式サイト

いきなり全工程の自動化を目指して失敗する会社が多いため、順序を示します。標準的な導入期間は1〜2ヶ月です。

段階

やること

目安期間

0

現状把握。1日の受注枚数、1枚あたりの処理時間、取引先ごとの帳票パターン数を数える

1週間

1

受信をデータで受けられるようにする(①)

1〜2週間

2

実物のFAXで読み取り精度を検証する。手書き比率の高い取引先を洗い出す

1〜2週間

3

商品マスタ・入数マスタ・取引先マスタを整備する

2週間〜(現状次第)

4

突合・登録・返信を自動化し、確信度の低い項目だけ人に回す運用にする

2〜4週間

5

並行して、大口取引先からWeb受発注に巻き取る(④)

3ヶ月〜

段階3を飛ばすと必ず失敗します。 マスタが整っていない状態で読み取りだけ自動化しても、突合作業が人の手に残るためです。逆に言えば、段階0〜3は自動化ツールを買わなくても自社で着手できます。

当社にご相談いただく場合は、まず段階0の現状把握からご一緒します。1日の受注枚数と帳票パターン数が分かれば、その場で概算費用と回収期間をお出しできます。要件が固まっていない段階でも構いません。サービスの詳細はシゴハヤエージェントのページをご覧ください。


よくある質問

Q1. FAX番号は今のまま使えますか。取引先に番号変更を連絡するのは避けたいのですが。

多くのFAX受信サービスは、現在お使いの番号のまま転送設定で受け取る方式に対応しています。複合機の設定を変えて受信データを転送する方法もあります。ただし番号ポータビリティの可否は回線種別と提供事業者によって異なるため、契約前に必ず確認してください。取引先への告知が不要であることは、社内の合意形成において想像以上に効きます。

Q2. 繁忙期に処理量が3倍になっても対応できますか。

自動処理の部分は処理量が増えても人を増やす必要がありません。ただし例外として人に回る分は比例して増えます。料金面では、当社の場合は月額が処理量に連動する設計のため、一時的に量が増える月は上位の枠に入ることがあります。年間の繁忙期パターンをあらかじめお伝えいただければ、平準化した料金でお見積りします。

Q3. 社内にITに詳しい人間がいませんが、運用できますか。

運用に必要なのは「AIが迷った項目を確認する」作業だけで、これは業務を知っている方であれば行えます。むしろ社内にエンジニアがいない会社を想定した設計です。逆に、シナリオを自社で書き換え続ける必要があるRPAは、社内に担当者を置けない会社では維持が難しくなります。

Q4. 稟議を通すために、どんな資料を用意すればよいですか。

3つの数字があれば通ります。①1日の受注枚数、②1枚あたりの処理時間(実測してください。想定より長いことがほとんどです)、③人件費の総額単価(給与額面ではなく社会保険料等の会社負担を含めた額)。この3つで年間の人件費相当額が出るので、導入費用と並べれば回収期間が計算できます。本記事の試算の項がそのまま雛形として使えます。

Q5. 途中でやめたくなった場合、業務は元に戻せますか。

戻せる設計にしておくべきです。具体的には、受信データの原本を自社側にも保存しておくこと、基幹システムへの登録形式を標準的なCSVなどに保っておくこと、変換ルールを人が読める形で書き出せるようにしておくことです。契約前に「解約時にデータと設定はどの形式で返ってくるか」を必ず確認してください。これはどのベンダーに対しても聞くべき質問です。

Q6. IT導入補助金などの補助金は使えますか。

対象になる可能性はありますが、制度は年度ごとに枠・要件・締切が変わるため、本記事では具体的な金額や締切日を書きません。最新の対象範囲はAI導入補助金の対象になるツールを、申請時期については締切と申請スケジュールをご確認ください。なお補助金は原則として立替払いのため、資金繰りの計画は補助金なしの前提で立てておくことをおすすめします。

Q7. 効果が出るまでどれくらいかかりますか。

受信のペーパーレス化(段階1)は1〜2週間で効果が見えます。読み取りと突合を含む本格的な自動化は、稼働開始が1〜2ヶ月後、そこから精度が安定するまでさらに1〜2ヶ月というのが実態です。導入直後は例外に回る割合が高く、運用しながら変換ルールを追加していくことで下がっていきます。「初月から8割自動化」という前提で計画すると必ず狂うので、3ヶ月目から本格的に効き始めると見ておいてください。


FAX受注の枚数を数えるところから始めてください

FAX受発注の自動化で失敗する最大の原因は、製品から入ることです。まず自社の1日の受注枚数、1枚あたりの実測処理時間、取引先ごとの帳票パターン数を数えてください。この3つが分かれば、①〜⑤のどれが適切か、そして回収できるのかが自分で判断できます。

そのうえで、読み取りだけでなく商品マスタとの突合や納期返信まで含めて任せたい、かつ受注量が1日60枚を超えるのであれば、AIエージェントによる自動化が選択肢に入ります。初期100万円(税別)+月額10万円(税別)〜、標準1〜2ヶ月で稼働します。

現状の枚数と帳票パターン数をお伝えいただければ、概算費用と回収期間をその場でお出しします。要件が固まっていない段階のご相談でも構いません。

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編集部

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