AI活用事例2026年10月更新

士業の資料回収・催促を自動化する方法と費用|月980円のツールから開発まで比較【2026年10月】

公開日: 2026/09/08
更新日: 2026/10/10
士業の資料回収・催促を自動化する方法と費用|月980円のツールから開発まで比較【2026年10月】

この記事のポイント

士業の資料回収は、未提出者の抽出・催促・仕分け・不足の検知・会計ソフトへの登録まで自動化できます。書類回収サービス(月980円〜)、AI-OCR、kintone、RPA、開発の費用と範囲を比較し、職員数別に開発へかけてよい上限を試算します。

士業事務所の資料回収は、未提出者の抽出・催促の送信・届いた資料の仕分け・不足の検知・会計ソフトや申請システムへの登録まで自動化できますが、戸籍などの役所発行物を取り寄せる行為そのものと、専門的な判断・最終決裁は自動化できません。費用は、催促だけを自動化する書類回収サービスなら月980円(税抜)からです。届いたあとの不備チェックや会計ソフトへの登録まで、今の環境とつなぐ仕組みを開発する場合は、当社の公開価格で既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積(いずれも税別)です。

この記事では、資料回収のどの工程に時間を取られているのかを7つに分解したうえで、実現手段を横並びで比較し、削減できる時間を「月何時間 × 人件費 = いくら」まで計算します。あわせて、何名規模の事務所から開発を検討する意味があるのか、逆に月1,000円台のサービスで十分なのはどこまでかも書きます。結論から言えば、5名規模の事務所に専用の仕組みを一から作ることは勧めません。

士業事務所の資料回収は、どこで時間がかかっているのか

山積みになった請求書・領収書・通帳のコピーなど、士業事務所に集まる紙資料のイメージ

「資料回収に時間がかかる」と言うとき、まず思い浮かぶのは「顧問先が出してくれないこと」でしょう。ただ、実際に工数を分解すると、時間の多くを占めているのは催促そのものと、資料が届いたあとの処理です。

典型的な流れは次の7工程です。

  1. 必要書類リストの作成・送付(顧問先ごとに中身が微妙に違う)
  2. 未提出の把握(Excelやホワイトボードで手管理していることもある)
  3. 催促(メール→反応なし→電話→再送。1顧問先で3〜4回に及ぶこともある)
  4. 到着した資料の仕分け・ファイル名の付け直し・フォルダ格納
  5. 不足・不備のチェックと再依頼(ここでまた催促のループに戻る)
  6. 会計ソフト・申請システムへの登録や転記
  7. 進捗の所内共有と報告

3・4・5・6が全体の大半を占めます。 特に5番は厄介で、「通帳のコピーが1ヶ月分抜けている」「請求書の日付が読めない」といった不備が見つかるたびに、また催促の工程に戻ります。1回で終わらないことが、工数が積み上がる原因です。

よく目にする解説記事の多くは「依頼 → 回収 → リマインド」までしか扱っていません。しかし実務で重いのは、その先の突合・不足チェック・システムへの登録です。ここを含めて考えないと、ツールを入れても体感が変わりません。

士業の種別によって難所が違う

資格

主な回収物

ピーク

難所

税理士・会計事務所

月次の通帳・領収書・請求書・売上資料、決算資料、年末調整書類、確定申告資料

毎月+12〜3月

顧問先ごとに提出形式がバラバラ(紙・PDF・写真・チャット送信)

社会保険労務士

入退社書類、扶養異動届、年末調整関連、36協定、算定基礎届

11〜12月、6〜7月

顧問先の従業員個人からの回収が挟まり、回収が多段階になる

司法書士・行政書士

戸籍・住民票・印鑑証明、遺産分割協議書、許認可の添付書類

通年

原本・押印・役所発行物が多く、電子だけでは完結しない

弁護士

証拠資料、契約書、当事者からの資料

通年

案件ごとに必要なものが変わり、定型化しにくい

自動化の効果の出やすさは、この表の上から順に高いと考えて差し支えありません。毎月・毎年同じ書類を同じ相手から集める業務ほど自動化の効果が出ます。

繁忙期の実態

株式会社レックスアドバイザーズが2026年5月に会計事務所・税理士法人の勤務者740名(管理職524名・スタッフ216名)を対象に実施した調査(株式会社PRISMAのアンケートパネルを使用、2026年6月4日発表)では、繁忙期の残業について次の結果が出ています。

  • 全体の約3分の1が月60時間以上の残業、約10%が80時間超
  • 半数以上が、通常期と比べて月40時間以上残業が増える
  • 22時を超える残業の経験者が約7割、0時超えが約10%(管理職の深夜残業経験率は約75%)
  • 繁忙期の平均睡眠時間が5時間未満の人が70%、4時間未満が30%
  • 不満の内訳は、フレックス制度がない33%、割に合わない顧客32%に続き、事務所の非効率が26%

「顧客が悪い」でも「制度が悪い」でもなく、事務所内部の非効率が上位に来ている点は見過ごせません。資料回収と催促は、その非効率の中核にあります。

資料が届く経路はこれから増える

もう一つの構造的な事実として、回収チャネルは減るどころか増えています。2024年1月1日以降、電子帳簿保存法の宥恕措置が終了し、電子取引データは電子のまま保存することが全事業者に義務づけられました。紙に印刷したものだけを残す運用は認められません。所轄税務署長が「相当の理由がある」と認め、かつ税務調査の際にデータを提示できる場合には、検索機能などの保存要件を満たさなくてよい猶予措置がありますが、その場合も電子データそのものは保存し続ける必要があります。

一方でミロク情報サービス「会計事務所白書2023」(総数780名/会計事務所272・企業508)によれば、

  • 電子帳簿保存法の電子取引データ保存に完全に対応している会計事務所は7%(「これから対応する」が50%)
  • 企業の請求書の形式は81%が「紙と電子の両方」
  • ITに強い人材が事務所に「いない」が66%
  • AIで効率化できると考える業務のトップは仕訳業務で68%

この白書は3年前の調査です。電帳法への対応率は現在もう少し上がっているとみられます。ただし紙と電子が混在したまま資料が届くことと、事務所にITに強い人材がいないことという構造は、現場の実感として大きくは変わっていません。

つまり、顧問先から届く資料は「紙と電子が混在したまま増えていく」一方で、事務所側にはそれを捌くIT人材がいません。人手の管理で回し続ける前提のほうが、むしろ無理があります。

資料回収を自動化すると、何がどう変わるか

作業の流れがどう置き換わるかを、月次資料の回収を例に並べます。

現状の流れ

  1. 担当者が顧問先ごとに必要書類のメールを送る
  2. Excelの一覧で提出状況を手で更新する
  3. 期限を過ぎた先を目視で探し、催促メールを書いて送る
  4. それでも来なければ電話をかけ、内容をメールで再送する
  5. 届いた資料を開き、ファイル名を付け直してフォルダに格納する
  6. 内容を確認し、不足があればまた連絡する
  7. 会計ソフトに登録し、進捗を所内に共有する

自動化後の流れ

  1. 顧問先ごとの必要書類リストと期限が、決められた日に自動で送信される
  2. 提出状況が自動で更新され、未提出の一覧がいつでも見られる
  3. 期限翌日・3日後・1週間後と、段階的に文面を変えた催促が自動送信される
  4. 届いた資料は自動でファイル名を整えて所定のフォルダに格納される
  5. 「通帳が1ヶ月分足りない」「請求書の枚数が前月と大きく違う」といったルール化できる不足は自動で検知され、再依頼される
  6. 会計ソフトへの登録まで自動で行い、担当者は結果を承認する
  7. 進捗レポートが毎朝、所長と担当者に届く

人がやる仕事は「全部を追いかける」から「例外だけを見る」に変わります。電話をかけるべき相手は、自動催促を3回受けても反応しなかった顧問先だけに絞り込まれます。

催促メールの実務では、期限翌日から2日以内に一次催促を出し、反応がなければ電話で「メールが届いているか」から確認するのが標準的な進め方とされます。最初から強い表現を使うと関係が悪化するため、回数に応じて段階的に表現を調整する必要があります。この「段階的にトーンを変える」部分は、まさにルール化できる作業です。個別の設計はフォローメールの自動化で詳しく整理しています。

届いた資料の整理も同様です。メール添付で届く資料の仕分けはメール添付ファイルの仕分け自動化、紙資料のデータ化から登録まではOCRから基幹システムへの登録の自動化が該当します。

削減できる時間と人件費はいくらか

投資判断のために、数字で計算します。前提は次のとおりです。あくまで前提を置いた試算であり、事務所ごとに変わります。

  • 職員1人あたりの担当顧問先数を25件と仮定(法人・個人の比率や事務所の方針で大きく変わります)
  • 1顧問先あたり月の資料回収関連作業(リスト送付・未提出管理・催促・仕分け・不備の再依頼)を20分と仮定
  • 人件費は時給3,000円と仮定(年収540万円を年間労働時間1,800時間で割った概算。社会保険料の会社負担は含めていないため、実際の負担はこれより高くなります)

事務所規模

顧問先数

月の資料回収工数

人件費換算

年間

職員5名

125件

約42時間

約12.5万円/月

約150万円/年

職員15名

375件

約125時間

約37.5万円/月

約450万円/年

職員30名

750件

約250時間

約75万円/月

約900万円/年

15名規模の事務所は、資料回収と催促だけで年450万円分の時間を使っている計算になります。職員1人分の人件費に相当します。

開発にいくらまでかけられるか

仕組みを作る費用が見合うかは、削減できる金額から逆算すると判断しやすくなります。上の工数のうち7割を自動化できたと仮定し、その2年分を「開発と運用にかけてよい上限の目安」として並べます。仮定に基づく試算です。

計算式は、月の削減額 = 上の表の人件費換算(月)× 0.7、2年分 = 月の削減額 × 24ヶ月です。

事務所規模

月の削減額(7割)

2年分の削減額

考え方

職員5名

約8.8万円

約210万円

専用の開発より、月額の書類回収サービスが先

職員15名

約26万円

約630万円

不備チェックや会計ソフトへの登録など、工程を絞った開発なら検討の余地がある

職員30名

約52.5万円

約1,260万円

依頼から登録・報告までをつなぐ開発を検討できる

2年分の削減額は、そのまま開発費に使える金額ではありません。ここから、クラウドや外部API・AIの利用料、稼働後の保守・修正の費用を差し引いた残りが、開発にかけられる額の目安です。2年で見るか3年で見るかも事務所の判断です。

参考までに、当社の受託開発の公開価格は既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別。クラウド・外部API・ライセンスなどの実費は別)。PoCは、対象を絞って試験的に作り、効果と課題を確かめる段階の費用です。300万円で本番の仕組みが完成するという意味ではありません。

正直に書きます。5名規模の事務所に専用の仕組みを一から作ることは勧めません。 2年分の削減額が約210万円で、PoCの開始価格にも届きません。この規模なら、後述する月980円〜7,980円(税抜)の書類回収サービスで十分です。実際、その価格帯でも催促の自動化と進捗の可視化はできます。

開発を検討する意味が出てくるのは、この試算の前提では職員15名以上、顧問先300件以上の事務所です。ただし規模にかかわらず、「書類回収サービスで受け取ったファイルを会計ソフトに取り込む部分をつなぐ」といった範囲を絞った開発なら、既存システムの改修(100万円〜)として扱える場合もあります(範囲は相談で確認します)。

ただし、規模が小さくても次に当てはまる場合は判断が変わります。

  • 繁忙期の残業代が年間で数百万円規模になっている(この削減分は上の試算に含まれていません)
  • 資料が揃わないことが原因で申告期限が危うくなった経験がある(リスク低減は金額換算していません)
  • 担当者1名がすべての顧問先の提出状況を把握しており、その人が抜けると業務が止まる
  • 顧問先の増加を計画しているが、資料回収の負荷が上限になって受けられていない

最後の項目は特に重要です。顧問先を増やせない理由が「回収が回らないから」なのであれば、これは費用削減ではなく売上の話になります。

自動化できる資料回収・できない資料回収

ここをはっきりさせておかないと、導入後に「思っていたのと違う」になります。判断基準は3つで、繰り返し発生するか/入力も出力もデジタルで完結するか/ルールとして書き出せるかです。

自動化できる

自動化できない

毎月・毎年決まった時期に、決まった書類を、決まった顧問先から集める(月次資料・年末調整・算定基礎届)

案件ごとに必要書類が毎回変わる(複雑な相続、特殊な許認可)

未提出者の抽出と、段階的に文面を変えた催促の送信

顧問先の事情に踏み込んだ交渉や関係修復(「あの社長は電話でないと動かない」)

到着資料の仕分け・命名・フォルダ格納・所内共有

原本の受け渡し・押印・対面確認が必須の手続き

ルール化できる不備チェック(枚数、期間の欠け、金額の桁、必須項目の空欄)

「この支出は事業関連か」といった専門的判断

会計ソフト・申請システムへのデータ登録と結果報告

申告内容・申請内容の最終決裁(有資格者の責任範囲)

提出状況レポートの自動作成と配信

顧問先の経営状況を踏まえた助言

役所発行物の取得そのものは自動化できません

司法書士・行政書士、そして相続案件を扱う税理士の方に、特に押さえていただきたい論点があります。

2024年3月1日に施行された改正戸籍法により、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍謄本等をまとめて取得できる「広域交付」が始まりました。相続の戸籍収集が楽になる制度として広く報じられています。

ただし、この広域交付が使えるのは窓口に来た本人(および配偶者・直系尊属・直系卑属)が請求する場合に限られます。郵送請求では使えず、代理人請求も対象外です。士業の職務上請求でも利用できません。

つまり、相続案件で士業が戸籍を集める場合は、従来どおり本籍地への郵送請求か、依頼者から委任状を得たうえでの窓口請求が必要です。請求先の市区町村が多い場合は、戸籍が揃うまでに相応の時間がかかります。

したがって、役所発行物を取り寄せる行為そのものは自動化の対象外です。 自動化できるのは、依頼者への必要書類の案内、進捗の管理、届いた書類の整理、不足の検知、そして「次に何を請求すべきか」の一覧化です。ここを混同したまま導入すると期待外れになります。

導入を見送るべきケース

  • 職員5名未満で、顧問先が100件を切っている:月1,000円台の書類回収サービスで十分です
  • 紙のやり取りを一切変えない方針が決まっている:資料を受け取る段階でデジタル化が止まるため効果が限定的です
  • 顧問先ごとに提出物と手順が完全に個別:ルール化できないため、自動化の前に業務の標準化が必要です

なお、不備チェックのルール設計そのものは他業務にも応用できます。考え方は社内申請のチェックの自動化にまとめています。

実現する方法は4つある

AI-OCRサービス「DX Suite」のロゴ

出典: DX Suite 公式サイト

資料回収の自動化には複数の手段があり、それぞれ担う範囲が違います。フラットに比較します。

① 書類回収に特化したサービス

顧問先に必要書類リストを送り、専用URLからアップロードしてもらい、未提出者に自動でリマインドを送る、という一連を担当します。士業向けのDocly(株式会社TechSync)を例に取ると、公開価格は次のとおりです。

プラン

月額(税抜)

顧客数

ストレージ

利用人数

スターター

980円

100件まで

10GB

1名

プロフェッショナル

2,980円

無制限

50GB

3名

エンタープライズ

7,980円

無制限

300GB

15名

必要書類リストのテンプレート作成、登録不要の専用アップロードURL発行、進捗ダッシュボード、自動リマインドメール、一括ダウンロードなどを備えます(Docly公式)。14日間の無料期間があり、クレジットカード登録も不要です。

顧問先側にアカウント登録を求めない点は実務上かなり大きい利点です。「顧問先が使ってくれない」はツール導入でつまずきやすい点なので、相手の負担を増やさない設計かどうかは必ず確認してください。

担う範囲は依頼・受領・進捗可視化・催促まで。届いたあとの不備チェックやシステム登録は人の仕事として残ります。

② AI-OCR

紙やPDFで届いた資料を、データに変換します。代表格のDX Suite(AI inside)の公開価格は次のとおりです(DX Suite公式)。

プラン

月額(税抜)

初期費用(税抜)

月の無料枠

従量課金

Lite

40,000円〜

0円

18,000円分

項目抽出・全文読取などはリクエスト単位で課金

Standard

100,000円〜

200,000円

50,000円分

同上

Pro

200,000円〜

200,000円

200,000円分

同上

項目抽出・全文読取の単価は価格ページに載っていないため、見積で確認してください。

紙の証憑が多い会計事務所には効果があります。ただし回収そのものや催促は担いません。あくまで「届いたあとのデータ化」の道具です。

③ kintone等で自作する/RPA

サイボウズのkintoneで提出状況の管理台帳を作る方法もあります。公開価格は以下(初期費用0円・税抜、kintone公式)。

コース

月額/ユーザー

最低ユーザー数

ライト

1,000円

10

スタンダード

1,800円

10

ワイド

3,000円

1,000

10名なら月1万〜1.8万円です。安く見えますが、手に入るのは「器」だけで、中身の画面や自動送信の仕組みは自分で作る必要があります。事務所内にITに強い人がいれば有力な選択肢ですが、前述の白書では、ITに強い人材が「いない」という会計事務所側の回答が66%でした。

RPAは決まった画面操作を繰り返させる仕組みで、費用は無料で使えるものから、製品やライセンス数によって高額になるものまで幅があり、導入前に見積で確認が必要です。既存ソフトの操作が固定されている事務所には向きますが、画面の仕様が変わるたびに作り直しが必要になる点が弱点です。

④ 既存の環境とつなぐ仕組みを作る(AIエージェントを含む)

依頼から催促、仕分け、不備チェック、会計ソフトへの登録、報告までを、今使っているソフトやフォルダとつないで一連の流れとして動かす方式です。①〜③がそれぞれ工程の一部を担うのに対し、工程をまたいで動く点が違います。届いた資料の読み取りや不備の判定にAIを組み込み、決められた範囲で自動実行させる形(AIエージェント)もここに入ります。

形は大きく2つです。一つは、事務所専用に開発会社へ依頼して作る方法。もう一つは、構築から運用までを月額で引き受ける運用型のサービスを使う方法です。どちらも多くの場合①〜③より費用は大きくなりますが、そのぶん「ツールとツールの間を人がつなぐ作業」が減ります。前章の試算のとおり、この費用を正当化しやすいのは職員15名以上の事務所です。

どの手段を選んでも共通する失敗パターン

手段の比較より先に、失敗の型を知っておくほうが投資対効果は上がります。事務所の導入でつまずくのは、たいてい次の4つです。

  1. 顧問先に新しい操作を強制する:導入の成否を握っているのは事務所ではなく顧問先側です。相手の手間が1つでも増える設計は定着しません
  2. 全顧問先に一斉展開する:例外が同時多発して現場が手動運用に戻ります。まず10〜20件で回してから広げます
  3. ルールを決めずにツールだけ入れる:「何をもって不足とするか」が曖昧なままだと、結局は人が全件を目視することになります
  4. 担当者1名に任せきりにする:その人が異動・退職すると運用が止まります。設定を触れる人を最低2名確保します

特に1つ目は、支払う金額の大小に関係なく結果を左右します。月980円のサービスでも、数百万円かけて開発した仕組みでも、顧問先が動かなければ結果は同じです。

費用の目安と、どれを選ぶべきか

業務アプリ構築サービス「kintone」のロゴ

出典: kintone 公式サイト

4つの手段を「実際にいくら払い、どこまで自動化されるか」の視点で並べ直します。

手段

費用

自動化される範囲

適した事務所

書類回収サービス

月980〜7,980円

依頼・受領・進捗可視化・催促

全事務所。まずここから

AI-OCR

月4万〜20万円+従量

届いた紙・PDFのデータ化

紙の証憑が多い会計事務所

kintone等で自作

月1万〜1.8万円(10名)+構築工数

進捗管理の器のみ(中身は自作)

IT担当がいる事務所

RPA

無料〜(製品・ライセンス数で大きく異なる)

決まった画面操作の反復

使用ソフトが固定されている事務所

既存の環境とつなぐ仕組みの開発

開発費+クラウド・API等の利用料(当社の場合: 既存システムの改修100万円〜/PoC 300万円〜/本開発は個別見積、税別)

依頼〜催促〜仕分け〜不備チェック〜登録〜報告まで(範囲は設計しだい)

職員15名以上・複数のソフトをまたぐ・届いたあとの処理が重い事務所

判断の順序はシンプルです。

  1. まず月980円のサービスを試す。 無料期間があるものを選び、催促の自動化と進捗の可視化だけで足りるかを確かめます
  2. それで「催促は楽になったが、届いたあとの処理がまだ重い」と感じたら、次を検討する
  3. 職員15名以上で、会計ソフトへの登録や不備チェックまで含めて仕組みにしたいなら、既存の環境とつなぐ開発を検討する

1を飛ばして3に行く必要はありません。 月1,000円で解決するなら、それが正解です。

AIで自分で進められる部分と、会社に頼む部分

開発を検討する段階になっても、すべてを外に頼む必要はありません。ChatGPTやClaudeなどの生成AIを使えば、事務所の中でも次のことはかなり進められます。

  • 顧問先ごとの必要書類リストや、段階的に表現を変えた催促文面の下書き
  • 「何をもって不足とするか」の判定ルールを文章や表に書き出す作業
  • Excelの提出管理表の整理や、ファイル名の付け替え・簡単な集計を自動化する小さなスクリプトの試作

一方で次の部分は、事務所ごとの事情に左右され、間違えたときの影響も大きいため、外部に頼む価値が出やすいところです。

  • 既存環境との接続: 今の会計ソフトや申請システムに、公開API・CSV取込・画面操作のどれでつなぐか。ソフトの機能と利用規約の確認
  • 権限とデータの扱い: 顧問先の通帳や決算資料を、誰がどこまで見られるか。他の顧問先の資料が混ざらない設計と、その確認
  • 例外の扱い: 読み取れない画像、形式の違う資料、期限を過ぎても届かない顧問先を、どこで人に戻すか
  • 正しさの確認と変更: 不備の判定が正しく動いているかの検証と、会計ソフトの仕様変更や顧問先の増加に合わせた修正を誰が担うか

当社の受託開発では、今使っているソフトを残したまま、資料の受け取りから不備チェック、会計ソフトへの登録までをつなぐ仕組みの開発や、既存システムの改修に対応できます。事務所の中でAIを使って進める部分と、当社が引き受ける部分を分けて進めることもできます。公開価格は既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積です(税別。クラウド・外部API等の実費は別)。

金額を先に出しているのは、比較検討の段階で判断材料をそろえていただくためです。前章の試算を自事務所の職員数・顧問先数に当てはめて、割に合わないと判断されたならそれで構いません。前章のとおり、5名規模なら月額のサービスを勧めます。

[無料相談]今の資料回収の流れから、自動化する範囲と費用の目安を相談する

初回相談は無料・30分(オンライン、Google Meet)。要件が決まっていなくても大丈夫です。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

補助金について

デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の通常枠は、次の交付申請締切が2026年10月30日(金)17:00です。交付決定日は2026年12月10日(木)予定、事業実施期間と実績報告期限は2027年5月31日(月)17:00予定です(2026年10月9日時点で事務局が公表している日程)。

通常枠の補助額は1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下、補助率は1/2以内(一定要件を満たす場合は2/3以内)。クラウド利用料は最大2年分が対象になります。

ただし注意点が2つあります。第一に、補助対象はIT導入支援事業者が事前に登録したITツールに限られます。事務所専用に一から開発する仕組みはこの条件に当てはまらないことが多いため、補助金は書類回収サービスやAI-OCRなど、登録済みのツールを導入する場面で検討するのが現実的です。第二に、入金は事業完了後です。交付決定 → 事業実施 → 実績報告 → 確定検査 → 入金という順序になるため、費用は一度事務所が全額立て替える前提で資金繰りを組んでください。10月30日締切で申請した場合、交付決定が12月10日予定、実績報告の期限が2027年5月31日予定で、そのあと確定検査を経て入金となります。申請から入金までは、導入をすぐ終わらせても半年前後、期限いっぱいまで使うならそれ以上を見込んでください(入金時期は実績報告後に事務局から個別に案内されます)。最新の条件は必ず補助金事務局の公式サイトで確認してください。

当社が公開できる実績と、士業事務所向けの構成例

調剤薬局のバックヤードで処方箋などの書類がトレーに仕分けされている様子

先にお断りしておくと、当社には士業事務所の資料回収を自動化した、公開できる実績はありません。ここでは、当社が公開範囲で説明できる実績と、それを踏まえた士業事務所向けの構成例(説明用)を分けて書きます。

公開できる実績

  • 通信事業: 数万件規模の請求情報の取り込み・集計と、その確認画面(匿名)。大量のデータを取り込んで集計し、人が確認する画面を用意するという点で、顧問先から届く資料を取り込んで確認する流れと共通する論点があります
  • 薬局: 複数店舗・数千人分の記録の管理と、権限・確認工程。誰がどの記録を見られるか、誰が確認してから確定させるかを設計した点が、顧問先ごとに資料を分けて扱う士業事務所の要件と近い部分です

どちらも士業事務所の案件ではないため、同じ効果が出るとは言えません。共通しているのは「大量のデータを取り込む」「人が確認してから確定させる」「見られる範囲を分ける」という設計上の論点です。

士業事務所向けの構成例(説明用。実案件ではありません)

  1. 顧問先ごとの必要書類リストと期限を管理表に持ち、決められた日に依頼と催促を送る
  2. アップロードやメール添付で届いた資料を取り込み、顧問先・月・書類の種類でファイル名を付けて格納する
  3. 「通帳の月が抜けている」「必須項目が空欄」といったルールで不足を判定し、不足がある顧問先だけを一覧にする
  4. 会計ソフトへの登録データを作り、担当者が内容を確認して承認してから登録する
  5. いつ・どの資料を・どう処理したかの記録を残し、所長と担当者に進捗を送る

士業事務所の資料回収は、「複数の相手から形式のばらばらな資料が届き、決まったルールで確認し、基幹となるシステムに登録し、記録を残す」という形をしています。この形の業務であれば、上の構成を出発点に、事務所の書類と既存のソフトに合わせて設計を詰めていくことになります。

なお、会計ソフトへの転記工程だけを切り出して考えたい場合はデータ転記の自動化、税理士・会計事務所全般のAI活用の全体像は税理士・会計事務所のAI活用を参照してください。

開発を依頼するときの進め方

カレンダーと付箋で段階的な導入スケジュールを組み立てているイメージ

当社の受託開発に相談する場合の進め方です。期間は対象の範囲と既存のソフトによって変わるため、ここでは段階と、事務所側にお願いすることを示します。

段階

やること

事務所側の作業

初回相談(無料・30分・オンライン)

対象の業務、使っているソフト、困っている作業を伺い、事務所でAIを使って進める部分と頼む部分を切り分けます。依頼の形の候補(既存システムの改修/PoC/本開発/調査のみ)と、公開価格のどこに当たりそうかの目安をお伝えします

今の流れと使っているソフト名をお話しいただく

相談メモ(無料)

確認した現状と課題、進め方の候補と費用の目安、次に必要な資料、未確定の点をまとめてメールでお送りします

内容の確認

資料を受け取ったあとの提案・見積(無料)

書類の種類、顧問先のパターン、既存ソフトとのつなぎ方を確認し、範囲と金額を示します

回収ルールや管理表など、実データを含まない資料の共有

PoC・開発(有償)

範囲と金額に合意してから着手します。回収ルールと不備判定ルールを文書化し、一部の顧問先で試してから広げます

ルールの確認と承認、試験対象の顧問先の選定

事務所側の手間が大きくなりやすいのは、ルールの文書化です。「A社は毎月これとこれ」「B社は社長が電話でないと動かない」といった判断基準は、ベテラン職員の頭の中にしかないことが少なくありません。これを引き出して文書にする工程になります。

逆に言えば、この工程を通ることで属人化していた知識が事務所の資産として残ります。 仮に自動化を見送ったとしても、この文書は残ります。所内の引き継ぎや新人教育にそのまま使えるため、ここだけでも価値があると考えています。この文書化は、生成AIに聞き取りの質問を作らせるなどして、事務所の中で先に進めておくことも可能です。

事前に用意しておくとスムーズなものは3つです。

  1. 顧問先の一覧と、それぞれから毎月回収している書類(顧問先名は伏せたもので構いません)
  2. 直近3ヶ月で発生した「回収が遅れた/不備が出た」ケースのメモ
  3. 現在使っている会計ソフト・申請システム・ファイル共有サービスの名称

初回の相談や問い合わせフォームには、顧問先の実データ、通帳や決算書の画像、ソフトのログイン情報は送らないでください。

事務所内にITに詳しい人がいなくても相談できます。 稼働後の修正や保守を誰が担うか(当社に任せるか、事務所でAIを使いながら続けるか)も、開発範囲と一緒に決めます。

よくある質問

Q1. 顧問先がアカウント登録やツールの操作を嫌がる場合はどうすればよいですか?

これはツール導入でつまずきやすい点です。対策は2つあります。第一に、顧問先側にアカウント登録を求めない方式を選ぶこと。専用のアップロードURLを発行し、そこに置いてもらうだけなら心理的な抵抗はほとんどありません。第二に、従来のメール添付やチャット送信も引き続き受け付け、届いたものを事務所側で自動的に取り込む形にすることです。顧問先の行動を変えさせるのではなく、事務所側が受け止め方を変えるほうが確実に定着します。「全顧問先に新しいやり方を強制する」設計は、定着しにくくなります。

Q2. 顧問先の決算書や通帳のデータを扱いますが、守秘義務や情報漏えいは大丈夫ですか?

仕組みを開発する場合、誰がどの顧問先の資料を見られるか(権限)、顧問先ごとにデータを分けて保存すること、メール送信や会計ソフトへの書き込みを人が承認してから実行すること、誰がいつ何をしたかの記録を残すことを、要件として最初に決めて設計できます。他の顧問先の資料が見えないことは、開発の中で試験して確かめる項目に含めます。外部のAIサービスを使う場合は、入力したデータがどう扱われるか(学習に使われない設定か、保存期間はどうか)も、利用規約と設定で確認が必要です。どのデータをどこまで扱わせるかの範囲は、事務所側で決めていただきます。

Q3. 顧問先ごとに必要書類が違いますが、対応できますか?

対応できます。むしろ顧問先ごとに違うからこそ効果が出ます。人間にとっては「顧問先が増える=覚えることが増える」ですが、システムにとっては顧問先ごとの書類リストを登録しておくだけです。ただし初期構築時に、顧問先ごとの必要書類パターンを整理する必要があります。パターンが極端に多い場合(顧問先1件ごとにすべて違うなど)は、整理と設計に時間がかかり、費用も上がります。最初に「法人月次」「個人事業」「年末調整」など数パターンに集約できないかを検討します。

Q4. 紙や写真で届く資料はどうなりますか?

開封とスキャンは人の作業として残ります。ここは自動化できません。ただし、スキャン以降の工程(読み取り、ファイル名の付与、フォルダ格納、内容チェック、システム登録)は自動化できます。スマートフォンで撮影した写真がチャットで届くケースも、画像として取り込んで同じ流れに乗せられます。ただし、傾いている・影が入っている・解像度が低い画像は読み取り精度が落ちるため、顧問先には撮影のコツを一度案内しておくと安定します。

Q5. 既存の会計ソフトや申請システムは入れ替えが必要ですか?

必ずしも必要ありません。既存のソフトに接続する形で設計できます。会計ソフトを乗り換えると、過去データの移行、職員の再教育、顧問先への説明が発生し、それだけで大きな手間がかかります。そのコストを避けるために、既存の環境をそのまま使う前提で設計します。相談の段階で、現在お使いのソフト名と、外部からデータを出し入れできる機能(公開API、CSVの取込・出力など)があるかを確認し、どの方法でつなぐかを一緒に決める流れです。

Q6. 繁忙期の3ヶ月だけ使うことはできますか?

開発して作る仕組みは、期間を区切って借りるものではないため、繁忙期の3ヶ月だけ使うという考え方にはなじみません。ただし、対象を絞って始めることは可能です。たとえば「法人の月次資料の回収だけ」「年末調整書類の回収だけ」から開始し、運用が安定してから確定申告期の資料回収へ広げる進め方です。この場合、最初の開発範囲が小さくなり、職員が慣れる時間も取れます。繁忙期だけの一時的な人手が必要なのであれば、自動化よりもスポットの事務代行のほうが適しています。

Q7. 補助金は使えますか?

デジタル化・AI導入補助金2026の枠組み自体は、業務効率化のためのITツール導入を対象としています。ただし、補助対象はIT導入支援事業者が登録済みのITツールに限られるため、導入したい仕組みが対象になるかは個別の確認が必要です。事務所専用に開発する仕組みは登録済みのITツールに当たらないことが多く、当社の受託開発がこの補助金の対象になるとはお伝えできません。「補助金が使えるはず」という前提で計画を立てるのは避け、自己資金だけでも投資判断が成り立つかを先に確認してください。補助金が使えたら上振れ、という順序で考えるのが安全です。

Q8. 職員の仕事を奪うことになりませんか?

資料回収と催促は、「やりたくないがやらざるを得ない仕事」になりがちです。前述のレックスアドバイザーズの調査で、繁忙期の不満として「事務所の業務非効率」が26%挙がっていたことからも、現場が望んでいるのは仕事量そのものではなく、中身のある仕事に時間を使えることだと考えられます。空いた時間は、顧問先への訪問・提案や、新規の受け入れに振り向けることができます。職員1人あたりの担当顧問先数を増やせるようになるため、採用が難しい状況で顧問先を増やす手段として捉えるほうが実態に近いと思います。

資料回収の自動化を検討するなら

士業事務所の資料回収は、未提出者の抽出・段階的な催促・到着資料の仕分け・ルール化できる不足の検知・システムへの登録まで自動化できます。一方で、戸籍などの役所発行物を取り寄せる行為と、専門的な判断・最終決裁は自動化の対象外です。

まず月980円の書類回収サービスを試してください。それで足りるなら、それが最も合理的です。「催促は楽になったが、届いたあとの処理がまだ重い」と感じたときが、次の段階を検討するタイミングです。職員15名以上・顧問先300件以上の事務所であれば、前章の仮定(工程の7割を自動化)で2年分の削減額が約630万円になり、届いたあとの処理を既存のソフトとつなぐ開発を検討する意味が出てきます。

御社の職員数・顧問先数・回収している書類の種類と、使っている会計ソフトなどを伺い、事務所でAIを使って進める部分と頼む部分を一緒に切り分けます。依頼範囲の候補、進め方、費用の目安は、相談後にお送りする相談メモでお伝えします。規模が足りない場合は、その旨を正直にお伝えします。

[無料相談]今の資料回収の流れから、自動化する範囲と費用の目安を相談する

初回相談は無料・30分(オンライン、Google Meet)。要件が決まっていなくても大丈夫です。相談後に、依頼範囲の候補・進め方・費用の目安をまとめた相談メモをお送りします。

受託開発の公開価格は、既存システムの改修100万円〜、PoC 300万円〜、本開発は個別見積です(すべて税別。クラウド・外部API等の実費は別)。

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この記事の著者

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編集部

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