AI活用事例2026年7月更新

水道事業のAI活用事例12選|漏水検知・管路劣化予測・浄水場最適化で老朽インフラと人手不足に挑む【2026年最新】

公開日: 2026/07/17
水道事業のAI活用事例12選|漏水検知・管路劣化予測・浄水場最適化で老朽インフラと人手不足に挑む【2026年最新】

この記事のポイント

水道事業のAI活用を漏水検知・管路劣化予測・浄水場運転最適化・スマートメーターの4領域で整理。豊田市・四日市市・掛川市など自治体の定量事例、主要ツール比較、導入手順・補助制度・注意点まで公式情報ベースで解説します。

水道事業のAI活用は、衛星・センサーで漏水を早期発見し、管路の破損確率をAIで予測し、浄水場の薬品注入を自動最適化することで、老朽インフラ・職員減少・料金収入縮小という「三重苦」に対応する取り組みです。すでに豊田市・四日市市・掛川市など多くの自治体で、調査距離を約1/10に、更新事業費を約半分に圧縮するといった定量成果が出ています。

この記事では、次のことがわかります。

  • 水道事業でAIが使われている4つの主要領域と業務別の活用一覧
  • 豊田市・四日市市・朝来市・掛川市・東京都など自治体の導入事例と定量効果
  • 衛星漏水検知・AI管路診断の主要ツール(ASTERRA/天地人/Fracta ほか)の違い
  • 導入コスト・国の補助制度・セキュリティ上の注意点と、向いている事業体の条件

想定読者は、水道事業体の職員・自治体のDX担当者・水道関連企業・インフラ分野への投資や参入を検討している方です。専門知識がなくても全体像をつかめるよう、公式資料と一次情報をもとに整理しました。

なお、生成AIやAIエージェントそのものの基礎から知りたい場合は、生成AIとは何かの解説記事AIエージェントとは何かの解説記事もあわせてご覧ください。

なぜいま水道事業でAI活用が急務なのか

水道事業は老朽インフラの急増・職員の減少・料金収入の縮小が同時進行しており、従来の「人手と経験」に頼る運営が限界に近づいています。AIは、限られた人員で膨大な管路と設備を効率よく維持するための現実的な手段として注目されています。

公表資料からわかる水道インフラの現状は次のとおりです(総務省・国土交通省資料ベース)。

  • 全国に約3,800の水道事業者が存在し、その大半が小規模事業体
  • 水道職員数はピーク比で約37%減少(基準年は資料により幅があるため目安)
  • 管路経年化率(法定耐用年数40年を超えた管路の割合)は令和5年度末で25.4%。法定耐用年数を超えた管路は約19.6万kmに達し、令和3年度22.1%→令和4年度23.6%→令和5年度25.4%と一貫して悪化
  • 一方で管路更新率は年約0.6%台(令和5年度で全国平均0.61%)。このペースでは全更新に約150年かかる計算
  • 漏水・破損事故は年間2万件超発生

さらに社会的な転機となったのが、2025年1月の埼玉県八潮市の道路陥没事故です。1983年に敷設された下水道管の腐食が原因とされ、これを契機に国が下水道管路の全国特別重点調査を開始。インフラ点検AIや衛星診断への注目が全国的に高まりました。政府は衛星・AIによる漏水検知を「5年程度で全国標準化」する方針(2024年表明・日経報道)を掲げており、水道事業のAI活用は「先進的な取り組み」から「標準的な選択肢」へと位置づけが変わりつつあります。

行政面では、2024年4月に水道行政が厚生労働省から国土交通省(水管理・国土保全局)に移管され、上下水道を一体で扱うDX政策が加速しています。老朽化対策の全体像は、インフラ・プラント保全のAI活用事例の記事や、電力・ガスも含めたライフライン全体のAI活用の記事でも扱っています。

水道事業のAI活用領域【業務別の一覧】

水道事業でのAI活用は、大きく次の4領域+バックオフィスに整理できます。まず全体像を業務別の一覧表で確認しましょう。

活用領域

AIの役割

主な効果

代表的なツール・企業

漏水検知

衛星SAR・音響センサーのデータをAIが解析し、漏水疑いエリアを絞り込む

調査距離・期間の大幅短縮、漏水の早期発見

ASTERRA、天地人「宇宙水道局」、日立システムズ、KDDI×wavelogy

管路劣化予測

材質・敷設年・土壌・交通量などから破損確率を100mメッシュで算出

更新の優先順位付け、更新事業費の圧縮

Fracta、NTTビジネスソリューションズ「AIEyes」

浄水場運転最適化

熟練職員の薬品注入ノウハウをAIが学習し、注入率を予測・提案

水質の安定化、技術継承、省人化

日立製作所、安川電機、静岡県(寺谷浄水場)ほか

スマートメーター・自動検針

通信メーターで使用水量を自動収集し、宅内漏水も検知

検針業務の省人化、使用量の見える化、漏水の早期発見

東京都水道局(100万個導入計画)ほか

生成AI・バックオフィス

RAGによる資料検索、問い合わせ対応、図面チェックなど

事務作業の効率化、相談対応の均質化

名古屋市(AWS基盤)、神戸市(ボイスボット・図面チェックAI)、AIデータ社

以下、それぞれの領域を事例とともに詳しく見ていきます。

1. 漏水検知:衛星×AI/音響センサー×AIで「掘らずに」漏水を探す

水道管・バルブ・タンクが並ぶ水道インフラ設備。衛星やセンサーのデータをAIが解析して漏水を検知する

漏水検知は、水道AIのなかで最も導入が進んでいる領域です。衛星や地上センサーが集めたデータをAIが解析し、漏水の可能性が高いエリアを絞り込むことで、従来の人手による全線調査を大幅に効率化します。ポイントは「AIはエリアを絞り込むツールであり、最終的な箇所特定は従来の音聴調査と組み合わせる」という点です。

豊田市上下水道局(愛知県):調査距離を約1/10に

豊田市は、衛星データ(ASTERRA)とAI劣化予測を組み合わせた「水道管の健康診断」を国内で先行導入しました。公表されている効果は、調査対象距離2,210km→257km(約1/10)、調査期間60カ月→7カ月への短縮です。この取り組みは「Digi田甲子園2023」で内閣総理大臣賞を受賞しています。

ASTERRA(イスラエル発):衛星SARで地中の水濡れを検知

ASTERRA(旧Utilis)は、衛星のSAR(合成開口レーダー)観測で地中の水道水由来の水濡れを直接センシングする技術です。日本国内では2023年時点で採用100事業体超・5,000件以上の漏水発見が公表されています(最新値は要確認)。国内展開はジャパン・トゥエンティワンが担い、国土交通省の「上下水道DX技術カタログ」にも掲載されています。

天地人「宇宙水道局」:漏水リスクを100mメッシュでスコア化

JAXA認定ベンチャーの天地人が提供する「天地人コンパス 宇宙水道局」は、衛星データとAIで100mメッシュの漏水リスクをスコア化するクラウド型サービスです。内閣府の実証などで点検費用を最大65%削減・調査期間を最大85%短縮したと報告されています。2025年には大阪府岸和田市(岸和田水道センター)が導入するなど、自治体展開が広がっています。

KDDI×wavelogy×宇都宮市:官民連携でAI漏水判定を実証

宇都宮市上下水道局は、KDDI・wavelogyと連携し、2025年3月1日から水道管の漏水をAIで発見する実証を開始しました。2026年度にはAI漏水判定の確度向上を予定しています。現時点では実証段階であり、成果が確定した段階ではない点に注意が必要です。

日立システムズ:配水設備の故障予兆をAIで早期検知

日立システムズは「CYDEEN水インフラ監視サービス」で神戸市水道局に水圧監視を導入(2023年7月〜)。2025年5月にはAIで配水減圧弁などの故障予兆を早期検知する「AI異常検知サービス」の提供を開始し、漏水可能性の分析にも応用できるとしています。

2. 管路劣化予測:AIが破損確率を算出し、更新の優先順位を決める

AI管路劣化診断サービスFracta(フラクタ)のロゴ

出典:Fracta 公式サイト(fracta.ai)

管路劣化予測は、管路の材質・敷設年・土壌・気象・交通量などのデータから、AIが破損確率を推定する技術です。従来の「敷設から40年(法定耐用年数)で更新」という一律ルールに代わり、「実際に危ない管路から優先して更新する」ことで、限られた予算を最適配分できます。

Fracta(フラクタ・栗田工業グループ):掘削不要のAI診断

Fractaは、米国発で栗田工業グループに属するAI管路診断サービスです。100mメッシュ単位で破損確率を算出し、掘削不要で診断できます。学習データは管路延長約30万km・破損漏水事故60万件超に及び、日本で約60事業体、世界で約150事業体以上に採用されています(2025年前後の公表値)。「余寿命予測」や、紙・不完全な管路台帳の不足項目をAIで補完する機能も提供しています。

四日市市(三重県):10年間の総事業費を約200億円→約100億円に

四日市市はFractaのAI診断により、健全な管路を更新対象から除外し、10年間の総事業費を約200億円から約100億円へ圧縮する見込みと報じられています。「更新すべき管路」を絞り込むことが、そのままコスト削減に直結した好例です。

兵庫県朝来市:市全域の水道を「職員4名」で運営

朝来市は、FractaのAI「管路劣化診断」と「台帳の不足項目補完」を活用し、市全域の水道事業を職員4名で運営していると報じられています(Fracta/日経xTECH報道ベース)。少人数運営を実現した代表事例として、人手不足に悩む中小事業体から注目されています。

掛川市(静岡県)×NTTビジネスソリューションズ:市内全域1,062kmを一括診断

掛川市は2025年11月、NTTビジネスソリューションズの「AIEyes」(Fracta Japan連携)を用いて、市内全域約1,062kmでAI管路劣化診断を実施しました。管路データ・漏水履歴・環境ビッグデータ・他自治体の学習データから破損確率を算出し、更新計画を「耐用年数ベース」から「AI診断ベース」へ転換しています。掛川市水道は2025年で通水104年を迎え、管路の約2割が耐用年数を超過していました。この取り組みは総務省の地域DX事例にも掲載されています。

なお、AIによる劣化予測・予知保全は水道に限らず、製造業のAI活用事例(設備の予知保全)でも同様の考え方が広がっています。

3. 浄水場運転最適化:熟練職員のノウハウをAIが学習する

浄水・水処理プラントの設備。AIが薬品注入率を予測して運転を最適化する

浄水場の運転、とくに凝集剤などの薬品注入量の調整は、これまでベテラン職員の経験と勘に頼る部分が大きい業務でした。AIは、熟練職員の運転実績を学習して最適な注入率を予測・提案することで、技術継承と省人化を同時に狙います。現時点では「完全自動運転」ではなく「運転支援(予測値の提示)」が主流で、職員による監督が前提です。

  • 東京都水道局:熟練職員の薬品注入実績をAIが学習して予測値を表示し、リモート管理可能な浄水場への移行を推進しています(対象浄水場の詳細は非公表)。
  • 大阪市水道局×日立製作所:浄水場運転ノウハウの形式知化と、AIによる運転操作提案・ノウハウ自動蓄積の共同研究を進めています。
  • 静岡県(磐田市・寺谷浄水場):日々のデータ蓄積により、AIで薬剤注入率の決定を自動化し、技術者の経験に依存しない水質管理を目指しています。
  • 安川電機「薬品注入量運転支援システム」:IoTでデータを収集し、ベテラン運転員のノウハウを蓄積したビッグデータからAIが薬品注入量の予測値を算出します。

いずれも共通するのは、「ベテラン退職による技術喪失」という水道業界共通の課題に、AIによるノウハウの形式知化で対応している点です。

4. スマートメーター・自動検針:検針の省人化と宅内漏水の早期発見

水道管に取り付けられた計測メーター。スマートメーターは使用水量を自動収集し宅内漏水も検知する

スマートメーター(通信機能付き水道メーター)は、使用水量を自動で収集し、検針作業を省人化するとともに、使用量の見える化や宅内漏水の早期発見を実現します。

  • 東京都水道局:令和4〜6年度に約13万個を先行導入(通信成功率98%)し、令和7〜10年度の4年間で約100万個を導入する計画です。将来的には2030年代に全戸(約800万件規模)への導入方針を掲げ、2025年3月に「水道スマートメータ実装方針」を策定しました。学校・公園などの公共施設や検針困難地点から優先的に展開します。
  • 会津若松市:スマートメーター導入などにより有収率が約5%上昇し、億単位の費用対効果が報じられています(日経BP報道ベース)。

課題は導入コストです。東京都も「経費は増えても省人化は不可避」と判断しており、費用対効果の見極めが導入の分かれ目になります。また、個人の使用水量データはプライバシー性が高く、外部活用にはルール整備が求められます(国土交通省がデータ利活用ガイドラインを公表)。

5. 生成AI・バックオフィス活用:問い合わせ対応や図面チェックを効率化

2025年以降は、生成AIを事務・相談業務に活用する動きが水道分野でも広がっています。

  • 名古屋市上下水道局:AWS上にセキュアな生成AI基盤を構築。経理・労務・給与に関する419件の質問で実用性を検証し、RAG(社内資料をAIが参照して回答する仕組み)による資料検索・問い合わせ対応の効率化を確認しました。
  • 神戸市水道局:給水相談(月平均110件)にボイスボットを導入し、夜間・閉庁日対応と回答の統一化を実現。さらに富士通系のAIによる水道工事図面チェックも2025年に導入しています。
  • AIデータ社「AI Water on IDX」:点検報告書作成AI・広域経営分析AIなど、水道特化型の生成AIパッケージを2026年3月にリリースしています。

生成AIを自治体・企業で安全に活用する際の考え方は、AIエージェントのセキュリティ対策の記事も参考になります。

衛星漏水検知・AI管路診断の主要サービス比較

「どのサービスを選べばよいか」を判断しやすいよう、代表的なサービスを整理しました。用途や事業体の状況によって適したツールは異なります。

サービス

提供元

方式

主な用途

特徴

ASTERRA

ASTERRA(旧Utilis)/国内はジャパン・トゥエンティワン

衛星SAR

漏水疑いエリアの絞り込み

世界規模の実績、DX技術カタログ掲載

天地人コンパス 宇宙水道局

天地人(JAXA認定ベンチャー)

衛星データ+AI

漏水リスクのスコア化

クラウド型、100mメッシュで可視化

CYDEEN/AI異常検知

日立システムズ

IoTセンサー+AI

水圧監視・故障予兆検知

配水設備の異常検知に強い

Fracta

フラクタ(栗田工業グループ)

AI統計モデル

管路の破損確率予測

掘削不要、台帳補完機能あり

AIEyes

NTTビジネスソリューションズ(Fracta連携)

AI統計モデル

管路劣化診断・更新計画

市全域の一括診断に対応

選び分けの目安:

  • まず漏水が多発している・原因エリアが不明 → 衛星漏水検知(ASTERRA/天地人)でエリアを絞り込む
  • 更新計画を立て直したい・予算を最適配分したい → AI管路劣化予測(Fracta/AIEyes)
  • 配水設備の故障を未然に防ぎたい → IoT+AI異常検知(日立システムズ)

いずれも「AIで優先順位を決め、最終確認は人が行う」点は共通しています。

導入コストと国の補助制度

AI活用の導入ハードルは、大きく「初期コスト」と「データ整備」の2つです。

コスト感の目安(公表事例・一般論ベース):

  • 衛星漏水検知は、管路の全線を人手で音聴調査するより調査コスト・期間を大きく圧縮できるため、費用対効果を出しやすい領域です(豊田市で調査距離約1/10)。
  • AI管路劣化診断は、更新事業費そのものを圧縮できるのが強み(四日市市で10年間200億円→100億円見込み)。診断費用より削減額が上回るケースが報告されています。
  • スマートメーターは初期投資が大きいため、検針困難地点や公共施設から段階的に導入するのが現実的です。

活用できる主な国の支援制度:

  • 国土交通省「上下水道DX推進事業」:自動検針・漏水早期発見・配水最適化などを支援。令和7年度も名取市・福島市・会津美里町など複数自治体が新規採択されています。
  • 「上下水道DX技術カタログ」:衛星漏水検知などのDX技術を国がカタログ化。技術選定の公式リファレンスとして使えます。
  • 水道情報活用システム(水道標準プラットフォーム):標準仕様でデータの相互運用性を確保し、ベンダーロックインを防ぐ仕組み。
  • 八潮事故を受けた「緊急度I」管路の更新支援(全額補助)など、老朽化対策の補助も拡充されています。

中小事業体が補助金を活用してAI・DXを進める考え方は、中小企業のAI自動化・補助金活用の記事も参考になります。導入の入口としては、まずMLITの上下水道DX推進事業や技術カタログを確認するのが近道です。

導入の課題とセキュリティ・規制上の注意点

AI活用には明確な限界と注意点があります。導入前に必ず押さえておきましょう。

AIの限界(正しく理解すべき点):

  • AI診断は「掘らずに確率を推定」する技術であり、破損の確定診断ではありません。最終判断と現場確認は人が行う前提です。
  • 衛星漏水検知は漏水疑いエリアの絞り込み(半径100m程度/メッシュ単位)であり、ピンポイントの箇所特定には従来の音聴調査との組み合わせが必要です。
  • 学習データ(管路台帳・漏水履歴)の電子化・整備が前提です。台帳が紙のまま・不完全な中小事業体は、まずデータ整備から着手する必要があります(FractaのようにAIで台帳を補完するサービスもあります)。
  • 浄水場AIは運転「支援」が主流で、完全自動運転は限定的。熟練職員による監督が前提です。

セキュリティ・コンプライアンス上の注意点:

  • 水道は重要インフラ分野であり、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の重要インフラ行動計画の対象です。制御系(OT)とAI・クラウドの接続には十分なセキュリティ対策が必須です。
  • 自治体では、名古屋市の事例のようにLGWAN・閉域網やセキュアなクラウド環境での生成AI利用が前提になるケースが多くあります。
  • 既存の基幹システム(料金システム・監視制御SCADA)との連携とセキュリティ確保が、導入上の最大課題の一つです。
  • スマートメーターで扱う個人の使用水量データはプライバシー性が高く、外部活用にはルール整備が必要です(MLITがガイドラインを公表)。

自治体全体のAI導入の進め方は、官公庁・自治体のAI活用事例の記事でも解説しています。

水道事業のAI活用が向いている事業体/慎重に進めるべき事業体

自事業体がAI導入を進めやすいかどうかを、次の基準で判断してみてください。

AI活用が向いている事業体:

  • 管路の老朽化率が高く、漏水事故が多発している(衛星漏水検知・AI劣化診断の効果が大きい)
  • 職員・技術者が不足しており、少人数で広域を維持する必要がある(朝来市型の運営を目指せる)
  • 管路台帳がある程度電子化されている、または台帳整備に着手する意思がある
  • 更新計画を立て直したいフェーズにあり、予算の最適配分を求めている
  • 国の上下水道DX推進事業・補助制度を活用する体制を組める

慎重に進めるべき(まず準備が必要な)事業体:

  • 管路台帳が紙のまま・欠損が多く、データ整備の目処が立っていない
  • 制御系(OT)と外部ネットワークのセキュリティ分離の体制が未整備
  • AIを「確定診断ツール」と誤解し、現場確認や人の判断を省こうとしている
  • 導入目的が曖昧で、費用対効果を測る指標を設定していない

向いていない場合でも、多くはまず「管路台帳の電子化」と「小さな漏水スクリーニングの試行」から始めることで、段階的に導入可能です。おすすめの進め方は、①管路台帳の整備 → ②衛星漏水検知でスクリーニング → ③AI劣化診断で更新計画を最適化 → ④スマートメーター・生成AIで省人化、という順序です。

よくある質問(FAQ)

Q. 中小の水道事業体でもAIを導入できますか?
はい。むしろ職員不足が深刻な中小事業体ほど効果が出やすい領域です。兵庫県朝来市はFractaのAI診断を活用し、市全域の水道を職員4名で運営していると報じられています。まずは管路台帳の電子化と、国の上下水道DX推進事業・技術カタログの確認から始めるのが現実的です。

Q. 衛星による漏水検知だけで漏水箇所を特定できますか?
いいえ。衛星漏水検知は「漏水の可能性が高いエリア」を絞り込む技術で、メッシュ単位・半径100m程度の絞り込みが基本です。最終的なピンポイント特定には、従来の音聴調査などとの組み合わせが必要です。それでも調査範囲を大幅に絞れるため、豊田市では調査距離が約1/10になっています。

Q. AIの管路劣化診断は本当にコスト削減につながりますか?
「更新すべき管路」を絞り込めるため、更新事業費の圧縮につながった事例があります。四日市市では10年間の総事業費を約200億円から約100億円へ圧縮する見込みと報じられています。ただし効果は台帳データの整備状況や管路構成によって異なります。

Q. 水道のAI導入で最も注意すべき点は何ですか?
セキュリティとデータ整備です。水道は重要インフラであり、制御系(OT)とAI・クラウドの接続には厳格なセキュリティ対策が必要です。また、AI診断は学習データ(管路台帳・漏水履歴)の電子化が前提となるため、台帳が未整備の場合はそこから着手する必要があります。

Q. 生成AIは水道事業のどんな業務に使えますか?
問い合わせ・相談対応、社内資料の検索(RAG)、点検報告書の作成、図面チェックなどのバックオフィス業務で活用が進んでいます。名古屋市はセキュアな生成AI基盤を構築し、神戸市はボイスボットや図面チェックAIを導入しています。ただし自治体では閉域網やセキュアなクラウド環境での利用が前提になります。

まとめ:水道事業のAI活用は「先進事例」から「標準」へ

水道事業のAI活用は、老朽インフラ・人手不足・料金収入縮小という構造的課題に対応する現実的な手段として、2025〜2026年にかけて急速に一般化しつつあります。

  • 漏水検知:衛星×AIで調査距離を約1/10に(豊田市)
  • 管路劣化予測:AI診断で更新事業費を約半分に(四日市市)、市全域一括診断(掛川市1,062km)
  • 浄水場最適化:熟練職員のノウハウをAIが学習し技術継承と省人化を両立
  • スマートメーター・生成AI:検針省人化と事務効率化(東京都100万個計画、名古屋市・神戸市)

導入の鍵は、管路台帳の電子化・セキュリティ体制・費用対効果の指標設定です。まずは国土交通省の上下水道DX推進事業や技術カタログを入口に、自事業体の課題に合った小さな一歩から始めることをおすすめします。

より広いインフラ・ライフライン分野の動向は、電力・ガス・水道のAI活用事例の記事インフラ・プラント保全のAI活用事例の記事もあわせてご覧ください。

この記事の著者

AI革命

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編集部

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