GPT-Rosalindとは?Rosalind Biodefenseの対象・料金・安全策を完全解説【2026年10月最新】

この記事のポイント
GPT-Rosalindは、OpenAIの生命科学向け推論モデルです。2026年5月29日発表のRosalind Biodefense(開発者・政府の2トラック)に加え、9月の一般提供、10月5日からのAPI料金、10月15日のAcademic Planまで、使える経路・費用・安全策を公式情報で整理します。
GPT-Rosalindは、OpenAIが開発した生物学・創薬・橋渡し研究向けの推論モデルです。Rosalind Biodefenseは、そのGPT-Rosalindを、パンデミック対策やバイオセキュリティに取り組む審査済みの開発者と一部の政府機関に、OpenAIの費用負担で開放するプログラムで、2026年5月29日に発表されました。
発表後に提供の形は大きく変わりました。2026年9月にリサーチプレビューが終わり、trusted access(審査制の提供)のまま一般提供(GA)になりました。10月5日からはAPIの従量課金が始まり、10月15日には米国の大学研究室向けの「Rosalind Academic Plan」も発表されています。このため、6月ごろの「承認されれば無料」という説明は、Biodefenseプログラム経由の場合にしか当てはまらなくなっています。
この記事でわかること
- Rosalind Biodefenseの2トラック(開発者・政府)の対象・用途・費用
- GPT-Rosalind(最新はGPT-Rosalind-5.5)の機能と公式ベンチマーク
- 2026年10月時点の料金と、GPT-Rosalindを使う4つの経路の違い
- 日本の大学・製薬企業・スタートアップが今できること
- システムカードから読む安全策と、利用組織側に求められる管理
- Anthropicの審査制プログラムやAlphaFoldとの違い
こんな方に向けた記事です: 生命科学・医薬品の研究者、バイオテック・製薬企業の研究戦略やIT導入の担当者、公衆衛生・バイオセキュリティ分野でAI導入を検討している方、AIの安全保障分野での使われ方を追っている方。
Rosalind Biodefenseとは何か

Rosalind Biodefenseは、GPT-Rosalindへのアクセスを、生物学的な脅威への備えを目的とする組織に優先して開くプログラムです。通常のtrusted accessは企業や研究機関の社内研究向けですが、Biodefenseはパンデミック対策・バイオセキュリティの用途に絞り、OpenAIがモデルの利用費を負担する点が違います。
2026年5月29日の発表でOpenAIが掲げた考え方は「defensive acceleration(防御側の加速)」です。フロンティアAIは、生物学的な脅威に対して攻撃側より防御側に大きな優位を与えるべきだ、という趣旨です。申請は公式のRosalind Biodefense申請フォームから受け付けています。
2026年10月時点の最新状況
発表から5か月で、GPT-Rosalindの提供条件は次のように変わりました。
時期 | 変化 | 利用者への影響 |
|---|---|---|
2026年6月3日 | GPT-Rosalind-5.5を公開。世界の適格組織にリサーチプレビューを拡大 | ベースモデルがGPT-5.5に |
2026年9月 | リサーチプレビューを終了し、trusted access経由で一般提供(API変更履歴では9月8日) | 「プレビュー中」ではなくなった |
2026年10月5日 | API | 通常のtrusted accessは有料 |
2026年10月15日 | Rosalind Academic Plan(米国の大学研究室向け)を発表 | 米国の大学には無料席の経路が追加 |
Rosalind Biodefense自体について、5月29日以降に条件変更や対象拡大の公式告知は見つかっていません。現時点では、参加チームへの費用はOpenAIが負担する扱いが続いていると考えられます。ただし、GA・課金開始後もこの扱いが変わらないとする公式の明言も確認できないため、申請時にOpenAIへ確認してください。
なぜ「Rosalind」という名前なのか
名前の由来は、DNAの二重らせん構造の解明に大きく貢献した英国の化学者・結晶学者 Rosalind Franklin(ロザリンド・フランクリン) です。現在の「Rosalind」は1つのモデル名にとどまらず、OpenAIのライフサイエンス領域のブランド名として使われています。モデルのGPT-Rosalindと、研究用ワークスペースの「Rosalind Workbench」がこのブランドに含まれます。正式表記は「GPT-Rosalind」(ハイフンあり)です。
GPT-Rosalindとは?生命科学特化AIモデルの実力
GPT-Rosalindは、分子・タンパク質・遺伝子・疾患生物学の推論、文献の統合、仮説の生成、実験計画を支える推論モデルです。2026年4月16日にリサーチプレビューとして発表されました。6月3日に出た最新版のGPT-Rosalind-5.5は、GPT-5.5に生命科学向けの追加学習をしたモデルです。生物学以外の能力とモデル単位の安全学習は、GPT-5.5と同等とされています。
モデル本体の仕様や使い方をくわしく知りたい方は、「GPT-Rosalindとは?OpenAIの生命科学特化AI|創薬・ゲノミクス向け推論モデルを徹底解説」をご覧ください。ベースになったGPT-5.5(Spud)の特徴も別記事で解説しています。
GPT-Rosalindが得意とすること(公式発表ベース)
公式が示している主なタスクは次のとおりです。
- 文献・エビデンスの統合: 論文や公開データベースから関連する知見をまとめる
- 仮説の生成: 次に検証すべき研究の方向を提案する
- 実験計画・プロトコル設計: クローニングなどの手順設計を支援する
- 配列から機能の解釈: ゲノム配列やタンパク質配列が持つ機能を推論する
- ゲノミクス・化学データの解析: 複数のデータをまたいだ分析
- ウェットラボの支援: 実験結果の解釈や、うまくいかなかった実験の原因の切り分け
- 多段階のワークフロー: 計画→コード作成→実行→推論までを続けて進める(GPT-5.5のエージェント能力を引き継ぐ)
提供チャネルはChatGPT・Codex・APIの3つで、いずれも承認済みの組織だけが使えます。科学ツールを束ねて動かす研究用ワークスペース「Rosalind Workbench」も、ChatGPTとCodexの中で用意されました。Workbenchの細かな提供範囲や料金について、現時点では公式の詳細が出そろっていません。
Codex向けの「Life Sciences Research」「Life Sciences NGS Analysis」プラグインは、GPT-Rosalindの承認がなくてもCodexの全ユーザーが使えます。50以上の公開データベース・文献・生物学ツールに接続でき、通常のモデルでも動きます。Codexそのものについては「OpenAI Codexとは」で整理しています。
2026年6月3日アップデートの主な変更点
変更項目 | 内容 |
|---|---|
ベースモデル | GPT-5.5から追加学習したGPT-Rosalind-5.5に更新 |
エージェント能力 | GPT-5.5のコーディング・ツール利用の能力を、創薬・解析・設計・実験ワークフローに組み合わせた |
ゲノミクスの効率 | GeneBenchでGPT-5.5よりトークン使用量が31%少ない |
新しい評価 | ウェットラボ向けのLabWorkBenchを新設 |
対象地域 | リサーチプレビューを世界の適格組織に拡大(9月にGAへ移行) |
安全面の文書 | GPT-Rosalind-5.5のシステムカードを公開(8月19日に一部数値を訂正) |
なお、ベースのGPT-5.5はChatGPT・Codexでの提供が2026年10月14日に終わったと報じられています。経緯は「GPT-5.5の提供終了」にまとめています。GPT-Rosalindとの関係(ChatGPT上の表示場所など)は公式の説明が見当たらないため、ここでは断定しません。
Rosalind Biodefenseの2つのトラック
Rosalind Biodefenseは、対象と用途で開発者トラックと政府トラックの2つに分かれます。どちらもOpenAIが利用費を負担し、審査を通った組織だけが使えます。
2トラック比較表
比較項目 | 開発者トラック | 政府トラック |
|---|---|---|
対象組織 | 学術・非営利・政府関連・ミッション志向の開発チーム | 公衆衛生・生物防衛の任務を持つ一部の米連邦機関と同盟国パートナー |
対象地域 | 世界から申請できる(日本の組織も対象) | 主に米国。同盟国の範囲は公式に明示されていない |
費用 | OpenAIがモデル利用をスポンサーし、立ち上げも支援 | 承認されたミッション向けにOpenAIが提供 |
主な用途 | 疫学モデリング、早期検知、DNA合成スクリーニングなどの生物学的スクリーニング、非医薬的介入、文献統合・シミュレーション・意思決定支援 | 早期警戒、アウトブレイク対応計画、診断、ワクチン・治療薬などの医療対抗措置の開発 |
審査 | 事業確認・コンプライアンス審査、利用後の監視 | バイオセキュリティ・公衆衛生・生物防衛の用途を確認する政府向けの別経路 |
発表時の状況 | 最初のチーム群に提供開始 | ホワイトハウスと複数の連邦機関に説明済み。公衆衛生系の機関を順次受け入れ |
開発者トラック:対象ユースケースと初期パートナー
開発者トラックの対象として、発表時に示された用途は次のとおりです。
- 疫学モデリング(Epidemiological modeling)
- 早期検知システム(Early detection)
- 生物学的スクリーニング(DNA合成の注文スクリーニングなど)
- 非医薬的介入(NPI)のモデル化
- 文献統合・プロトコル設計・データ整備・シミュレーション・意思決定支援
初期の参加チームとしては、Fourth Eon・SecureDNA・SecureBio(Detection)・ProEquip の名前が報じられています。SecureDNAはDNA合成の段階で危険な配列を見つけるスクリーニング技術の団体で、検知・スクリーニングの基盤を作る組織が多く選ばれている印象です。ただし、これらの名前は報道によるもので、OpenAI公式ページでの掲載は確認できていません。
政府トラック:連邦機関への早期アクセス
政府トラックは、公衆衛生・生物防衛を任務とする米連邦機関と同盟国パートナーが対象です。発表時点でホワイトハウスと複数の連邦機関に説明を済ませ、公衆衛生系の機関から受け入れを始めていました。参加している省庁名は公表されていません。OpenAIは「信頼できる政府パートナーとの関わり方を今後広げる」としていますが、10月時点で具体的な拡大の告知は見当たりません。
主要研究機関パートナー

発表時には、国立研究所と国際機関の3つが活用例として紹介されました。いずれも「AIだけで完結させる」のではなく、既存の計算基盤や研究プラットフォームにGPT-Rosalindを組み込む使い方です。
機関名 | 所在 | 活用内容 |
|---|---|---|
Lawrence Livermore National Laboratory(LLNL) | 米国 | スーパーコンピュータとシミュレーションに組み合わせ、医療対抗措置(治療薬・ワクチン)の設計と評価を速める |
Johns Hopkins Applied Physics Laboratory(APL) | 米国 | タンパク質工学のプラットフォームに統合し、治療薬・対抗措置の検討や生物脅威の特性評価のために変異酵素をスクリーニング |
CEPI(感染症流行対策イノベーション連合) | 国際機関 | 発生から100日でワクチン候補をそろえる「100 Days Mission」に適用。コンゴ民主共和国・ウガンダでのブンディブギョ型エボラへの対応も含む |
LLNLの使い方は、AIの推論とスパコンの大規模シミュレーションを組み合わせる点が特徴です。候補物質の評価を計算で絞り込む工程に、GPT-Rosalindの文献統合と計画立案を足す形といえます。
CEPIの100 Days Missionは、新しい感染症の流行を検知してから100日以内にワクチン候補を用意する目標です。過去の知見の整理、仮説の立案、プロトコル設計など、時間のかかる初期作業を短くする役割が期待されています。
ベンチマーク性能(2026年6月公表のGPT-Rosalind-5.5)

出典: OpenAI Deployment Safety Hub 公式
GPT-Rosalind-5.5は、OpenAIの公式評価で医薬化学・ゲノミクス・ウェットラボのいずれもGPT-5.5を上回りました。ただし伸び幅は数ポイントで、すべてOpenAIの自己申告です。
ベンチマーク | GPT-Rosalind-5.5 | GPT-5.5 | 差 |
|---|---|---|---|
MedChemBench(医薬化学) | 27.5% | 25.1% | +2.4ポイント |
GeneBench(ゲノミクス) | 21.6% | 20.4% | +1.2ポイント(トークン31%減) |
LabWorkBench(ウェットラボ、新設) | 63.2% | 55.8% | +7.4ポイント |
LifeSciBench | GPT-5.5を上回る(数値は非公表) | — | — |
2026年4月の初版(GPT-5.4との比較)では、次の結果が報告されています。
- BixBench(バイオインフォマティクスの実タスク): スコアが公開されているモデルの中で最高(報道で数値が割れているため、ここでは値を載せません)
- LABBench2: 11タスク中6タスクでGPT-5.4を上回り、伸びが最も大きかったのはクローニング関連(CloningQA)
- Dyno Therapeuticsとの共同評価(RNA配列): Codexでbest-of-10の条件のとき、予測は人間の専門家57名の95パーセンタイルを超え、配列生成は約84パーセンタイル
ベンチマーク数値の読み方に関する注意
- これらの数値はすべてOpenAIの自己申告で、第三者による独立した再現は現時点で確認できません
- 10月のAcademic Plan発表で示された比較例について、OpenAIは「依頼した成果物を文章として満たしたかを評価したもので、科学的な正しさや実現性は検証していない」と注記しています
- 出力は研究の出発点となる予備的な案として扱い、実験と専門家の確認で検証する前提です
GPT-Rosalindは研究者の判断や実験を置き換えるものではなく、調べる・考える・計画する工程を速める道具と捉えるのが現実的です。
GPT-Rosalindの料金と提供状況(2026年10月時点)

通常のtrusted access経由でAPIを使う場合、2026年10月5日から従量課金がかかります。無料になるのは、Rosalind Biodefenseに採択された場合と、Academic Planの席(米国の大学のみ、APIは対象外)に限られます。
API料金(OpenAI公式の料金ページ)
モデルID | 入力 | キャッシュ入力 | 出力 | 状況 |
|---|---|---|---|---|
| $5.00 | $0.50 | $25.00 | 2026年10月5日に課金開始。承認された社内研究向けにtrusted access経由でのみ提供 |
| $5.00 | $0.50 | $25.00 | 料金ページに掲載。発表やシステムカードは確認できず、用途は未公表 |
※単位は100万トークンあたりの米ドル。料金ページには「適格な組織は、新しいGPT-Rosalindモデルが出たときも引き続き利用できる」と書かれています。データレジデンシー(地域内処理)のエンドポイントは、2026年3月5日以降に出たモデルで10%増しです。
試算の例: キャッシュを使わず、入力1,000万トークン・出力200万トークンを使うと、入力$50+出力$50で約$100です。論文の束を何度も読み込ませる用途では入力が膨らみやすいため、同じ資料を繰り返し渡すならキャッシュ入力(入力の10分の1の単価)が費用を抑えるのに役立ちます。
ChatGPT・Codexで使う条件
- ChatGPT EnterpriseまたはBusinessの契約を持つ適格な組織が、trusted accessに申請する
- サブスクを買う、ワークスペースに入るだけでは使えない。承認内容で使えるワークスペースと製品が決まる
- 申請はライフサイエンス向けアクセス申請フォームかCodexから。組織のオーナーまたは管理者の承認が必要
- 用途は社内研究に限られ、顧客向け製品や外部に提供する商用アプリには組み込めない
Rosalind Academic Plan(2026年10月15日発表)
- 対象は米国の大学の研究室のみ。日本を含む他地域への拡大時期は未発表
- ChatGPT Business Standardを最大30席・最長12か月・1席あたり月$0で使える
- GPT-Rosalind自体を使うには、別にtrusted accessの承認が必要
- APIアクセスとAPIクレジットは含まれない
- 研究室の責任者(PI)が申請し、機関の安全担当者とともに責任を負う。プラン経由の研究データは既定で学習に使われない
- 12か月後の料金、採択件数、締切は未発表
今すぐ日本で何ができるか(段階別アクセスガイド)
日本の組織にとって現実的な経路は、「Codexのプラグインで試す」「Business/Enterprise契約の上でtrusted accessに申請する」「公衆衛生・バイオセキュリティ目的ならBiodefense開発者トラックに申請する」の3つです。Academic Planは米国の大学限定のため、現時点では対象外です。
GPT-Rosalindを使う4つの経路の比較
経路 | 対象 | 費用 | API | 日本の組織 | 申請先 |
|---|---|---|---|---|---|
通常のtrusted access | Enterprise/Business契約のある適格組織(社内研究) | 2026年10月5日から従量課金(APIは入力$5/出力$25) | ○ | ○ 申請できる | ライフサイエンス向けアクセス申請フォーム/Codex |
Rosalind Biodefense 開発者トラック | 学術・非営利・政府関連・ミッション志向のチーム | OpenAIがスポンサー | ○(プログラム内) | ○ 世界から申請できる | Rosalind Biodefense申請フォーム |
Rosalind Biodefense 政府トラック | 一部の米連邦機関・同盟国パートナー | OpenAIが提供 | 個別 | △ 日本が含まれるかは未確認 | 個別調整 |
Rosalind Academic Plan | 米国の大学研究室 | 30席まで最長12か月無料(GPT-Rosalindは別審査) | × | × 対象外 | Academic Plan申請 |
GPT-Rosalindを使わずに始めるなら、Codexの「Life Sciences」プラグインがすぐ使える選択肢です。現行の主力モデルでも公開データベースや文献に接続でき、自社の業務で何に役立つかを確かめてから申請内容を固められます。現在の主力モデルについては「OpenAI Astraとは」が参考になります。
開発者トラックへの申請:日本機関が押さえるべきポイント
- 対象: 日本の大学・非営利・研究機関も申請できる。用途はパンデミック対策・バイオセキュリティに限られる
- 伝えるべき内容: 公益につながる目標、研究目的、ガバナンス体制(誰が使い、誰が責任を持つか)
- 審査で見られる点: 事業確認とコンプライアンス審査。承認後も利用の監視が続き、必要に応じて範囲の縮小や取り消しがある
- 費用: 採択されればOpenAIが利用費を負担。GA後もこの扱いが続くかは申請時に確認する
製薬企業・スタートアップが社内導入するとき
創薬などの商業研究が目的なら、Biodefenseではなく通常のtrusted accessを使う経路になります。Business/Enterprise契約、管理者による申請、10月5日からの従量課金を前提に予算を組む必要があります。社内研究にしか使えないため、顧客に出す製品や外部サービスに組み込む計画とは切り分けて考えてください。
社内の実験ノートや解析パイプラインとつなぐ場合は、モデル費用とは別に、データの受け渡しや権限管理を作る費用がかかります。どこまで作ると何にいくらかかるかは、AI開発の費用相場(改修・PoC・本開発の価格と見積の内訳)を目安にしてください。業界ごとの導入例は「製薬・バイオテックのAI活用事例」にまとめています。
政府トラックについての現状
政府トラックの対象は「米連邦機関と同盟国パートナー」と説明されていますが、日本が含まれるかは2026年10月時点でも公式に確認できません。日本の行政機関が参加するには、OpenAIとの個別の協議が必要になると見られます。
このツールを自社のシステムや業務にどう組み込むか、ご提案します
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デュアルユースリスクと安全策

生命科学AIの最大の論点は、防御にも攻撃にも使える「デュアルユース」です。OpenAIはGPT-Rosalind-5.5を生物・化学領域で「High」と判定しており、危険な出力をリアルタイムで止める仕組みではなく、使う組織を審査し、使い方を監視する方式で安全を確保しています。
システムカードで示された判定
2026年6月3日公開のGPT-Rosalind-5.5システムカードの要点は次のとおりです。
- Preparedness Frameworkの判定: 生物・化学領域は「High」(最上位のCritical未満)。サイバー領域はGPT-5.5以下
- 生物リスクの評価: 生物・化学の評価はほぼすべてでGPT-5.5以上。一方、ウイルス学・生物脅威に関わる評価ではGPT-5.5 Proを下回った
- 拒否の方針: 高度な生物学の質問は拒否しないよう学習しつつ、生物兵器づくりを実質的に助ける悪意ある依頼は拒否するよう学習
- GPT-5.5との違い: GPT-5.5と違い、危険な生成をリアルタイムで遮断する自動モニターは置いていない。その代わりにアクセス審査・契約・監視で安全を確保する
Preparedness Frameworkの判定が提供範囲を左右した別の例として、「OpenAI Astraの一部機能停止」も参考になります。
OpenAIの安全策の4本柱
- trusted accessの管理: 審査を通った組織だけに提供。民間の申請者は事業確認とコンプライアンス審査、政府の申請者は用途を確認する別経路
- モデル側の境界: 有害な生物・サイバー支援に対して拒否するよう学習
- 監視と執行: 承認後も利用を監視し、追加の監視、利用範囲の縮小、アクセスの取り消しができる
- 契約上のセキュリティ要件: 利用組織に追加の管理義務を課す
利用組織に求められる管理
リアルタイムの遮断がない分、使う側の管理責任は重くなります。システムカードは、利用組織に次の対応を求めています。
- 承認されたユーザーだけに使わせ、権限は最小限にする
- オンボーディング(利用開始時の教育)を行う
- 内部不正への対策をとる
- 強固なID管理とロールベースのアクセス制御を入れる
- 不要になったアクセス権はすぐに削除する
社内でGPT-Rosalindを使うなら、研究部門だけでなく情報システム部門や安全管理の担当者も申請段階から関わる体制が必要です。
業界・研究者の主な懸念
- 合成DNAスクリーニングの義務化要請(2026年6月4日): Sam Altman氏、Dario Amodei氏、Demis Hassabis氏、Mustafa Suleyman氏を含む80人超が、合成DNAの注文スクリーニング(懸念配列との照合、顧客確認、記録保持)を義務化するよう米議会に求める書簡を出しました。AIを防御側に渡す動きと、DNAを手に入れる段階を規制する動きを組み合わせる考え方です
- 審査の抜け道への指摘: 審査をすり抜ける申請者、パートナー組織が侵害されるリスク、「同盟国」の定義のあいまいさを指摘する報道があります(TechTimes、2026年6月)
- 自己申告の評価への依存: 能力・リスクの評価がOpenAI自身によるもので、第三者の検証が追いついていない点も課題として残ります
政策的背景
発表は、AIモデルの事前審査に関する大統領令が延期された約1週間後だったと報じられています。政府側の審査の仕組みが固まらない中で、民間が自主的なアクセス管理の枠組みを示した形です。翌6月4日にはOpenAIが行動計画「Biodefense in the Intelligence Age」を公開し、AIで生物学的な脅威への耐性を高める方針を打ち出しました。安全保障分野でのAI調達の流れは「国防総省のAI調達動向」でも整理しています。
類似プログラム・ツールとの比較
審査を通った組織にだけ高い能力のモデルを開く方式は、OpenAIとAnthropicの双方で広がっています。生命科学ではAnthropicも9月に審査制のプログラムを始めたと報じられており、構造予測のAlphaFoldとは役割が分かれます。
Rosalind Biodefense vs Anthropic Project Glasswing
Anthropic Project Glasswingは、Claude Mythosをサイバーセキュリティの防御目的に限って開いたプログラムです。領域は違いますが、「高い能力のモデルを、審査済みの防御側に先に渡す」という発想は共通しています。
比較項目 | Rosalind Biodefense | Anthropic Project Glasswing |
|---|---|---|
運営元 | OpenAI | Anthropic |
領域 | パンデミック対策・バイオセキュリティ | サイバーセキュリティ |
使うモデル | GPT-Rosalind(最新はGPT-Rosalind-5.5) | Claude Mythos |
発表時期 | 2026年5月29日 | 2026年4月7日 |
構成 | 開発者トラック・政府トラックの2つ | 限定アクセスの参加組織 |
主な対象 | 生命科学の研究機関・開発チーム・政府機関 | セキュリティ組織・重要インフラの関係者 |
費用(採択組織) | OpenAIがスポンサー | プログラムの条件による |
同じtrusted accessの方式をサイバー領域に使ったOpenAIの例は「GPT-5.5-Cyberとは」で解説しています。
GPT-Rosalind vs Anthropic Life Sciences Verification Program
Anthropicは2026年9月17日に、生命科学の研究組織向けの審査制プログラム「Life Sciences Verification Program(LSVP)」をベータで始めたと報じられています。以下は報道ベースの情報で、Anthropic公式での確認はできていません。
比較項目 | GPT-Rosalind(通常のtrusted access) | Anthropic LSVP(報道ベース) |
|---|---|---|
開始 | 2026年9月にGA、10月5日に課金開始 | 2026年9月17日にベータ開始 |
対象 | ChatGPT Enterprise/Business契約の組織、API | Claude Enterprise/Team/APIの組織(個人プランは後日) |
審査 | 事業確認・コンプライアンス審査 | 研究実績・セキュリティ・倫理の審査。通常用途と高リスク用途の2段階 |
監視の方式 | リアルタイム遮断なし、監視と執行で安全を確保 | リアルタイム遮断から事後監視へ移行 |
専用モデル | GPT-Rosalindという専用モデルがある | 既存のClaudeの安全策を審査済み組織向けに調整 |
Anthropic側の審査制アクセスの考え方は「Claudeのサイバー検証プログラム」も参考になります。
GPT-Rosalind vs AlphaFold
GPT-RosalindとAlphaFoldは、競合ではなく補い合う関係です。
比較項目 | GPT-Rosalind | AlphaFold(Google DeepMind/Isomorphic Labs) |
|---|---|---|
主な役割 | 推論・文献統合・実験計画・ワークフローの取りまとめ | タンパク質の立体構造予測 |
強み | 調べる・考える・計画する工程を一続きで進める | 構造予測の精度 |
弱み | 構造予測そのものは専用モデルに及ばない | 文献統合や実験計画には向かない |
アクセス | 審査制(trusted access) | 研究者向けに公開されたモデル・サーバーあり |
実務では、AlphaFold系で構造を予測し、その結果の解釈や次の実験計画をGPT-Rosalindで詰める、という組み合わせが現実的です。
OpenAIのバイオセキュリティ投資戦略(前史)

Rosalind Biodefenseの前から、OpenAIはバイオセキュリティのスタートアップに出資してきました。モデルを防御側に渡すプログラムは、こうした投資の延長線上にあります。
約4,500万ドル規模のバイオセキュリティ先行投資
- Valthos(2025年10月): 3,000万ドルの調達とともに表に出た、生物学的な脅威を早く見つけるシステムの開発企業。OpenAI Startup Fundが出資
- Red Queen Bio(2025年11月): AIの能力向上で表面化するバイオリスクを減らすスタートアップ。1,500万ドルのシードをOpenAIがリード
2社の調達額を足すと約4,500万ドル規模です(各社の調達総額の合算で、OpenAIの出資額ではありません)。
製薬企業での利用
GPT-Rosalindの初期協力先としては、Amgen、Moderna、Allen Institute、Thermo Fisher Scientificが公式に名前を挙げられています。2026年6月には、Novo NordiskもGPT-Rosalindを使う組織として報じられました。Biodefenseが公共・防衛側の使い道を担い、製薬企業の社内研究が商業側の使い道を担う、という分担です。
OpenAIの事業全体の動きは「OpenAI「The Deployment Company」戦略とは」でも解説しています。
こんな組織・研究者におすすめ
GPT-Rosalindは、審査と管理体制に時間をかけられる組織向けです。個人や、すぐに使いたい人向けではありません。
申請・活用が向いている組織・研究者
- 感染症・疫学を研究する大学・研究機関: 疫学モデリングや早期検知など、Biodefense開発者トラックの用途に合う研究目的がある
- DNA合成スクリーニングや検知技術を作る非営利・スタートアップ: 開発者トラックの初期参加チームに近い領域
- ChatGPT Enterprise/Businessを契約済みの製薬・バイオテック企業: 社内研究で文献統合や実験計画を速めたい。従量課金の予算を組める
- 権限管理・内部不正対策を社内で回せる組織: システムカードが求める管理を担える
- まず手元で試したい生命科学の研究者・エンジニア: CodexのLife Sciencesプラグインならすぐ始められる
おすすめしない(現時点では難しい)ケース
- ChatGPTの個人プラン(Free/Plus/Pro)だけを使っている人: GPT-Rosalindは使えない
- 顧客向け製品や外部サービスに組み込みたい企業: 用途は社内研究に限られる
- 費用をかけずに商業研究で使いたい企業: 無料なのはBiodefense(公衆衛生目的)とAcademic Plan(米国の大学)だけ
- 日本の大学でAcademic Planの無料席を期待している研究室: 現時点では米国の大学のみ
- タンパク質の構造予測が主な目的の研究者: AlphaFold系の方が合う
- 臨床判断の補助に使いたい医療者: 研究支援のモデルで、診療の判断には使えない。臨床向けは「ChatGPT for Cliniciansとは」を参照
GPT-Rosalind・Rosalind Biodefense 主要タイムライン
日付 | 主要イベント |
|---|---|
2025-10 | Valthosが3,000万ドルの調達を公表(OpenAI Startup Fundが出資) |
2025-11 | OpenAIがRed Queen Bioの1,500万ドルのシードをリード |
2026-04-16 | GPT-Rosalindをリサーチプレビューで発表。Codex向けLife Sciencesプラグインも公開 |
2026-05-29 | Rosalind Biodefenseを発表(開発者・政府の2トラック、OpenAIがスポンサー) |
2026-06-03 | GPT-Rosalind-5.5とシステムカードを公開。世界の適格組織にリサーチプレビューを拡大 |
2026-06-04 | 行動計画「Biodefense in the Intelligence Age」公開。AI企業トップらが合成DNAスクリーニングの義務化を議会に要請 |
2026-08-19 | システムカードの一部数値を訂正 |
2026-09 | リサーチプレビュー終了、trusted access経由で一般提供(API変更履歴では9月8日) |
2026-10-05 | API |
2026-10上旬 | 料金ページに |
2026-10-15 | Rosalind Academic Planを発表(米国の大学研究室向け) |
よくある質問(FAQ)
Q: ChatGPT PlusやProでGPT-Rosalindを使えますか?
使えません。GPT-Rosalindは組織単位の審査制で、ChatGPT Enterprise/Businessの契約に加えてtrusted accessの承認が必要です。個人で生命科学の作業を試すなら、Codexの全ユーザーに開かれているLife Sciencesプラグインが現実的です。
Q: 一般提供になったということは、誰でも申し込めるのですか?
いいえ。一般提供になったのは「審査に通った組織なら、プレビューの枠を待たずに使える」という意味です。審査そのものは残っており、用途も社内研究に限られます。変わったのは提供の段階と、10月5日から料金がかかるようになった点です。
Q: Rosalind Biodefenseに採択されても料金はかかりますか?
発表時点の条件では、OpenAIがモデルの利用費を負担し、参加チームには課金しません。この条件を変える告知は見つかっていません。ただし通常のtrusted accessが有料化した後の扱いを明言した公式文書もないため、申請時に確認してください。
Q: gpt-rosalind-discovery は何が違うのですか?
現時点では分かりません。料金ページには gpt-rosalind-research と同じ単価で載っていますが、発表やシステムカードが確認できないため、用途や性能の違いは公表待ちです。
Q: 日本の大学はAcademic Planを使えますか?
2026年10月時点では使えません。Academic Planの対象は米国の大学研究室だけで、他地域への拡大時期は発表されていません。日本の大学がGPT-Rosalindを使うなら、大学としてのEnterprise契約を通じたtrusted accessか、公衆衛生・バイオセキュリティ目的でのBiodefense開発者トラックが候補です。
Q: GPT-Rosalindで作った成果を自社サービスに組み込めますか?
GPT-Rosalindそのものを顧客向け製品や外部の商用アプリに組み込むことはできません。社内研究の中で仮説や実験計画づくりに使い、その成果を研究者が検証して製品開発に生かす、という使い方になります。
Q: 危険な使い方はどう防いでいるのですか?
リアルタイムで出力を止める自動モニターではなく、使える組織の審査、承認後の監視、契約上の義務で防ぐ方式です。モデル自体も、生物兵器づくりを助ける依頼は拒否するよう学習されています。利用組織には、権限の最小化やアクセス管理などの責任が求められます。
Q: 日本が政府トラックの「同盟国パートナー」に入る可能性はありますか?
公式発表では同盟国の範囲が示されておらず、日本が含まれるかは確認できていません。政府トラックは米国の連邦機関から始まっており、日本の行政機関が加わるにはOpenAIとの個別の協議が必要と見られます。
まとめ:Rosalind Biodefenseが示すもの
Rosalind Biodefenseは、生命科学向けの推論モデルGPT-Rosalindを、パンデミック対策とバイオセキュリティに取り組む開発者・政府機関に、OpenAIの費用負担で開放するプログラムです。LLNL、Johns Hopkins APL、CEPIといった機関が、既存の計算基盤や研究プラットフォームに組み込む形で使い始めています。
導入を考えるうえで外せないのは、料金・無料で使える経路・安全面の扱いです。
- GPT-Rosalindは9月に一般提供となり、通常のtrusted accessは10月5日から有料(APIは入力$5/出力$25、100万トークンあたり)
- 無料で使える経路は、Biodefense(公衆衛生・バイオセキュリティ目的)とAcademic Plan(米国の大学、APIなし)に限られる
- リアルタイム遮断はなく、審査・監視・契約で安全を確保するため、利用組織の権限管理が重い
日本の組織が取れる次の一手
- 今すぐ: CodexのLife Sciencesプラグインで、自分たちの研究に役立つかを確かめる
- 社内研究で使うなら: Enterprise/Business契約を前提にtrusted accessを申請し、従量課金の予算と権限管理の体制を用意する
- 公衆衛生・バイオセキュリティ目的なら: Biodefense開発者トラックに申請し、費用の扱いを確認する
モデル本体の機能や使い方は「GPT-Rosalindとは?OpenAIの生命科学特化AI」、医療分野全体のAI活用は「医療のAI活用」もあわせてご覧ください。
参考情報源
- OpenAI「Strengthening societal resilience with Rosalind Biodefense」
- OpenAI「Introducing GPT-Rosalind for life sciences research」
- OpenAI「Introducing GPT-Rosalind-5.5」
- OpenAI「GPT-Rosalind-5.5 System Card」
- OpenAI「Bringing GPT-Rosalind to academic research labs」
- OpenAI API Pricing
- OpenAI API Changelog
- OpenAI Help Center「GPT-Rosalind for life sciences research」
- OpenAI「Biodefense in the Intelligence Age」
- Axios「OpenAI launches biodefense program」
- R&D World「OpenAI launches Rosalind Biodefense」
- Semafor「AI executives make rare collective warning on bioweapons threat」
このツールを自社のシステムや業務にどう組み込むか、ご提案します
この記事の著者

AI革命
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AI革命株式会社の編集部です。最新のAI技術動向から実践的な導入事例まで、企業のデジタル変革に役立つ情報をお届けしています。豊富な経験と専門知識を活かし、読者の皆様にとって価値のあるコンテンツを制作しています。
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