ビジネス活用2026年10月更新

OpenAI財務情報漏洩【2025年度】収益130億ドル・純損失385億ドルの全貌|赤字構造・Microsoft依存・IPO前夜のリークを完全解説【2026年10月更新】

公開日: 2026/06/18
更新日: 2026/10/25
OpenAI財務情報漏洩【2025年度】収益130億ドル・純損失385億ドルの全貌|赤字構造・Microsoft依存・IPO前夜のリークを完全解説【2026年10月更新】

この記事のポイント

2026年6月に報じられたOpenAIの2025年度財務諸表では、売上130.7億ドルに対し、OpenAIに帰属する純損失は385.3億ドルでした。損失の内訳、Microsoftへの約172億ドルの支払い、2026年1〜3月期の数字、2027年が有力になった上場時期まで、報道ごとの確度を分けて整理します。

2026年6月中旬に報じられたOpenAIの2025年度財務諸表によると、売上は130.7億ドル(前年の約3.5倍)、OpenAIに帰属する純損失は385.3億ドルでした。ただし純損失の大きな部分は、営利化に伴う会計上の評価損415.5億ドルで、現金の支出ではありません。本業の赤字を示す営業損失は209.2億ドルです。

数字はすべて非公開文書をもとにした報道ベースで、OpenAIは内容についてコメントしていません。2026年10月26日時点でS-1(上場申請書類)はまだ一般公開されておらず、上場時期は「2027年」が有力という報道に変わっています。

OpenAIの上場やAI業界の採算に関心のある投資家・経営者、ChatGPTやOpenAI APIを業務に組み込んでいる企業の担当者に向けた記事です。円換算は1ドル=150円で概算しています。

この記事でわかること

  • 漏洩した財務諸表の出どころと、OpenAI・FTの反応
  • 2025年度の売上130.7億ドル・純損失385.3億ドルの正しい読み方
  • 「385億ドルの損失」のうち、本業の赤字はいくらか
  • OpenAIがMicrosoftに年約172億ドルを払う構造
  • 2026年1〜3月期の数字と、マイナス122%という営業利益率の意味
  • 株主構成表(cap table)で言われていること、言えないこと
  • 2026年4月のMicrosoft契約見直しで変わった点
  • 上場時期の見通しと、日本の読者に関係する影響

1. 漏洩の経緯と、なぜ「信頼できる情報」なのか

財務書類と調査をイメージした写真

数字の信頼度は高いものの、「公式の確定値」ではありません。Financial Times(FT)が同じ文書を独自に入手して確認した一方、OpenAIは確認も否定もしていないからです。

一次ソースと独立検証の構造

公式発表と報道を時系列で並べると、次のようになります。

日付(米国時間)

出来事

確度

2026年6月8日

OpenAIが公式ブログで、S-1の草案をSECに非公開で提出したと公表。上場時期は「未定」

公式

2026年6月15日

テックライターのEd Zitron氏が、ニュースレター「Where's Your Ed At」で2025年度の監査済み財務諸表(2024年度との比較つき)の内容を公開

報道

2026年6月16日

FTが同じ文書を入手して確認したと報道。Fortune、Quartzなども詳しく報じる。OpenAIはコメントを控えた

報道

S-1をSECに出した日そのものは、OpenAIの発表に書かれていません。「5月22日前後」とする報道はありますが、未確認です。主幹事についても、Goldman SachsとMorgan Stanleyは複数の報道で名前が挙がっているものの、JPMorganが入るかは確認できていません。

Zitron氏はAI業界に一貫して懐疑的な論者として知られています。一方のFTは、情報源の話として「Zitron氏の見立てほど深刻ではない」という見方も伝えています。数字そのものは両者で一致しており、評価が分かれているのは「その数字をどう読むか」です。

数字ごとの出どころと確度

この件では、出どころの違う3種類の情報が混ざって語られがちです。確度を分けておくと、読み違いを防げます。

情報

出どころ

確度

2025年度の損益・Microsoftとの取引額

Zitron氏が公開した財務諸表(FTが同一文書を確認)

高い。ただし非公式で、S-1公開時に数字が変わる可能性あり

2026年1〜3月期の売上・損失

The Information(関係者・株主向け資料)

中程度。GAAPと非GAAPの数字が混在

株主構成表(cap table)

投資家がXに投稿した再構成資料

低い。公開情報からの推計とみられ、OpenAIの確認なし

なぜIPO直前の漏洩が打撃なのか

上場準備中の会社は、S-1を一般公開するタイミングで初めて財務を投資家に示し、説明の順序を自分で組み立てます。今回はその前に、赤字の大きさとMicrosoftへの支払いが外に出ました。評価額の議論が先に走り、OpenAIが説明の主導権を握りにくくなった点が痛手です。

S-1非公開提出の詳しい中身は、OpenAI IPO S-1機密申請の完全解説にまとめています。

2. 2025年度の収益と急成長の実態

収益成長グラフをイメージしたビジネスチャート

2025年度の売上は130.7億ドル(約1.96兆円)で、2024年度の37億ドルから約3.5倍に増えました。成長そのものは本物ですが、費用はそれ以上の額で増えています。

1年で売上は約3.5倍に

年度

売上

前年比

2024年

37億ドル

—

2025年

130.7億ドル

約+253%

ChatGPTの有料プラン(Plus・Pro・Team・Enterpriseなど)とAPIの利用が、売上の伸びを支えたとみられます。

「年換算200億ドル」と「通年130億ドル」は別の数字

OpenAIは以前、「2025年末の年換算売上は200億ドルを超えた」と説明していました。130.7億ドルと食い違って見えますが、計算の仕方が違います。

  • 通年売上(130.7億ドル): 1月から12月までに実際に計上した売上の合計
  • 年換算売上(200億ドル超): 期末の月の売上を12倍した数字。成長中の会社ほど、通年売上より大きく出る

その後の報道では、年換算売上は2026年8月に400億ドル超(Bloomberg)、9月に700億ドル近く(Axios)とされました。ところが10月8日、FTは「投資家への説明は500億ドルに迫る水準」と報じています。700億ドルという数字は、クラウド経由の売上も含めて計上するAnthropicと比べやすくするため、投資家側が作った数字だったとされます。年換算売上は定義で大きく変わるので、比べるときは計算の前提を確かめる必要があります。

成長が本物である証拠

  • 2026年1〜3月期の売上は57億ドルで、前年同期の約3倍(The Information)
  • ChatGPTの週間利用者は、2月に9.2億人、1〜3月期の平均で9.05億人(同)
  • 有料会員は2025年末の4,700万人から、3月末には5,500万人に増加(同)

利用者数のその後の推移は、OpenAIのアクティブユーザー10億人に関する記事で扱っています。

3. 385億ドルの純損失の正体を3段階に分けて見る

財務損失の分析をイメージした会計データ

「385億ドルの損失」をそのまま事業の実力と読むのは誤りです。 本業の赤字は営業損失の209.2億ドルで、残りの大半は営利化に伴う会計上の評価損です。漏洩文書の数字だけを使うと、3段階に分けられます。

損失の3層構造

【2025年度 OpenAIに帰属する純損失 385.3億ドル】の内訳

第1層: 営業損失(本業の赤字)
  ├─ 売上:     130.7億ドル
  ├─ 費用合計: 340億ドル
  └─ 営業損失: △209.2億ドル

第2層: 営業外の損益
  ├─ 転換可能持分・ワラント負債の公正価値変動: △415.5億ドル
  │    (営利化=資本再編に伴う会計上の評価損。現金の支出ではない)
  └─ その他(利息など): 約+21億ドル(差額からの推計。内訳は未報道)
  = 純損失(全体): △603.5億ドル

第3層: 非支配持分への配分
  └─ 非支配持分に帰属する損失 178.7億ドル + 償還可能な非支配持分 39.5億ドル
     = 218.2億ドルを差し引く

  ↓
  OpenAIに帰属する純損失: △385.3億ドル

評価損が膨らんだのは、OpenAIの資本再編が背景です。2025年10月、営利部門は公益法人(PBC)の「OpenAI Group PBC」となり、非営利のOpenAI Foundationがこれを支配する形に変わりました。この過程で、投資家が持っていた転換可能な権利などを時価で評価し直す必要が生じ、評価額の急上昇がそのまま帳簿上の損失になりました。

なお、非支配持分への損失の配分がどう整合しているのかは、Zitron氏自身も「よくわからない」としています。S-1が公開されれば、この部分の説明は変わる可能性があります。

実質的な赤字はいくらか

「非現金・一時的な費用を除いた実質の損失は約80億ドル(約1.2兆円)」という見方が、FTの情報源の話として報じられています。ただし、どの項目を除いたのかは公表されていません。385億ドルから415億ドルを単純に引いた数字とも合わないため、目安として受け止めるのが安全です。

確実に言えるのは、本業の営業損失が209.2億ドル(約3.1兆円)あるという点です。評価損を除いても、規模の大きな赤字であることは変わりません。

2025年度コスト内訳

費目

2024年

2025年

増加率

売上原価(推論などのコスト)

26.5億ドル

75億ドル

+183%

研究開発費

78.1億ドル

191.8億ドル

+146%

販売・マーケティング費

11.1億ドル

57.3億ドル

+416%

一般管理費

9.07億ドル

15.7億ドル

+73%

費用合計

124.8億ドル

340億ドル

+172%

営業損失

87.8億ドル

209.2億ドル

—

純損失(全体)

88.4億ドル

603.5億ドル

—

OpenAIに帰属する純損失

50.9億ドル

385.3億ドル

—

費用の半分以上は研究開発費で、その多くはモデルの学習に使う計算資源とみられます。販売・マーケティング費は5倍以上に増えましたが、内訳は報じられていません。

グロスマージンは約43%

2025年度の粗利率は、(130.7−75)÷130.7で約43%です。2024年度の約28%から改善しました。ソフトウェア企業としては低めの水準で、推論にかかる計算資源のコストが重いことがわかります。

売上1ドルあたりの赤字(営業損失÷売上)は、2024年の2.37ドルから2025年は1.60ドルに縮みました(Fortune)。言い換えると、2025年は1ドルを売り上げるのに約2.60ドルの費用をかけていたことになります。規模が大きくなるにつれて採算は良くなっていますが、黒字にはまだ遠い水準です。

赤字の大きさを他社と比べると、MetaのVR・AR部門(Reality Labs)の2024年の損失が約177億ドル、WeWorkのピーク時の年間損失が約46億ドルでした(Business Insider Japan)。OpenAIの営業損失はこれらを上回ります。

4. Microsoft依存の実態と、年172億ドルの一方的な支出

クラウドコンピューティングとAzure依存をイメージしたサーバー写真

2025年にOpenAIからMicrosoftへ流れたお金は約172億ドル(約2.6兆円)で、売上130.7億ドルの約1.3倍にあたります。逆方向の支払いは約3億ドルにとどまりました。

OpenAIとMicrosoftの「三重の関係」

  1. 最大の取引先: OpenAIはMicrosoftのクラウド「Azure」で、学習と推論の計算資源を大量に調達している
  2. 主要株主: 2025年10月の資本再編後、Microsoftの持分は約27%と報じられた
  3. 販売パートナー: MicrosoftはOpenAIの技術を自社のCopilotなどに組み込み、売上の一部をOpenAIと分け合ってきた

2025年度 OpenAI→Microsoft 支払い内訳

費目

2025年の金額

研究開発(学習用の計算資源とみられる)

105.9億ドル

売上原価(推論などのサービス提供)

60.47億ドル

販売・マーケティング

5.27億ドル

一般管理

0.42億ドル

OpenAI→Microsoft 合計

約172億ドル

Microsoft→OpenAI

3.03億ドル

2025年末時点のMicrosoftへの未払い

36.4億ドル

差し引きで、OpenAIからMicrosoftへ年約169億ドルが出ていった計算です。

売上の約1.3倍をMicrosoftに支払っている

172億ドル÷130.7億ドルで、Microsoftへの支払いは売上の約132%です。売上をすべて充てても、Microsoftへの支払いをまかなえない状態でした。

ただし、これは学習用の計算資源まで含めた金額です。新しいモデルの開発に先行投資している時期の数字なので、「Microsoftがいなければ事業が回らない」とまで言い切るのは行き過ぎでしょう。正確には、計算資源の調達先がほぼ1社に偏っていたため、価格交渉や供給の面でMicrosoftに強く依存していた、という状態です。

SoftBankとの比較

相手

OpenAIの受取額

OpenAIの支払額

差し引き

Microsoft

3.03億ドル

約172億ドル

約169億ドルの支払い超過

SoftBank

8.67億ドル

報道なし

8.67億ドルの受け取り

SoftBankからの受け取り8.67億ドルの中身は、報じられていません。

5. 2026年Q1速報で出たマイナス122%営業マージンの衝撃

株式市場のトレーディングデータと四半期業績をイメージした画面

2026年1〜3月期は、売上57億ドルに対して営業損失93億ドル、純損失213億ドル超だったと報じられています。これは6月に漏洩した財務諸表とは別ルートの情報で、出どころはThe Informationです。

Q1 2026 財務サマリー

指標

金額・水準

出どころ

売上

57億ドル(前年同期の約3倍)

The Information

調整後(非GAAP)営業利益率

マイナス122%

The Information(5月22日報道)

営業損失

93億ドル

The Information(株主向け資料、6月下旬報道)

純損失

213億ドル超(うち投資家の権利の再評価による帳簿上の損失124億ドル)

同上

株式報酬

23億ドル超

同上

粗利率

39%(比較対象の期の33%から改善)

同上

現金の消費

約37億ドル

同上

現金・有価証券の残高

730億ドル超

同上

マイナス122%の意味

マイナス122%は、株式報酬などの大きな費用を除いた「調整後」の営業利益率です。57億ドルの売上に対し、調整後でも約69.5億ドルの営業赤字だった計算になります(Zitron氏の試算)。株式報酬などを含めた営業損失は93億ドルです。

現金の消費は約37億ドルで、損失に比べるとかなり小さい数字です。これは、株式報酬や評価損が現金を使わない費用であることに加え、前受金などの影響もあるとみられます。単純に4倍すると年約148億ドルですが、2025年の「約80億ドル」とは定義が違う可能性が高く、そのまま比べて「赤字が加速した」とは言えません。

手元には730億ドル超の現金・有価証券があり、このペースが続いても短期間で資金が尽きる状況ではありません。

ChatGPTユーザー数の「成長鈍化」

週間利用者は2月に9.2億人、1〜3月期の平均は9.05億人で、伸びが一時止まったと受け止められました。一方、有料会員は3か月で約800万人増えています。利用者数の伸びが鈍っても、有料化が進めば売上は伸びる構図です。

6. IPO前夜の株主構成とcap tableから見えること

株主構成表(cap table)は、2026年3〜4月ごろに投資家のSheel Mohnot氏がXに投稿した表がもとになっています。公開情報やセカンダリー市場のデータから再構成したものとみられ、OpenAIは確認していません。6月の財務諸表とは別の資料で、確度も一段低いと考えてください。

主要株主の持株比率と投資リターン

株主

持株比率(表の数字)

取得原価(推計)

評価額8,520億ドルでの価値

Microsoft

26.79%

約130億ドル

約2,283億ドル

OpenAI Foundation(非営利)

25.8%

—

約2,198億ドル

SoftBank

11.66%

約646億ドル

約993億ドル

Amazon

4.66%

未確認

—

NVIDIA

3.47%

未確認

—

従業員(現・元)

約20%

—

—

サム・アルトマンCEO

表上は保有なし

—

—

8,520億ドルは、2026年3月末に完了した1,220億ドルの資金調達時の評価額(ポストマネー)です。参考までに、2025年10月の資本再編時には、Microsoftの持分は約27%、OpenAI Foundationは約26%と報じられており、表の数字とおおむね一致します。

株主構成の議論では、OpenAIが米政府に5%の株式付与を提案した件も関係してきます。

サム・アルトマン氏の持分は表の上ではゼロ

アルトマン氏の持分は、表の上では「なし」です。ただし、公益法人化の後に株式を付与するかどうかは「未定」と報じられており、ゼロのまま上場を迎えるとは限りません。付与の有無や規模はS-1で明らかになるとみられます。

Microsoftの17倍リターン

Microsoftは約130億ドルの取得原価に対し、8,520億ドル基準で約2,283億ドルの価値を持つ計算で、約17.6倍です。SoftBankは646億ドルに対して約993億ドルで、含み益は約347億ドルになります。SoftBankは2025年以降に大きな額を投じたため、Microsoftほどの倍率にはなっていません。

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7. 2026年4月の戦略転換とMicrosoft依存からの脱却

Microsoftのロゴ

出典: Microsoft 公式ブログ

2026年4月27日、OpenAIとMicrosoftは提携の条件を見直しました。最大の変化は、OpenAIが全製品をMicrosoft以外のクラウドでも提供できるようになったことです。

4つの変更点

OpenAI公式の発表を引用した各社の報道をもとにまとめると、変更点は4つです。

変更内容

詳細

①ライセンスの非独占化

MicrosoftはOpenAIのモデル・製品の知的財産ライセンスを2032年まで持つが、独占ではなくなった

②クラウドの開放

Azureは引き続き主要なクラウドで、OpenAIの製品はまずAzureで提供する。ただしOpenAIは全製品を他のクラウドでも提供できるようになった

③売上分配の見直し

Microsoft→OpenAIの売上分配は停止。OpenAI→Microsoftの支払いは2030年まで同じ料率で続くが、総額に上限が付いた(料率は約20%と報道。上限額は非公表)

④株主関係

Microsoftは引き続き主要株主

一部で報じられた「収益配分を約8%に削減」「500億ドル超の独立ファンド」は、公式の発表内容と一致しません。料率は下がっておらず、変わったのは「総額に上限が付いた」点です。

契約見直しの詳細は、OpenAIとMicrosoftの新パートナーシップで解説しています。Microsoft側も自社モデル「MAI」への切り替えを進めており、その動きはMicrosoftがCopilotをMAIに切り替えた件にまとめています。

CoreWeave・Oracleへの分散化

依存を減らす動きは、契約見直しの前から始まっていました。OracleやSoftBankと組むデータセンター計画「Stargate」や、CoreWeaveとの計算資源契約がその例です。4月の見直し後は、AWSとも提携しました(OpenAIとAWSの戦略提携)。

一方で、2025年10月の資本再編の際には、OpenAIがAzureを2,500億ドル分追加で購入すると約束したと報じられています。調達先は分散しても、Microsoftが最大の取引先である状態は当面続きそうです。

計算資源の確保をめぐるお金の流れは、NVIDIAがOpenAIのデータセンターの債務を保証した件にも表れています。

8. 黒字化はいつか|判断材料と3つのシナリオ

黒字化の時期について、公式の見通しは出ていません。Fortuneは漏洩した数字を踏まえ、「黒字化は不可能ではないが、確実でもない」と評しています。

黒字化の前提条件

投資家向け資料によると、OpenAIは2030年までに約6,000億ドルのAIインフラ投資を約束しています(Quartz)。この投資を回収できるかどうかは、主に3つの点にかかっています。

  1. 計算資源のコストが下がるか: 売上原価と学習費用の大半は計算資源。粗利率は2025年度に約43%、2026年1〜3月期に39%(定義が違う可能性あり)
  2. 有料化と法人利用が進むか: 有料会員は3か月で約800万人増えた。業務での利用やAIエージェント製品がどこまで単価を上げられるか
  3. 価格競争に耐えられるか: Anthropic、Googleなどとの競争で、APIや有料プランの値下げ圧力がかかる

2030年収益予測をどう見るか

2030年の売上目標とされる社内見通しはこれまでも報じられてきましたが、今回の漏洩文書で確かめられる数字ではありません。手がかりになるのは年換算売上の推移です。2025年末の「200億ドル超」から、2026年秋には「500億ドルに迫る」水準(FT)まで伸びたと報じられており、年換算どうしで比べると1年足らずで約2.5倍です。ただし、計算の前提が報道ごとに同じとは限りません。

楽観・悲観シナリオ比較

時期を当てるより、どの指標を見ればよいかで整理したほうが役に立ちます。

シナリオ

想定する展開

確かめる指標

楽観

売上の伸びが費用の伸びを上回り、営業赤字が縮む

売上1ドルあたりの赤字(2025年は1.60ドル)が縮み続けるか

中立

売上は伸びるが、新モデルの学習費用も増え、赤字が横ばい

研究開発費の伸び率、粗利率

悲観

価格競争と計算資源の高騰で採算が悪化

API価格の改定、現金の消費額、追加調達の条件

S-1が公開されれば、これらの指標を公式の数字で確かめられるようになります。

9. IPOはいつか|6月以降の経過と2027年上場説

OpenAIのロゴ

出典: OpenAI 公式GitHub

漏洩の時点では「2026年秋の上場」という観測もありましたが、10月26日時点では2027年が有力です。CFOとCEOの発言がその根拠になっています。

日付

出来事

確度

2026年6月下旬

NYT・Bloomberg・Reutersが「2027年の上場を検討、Anthropicの後」と報道

報道

8月13日

年換算売上が400億ドルを超えるペース(Bloomberg)

報道

8月19日

サラ・フライヤーCFOが全社会議で「2027年に上場企業になる。事業が加速すれば前倒しもありうる」と話したと報道(CNBC)

報道

9月12日

アルトマンCEOが、上場は「2026年ではないと思う」と発言したと報道(Fortune)

報道

9月29日

評価額1.4兆ドルで300億ドルの調達を協議(Bloomberg)

報道

10月8日

FTが「投資家への説明は年換算売上500億ドルに迫る水準」と報道。700億ドル説より約200億ドル少なく、NVIDIA、Oracle、CoreWeaveなどAI関連株が下落(CNBC)

報道

10月13日

SECのEDGARに公開S-1は見当たらない(第三者の確認)

第三者確認

10月22〜24日

上場前のつなぎとして、最大300億ドルを評価額1.25兆ドル(プレマネー)で調達する方向と報道。一部の投資家が高値に難色を示し、1.4兆ドルから引き下げられた。条件は交渉中

報道

1.25兆ドルでの調達は、10月24日時点ではまだ交渉中で、決まったわけではありません。

競合のAnthropicも、2026年6月1日にS-1の非公開提出を公表しており、「上場はAnthropicが先」とする報道が多く出ています。ただし、Anthropicの公開S-1も10月26日時点で確認できず、時期は確定していません。詳しくはAnthropicのIPO・S-1提出に関する記事と、Anthropicの年換算売上650億ドルに関する記事を参照してください。

営利化そのものをめぐっては、イーロン・マスク氏がOpenAIを訴えた裁判も続いています(Musk v. Altman裁判の解説)。2025年度の巨額の評価損も、この営利化が出発点です。

10. 日本への影響とSoftBank・日本人投資家が知るべきこと

ソフトバンクグループのロゴ

出典: ソフトバンクグループ 公式サイト

日本の読者にとって影響が大きいのは、SoftBankグループを通じた株価への影響と、ChatGPTやAPIを業務で使う企業の調達判断の2点です。

SoftBankの持分価値と含み益

株主構成表の数字(未確認)では、SoftBankの持分は11.66%、取得原価は約646億ドルです。評価額8,520億ドル基準で約993億ドル、含み益は約347億ドル(約5.2兆円)になります。

仮に評価額1.25兆ドルを単純に掛けると約1,458億ドルですが、追加調達による持分の希薄化を考えていない概算です。OpenAIの評価額がSoftBankグループの業績や株価に影響しやすい関係であることは、押さえておく価値があります。

日本人個人投資家がIPOに参加できるか

OpenAIは米国での上場が前提とみられます。日本の個人投資家が関われる方法は、主に3つです。

  1. 上場後に、米国株を扱う証券会社で株を買う
  2. SoftBankグループ株を通じて間接的に保有する
  3. 上場後にOpenAIを組み入れるAI関連のETFや投資信託を通じて保有する

上場前の株式を個人が直接買う手段は、事実上ありません。「上場前のOpenAI株を買える」とうたう勧誘には注意してください。

日本企業へのOpenAI技術波及

2025年2月、ソフトバンクグループとOpenAIは日本で合弁会社「SB OpenAI Japan」を設立すると発表し、企業向けAIの提供を打ち出しました。OpenAIの財務や上場の行方は、こうした国内での提供体制にも関わってきます。

ChatGPTやAPIを業務で使う企業への影響

赤字が大きいからといって、短期的にサービスが止まると心配する根拠は薄いと考えられます。1〜3月期末の時点で730億ドル超の手元資金があると報じられ、1.25兆ドルという評価額での調達交渉も続いているからです。

一方で、業務で使う側が備えておきたい点もあります。

  • 価格や無料枠の見直し: 売上1ドルあたり1.60ドルの赤字が続く以上、プランの料金、APIの単価、無料枠の条件が変わる可能性は常にある
  • 特定のモデルへの依存: モデルの提供終了や仕様の変更に備え、複数社のモデルに切り替えられる作りにしておく
  • 契約条件の確認: 法人プランやAPIでは、データの扱い、提供地域、障害時の補償を契約で確かめる

新しいモデルや機能を自社の業務システムに組み込むときは、どこまでを改修で済ませ、どこからPoCや本開発にするかで費用が大きく変わります。方法と費用の目安は、AI開発の費用相場【2026年10月】AI受託開発の改修・PoC・本開発の価格と見積の内訳で整理しています。

11. こんな人に読んでほしい / 逆に向かない読者

この情報が特に役立つ読者

読者

役立つ点

OpenAIの上場後の投資を考えている個人・機関投資家

赤字の中身と、S-1で確かめるべき数字がわかる

SoftBankグループ株を持っている投資家

OpenAIの評価額とSoftBankの含み益の関係がわかる

生成AIビジネスを研究している経営者・コンサルタント

AI企業の費用構造と採算の厳しさを数字で把握できる

ChatGPTやOpenAI APIを業務で使っている企業の担当者

調達先の財務リスクと、価格改定への備えを考える材料になる

Microsoft・Azureの動向を追っているITの担当者

4月の契約見直しで何が変わったかを正確に把握できる

この記事の情報で判断しない方がよいケース

  • 「OpenAIは危ない」「倒産する」という結論を探している場合: 純損失の大部分は評価損で、手元資金も大きい。赤字の大きさだけで経営危機とは言えない
  • 短期の株価を予想したい場合: 上場前の財務情報は参考になるが、上場後の株価は市場の心理や金利にも左右される
  • 確定した数字が必要な場合: 漏洩文書は非公式で、S-1公開時に数字が変わる可能性がある。投資判断の最終確認はS-1で行う

12. 数字の早見表|2025年度と2026年Q1の財務ハイライト

指標

2024年

2025年

2026年1〜3月期

売上

37億ドル

130.7億ドル

57億ドル

費用合計

124.8億ドル

340億ドル

報道なし

営業損失

87.8億ドル

209.2億ドル

93億ドル

純損失(全体)

88.4億ドル

603.5億ドル

報道なし

OpenAIに帰属する純損失

50.9億ドル

385.3億ドル

213億ドル超(「純損失」として報道)

投資家の権利の再評価による損失

報道なし

415.5億ドル

124億ドル

売上1ドルあたりの営業赤字

2.37ドル

1.60ドル

約1.63ドル(93÷57)

粗利率

約28%

約43%

39%

Microsoftへの支払い

報道なし

約172億ドル

報道なし

調整後(非GAAP)営業利益率

—

—

マイナス122%

2025年までの数字は漏洩した財務諸表、2026年1〜3月期はThe Informationの報道によるもので、出どころが違います。

13. よくある質問(FAQ)

Q1. OpenAIの純損失385億ドルは実際に会社の現金が385億ドル減ったということ?

いいえ。純損失の中には、営利化に伴う評価損415.5億ドルが含まれており、これは現金の支出ではありません。一方、本業の赤字である営業損失209.2億ドルの多くは、計算資源や人件費などに実際に使われたお金です。「実質の損失は約80億ドル」とする報道もありますが、計算方法は公表されていません。

Q2. OpenAIはいつ上場するのか?

2026年10月26日時点では、2027年が有力です。CFOが全社会議で「2027年に上場企業になる」と話したと報じられ、CEOも「2026年ではないと思う」と述べたとされます。S-1の草案はSECに非公開で提出済みですが、一般公開はまだです。上場前のつなぎとして、評価額1.25兆ドルで最大300億ドルを調達する交渉が進んでいると報じられています。

Q3. MicrosoftへのOpenAI依存はこれからも続くのか?

当面は続きます。2026年4月の見直しで、OpenAIは他のクラウドでも製品を出せるようになりました。それでも、Azureは引き続き主要なクラウドで、Microsoftへの売上分配も2030年まで同じ料率で続きます(総額には上限あり)。2025年にはAzureを2,500億ドル分追加で購入する約束をしたとも報じられており、最大の取引先である状態はしばらく変わらないでしょう。

Q4. 漏洩した財務諸表を信じてよいのか?

2025年度の損益は、FTが同じ文書を独自に確認しており、信頼度は高いと考えられます。ただしOpenAIは確認も否定もしておらず、S-1の公開時に数字が修正される可能性はあります。株主構成表は公開情報からの再構成とみられ、確度は一段低くなります。

Q5. サムアルトマンはOpenAIの株を持っていないのか?

株主構成表の上では、保有はありません。ただし、公益法人化の後に株式を付与するかどうかは未定と報じられています。最終的な持分はS-1の公開を待つ必要があります。

Q6. SoftBankがOpenAI投資で得る含み益はどのくらいか?

株主構成表の数字(未確認)をもとにすると、取得原価約646億ドルに対し、評価額8,520億ドル基準で約993億ドル、含み益は約347億ドルです。評価額が1.25兆ドルに上がれば含み益も増えますが、追加調達による持分の希薄化や、上場後に一定期間株を売れないロックアップも考える必要があります。

Q7. OpenAIのグロスマージン(粗利率)は高いのか低いのか?

2025年度は約43%で、一般的なソフトウェア企業に比べると低めです。売上原価の多くが推論の計算資源で、利用が増えるほどコストも増える構造だからです。2024年度の約28%からは改善しており、計算資源の単価がどこまで下がるかが今後の焦点になります。

まとめ|OpenAI財務でわかった3つのこと

6月の漏洩と、その後4か月の報道からわかったことは、3つあります。

1. 売上は急増しているが、費用はそれ以上に大きい

2025年度の売上は130.7億ドルで前年の約3.5倍でした。ただ、費用は340億ドルで、売上1ドルあたり1.60ドルの営業赤字です。赤字の幅は縮んでいるものの、黒字には遠い段階です。

2. 「385億ドルの損失」の多くは会計上の評価損

営利化に伴う評価損415.5億ドルは現金の支出ではありません。それでも本業の営業損失は209.2億ドルあり、規模の大きな赤字であることに変わりはありません。

3. Microsoft依存は続くが、契約の形は変わった

2025年にMicrosoftへ払った約172億ドルは、売上の約1.3倍でした。2026年4月の見直しで他のクラウドでも製品を出せるようになり、支払いの総額にも上限が付きました。ただし、料率は2030年まで変わりません。

上場は2027年が有力となり、上場前の調達は評価額1.25兆ドルで交渉中です。S-1が一般公開されれば、漏洩文書の数字が公式の数字で確かめられます。それまでは、この記事の数字を「報道ベースの目安」として扱うのが安全です。

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この記事の著者

AI革命

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編集部

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