AIツール2026年8月更新

ガバメントAI「源内」とは?デジタル庁OSSの中身・使い方・導入コスト【2026年8月最新】

公開日: 2026/04/28
更新日: 2026/08/23
ガバメントAI「源内」とは?デジタル庁OSSの中身・使い方・導入コスト【2026年8月最新】

この記事のポイント

ガバメントAI「源内」はデジタル庁が内製した政府職員18万人向けの生成AI利用環境です。AIアプリ40種類以上・選べるLLM・OSS版の導入コストと落とし穴・2026年10月のAIエージェント環境まで、公式情報をもとに2026年8月時点で整理します。

ガバメントAI「源内(げんない)」は、デジタル庁が内製開発した政府職員向けの生成AI利用環境(共通基盤)です。AIモデルそのものではなく、複数のLLMと40種類以上のAIアプリを安全に使わせるための「器」にあたり、2026年8月時点では全府省庁約18万人を対象にした大規模実証が進んでいます。

2026年4月24日には一部がGitHubでOSS公開され、自治体や民間企業も商用利用できる状態になりました。この記事では、源内の中身・使えるモデル・OSS版を導入するときの現実的な工数と落とし穴、そして2026年10月に予定されるAIエージェント環境の追加までを、公式資料をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 源内が「AIモデル」ではなく「利用環境」である理由と、ガバメントAI構想との関係
  • 2026年8月時点で提供されているAIアプリ40種類以上の全体像と、実務での効果
  • チャットで選べるLLM(Claude Opus 4.8まで)と、国産LLMの「公募7件・契約5社・試用3モデル」の正確な整理
  • 2026年10月に入る「AIエージェント利用環境」「源内工房」「源内マーケットプレイス」の中身
  • 自治体・民間がOSS版を動かすときの前提条件・工数・リスク(永続メンテ非保証など)

こんな方におすすめ

  • 自治体・公共部門の情報システム担当者で、生成AI基盤の内製導入を検討している方
  • 行政DXに関わるSIer・受託開発企業・コンサルタント
  • 政府のAI政策(AIソブリンティ、国産LLM調達)の動向を追っているエンタープライズIT担当者
  • 「源内は自分でも使えるのか」を確認したい一般の方

源内の全体像|政府職員18万人向けの「生成AI利用環境」。OSS版は無償だが運用は自前

項目

内容(2026年8月時点)

正式名称

ガバメントAI 源内(げんない)

位置づけ

AIモデルではなく、政府職員が使う生成AI利用環境(共通基盤)

開発主体

デジタル庁。AIアプリは原則デジタル庁職員による内製

稼働基盤

ガバメントクラウド(ISMAP評価済みクラウドサービス)

AIアプリ数

40種類以上(汎用+行政実務用の2層)

選べるLLM

Amazon Nova Lite/Claude Haiku 4.5/Claude Sonnet 4.6/Claude Opus 4.8

対象規模

全府省庁約18万人での大規模実証(2026年5月28日〜)

扱える情報

機密性2情報まで(機密性3相当は対象外)

OSS公開

2026年4月24日。digital-go-jp/genai-webdigital-go-jp/genai-ai-api

ライセンス

コードはMIT中心(一部Amazon Software License)、ドキュメントはCC BY 4.0

費用

政府側は令和7年度補正予算「ガバメントAI整備事業」44.0億円。OSSのソフトウェア利用料は無償(クラウド費・構築運用工数は別)

源内は一般国民が使えるサービスではありません(庁内限定)。またモデルは外部のものを切り替えて使う設計で、源内自体はLLMではありません。OSS版は無償で商用利用もできますが、デジタル庁は永続的なメンテナンスを保証していません

行政・公共分野のAI活用を横断的に見たい場合は、官公庁・自治体のAI活用事例まとめも参考になります。

ガバメントAI「源内」の利用画面。AIアプリ一覧とモデル選択のインターフェース

出典: デジタル庁 公式サイト ガバメントAI「源内」

ガバメントAI「源内」とは何か|定義・命名の由来・開発体制

源内は、デジタル庁が政府職員のために内製した生成AIの利用環境です。「AIモデルを作ったプロジェクト」ではなく、「安全に使わせる場所と道具をそろえたプロジェクト」と理解するのが正確です。

源内は「AIモデル」ではなく「利用環境」

源内の画面から使えるチャットの裏側では、AWS BedrockのNovaやAnthropicのClaudeなど外部のモデルが動いています。国産モデルの試用はさくらのクラウド上で行われています。つまり源内は、どのモデルを使うかを差し替えられる中立的な器として設計されています。

この設計は、特定ベンダーへの依存を避けたいという政策意図と直結しています。2026年7月21日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、AIソブリンティ(自律性・代替性・耐遮断性)が基本的な考え方として明記されました。特定の海外モデルが使えなくなっても行政業務を止めない、という発想です。

上位概念「ガバメントAI」との関係

「ガバメントAI」は、生成AIを政府業務で活用するためのアプリ群・クラウド環境・大規模データセット・ユースケース・セキュリティ対策・運用ノウハウ・政府横断のリスク管理体制までを含む構想全体を指します。源内はその中核となる利用環境という位置づけです。

「源内」という名前の由来

命名は、Generative AI(GenAI)の音と、江戸時代の発明家平賀源内の精神をかけ合わせたものです。2026年7月29日には公式ロゴもリリースされ、書道の墨一滴が紙に染み広がるイメージがコンセプトとされています。ロゴには商標およびブランドガイドラインが定められているため、第三者が転載する際は利用条件の確認が必要です。

開発体制:外注ではなく内製

AIアプリは原則としてデジタル庁職員が自ら開発しています(2026年8月時点の公表資料では「源内班」名義)。一部のアプリでは民間事業者との共同開発も行われており、たとえば国会答弁作成支援AIはNTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)が開発を担当しています。

源内を構成する2つのシステム

構成要素

役割

リポジトリ

源内 Web

職員が触れるWebアプリ。チャットUI・チーム管理・アプリ管理

digital-go-jp/genai-web

源内 AIアプリ

RAG・LLMセルフデプロイ・法制度AIなどのマイクロサービス群

digital-go-jp/genai-ai-api

両者はExAppと呼ばれるREST APIベースの仕組みでつながっています。ExAppはクラウドに依存せず、JSON定義から画面を自動生成できるため、AWS上の源内WebからGoogle Cloud上の法制度AIを呼ぶといった構成が成立します。この「クラウドをまたげる」点が、ベースとなったAWSのOSSにはない源内独自の設計です。

源内でできること|AIアプリ40種類以上の全体像(2026年8月時点)

源内のAIアプリは2026年8月時点で40種類以上に達しています。汎用アプリと行政実務用アプリの2層構造で、後者が源内の独自性を作っています。

※過去資料では「20種類以上」「数十種類」と表現されており、時期によって数が変わります。数字を見るときは公表時点の確認が必要です。

汎用的なAIアプリ

カテゴリ

主なアプリ

文章

チャット(対話型AI)/文章作成/文体を指定した要約/画像のALTテキスト作成

翻訳

日⇔英翻訳(PLaMo翻訳。処理がガバメントクラウド環境内で完結し、入力情報は外部送信されない)

データ処理

大量テキストの自動分類/手元の表データの調査・分析/Excel関数の提案/Excelファイルを1行ずつ処理(最大10万行)

資料作成

画像生成/マークダウン表変換/ダイアグラム生成

会議

音声ファイルの文字起こし/Teams会話データからの会議記録作成

その他

目標設定チェッカー(SMART法則)/「ネ申エクセル」の機械処理可能形式への変換

「ネ申エクセル」(セル結合や書式で見た目を整えた、機械処理しにくいExcel)を整形するアプリが公式に用意されている点は、行政現場の実情を反映した実務的な機能といえます。

行政実務用のAIアプリ

アプリ

内容

Lawsy(法制度に関する調査)

法令条文を参照した調査支援。Google Cloud上の実装

国会答弁を調査・分析

過去答弁の横断検索・分析

補助金制度調査(jGrants)

補助金情報の検索・整理

公用文を校正

文化庁「公用文作成の考え方」に準拠した校正

物品管理システム質問応答

庁内システムのRAG型ヘルプ

SEABIS(旅費等内部管理業務共通システム)質問応答

同上(RAG)

EASY(電子決裁システム)質問応答

同上(RAG)

アナログ規制点検ツール

目視・常駐などアナログ規制の点検支援

行政文書の用例を調査・検索

過去文書の表現・用例検索

政策・法令の過去経緯を調査

出典・確信度付きで経緯を提示

パブコメ分類AI

意見公募の分類(実装検討中)

国会答弁作成支援AI

草案生成・更問予測(開発中、2026年10月頃 試験提供予定)

庁内システムのヘルプがRAGで作られている点が特徴です。RAGの仕組みそのものについてはRAGとは?仕組みと構成をわかりやすく解説で整理しています。

実務でどれだけ効いているか(公式に確認できる事例)

事例

内容

効果

農林水産省(米の生産意向アンケート)

回答8,095件・20件以上の仮説をAIで検証

職員1人で約2か月の分析が約3日に短縮(デジタル庁推計)

警察庁(闇バイト対策)

犯罪実行者募集の疑いがあるX投稿のフィルタリングAIプロトタイプ

目視確認すべき投稿件数が約1/3に削減

パブリックコメント分類

国土交通省不動産・建設経済局(3.8万件)、農林水産省消費・安全局(約1,000件)を支援

要請から約1週間で分類結果を返却

利用実績と「二極化」という課題

デジタル庁内での2025年5〜7月の3か月間(対象は同庁職員約1,200人)では、約950人(全職員の約8割)が利用し、延べ6万5,000回以上、1人あたり平均約70回という実績が公表されています。

一方で利用の二極化も明らかになっています。3か月で100回以上使った職員が184人いる一方、5回未満が178人。ツールを配っただけでは使われない、という組織課題は民間と同じ構図です。

なお、この数値はデジタル庁単体のデータであり、18万人規模の実績ではありません。引用時は混同しないよう注意が必要です。

ガバメントAI「源内」のシステム構成図。ガバメントクラウド上で汎用AIアプリと行政実務特化アプリを提供する構造

出典: デジタル庁 公式サイト ガバメントAI「源内」

源内で使えるLLM|Claude Opus 4.8まで対応、国産モデルは契約5社・試用3モデル

源内は特定モデルに縛られないマルチモデル設計です。ただし「どこまでが決定済みで、どこからが評価中か」は混乱しやすいポイントです。

チャットで選択できるモデル(2026年8月時点)

モデル

提供元

Nova Lite

AWS

Claude Haiku 4.5

Anthropic

Claude Sonnet 4.6

Anthropic

Claude Opus 4.8

Anthropic

デジタル庁は「今後、モデルの追加・更新を予定」と明記しています。2026年3月時点はSonnet 4.5を含む4モデル、2025年11月時点は3モデルでした。世代交代が速いため、モデル名を見るときは必ず公表時点の確認が必要です。

国産LLM:公募は7件、契約は5社、試用は3モデル

国産LLMをめぐる情報は、段階の取り違えによる誤解が最も多い部分です。

段階

時期

内容

公募・選定

2026年3月

国内企業を公募(応募15件)し選定

契約締結(5社)

2026年5月

NTTデータ(tsuzumi 2)/ソフトバンク(Sarashina3 mini)/NEC(cotomi v3)/富士通(Takane 32B)/Preferred Networks(PLaMo 2.0 Prime

試用開始(3モデル)

2026年7月10日

国産クラウド「さくらのクラウド」上で tsuzumi 2/Takane 32B/PLaMo 2.0 Prime の試用を開始

評価テスト

2026年9〜11月

従来モデルと国産モデルの出力をランダム提示し、職員がどちらを好むかを選ぶ形式で複数回実施

公募(本番調達に向けて)

2026年11月

源内で使用する国産基盤モデルの公募を開始予定

政府調達

2027年度〜

国産AIの政府調達を積極推進

「国産LLM7選」という表現が広く流通していますが、契約締結は5社、さくらのクラウドでの試用対象は3モデルです。段階を混同すると事実誤認になります。

また、PFNのモデルは源内の契約対象が PLaMo 2.0 Prime であり、2026年6月に発表された PLaMo 3.0 Prime とは別物です。各モデルの性能や特徴は国産LLM 7選の徹底比較、個別解説はPLaMo 3.0 PrimeとはSarashina3とはで扱っています。さくらのクラウドでの稼働の詳細はデジタル庁の国産AIとはにまとめています。

よくある誤情報の切り分け

よく見る記述

2026年8月時点の実際

「国産LLM7モデルが源内で稼働中」

契約は5社、さくらのクラウドで試用中は3モデル。評価は9〜11月

「源内にOpenAIのモデルが追加された」

2025年10月に協業が報じられたが、公式資料の選択可能モデルには記載なし=未確認

「源内AIを全国923自治体・17,500人が無料利用中」

民間団体が源内OSSをもとに会員向け提供している派生サービスについての記述。デジタル庁が自治体へ直接提供しているわけではない

「2027年度から自動的に全省庁で本格運用」

本格利用は各省庁が自ら予算措置することが前提。無条件の継続ではない

2026年10月の転換点|AIエージェント環境・源内工房・源内マーケットプレイス

源内でこれから最も大きく変わるのは、2026年10月頃に予定されているAIエージェント利用環境の導入です。行政のAI活用の質そのものを変える可能性がある変更点です。

なぜエージェントなのか

デジタル庁は、現在の汎用アプリの限界を公式に認めています。具体的には「複数ファイル・膨大なデータ・ネット検索を用いた連続的な作業や、行政固有の判断基準を伴う審査プロセスの支援には限界がある」という趣旨です。単発のチャットでは扱いきれない業務に対応するため、エージェント型の実行環境を入れる、という論理構成です。

導入予定の3つの機能

機能名

内容

エージェントチャット

職員が自らの業務に応じてAIエージェントを構築・実行できる環境

源内工房

いわゆるバイブコーディング環境。自然言語ベースで業務用ツールを組み立てる

源内マーケットプレイス

職員が作った「スキル」を共有・評価・改善・再利用する場

鍵になる「スキル」というMarkdownドキュメント

職員は、業務手順・判断基準・参照資料・出力形式などを「スキル」と呼ばれるMarkdown形式の構造化ドキュメントとして書き、それをAIエージェントとして実行します。デジタル庁の資料では、Claude Codeに代表されるコーディングエージェントの広がりが参照されており、「スキルやCLAUDE.mdのマークダウンファイルに必ず書くべきこと」がマーケットプレイスのスキル分類にも含まれています。

つまり、民間の開発現場で広まったエージェント運用の作法を、政府が業務標準として正面から取り込もうとしているということです。AIエージェントの基本的な考え方はAIエージェントとは?仕組みとできることを整理で解説しています。

スキル分類(24区分)

AIエージェント環境(共通)/調査・リサーチ/データ分析・統計・仮説検証/政策企画・立案/国会対応/審議会・委員会/法制執務・法令規則/行政手続・処分/補助金・助成金・交付金/調達・契約/プロジェクト管理/予算要求/文書作成/要約・議事録/スライド・図表作成/翻訳・多言語対応/人事・組織管理/研修・人材育成/IT・システム管理/広報・情報発信/総務・庶務/危機管理・防災/監査・コンプライアンス/その他

狙いは、暗黙知を形式知に変え、さらに共有によって集合知にすること、そして属人化を抑えることにあります。省庁をまたいで業務改善の型が流通する仕組みを作る、という発想です。

国会答弁作成支援AI(2026年10月頃 試験提供予定)

項目

内容

開発事業者

NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)

主な機能

質問内容の分析/根拠資料の検索/答弁方針に応じた草案生成/更問の予測/矛盾の検証

評価体制

16省庁から実務経験豊富な職員102名を評価者として選抜(2026年6月19日時点)

進捗

2026年7月14〜16日にプロトタイプ評価ワークショップを開催(15省庁の若手職員39名が参加)

なお、2026年3月からは「国会答弁作成支援を行うAIスキルセット」がすでに源内で提供されています。10月に予定されているのは、専用アプリとしての試験提供です。

「業務+AI」から「AI前提の業務設計」へ。ガバメントAI「源内」が目指す業務変革のコンセプト図

出典: デジタル庁 公式サイト ガバメントAI「源内」

OSS版の中身|公開範囲・ライセンス・最新バージョン(2026年8月)

2026年4月24日、デジタル庁は源内の一部をOSSとして公開しました。商用利用も可能ですが、「何が公開され、何が公開されていないか」を正しく把握することが導入判断の前提になります。

公開されている2つのリポジトリ(2026年8月23日時点の実測)

リポジトリ

内容

Star

Fork

最終更新

主言語

digital-go-jp/genai-web

源内Web(AIインターフェース)

554

55

2026-08-21

TypeScript

digital-go-jp/genai-ai-api

源内AIアプリ

344

46

2026-07-17

Python

技術スタックは、genai-web が React 19/TypeScript/Tailwind CSS/Zustand/AWS CDK。ベースはAWSが公開しているOSS「Generative AI Use Cases(GenU)」です。genai-ai-api は TypeScript/Python/Terraform/CDK で構成され、ガバメントクラウド採択の3クラウドに対応しています。

クラウド

収録されている実装テンプレート

AWS

行政実務用RAGの開発テンプレート

Microsoft Azure

LLMセルフデプロイの開発テンプレート

Google Cloud

最新の法律条文を参照する法制度AI(Lawsy系)の実装

GenUとの差分

観点

源内

削られた機能

要約・校正・Webコンテンツ抽出・動画生成など、GenUの汎用ユースケースの多くを削減

追加された機能

ExApp(クラウド非依存のREST APIで外部マイクロサービスをAIアプリとして統合。JSON定義からUIを自動生成)

組織運用

チーム管理(SystemAdminGroup/TeamAdminGroup/UserGroupの3段階ロール)、複数IdP対応

セキュリティ

KMS CMEK暗号化、データ保持期間(TTL)設定、メンテナンスモード、監視・モニタリング

汎用性を削って行政運用の統制機能を足した、というのが差分の全体像です。

ライセンス(「全部MIT」ではない)

対象

ライセンス

ソースコード(本体)

MIT

一部Lambda・CDKファイル(AWS Prototyping Programで作成)

Amazon Software License(ASL)

ドキュメント

CC BY 4.0

複数ライセンスが混在するため、GitHub API上のライセンス判定は "NOASSERTION" になっています。商用利用の可否を社内で説明する際は、ASL対象ファイルの有無を確認しておくのが安全です。

バージョン履歴と「Ver 2.0」

時期

内容

2026-04-17

genai-web / genai-ai-api v1.0.0

2026-04-24

源内の一部をOSSとして正式公開

2026-05-13/20

genai-web v1.0.5〜v1.0.7(権限・バリデーション等のセキュリティ修正)

2026-07-07

genai-web v1.3.0(アプリ説明画面と実行画面の分割、チャット等の推定コスト表示、バグ修正)

2026-07-24

「源内OSS Ver 2.0の計画に関するオンライン説明会」の開催告知

2026-08-14

genai-web v1.3.1(Node.js 22→24、依存更新、チャット改善)=2026年8月時点の最新版

2026-08-25

源内OSS Ver 2.0 オンライン説明会(14:00〜15:30/Teams/無料)。現状と計画、Ver 2.0の予告(公開時期・内容・画面イメージ)、質疑応答という構成

Ver 2.0の公開日や具体的な機能は2026年8月23日時点で未公表です。8月25日の説明会で予告される予定であり、内容を推測で語ることはできません。導入を検討している組織は、この説明会の内容を確認したうえで計画を立てるのが現実的です。

OSSに「含まれないもの」

公開されているのは、Webインターフェース部分のソースコード・構築手順と、一部AIアプリの開発テンプレート・実装です。以下は含まれません。

  • 政府共通データセット(官報79年10か月分、推計1,800万ページ以上の資料データセットなど)
  • 各省庁の知識ベース
  • 実際に稼働している運用環境そのもの

つまりOSS版を立ち上げても、「源内と同じ回答品質のシステム」が手に入るわけではありません。データは自組織で用意する必要があります。

自治体・民間がOSS版を入れるときの現実|工数と落とし穴チェックリスト

「無償で商用利用可」という言葉だけで判断すると、実際の構築段階でつまずきます。技術検証記事や自治体職員の実体験から確認できる前提条件を整理します。

導入前チェックリスト

チェック項目

内容

クラウド契約

AWS等の契約が前提。法人クレジットカードを持たない団体が請求書払いを希望する場合は国内代理店経由が現実的

リージョン設定

AWS版は ap-northeast-1us-east-1両方でCDK bootstrapが必須(CloudFront WAFがus-east-1を要求)

データレジデンシー

CloudFront WAFの制約でus-east-1にWAFスタックが立つため、国内保管要件との整合を事前に整理する必要がある

デプロイ規模

デプロイ約20分で254リソース(ネストスタック含め487)。監視・課金管理の設計が必要

追加作業

デプロイ後に追加セットアップスクリプト2本(システム管理者設定/共通アプリチーム作成)の実行が必要。「デプロイしたらすぐ全機能が使える」構成ではない

人的リソース

Node.js・AWS CLI・CDK・SAML認証設定の知識が前提。AWSアカウント契約からSSO設定まで含めると数人月規模の構築工数が見込まれる

ガバナンス設計

「機密性分類×入力可否」「AI利用ログの保管」などのルール整備は導入側の仕事。源内は土台を提供するが、組織固有の設計までは面倒を見ない

サポート体制

プルリクエストは基本的に受け付けない。Issueも「致命的な問題(データ損失・サービス障害・法令違反・重大なアクセシビリティ障壁)」に限定

継続性リスク

「当面の間は更改・修正を継続するが、永続的なメンテナンスを保証するものではなく、将来的にOSSの公開を終了する場合がある」と公式に明記

アクセシビリティ

試験は実施済みだが、一部課題が残存とリポジトリのREADMEに明記

脆弱性対応

脆弱性を発見した場合は、公開前にデジタル庁の報告フォームへ事前報告することが求められている

なお通常のAWSアカウントでデプロイ可能で、ガバメントクラウドは必須ではありません。技術検証としてのハードルはそこまで高くありませんが、本番運用の要件は別物です。

コストの考え方

コスト項目

内容

目安

ソフトウェア利用料

MIT/ASL/CC BY 4.0

無償

クラウド基盤費用

AWS / Azure / Google Cloud の利用料

利用規模に依存。公式の料金表は存在しない

LLM API費用

Bedrock等のモデル利用料

利用量・モデルに依存。v1.3.0以降は画面上で推定コストを確認可能

初期構築

環境設計・CDKデプロイ・認証連携・ガバナンス設計

数人月規模。外部委託なら相応の費用

運用

監視・バージョン追随・利用ルール運用

クラウドとIaCを扱える人員の確保が前提

デジタル庁は自治体向けに「いくらで導入できる」という料金表を公表していません。金額を断定している情報は、出所を確認したほうがよいでしょう。

農林水産省の事例:AI活用により約8,000件のアンケート分析が約2か月から約3日に短縮された効果を示す図

出典: デジタル庁 公式サイト ガバメントAI「源内」

セキュリティとガバナンス|機密性2・ISMAP・AIソブリンティ

源内のセキュリティ設計は、「どこまでの情報を入れてよいか」という運用ルールと、基盤側の技術対策の2階建てになっています。

「機密性2まで」の意味

政府の情報セキュリティ基準では、情報を機密度で分類します。源内で扱える上限は機密性2です(デジタル庁内の基準。各府省庁がそれぞれルールを設定)。

区分

内容の例

源内での扱い

機密性1

公開情報

入力可

機密性2

秘密指定ではないが、漏えいすると業務に支障が出る内部情報(庁内会議資料、検討中の案など)

入力可(上限)

機密性3

漏えいすると重大な影響が生じる情報

対象外

技術面・体制面の対策

項目

内容

稼働基盤

ガバメントクラウド=ISMAP(政府情報システムのセキュリティ評価制度)評価済みクラウドサービス

認証

ガバメントソリューションサービス(GSS)経由のシングルサインオン(SSO)に対応

暗号化・保持

KMS CMEK暗号化、データ保持期間(TTL)設定

権限管理

3段階のロールによるチーム管理

翻訳の閉域処理

日⇔英翻訳(PLaMo翻訳)は処理がガバメントクラウド環境内で完結し、入力情報は外部送信されないと公式に明記

組織体制

各府省庁が「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」に基づきAI統括責任者(CAIO)を中心にルール・リスク管理体制を整備

今後

源内の利用に関する政府内の基準を2026年10月頃に公表予定(AIソブリンティ、透明性、可観測性、人間による監督などを明記予定)

公式が示す「使う側の心構え」

デジタル庁の資料では、利用者側に次の3点が求められています。

  1. 自ら理解・保有していない技能をAIに委ねない勇気
  2. AIの出力を評価できるだけの専門性(目利きの能力)の維持
  3. AIが使えない場合でも重要業務を遂行できる能力の維持

AIに任せきりにしないことを、基盤の提供側が明示している点は特徴的です。生成AI全般のリスクと対策は生成AIのセキュリティリスクと対策でも整理しています。

18万人展開のロードマップ(2025年〜2027年度)

時期

内容

2025年5月

デジタル庁内で試験導入(職員約1,200人以上)

2025年12月19日

人工知能戦略本部で総理指示。7点指示の第一に「源内の徹底活用。来年5月から10万人以上の政府職員が活用できるように」

2025年12月23日

人工知能基本計画 閣議決定。「隗より始めよ」の観点で政府自らが先導

2026年1月

19省庁で試験利用

2026年4月24日

源内の一部をOSSとして公開

2026年5月28日

全府省庁約18万人対象の大規模実証を開始(5月末時点で約10万人が利用可能)

2026年6月〜

防衛省・文部科学省・厚生労働省・国税庁(地方)・経済産業省・原子力規制庁など約8万人を順次追加展開

2026年7月10日

さくらのクラウド上で国産基盤モデルの試用を開始

2026年7月14日

第Ⅱ期人工知能基本計画 閣議決定。「国内最大規模18万人もの政府職員によるAI利活用」と明記。源内のOSS化を通じた自治体のAI導入支援も具体的取組に

2026年7月21日

デジタル社会の実現に向けた重点計画 閣議決定。AIソブリンティを基本的な考え方に明記

2026年8月25日

源内OSS Ver 2.0 オンライン説明会

2026年9〜11月

国産基盤モデルの評価テスト(複数回)

2026年10月頃

AIエージェント利用環境の導入/国会答弁作成支援AIの試験提供/源内利用に関する政府内基準の公表

2026年11月

国産基盤モデルの公募開始

2026年12月頃

リリース2.2:高度なAIアプリの試験提供、政府共通データ整備

2027年度

リリース3.0:本格利用開始(各省庁が予算措置)、国産AIの政府調達を積極推進

重点計画では、令和8年度に国産を含む複数の基盤モデルを源内で活用・評価し、令和9年度には複数の基盤モデルをタスクに応じて選択・協調・評価させる統合運用基盤の開発へ進む方針が示されています。単に国産モデルを入れるのではなく、複数モデルを使い分ける運用基盤を作る、という段階設計です。

立場別の使い方|政府職員/自治体/民間・開発者/一般の方

政府職員の場合

利用可能な府省庁の職員は、自前でセットアップする必要はありません。

  1. 庁内ネットワークからブラウザで源内にアクセス
  2. GSS連携のSSOでログイン
  3. アプリ一覧から用途に合うものを選ぶ(チャット/翻訳/法制度調査/文字起こしなど)
  4. チャットではモデル(Nova Lite/Claude Haiku 4.5/Sonnet 4.6/Opus 4.8)を選択

入力できるのは機密性2までで、実際の運用ルールは所属府省庁の定めに従います。2026年10月以降は、業務手順をスキルとして書き、エージェントとして実行する使い方が加わる見込みです。

自治体の場合

デジタル庁が自治体に源内をサービスとして直接提供している事実は、2026年8月時点で公式に確認できません。OSSを自組織のクラウドにデプロイするのが基本ルートです。

  1. 8月25日のVer 2.0説明会など、公式情報でロードマップを確認する
  2. AWS/Azure/Google Cloudのどれで構築するか決める
  3. GitHubからリポジトリを取得し、CDK等でデプロイ(AWS版は2リージョンbootstrapが必要)
  4. 追加セットアップスクリプト2本を実行し、管理者・共通アプリチームを設定
  5. IdPと接続し職員SSOを構成
  6. 「どの情報区分まで入力可か」「ログをどう保管するか」を自組織で規程化
  7. 使うアプリを選び、必要な知識ベース(自治体側のデータ)を用意

なお「280万人の自治体職員へ展開」といった記述は一部メディアの見通しであり、公式の確定情報ではありません。

民間企業・開発者の場合

活用パターン

内容

行政DX SIer

自治体提案の叩き台として源内ベースの構築を提案する

AI受託開発

ExAppを拡張し、独自AIアプリを外部マイクロサービスとして接続する

社内基盤の参考実装

チーム管理・CMEK・TTL・複数IdPといった統制機能の実装を、自社の生成AI基盤設計に取り込む

自社で生成AI基盤を作るか市販ツールを使うかで迷っている場合は、生成AIツールおすすめ比較で選択肢を整理してから判断すると比較しやすくなります。

一般の方の場合

源内は庁内限定で、一般国民は利用できません。個人が生成AIを使いたい場合は、市販のチャットサービスを選ぶことになります。生成AI自体の基礎は生成AIとは?仕組み・種類・活用例で解説しています。

他サービスとの比較|源内・ChatGPT Enterprise・Microsoft 365 Copilot・GenU

比較項目

ガバメントAI 源内(OSS版)

ChatGPT Enterprise

Microsoft 365 Copilot

AWS GenU(OSS)

提供形態

OSS(自組織にデプロイ)

SaaS

SaaS

OSS

主な対象

政府・自治体・行政DX事業者

民間企業

Microsoft 365利用企業

開発者・企業

モデル

複数モデルを切替(Nova/Claude系。国産は評価中)

OpenAIのモデル

OpenAI/Microsoft系

任意(Bedrock中心)

行政特化機能

公用文校正・法制度調査・国会答弁・庁内システムRAG

なし

なし

なし

統制機能

3段階ロール/CMEK/TTL/複数IdP

管理コンソール

テナント統制

実装者が設計

導入の速さ

遅い(数人月規模の構築)

速い

速い(既存M365に追加)

中程度

費用構造

ソフト無償+クラウド/API実費+工数

ユーザー課金

ユーザー課金

ソフト無償+実費

サポート

PR不可・Issue限定・永続メンテ保証なし

ベンダーサポート

ベンダーサポート

コミュニティ中心

読み取れることはシンプルです。「行政実務ドメインの機能」と「モデルを差し替えられる構造」が要るなら源内、そうでなければSaaSのほうが早くて確実です。ベンダーサポート付き製品を選ぶ判断も、行政組織にとって十分に合理的です。

こんな組織におすすめ/おすすめしない組織

おすすめできる組織

  • 都道府県・政令市など、生成AI基盤を長期に内製運用したい自治体:クラウドとIaCを扱える人員が確保でき、行政文書のRAGを継続的に育てる前提がある場合
  • 行政DXに強いSIer・受託開発企業:自治体提案の基礎実装として活用し、ExApp経由で独自アプリを載せる形が現実的
  • 政府調達・AI政策を追う事業者:国産LLMの評価テストと2027年度の政府調達に向けて、実装レベルで要件を理解しておきたい場合
  • エンタープライズのIT部門:機密区分に応じた入力制御・ログ保持・複数IdPといった統制設計の参考実装として

おすすめしない組織

  • すぐに生成AIを使い始めたい小規模自治体・中小企業:数百リソースの管理と数人月の構築が前提になるため、SaaSのほうが確実に早い
  • クラウド運用の知見が薄い情報システム部門:CDK・SAML・リージョン設計でつまずくポイントが多く、外部委託前提のコスト増になりやすい
  • SLA保証が不可欠な基幹業務:永続メンテナンスが保証されず、PRも受け付けないため、問題発生時は自組織で改修する体制が必須
  • 機密性3相当の情報を扱いたい部門:源内の設計上の上限は機密性2まで
  • データレジデンシー要件が厳格な組織:AWS版はCloudFront WAFスタックがus-east-1に作られるため、要件との整合を先に確認する必要がある

よくある質問

Q1. 源内は一般の人でも使えますか?

使えません。源内の利用画面は庁内専用で、外部からアクセスできません。国民向けサービスとして提供される予定も、2026年8月時点では公表されていません。

Q2. 源内はどのAIモデルを使っているのですか?

源内自体はモデルではなく利用環境です。2026年8月時点でチャットから選べるのは Nova Lite/Claude Haiku 4.5/Claude Sonnet 4.6/Claude Opus 4.8 の4種類で、モデルの追加・更新が予定されています。国産モデルは別途、さくらのクラウド上で試用・評価の段階にあります。

Q3. OSS版を導入すれば、源内と同じ精度で使えますか?

同じにはなりません。官報79年10か月分をはじめとする政府共通データセットや各省庁の知識ベースはOSSに含まれておらず、回答精度を支えるデータは自組織で用意する必要があります。

Q4. OSS版はいつまで使えますか?

保証はありません。デジタル庁は「当面の間は公開OSSの更改・修正作業を継続する」としつつ、「永続的なメンテナンスを保証するものではなく、将来的にOSSの公開を終了する場合がある」と明記しています。長期運用を前提にするなら、フォークして自組織で保守する覚悟が要ります。

Q5. 改善提案(プルリクエスト)は送れますか?

基本的に受け付けていません。Issueも「データ損失・サービス障害・法令違反・重大なアクセシビリティ障壁」といった致命的な問題に限定されています。また、脆弱性を見つけた場合は公開前にデジタル庁の報告フォームへ事前報告することが求められます。

Q6. 国産LLMはいつから本格的に使われますか?

2026年9〜11月に評価テストを実施し、11月に源内で使用する国産基盤モデルの公募を開始する予定です。政府調達を積極推進するのは令和9年度(2027年度)以降とされています。現時点では評価段階であり、本採用は決まっていません。

Q7. 「源内OSS Ver 2.0」では何が変わりますか?

2026年8月23日時点で公開日・機能とも未公表です。8月25日開催のオンライン説明会で、公開時期・内容・画面イメージが予告される構成になっています。内容の断定的な予測は避け、説明会後の公式発表を確認してください。

Q8. 自治体は無償で源内を使えるのですか?

ソフトウェア利用料は無償ですが、無償で使えるのはコードだけです。クラウド利用料、モデルのAPI費用、構築・運用の人件費は導入側の負担になります。デジタル庁が自治体向けの料金表を出しているわけでもありません。

まとめ:源内は「政府が自分で作った器」。導入判断は運用体制で決まる

ガバメントAI「源内」は、デジタル庁が内製した政府職員向けの生成AI利用環境で、2026年8月時点では全府省庁約18万人を対象とした大規模実証が進んでいます。40種類以上のAIアプリ、複数モデルの切替、機密性2までの取り扱いという設計が特徴です。

  1. 源内はモデルではなく器。Claude Opus 4.8まで含む海外モデルを使いつつ、国産モデルは2026年9〜11月に評価、2027年度から政府調達を積極推進という段階にある。「国産7モデルが稼働中」ではない
  2. 2026年10月が次の転換点。AIエージェント利用環境・源内工房・源内マーケットプレイスが加わり、職員がMarkdownの「スキル」で自分の業務用エージェントを作る方式に移行する
  3. OSS版は無償だが安くはない。数人月規模の構築、2リージョンbootstrap、追加セットアップ、ガバナンス設計の自前対応、そして永続メンテナンス非保証。これらを引き受けられる体制があるかどうかが判断の分かれ目

自治体や事業者が導入を検討するなら、まず8月25日のVer 2.0説明会と、10月頃に公表予定の政府内基準を確認したうえで、SaaSと比較して決めるのが現実的な進め方です。

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この記事の著者

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