日本AI基盤モデル開発(現Noetra)とは?SoftBank・NEC・Honda・Sonyの1兆パラメータ級フィジカルAIを徹底解説

この記事のポイント
「日本AI基盤モデル開発」は2026年6月にNoetra(ノエトラ)へ社名変更した国産AI開発会社です。44社出資・NEDO採択・NVIDIA Rubin GPU約2万7,500基の計算基盤まで、2026年4月の報道時点から何が変わったのかを公式情報で整理します。
「株式会社日本AI基盤モデル開発」は、ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーグループを中核に設立された国産AI基盤モデルの開発会社で、2026年6月1日に「Noetra(ノエトラ)株式会社」へ社名を変更しました。 2026年9月時点では44社の出資を受けています。経済産業省・NEDOの支援事業(プロジェクト名「FRONTia」)に採択されており、2030年度の「実世界ネイティブAI(フィジカルAI)」完成を目標に研究開発を進めています。
2026年4月に「ソフトバンクなど4社が1兆パラメータの国産AI新会社を設立」と報じられたときの情報は、その後の公式発表で大きく変わりました。出資企業は9社から44社になり、未公表だった代表者も決まり、NEDOの公募も採択済みです。
この記事でわかること
- 「日本AI基盤モデル開発」と「Noetra」の関係と、社名変更までの経緯
- 2026年4月の報道時点と現在の公式情報の違い(ビフォー/アフター比較表)
- 「1兆パラメータ」「フィジカルAI」「オムニモーダル」の意味
- 経産省支援の「3,873億円」「1兆円」の正確な意味
- 2026〜2030年度のロードマップと、学習済みモデル(重み)の公開方針
- 既存の国産LLM(Sarashina・tsuzumi・PLaMo・LLM-jp)との違い
- 自社がいつ・どう関われるか、今は何を使えばいいか
想定読者:ニュースで「日本AI基盤モデル開発」「1兆パラメータ」を見て現状を確認したい方、製造業・自動車・ロボティクス企業のAI戦略担当者、国産AIに関心のあるエンジニアや投資家の方。
Noetraの会社概要や44社連合の詳しい解説は、別記事のNoetra(ノエトラ)とはにまとめています。この記事では、旧社名で検索した方向けに「当初どう報じられ、今どうなっているか」を中心に整理します。

日本AI基盤モデル開発は現在のNoetra株式会社

出典: Noetra株式会社 公式サイト
日本AI基盤モデル開発は、現在のNoetra株式会社の旧社名です。 事業の中身は変わっておらず、国産のマルチモーダル基盤モデルを段階的に開発し、最終的にロボットや機械を動かすフィジカルAIの基盤モデルをつくることが目的です。
何の会社で、何をつくり、いつ使えるようになるのかを整理すると次のようになります。
- 何の会社か:ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーグループの4社を中核に、44社が出資する国産AI基盤モデルの開発会社。代表取締役社長は、SB Intuitionsで国産LLM「Sarashina」の開発を率いた丹波廣寅氏。
- 何をつくるか:2026年度から日本語に強い推論基盤モデルを順次構築し、2028年度に言語・画像・動画・音声を扱うオムニモーダル基盤モデル、2030年度に物理世界を理解する「実世界ネイティブAI」を開発する計画。
- いつ使えるか:現時点では一般向けの製品・API・料金プランはない。学習済みモデルは年度ごとに成果を公開する予定だが、重み(モデル本体)の提供先は「条件を満たす事業者」に限られる(FRONTia公式)。
社名変更までの経緯:2026年1月設立→6月Noetraへ

出典: NVIDIA Newsroom
会社の設立は2026年1月7日で、4月の報道日(4月12〜13日)ではありません。 4月に日経などが報じた時点では登記上の「日本AI基盤モデル開発」という社名が使われていたため、この名前で検索する人が今も多くいます。
日付 | 出来事 | 情報源 |
|---|---|---|
2025年12月 | 経産省が国産AI開発を大規模に支援する方針を表明(5年で約1兆円規模と報道) | 報道 |
2026年1月7日 | 株式会社日本AI基盤モデル開発 設立 | 公式 |
2026年3月24日〜4月22日 | NEDO公募「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」 | NEDO公式 |
2026年4月12〜13日 | 日経などが新会社と「1兆パラメータ」目標を報道(当時は9社出資と報道) | 報道 |
2026年6月1日 | Noetra株式会社へ商号変更 | 公式 |
2026年6月29日 | 公式サイトを jaifom.co.jp から noetra.co.jp へ移転 | 公式 |
2026年6月30日 | NEDO公募でNoetra+産業技術総合研究所(産総研)の提案が採択(応募15件) | NEDO・経産省・産総研 |
2026年7月1日 | 研究開発事業を開始 | 公式 |
2026年7月16日 | 44社出資で本格始動を発表。FRONTia公式サイト公開、NVIDIAとの計算基盤計画も発表 | ソフトバンク・Noetra・NVIDIA |
2026年8〜9月は、モデル公開や追加出資といった新しい公式発表は確認できていません。次に大きな発表がありそうなのは、2026年度末に予定されている最初のモデル公開です。
2026年4月の報道時点と現在の違い
4月の報道をもとに書かれた解説記事の多くは、現在の公式情報と食い違っています。 特に大きな変更点は、出資企業数、代表者、NEDO採択、計算基盤、公開方針の5つです。
項目 | 2026年4月の報道時点 | 現在(2026年9月・公式) |
|---|---|---|
社名 | 株式会社日本AI基盤モデル開発 | Noetra株式会社(英文 Noetra Corp.) |
出資企業 | 中核4社+日本製鉄・神戸製鋼所・3メガバンクの計9社と報道 | 合計44社(出資比率・資本金は非公表) |
代表者 | 未公表(ソフトバンク幹部が就任見込みと報道) | 代表取締役社長 丹波廣寅氏(元SB Intuitions代表) |
NEDO公募 | 応募見込み・採否は未定 | 2026年6月30日に採択(産総研と共同) |
支援額 | 「最大1兆円」などの報道が中心 | 2026年度は約3,873億円(報道)。5年総額は確約なし |
計算基盤 | ソフトバンクの既存データセンター活用と報道 | NVIDIA Rubin GPU 約2万7,500基の新基盤を計画(2028年6月稼働予定) |
プロジェクト名 | なし | FRONTia(公式サイト frontia-ai.go.jp) |
公開方針 | 出資企業の製品に組み込む形が中心と報道 | 年度ごとに成果公開。条件を満たす国内事業者へ重みを提供 |
PFNの立場 | 開発協力と報道 | 出資企業。技術者も開発に参加 |
「日本版ChatGPTではない」という4月当時の説明も、現在の公式ロードマップと比べると言い過ぎです。最初の段階(2026年度〜)でつくるのは、日本語理解・論理推論・指示遂行に強い「推論基盤モデル」で、公式には「AIエージェントや言語処理の中核」と説明されています。つまり、言語モデルから始め、段階的にフィジカルAIへ広げていく計画です。
Noetraの会社概要と出資44社
Noetraは、ソニーグループ・ソフトバンク・NEC・ホンダの4社を中核に、製造業・金融・インフラなど計44社が出資する会社です。 出資比率や資本金は公表されていません。
項目 | 内容 |
|---|---|
正式社名 | Noetra株式会社(旧:株式会社日本AI基盤モデル開発) |
設立 | 2026年1月7日 |
商号変更 | 2026年6月1日 |
本店所在地 | 東京都渋谷区渋谷2-24-12 |
代表者 | 代表取締役社長 丹波廣寅氏 |
事業内容 | 国産マルチモーダル基盤モデルの研究開発、開発に使うインフラの検討 |
中核出資企業 | ソニーグループ、ソフトバンク、NEC(日本電気)、ホンダ(本田技研工業) |
出資企業数 | 44社(2026年7月16日発表) |
資本金・出資比率 | 非公表 |
公式に名前が出ている主な出資企業42社は以下のとおりです(五十音順、残り2社は非公表)。
旭化成、SGホールディングス、オークマ、沖電気工業、オムロン、鹿島建設、川崎重工業、KDDI総合研究所、神戸製鋼所、Sakana AI、島津製作所、シャープ、JERA、JFEスチール、住友生命保険、ソニーグループ、ソフトバンク、第一三共、ダイキン工業、大和ハウス工業、DMG森精機、東京エレクトロン、東芝、TOPPANホールディングス、日本製鉄、日本生命保険、日本電気、日立製作所、ファナック、富士通、Preferred Networks、本田技研工業、松尾研究所、みずほ銀行、三井住友海上火災保険、三井住友銀行、三菱電機、三菱UFJ銀行、村田製作所、安川電機、ヤマザキマザック、楽天グループ
工作機械(オークマ、DMG森精機、ヤマザキマザック、ファナック)、ロボット(安川電機、川崎重工業)、電機・半導体(日立、東芝、三菱電機、東京エレクトロン、村田製作所)など、フィジカルAIの実装先になりうる企業が多く参加しています。一方、NTTとトヨタ自動車は公表リストに入っていません。NTTは自社で国産LLM「tsuzumi」を開発しています。
中核4社のトップが語った狙い
公式リリースに載った中核4社のコメントから、各社がこのプロジェクトに何を期待しているかがわかります。
企業 | コメントの要旨 |
|---|---|
ソニーグループ(十時裕樹社長CEO) | エンタテインメント領域に加え、フィジカルAIで重要になる半導体領域での活用 |
ソフトバンク(宮川潤一社長CEO) | 日本の産業データを国内で安全に生かす環境づくり。AIインフラの提供で後押し |
NEC(森田隆之社長CEO) | フルスクラッチ開発から実装・運用までの知見で貢献。基盤モデルをもとに特化型AIモデルを開発 |
ホンダ(三部敏宏社長) | モビリティ・ロボティクス領域での社会実装 |
研究開発は、中核4社と産総研、Preferred Networks(PFN)などから参加する技術者が中心です。報道によると、PFNの岡野原大輔CEOが共同研究開発責任者としてモデル開発を率いています。PFNのモデルについてはPLaMo 3.0 Primeとはで詳しく解説しています。
「1兆パラメータ」「フィジカルAI」とは何か
「1兆パラメータ」は完成したモデルの仕様ではなく、目標とする規模です。 NVIDIAの公式発表には、Noetra向け計算基盤で「1兆パラメータ規模のモデル学習」を行うと書かれていますが、ソフトバンクとNoetraの公式リリース本文には「1兆パラメータ」の記載はありません。Dense型かMoE型(複数の専門家モデルを切り替える方式)かといった設計も公表されていません。

関連する用語は次のとおりです。
用語 | 意味 |
|---|---|
パラメータ | AIモデル内部の調整値の数。モデル規模の目安で、一般的に多いほど複雑な処理ができるが、学習コストも大きくなる |
推論基盤モデル | 日本語理解・論理推論・指示遂行を担う、AIエージェントや言語処理の中核になるモデル(2026年度〜) |
オムニモーダル | 言語・画像・動画・音声をまとめて処理できること(2028年度の目標) |
フィジカルAI | 現実の物理空間を理解し、ロボットや機械の判断・動作に使えるAI |
実世界ネイティブAI | 空間認識など物理特性を理解し、実世界で使うことを前提にしたAI(2030年度の目標) |
ウェイト・アベイラブル | 学習済みモデルの重み(本体)を提供すること。ただし誰でも自由に使えるオープンソースとは限らない |
生成AIとフィジカルAIの違い
比較ポイント | 対話型の生成AI(ChatGPTなど) | フィジカルAI |
|---|---|---|
動く場所 | 画面の中(デジタル空間) | 工場・道路・倉庫など現実の空間 |
主な入力 | テキスト・画像 | 画像・動画・音声・センサー情報・物理特性 |
主な出力 | 文章・画像・コード | ロボットや機械の動作・判断 |
必要な能力 | 言語理解・生成 | 空間認識、物理法則の理解、リアルタイム判断 |
生成AI全般の仕組みは生成AIとは、自律的に動くAIの考え方はAIエージェントとはで整理しています。
政府支援「3,873億円」「1兆円」の正確な意味

出典: FRONTia 公式サイト
確定しているのは初年度の支援だけで、「5年で1兆円」は保証された金額ではありません。 報道で出てくる数字は意味がそれぞれ違うため、区別して読む必要があります。
数字 | 正確な意味 | 確認状況 |
|---|---|---|
約3,873億円 | 2026年度(初年度)の支援額 | 複数の大手メディアが報道。経産省発表本文での直接確認はできていない |
約1兆円 | 2030年度までの5年間の総額規模の見通し | 報道ベース。NEDO・経産省の採択資料に総額を確約する記載はない |
3,834億円 | 一部の解説で見られる数字 | 公式資料で確認できず。3,873億円との混同の可能性がある |
ソフトバンクのAI計算基盤投資 | ソフトバンク自身の設備投資 | Noetraへの政府支援とは別勘定 |
NEDO事業の条件は次のとおりです(公式)。
- 事業名:AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業
- 採択テーマ:実世界ネイティブに資するフィジカルAI基盤技術の研究開発
- 実施予定先:Noetra株式会社/国立研究開発法人 産業技術総合研究所
- 事業期間:2026年度〜2030年度
- 契約:まず2026・2027年度分のみ。2027年度以降は毎年度のステージゲート審査で継続を判断
成果が出なければ、途中で支援が縮小・打ち切りになる可能性がある仕組みです。役割分担は、Noetraが国内のモデル開発者・利用企業のニーズを踏まえて国際競争力のあるモデルを開発・提供し、産総研が国内外の研究機関と連携してより先の技術開発を担う形です(経産省発表)。
国の支援制度全体を知りたい方は、AI補助金・支援制度の解説も参考になります。
2026〜2030年度のロードマップと計算基盤
開発は「推論基盤モデル→オムニモーダル→実世界ネイティブAI」の3段階で進みます。 大規模な専用計算基盤が動き出すのは2028年6月の予定で、それまでは国内事業者が持つ既存のAI計算基盤を使って開発します。
時期 | 内容 | 情報源 |
|---|---|---|
2026年度〜 | 日本語理解・論理推論・指示遂行に強い推論基盤モデルを順次構築 | 公式 |
2026年度末ごろ | テキスト+一部マルチモーダルのモデルを公開 | 社長インタビュー(AI Watch) |
2027年4月 | Rubin GPU約2万7,500基のAI計算基盤の構築を開始 | 公式 |
2027年度末ごろ | 対応モダリティを強化したモデルを公開 | 社長インタビュー(AI Watch) |
2028年6月 | 同計算基盤が稼働開始 | 公式 |
2028年度 | 言語・画像・動画・音声を統合的に扱うオムニモーダル基盤モデル | 公式 |
2030年度 | 物理特性を理解する「実世界ネイティブAI」 | 公式 |

NVIDIAの発表によると、計算基盤はRubin GPU 2万7,500基とVera CPU 1万3,750基で構成され、電力規模は140MWです。NVIDIAのAIインフラ設計(DSXプラットフォーム、Spectrum-X Ethernet、BlueField DPU)を採用する計画です。関連ソフトウェアとしてNemotron、Cosmos、Isaac GR00T、NeMoにも言及しています。計算基盤の設置場所は公式には発表されていません。
NVIDIAのフィジカルAI向け基盤モデルについては、NVIDIA Cosmos 3とはで解説しています。

出典: NVIDIA Newsroom
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できること・強み:何が期待されているのか
最大の強みは、日本の産業データを国内で安全に学習・活用できる基盤を、多くの業種が参加する形でつくる点です。 海外の汎用AIに工場の稼働ログや品質データを預けることに抵抗がある企業にとって、選択肢が増えることになります。
期待されている主なポイントは次のとおりです。
- データ主権:ソフトバンクの宮川社長は「日本の産業や企業が持つデータは競争力の源泉。その価値を日本国内で安全に生かせる環境を整備」とコメントしています。
- 幅広い実装先:工作機械・ロボット・自動車・電機・素材・建設・金融・保険と、出資企業自体がモデルの利用先になりえます。
- 国内エコシステムへの重み提供:学習済みモデルの重みを、国内のモデル開発者や利用企業へ提供する計画です(Noetra公式)。
- 国産LLM開発の経験者が主導:SarashinaやPLaMoなど、国産LLMの開発経験を持つ人材が中心になっています。
- 信頼性の重視:FRONTiaは「Foundation for Real-world Omni-Native Trustworthy Intelligence and Alignment」の略で、信頼性とアラインメントを名称に掲げています。NEDOの採択審査委員には、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)の村上明子所長も含まれています。
業界別に期待される影響
業界 | 関係する主な出資企業 | 期待される活用 |
|---|---|---|
自動車・モビリティ | ホンダ | 自動運転、モビリティ向けロボティクス |
工作機械・ロボット | ファナック、安川電機、DMG森精機、オークマ、ヤマザキマザック、川崎重工業 | ロボット制御、加工条件の最適化、現場作業の自律化 |
エレクトロニクス・半導体 | ソニーグループ、東京エレクトロン、村田製作所 | 半導体製造、センサー・映像処理、エンタテインメント |
素材・重工 | 日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所、旭化成 | プロセス制御、品質予測、設備保全 |
建設・物流 | 鹿島建設、大和ハウス工業、SGホールディングス | 建設現場や物流の自動化 |
金融・保険 | 3メガバンク、日本生命、住友生命、三井住友海上 | 業務での言語モデル活用、フィジカルAIの社会実装に伴うリスク評価 |
業界ごとのAI活用の現状は、製造業のAI活用、自動車業界のAI活用、金融業界のAI活用で詳しく扱っています。
弱み・課題:成功が約束されたプロジェクトではない
継続的な国の支援も、2030年度の目標達成も、確約されていません。 丹波社長は日経クロステックのインタビューで「一度失敗したら、もう後がない」と語っており、関係者自身も難しさを認識しています。
- 毎年度のステージゲート審査:成果が出なければ、支援の縮小や打ち切りがありえます。
- 計算資源が揃うのは2028年6月:それまでは既存の国内計算資源で開発するため、海外勢との規模差を埋めるのは簡単ではありません。
- 米中との開発スピードの差:OpenAI・Google・Anthropic、中国勢は、すでに大規模なモデルを出し続けています。
- データ集約の難しさ:44社の現場データをどう安全に集め、形式を揃えて学習に使うかは、制度面でも技術面でも課題です。
- 意思決定の複雑さ:出資企業が多いほど、利害の調整に時間がかかる可能性があります。
- 官民プロジェクトの過去の教訓:国主導の大型IT・AIプロジェクトが期待どおりに進まなかった例は過去にもあります。
また、「国産だから自動的に安全」というわけではありません。重みを提供した後の利用条件、ガバナンス、学習データの扱いはまだ公表されていません。生成AIのリスク管理全般は生成AIのセキュリティで整理しています。
料金・提供状況:今は使えるのか
2026年9月時点で、Noetraが一般ユーザーや企業向けに提供している製品・API・アプリはなく、料金も発表されていません。 現在は研究開発フェーズです。
項目 | 現状(2026年9月時点) |
|---|---|
一般向けアプリ・チャット | なし |
API提供 | 未発表 |
料金プラン | 未発表 |
モデル公開 | 年度ごとに成果公開の予定(FRONTia公式)。最初の公開は2026年度末ごろの見込み(社長発言) |
重みの提供先 | 条件を満たす事業者に限定(FRONTia公式)。条件は未公表 |
ライセンス | 未公表。誰でも商用利用できるオープンソースになるとは限らない |
株式 | Noetra自体は非上場 |
投資の観点では、出資企業の多くは上場していますが、各社の株価はNoetra単体の価値を反映するものではありません。出資比率も公表されていないため、「関連銘柄」として判断するには材料が不足しています。
既存の国産LLMとの違い
Noetraは、既存の国産LLMを置き換えるものではありません。国の支援を受けて、フィジカルAIまでを見据えた大規模基盤モデルを多くの業種でつくるプロジェクトです。 一方、既存の国産LLMは今すぐ業務で使えるという点で明確に先行しています。
モデル/プロジェクト | 開発元 | 位置づけ | 規模(公表値) | 今使えるか |
|---|---|---|---|---|
Noetra(FRONTia) | Noetra+産総研 | 推論基盤→オムニモーダル→フィジカルAI | 1兆パラメータ級が目標 | 使えない(2026年度末以降に段階公開予定) |
Sarashina3 | SB Intuitions | 日本語に強い業務向けLLM | 5モデル構成 | 使える |
Sarashina2-8x70B | SB Intuitions | 大規模な日本語LLM(MoE) | 総パラメータ約4,600億 | 使える |
tsuzumi 2 | NTT | 軽量で導入しやすい日本語LLM | 約300億 | 使える(2025年10月提供開始) |
PLaMo 3.0 Prime | Preferred Networks | 長文脈に対応した日本語LLM | 公表値を確認できず | 使える(2026年6月リリース) |
LLM-jp-4 | 国立情報学研究所 | オープンな国産LLM(Apache 2.0) | 約330億 | 使える |

出典: NTT ニュースリリース
各モデルの詳細は、Sarashina3とは、tsuzumi 2とは、LLM-jp-4とはを参照してください。国産LLMを横断して比較したい方には国産LLM 7モデル比較がおすすめです。
海外のフィジカルAIでは、NVIDIA(Cosmos・Isaac GR00T)やGoogle DeepMind(Gemini Robotics)が先行しています。Noetraは後から追う立場で、最先端の性能で競うというより、日本の産業データを国内で扱えることを強みにしています。
今どう動くべきか:目的別の選び方
2026年時点でAIを業務に使いたいなら、Noetraの完成を待つ必要はありません。 目的に応じて、既存のツールを使いながらNoetraの公開計画を追うのが現実的です。
目的 | 今の選択肢 | Noetraとの関わり方 |
|---|---|---|
文章作成・要約・調べものに今すぐAIを使いたい | 待つ必要はない | |
社内データを国内環境で扱いたい | Sarashina、tsuzumi 2、PLaMoなどの国産LLM | 2026年度末以降の公開モデルを比較候補に加える |
自社でモデルを追加学習・組み込みしたい | LLM-jp-4などのオープンモデル | 重み提供の条件が公表されたら確認する |
ロボット・機械にAIを組み込みたい | NVIDIA Cosmos・Isaacなど海外のフィジカルAI基盤 | 2028年度以降のオムニモーダル/2030年度の実世界ネイティブAIを追う |
政策・業界動向を把握したい | 経産省・NEDO・FRONTiaの公式発表 | 年度ごとのステージゲート審査の結果を確認する |
こんな人・企業におすすめ/おすすめしない人
動向を追うことをおすすめする人・企業
- 製造業・ロボット・工作機械メーカーのAI戦略担当者:出資企業の顔ぶれから見て、フィジカルAIの主な実装先になる可能性が高い
- データを海外に出したくない国内企業:国内で学習・運用できる基盤モデルの選択肢が増える
- 国産AIを開発・活用する事業者:学習済み重みの提供対象になりうる。条件の公表を確認したい
- 国産AI開発に関わりたいエンジニア:国産LLMの開発経験者が集まる国家プロジェクトとして注目度が高い
- 政策・産業動向を追う人:日本のAI産業政策の中心的な事例
今は急いで追わなくていい人
- 今日からAIツールを使いたい個人・中小企業:製品がまだないため、既存の生成AIツールを使うのが現実的
- 短期のリターンを狙う投資家:非上場で出資比率も非公表。成果は数年単位で、途中で支援が縮小するリスクもある
- すぐにロボットへ組み込めるモデルが必要な開発者:実世界ネイティブAIの目標は2030年度。当面は海外のフィジカルAI基盤が現実的
よくある質問(FAQ)
Q1. 「日本AI基盤モデル開発」という会社はもうないのですか?
会社は同じで、社名が変わっただけです。2026年6月1日に「Noetra株式会社」へ商号を変更しました。旧サイト(jaifom.co.jp)でも社名変更が告知されていて、新しい公式サイトは noetra.co.jp です。NEDOの資料にも「旧名:株式会社日本AI基盤モデル開発」と記載されています。
Q2. 「Noetra」と「FRONTia」は何が違いますか?
Noetraは会社名で、FRONTiaはNoetraと産総研が共同で進めるNEDO事業のプロジェクト名です。FRONTiaには「技術の最前線(FRONT)に立ち、人と共にある世界(ia)を拓く」という意味が込められていて、専用の公式サイト(frontia-ai.go.jp)もあります。
Q3. ソフトバンクの子会社なのですか?
公式には中核4社のひとつとしてソフトバンクの名前が挙がっていますが、出資比率は非公表です。「ソフトバンクの子会社」と断定できる公式情報はありません。社長の丹波廣寅氏はソフトバンク出身ですが、会社は44社が出資する体制です。
Q4. 海外の企業や個人も、公開されたモデルを使えますか?
現時点ではわかりません。FRONTia公式サイトは、学習済み重みの提供先を「条件を満たす事業者」に限るとしています。Noetraのリリースも「国内のモデル開発者や利活用事業者」への提供を想定しているため、海外の事業者や個人が自由に使える保証はありません。
Q5. NECやソフトバンクは海外AI企業とも組んでいますが、矛盾しませんか?
出資企業は、海外AIの活用と国産基盤モデルの開発を並行して進めています。たとえばNECはAnthropicと提携しています(Anthropic×NECの提携)。今すぐ使える海外の最先端モデルを使いつつ、データ主権を確保するために国産基盤も育てる、という二本立ての戦略と考えられます。
Q6. 政府の生成AI「源内」とは関係がありますか?
別の取り組みです。「源内」はデジタル庁が行政職員向けに提供する生成AI利用環境です。Noetraは経産省・NEDOの支援で基盤モデルそのものを開発するプロジェクトです。源内については源内(GENAI)とはで解説しています。
まとめ
- 日本AI基盤モデル開発=現在のNoetra株式会社。 2026年1月7日に設立され、6月1日に社名を変更した
- 2026年4月の報道時点から、出資企業は9社から44社に、代表者は丹波廣寅氏に決まり、NEDO公募は採択済みと大きく変わった
- 開発は、2026年度〜の推論基盤モデル、2028年度のオムニモーダル基盤モデル、2030年度の実世界ネイティブAIという3段階
- 「1兆パラメータ」はNVIDIA発表などに出てくる目標規模で、完成した仕様ではない
- 支援額は2026年度の約3,873億円(報道)で、5年で1兆円は確約されていない。毎年度のステージゲート審査で継続が判断される
- 現時点で製品・API・料金はない。 重みの提供は条件を満たす事業者に限られる予定
会社の全体像や44社連合の詳細はNoetra(ノエトラ)とはで、今すぐ使える国産AIは国産LLM 7モデル比較で確認できます。
主な参照元(公式):Noetra公式サイト/ソフトバンク プレスリリース(2026年7月16日)/NEDO 実施体制の決定/FRONTia公式サイト/NVIDIA Newsroom(2026年7月16日)/産総研プレスリリース
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AI革命
編集部
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